説明

搬送システム

【課題】例えば半導体装置製造用の各種基板などの荷を搬送する搬送システムにおいて、基準データの配信時間をなるべく短くしつつ、基準データを効率よく配信する。
【解決手段】搬送システム(100)は、軌道(1)に係る基準データのうち修正が反映された基準データ部分である修正用データを生成するデータ生成手段(11)と、生成された修正用データをブロードキャスト方式で配信する配信手段(12)と、軌道に沿って荷を搬送可能である搬送車、配信された修正用データを受信する通信手段、受信された修正用データで更新され得る基準データに従って搬送させる搬送制御手段(4)、及び受信される修正用データの通信に係るエラーを検出するエラー検出手段(6)を夫々備える複数の搬送手段(3)と、エラーが検出された場合に、生成された修正用データを再度配信させる再配信制御手段(13)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体装置製造用の各種基板などの荷を搬送する複数の搬送手段を備える搬送システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送システムとして、例えば複数のエリアに夫々配置されており、複数のエリアの内部の各々に存在する搬送車を夫々管理する複数のエリアコントローラを備えるものがある(特許文献1参照)。該搬送システムによれば、経路又はその一部を変更する際に、複数のエリアコントローラのうちの一台のエリアコントローラに記憶される経路情報が更新される。すると、その一台のエリアコントローラから、他のエリアコントローラに、更新された経路情報が送信され、他のエリアコントローラに記憶された経路情報が更新される。すると、複数のエリアコントローラの各々から、それら管理下にある複数の搬送車に、更新された経路情報が送信され、複数の搬送車に記憶された経路情報が更新される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−227058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1によれば、経路情報を搬送車に送信する方法として、1回の通信に1台の搬送車にのみ経路情報を送信したり、複数の搬送車に同時に経路情報を送信することが記載されており、エリアコントローラ及び搬送車間の通信時間が軽減されている。
【0005】
上述した内容に対し、本願発明者が知るところによれば、例えば搬送車1台ずつ送信を行ったのでは、即ち個別配信方式の場合には、通信時間が「搬送車1台に対する送信時間」に「搬送車台数」を乗じた時間となり、通信に長時間を要することになりかねない。
【0006】
また、例えばブロードキャスト方式で複数の搬送車に対して一斉送信を行う場合に、通信不良により通信が途中で途切れると、経路情報の一部が飛んでしまい、完全な経路情報が受信できず、その一斉送信が失敗に終わってしまう。即ち、通信中に一度でも通信不良が生じると、一斉送信が再度実行される。よって、通信不良が度々生じる環境では通信が長期化してしまいかねないという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば地図データ、教示データ等の基準データの配信時間をなるべく短くしつつ、該基準データを効率よく配信可能な搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る搬送システムは上記課題を解決するために、軌道に関する地図を示す地図データを含む基準データに対して、修正が加えられる場合に、前記基準データのうち前記修正が反映された基準データ部分である修正用データを、生成するデータ生成手段と、前記生成された修正用データを、ブロードキャスト方式で配信する配信手段と、複数の搬送手段であって、各々が、前記軌道を走行可能であり且つ荷を搬送可能である搬送車、前記配信された修正用データを受信する通信手段、前記受信された修正用データで更新され得る前記基準データに従う搬送計画で走行し且つ搬送するように、前記搬送車を制御する搬送制御手段、及び前記受信される修正用データの通信に係るエラーを検出するエラー検出手段を備える、前記複数の搬送手段と、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを再度配信するように、前記配信手段を制御する再配信制御手段とを備える。
【0009】
本発明の搬送システムによれば、例えば半導体素子製造の工場内において、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)等の荷は、例えばOHT(Overhead Hoist Transport)、ビークル等の搬送手段によって、例えば製造装置、ストッカ(或いはスタッカ)等の作業装置が一若しくは複数設けられた、例えば天井又は床に敷設されたレール等の軌道上を搬送される。
【0010】
軌道上の全ての搬送手段は、例えば通常、同一の基準データに従う搬送計画で走行しつつ搬送するように、例えばビークル等の搬送車を制御する。その搬送の基準となる基準データに対して、修正或いは調整が加えられる場合に、修正すべき基準データが一斉配信されるが、その配信の方法によっては、配信時間(即ち、通信時間)が長期化してしまいかねない。ここで「搬送計画」とは、例えば軌道上で搬送車が如何に搬送するかを計画することを意味する。
【0011】
しかるに本発明では、例えば複数の搬送手段の走行又は搬送中に、基準データに対して修正が加えられる場合に、先ず、例えばOHVC(Overhead Hoist Vehicle Controller)に含まれるデータ生成手段によって、基準データのうち修正が反映された基準データの部分である修正用データが、生成される。すると、例えばOHVCに含まれる配信手段によって、生成された修正用データがブロードキャスト方式で配信される。ここで「修正用データ」とは、例えば基準データに修正或いは調整を加える、又は基準データを更新するための修正用の基準データであってもよく、走行又は搬送時に実際に運用されるものではない。このような修正用データは、基準データにおいて、1つ生成されてもいいし、複数生成されても構わない。「ブロードキャスト方式」とは、典型的には、配信手段及び複数の搬送手段の各々にある受信手段を収容してなるネットワーク内で、複数の搬送手段の全体に向って配信することを意味する。例えば、複数の搬送手段の各々に備えられた受信手段の個々に割り振られたアドレスを指定するのではなく、全搬送手段にある複数の受信手段の全体を意味する特殊なアドレスを指定することで行われる。
