説明

搬送システム

【課題】被搬送物を移載するための機構が設けられていない中継バッファを介して、その上面に被搬送物を載置して軌道上を走行する台車と、その下端において被搬送物を把持し、軌道に懸垂された状態で走行する台車との間で、被搬送物の受け渡しを行う
【解決手段】グリッパ47によりFOUP35を把持したOHT搬送台車16は、中継バッファ5に対向する位置において昇降ベルト46によりグリッパ47を降下させ、棚板21a、21bの上面に跨るようにFOUP35を載置する。OHS搬送台車8は、中継バッファ5に対向する位置において昇降テーブル64を上昇させて棚板21a、21bの間を通過させることによってその上面にFOUP35を載置し、その後、中継バッファ5に対向しない位置まで移動させてから昇降テーブル64を降下させることにより、FOUP35をFOUP載置台60に載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に沿って移動する搬送台車によって被搬送物を搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路素子は、CVDによる薄膜形成、イオン注入、フォトリソグラフィー、エッチング、検査等、複数の処理工程を経て、最終製品が製造される。そして、これら複数の処理工程を行うために、半導体基板をFOUP(被搬送物)に収納し、搬送装置によって各処理工程間を搬送する。
ここで、特許文献1には、敷設された軌道上を台車が走行することによってカセット(被搬送物)を搬送する自動倉庫システムが記載されている。また、特許文献2には、敷設された軌道に懸垂された台車が、軌道に沿って移動することによってワーク(被搬送物)を搬送し、2つの台車間でワークの受け渡しを行うために、一方の台車がワークをストレージラック部材(中継バッファ)にワーク載置し、他方の台車がストレージラック部材に載置されたワークを摘出する。
これらの技術を組み合わせれば、FOUPを搬送するための搬送装置において、その上面にFOUPを載置し、軌道上を走行するOHS(Over Head Shuttle)搬送台車と、その下端においてFOUPを把持し、軌道から懸垂された状態で走行するOHT(Over Head Transport)搬送台車の両タイプの搬送台車を搬送装置に組み入れ、OHS搬送台車が走行する軌道とOHT搬送台車が走行する軌道との間にFOUPを一時的に載置しておくことが可能な棚を有する中継バッファを設け、例えば、処理工程間のFOUPの搬送をOHS搬送台車に処理工程内のFOUPの搬送をOHT搬送台車に分担させ、OHS搬送台車とOHT搬送台車との間のFOUPの受け渡しを、中継バッファを介して行うことにより、搬送装置全体における搬送効率を向上させることが可能である。また、半導体製造の各処理工程に要する時間は処理工程毎に異なるので、ある処理工程の後、次の処理工程を行うまでに待ち時間がある場合には、FOUPを中継バッファに載置しておき、この間にOHS搬送台車及びOHT搬送台車を異なるFOUPの搬送に割り当てることにより、OHS搬送台車及びOHT搬送台車を有効利用することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−130709号公報
【特許文献2】特開平10−109887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、OHT搬送台車においては、特許文献2に記載されているのと同様に、その下端のグリッパで把持したFOUPを降下させることにより、中継バッファにFOUPを載置し、中継バッファに載置されたFOUPをグリッパで把持してからグリッパを上昇させることにより中継バッファからFOUPを摘出することができるのに対して、OHS搬送台車においては、特許文献1と同様にして、中継バッファへのFOUPの載置及び中継バッファからのFOUPの摘出を行うためには、中継バッファにFOUPの移載を行うための機構が必要となってしまう。これにより、中継バッファの構造が複雑になってしまう。
【0005】
本発明の目的は、中継バッファに被搬送物を移載するための機構を設けることなく、その上面に被搬送物を載置して軌道上を走行する台車と、その下端において被搬送物を把持し、軌道に懸垂された状態で走行する台車との間で、被搬送物の受け渡しを行うことが可能な搬送システムを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
