説明

放射線撮影装置、放射線撮影システム及び放射線撮影方法

【課題】シンチレータで発生した長波長成分の光による放射線画像のボケを抑制しながら、長波長成分の光を有効利用する。
【解決手段】制御部64は、シンチレータ37により放射線から変換された光の長波長成分90bが反射層25を透過して放射線検知用光検出部26に検出されたときに、センサパネル23の光電変換部をリセットして電荷蓄積モードに移行させる。シンチレータ37で発生した光の短波長成分90aは、柱状結晶39内を全反射しながら反射層25に向けて進行し、反射層25により反射されてセンサパネル23に向かうので、センサパネル23の検出光量が増加する。シンチレータ37で発生した光の長波長成分90bは、反射層25を透過してセンサパネル23には反射されないので、放射線画像のボケを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって放射線から変換された光を検出するセンサパネルと、シンチレータで変換された光をセンサパネルに向けて反射する反射層とを備えた放射線撮影装置と、これを用いた放射線撮影システム及び放射線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線等の放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータによって変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換部が2次元アレイ状に配置されたセンサパネルとを対面配置した間接変換方式の放射線検出器を用いて、照射された放射線により表される放射線画像を撮影できるようにした放射線撮影装置が実用化されている。また、シンチレータから放射された光を有効利用するため、シンチレータのセンサパネルに対面する光出射方向とは反対側に、シンチレータから放射された光をセンサパネルに向けて反射する反射層を備えた放射線撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
シンチレータには、ヨウ化セシウム(以下、CsIと呼ぶ)等を基板に蒸着することにより、光出射方向に沿って複数の柱状結晶を立設したものがある。柱状結晶からなるシンチレータでは、放射線の照射によって発生した光は、柱状結晶のライトガイド効果によって柱状結晶中を全反射しながらセンサパネルに向けて進行するので、シンチレータから出射される光の散乱が抑制される。したがって、柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線撮影装置では、照射された放射線を画像として検出する際に、画像の鮮鋭度の低下を抑制することができる。
【0004】
柱状結晶からなるシンチレータでは、クロストークと呼ばれる現象の発生を防止するため、複数の柱状結晶間に隙間が設けられている。クロストークとは、柱状結晶同士が接触することにより、柱状結晶中を進行する光の一部が接触している他の柱状結晶へ移る現象である。シンチレータでクロストークが発生すると、シンチレータ内での光の発生位置と、その光がセンサパネルに入射する位置とに大きなずれが生じ、放射線画像のボケが引き起こされてしまう。
【0005】
上記クロストークは、柱状結晶同士が接触していなくても発生する。図17は、複数の柱状結晶を備えたシンチレータ120の模式図であり、柱状結晶121a中を全反射しながら進行する光122は、柱状結晶121aの内壁面に対する入射角度θxが臨界角θc以下になったときに柱状結晶121aから放射され、隣接する柱状結晶121b内に入射してしまうためである。なお、CsIからなる柱状結晶の屈折率を1.8、柱状結晶間に存在する空気の屈折率を1.0としたとき、臨界角θcはおよそ34°となる。
【0006】
また、柱状結晶121aから柱状結晶121bに入射した光122は、柱状結晶121bから更に隣接する柱状結晶に放射され、柱状結晶121bから遠く離れた柱状結晶まで透過していくことがある。これは、柱状結晶121aと柱状結晶121bとの間隔が非常に狭いため、柱状結晶121aから放射された光122はほとんど屈折せず、光122の長波長成分122bは、短波長成分122aに比べて屈折しにくいため、柱状結晶121bに対する入射角度が臨界角θc以下となる状態が維持されるためである。なお、短波長成分とは、例えばCsI:Tlからなるシンチレータにおいては620nm以下の波長域の光であり、長波長成分とはこの短波長成分以上の波長域の光である。
【0007】
上述した光の入射角度を原因とするクロストークは、シンチレータから直接センサパネルに向かって進行する光だけでなく、反射層によって反射されてセンサパネルに向かう光でも発生する。放射線検出器を部分的に表した図18に示すように、シンチレータ120に入射した放射線は、シンチレータ120の放射線照射側である放射線入射領域で多くが光に変換される。この光のうち、短波長成分122aは、比較的屈折しやすいため、柱状結晶121a内を全反射しながら反射層124に向かう。また、短波長成分122aの反射層124に対する入射角度が臨界角以下となり、柱状結晶121aから柱状結晶121bに短波長成分122aが放射された場合でも、短波長成分122aは、屈折して臨界角以上の入射角度になりやすいため、シンチレータ120内での発生位置と、センサパネル125に対する入射位置とが大きく離れることはない。
【0008】
これに対し、図19に示すように、シンチレータ120の柱状結晶121cの入射領域で発生した光の長波長成分122bは、短波長成分122aに比べて屈折しにくいので、反射層124まで伝播される間に光の発生位置から大きく離れてしまい、反射層124で反射されてセンサパネル125まで伝播される間に、光の発生位置から更に遠くまで離れた位置でセンサパネル125に入射してしまう。なお、図18及び図19は、放射線検出器の一部を表しており、長波長成分122bがセンサパネル125の端から端まで伝播するわけではない。
【0009】
また、間接変換方式の放射線検出器には、図18に示すように、放射線の入射側からセンサパネル125、シンチレータ120及び反射層124を順に配置し、センサパネル125を透過した放射線をシンチレータ120で光に変換してセンサパネル125で検出する「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と、詳しくは図示しないが、放射線の入射側から反射層、シンチレータ及びセンサパネルを順に配置し、反射層を透過した放射線をシンチレータで光に変換する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」とがある。PSS方式では、シンチレータの放射線入射領域で発生した光は、すぐ近くに配置されている反射層により反射されてセンサパネルに向かうが、ISS方式では、シンチレータの放射線入射領域で発生した光は、シンチレータ内を反射層まで伝播され、反射層で反射されて再びシンチレータ内を伝播してセンサパネルに入射するため、光の伝播距離がPSS方式のほぼ2倍となり、クロストークの影響が大きくなる。
【0010】
従来、特許文献1記載の放射線検出器では、シンチレータから出射された長波長成分の光による放射線画像のボケを抑制するため、シンチレータと反射層との間に長波長成分の光を吸収する吸収層が設けられている。また、従来、光電変換部に光源から光を照射することにより、光電変換部の長期間の使用による特性の劣化を改善し、光電変換部において発生する暗電流を安定化させることにより、例えば動画撮影時の放射線画像の劣化を抑制できるようにした光リセット機能(バイアス光照射、光キャリブレーション等とも言う)を備えた放射線撮影装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。また、光リセットに用いる光として、赤外光が適していることも従来知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−107222号公報
【特許文献2】特開2007−147370号公報
【特許文献3】特許第4150079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1記載の発明では、吸収層によって吸収された長波長成分の光が無駄になってしまう。そのため、長波長成分の光を放射線画像の形成以外に有効利用することが望まれている。
【0013】
