説明

接着シート及びその製造方法並びに半導体装置の製造方法及び半導体装置

【課題】プリカット加工が施されており、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不良を防止することができ、上記半導体素子を容易にピックアップすることが可能な接着シート、接着シートの製造方法、並びにそれを用いた半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】剥離基材と、前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層とを有し、前記粘着フィルム層の表面は、前記接着剤層と接する領域の全部もしくは一部に、凹凸を有する処理が施された領域を有する、接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着シート及びその製造方法、並びに、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル関連機器の多機能化及び軽量小型化の要求が急速に高まりつつある。これに伴い、半導体素子の高密度実装に対するニーズは年々強まり、特に半導体素子を積層するスタックドマルチチップパッケージ(以下「スタックドMCP」という)の開発がその中心を担っている。スタックドMCPの技術開発は、パッケージの小型化と多段積載という、相反する目標の両立にある。そのため、特に半導体素子に使用されるシリコンウェハの厚さは薄膜化が急速に進み、ウェハ厚さ100μm以下のものが積極的に使用、検討されている。また多段積載は、パッケージ作製工程の複雑化を引き起こすため、パッケージ作製工程の簡素化及び、多段積載によるワイヤーボンディングの熱履歴回数の増加に対応した作製プロセス、材料の提案が求められている。
【0003】
このような状況の中、スタックドMCPの接着部材としては従来からペースト材料が用いられてきた。しかし、ペースト材料では、半導体素子の接着プロセスにおいて樹脂のはみ出しが生じたり、膜厚精度が低いといった問題がある。これらの問題は、ワイヤーボンディング時の不具合発生やペースト剤のボイド発生等の原因となるため、ペースト材料を用いた場合では、上述の要求に対処しきれなくなってきている。
【0004】
こうした問題を改善するために、近年、ペースト材料に代えてフィルム状の接着剤が使用される傾向にある。フィルム状の接着剤はペースト材料と比較して、半導体素子の接着プロセスにおけるはみ出し量を少なく制御することが可能であり、且つ、フィルムの膜厚精度を高めて、膜厚のばらつきを小さくすることが可能であることから、特にスタックドMCPへの適用が積極的に検討されている。
【0005】
このフィルム状接着剤は、通常、接着剤層が剥離基材上に形成された構成を有しており、その代表的な使用方法の一つにウェハ裏面貼付け方式がある。ウェハ裏面貼り付け方式とは、半導体素子の作製に用いられるシリコンウェハの裏面にフィルム状接着剤を直接貼付ける方法である。この方法では、半導体ウェハに対するフィルム状接着剤の貼付けを行った後、剥離基材を除去し、接着剤層上にダイシングテープを貼り付ける。その後、ウェハリングに装着させて所望の半導体素子寸法にウェハを接着剤層ごと切削加工する。ダイシング後の半導体素子は裏面に同じ寸法に切り出された接着剤層を有する構造となっており、この接着剤層付きの半導体素子をピックアップして搭載されるべき基板に熱圧着等の方法で貼り付ける。
【0006】
この裏面貼付け方式に用いられるダイシングテープは、通常、粘着剤層が接着剤層上に形成された構成を有しており、感圧型ダイシングテープとUV型ダイシングテープとの2種類に大別される。ダイシングテープに要求される機能としては、ダイシング時には、ウェハ切断に伴う負荷によって半導体素子が飛散しない十分な粘着力が求められ、ダイシングした各半導体素子をピックアップする際には、各素子への粘着剤残りが無く、接着剤層付きの半導体素子がダイボンダー設備で容易にピックアップできることが求められる。
【0007】
また、パッケージ作製工程の短縮化の要望から、更にプロセス改善の要求が高まっている。従来のウェハ裏面貼付け方式ではウェハへフィルム状接着剤を貼付けた後、ダイシングテープを貼付けるという2つの工程が必要であったことから、このプロセスを簡略化するために、フィルム状接着剤とダイシングテープとの両方の機能を併せ持つ接着シート(ダイボンドダイシングシート)が開発されている。この接着シートとしては、フィルム状接着剤とダイシングテープとを貼り合わせた構造を持つ積層タイプ(例えば、特許文献1〜3参照)や、一つの樹脂層で粘着剤層と接着剤層との両方の機能を兼ね備えた単層タイプ(例えば、特許文献4参照)がある。
【0008】
また、このような接着シートを、半導体素子を構成するウェハの形状にあらかじめ加工しておく方法(いわゆるプリカット加工)が知られている(例えば特許文献5、6参照)。かかるプリカット加工は、使用されるウェハの形状に合わせて樹脂層を打ち抜き、ウェハを貼り付ける部分以外の樹脂層を剥離しておく方法である。
【0009】
かかるプリカット加工を施す場合、積層タイプの接着シートは一般的に、フィルム状接着剤において接着剤層をウェハ形状に合わせてプリカット加工し、それとダイシングテープとを貼り合わせた後、このダイシングテープに対してウェハリング形状に合わせたプリカット加工を施すか、又は、あらかじめウェハリング形状にプリカット加工したダイシングテープを、プリカット加工したフィルム状接着剤と貼り合わせることによって作製される。また、単層タイプの接着シートは一般的に、剥離基材上に接着剤層と粘着フィルム層の両方の機能を有する樹脂層(以下、「粘接着層」という)を形成し、この粘接着層に対してプリカット加工を行い、樹脂層の不要部分を除去した後に粘着フィルム層と貼り合わせる等の方法により作製される。
【0010】
ところで、前記接着シートは、前記プリカット加工において、接着剤層と粘着フィルム層が接する構造となるが、接着剤層と粘着フィルム層の密着力が高いと、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不具合を生じる。
そのため、従来このような剥がれを回避するために、接着剤層と粘着フィルム層との密着力を下げるなどの方法を行い、半導体素子の破損を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3348923号公報
【特許文献2】特開平10−335271号公報
【特許文献3】特許第2678655号公報
【特許文献4】特公平7−15087号公報
【特許文献5】実公平6−18383号公報
【特許文献6】登録実用新案3021645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、接着剤層と粘着フィルム層との密着力を下げ、半導体素子の破損を抑制する方法では、ウェハを切削加工するダイシング工程においてウェハリングから剥がれてしまうという問題がある。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不具合を十分に抑制することが可能な接着シート及びその製造方法、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下に関する。
<1>剥離基材と、前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層とを有し、前記粘着フィルム層の表面は、前記接着剤層と接する領域の全部もしくは一部に、凹凸を有する処理が施された領域を有する、接着シート。
<2>前記粘着フィルム層の前記表面のうち、前記凹凸処理が施された領域における接着剤層との密着力が、4N/mよりも大きく、20N/m以下である、<1>記載の接着シート。