天井に敷設された第1軌道と、第1軌道に懸垂された状態で移動することによって被搬送物を搬送する第1搬送台車と、第1軌道の下方に敷設された第2軌道と、第2軌道に沿って第2軌道上を移動することによって被搬送物を搬送する第2搬送台車と、上下方向に関して第1軌道と第2軌道とが重なる位置において、第1軌道と第2軌道との間に配置され、被搬送物が載置される中継バッファとを備え、中継バッファは、上下方向に関して同じ位置に、第2軌道の延在方向と直交する方向に関して第2軌道を挟んで互いに離隔して配置され、その上面に被搬送物が載置される2つの棚部材を有しており、第1搬送台車は、上下方向に移動し、2つの棚部材に跨るように被搬送物を載置し、中継バッファに載置された被搬送物を摘出する第1授受手段を有しており、第2搬送台車は、その上面に前記被搬送物を載置する載置面を有し、上下方向に移動する第2授受手段を有し、第2授受手段は、2つの棚部材の間を通過して上下方向に移動可能に構成されている。
【0007】
これによると、第1搬送台車は、中継バッファに対向する位置において第1授受手段を上下方向に移動させることにより、中継バッファへの被搬送物の載置及び中継バッファからの被搬送物の摘出を行うことができ、第2搬送台車は、中継バッファに対向する位置において第2授受手段を棚部材よりも上方まで移動させることによって中継バッファに載置された被搬送物を摘出することができるとともに、中継バッファ近傍で第2授受手段をその上面が2つの棚部材よりも上方にくるように上方に移動させてから、中継バッファに対向する位置まで移動し、第2授受手段を下方に移動させることにより、第2授受手段の上面に載置された被搬送物を中継バッファに載置することができる。つまり、中継バッファを介して、第1搬送台車と第2搬送台車との間で被搬送物の授受を行うことができる。
【0008】
さらに、中継バッファに、第1搬送台車及び第2搬送台車との間で被搬送物の授受を行うための装置を設ける必要ないので、中継バッファの構成が簡略化される。
【0009】
また、本発明の搬送システムにおいては、中継バッファは、上下方向に関して、第1軌道と第2軌道とが平行に延びている部分に重なる領域に配置されていてもよい。これによると、中継バッファに被搬送物を載置する際、及び、中継バッファから被搬送物を摘出する際に、被搬送物の向きを変更する必要がないので、第1搬送台車及び第2搬送台車と中継バッファとの間の被搬送物の授受を効率よく行うことができる。
【0010】
また、本発明の搬送システムにおいては、2つの棚部材の少なくとも一方に、被搬送物の中継バッファに対する位置決めを行う位置決め手段を有していてもよい。これによると、中継バッファにおいて、被搬送物が一定の位置に載置されるので、第1搬送台車及び第2搬送台車は中継バッファから確実に被搬送物を摘出することができる。
【0011】
また、本発明の搬送システムにおいては、棚部材が、その上面に複数の被搬送物を載置可能であってもよい。これによると、第1搬送台車と第2搬送台車との間の被搬送物の授受をさらに効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
図1は本発明の実施の形態に係る搬送システムの概略平面図である。図2は図1を矢印Aの方向から見たときの側面図である。図3は図2を矢印Bの方向から見たときの側面図である。図4は図2、図3の中継バッファ5の平面図である。図5は図1を矢印Cの方向から見たときの側面図である。図6は図5の中継バッファ7の平面図である。図7は図1を矢印Dの方向から見たときの側面図である。
【0014】
搬送システム1は、半導体を製造するためのクリーンルーム内に設けられたものである。クリーンルームには、複数のセル20が設けられており、各セル20おいて半導体を製造するための各処理工程が行われる。各セル20には複数の半導体処理装置17が設けられており、各半導体処理装置17において半導体基板に各処理工程に必要な処理が施される。ここで、半導体基板は、箱状のFOUP(Front-Opening Unified Pod、被搬送物)35内に収納された状態で以下に説明するように、セル20間及び半導体処理装置17を搬送される。
【0015】