【0012】
上述した配信が行われると、複数の搬送手段の各々において、受信手段を含む通信手段によって、配信された修正用データが受信される。すると、エラー検出手段によって、受信された修正用データの通信に係るエラーが検出される。ここで「通信」とは、例えば配信手段による配信、複数の搬送手段の各々における通信手段による受信、並びに配信手段及び通信手段間の通信等を意味する。このような通信に係る「エラー」とは、例えばノイズ、混信等による配信不能、受信不能、並びに受信された修正用データの読み取り不能等を意味し、そのエラーの検出に伴って、エラーが検出された搬送手段及び修正用データを識別する情報が示されてもよい。
【0013】
上述したエラーが実際に検出された場合に、例えばOHVCに含まれる再配信制御手段によって、配信手段が制御され、修正用データが、例えばブロードキャスト方式又は個別配信方式で、再度配信される。その配信により、複数の搬送手段のうち少なくともエラーが検出された搬送手段において、再度配信された修正用データが再度受信される。その後、遅延なく又は適当なタイミングにて、例えばコントローラ等の搬送制御手段によって、再度受信された修正用データで、例えば搬送手段が有する基準データを置き換えることにより、搬送の基準となる該基準データが更新される。その後は、更新された基準データに従う搬送計画に基づいて、搬送車が制御される。
【0014】
このように、基準データに対して修正が加えられる場合に、修正が加えられた基準データを直接に配信せずに、修正が加えられた基準データの部分である修正用データを、ブロードキャスト方式で配信することにより、その配信に要する時間を最小限に抑える。即ち、例えば通信不良が度々生じる環境であったとしても、配信が失敗に終わった修正用データを示すエラーを検出すると共に、そのエラーに示される修正用データを再度配信することで、再度配信された完全なる修正用データにより搬送手段側で基準データに対して修正が加えられる。従って、基準データ、率直に言えば、基準データを更新可能な修正用データの配信時間を短縮しつつ、基準データを効率よく更新することが可能となる。
【0015】
本発明の搬送システムの一態様では、前記再配信制御手段は、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを、前記複数の搬送手段のうち前記エラーが検出された一の搬送手段に備えられた前記受信手段に対して、個別配信方式で再度配信するように、前記配信手段を制御する。
【0016】
この態様によれば、エラー検出手段によりエラーが実際に検出されると、再配信制御手段によって、配信手段が制御され、データ生成手段による修正用データが、エラーが検出された一の搬送手段に対して、個別配信方式で再度配信される。ここで「個別配信方式」とは、例えば配信手段及び複数の搬送手段の各々にある受信手段を収容してなるネットワーク内で、特定の搬送手段に向って配信することを意味する。例えば、受信手段の個々に割り振られたアドレスを指定することで、行われる。このように、修正用データの配信が失敗した場合に、その修正用データを個別に再度配信することにより、その修正用データを受信すべき一の搬送手段に対して、基準データを確実に更新することが可能となる。
【0017】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記配信手段により前記修正用データの配信が一通り完了された後に、前記配信の進捗を示す進捗値を特定する特定手段を更に備え、前記再配信制御手段は、前記特定された進捗値が所定の閾値より大きい場合に、前記修正用データを個別配信方式で、再度配信するように前記配信手段を制御し、前記特定された進捗値が所定の閾値より小さい場合に、前記修正用データを前記ブロードキャスト方式で再度配信する。
【0018】
この態様によれば、修正用データの配信が一通り完了されると、特定手段によって、進捗値が特定される。ここで「一通り」とは、例えば修正用データが区分けされ、区分けされた修正用データ部分がn回に分けて配信される場合に、第1回目から第n回目までの一連の配信を意味する。「進捗値」とは、例えば全ての修正用データ部分の配信が完了している複数の搬送手段の台数、配信が失敗している修正用データ部分の総数等であってもよい。このような進捗値に対する「特定」とは、例えば無作為に選択された複数の搬送手段における進捗を調査し、その調査の結果を示す進捗値に基づいて、全ての搬送手段における進捗値を算出、推定、又は特定することを意味してもよい。尚、進捗の状況を「調査する」とは、例えば通信手段により受信された修正用データ部分を1つ1つ読み取ってもいいし、通信手段における受信記録を確認してもよい。
【0019】
上述した進捗値が特定されると、再配信制御手段によって、進捗値が所定の閾値より大きい場合に、修正用データが個別配信方式で再度配信される。一方、進捗値が所定の閾値より小さい場合に、修正用データがブロードキャスト方式で再度配信される。ここで「所定の閾値」とは、例えば修正用データの配信を個別配信方式で行うか、ブロードキャスト方式で行うかを判定するための閾値であってもよい。このような閾値は、例えば再度配信すべき修正用データのデータ量、その配信時間、及び個別配信方式で配信されるべき搬送手段の総数等を考慮して設定されてもよい。尚、進捗値が所定の閾値と同値であった場合には、どちらの方式で配信を行っても構わない。尚、再度配信される修正用データは、例えば修正用データのうち、エラーに示される修正用データ部分だけであってもよい。
【0020】
このように、配信の進捗に応じて、配信の方式を切り替えることにより、基準データの通信時間をより短縮しつつ、基準データをより効率よく配信することが可能となる。