<3>前記接着剤層が、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体と、を含む、<1>または<2>に記載の接着シート。
<4>前記重合体が、グリシジル基含有アクリル共重合体及びグリシジル基含有メタクリル共重合体の少なくとも一方を含み、かつ、前記接着剤層全体に対する前記エポキシ樹脂の含有量が5質量%以上50質量%以下である、<3>に記載の接着シート。
<5><1>〜<4>いずれか一項に記載の接着シートの製造方法であって、剥離基材と前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層とを有する接着剤層付き剥離基材を準備する工程と、前記接着剤層と接する領域の全部もしくは一部に、凹凸を有する処理が施された領域を有する粘着フィルム層を準備する工程と、前記接着剤層付き剥離基材において、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように前記粘着フィルム層を設ける工程と、前記粘着フィルム層における前記剥離基材と接していない面から前記剥離基材に達するまで切り込みを入れ、切り込まれた前記粘着フィルム層の一部を除去する工程と、前記所定の平面形状の接着剤層と、前記接着剤層を覆い且つ前記接着剤層の周囲で前記剥離基材に接する粘着フィルム層とからなる、所定の形状の積層体とを形成する工程と、を含む、接着シートの製造方法。
<6><1>〜<4>のうちのいずれか一項に記載の接着シート又は<5>に記載の接着シートの製造方法により得られた接着シートにおいて、接着剤層及び粘着フィルム層を含んで構成された積層体を剥離基材から剥離し、前記積層体における前記接着剤層側の面を半導体ウェハに貼り付けて積層体付き半導体ウェハを得る工程と、前記積層体付き半導体ウェハを、前記半導体ウェハ側の面から前記接着剤層と前記粘着フィルム層との界面まで切断する工程と、切断された前記半導体ウェハ及び前記接着剤層を、前記粘着フィルム層から剥離し、接着剤層付き半導体素子を得る工程と、前記接着剤層付き半導体素子における前記半導体素子を、前記接着剤層を介して被着体に接着する工程とを含む、半導体装置の製造方法。
<7>前記被着体が、半導体素子搭載用の支持部材、又は、他の半導体素子である<6>に記載の半導体装置の製造方法。
<8><6>又は<7>に記載の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、前記粘着フィルム層の接着剤層と接する領域の一部もしくは全部に、凹凸処理を施されており、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不具合を十分に抑制することが可能な接着シート及びその製造方法、並びに、上記接着シートを用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の接着シートを示す平面図である。
【図2】図1の平面図のA−A’線に沿って切断した場合の端面図の一部である。
【図3】本発明の接着シートを用いた、積層体付き半導体ウェハを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<接着シート>
【0017】
本発明の接着シートは、剥離基材と前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層とを有し、前記粘着フィルム層の表面は、前記接着剤層と接する領域の全部もしくは一部に、凹凸を有する処理が施された領域を有することを特徴とする。
【0018】
接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力は、4N/mよりも大きく、20N/m以下であることが好ましい。ここで、本発明における密着力は、接着剤層側を支持した状態で180度方向に粘着フィルム層を引き剥がした際の剥離強度を5点測定して、平均した値を意味する。
【0019】
本発明の接着シートは、上述したプリカット加工が施された接着シートである。そして、本発明の接着シートにおいては、接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力が上記範囲であることにより、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不良を防止することができる。
【0020】
また、本発明の接着シートにおいて、上記接着剤層は、上記剥離基材を剥離した後に上記積層体を貼り付けるべき被着体の平面形状に合致する所定の平面形状を有していることが好ましい。
上記被着体としては、例えば半導体ウェハが挙げられるが、この半導体ウェハの平面形状に合致する平面形状を接着剤層が有していることにより、半導体ウェハをダイシングする工程が容易となる傾向がある。なお、接着剤層の平面形状は、半導体ウェハの平面形状に完全に一致している必要はなく、例えば、半導体ウェハの平面形状と相似であってもよく、半導体ウェハの平面形状に合致していてもよい。
【0021】
更に、上記接着シートにおいて、上記粘着フィルム層は、上記剥離基材を剥離した後に上記接着剤層を貼り付けるべき被着体及び上記接着剤層に対して室温(25℃)で粘着性を有することが好ましい。これにより、半導体ウェハをダイシングする際に半導体ウェハが十分に固定され、ダイシングが容易となる。また、半導体ウェハをダイシングする際にウェハリングを用い、このウェハリングに粘着フィルム層が密着するように接着シートの貼り付けを行った場合、ウェハリングへの粘着力が十分に得られてダイシングが容易となる。
【0022】
上記粘着フィルム層は、高エネルギー線の照射により上記接着剤層に対する粘着力が低下することが好ましい。これにより、接着剤層を粘着フィルム層から剥離する際において、紫外線、電子線、放射線等の高エネルギー線を照射することにより、剥離が容易に可能となる。
【0023】
上記接着シートは、上記粘着フィルム層の周縁部の少なくとも一部と上記剥離基材との間に配置される接着剤層を更に備えることが好ましい。かかる粘着フィルム層を備えていることにより、半導体ウェハのダイシング時に使用するウェハリングに対してこの粘着フィルム層を貼り付け、接着剤層がウェハリングに直接貼り付けられないようにすることができる。接着剤層がウェハリングに直接貼り付けられる場合には、接着剤層の粘着力は、ウェハリングから容易に剥離できる程度の低い粘着力に調整する必要が生じるが、粘着フィルム層をウェハリングに貼り付けることにより、このような粘着力の調整が不要となる。したがって、接着剤層には十分に高い粘着力を持たせるとともに、粘着フィルム層にはウェハリングを容易に剥離できる程度の十分に低い粘着力を持たせることにより、半導体ウェハのダイシング作業及びその後のウェハリングの剥離作業をより効率的に行うことが可能となる。更に、粘着フィルム層の粘着力を十分に低く調整することができるため、剥離基材と粘着フィルム層との間に剥離起点を作り出しやすくなり、剥離基材からの接着剤層及び粘着フィルム層の剥離が容易となって剥離不良の発生をより十分に抑制することが可能となる。ここで、上記粘着フィルム層は、上記剥離基材を剥離した後に上記粘着フィルム層を貼り付けるべき被着体及び上記接着剤層に対して室温(25℃)で粘着性を有することが好ましい。
【0024】
本発明の接着シートは、25℃での硬化前の貯蔵弾性率が10〜10000MPaであり、且つ260℃での硬化後の貯蔵弾性率が0.5〜1000MPaである接着剤層を有することが好ましい。25℃での硬化前の貯蔵弾性率が上記範囲であると、プリカットの加工性を確保できる。また、260℃での硬化後の貯蔵弾性率が上記範囲であると、半導体装置の信頼性に優れる。
【0025】