搬送システム1は、図1〜図6に示すように、OHS搬送台車走行軌道(第2軌道)9、OHT搬送台車走行軌道(第1軌道)10、OHS搬送台車(第2搬送台車)8、OHT搬送台車(第1搬送台車)16、及び、中継バッファ5、6、7を有している。そして、搬送システム1においては、FOUP35を載置したOHS搬送台車8及びOHT搬送台車16が、それぞれ、OHS搬送台車走行軌道9及びOHT搬送台車走行軌道10に沿って移動することによってFOUP35が搬送される。また、中継バッファ5、6、7においてOHS搬送台車8とOHT搬送台車16との間でFOUP35の受け渡しが行われる。
【0016】
OHS搬送台車走行軌道9は、懸吊部材30によって天井から懸垂されたレール支持部材32に支持された平面視で環状の軌道であり、その上をOHS搬送台車8が走行する。
【0017】
OHT搬送台車走行軌道10は、懸吊部材27によって天井から懸垂されたレール支持部材32の下面に固定された、OHS搬送台車走行軌道9の上方に配設された軌道であり、OHT搬送台車16は、OHT搬送台車走行軌道10から懸吊された状態でOHT搬送台車走行軌道10に沿って移動する。OHT搬送台車走行軌道10は、工程間軌道11、複数の工程内軌道12及び分岐軌道13、14、19を有している。
【0018】
工程間軌道11は、複数のセル20に沿って各セル20に隣接して環状に配設された軌道であり、OHT搬送台車16がFOUP35を把持しつつ工程間軌道11に沿って移動することによって、FOUP35が各セル20に搬送される。工程内軌道12は、各セル20に含まれる複数の半導体処理装置17に沿って各半導体処理装置17に隣接して配設された環状の軌道であり、OHT搬送台車16がFOUP35を把持しつつ工程内軌道12に沿って移動することにより、FOUP35が各半導体処理装置17に搬送される。
【0019】
分岐軌道13は工程間軌道11から分岐し、工程間軌道11と工程内軌道12とを接続する軌道であり、OHT搬送台車16は、分岐軌道13に沿って移動することによって工程間軌道11と工程内軌道12との間を移動する。分岐軌道14は、各工程内軌道12から分岐し、FOUP35を一時的に保管しておくための簡易バッファ15に接続された軌道であり、OHT搬送台車16は、分岐軌道14に沿って簡易バッファ15まで移動して簡易バッファ15へのFOUP35の載置及び簡易バッファ15からのFOUP35の摘出を行う。分岐軌道19は、工程間軌道11から分岐し、FOUP35を一時的に保管しておくストッカ18に接続された軌道であり、OHT搬送台車16は、分岐軌道19に沿ってストッカ18まで移動し、ストッカ18へのFOUP35の載置及びストッカ18からのFOUP35の摘出を行う。
【0020】
OHS搬送台車8は、図3に示すように、2次側鉄心56、1次側コイル鉄心52、走行輪53、昇降軸59、荷台58、昇降テーブル(第2授受手段)64を有している。
【0021】
2次側鉄心56には、OHS搬送台車走行軌道9に設けられた1次側給電線57から非接触で電力が供給される。1次側コイル鉄心52は2次側鉄心56に電力が供給されたときに磁力が発生する。そして、この磁力と、OHS搬送台車走行軌道9にその延在方向に沿って配設された永久磁石51の磁力とによって、OHS搬送台車8には、OHS搬送台車走行軌道9の延在方向に推力が作用する。走行輪53は、OHS搬送台車8に推力が作用したときに回転し、これによりOHS搬送台車8はOHS搬送台車走行軌道9に沿ってスムーズに移動する。
【0022】
昇降軸59はOHS搬送台車8の略中央部において上下方向に延びており、昇降テーブル64を上下方向に昇降させる。荷台58はFOUP35を載置するための台であり、その上面に設けられたFOUP載置台60の上面にFOUP35が載置される。昇降テーブル64は昇降軸59によって上下方向に昇降される。昇降テーブル64の上面(載置面)には、FOUP35が載置可能になっている。また、昇降テーブル64は最も下方まで降下したときに、FOUP載置台60に形成された収納スペース62内に収納され、このとき昇降テーブル64の上面とFOUP載置台60の上面とが同じ高さとなる。
【0023】
図8は、FOUP載置台60及び昇降テーブル64の平面図である。図8に示すように、FOUP載置台60の上面には、上方に突出した3つのキネマティックピン63が設けられている。3つのキネマティックピン63は、平面視で略正三角形の3つの頂点に位置するように配置されている。