【0021】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記配信手段は、前記修正用データを、複数のセグメントに区分けした上で該セグメント毎に順番に配信し、前記エラー検出手段は、前記セグメント毎に前記エラーを検出し、前記再配信制御手段は、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを前記セグメントの単位で再度配信するように、前記配信手段を制御する。
【0022】
この態様によれば、データ生成手段により修正用データが生成されると、配信手段によって、生成された修正用データが複数のセグメントに区分けされ、区分けされたセグメント毎に順番に配信される。ここで「セグメント」とは、例えばブロードキャストデータ等の修正用データ部分であって、例えば数百キロバイトの莫大な基準データ或いは修正用データを、区分けする又は配信する単位を意味してもよい。或いは、ECCブロックのようなエラー訂正単位や、一個若しくは複数個のパケット又はパケットの集合の如き、比較的小さい任意の単位を意味してもよい。
【0023】
修正用データがセグメント毎に配信されると、複数の搬送手段の各々において、エラー検出手段によって、配信された修正用データに対して、セグメント毎にエラーが検出される。すると、実際にエラーが検出された場合に、再配信制御手段によって、配信手段が制御され、生成された修正用データがセグメントの単位で再度配信される。
【0024】
このように、修正用データを複数のセグメントに区分けし、複数のセグメント毎に配信又は再度配信することにより、その配信又は再配信に要する時間を最小限に抑えられる。
【0025】
この態様では、前記データ生成手段は、前記セグメントの単位で前記修正用データを生成すると共に、前記生成された修正用データを、前記セグメントの単位で格納してもよい。
【0026】
このように構成すれば、基準データに対して修正が加えられる場合に、データ生成手段によって、修正用データがセグメントの単位で生成される。すると、生成された修正用データがセグメントの単位で、例えばデータベース等の記憶手段に格納される。例えば修正用データがn個のセグメントに区分けされる。この場合に、第1セグメント、第2セグメント、…、第nセグメントが生成され、生成された第1セグメント、第2セグメント、…、第nセグメントが個別に格納される。このように、修正用データの生成段階から、修正用データをセグメントの単位で扱うことにより、搬送システムの各部が同一のデータ構成を持つことができる。よって、例えば修正用データの配信時等に、修正用データの変換(具体的には、区分け)が不要となり、基準データをより効率よく更新することが可能となる。
【0027】
この態様では、前記セグメントは、前記軌道が敷設された全領域が区分けされた複数のエリアに夫々対応していてもよい。
【0028】
このように構成すれば、例えば全領域が複数のエリアに区分けされた場合に、全領域に対応する基準データが、複数のエリアに夫々対応すべく複数のセグメントに区分けされる。これにより、基準データをエリアの単位で更新することができ、基準データをより効率よく配信することが可能となる。
【0029】
この態様では、前記セグメントは、前記軌道が敷設された全領域が区分けされた複数のエリアに夫々対応しているデータブロックが更に細分化されてなってもよい。
【0030】
このように構成すれば、例えば全領域が複数のエリアに区分けされた場合に、全領域に対応する基準データが、複数のエリアに夫々対応すべく複数のデータブロックに区分けされる。一のエリアに対応する一のデータブロックは、更に複数のセグメントに細分化される。ここで「細分化されてなるセグメント」とは、地図上におけるエリア或いは領域とは無関係であるデータの区分けである、例えばフレームである。これにより、基準データをデータブロックの単位で且つセグメントの単位で更新することができ、基準データを更に効率よく配信することが可能となる。
【0031】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記搬送制御手段は、前記基準データを格納する格納手段と、所定のトリガーを受けて、前記受信された修正用データで、前記格納されている前記基準データの少なくも一部を置き換える又は上書きする更新手段と、前記格納されている基準データに従って、前記軌道上で前記搬送車が如何に搬送するかを決め、該決められた通りに搬送するように前記搬送車を制御する決定制御手段とを備える。
【0032】
この態様によれば、例えば複数の搬送手段の走行又は搬送中に、複数の搬送手段の各々において、通信手段によって、配信手段からの修正用データが受信される。この後に、所定のトリガーが受け取られると、更新手段によって、遅延なく又は所定時間経過後に、例えばメモリ等の格納手段により格納される基準データの少なくとも一部が置き換えられる(即ち、基準データが更新される)。すると、決定制御手段によって、搬送車が制御され、更新された基準データに従って、搬送が行われる。ここで「所定のトリガー」は、例えば搬送手段の外部からの信号であってもいいし、所定の条件を満たした後に、搬送手段の内部で指示されるコマンドであってもよい。基準データにおける「少なくとも一部」は、例えば修正が加えられた基準データの部分だけでもいいし、基準データ全体であってもよい。このように、配信手段からの基準データを実際に受信することなく、所定のトリガーを受けて修正用データで、基準データを比較的短時間で更新する。これにより、基準データの配信時間を短縮しつつ、基準データを効率よく更新することが可能となる。
【0033】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記基準地図データは、前記軌道の配置、前記軌道沿いの各種装置の配置、及び前記軌道に付されており且つ前記搬送車により読取可能であるマークの配置のうち、少なくとも一つを地図要素として含む。
【0034】
この態様によれば、例えば軌道部分が追加又は除外される等の軌道の配置、例えば一の製造装置を追加又は除外する等の各種装置の配置、及び例えば識別コードを移動、追加又は削除する等のマークの配置のうち、少なくとも一つが、地図要素として基準地図データに含まれている。このような地図要素の変更に伴って、基準データに対して修正が加えられる場合に、基準データを効率よく更新することが可能となる。