本発明の接着シートは、剥離基材と、該剥離基材上に配置され、所定の平面形状を有した接着剤層と、該接着剤層の周囲で前記剥離基材に接するよう形成された粘着フィルム層とが順次積層された構成を有している。本発明において、接着剤層と粘着フィルム層を積層体という。前記接着剤層及び粘着フィルム層からなる積層体は、所定の形状に切断されており、剥離基材上に部分的に積層され、上記積層体は、複数個、剥離基材の長さ方向に分散配置されている。
【0026】
ここで、積層体の上記所定の形状とは、剥離基材上に積層体が部分的に積層された状態となり、前記接着剤層の所定の平面形状が半導体ウェハ等の被着体の平面形状よりも大きい平面形状であれば、特に制限されないが、例えば、円形、略円形、四角形、五角形、六角形、八角形、ウェハ形状(円の外周の一部が直線である形状)等の、半導体ウェハへの貼付が容易な形状であることが好ましい。これらの中でも、半導体ウェハ搭載部以外の無駄な部分を少なくするために、円形やウェハ形状が好ましい。
【0027】
半導体ウェハのダイシングを行う際には、通常、ダイシング装置での取り扱いのためにウェハリングが用いられる。この場合、接着シートから剥離基材を剥離し、粘着フィルム層にウェハリングを貼り付け、その内側に半導体ウェハを貼り付ける。ここで、ウェハリングは、円環状や四角環状等の枠となっており、接着シートにおける積層体の粘着フィルム層は、更にこのウェハリングに合致する平面形状を有していることが好ましい。
【0028】
粘着フィルム層は、室温(25℃)で半導体ウェハやウェハリング等の被着体を十分に固定することが可能であり、且つ、ウェハリング等に対してはダイシング後に剥離可能な程度の粘着性を有していることが好ましい。該粘着フィルム層のウェハリングに対する高エネルギー線照射前の粘着力は3〜150N/mであることが好ましく、10〜100N/mであることがより好ましい。150N/mを超えるとウェハリングから剥がし難く、作業性が低下する。3N/m未満であるとウェハリングに対する保持力が不足し、半導体装置の製造工程において支障をきたす恐れがある。
【0029】
以下、接着シートを構成する各層について詳細に説明する。
剥離基材は、接着シートの使用時にキャリアフィルムとしての役割を果たすものであり、かかる剥離基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等を使用することができる。また、紙、不織布、金属箔等も使用することができる。
【0030】
また、剥離基材の接着剤層側の面は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の離型剤で表面処理されていることが好ましい。剥離基材の厚さは、使用時の作業性を損なわない範囲で適宜選択することができるが、10〜500μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましく、25〜50μmであることが特に好ましい。
【0031】
本発明における接着剤層には、例えば、高分子量成分を用い、これに熱重合性成分、又は、高エネルギー線重合性成分等を含有させることができる。このような成分を含有する組成とすることにより、接着剤層には、高エネルギー線(例えば、電子線、紫外線、放射線等)や熱で硬化する特性を持たせることができる。また、熱重合性成分や高エネルギー線重合性成分等の硬化性成分を主に用いる構成でも良い。
【0032】
接着剤層に用いられる高分子量成分としては、熱可塑性を有する樹脂、又は少なくとも未硬化状態において熱可塑性を有し、加熱後に架橋構造を形成する樹脂であれば特に制限はないが、例えば、(1)Tg(ガラス転移温度)が10〜100℃であり、且つ、重量平均分子量が5000〜200000であるもの、又は、(2)Tgが−50〜50℃であり、且つ、重量平均分子量が100000〜1000000であるものが好ましく用いられる。
上記(1)の高分子量成分としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルイミド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、中でもポリイミド樹脂を使用することが好ましい。
【0033】
上記(1)の高分子量成分のより好ましいものの一つとしてのポリイミド樹脂は、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを公知の方法で縮合反応させることによって得ることができる。すなわち、有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを等モル又はほぼ等モル用い(各成分の添加順序は任意)、反応温度80℃以下、好ましくは0〜60℃で付加反応させる。反応が進行するにつれ反応液の粘度が徐々に上昇し、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が生成する。
【0034】
また、上記(2)の高分子量成分のうち好ましいものの一つとして、官能性モノマーを含む重合体が挙げられる。かかる重合体における官能基としては、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、中でもグリジシル基が好ましい。より具体的には、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーを含有するグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体等が好ましく、さらにこれらは、接着剤層の構成原料として用いられる、硬化前のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と非相溶であることが好ましい。
【0035】
上記官能性モノマーを含む重合体であって、重量平均分子量が10万以上である高分子量成分としては、例えば、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等の官能性モノマーを含有し、かつ重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体等が挙げられ、その中でも硬化前のエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と非相溶であるものが好ましい。
上記グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、グリシジル基含有(メタ)アクリルエステル共重合体、グリシジル基含有アクリルゴム等を使用することができ、グリシジル基含有アクリルゴムがより好ましい。本発明でいうグリシジル基含有アクリルゴムとは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレートとアクリロニトリル等の共重合体や、エチルアクリレートとアクリロニトリル等からなるグリシジル基を含有する共重合体である。
【0036】
上記官能性モノマーとは、官能基を有するモノマーのことをいい、このようなモノマーとしては、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等を使用することが好ましい。重量平均分子量が10万以上であるグリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体として具体的には、例えば、ナガセケムテックス株式会社製のHTR−860P−3(商品名)等が挙げられる。
【0037】
上記グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー単位の量は、加熱により硬化して網目構造を効果的に形成するためには、モノマー全量を基準として0.5〜50質量%が好ましい。また、接着力を確保できるとともに、ゲル化を防止することができるという観点からは、0.5〜6質量%がより好ましく、0.8〜5質量%がさらに好ましく、1〜4質量%が特に好ましい。