【0024】
また、図8に示すように、昇降テーブル64の上面には、上方に突出した3つのキネマテッィクピン65が設けられている。3つのキネマティックピン65は、平面視で3つのキネマテッィクピン63を頂点とする正三角形よりも一回り小さい正三角形の頂点に位置するように配置されている。そして、3つのキネマティックピン63及び3つのキネマティックピン65をそれぞれ頂点とする上記2つの正三角形の重心は一致している。
【0025】
図9は、FOUP35の底面図である。図9に示すように、FOUP35の底面には、3つのキネマティックピン63及び3つのキネマティックピン65にそれぞれ係合する、3つの窪み37及び3つの窪み38が設けられている。
【0026】
そして、FOUP35がFOUP載置台60の上面に載置されているときには、3つのキネマティックピン63及び3つのキネマティックピン65がそれぞれ3つの窪み37及び3つの窪み38に係合することにより、FOUP35はFOUP載置台60に対して位置決めされて載置されるとともに、その位置がずれるのが防止されている。一方、FOUP載置台60の上面にFOUP35が載置された状態で昇降テーブル64が上昇したときには、3つのキネマティックピン65が3つの窪み38に係合することにより、FOUP35は、昇降テーブル64に対して位置決めされるとともに、その位置がずれるのが防止される。
【0027】
図3に戻って、OHT搬送台車16は、2次側鉄心42、1次側コイル鉄心40、走行輪41、分岐ローラ43、昇降装置45、グリッパ(第1授受手段)47を有している。
【0028】
2次側鉄心42は、OHT搬送台車走行軌道10に設けられた1次側給電線31から非接触で電力が供給される。1次側コイル鉄心40は2次側鉄心42に電力が供給されたときに磁力が発生し、この磁力と、OHT搬送台車走行軌道10にその延在方向に沿って配設された永久磁石39の磁力とによって、OHT搬送台車16にはOHT搬送台車走行軌道10の延在方向に推力が作用する。走行輪41は、OHT搬送台車16に推力が作用したときに回転し、これによりOHT搬送台車8は、OHT搬送台車走行軌道10に沿ってスムーズに移動する。
【0029】
分岐ローラ43は、OHT搬送台車16が工程間軌道11から分岐軌道13、19に移動する際、及び、工程内軌道12から分岐軌道13、14に移動する際に、OHT搬送台車走行軌道10に形成された分岐ガイドレール28に当接することによって回転し、これにより、OHT搬送台車16は、工程間軌道11、工程内軌道12から分岐軌道13、14、19にスムーズに移動する。
【0030】
昇降装置45は、その下面に設けられた昇降ベルト46を駆動させて、昇降ベルト46の下端に取り付けられたグリッパ47を昇降させる。グリッパ47はその下面においてFOUP35を把持することができるように構成されており、FOUP35を把持したグリッパ47を降下させることにより、中継バッファ5、6、7、簡易バッファ15、18及び半導体製造装置17にFOUP35を載置することができ、これらに載置されたFOUP35をグリッパ47により把持してからグリッパ47を上昇させることによりFOUP35を摘出することができる。
【0031】
中継バッファ5、6は、図1、2、4、5、6に示すようにOHS搬送台車走行軌道9とOHT搬送台車走行軌道とが平面視で平行に重なる位置において、上下方向に関して、OHS搬送台車走行軌道9とOHT搬送台車走行軌道10との間に配置されている。中継バッファ7は、図1、図7に示すように、OHS搬送台車走行軌道9とOHT搬送台車走行軌道とが平面視で直交に重なる位置において、上下方向に関して、OHS搬送台車走行軌道9とOHT搬送台車走行軌道10との間に配置されている。
【0032】
中継バッファ5は、2枚の棚板21a、21b及び2枚の位置決めプレート(位置決め手段)22a、22bを有している。なお、棚板21aと位置決めプレート22a、及び、棚板21bと位置決めプレート22bとが、それぞれ、本発明に係る棚部材に相当する。2枚の棚板21a、21bは、懸吊部材24によりOHT搬送台車走行軌道10から懸垂された略長方形の平面形状を有する板状体であり、互いに同じ高さに、図4の上下方向(OHS搬送台車走行軌道9の延在方向と直交する方向)に関して、OHS搬送台車走行軌道9を挟んで互いに離隔して配置されている。ここで、棚板21aと棚板21bとの離隔距離は、図4の上下方向に関するOHS搬送台車8の昇降テーブル64の長さよりも大きくなっている。これにより、前述した昇降テーブル64は、棚板21aと棚板21bとの間を通過して上下方向に移動可能となる。