【0035】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記基準データは、前記基準地図データに加えて、前記軌道上で停止する又は前記荷を移載する際の位置決めの基準となる、予め教示された基準教示データを含む。
【0036】
この態様によれば、基準データには、基準地図データに加えて、例えば搬送車の停止位置、移載位置等を示す基準教示データが含まれている。このような基準教示データの変更に伴って、基準データに対して修正が加えられる場合に、基準データを効率よく更新することが可能となる。
【0037】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記データ生成手段は、前記軌道が敷設された全領域が区分けされた複数のエリアに対応する複数のエリア別データ生成手段を有し、前記配信手段は、前記複数のエリアに対応して複数のエリア別配信手段を有し、前記複数のエリアの各々に対応して更に、前記配信された修正用データを受信するエリア別通信手段と、前記受信される修正用データの通信に係るエラーを検出するエリア別エラー検出手段と、前記複数のエリアのうち自らが対応するエリア以外の他のエリアについて、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを前記他のエリアに向けて再度配信するように、前記自らが対応するエリアにおける前記エリア別配信手段を制御するエリア別再配信制御手段とを備える。
【0038】
この態様によれば、複数のエリアの各々には、エリア別データ生成手段、エリア別配信手段、及びエリア別再配信制御手段が備えられている。例えば一のエリアに在る複数の搬送手段の走行又は搬送中に、基準データのうち、一のエリアに対応する一のデータブロックに対して修正が加えられる場合に、一のエリア別データ生成手段によって、一のデータブロックのうち修正が反映された一のデータブロックの部分である修正用データが、生成される。すると、エリア別配信手段によって、生成された修正用データがブロードキャスト方式で配信される。
【0039】
上述した配信が行われると、複数の搬送手段の各々において、エリア別通信手段によって、配信された修正用データが受信される。すると、エリア別エラー検出手段によって、受信された修正用データの通信に係るエラーが検出される。
【0040】
自らが対応するエリア以外の他のエリアの各々において、上述したエラーが実際に検出された場合に、エリア別再配信制御手段によって、自らが対応するエリアにおけるエリア別配信手段が制御され、自らが対応するエリア以外の他のエリアに向けて、修正用データが、例えばブロードキャスト方式又は個別配信方式で、再度配信される。その配信により、複数の搬送手段のうち少なくともエラーが検出された搬送手段において、再度配信された修正用データが再度受信される。その後、遅延なく又は適当なタイミングにて、エリア別搬送制御手段によって、再度受信された修正用データで、例えば搬送手段が有する一のデータブロックを置き換えることにより、搬送の基準となる基準データが更新される。その後は更新された基準データに従う搬送計画に基づいて、搬送車が制御される。
【0041】
このように、一のデータブロックに対して修正が加えられる場合にも、修正が反映された一のデータブロックの部分である修正用データを、ブロードキャスト方式で配信することにより、その配信に要する時間を最小限に抑える。即ち、配信が失敗に終わった修正用データを示すエラーを検出すると共に、そのエラーに示される修正用データを再度配信する。これにより、基準データ(率直に言えば、基準データを更新可能な修正用データ)の配信時間を短縮しつつ、基準データを効率よく更新することが可能となる。
【0042】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
(第1実施形態)
【0044】
先ず、本発明の第1実施形態に係る搬送システムの構成について説明する。ここに図1は、第1実施形態に係る搬送システムの機能を示し、図2は、第1実施形態に係る基準データの構成を示す。
【0045】
図1において、本実施形態に係る搬送システム100は、軌道1、複数のビークル3、搬送コントローラ10、及び製造指示部20を備える。製造指示部20は、搬送コントローラ10と有線により接続されており、半導体素子製造工程に従って、不図示のFOUPの搬送或いは移載を搬送コントローラ10に指示する。
【0046】
搬送コントローラ10は、製造指示部20からの指示に基づいて、搬送スケジュールを設計し、設計された搬送スケジュールに従って、複数のビークル3を総括的に制御する。搬送コントローラ10は、複数のビークル3と無線により接続されている。本実施形態では、搬送コントローラ10は、データ生成部11、配信部12、及び再配信制御部13を備える。
【0047】
データ生成部11は、本発明に係る「データ生成手段」の一例として、搬送計画の設計に使用される基準データに修正が加えられる場合に、その修正が反映された基準データを区分けし、区分けされた基準データの部分を複数のブロードキャストデータ(本発明に係る「修正用データ」の一例)として生成する。このように修正が反映された基準データが区分けされてなるブロードキャストデータは、軌道や軌道沿いの装置等に変更が行われた場合に、調整が必要となる地図データ部分を意味することから、「調整地図データ」と呼ぶこともできる。
【0048】
図2において、6つのブロードキャストデータ20は、6つのブロードキャストナンバに夫々紐付けられ、ブロードキャストデータ単位で、搬送コントローラ10に設けられた不図示の記憶手段、及び複数のビークル3の各々に設けられた後述するメモリ5に格納される。
【0049】
配信部12は、本発明に係る「配信手段」の一例として、データ生成部11による6つのブロードキャストデータを、ブロードキャストデータ毎に、ブロードキャストナンバの小さい順に配信する(即ち、ブロードキャスト方式による配信)。配信部12は、ブロードキャストデータの一通りの配信を行った後に、配信の進捗を確認するための進捗問い合わせ信号を配信する。
【0050】