また、上述したISS方式の放射線検出器では、放射線照射側にセンサパネルが配置されているため、センサパネル上に光リセット用の光源を配置することはできない。センサパネル上に光源を配置すると、光源によって放射線が吸収されるとともに、LEDやEL素子等からなる光源を用いた場合に、放射線によって光源が発光することがあるためである。そのため、ISS方式の放射線検出器では、シンチレータの光出射側と反対側にリセット用の光源を配置することが考えられるが、この位置に光源を配置すると反射層を設けることができなくなる。
【0014】
本発明は、上記問題を解決するため、シンチレータで発生した長波長成分の光による放射線画像のボケを抑制しながら、長波長成分の光を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の放射線撮影装置は、照射された放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータの光出射側に配置され、シンチレータにより変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換部が2次元アレイ状に配置されたセンサパネルと、記シンチレータの光出射側と反対側に配置され、シンチレータによって変換された光を選択的にセンサパネルに向けて反射または透過させる反射層と、を備えたものである。
【0016】
反射層は、シンチレータにより変換された光の波長に応じて、選択的にセンサパネルに向けて反射または透過させるものである。また、反射層は、シンチレータによって変換された光の短波長成分を前記センサパネルに向けて反射し、長波長成分の光を透過させてもよい。また、反射層を透過した光を検出する放射線検知用光検出部と、放射線検知用光検出部による光の検出に基づいて、センサパネルの各光電変換部をリセットする制御部とを備えてもよい。
【0017】
放射線検知用光検出部は、有機光電変換材料からなることが好ましい。また、放射線検知用光検出部を、反射層に対面するように並べられた複数の光検出器から構成し、各光検出器の検出面積をセンサパネルの1つの光電変換部よりも大きくしてもよい。
【0018】
また、反射層及びシンチレータを通してセンサパネルの光電変換部に長波長成分からなるリセット光を照射するリセット用光源を備えてもよい。
【0019】
また、反射層のシンチレータに対面する側と反対側に、反射層及びシンチレータを通してセンサパネルの光電変換部に長波長成分からなるリセット光を照射するリセット用光源と、放射線検知用光検出部とを並べて配置してもよい。この場合、リセット用光源は、センサパネルの各光電変換部からなる光電変換領域に対面する位置及び大きさを有し、放射線検知用光検出部は、リセット用光源の外周に配置されていることが好ましい。
【0020】
反射層は、ダイクロイックフィルタであることが好ましい。また、センサパネルをシンチレータの放射線照射側に配置し、シンチレータには、センサパネルを透過した放射線が照射されるように構成してもよい。また、シンチレータは、複数の立設された柱状結晶から構成してもよい。更に、シンチレータには、ヨウ化セシウムを用いることが好ましい。
【0021】
本発明の放射線撮影システムは、放射線を発生する放射線発生装置と、放射線発生装置から照射された放射線を光に変換するシンチレータ、シンチレータの光出射側に配置されシンチレータにより変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換部が2次元アレイ状に配置されたセンサパネル、シンチレータの光出射側と反対側に配置されシンチレータによって変換された光を選択的にセンサパネルに向けて反射または透過させる反射層、反射層を透過した光を検出する放射線検知用光検出部、及び放射線検知用光検出部による光の検出に基づいてセンサパネルの各光電変換部をリセットする制御部とから構成したものである。
【0022】
また、本発明の放射線撮影方法は、シンチレータによって放射線から変換された光を反射層によって選択的にセンサパネルに向けて反射または透過させ、反射層を透過した光を検出したときに、センサパネルに設けられた複数の光電変換部をリセットするようにしたものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、比較的屈折しやすくクロストークが発生しにくい短波長成分の光を、反射層によって選択的に反射するので、検出光量の低下を防止することができる。また、短波長成分の光に比べて屈折しにくく、クロストークが発生しやすい長波長成分の光を、反射層によって選択的に透過させるので、長波長成分のクロストークを抑制することができる。更に、反射層を透過した長波長成分の光を検出することにより放射線の照射を検知し、光電変換部をリセットすることができるので、長波長成分の光を有効利用することができる。
【0024】
また、本発明によれば、長波長域の光が透過可能な反射層を介して光電変換部を光リセットすることができるので、光リセット用の光源の配置位置が確保しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】放射線撮影システムの構成を示す概略図である。
【図2】放射線撮影装置を一部破断して示す斜視図である。
【図3】放射線撮影装置の概略断面図である。
【図4】放射線検出器の端部側断面図である。
【図5】CsI:Tlの発光特性を示すグラフである。
【図6】CsI:Naの発光特性を示すグラフである。
【図7】放射線検知用光検出部を示す平面図である。
【図8】光センサの構成を模式的に示した断面図である。
【図9】放射線撮影装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図10】コンソール及び放射線発生装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図11】光電変換部のリセット動作の手順を示すフローチャートである。
【図12】シンチレータで発生した光の短波長成分を反射し長波長成分を透過している状態を模式的に示す概略図である。
【図13】リセット用光源によって光電変換部を光リセットしている状態を模式的に示す概略図である。
【図14】反射層の下にリセット用光源と放射線検知用光検出部とを並べて配置した状態を模式的に示す概略図である。
【図15】反射層の下に並べられたリセット用光源及び放射線検知用光検出部を示す平面図である。
【図16】シンチレータで発生した光の長波長成分を反射層から透過させている状態を模式的に示す概略図である。
【図17】従来のシンチレータ内での光の経路を模式的に示す概略図である。
【図18】反射層により鏡面反射された短波長成分の光の経路を模式的に示す概略図である。
【図19】反射層により鏡面反射された長波長成分の光の経路を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1の実施形態]
図1に示すように、本発明を用いた放射線撮影システム5は、被検者Hに放射線、例えばX線を照射する放射線発生装置6と、被検者Hを透過した放射線に基づいて放射線画像を撮影する放射線撮影装置7と、放射線発生装置6と放射線撮影装置7とを制御するコンソール8とから構成されている。
【0027】
図2に示すように、本発明に係る放射線撮影装置7は、全体形状がおよそ箱形で、矩形状の上面が放射線の照射面11とされた筐体12を備えている。筐体12は、放射線を透過させる材料からなり、照射面11が設けられている天板13以外の部分は、例えばABS樹脂等から構成され、天板13は例えばカーボン等から構成されている。これにより、天板13による放射線の吸収を抑制しつつ、天板13の強度が確保される。なお、筐体12は、放射線により感光材料に画像を記録する構成を備えた旧来のカセッテと同サイズであり、当該カセッテに代えて使用できるようになっている。
【0028】
放射線撮影装置7の照射面11には、複数個のLEDからなり、放射線撮影装置7の動作モード(例えば「レディ状態」や「データ送信中」等)やバッテリの残容量等の動作状態を表示するための表示部16が設けられている。なお、表示部16は、LED以外の発光素子で構成してもよいし、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示手段で構成してもよい。また、表示部16は、照射面11以外の部位に設けてもよい。
【0029】
