放射線検出器およびそれを用いた撮像装置
【課題】画像の品質向上または放射線感度の向上を図ることができる放射線検出器およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】シンチレータ31のX線入射面側に読み出しパターンPを積層形成している。したがって、入射されたX線は読み出しパターンPを透過した後にシンチレータ31の入射面側で大部分が停止して可視光フォトンphに変換される。このとき、シンチレータ31の入射面側の近傍に読み出しパターンPがあるので、可視光フォトンphが散乱することなく、あるいは散乱しても可視光フォトンphがさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンPでキャリアとして変換されて読み出される。その結果、画像の品質向上を図ることができる。
【解決手段】シンチレータ31のX線入射面側に読み出しパターンPを積層形成している。したがって、入射されたX線は読み出しパターンPを透過した後にシンチレータ31の入射面側で大部分が停止して可視光フォトンphに変換される。このとき、シンチレータ31の入射面側の近傍に読み出しパターンPがあるので、可視光フォトンphが散乱することなく、あるいは散乱しても可視光フォトンphがさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンPでキャリアとして変換されて読み出される。その結果、画像の品質向上を図ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野、工業分野、さらには原子力分野などに用いられる放射線検出器およびそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出された放射線に基づいて撮像を行う撮像装置は、放射線を検出する放射線検出器を備えている。X線検出器を例に採って説明する。X線検出器はX線感応型のX線変換層(変換層)を備えており、X線の入射によりX線変換層はキャリア(電荷情報)に変換し、その変換されたキャリアを読み出すことでX線を検出する。X線変換層としては非晶質のアモルファスセレン(a−Se)膜が用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
被検体にX線を照射して放射線撮像を行う場合には、被検体を透過した放射線像がアモルファスセレン膜上に投影されて、像の濃淡に比例したキャリアが膜内に発生する。その後、膜内で生成されたキャリアが、2次元状に配列されたキャリア収集電極に収集されて、所定時間(『蓄積時間』とも呼ばれる)分だけ積分された後、薄膜トランジスタを経由して外部に読み出される。
【0004】
このようなX線検出器を製造するには、2次元状に配列された薄膜トランジスタからなるスイッチング素子や上述したキャリア収集電極などをパターン形成したガラス基板(絶縁基板)上に、アモルファスセレン膜を蒸着することで得られる(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
ところで、ガラス基板上に蒸着あるいは印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって有機分子で薄膜トランジスタなどのパターンを形成する技術が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。有機分子の中でも、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子は蒸着によって形成するのに適しており、有機高分子は転写やインクジェット法によって形成するのに適している。
【0006】
なお、上述したX線変換層を備えたX線検出器は、X線変換層がX線を直接にキャリアに変換する「直接変換型」と呼ばれる検出器であるが、X線を光に変換して、光をキャリアに変換する「間接変換型」と呼ばれる検出器がある。この検出器の場合には、上述したX線変換層の替わりに、シンチレータなどの変換層と光感応型の物質で形成された変換層(例えばフォトダイオード)とを備えている。入射したX線をシンチレータによって光に変換し、フォトダイオードによってその光をキャリアに変換する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第5,262,649号明細書
【非特許文献1】W. Zhao, et al. , "A flat panel detector for digital radiology using active matrix readout of amorphous selenium," Proc. SPIE Vol. 2708, pp. 523 - 531, 1996.
【非特許文献2】S. Adachi, et al. , "Experimental Evaluation of a-Se and CdTe flat-panel X-ray detector for Digital Radiology and Fluoroscopy," Proc. SPIE Vol. 3977, pp. 38 - 47, 2000.