再配信制御部13は、本発明に係る「再配信制御手段」及び「特定手段」の一例として、後述するエラー信号を受信した場合に、配信の進捗に応じて、少なくともエラー信号に示されるブロードキャストデータを再度配信するように、配信部12を制御する。
【0051】
具体的には、例えば第2番目に配信された第2ブロードキャストデータF2、及び第6番目に配信された第6ブロードキャストデータF6について、エラー信号が受信される。この場合に、再配信制御部13は、配信の進捗を示す進捗値を、ブロードキャスト総数「6」から、エラー信号に示されるブロードキャストデータ数「2」を減算した値である「4」と特定する。再配信制御部13は、例えば所定の進捗値閾値(即ち、本発明に係る「所定の閾値」の一例)を6つのブロードキャストデータの半数「3」に設定している。この場合に、再配信制御部13は、特定された進捗値「4」が進捗値閾値「3」以上であるとして、配信部12を制御して、エラー信号に示される第2ブロードキャストデータF2及び第6ブロードキャストデータF6のみ再度配信させる。
【0052】
一方、例えば第2ブロードキャストデータF2から第6ブロードキャストデータF6について、エラー信号が受信される。この場合に、再配信制御部13は、進捗値を、ブロードキャスト総数「6」から、エラー信号に示されるブロードキャストデータ数「4」を減算した値である「2」と特定する。再配信制御部13は、特定された進捗値「2」が進捗値閾値「3」以上でないとして、配信部12を制御して、全ブロードキャストデータ(第1ブロードキャストデータF1から第6ブロードキャストデータF6)を再度配信させる。このように、再配信制御部13は、配信の進捗に応じて、エラー信号に示されるブロードキャストデータのみを再度配信する個別配信方式、又は全てのブロードキャストデータを再度配信するブロードキャスト方式のいずれか一方を選択する配信方法選択処理を行う。このような配信方法選択処理は、本発明に係る情報配信処理に組み入れられている。
【0053】
複数のビークル3は、本発明に係る「複数の搬送手段」の一例として、搬送コントローラ10により制御され、軌道1上を走行すると共に、FOUPを不図示の作業装置に搬送する(又は、作業装置間で移載する)。複数のビークル3の各々は、制御部4、メモリ5、及びエラー検出部6を備える。
【0054】
制御部4は、本発明に係る「搬送制御手段」の一例として、ビークル3の各部を制御する。制御部4は、その制御により、最新の基準データに従う搬送計画で走行させつつ搬送させる。
【0055】
メモリ5は、本発明に係る「格納手段」の一例として、配信部12からの6つのブロードキャストデータを、ブロードキャストデータ単位で格納する。また、格納されている最新の6つのブロードキャストデータから基準データを構成する。メモリ5は、配信部12からのブロードキャストデータが不図示の通信部により受信される度に、基準データを更新する。
【0056】
エラー検出部6は、本発明に係る「エラー検出手段」の一例として、配信部12との間の通信に係るエラーを検出する。具体的には、例えば第3番目に配信された第3ブロードキャストデータF3が通信部により受信される間に、配信部12との間の通信が途切れた場合に、エラー検出部6は、第3ブロードキャストデータF3についてエラーを検出する。また、検出されたエラーを示す信号(以下、「エラー信号」と言う)を、搬送コントローラ10に送信する。本実施形態では、エラー信号が送信される時期は、配信部12からの進捗問い合わせ信号を受信した後とする。
(本発明の配信方法選択処理)
【0057】
次に、再配信制御部13による配信方法選択処理について図3を参照して説明する。ここに図3は、本発明に係る配信方法選択処理を示すフローチャートである。
【0058】
図3において、先ず配信部12によって、6つのブロードキャストデータ(即ち、図3において「BCデータ」と示す)のブロードキャスト方式による配信が開始され(ステップS41)、この後に、全てのブロードキャストの配信が一通り完了したか否かが判定される(ステップS42)。この判定の結果、一通り完了していない場合に(ステップS42:NO)、一通り完了するまでその判定が繰り返される。
【0059】
一方、ステップS42の判定の結果、配信が一通り完了した場合に(ステップS42:YES)、配信部12によって、進捗問い合わせ信号が送信され、配信の進捗が確認される(ステップS43)。すると、進捗問い合わせ信号を受信した全てのビークル3の各々において、エラー検出部6によるエラー信号が送信されたか否か(即ち、全てのブロードキャストデータの格納が完了したか否か)が判定される(ステップS44)。この判定の結果、いずれかのエラー検出部6によりエラー信号が送信された場合(即ち、全てのビークル3において、全てのブロードキャストデータが未だ格納されていない場合)に(ステップS44:NO)、再配信制御部13によって、受信されたエラー信号に示される情報に基づいて進捗値が特定され、特定された進捗値が所定の進捗値閾値以上か否かが判定される(ステップS45)。この判定の結果、進捗値閾値より少ない場合に(ステップS45:NO)、ステップS41の処理(即ち、ブロードキャスト方式による再度配信)を行う。
【0060】
一方、ステップS45の判定の結果、特定された進捗値が進捗値閾値以上である場合に(ステップS45:YES)、エラー信号に示されるブロードキャストデータが個別配信方式で再度配信される(ステップS46)。この後に、ステップS43の処理(即ち、配信の進捗確認)を行う。
【0061】
一方、ステップS44の判定の結果、進捗問い合わせ信号を受信した全てのビークル3の各々において、エラー検出部6によるエラー信号が送信されない(即ち、全てのブロードキャストデータが既に格納された場合)に(ステップS44:YES)、搬送システム100において1つのエリアを設定された第1実施形態では、ステップS47の処理をスキップして、一連の配信方法選択処理が終了する。
【0062】
尚、搬送システムにおいて複数のエリアが設定された、後述する第2実施形態では、ステップS44が「YES」と判定された後に、複数のエリア毎に、全てのビークル3において、全てのブロードキャストデータが格納されたか否かが判定される(ステップS47)。この判定の結果、いずれかのエリアで、全てのビークル3において、全てのブロードキャストデータが未だ格納されていない場合に(ステップS47:NO)、そのエリアについて、ステップS44の処理が行われる。