放射線撮影装置7の筐体12内には、照射面11に対面するように、被撮影者の体を透過した放射線を検出するために、パネル状の放射線検出器19が配置されている。また、筐体12の内部には、照射面11の短手方向に沿った一端側に、マイクロコンピュータを含む各種の電子回路や、充電可能かつ着脱可能なバッテリ(二次電池)を収容するケース20が配置されている。放射線検出器19を含む放射線撮影装置7の各種電子回路は、ケース20内に収容されたバッテリから供給される電力によって作動する。筐体12内のうちケース20の照射面11側には、ケース20内に収容された各種電子回路が放射線の照射に伴って損傷することを回避するため、鉛板等からなる放射線遮蔽部材が配設されている。
【0030】
放射線検出器19は、放射線が照射される方向に沿って、照射面11側からセンサパネル23、シンチレータパネル24、反射層25及び放射線検知用光検出器26が積層された構成を有している。図3に示すように、センサパネル23は、天板13の内面に全面に亘って接着剤により貼り付けられている。センサパネル23の下面には、シンチレータパネル24、反射層25及び放射線検知用光検出器26が順に配置されている。シンチレータパネル24の外周には、シンチレータを湿気などから保護する封止剤28が設けられている。筐体12内の底面には、制御基板29が配置されている。制御基板29とセンサパネル23とは、フレキシブルケーブル30を介して電気的に接続されている。
【0031】
図4は、放射線検出器19の端縁側の断面図である。センサパネル23は、シンチレータパネル24から放射された光を検出するものであり、平板状で平面視における外形形状が矩形状とされたセンサ基板33と、センサ基板33の下面に設けられた光センサ34とを備えている。光センサ34は、シンチレータから放射された光を電気信号に変換する複数の光電変換部が2次元アレイ状に配置されたものであり、光電変換部には、例えばアモルファスシリコン(a−Si)からなるフォトダイオード(PD:PhotoDiode)が用いられている。センサ基板33には、フォトダイオードを、例えばアモルファスシリコンの蒸着によって形成するために、耐熱性を有するガラス基板が用いられている。センサ基板33の厚みは、例えば700μm程度である。
【0032】
シンチレータパネル24は、センサ基板33上に蒸着によって設けられたシンチレータ37と、シンチレータ37の外周を覆う保護膜38とから構成されている。シンチレータ37は、被撮影者の体を透過して筐体12の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過して照射された放射線を吸収して光を放出する。一般に、シンチレータとしては、例えばCsI:Tl(タリウムを添加したヨウ化セシウム))や、CsI:Na(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(GdS:Tb)等の材料を用いることができる。本実施形態では、シンチレータ37として、センサ基板33にCsI:Tlを蒸着することにより、シンチレータ37からセンサパネル23に向かう光出射方向に沿って、複数の柱状結晶39を形成している。柱状結晶39は、その平均径が柱状結晶39の長手方向に沿っておよそ均一である。
【0033】
シンチレータ37で発生した光は、柱状結晶39のライトガイド効果によって柱状結晶39内を進行し、センサパネル23へ射出される。その際に、センサパネル23側へ射出される光の拡散が抑制されるので、放射線撮影装置7によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ37の深部に到達した光は、反射層25によってセンサパネル23側へ反射されるので、センサパネル23に入射される光量(シンチレータ37で発光された光の検出効率)が向上する。
【0034】
上記構成のシンチレータ37におけるCsIの充填率には適切な範囲があり、厚みにも依存するが、例えば70〜85%程度が最適である。すなわち、CsIの充填率が過小(例えば70%未満)になるとシンチレータ37の発光量の低下が顕著になる一方、CsIの充填率が過大に(例えば85%よりも高く)なると、ある厚み以上では隣り合う柱状結晶が接触し始めるために、柱状結晶間で光のクロストークが発生する。このクロストークが発生すると、シンチレータ37への放射線照射量のパターンに対してシンチレータ37からの光の射出光量のパターンが変化し、放射線検出精度の低下(照射された放射線を画像として検出する場合は検出画像の鮮鋭度の低下)が引き起こされる。従って、放射線検出の感度及び精度を確保するために、隣り合う柱状結晶の間には適当な大きさの隙間を設ける必要がある。
【0035】
保護膜38には、大気中の水分に対してバリア性を有する材料が用いられ、例えば熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。有機膜としては、ポリパラキシリレン製樹脂の熱CVD法によって形成された気相重合膜、または含フッ素化合物不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜が用いられる。また有機膜と無機膜の積層構造を用いることも出来、無機膜の材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)膜、酸化珪素(SiOx)膜、酸窒化珪素(SiOxNy)膜、Al等が好適である。
【0036】
なお、本実施形態では、シンチレータパネル24の放射線照射面側にセンサパネル23が配置されているが、シンチレータとセンサパネルとをこのような位置関係で配置する方式は、「表面読取方式(ISS:Irradiation Side Sampling)」と称する。シンチレータは、放射線入射側がより強く発光するので、シンチレータの放射線入射側に光検出部を配置する表面読取方式(ISS)は、シンチレータの放射線入射側と反対側に光検出部を配置する「裏面読取方式(PSS:Penetration Side Sampling)」よりも光検出部とシンチレータの発光位置とが接近することから、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、また光検出部の受光量が増大することで、結果として放射線撮影装置の感度が向上する。
【0037】
反射層25は、シンチレータ37により変換された短波長成分の光をセンサパネル23に向けて鏡面反射し、長波長成分の光を透過させる波長選択性を有している。反射層25には、例えばダイクロイックフィルタが用いられる。ダイクロイックフィルタは、熱に強く、経年変化がほとんど無いため、ダイクロイックフィルタの劣化による放射線画像の画質低下の問題が発生しない。また、ダイクロイックフィルタは、一般的なカラーフィルタに比べて光の通過率が高く、特性がシャープであるため、放射線画像の画質向上に資することができる。
【0038】
図5に示すように、CsI:Tlが発生する光は、発光ピーク波長が約565nmであり、幅広い波長域(400nm〜700nm)の光を含んでいる。シンチレータ37にCsI:Tlを用いる場合には、反射層25によって発光ピーク波長565nmよりも長い波長域、例えば620nm以上の波長域の光を透過させ、それ以下の短波長域の光をセンサパネル23に向けて反射させるのが好ましい。また、図6に示すように、シンチレータ37として、CsI:Naを用いる場合には、反射層25は、CsI:Naの発光ピーク波長(例えば、400nm程度)よりも長波長域の光、例えば480nm以上の波長域の光を透過し、それ以下の波長域の光を反射するのが好ましい。
【0039】
反射層25は、センサパネル23にシンチレータ37が蒸着され、保護膜38によってシンチレータ37が覆われた後に、保護膜38の密着力を用いてシンチレータパネル24に密着されている。なお、光透過性の高い接着剤により、反射層25とシンチレータパネル24とが貼り合わされていてもよい。
【0040】
図7に示すように、反射層25のシンチレータパネル24と対面する側と反対側に配置された放射線検知用光検出部26は、反射層25に対面するように並べられた例えば6枚の光検出器41によって構成されている。各光検出器41は、反射層25を透過してきた長波長成分の光を検出して検出信号を出力することにより、シンチレータ37が発光したか否か、すなわち放射線発生装置6から放射線が照射されたか否かを検出する。したがって、光検出器41の検出信号は放射線画像の形成には用いられないので、各光検出器41の検出面積は、破線で示すセンサパネル23の1つの光電変換部よりも大きなものとなっている。各光検出器41は、例えば、光透過性の高い接着剤によって反射層25に貼り付けられている。