【0033】
位置決めプレート22a、22bは、棚板21a、21bよりも小さい略長方形の平面形状を有する板状体であり、それぞれ棚板21a、21bの上面に配置されている。位置決めプレート22a、22bの上面には、それぞれ1つ及び2つの、上方に突出したキネマティックピン23が形成されており、これら3つのキネマティックピン23は平面視で正三角形の頂点に位置するように配置されている。
【0034】
そして、OHS搬送台車8及びOHT搬送台車16により、中継バッファ5の上面にFOUP35が載置されるときには、3つのキネマティックピン23とFOUP35の底面に形成された3つ窪み37とが係合することにより、FOUP35が中継バッファ5に対して位置決めされる。このとき、FOUP35は、2枚の棚板21a、21bに跨って載置されることになり、平面視で3つの窪み38が2つの棚板21a、21bの間に位置する。これにより、昇降テーブル64が棚板21a、21bの間を通過して上昇してきたときに、3つのキネマティックピン65と3つの窪み38とが係合する。
【0035】
また、位置決めプレート22a、22bには、長手方向の両端部に、その長手方向及び短手方向に延びた貫通孔33、34が形成されている。これにより、位置決めプレート22a、22bをその長手方向が図4の左右方向と平行になるように図4の上下方向及び左右方向に移動させ、貫通孔33及び貫通孔34のいずれかの部分と棚板21a、21bに形成された図示しないネジ穴とが重なるように配置することにより、位置決めプレート22a、22bを棚板21a、21bに対して位置決めし、位置決めプレート22a、22bを棚板21a、21bに固定することができる。
【0036】
中継バッファ6は、OHT搬送台車走行軌道10との位置関係以外は中継バッファ5と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0037】
中継バッファ7は、図5、図6に示すように、2枚の棚板71a、71b及び2枚の位置決めプレート(位置決め手段)72a、72bを有している。なお、棚板71aと位置決めプレート72a、及び、棚板71bと位置決めプレート72bが、それぞれ、本発明に係る棚部材に相当する。2枚の棚板71a、71bは、懸吊部材24によりOHT搬送台車走行軌道10から懸垂された、長手方向に関して棚板21a、21bの約2倍の長さを有する板状体であり、互いに同じ高さに、図6の上下方向(OHS搬送台車走行軌道9の延在方向と直交する方向)に関して、OHT搬送台車走行軌道9を挟んで互いに離隔して配置されている。ここで、棚板71aと棚板71bとの間の離隔距離は、図6の上下方向に関するOHS搬送台車8の昇降テーブル64の長さよりも大きくなっている。これにより、前述した昇降テーブル64は、棚板71aと棚板71bとの間を通過して上下方向に移動可能となる。
【0038】
位置決めプレート72aは、その長手方向に関して位置決めプレート22aの約2倍の長さを有するプレートであり、棚板71aの上面に配置されている。位置決めプレート72bは、その長手方向に関して位置決めプレート22bの約2倍の長さを有する板状体であり、棚板71bの上面に配置されている。位置決めプレート72a、72bには、それぞれ、2つ及び4つのキネマティックピン23が形成されており、これら6つのキネマティックピン23のうちの3つずつが、位置決めプレート72a、72bの長手方向に関して対称となるように配置される2つの正三角形の頂点に位置するように配置されている。
【0039】