【非特許文献3】“「有機トランジスタ、プリンタブル集積回路」−ナノエレクトロニクス”、[online]、インターネット< URL : http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/printableofet/2.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば「間接変換型」のX線検出器において、入射されたX線はシンチレータの入射面側で大部分が停止する。したがって、シンチレータの層の厚みが厚いとシンチレータによって変換された光は散乱により拡がってしまい、撮像によって得られた画像の空間分解能を著しく劣化させてしまう原因となる。図4にそのときの概略図を示す。通常は、図4に示すように、絶縁基板WのX線入射面側に読み出しパターンPを積層形成して、積層形成された読み出しパターンPのX線入射面側にシンチレータ31をさらに積層形成する。ここで、読み出しパターンは、シンチレータ31によって変換された可視光フォトンphをキャリアに変換して読み出すものであって、薄膜トランジスタやキャリア収集電極やフォトダイオードなどを含む。なお、フォトダイオードは、可視光フォトンphをキャリアに変換する変換層である。
【0008】
図4からも明らかなように、入射されたX線はシンチレータ31の入射面側で可視光フォトンphに変換される。したがって、シンチレータ31の厚みが厚いと読み出しパターンPのフォトダイオードに到達するまでに可視光フォトンphは散乱により拡がってしまう。
【0009】
また、「間接変換型」以外の「直接変換型」のX線検出器であっても、シンチレータやX線変換層の厚みが逆に薄すぎると、X線が層を透過して突き抜けてしまう。突き抜けたX線は、当然キャリア(X線検出信号)にならないので、X線感度の低下を招く原因となる。例えば、X線停止能力(ストッピングパワー)のかなり高いCsIをかなり厚く(例えば500μm程度)積層形成しても、捉えることができるX線は入射されたX線の70%程度であって残りの30%は信号損失となる。図11にそのときの概略図を示す。図4でも述べたように、絶縁基板WのX線入射面側に読み出しパターンPおよびシンチレータ31を順に積層形成する。
【0010】
図11からも明らかなように、シンチレータ31の厚みが薄すぎると、X線がシンチレータ31を透過して突き抜けてしまい、光に変換することができない。その結果、その光に基づいてキャリアに変換することもできなくなる。したがって、X線感度の低下を招く原因となる。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、画像の品質向上または放射線感度の向上を図ることができる放射線検出器およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
すなわち、ガラス基板などに代表される絶縁基板上にスイッチング素子やキャリア収集電極などをパターン形成した後に、アモルファスセレン膜などに代表される変換層をX線入射面側に積層形成するという発想でなく、変換層のX線入射面側にパターン形成するという逆の発想に着目してみた。してみると、上述した非特許文献3の基板の替わりに変換層を用いれば、変換層のX線入射面側に蒸着あるいは印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によってパターン形成することが可能になる。そして、「間接変換型」のように変換層がシンチレータの場合には、X線は読み出しパターンを透過した後にシンチレータの入射面側で大部分が停止して光に変換される。このとき、シンチレータの入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンでキャリアとして読み出されて、画像の品質向上が図れるという知見を得た。
【0013】
さらに、「間接変換型」や「直接変換型」を含めて、変換層とを2つに分けて、一方の変換層のX線入射面側に読み出しパターンを積層形成し、読み出しパターンのX線入射面側に他方の変換層を積層形成する、すなわち2つの変換層で読み出しパターンを挟み込むことで、X線入射面側の変換層をX線が突き抜けたとしても、X線入射面側とは逆の方向の変換層によって突き抜けたX線を捉えることができるので、X線感度の向上が図れるという知見を得た。
【0014】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、変換された電荷情報を読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成することを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、読み出しパターンを第1変換層の放射線入射面側に積層形成する。入射された放射線は読み出しパターンを透過した後に第1変換層の入射面側で大部分が停止して光の情報に変換される。このとき、第1変換層の入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンで電荷情報として変換されて読み出される。その結果、画像の品質向上を図ることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成することを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、第1変換層の放射線入射面側に読み出しパターンを積層形成し、読み出しパターンの放射線入射面側に第2変換層を積層形成する、すなわち2つの変換層で読み出しパターンを挟み込むことで、放射線入射面側にある第2変換層を放射線が突き抜けたとしても、放射線入射面側とは逆の方向にある第1変換層によって突き抜けた放射線を捉えることができる。また、放射線入射面側にある第2変換層でも突き抜けなかった放射線を捉える場合があるので、第1変換層で捉えられた放射線と併せて放射線感度の向上を図ることができる。
【0018】
上述したこれらの発明の材料における読み出しパターンの一例は、読み出しパターンの少なくとも一部を有機薄膜で形成することである(請求項3に記載の発明)。読み出しパターンの少なくとも一部を有機薄膜で形成する場合には、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子は後述する蒸着によって読み出しパターンを形成するのに適しており、有機高分子は後述する印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって読み出しパターンを形成するのに適している。