【0041】
各光検出器41には、有機光電変換材料からなる光電変換膜を備えた光検出器を用いるのが好ましい。有機光電変換材料からなる光電変換膜は、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料を基板上に付着させることで形成させることができるため、基板に対して耐熱性は要求されない。したがって、有機光電変換材料からなる光電変換膜を用いた光検出器は、ある程度の厚みを必要とするガラス等の耐熱性基板を使用しなくて済むため、例えばa−Si等からなる光電変換膜を用いた光検出器よりも薄く構成することができる。
【0042】
次に、センサパネル23の光センサ34について説明する。図8に示すように、光センサ34は、フォトダイオード(PD:PhotoDiode)等からなる光電変換部46、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)47、及び蓄積容量48を備えた画素部49からなり、画素部49は、センサ基板33上にマトリクス状に複数形成されている。また、センサパネル23のうち、放射線の到来方向と反対側の面には、センサ基板33上を平坦にするための平坦化層50が形成されている。上述したように、センサパネル23は、接着層51によって天板13に貼り付けられている。
【0043】
光電変換部46は、下部電極46aと上部電極46bとの間に、シンチレータ37から放出された光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する光電変換膜46cが配置されて構成されている。なお、下部電極46aは、シンチレータ37から放出された光を光電変換膜46cに入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ37の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(TCO;Transparent Conducting Oxide)を用いることが好ましい。
【0044】
なお、下部電極46aとしてAuなどの金属薄膜を用いることもできるが、90%以上の光透過率を得ようとすると抵抗値が増大し易くなるため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO、TiO、ZnO等を用いることが好ましく、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からITOが最も好ましい。なお、下部電極46aは、全画素部共通の一枚構成としてもよいし、画素部毎に分割してもよい。
【0045】
光電変換膜46cを構成する材料は、光を吸収して電荷を発生する材料であればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料等を用いることができる。光電変換膜46cをアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ37から放出された光を広い波長域に亘って吸収するように構成することができる。アモルファスシリコンからなる光電変換膜46cの形成には、蒸着を行う必要があるため、センサ基板33には、耐熱性を有するガラス基板を用いるのが好ましい。
【0046】
TFT47は、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、更に活性層上にソース電極とドレイン電極が所定の間隔を隔てて形成されている。活性層は、例えばアモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかにより形成することができるが、活性層を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0047】
図9に示すように、光センサ34には、一定方向(行方向)に沿って延設され個々のTFT47をオンオフさせるための複数本のゲート配線54と、前記一定方向と交差する方向(列方向)に沿って延設され、蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積された電荷をオン状態のTFT47を介して読み出すための複数本のデータ配線55が設けられている。
【0048】
センサパネル23の個々のゲート配線54はゲート線ドライバ58に接続されており、個々のデータ配線55は信号処理部59に接続されている。被撮影者の体を透過した放射線(被撮影者の体の画像情報を担持した放射線)が放射線撮影装置7に照射されると、シンチレータ37のうち照射面11上の各位置に対応する部分からは、前記各位置における放射線の照射量に応じた光量の光が放出され、個々の画素部49の光電変換部46では、シンチレータ37のうちの対応する部分から放出された光の光量に応じた大きさの電荷が発生され、この電荷が個々の画素部49の蓄積容量48(及び光電変換部46の下部電極46aと上部電極46bの間)に蓄積される。
【0049】
上記のようにして個々の画素部49の蓄積容量48に電荷が蓄積されると、個々の画素部49のTFT47は、ゲート線ドライバ58からゲート配線54を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT47がオンされた画素部49の蓄積容量48に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線55を伝送されて信号処理部59に入力される。従って、個々の画素部49の蓄積容量48に蓄積された電荷は行単位で順に読み出される。
【0050】
信号処理部59は、個々のデータ配線55毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線55を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルの画像データへ変換される。
【0051】
信号処理部59には画像メモリ62が接続されており、信号処理部59のA/D変換器から出力された画像データは画像メモリ62に順に記憶される。画像メモリ62は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、撮影によって得られた画像データが画像メモリ62に順次記憶される。
【0052】
画像メモリ62は、放射線撮影装置7全体の動作を制御する制御部64と接続されている。制御部64は、マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU64a、ROM及びRAMを含むメモリ64b、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部64cを備えている。
【0053】
また、制御部64には無線通信部66が接続されている。無線通信部66は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。制御部64は、無線通信部66を介してコンソール8(図10参照)と無線通信が可能とされており、コンソール8との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0054】
また、放射線撮影装置7には電源部67が設けられており、上述した各種電子回路(ゲート線ドライバ58や信号処理部59、画像メモリ62、無線通信部66、制御部64等)は電源部67と各々接続され(図示省略)、電源部67から供給された電力によって作動する。電源部67は、放射線撮影装置7の可搬性を損なわないように、前述のバッテリ(二次電池)を内蔵しており、充電されたバッテリから各種電子回路へ電力を供給する。ゲート線ドライバ58、信号処理部59、画像メモリ62、制御部64、無線通信部66及び電源部67は、上述したケース20内、もしくは制御基板29に設けられている。
【0055】
制御部64は、放射線検知用光検出部26に接続されており、放射線検知用光検出部26から検出信号が入力されたときに、各光電変換部46を光電変換可能な状態にするためのリセット動作を開始させる。このリセット動作は、ゲート線ドライバ58によって個々の画素部49のTFT47を全てオンさせ、各画素部49の蓄積容量48に蓄積されている電荷をデータ配線55によって排出するものである。このリセット動作により、画素部49内に残留した電荷や、光電変換部46内の欠陥にトラップされた電荷等を原因とする暗電流が除去され、各光電変換部46は、シンチレータ37によって変換された光を検出可能な電荷蓄積モードに移行される。