そして、OHS搬送台車8及びOHT搬送台車16により、中継バッファ7の上面にFOUP35が載置されるときには、6つのキネマティックピン23の3つとFOUP35の底面に形成された窪み37とが係合することにより、FOUP35が中継バッファ5に対して位置決めされる。そして、6つのキネマティックピン23のうちの3つずつとFOUP35の窪み37とにより位置決めされて、棚板71a、71bの上面にFOUP35が配置されることにより、中継バッファ7には2つのFOUP35を載置することが可能となっている。また、このとき、FOUP35は、2枚の棚板71a、71bに跨って載置されることになり、平面視で3つの窪み38が2つの棚板71a、71bの間に位置する。これにより、昇降テーブル64が棚板71a、71bの間を通過して上昇してきたときに、3つのキネマティックピン65と3つの窪み38とが係合する。
【0040】
次に、本実施形態において、中継バッファ5、6、7を介して、OHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行う方法について説明する。図10は中継バッファ5を介して、OHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行う過程を示す模式図である。
【0041】
OHT搬送台車16からOHS搬送台車8にFOUP35を移載するには、図10(a)に示すように、FOUP35を搬送しているOHT搬送台車16を、中継バッファ5に対向する位置まで移動させ、図10(b)に示すように、昇降ベルト46によりグリッパ47を降下させ、FOUP35を棚板21の上面に載置する。
【0042】
次に、図10(c)に示すように、OHS搬送台車8が中継バッファ5に対向する位置まで移動させ、この位置で、図10(d)に示すように、昇降テーブル64をその上面が棚板21の上面よりも若干高い位置にくるまで上昇させる。これにより、FOUP35は昇降テーブル64の上面に載置される。この状態でOHS搬送台車8は中継バッファ5と対向しない位置まで移動してから、昇降テーブル64を降下させる。これにより、図10(e)に示すように、FOUP35がFOUP載置台60の上面に載置される。以上のようにして、OHT搬送台車16からOHS搬送台車8へのFOUP35の移載が行われる。
【0043】
OHS搬送台車8からOHT搬送台車16にFOUP35を移載する際には、これとは逆の動作を行う。すなわち、図10(e)に示すように、FOUP移載台60の上面にFOUP35を載置したOHS搬送台車8を中継バッファ5の近傍まで移動させ、その位置で昇降テーブル64を上昇させてから、図10(d)に示すように、OHS搬送台車8を中継バッファ5に対向する位置まで移動させる。そして、図10(c)に示すように、昇降テーブル64を降下させることによって、FOUP35を棚板21の上面に載置する。
【0044】
次に、OHT搬送台車16を中継バッファ5に対向する位置まで移動させてから、図10(b)に示すように、昇降ベルト46によってグリッパ47を降下させ、グリッパ47にFOUP35を把持させる。そして、図10(a)に示すように、昇降ベルト46によりグリッパ47を上昇させる。以上のようにして、OHS搬送台車8からOHT搬送台車16へのFOUP35の移載が行われる。
【0045】
ここで、中継バッファ5は、2枚の棚板21a、21bがOHS搬送台車走行軌道10を挟んで互いに離隔して配置されており、昇降テーブル64がそれらの間を通過して昇降可能となっているので、上述したように、OHT搬送台車16は昇降ベルト46及びグリッパ47により、OHS搬送台車8は昇降テーブル64により、それぞれ、中継バッファ5へのFOUP35の移載及び中継バッファ5からのFOUP35の摘出を行うことができる。したがって、中継バッファ5にはFOUP35を移載するための機構を設ける必要がなく、棚板21a、21bの上面に位置決めプレート22a、22bが配置された簡単な構成とすることができる。
【0046】
また、中継バッファ5に対向する位置においては、OHT搬送台車走行軌道10とOHS搬送台車走行軌道9とが平行になっているため、棚板21a、21bの上面にFOUP35を載置する際にその向きを変更する必要がなく、FOUP35の移載を効率よく行うことができる。
【0047】
中継バッファ6、7を介してOHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行う方法も上述したのと同様である。ただし、中継バッファ6を介してOHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行う場合には、中継バッファ6に対向する位置においてOHS搬送台車走行軌道9とOHT搬送台車走行軌道10とが直交しているため、FOUP35を平面に平行に90°回転させてから棚板21a、21bの上面にFOUP35を載置する。