【0063】
一方、全てのエリアで、全てのビークル3において、全てのブロードキャストデータが既に格納された場合に(ステップS47:YES)、一連の配信方法選択処理が終了する。
(第1実施形態の情報配信処理)
【0064】
次に、第1実施形態に係る搬送システムによる情報配信処理について、図4を参照して説明する。ここに図4は、第1実施形態に係る情報配信処理を示すシーケンスチャートである。第1実施形態の情報配信処理では、1つの搬送コントローラ10によって、3台のビークル3a〜3cに夫々格納される基準データが更新される。
【0065】
図3において、基準データに対して修正を加える場合に、先ず搬送コントローラ10において、データ生成部11によって、修正が反映された基準データから、6つのブロードキャストデータF1〜F6が生成され、配信部12によって、第1ブロードキャストデータF1が配信される(ステップS51)。続いて、第2ブロードキャストデータF2が配信されるが(ステップS52)、この際に、1台のビークル3cにおいて、エラー検出部6によって、エラーが検出される(ステップS53)。
【0066】
続いて、第3ブロードキャストデータF3が配信されるが(ステップS54)、この際に、ビークル3bにおいて、エラー検出部6によって、エラーが検出される(ステップS55)。この後、第4ブロードキャストデータF4から第6ブロードキャストF6まで配信される(ステップS56)。この後、配信部12によって、進捗問い合わせ信号が配信される(ステップS57)。すると、これに応答して、ビークル3aにおいて、エラー検出部6からエラー信号は送信されない(即ち、基準データの更新を完了した旨が示される)(ステップS58)。また、ビークル3bにおいて、エラー検出部6によって、第3ブロードキャストデータF3の情報を含むエラー信号が搬送コントローラ10に送信される(即ち、第3ブロードキャストデータF3の更新が未だ完了していない旨が示される)(ステップS59)。また、ビークル3cにおいて、エラー検出部6によって、第2ブロードキャストデータF2の情報を含むエラー信号が搬送コントローラ10に送信される(即ち、第2ブロードキャストデータF2の更新が未だ完了していない旨が示される)(ステップS60)。
【0067】
ビークル3b及び3cによりエラー信号が送信された後に、再配信制御部13によって、第3ブロードキャストF3がビークル3bに再度配信される(ステップS61)。すると、その配信が完了された時に、ビークル3bによって、その配信が完了した旨を示す信号が搬送コントローラ10に送信される(ステップS62)。続いて、再配信制御部13によって、第2ブロードキャストF2がビークル3cに再度配信される(ステップS63)。すると、その配信が完了された時に、ビークル3cによって、その配信が完了した旨を示す信号が搬送コントローラ10に送信される(ステップS64)。これにより、一連の情報配信処理が終了する。
【0068】
このように、第1実施形態の情報配信処理によれば、基準データに修正が加えられる場合に、修正が反映された基準データから複数のブロードキャストデータを生成し、これをブロードキャスト方式で配信することにより、その配信に要する時間を最小限に抑える。即ち、失敗に終わった配信を示すエラーを検出すると共に、少なくともそのエラーに示されるブロードキャストデータを再度配信する。従って、基準データ(率直に言えば、基準データを更新可能な複数のブロードキャストデータ)の通信時間を短縮しつつ、基準データを効率よく更新することが可能となる。
(第2実施形態)
【0069】
次に、本発明の第2実施形態に係る搬送システムの構成について、図5から図7を参照して説明する。ここに図5は、第2実施形態に係る搬送システムの機能を示し、図6は、図5の複数の搬送手段に走行される複数の領域を示し、図7は、第2実施形態に係る基準データの構成を示す。尚、第2実施形態では、図1の搬送システムと同一に構成される要素について、その説明を省略すると共に同一の符号を付し、図1の搬送システムとの違いのみ説明する。
【0070】
図5において、本実施形態に係る搬送システム300は、軌道1、複数のビークル103、搬送コントローラ110x(110a,110b…110f)、及び製造指示部120を備える。製造指示部120は、複数の搬送コントローラ110と有線により接続されており、FOUPの搬送或いは移載を複数の搬送コントローラ110に指示する。
【0071】
軌道1は、複数のエリアAxに渡って敷設されている。図6において、複数のエリアAxの各々は、基準データを区分けする単位を示す。
【0072】
複数の搬送コントローラ110xは、複数のエリアAxに夫々対応している。複数の搬送コントローラ110xは、対応する複数のエリアAxで区分けされた、複数のエリアAx毎の基準データを基準データブロック(本発明に係る「データブロック」の一例)として設定している。各搬送コントローラ110xは、自身に対応するエリアAxの内部に在るビークル3と無線により接続されており、その接続されているビークル3を制御しつつ、自身に対応する基準データブロックを管理する。各搬送コントローラ110xは、図1の搬送コントローラ10と同様にして、データ生成部11、配信部12、及びエラー検出部13を備える。
【0073】
次に、各搬送コントローラ110xの各部について説明する。図6において、6つのエリアA1〜A6には、6つの搬送コントローラ110a〜110fが夫々対応している。ここで、修正が加えられる基準データブロックに対応するエリアを「A1」(即ち、図6における最も左側且つ上側に設定されるエリア)とし、修正が加えられない基準データブロックに対応するエリアを「A2〜A6」とする。
【0074】
エリアA1に対応する搬送コントローラ110aが備えるデータ生成部11(以下、単に「エリアA1のデータ生成部11」と言う)は、エリアA1に対応する基準データブロックB1に修正が加えられる場合に、その修正が反映された基準データブロックを区分けし、区分けされた複数の基準データブロックの部分を複数のブロードキャストデータとして生成する。