【0056】
図10に示すように、コンソール8はコンピュータからなり、装置全体の動作を司るCPU71、制御プログラムを含む各種プログラム等が予め記憶されたROM72、各種データを一時的に記憶するRAM73、及び、各種データを記憶するHDD74を備え、これらはバスを介して互いに接続されている。またバスには、通信I/F部75及び無線通信部76が接続され、ディスプレイ77がディスプレイドライバ78を介して接続され、更に、操作パネル79が操作入力検出部80を介して接続されている。
【0057】
通信I/F部75は接続端子75a、通信ケーブル82及び放射線発生装置83の接続端子83aを介して放射線発生装置83と接続されている。コンソール8(のCPU71)は、放射線発生装置83との間での曝射条件等の各種情報の送受信を通信I/F部75経由で行う。無線通信部76は放射線撮影装置7の無線通信部66と無線通信を行う機能を備えており、コンソール8(のCPU71)は放射線撮影装置7との間で、画像データ等の各種情報の送受信を無線通信部76経由で行う。また、ディスプレイドライバ78はディスプレイ77への各種情報を表示させるための信号を生成・出力し、コンソール8(のCPU71)はディスプレイドライバ78を介して操作メニューや撮影された放射線画像等をディスプレイ77に表示させる。また、操作パネル79は複数のキーを含んで構成され、各種の情報や操作指示が入力される。操作入力検出部80は操作パネル79に対する操作を検出し、検出結果をCPU71へ通知する。
【0058】
放射線発生装置6は、放射線源85と、コンソール8との間で曝射条件等の各種情報の送受信を行う通信I/F部86と、コンソール8から受信した曝射条件(この曝射条件には管電圧、管電流の情報が含まれている)に基づいて放射線源85を制御する線源制御部87とを備えている。
【0059】
次に本実施形態の作用について説明する。放射線撮影装置7を使用して放射線画像の撮影を行う場合、撮影者(例えば放射線技師等)は、被撮影者の撮影対象部位と撮影台との間に、照射面11側を上方へ向けた放射線撮影装置7を挿入し、向きや位置等を調整する準備作業を行う。
【0060】
撮影者は、準備作業が完了すると、操作パネル79を操作して撮影開始を指示する。これにより、コンソール8では、曝射開始を指示する指示信号を放射線発生装置6へ送信し、放射線発生装置6は放射線源85から放射線を射出させる。放射線源85から射出された放射線は、被撮影者の体を透過して放射線撮影装置7の照射面11に照射され、天板13及びセンサパネル23を透過してシンチレータ37の照射に照射される。シンチレータ37は照射面に照射された放射線を吸収し、吸収した放射線量に応じた光量の光を射出する。
【0061】
図11は、放射線発生装置6による放射線の照射(S1)に基づいて行なわれる光電変換部46のリセット動作の手順を示している。放射線検出器19の一部を表した図12に示すように、シンチレータ37で発生した光の長波長成分90bは、反射層25を透過して放射線検知用光検出部26により検出され(S2)、放射線検知用光検出部26から制御部64に検出信号が送信される。制御部64は、ゲート線ドライバ58を制御して各光電変換部46をリセット(S3)する。これにより、各光電変換部46は、電荷蓄積モードに移行し、シンチレータ37で発生した光の検出を開始する。
【0062】
シンチレータ37で発生した光は、柱状結晶39内を全反射しながらセンサパネル23または反射層25に向かう。センサパネル23に向かった光は、光電変換部46によって検出される。また、反射層25に向かった光の短波長成分90aは、反射層25によって鏡面反射されてセンサパネル23に入射するので、センサパネル23の検出光量を増加させることができる。また、短波長成分90aは、比較的屈折しやすいので、反射層25に対する入射角度が臨界角以下になった場合でも、屈折して臨界角以上の入射角になりやすいので、シンチレータ37内での光の発生位置から近い位置でセンサパネル23に入射させることができる。
【0063】
また、短波長成分90aよりも屈性しにくい長波長成分90bは、反射層25に向けて伝播される間に光の発生位置から離れていくが、反射層25を透過する。これにより、長波長成分90bが反射層25で反射されてセンサパネル23に入射することはないので、長波長成分90bのクロストークを原因とする放射線画像のボケを抑制することができる。
【0064】
センサパネル23は、画素部49に照射された光を画像として検出し、画像メモリ62に画像データを記憶する。CPU64aは、画像メモリ62に記憶された画像データを無線通信部66によってコンソール70へ送信する。コンソール70のCPU71は、放射線撮影装置7から受信した画像データを、RAM73を介してHDD74に記憶する。また、CPU71は、ディスプレイドライバ78を介して、HDD74に記憶されている画像データからなる放射線画像をディスプレイ77に表示させる。
【0065】
従来の放射線撮影システムでは、放射線発生装置6からの放射線の照射に合わせて光電変換部46をリセットするため、図1に破線で示すように、放射線発生装置6と放射線撮影装置7とをケーブル92で接続し、放射線発生装置6が放射線を照射する際に、放射線発生装置6からケーブル92を介して放射線撮影装置7にタイミング信号を送信する場合があった。このような構成では、ケーブル92によって放射線撮影装置のハンドリング性が低下するという問題があった。これに対し、本実施形態では、放射線発生装置6と放射線撮影装置7との間を接続するケーブルが不要となるため、放射線撮影装置7のハンドリング性が向上する。また、従来の放射線撮影装置では、放射線画像のボケを抑制するため、シンチレータで発生した光の長波長成分が吸収層により吸収されて無駄になっていたが、本実施形態では、長波長成分の光を光電変換部のリセットタイミングを得るために有効に利用することができる。
【0066】
上記実施形態では、シンチレータ37から発生された光の波長に応じて反射層に反射と透過とを選択的に行なわせているが、例えば光の入射角度に応じて反射層に反射と透過とを選択的に行なわせてもよい。この場合、例えば、反射層に対する光の入射角度が柱状結晶の臨界角以上であるときには、反射層で反射し、反射層に対する光の入射角度が柱状結晶の臨界角以下であるときには、反射層を透過させればよい。このような構成であっても、上記実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0067】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、上記第1実施形態と同じ構成については、同符号を用いて詳しい説明は省略する。本実施形態の放射線検出器94の一部を表した図13に示すように、反射層25の光透過側にリセット用光源95を配置し、このリセット用光源95から放射された長波長域のリセット光96を、反射層25及びシンチレータ37を透過させてセンサパネル23に照射することにより、各光電変換部46を光リセットできるようにしている。
【0068】
光電変換部を有するセンサパネルを用いた放射線撮影装置では、静止画撮影などにおいて、暗電流が生じることがある。暗電流は、過去の放射線の照射履歴やバイアス印加履歴、光電変換部内に残留した転送残りによる残留電荷、アモルファスシリコン膜内の欠陥にトラップされたトラップ電荷等に起因している。暗電流が一定であれば、画像データの補正による対応が可能であるが、長期間の使用によって光電変換部の特性が劣化して暗電流が増えた場合には補正が難しくなる。また、複数フレームの撮影を行なう動画撮影などにおいては、アモルファスシリコンの温度上昇によって欠陥にトラップされていた電荷が放出されやすくなるため、画像領域内での電荷放出が不均一に発生し、各フレームの暗電流が一定でなくなり、補正が困難になることがある。
【0069】
その対策として、放射線撮影装置内に光源を配置し、その光源から光電変換部に光を照射することで、光電変換部の特性を改善する光リセットという技術が知られている。これによると、光照射により、光電変換部に強制的に電荷を発生させそれを画像情報として用いずに読み出したり、欠陥に取り込まれる分だけの電荷を発生させて欠陥準位を埋めたりすることにより、動画撮影時の暗電流をフレーム間で一定にすることができるので、フレーム間の補正が容易になる。