【0048】
また、中継バッファ7を介してOHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行う場合には、OHS搬送台車8は、OHS搬送台車8の進行方向に関して前方に配置された3つのキネマティックピン23によって位置決めされたFOUP35が棚板71a、71bの上面に載置されているときに、OHS搬送台車の進行方向に関して後方に配置された3つのキネマティックピン23によって位置決めされて棚板71a、71bに載置されたFOUP35を摘出すること、及び、OHS搬送台車8の進行方向に関して後方に配置された3つのキネマティックピン23によって位置決めされたFOUP35が棚板71a、71bの上面に載置されているときに、OHS搬送台車8の進行方向に関して前方に配置された3つのキネマティックピン23によって位置決めされるFOUP35を棚板71a、71bに載置することが禁止されている。これにより、FOUP35同士が衝突してしまうのが防止される。
【0049】
以上に説明した実施の形態によると、OHT搬送台車16は、中継バッファ5、6、7に対向する位置において昇降ベルト46によりグリッパ47を上下方向に移動させることにより、中継バッファ5、6、7へのFOUP35の載置、及び、中継バッファ5、6、7からのFOUO35の摘出を行うことができ、OHS搬送台車8は、中継バッファ5、6、7に対向する位置において昇降テーブル64を上昇させることによって中継バッファ5、6、7に載置されたFOUP35を摘出することができるとともに、中継バッファ5、6、7近傍で、昇降テーブル64をその上面が2つの棚板21a、21bよりも上方に来るまで上昇させ、その状態で中継バッファ5、6、7に対向する位置まで移動してから昇降テーブル64を下方に移動させることにより、昇降テーブル64の上面に載置されたFOUP64を中継バッファ5、6、7に載置することができる。つまり、中継バッファ5、6、7を介して、OHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行うことができる。
【0050】
さらに、中継バッファ5、6、7に、OHT搬送台車16及びOHS搬送台車8との間でFOUP35の受け渡しを行うための機構を設ける必要ないので、中継バッファ5、6、7の構成を棚板21a、21b、71a、71bの上面に位置決めプレート22a、22bを配置した簡単な構成とすることができる。
【0051】
また、中継バッファ5、7は、上下方向に関して、OHT搬送台車走行軌道10とOHS搬送台車走行軌道9とが平行に延びている部分に重なる領域に配置されているので、中継バッファ5、7にFOUP35を載置する際、及び、中継バッファ5、7からFOUP35を摘出する際に、FOUP35の向きを変更する必要がないので、OHT搬送台車16及びOHS搬送台車8と中継バッファ5、7との間のFOUP35の受け渡しを効率よく行うことができる。
【0052】
また、FOUP35の底面には窪み38が形成されており、中継バッファ5、6、7においては、棚板21a、21b、71a、71bの上面に、キネマティックピン23が形成された位置決めプレート22a、22bが配置されているため、FOUP35を中継バッファ5、6、7に載置する際に、窪み38がキネマティックピン23に係合することにより、FOUP35が中継バッファ5、6、7に対して位置決めされて載置される。
【0053】
また、中継バッファ7には、2つの被搬送物を載置することができるので、OHT搬送台車16とOHS搬送台車8との間のFOUP35の受け渡しをさらに効率よく行うことができる。
【0054】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0055】
本実施の形態においては、中継バッファ5、7に対向する位置において、OHT搬送台車走行軌道10とOHS搬送台車走行軌道9とが平行に配設されており、中継バッファ6に対向する位置において、OHT搬送台車走行軌道10とOHS搬送台車走行軌道9とが直交するように配設されていたが、中継バッファ5、6、7と対向する位置において、OHT搬送台車走行軌道10とOHS搬送台車走行軌道9とがこれらとは異なる角度で交差していてもよい。この場合には、両者の交差する角度に合わせて、FOUP35を回転させてから、FOUP35を中継バッファ5、6、7に載置する。