【0038】
グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマー以外のモノマーと共重合させることも可能であり、エポキシ基含有モノマー以外の上記モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、本発明において、エチル(メタ)アクリレートとは、エチルアクリレート又はエチルメタクリレートを示す。エポキシ基含有モノマー以外のモノマーを組み合わせて使用する場合の混合比率は、グリシジル基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して決定し、Tgが−10℃以上となるようにすることが好ましい。Tgが−10℃以上であると、未硬化状態での接着剤層のタック性が適当であり、取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。
【0039】
上記官能性モノマーを重合させて、官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分を製造する場合、その重合方法としては特に制限はなく、例えば、パール重合、溶液重合等の方法を使用することができる。官能性モノマーを含む高分子量成分の重量平均分子量は、10万以上であるが、30万〜300万であることが好ましく、50万〜200万であることがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲にあると、シート状又はフィルム状としたときの強度、可とう性、及びタック性が適当であり、また、フロー性が適当であるため、配線の回路充填性が確保できる傾向にある。
なお、本発明において、重量平均分子量とは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーで測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した値を示す。
【0040】
また、官能性モノマーを含む重量平均分子量が10万以上である高分子量成分の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、10〜400質量部が好ましい。この範囲にあると、貯蔵弾性率及び成形時のフロー性抑制が確保でき、また高温での取り扱い性が良好なものとなる傾向にある。また、高分子量成分の使用量は、熱重合性成分100質量部に対して、15〜350質量部がより好ましく、20〜300質量部が特に好ましい。
【0041】
接着剤層に用いられる熱重合性成分としては、熱により重合するものであれば特に制限は無く、例えば、グリシジル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、水酸基、カルボキシル基、イソシアヌレート基、アミノ基、アミド基等の官能基を持つ化合物が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、接着シートとしての耐熱性を考慮すると、接着剤層に対し、熱によって硬化して接着作用を及ぼす熱硬化性樹脂や硬化剤を使用することが好ましい。
【0042】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂等が挙げられ、特に、耐熱性、作業性、信頼性に優れる接着シートが得られる点でエポキシ樹脂を使用することが好ましい。また、熱硬化性樹脂の含有量は、接着剤層全体に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂等を使用することができる。また、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂又は脂環式エポキシ樹脂等、一般に知られているものを使用することができる。
【0043】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製エピコートシリーズ(エピコート807、エピコート815、エピコート825、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1004、エピコート1007、エピコート1009)、ダウケミカル社製のDER−330、DER−301、DER−361、及び、東都化成株式会社製のYD8125、YDF8170等が挙げられる。
【0044】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート152、エピコート154、日本化薬株式会社製のEPPN−201、ダウケミカル社製のDEN−438等が、またo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEOCN−102S、EOCN−103S、EOCN−104S、EOCN−1012、EOCN−1025、EOCN−1027や、東都化成株式会社製、YDCN700−10等が挙げられる。
【0045】
多官能エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のEpon 1031S、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイト0163、ナガセケムテックス株式会社製のデナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−411、EX−321等が挙げられる。
【0046】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート604、東都化成株式会社製のYH−434、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD−X及びTETRAD−C、住友化学株式会社製のELM−120等が挙げられる。
複素環含有エポキシ樹脂としては、チバスペシャリティーケミカルズ社製のアラルダイトPT810、UCC社製のERL4234、ERL4299、ERL4221、ERL4206等が挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂としては、ダイセル化学工業株式会社製 エポリードシリーズ、セロキサイドシリーズ等が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
エポキシ樹脂を使用する際は、エポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。エポキシ樹脂硬化剤としては、通常用いられている公知の硬化剤を使用することができ、例えば、アミン類、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三フッ化ホウ素、ジシアンジアミド、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSのようなフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有するビスフェノール類、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂等が挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れる点で、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂及びクレゾールノボラック樹脂等のフェノール樹脂が好ましい。なお、本発明においてエポキシ樹脂硬化剤とは、エポキシ基に触媒的に作用し架橋を促進するような、いわゆる硬化促進剤と呼ばれるものも含む。