【0075】
図7において、図6に示される6つのエリアA1〜A6に対応する6つの基準データブロック220(即ち、B1〜B6)の各々は、6つのブロードキャストデータに細分化されている。6つの基準データブロックB1〜B6の各々を構成する6つのブロードキャストデータは、6つのブロードキャストナンバに夫々紐付けられ、ブロードキャストデータ単位で、各搬送コントローラ110xにおける不図示の記憶手段、及び各ビークル3におけるメモリ5に格納される。
【0076】
エリアA1の配信部12は、エリアA1のデータ生成部11による複数のブロードキャストデータを、エリアA2〜A6の搬送コントローラ110b〜110f、及びエリアA1に在るビークル103に、ブロードキャスト方式で配信する。
【0077】
エリアA2〜A6の各配信部12は、エリアA1の配信部12からの複数のブロードキャストデータを受信すると共に、受信した複数のブロードキャストデータを自身の領域A2〜A6に在るビークル3に、ブロードキャスト方式で配信する。
【0078】
エリアA1〜A6の各配信部12は、一通りの配信を行った後に、配信の進捗を確認するための進捗問い合わせ信号を自身の領域A1〜A6に在るビークル3に配信する。
【0079】
エリアA1〜A6の各再配信制御部13は、ビークル3におけるエラー検出部6からのエラー信号を受信した場合に、配信の進捗に応じて、少なくともエラー信号に示されるブロードキャストデータを再度配信するように、配信部12を制御する。
【0080】
複数のビークル3の各々は、自身が存在するエリアAxの搬送コントローラ110により制御され、FOUPの搬送又は移載を実行する。
(第2実施形態の情報配信処理)
【0081】
次に、第2実施形態に係る搬送システムによる情報配信処理について、図8を参照して説明する。ここに図8は、第2実施形態に係る情報配信処理を示すシーケンスチャートである。第2実施形態の情報配信処理では、ブロードキャストデータの配信中、ビークル3が2つの搬送コントローラ10に対応する2つの領域を乗り移る。
【0082】
図8において、エリアA1に対応する基準データブロックに対して修正を加える場合に、先ずエリアA1において、データ生成部11により生成されたn個のブロードキャストデータF1〜Fnのうちの第1ブロードキャストデータF1が、配信部12によって、エリアA2の搬送コントローラ110b、及びエリアA1に在るビークル3に配信される(ステップS71)。続いて、第2ブロードキャストデータF2が、エリアA2の搬送コントローラ110b、及びエリアA1に在るビークル3に配信される(ステップS72)。ここで、制御部4によって、エリアA1に在るビークル3がエリアA2へ乗り移る。この乗り移りと併行して、エリアA1においては、その配信部12によって、第3ブロードキャストデータF3、第4ブロードキャストデータF4…の配信が行われ(ステップS74)、エリアA2においては、その配信部12によって、第1から第4ブロードキャストデータF1〜F4の配信が行われる(ステップS75)。
【0083】
続いて、エリアA2において、配信部12によって、第5ブロードキャストデータF5が配信される。すると、エリア1からの乗り移りを遂げた、現在エリアA2に在るビークル3において、第5ブロードキャストデータF5が受信される(ステップS76)。この後、最後の第nブロードキャストデータFnまで配信される(ステップS77)。すると、配信部12によって、進捗問い合わせ信号がエリアA2に在るビークル3に送信される(ステップS78)。すると、進捗問い合わせ信号を受信したビークル3において、再配信制御部13によって、格納されるべき第1ブロードキャストデータF1から第nブロードキャストデータFnが順番に読み取られる。この読み取り時に、第3ブロードキャストデータが読み取られない場合に、第3ブロードキャストデータF3を示すエラー信号が搬送コントローラ110bに送信される(即ち、第3ブロードキャストデータF3の欠落が示される)(ステップS79)。すると、配信部12によって、第3ブロードキャストデータF3が個別配信方式で配信される(ステップS80)。また、続く第4ブロードキャストデータF4が読み取られない場合に、第4ブロードキャストデータF4を示すエラー信号が搬送コントローラ110bに送信される(即ち、第4ブロードキャストデータF4の欠落が示される)(ステップS81)。すると、配信部12によって、第4ブロードキャストデータF4が配信される(ステップS82)。この後に、エリアA2に在るビークル3において、第5ブロードキャストデータF5から第nブロードキャストデータFnが全て読み取られた場合に、全てのブロードキャストデータが配信された旨を示す信号が搬送コントローラ110bに送信される(ステップS83)。これにより、一連の情報配信処理が終了する。
【0084】
このように、第2実施形態の情報配信処理によれば、一のエリアに対応する一の基準データブロックに修正が加えられる場合に、修正が反映された一の基準データブロックから複数のブロードキャストデータを生成し、これをブロードキャスト方式で配信することにより、その配信に要する時間を最小限に抑える。即ち、失敗に終わった配信を示すエラーを検出すると共に、少なくともそのエラーに示されるブロードキャストデータを再度配信する。従って、複数の基準データブロックに区分けされた基準データ(率直に言えば、基準データを更新可能な複数のブロードキャストデータ)の通信時間を短縮しつつ、その基準データを効率よく更新することが可能となる。
【0085】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1実施形態に係る搬送システムの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態に係る基準データの構成を示す説明図である。
【図3】実施形態に係る配信方法選択処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の情報配信処理を示すシーケンスチャートである。
【図5】第2実施形態に係る搬送システムの構成を示すブロック図である。
【図6】図5の複数の搬送手段に走行される複数のエリアを示す平面図である。