【0070】
リセット用光源95には、例えば、EL素子やLEDを用いることができる。リセット用光源95による光リセットは、例えば、コンソール8の操作パネル79を操作して撮影開始が指示され、コンソール8から曝射開始を指示する指示信号が放射線発生装置6及び放射線撮影装置7に送信されたときに実行されるのが好ましい。
【0071】
特許文献3に記載されているように、アモルファスシリコンからなる光電変換部46の光リセットには、赤外光、すなわち長波長域の光が好ましい。反射層25は、シンチレータ37で発生した長波長成分の光を透過することができるので、リセット用光源95から放射されたリセット光96も透過させることができ、反射層25により光リセットが阻害されることはない。また、本実施形態によれば、放射線が照射されない位置にリセット用光源95を配置することができるので、リセット用光源95が放射線の照射によって発光することがなく、ISS方式の放射線検出器にも好適である。
【0072】
[第3の実施形態]
第1及び第2実施形態では、反射層の光透過側に放射線検知用光検出部またはリセット用光源を配置した構成を説明したが、反射層の光透過側に、放射線検知用光検出部とリセット用光源との両方を配置してもよい。これによれば、第1及び第2実施形態両方の効果を得ることができる。
【0073】
しかし、反射層の下に放射線検知用光検出部、リセット用光源を順に配置した場合には、リセット用光源から照射されたリセット光が放射線検知用光検出部に吸収されてしまう。また、リセット光を放射線検知用光検出部によって吸収されないような波長にすると、反射層を透過することができなくなってしまう。これとは逆に、反射層の下にリセット用光源、放射線検知用光検出部を順に配置した場合には、リセット用光源によるリセット光の照射と、放射線検知用光検出部による光検出とが可能となるが、リセット用光源によって反射層を透過した長波長成分の光が遮られてしまうため、放射線検知の感度が低下してしまう。
【0074】
上記問題を解決するため、本実施形態の放射線検出器100は、図14及び図15に示すように、反射層25の光透過側に、センサパネル23の各光電変換部46からなる光電変換領域に対面する位置及び大きさを有し、反射層25及び前記シンチレータ37を通して光電変換部46に長波長成分からなるリセット光を照射するリセット用光源101を配置し、リセット用光源101の外周に放射線検知用光検出部102を配置している。これによれば、センサパネル23の光電変換領域にリセット光を確実に照射することができる。また、確実に放射線は、通常は撮影領域よりも広い範囲に照射されるので、リセット用光源101の外周に配置された放射線検知用光検出部102によって、放射線から変換された光を問題なく検出することができる。
【0075】
放射線検知用光検出部102は、第1実施形態の放射線検知用光検出部26と同様に、有機光電変換材料からなる光電変換膜を備えた光検出器からなり、反射層25を透過してきた長波長成分の光103を検出して検出信号を出力することにより、シンチレータ37が発光したか否か、すなわち放射線発生装置6から放射線が照射されたか否かを検出する。
【0076】
制御部64は、放射線検知用光検出部102から検出信号が入力されたときに、EL素子やLEDからなるリセット用光源101から、長波長成分のリセット光104をセンサパネル23の光電変換部46に照射させて光リセットさせる。また、制御部64は、ゲート線ドライバ58によって個々の画素部49のTFT47を全てオンさせ、各画素部49の蓄積容量48に蓄積されている電荷をデータ配線55によって排出する。このリセット動作により、各光電変換部46は、シンチレータ37によって変換された光を検出可能な電荷蓄積モードに移行される。
【0077】
なお、本実施形態では、リセット用光源101の外周に放射線検知用光検出部102を配置したが、センサパネル23の光電変換領域全体を光リセットすることができ、検出感度を低下させることなく放射線から変換された光を検出することができるのであれば、リセット用光源101及び放射線検知用光検出部102を第3の実施形態以外の配置構成で、配置してもよい。
【0078】
[第4の実施形態]
第1及び第2実施形態では、反射層25の光透過側に放射線検知用光検出部26またはリセット用光源95を配置したが、図16に示すように、反射層25の光透過側に何も配置せず、反射層25に照射された長波長成分の光をそのまま透過させてもよい。このような構成であっても、長波長成分90bが反射層25で反射されてセンサパネル23に入射することはないので、長波長成分90bのクロストークを原因とする放射線画像のボケを抑制することができる。
【0079】
[第5の実施形態]
また、上記実施形態では、光電変換部46の光電変換膜46cをアモルファスシリコンによって構成したが、光電変換膜46cは、有機光電変換材料を含む材料で構成してもよい。この場合、主に可視光域で高い吸収を示す吸収スペクトルが得られ、光電変換膜46cによるシンチレータ37から放出された光以外の電磁波の吸収が殆ど無くなるので、X線やγ線等の放射線が光電変換膜46cで吸収されることで発生するノイズを抑制できる。また、有機光電変換材料からなる光電変換膜46cは、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて有機光電変換材料をセンサ基板33上に付着させることで形成させることができ、センサ基板33に対して耐熱性は要求されない。このため、ガラス以外の材質からなるセンサ基板を用いることもできる。
【0080】
光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜46cで放射線が殆ど吸収されないので、放射線が透過するようにセンサパネル23が配置される表面読取方式(ISS)において、センサパネル23を透過することによる放射線の減衰を抑制することができ、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜46cを有機光電変換材料で構成することは、特に表面読取方式(ISS)に好適である。
【0081】
光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、シンチレータ37から放出された光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ37の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ37の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ37から放出された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ37の放射線に対する発光ピーク波長との差が10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0082】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えばキナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えばキナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ37の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜46cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。
【0083】
放射線検出パネルに適用可能な光電変換膜46cについて具体的に説明する。放射線検出パネルにおける電磁波吸収/光電変換部位は、電極46a、46bと、該電極46a,46bに挟まれた光電変換膜46cを含む有機層である。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等を積み重ねるか、若しくは混合することで形成することができる。
【0084】