【0048】
上記エポキシ樹脂硬化剤としてのフェノール樹脂の中で好ましいものとしては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製、商品名:フェノライトLF4871、フェノライトLF2822、フェノライトTD−2090、フェノライトTD−2149、フェノライトVH−4150、フェノライトVH4170、明和化成株式会社製、商品名:H−1、ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名:エピキュアMP402FPY、エピキュアYL6065、エピキュアYLH129B65及び三井化学株式会社製、商品名:ミレックスXL、ミレックスXLC、ミレックスRN、ミレックスRS、ミレックスVR等が挙げられる。
【0049】
本発明における粘着フィルム層には、通常、放射線重合性成分(または、高エネルギー線重合性成分)、光重合開始剤などを用いることができる。
粘着フィルム層に用いられる、高エネルギー線重合性成分として、例えば、放射線重合性成分を含有させることにより、半導体ウェハ等の被着体に接着剤層を貼り付けた後、ダイシングを行う前に放射線照射してダイシング時の粘着力を向上させることや、逆にダイシングを行った後に放射線照射して粘着力を低下させることでピックアップを容易にすることができる。本発明において、このような放射線重合性成分としては、従来放射線重合性のダイシングシートに使用されていた化合物を特に制限なく使用することができる。
また、接着剤層に、熱硬化性樹脂成分を含有させることにより、半導体素子を搭載するときの熱や、半田リフローを通るときの熱等によって、接着剤層が硬化し、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0050】
放射線重合性成分としては、特に制限されないが、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、ペンテニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、4−ビニルトルエン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、1,3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、1,2−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパン、メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、トリス(β−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリアクリレート等を使用することができる。
【0051】
また、粘着フィルム層には、光重合開始剤(例えば、放射線等の高エネルギー線の照射によって遊離ラジカルを生成するようなもの)を添加することもできる。かかる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパノン−1、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体等が挙げられる。
【0052】
また、粘着フィルム層又は接着剤層には、放射線照射等の高エネルギー線により塩基及びラジカルを発生する光開始剤を添加しても良い。これにより、ダイシング前又はダイシング後の高エネルギー線照射により、ラジカルが発生して高エネルギー線重合性成分が硬化するとともに、系内に熱硬化性樹脂の硬化剤である塩基が発生し、その後の熱履歴による接着剤層の熱硬化反応を効率的に行うことができるため、光反応と熱硬化反応のそれぞれの開始剤を添加する必要がなくなる。
放射線照射により塩基及びラジカルを発生する光開始剤としては、例えば、2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製、イルガキュア907)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製、イルガキュア369)、ヘキサアリールビスイミダゾール誘導体(ハロゲン、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等の置換基がフェニル基に置換されても良い)、ベンゾイソオキサゾロン誘導体等を用いることができる。
【0053】
粘着フィルム層又は接着剤層には、高エネルギー線で遊離ラジカルを生成させる上記光重合開始剤と、高エネルギー線により塩基を発生させる下記の化合物を別に添加しても良い。
放射線照射によって塩基を発生する化合物は、放射線照射時に塩基を発生する化合物であって、発生した塩基が、熱硬化性樹脂の硬化反応速度を上昇させるものであり、光塩基発生剤ともいう。発生する塩基としては、反応性、硬化速度の点から強塩基性化合物が好ましい。一般的には、塩基性の指標として酸解離定数の対数であるpKa値が使用され、水溶液中でのpKa値が7以上の塩基が好ましく、さらに9以上の塩基がより好ましい。
【0054】
また、上記放射線照射によって塩基を発生する化合物は、波長150〜750nmの光照射によって塩基を発生する化合物を用いることが好ましく、一般的な光源を使用した際に効率良く塩基を発生させるためには250〜500nmの光照射によって塩基を発生する化合物がより好ましい。
【0055】
このような放射線照射によって塩基を発生する化合物の例としては、イミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、1−メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン等のピペラジン誘導体、ピペリジン、1,2−ジメチルピペリジン等のピペリジン誘導体、プロリン誘導体、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のトリアルキルアミン誘導体、4−メチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン等の4位にアミノ基又はアルキルアミノ基が置換したピリジン誘導体、ピロリジン、n−メチルピロリジン等のピロリジン誘導体、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビスシクロ(5,4,0)ウンデセン−1(DBU)等の脂環式アミン誘導体、ベンジルメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ベンジルジエチルアミン等のベンジルアミン誘導体等が挙げられる。
【0056】
また、放射線又は熱で硬化する接着剤層の貯蔵弾性率を大きくするために、例えば、エポキシ樹脂の使用量を増やしたり、グリシジル基濃度の高いエポキシ樹脂又は水酸基濃度の高いフェノール樹脂を使用する等してポリマー全体の架橋密度を上げたり、無機フィラーを添加するといった方法を用いることができる。
接着剤層の貯蔵弾性率を大きくするための無機フィラーは、後述する。
【0057】
更に、接着剤層には、可とう性や耐リフロークラック性を向上させる目的で、熱重合性成分と相溶性がある高分子量成分を添加することができる。このような高分子量樹脂としては、特に限定されないが、例えばフェノキシ樹脂、高分子量熱重合性成分、超高分子量熱重合性成分等が挙げられる。これらは、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