【0056】
また、本実施の形態においては、位置決めプレート22a、22b及び72a、72bの両方にキネマティックピン23が設けられていたが、位置決めプレート22a、22bのいずれか一方、及び、位置決めプレート72a、72bのいずれか一方にのみ、それぞれキネマティックピン23が設けられていてもよい。
【0057】
また、本実施の形態においては、中継バッファ7は、2個のFOUP35を載置することができるものであったが、3個以上のFOUP35を載置することが可能なものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係る搬送システムの概略平面図である。
【図2】図1を矢印Aの方向から見たときの側面図である。
【図3】図2を矢印Bの方向から見たときの側面図である。
【図4】図2、3の中継バッファの平面図である。
【図5】図1を矢印Cの方向から見たときの側面図である。
【図6】図5の中継バッファの平面図である。
【図7】図1を矢印Dの方向から見たときの側面図である。
【図8】OHS搬送台車の上面図である。
【図9】FOUPの底面図である。
【図10】OHT搬送台車とOHS搬送台車との間でFOUPの受け渡しを行う過程を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
5、6、7 中継バッファ
8 OHS搬送台車
9 OHS搬送台車走行軌道
10 OHT搬送台車走行軌道
16 OHT搬送台車
21a、21b 棚板
22a,22b 位置決めプレート
23a、23b、23c キネマティックピン
37、38 窪み
47 グリッパ
64 昇降テーブル
71a、71b 棚板
72a、72b 位置決めプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井に敷設された第1軌道と、
前記第1軌道に沿って懸垂された状態で移動することによって前記被搬送物を搬送する第1搬送台車と、
前記第1軌道の下方に敷設された第2軌道と、
前記第2軌道に沿って前記第2軌道上を移動することによって前記被搬送物を搬送する第2搬送台車と、
上下方向に関して前記第1軌道と前記第2軌道とが重なる位置において、前記第1軌道と前記第2軌道との間に配置され、前記被搬送物が載置される中継バッファとを備え、
前記中継バッファは、上下方向に関して同じ位置に、前記第2軌道の延在方向と直交する方向に関して前記第2軌道を挟んで互いに離隔して配置され、その上面に前記被搬送物が載置される2つの棚部材を有しており、
前記第1搬送台車は、上下方向に移動し、前記2つの棚部材に跨るように前記被搬送物を載置し、前記中継バッファに載置された前記被搬送物を摘出する第1授受手段を有しており、
前記第2搬送台車は、その上面に前記被搬送物を載置する載置面を有し、上下方向に移動する第2授受手段を有し、
前記第2授受手段は、前記2つの棚部材の間を通過して上下方向に移動可能となっていることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記中継バッファは、上下方向に関して、前記第1軌道と前記第2軌道とが平行に延びている部分に重なる領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記2つの棚部材の少なくとも一方に、前記被搬送物の前記中継バッファに対する位置決めを行う位置決め手段を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記棚部材が、その上面に複数の前記被搬送物を載置可能であることを特徴とする請求項11〜3のいずれか1項に記載の搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−100835(P2008−100835A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286607(P2006−286607)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】