上記有機層は、有機p型化合物または有機n型化合物を含有することが好ましい。有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質を有する有機化合物である。さらに詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容し易い性質を有する有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性を有する有機化合物であれば何れの有機化合物も使用可能である。
【0085】
有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料や、光電変換膜46cの構成については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0086】
また、光電変換部46は、少なくとも電極対46a,46bと光電変換膜46cを含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜及び正孔ブロッキング膜の少なくとも何れかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0087】
電子ブロッキング膜は、上部電極46bと光電変換膜46cとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極46bから光電変換膜46cに電子が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。電子ブロッキング膜には電子供与性有機材料を用いることができる。実際に電子ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、若しくはそれより小さいIpを有するものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0088】
電子ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0089】
正孔ブロッキング膜は、光電変換膜46cと下部電極46aとの間に設けることができ、上部電極46bと下部電極46aとの間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極46aから光電変換膜46cに正孔が注入されて暗電流が増加してしまうことを抑制することができる。正孔ブロッキング膜には電子受容性有機材料を用いることができる。実際に正孔ブロッキング膜に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜46cの材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、かつ、隣接する光電変換膜46cの材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、若しくはそれより大きいEaを有するものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0090】
正孔ブロッキング膜の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、光電変換部46の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0091】
なお、光電変換膜46cで発生した電荷のうち、正孔が下部電極46aに移動し、電子が上部電極46bに移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜の位置を逆にすれば良い。また、電子ブロッキング膜と正孔ブロッキング膜は両方設けることは必須ではなく、何れかを設けておけば、或る程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0092】
また、TFT47の活性層を形成可能な非晶質酸化物としては、例えば、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0093】
また、活性層を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0094】
TFT47の活性層を非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちの何れかによって形成すれば、X線等の放射線を吸収せず、或いは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0095】
また、活性層をカーボンナノチューブで形成した場合、TFT47のスイッチング速度を高速化することができ、また、TFT47における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層にごく微量の金属性不純物が混入しただけでTFT47の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層の形成に用いる必要がある。
【0096】
なお、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は何れも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜46cと、活性層を有機半導体材料で形成したTFT47と、を組み合わせた構成であれば、患者の体の重みが荷重として加わるセンサパネル23の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0097】
また、センサ基板3は、光透過性を有し且つ放射線の吸収が少ないものであればよい。ここで、TFT47の活性層を構成する非晶質酸化物や、光電変換部46の光電変換膜46cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、センサ基板33としては、半導体基板、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、合成樹脂製の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このような合成樹脂製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。なお、センサ基板33には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0098】
なお、アラミドは200度以上の高温プロセスを適用できるため、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドはITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて基板を薄型化できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層してセンサ基板33を形成してもよい。
【0099】
また、バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べてセンサ基板33を薄型化できる。
【0100】
センサ基板33としてガラス基板を用いた場合、センサパネル23全体としての厚みは、例えば0.7mm程度になるが、センサ基板33として光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いることにより、センサパネル23全体としての厚みを、例えば0.1mm程度に薄型化できると共に、センサパネル23に可撓性をもたせることができる。また、センサパネル23に可撓性をもたせることで、放射線撮影装置7の耐衝撃性が向上し、放射線撮影装置7に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は何れも放射線の吸収が少なく、センサ基板33をこれらの材料で形成した場合、センサ基板33による放射線の吸収量も少なくなるため、表面読取方式(ISS)によりセンサパネル23を放射線が透過する構成であっても、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0101】