また、接着剤層には、その取り扱い性向上、熱伝導性向上、溶融粘度の調整及びチキソトロピック性付与等を目的として、無機フィラーを添加することもできる。無機フィラーとしては、特に制限はないが、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられ、フィラーの形状は特に制限されるものではない。これらのフィラーは単独で又は二種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらのなかでも、熱伝導性向上のためには、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカが好ましい。また、溶融粘度の調整やチキソトロピック性の付与の目的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非晶性シリカなどが好ましい。
【0059】
また、無機フィラーの平均粒径は0.005μm〜1μmが好ましく、これより小さくても大きくても接着性が低下する可能性がある。
無機フィラーの配合量は、接着剤層100質量%に対して1〜20質量%であることが好ましい。前記配合量が1質量%未満では添加効果が得られない傾向があり、20質量%を超えると、接着剤層の貯蔵弾性率の上昇、接着性の低下、ボイド残存による電気特性の低下等の問題を起こす傾向がある。
【0060】
接着剤層の厚さは、半導体素子搭載用の支持部材等の被着体への接着性は十分に確保しつつ、半導体ウェハへの貼り付け作業及び貼り付け後のダイシング作業に影響を及ぼさない範囲であることが望ましい。かかる観点から、接着剤層の厚さは1〜300μmであることが好ましく、5〜150μmであることがより好ましく、10〜100μmであることが特に好ましい。厚さが1μm未満であると、十分なダイボンド接着力を確保することが困難となる傾向があり、300μmを超えると、貼り付け作業やダイシング作業への影響等の不具合が生じる傾向がある。
【0061】
また、粘着フィルム層の厚さは、10〜500μmであることが好ましく、25〜200μmであることがより好ましく、50〜150μmであることが特に好ましい。
【0062】
接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力は、4N/mよりも大きく、20N/m以下であることが好ましい。接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力が上記範囲であることにより、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不良を防止することができる。
【0063】
本発明の接着シートは、上述したプリカット加工が施された接着シートである。そして、本発明の接着シートにおいては、接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力が上記範囲であることにより、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不良を防止することができる。そのため、上記半導体素子を容易にピックアップすることが可能となる。
【0064】
なお、ここで、本発明における密着力は、接着剤層側を支持した状態で粘着フィルム層を180度方向に引き剥がした際の剥離強度を5点測定して、平均した値を意味するが、ピックアップ不良の発生をより十分に抑制する観点から、任意に5点測定し、算出した剥離強度の全てが上記範囲となっていることが好ましい。
【0065】
<接着シートの製造方法>
上記接着シートの製造方法について説明する。
本発明の接着シートの製造方法は、剥離基材上に接着剤層を積層する第1の積層工程、前記接着剤層の前記剥離基材に接する側と反対側の面から前記剥離基材に達するまで該剥離基材平面に対して切り込みをいれ、前記切込まれた外周部分の接着剤層を除去し、所定の平面形状の接着剤層を形成する第1の切断工程、剥離基材の端部にコロナ処理を施した後、前記所定の平面形状の接着剤層及び前記剥離基材を覆うように、前記粘着フィルム層を積層する第2の積層工程、及び前記粘着フィルム層の前記剥離基材側と反対側の面から前記剥離基材に達するまで該剥離基材平面に対して非垂直方向に切り込みを入れ、前記切込まれた外周部分の粘着フィルム層を除去し、前記所定の平面形状の接着剤層と、該接着剤層を覆い且つ該接着剤層の周囲で前記剥離基材に接する粘着フィルム層とからなる、所定の形状の積層体とを形成する第2の切断工程を含むことを特徴とする。
【0066】
以下、各製造工程についてより詳細に説明する。
第1の積層工程においては、まず、接着剤層を構成する材料を溶剤に溶解又は分散して接着剤層形成用ワニスとし、これを剥離基材上に塗布後、加熱により溶剤を除去する。一方、第2の積層工程において用いる粘着フィルム層は、まず、粘着フィルム層を構成する材料を溶剤に溶解又は分散して粘着フィルム層形成用ワニスとし、これを基材フィルム上に塗布後、加熱により溶剤を除去した後、別の基材フィルムと貼り合わせ、粘着フィルム層を得る。
【0067】
ここで、両層形成用ワニスの調製に使用する上記溶剤としては、各構成材料を溶解又は分散することが可能なものであれば特に限定されないが、層形成時の揮発性等を考慮すると、例えば、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン等の比較的低沸点の溶媒を使用するのが好ましい。また、塗膜性を向上させる等の目的で、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサノン等の比較的高沸点の溶媒を使用することもできる。これらの溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なお、ワニスを調製した後、真空脱気等によってワニス中の気泡を除去することもできる。
【0068】
第1の積層工程における接着剤層形成用ワニスの剥離基材への塗布方法、また第2の積層工程における粘着フィルム層形成用ワニスの基材フィルムへの塗布方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法、ダイコート法等を用いることができる。
なお、接着剤層と粘着フィルム層との貼り合わせは、従来公知の方法によって行うことができ、例えば、ラミネーター等を用いて行うことができる。
【0069】
粘着フィルム層に凹凸処理する製造法としては、公知の方法を用いることができ、例えばシボ加工等の表面処理を施したラミネーターロールによる圧延、プラズマ処理、紫外線処理等を用いることができるが、特にシボ加工を施したラミネーターロールを用いる方法が有効である。ラミネーターロールにシボ加工を施す手法としては、公知の方法を用いることができ、例えばフォトエッチング法、皮絞法、サンドブラスト法、化学薬品による表面処理などが挙げられる。シボ加工の成型品平均深さ:Rzは1.5〜8μmが好ましく、2〜6μmがより好ましい。1.5μmより小さいとピックアップ成功率を向上させる効果が低下する傾向があり、8μmを超えると接着剤層と粘着フィルム層との界面に空隙が生じ、接着シートの外観が低下する傾向がある。
【0070】
上記第2の積層工程において、接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力は、4N/mよりも大きく、20N/m以下であることが好ましい。この範囲となるように、シボ加工の成型品平均深さを調整し、密着力を下げる場合は、深さを深くし、密着力を上げる場合は、深さを浅くするなどして、凹凸を調整する。接着剤層と粘着フィルム層との界面の密着力が上記範囲であることにより、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうという不良を防止することができる。そのため、上記半導体素子を容易にピックアップすることが可能となる。その後、必要に応じて積層体の不要部分を剥離除去し、目的の接着シートを得る。