【図7】第2実施形態に係る基準データの構成を示す説明図である。
【図8】第2実施形態の情報配信処理を示すシーケンスチャートである。
【符号の説明】
【0087】
3…ビークル、5…メモリ、6…エラー検出部、10…搬送コントローラ、11…データ生成部、12…配信部、13…再配信制御部、100…搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に関する地図を示す地図データを含む基準データに対して、修正が加えられる場合に、前記基準データのうち前記修正が反映された基準データ部分である修正用データを、生成するデータ生成手段と、
前記生成された修正用データを、ブロードキャスト方式で配信する配信手段と、
複数の搬送手段であって、各々が、前記軌道を走行可能であり且つ荷を搬送可能である搬送車、前記配信された修正用データを受信する通信手段、前記受信された修正用データで更新され得る前記基準データに従う搬送計画で走行し且つ搬送するように、前記搬送車を制御する搬送制御手段、及び前記受信される修正用データの通信に係るエラーを検出するエラー検出手段を備える、前記複数の搬送手段と、
前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを再度配信するように、前記配信手段を制御する再配信制御手段と
を備えることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記再配信制御手段は、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを、前記複数の搬送手段のうち前記エラーが検出された一の搬送手段に備えられた前記受信手段に対して、個別配信方式で再度配信するように、前記配信手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記配信手段により前記修正用データの配信が一通り完了された後に、前記配信の進捗を示す進捗値を特定する特定手段を更に備え、
前記再配信制御手段は、前記特定された進捗値が所定の閾値より大きい場合に、前記修正用データを個別配信方式で、再度配信するように前記配信手段を制御し、前記特定された進捗値が所定の閾値より小さい場合に、前記修正用データを前記ブロードキャスト方式で再度配信する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記配信手段は、前記修正用データを、複数のセグメントに区分けした上で該セグメント毎に順番に配信し、
前記エラー検出手段は、前記セグメント毎に前記エラーを検出し、
前記再配信制御手段は、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを前記セグメントの単位で再度配信するように、前記配信手段を制御する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記データ生成手段は、前記セグメントの単位で前記修正用データを生成すると共に、前記生成された修正用データを、前記セグメントの単位で格納する
ことを特徴とする請求項4に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記セグメントは、前記軌道が敷設された全領域が区分けされた複数のエリアに夫々対応していることを特徴とする請求項4又は5に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記セグメントは、前記軌道が敷設された全領域が区分けされた複数のエリアに夫々対応しているデータブロックが更に細分化されてなることを特徴とする請求項4又は5に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記搬送制御手段は、
前記基準データを格納する格納手段と、
所定のトリガーを受けて、前記受信された修正用データで、前記格納されている前記基準データの少なくも一部を置き換える又は上書きする更新手段と、
前記格納されている基準データに従って、前記軌道上で前記搬送車が如何に搬送するかを決め、該決められた通りに搬送するように前記搬送車を制御する決定制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記基準地図データは、前記軌道の配置、前記軌道沿いの各種装置の配置、及び前記軌道に付されており且つ前記搬送車により読取可能であるマークの配置のうち、少なくとも一つを地図要素として含むことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記基準データは、前記基準地図データに加えて、前記軌道上で停止する又は前記荷を移載する際の位置決めの基準となる、予め教示された基準教示データを含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記データ生成手段は、前記軌道が敷設された全領域が区分けされた複数のエリアに対応する複数のエリア別データ生成手段を有し、前記配信手段は、前記複数のエリアに対応して複数のエリア別配信手段を有し、
前記複数のエリアの各々に対応して更に、
前記配信された修正用データを受信するエリア別通信手段と、
前記受信される修正用データの通信に係るエラーを検出するエリア別エラー検出手段と、
前記複数のエリアのうち自らが対応するエリア以外の他のエリアについて、前記エラーが検出された場合に、前記生成された修正用データを前記他のエリアに向けて再度配信するように、前記自らが対応するエリアにおける前記エリア別配信手段を制御するエリア別再配信制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−89951(P2010−89951A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264178(P2008−264178)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【出願人】(309031466)ムラテックオートメーション株式会社 (52)
【Fターム(参考)】