また、光センサとして、CMOSセンサ、あるいは光電変換部(フォトダイオード)に有機光電変換材料を用いた有機CMOSセンサを使用してもよい。基板に単結晶シリコンを用いるCMOSセンサまたは有機CMOSセンサは、アモルファスシリコンを用いた光電変換部と比べてキャリア移動度が3〜4桁ほど速く、放射線透過性が高いという特性を有しているためISS方式の放射線検出器に好適である。なお、有機CMOSセンサについては、特開2009−212377号公報において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0102】
上記CMOSセンサまたは有機CMOSセンサにフレキシブル性を付与するため、CMOSセンサまたは有機CMOSセンサを、プラスチックフイルム上に形成された有機薄膜トランジスタによって構成してもよい。なお、有機薄膜トランジスタについては、「Tsuyoshi Sekitani、「Flexible organic transistors and circuits with extreme bending stability」、Nature Materials 9、平成22年11月7日、p.1015-1022」において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0103】
また、上記CMOSセンサまたは有機CMOSセンサにフレキシブル性を付与するため、フレキシブル性を有するプラスチック基板上に、単結晶シリコンによって形成されたフォトダイオード及びトランジスタを配置した構成を用いてもよい。プラスチック基板上へのフォトダイオード及びトランジスタの配置には、例えば、数十ミクロン程度の大きさのデバイスブロックを溶液中で散布し、任意の基板上の必要な位置に配置する技術であるFluidic Self-Assembly(FSA)法を用いることができる。なお、FSA法については、「前澤宏一、「Fluidic Self-Assemblyのための共鳴トンネルデバイスブロック作製技術」、電子情報通信学会技術研究報告 ED,電子デバイス、社団法人電子情報通信学会、平成20年6月6日、108巻、87号、p.67-71」において詳細に説明されているので、詳しい説明は省略する。
【0104】
上記実施形態では、柱状結晶からなるシンチレータを用いた放射線検出器を例に説明したが、柱状結晶以外のシンチレータを用いた放射線検出器にも適用可能である。また、ISS方式の放射線検出装置を例に説明したが、本発明は、PSS方式の放射線検出装置にも適用が可能である。また、放射線検出器をカセッテサイズの筐体に組み込む例について説明したが、立位型、臥位型の撮影装置や、マンモグラフィ装置に組み込むことも可能である。また、放射線としてX線を例に説明したが、α線等のその他の放射線についても適用可能である。その他、上記の実施形態で説明した本発明に係る放射線撮影装置の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0105】
5 放射線撮影システム
6 放射線発生装置
7 放射線撮影装置
8 コンソール
19 放射線検出器
23 センサパネル
24 シンチレータパネル
25 反射層
26 放射線検知用光検出部
37 シンチレータ
39 柱状結晶
90a 短波長成分
90b 長波長成分
95 リセット用光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線を光に変換するシンチレータと、
前記シンチレータの光出射側に配置され、前記シンチレータにより変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換部が2次元アレイ状に配置されたセンサパネルと、
前記シンチレータの光出射側と反対側に配置され、前記シンチレータによって変換された光を選択的に前記センサパネルに向けて反射または透過させる反射層と、を備えたことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
前記反射層は、前記シンチレータにより変換された光の波長に応じて、選択的に前記センサパネルに向けて反射または透過させることを特徴とする請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記反射層は、前記シンチレータによって変換された光の短波長成分を前記センサパネルに向けて反射し、長波長成分の光を透過させることを特徴とする請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記反射層を透過した光を検出する放射線検知用光検出部と、
前記放射線検知用光検出部による光の検出に基づいて、前記センサパネルの各光電変換部をリセットする制御部と、を備えたことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記放射線検知用光検出部は、有機光電変換材料からなることを特徴とする請求項4記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記放射線検知用光検出部は、前記反射層に対面するように並べられた複数の光検出器からなり、前記光検出器は、前記センサパネルの1つの光電変換部よりも大きな検出面積を有することを特徴とする請求項4または5記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記反射層及び前記シンチレータを通して前記センサパネルの光電変換部に長波長成分からなるリセット光を照射するリセット用光源を備えたことを特徴とする請求項3記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記反射層の前記シンチレータに対面する側と反対側に、前記反射層及び前記シンチレータを通して前記センサパネルの光電変換部に長波長成分からなるリセット光を照射するリセット用光源と、前記放射線検知用光検出部を並べて配置したことを特徴とする請求項4〜6いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項9】
前記リセット用光源は、前記センサパネルの各光電変換部からなる光電変換領域に対面する位置及び大きさを有し、前記放射線検知用光検出部は、前記リセット用光源の外周にを配置されていることを特徴とする請求項8記載の放射線撮影装置。
【請求項10】
前記反射層は、ダイクロイックフィルタであることを特徴とする請求項1〜9いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項11】
前記センサパネルは、前記シンチレータの放射線照射側に配置されており、前記シンチレータには、前記センサパネルを透過した放射線が照射されることを特徴とする請求項1〜10いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項12】
前記シンチレータは、複数の立設された柱状結晶からなることを特徴とする請求項1〜11いずれか記載の放射線撮影装置。
【請求項13】
前記シンチレータには、ヨウ化セシウムが用いられていることを特徴とする請求項12記載の放射線撮影装置。
【請求項14】
放射線を発生する放射線発生装置と、
前記放射線発生装置から照射された放射線を光に変換するシンチレータ、前記シンチレータの光出射側に配置され前記シンチレータにより変換された光を電気信号に変換する複数の光電変換部が2次元アレイ状に配置されたセンサパネル、前記シンチレータの光出射側と反対側に配置され前記シンチレータによって変換された光を選択的に前記センサパネルに向けて反射または透過させる反射層、前記反射層を透過した光を検出する放射線検知用光検出部、及び前記放射線検知用光検出部による光の検出に基づいて前記センサパネルの各光電変換部をリセットする制御部、を備えたことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項15】
シンチレータによって放射線から変換された光を反射層によって選択的にセンサパネルに向けて反射または透過させ、
前記反射層を透過した光を検出したときに、前記センサパネルに設けられた複数の光電変換部をリセットすることを特徴とする放射線撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−229940(P2012−229940A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97089(P2011−97089)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】