以上、本発明の接着シート及び接着シートの製造方法の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0071】
<半導体装置の製造方法>
本発明の接着シートを用いて半導体装置を製造する方法について説明する。
本発明の接着シートは、剥離基材がキャリアフィルムの役割を果たしており、2つのロール及び楔状の部材とに支持されながら、その一端が円柱状の巻芯に接続された状態で巻回され第1のロールを形成し、他端が円柱状の巻芯に接続された状態で巻回され第2のロールを形成している。そして、第2のロールの巻芯には、当該巻芯を回転させるための巻芯駆動用モータが接続されており、接着シートにおける第2の積層体が剥離された後の剥離基材が所定の速度で巻回されるようになっている。
【0072】
まず、巻芯駆動用モータが回転すると、第2のロールの巻芯が回転し、第1のロールの巻芯に巻回されている接着シートが第1のロールの外部に引き出される。そして、引き出された接着シートは、移動式のステージ上に配置された円板状の半導体ウェハ及びそれを囲むように配置されたウェハリング上に導かれる。
【0073】
次に、剥離基材から、接着剤層及び粘着フィルム層からなる積層体が剥離される。このとき、接着シートの剥離基材側から楔状の部材が当てられており、剥離基材は部材側へ鋭角に曲げられ、剥離基材と積層体との間に剥離起点が作り出されることとなる。更に、剥離起点がより効率的に作り出されるように、剥離基材と積層体との境界面にエアーが吹き付けられている。
【0074】
このようにして剥離基材と積層体との間に剥離起点が作り出された後、粘着フィルム層がウェハリングと密着し、接着剤層が半導体ウェハと密着するように積層体の貼り付けが行われる。このとき、ロールによって積層体は半導体ウェハ及びウェハリングに圧着されることとなる。そして半導体ウェハ及びウェハリング上への積層体の貼り付けが完了する。
【0075】
以上のような手順により、半導体ウェハへの第2の積層体の貼り付けを、自動化された工程で連続して行うことができる。このような半導体ウェハへの積層体の貼り付け作業を行う装置としては、例えば、リンテック株式会社製のRAD−2500(商品名)等が挙げられる。
そして、このような工程により積層体を半導体ウェハに貼り付ける場合、接着シートを用いることにより、剥離基材と積層体との間の剥離起点(剥離基材と粘着フィルム層との間の剥離起点)を容易に作り出すことができ、剥離不良の発生を十分に抑制することができる。
【0076】
次に、上記の工程により積層体が貼り付けられた半導体ウェハを、切削部材、例えばダイシング刃により必要な大きさにダイシングして、接着剤層が付着した半導体素子を得る。ここで更に、洗浄、乾燥等の工程を行ってもよい。このとき、接着剤層により半導体ウェハは粘着フィルム層に十分に粘着保持されているので、上記各工程中に半導体ウェハやダイシング後の半導体素子が脱落することが十分に抑制される。
【0077】
次に、放射線等の高エネルギー線を接着剤層に照射し、接着剤層の一部を重合硬化させる。この際、高エネルギー線照射と同時に又は照射後に、硬化反応を促進する目的で更に加熱を行っても良い。接着剤層への高エネルギー線の照射は、粘着フィルム層の接着剤層が設けられていない側の面から行う。したがって、高エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着フィルム層は光透過性であることが必要である。なお、高エネルギー線として電子線を用いる場合には、粘着フィルム層は必ずしも光透過性である必要はない。
【0078】
高エネルギー線照射後、ピックアップすべき半導体素子を、例えば吸引コレットによりピックアップする。この際、ピックアップすべき半導体素子を粘着フィルム層の下面から、例えば針扞等により突き上げることもできる。接着剤層を硬化させることにより、半導体素子のピックアップ時において、接着剤層と粘着フィルム層との界面で剥離が生じやすくなり、接着剤層が半導体素子の下面に付着した状態でピックアップされることとなる。そして、接着剤層が付着した半導体素子を、接着剤層を介して半導体素子搭載用の支持部材に載置し、加熱を行う。加熱により接着剤層は接着力が発現し、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材との接着が完了する。その後、必要に応じてワイヤボンド工程や封止工程等を経て、半導体装置が製造される。
【0079】
<半導体装置>
本発明の半導体装置は、半導体素子搭載用の支持部材となる有機基板上に半導体素子が、接着剤層を介して積層されている。また、有機基板には、回路パターン及び端子が形成されており、この回路パターンと半導体素子とが、ワイヤボンドによってそれぞれ接続されている。そして、これらが封止材により封止され、半導体装置が形成されている。この半導体装置は、上述した本発明の半導体装置の製造方法により、本発明の接着シートを用いて製造されるものである。以上、本発明の半導体装置の製造方法及び半導体装置の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0080】
以下、実施例及び比較例をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限するものではない。
<接着剤層形成用ワニスの作製>
まず、エポキシ樹脂としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成株式会社製、商品名:YDCN−700−10、エポキシ当量:220)60質量部及び硬化剤として低吸水性フェノール樹脂(三井化学株式会社製、商品名:XLC−LL、フェノールキシレングリコールジメチルエーテル縮合物)40質量部に、ワニス調製用溶媒としてシクロヘキサノン1500質量部を加えて完全に溶解するまで撹拌混合した。
次いで、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名:NUC A−189)1.5質量部及びγ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン(日本ユニカー株式会社製、商品名:NCU A−1160)3質量部を加え、更に無機物フィラーとしてシリカフィラー(日本アエロジル株式会社製、商品名:R972V)32質量部を加えて撹拌混合した後、ビーズミルにより分散処理を行った。
更に、高分子量成分として、エポキシ基含有アクリル系共重合体(ナガセケムテックス株式会社製、商品名:HTR−860P−3)200質量部及び硬化促進剤として1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、商品名:キュアゾール2PZ−CN)0.5質量部を加えて撹拌混合し、接着剤層形成用ワニスを調製した。
【0081】
(実施例1)
上記接着剤層形成用ワニスを、剥離基材である膜厚50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンピューレックスA31)上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥を行い、膜厚10μmの未硬化状態の接着剤層を形成した(第1の積層工程)。
得られた接着剤層に対して、剥離基材への切り込み角度が90°となるように調節して直径210mmの円形プリカット加工を行った(第1の切断工程)。
粘着フィルム層は、放射線重合性成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名:カヤラッドDPHA)63質量部,光重合開始剤として2−メチル−1(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン(Ciba Speciality Chemicals社製、商品名:イルガキュア907)5質量部、ワニス調整用溶媒として、シクロヘキサノン32質量部を加え、60分以上攪拌混合し、粘着フィルム層形成用ワニスを調製した。この粘着フィルム層形成用ワニスを膜厚38μmの基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名:テイジンピューレックスA53)上に塗布し、110℃で10分間加熱乾燥を行い、得られた膜厚50μmの粘着フィルム層を、ポリエチレン製フィルム(膜厚100μm)と貼り合せ、基材フィルム付粘着フィルム層を得た。
【0082】
その後、接着剤層の不要部分を除去し、基材フィルム付粘着フィルム層の接着剤層と接する部分、直径230mmの部位に室温(25℃)、線圧1kg/cm、速度0.5m/分の条件で粘着フィルム層を最大深さ3.1μm、平均深さ:Rz=2.3μmのシボ加工を施したロールで圧延しながら凹凸処理を施した。さらに、基材フィルム付粘着フィルム層が接着剤層と接するように、貼付けた(第2の積層工程)。そして、基材フィルム付粘着フィルム層に対して、接着剤層と同心円状に直径290mmの円形プリカット加工を行い、粘着フィルム層の不要部分を除去した(第2の切断工程)。これにより、図1及び図2に示すような接着シートを得た。
【0083】
(実施例2)
第2の積層工程での基材フィルム付粘着フィルム層の接着剤層と接する直径230mmの部位に最大深さ5.5μm、平均深さ:Rz=3.8μmのシボ加工を施したロールを用いて凹凸処理を施した以外は実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0084】
(実施例3)
第2の積層工程での基材フィルム付粘着フィルム層の接着剤層と接する直径230mmの部位に最大深さ5.5μm、平均深さ:Rz=3.8μmのシボ加工をタテ方向,ヨコ方向ともに300μm間隔施したロールを用いて凹凸処理を施した以外は実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0085】
(比較例1)
第2の積層工程基材フィルム付粘着フィルム層の接着剤層と接する直径230mmの部位にシボ加工を施していないこと以外は実施例1と同様にして接着シートを得た。
【0086】
<評価試験>
上記の実施例1〜3及び比較例1で得た接着シートを、円形形状を有する積層体(剥離基材付き)の数が300枚になるように巻き取り、接着シートロールを作製した。得られた接着シートロールを2週間冷蔵庫内(5℃)で放置した。その後、接着シートロールを室温に戻してからロールを解き、接着剤層及び粘着フィルム層を剥離基材から剥離し、これを接着剤層側から図3に示すように半導体ウェハに貼り付けた。さらに5mm角にダイシングした後、24時間風乾した。さらに、紫外線を粘着フィルム層側から照射した。その後キャノンマシナリー株式会社製ダイボンダー(BESTEM−D02)を用いてピックアップ試験を実施した。
上記の実施例1〜3及び比較例1で得た接着シートの接着剤層と粘着フィルム層界面の密着力を、引き剥がし装置を用い、接着剤層側を支持した状態で、引っ張り速度50mm/分で引っ張り、粘着フィルム層を180度方向に引き剥がし、その剥離強度を5点測定して、それを平均して求めた。
その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
表1に示されるように、本発明になる接着シート(実施例1〜3)によれば、比較例の接着シート(比較例1)と比較して、該接着剤層と粘着フィルム層の界面が剥がれず、素子を破損してしまうことを十分に抑制することができることが明らかである。すなわち、本発明になる接着シート(実施例1〜3)は、上記半導体素子をピックアップし、搭載する基板に熱圧着する工程において、ピックアップ成功率の低下を十分に抑制することができることが確認された。
【符号の説明】
【0089】
1:剥離基材、2:接着剤層、3:粘着フィルム層、4:凹凸を有する処理が施された領域、5:半導体ウェハ、6:ウェハリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離基材と、前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層と、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように設けられた粘着フィルム層とを有し、前記粘着フィルム層の表面は、前記接着剤層と接する領域の全部もしくは一部に、凹凸を有する処理が施された領域を有する、接着シート。
【請求項2】
粘着フィルム層の表面のうち、凹凸処理が施された領域における接着剤層との密着力が、4N/mよりも大きく、20N/m以下である、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
接着剤層が、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、官能性モノマーに由来する構造単位を有する重量平均分子量が10万以上である重合体と、を含む、請求項1または2に記載の接着シート。
【請求項4】
重合体が、グリシジル基含有アクリル共重合体及びグリシジル基含有メタクリル共重合体の少なくとも一方を含み、かつ、接着剤層全体に対するエポキシ樹脂の含有量が5質量%以上50質量%以下である、請求項3に記載の接着シート。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の接着シートの製造方法であって、
剥離基材と前記剥離基材の表面上に部分的に設けられた接着剤層とを有する接着剤層付き剥離基材を準備する工程と、
前記接着剤層と接する領域の全部もしくは一部に、凹凸を有する処理が施された領域を有する粘着フィルム層を準備する工程と、
前記接着剤層付き剥離基材において、前記接着剤層を覆い、且つ、前記接着剤層が設けられた領域の周囲で前記剥離基材に接するように前記粘着フィルム層を設ける工程と、
前記粘着フィルム層における前記剥離基材と接していない面から前記剥離基材に達するまで切り込みを入れ、切り込まれた前記粘着フィルム層の一部を除去する工程と、
前記所定の平面形状の接着剤層と、前記接着剤層を覆い且つ前記接着剤層の周囲で前記剥離基材に接する粘着フィルム層とからなる、所定の形状の積層体とを形成する工程と、
を含む、接着シートの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項に記載の接着シート又は請求項5に記載の接着シートの製造方法により得られた接着シートにおいて、接着剤層及び粘着フィルム層を含んで構成された積層体を剥離基材から剥離し、前記積層体における前記接着剤層側の面を半導体ウェハに貼り付けて積層体付き半導体ウェハを得る工程と、
前記積層体付き半導体ウェハを、前記半導体ウェハ側の面から前記接着剤層と前記粘着フィルム層との界面まで切断する工程と、
切断された前記半導体ウェハ及び前記接着剤層を、前記粘着フィルム層から剥離し、接着剤層付き半導体素子を得る工程と、
前記接着剤層付き半導体素子における前記半導体素子を、前記接着剤層を介して被着体に接着する工程と、
を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
被着体が、半導体素子搭載用の支持部材、又は、他の半導体素子である請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−82336(P2012−82336A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230470(P2010−230470)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】