【0019】
上述したこれらの発明の読み出しパターンの形成の一例は、読み出しパターンの少なくとも一部を蒸着によって形成することである(請求項4に記載の発明)。蒸着の場合には、上述した有機低分子で読み出しパターンを形成するのが好ましい。
【0020】
上述したこれらの発明の読み出しパターンの形成の他の一例は、読み出しパターンの少なくとも一部を印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって形成することである(請求項5に記載の発明)。印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)の場合には、上述した有機高分子で読み出しパターンを形成するのが好ましい。また、印刷塗布製膜の場合に、有機薄膜以外の無機薄膜や金属で読み出しパターンの少なくとも一部(例えば配線部分)を形成することも可能である。
【0021】
上述したこれらの発明の一例は、読み出しパターンを薄膜シート上に形成し、薄膜シート上に形成された読み出しパターンと第1変換層とを貼り合わせることである(請求項6に記載の発明)。この場合には、読み出しパターンと第1変換層との間に薄膜シートが介在した放射線検出器を実現することができる。
【0022】
また、上述したこれらの発明の他の一例は、第1変換層の放射線入射面側に読み出しパターンを直接に積層形成することである(請求項7に記載の発明)。この場合には、読み出しパターンが第1変換層に直接に接触した放射線検出器を実現することができる。
【0023】
また、上述したこれらの発明の他の一例は、読み出しパターンと第2変換層とを貼り合わせることである(請求項8に記載の発明)。この貼り合わせによって放射線検出器を実現することができる。
【0024】
また、上述したこれらの発明において、第1変換層の放射線入射面側とは逆方向に、あるいは第1変換層および第2変換層の少なくとも一方に、光を反射させる光反射層を積層形成するのが好ましい(請求項9に記載の発明)。光が変換層から検出器の外部に向かって散乱しても、光反射層によって内部に戻すことができる。したがって、外部に向かって散乱した光をも捉えることができ、画像の品質向上または放射線感度の向上を図ることができる。
【0025】
また、上述したこれらの発明のさらなる他の一例は、放射線の情報に基づいた光の情報を電荷情報に変換する光電変換層を読み出しパターンに含むことである(請求項10に記載の発明)。これによって、光の情報は読み出しパターンに含まれた光電変換層によって電荷情報に変換されつつ、その電荷情報が読み出しパターンで読み出される。
【0026】
また、請求項11に記載の発明は、放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、変換された電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とするものである。
【0027】
[作用・効果]請求項11に記載の発明によれば、入射された放射線は読み出しパターンを透過した後に第1変換層の入射面側で大部分が停止して光の情報に変換され、第1変換層の入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンで電荷情報として変換されて読み出され、画像の品質向上を図ることができる。その結果、放射線を正確に検出することができる。かかる検出器を撮像装置が用いているので、画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【0028】
また、請求項12に記載の発明は、放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成するとともに、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成し、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とするものである。
【0029】
[作用・効果]請求項12に記載の発明によれば、放射線入射面側にある第2変換層を放射線が突き抜けたとしても、放射線入射面側とは逆の方向にある第1変換層によって突き抜けた放射線を捉えることができるので、放射線感度の向上を図ることができる。その結果、放射線を正確に検出することができる。かかる検出器を撮像装置が用いているので、画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係る放射線検出器およびそれを用いた撮像装置によれば、入射された放射線は読み出しパターンを透過した後に第1変換層の入射面側で大部分が停止して光の情報に変換され、第1変換層の入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンで電荷情報として変換されて読み出され、画像の品質向上を図ることができる(請求項1に記載の発明)、あるいは放射線入射面側にある第2変換層を放射線が突き抜けたとしても、放射線入射面側とは逆の方向にある第1変換層によって突き抜けた放射線を捉えることができるので、放射線感度の向上を図ることができる(請求項2に記載の発明)。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るに係るX線透視撮影装置のブロック図であり、図2は、X線透視撮影装置に用いられている側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路であり、図3は、平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1では、放射線検出器としてフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」という)を例に採るとともに、撮像装置としてX線透視撮影装置を例に採って説明する。また、実施例1〜8では「間接変換型」のFPDとして以下を説明する。
【0032】
後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1に係るX線透視撮影装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、被検体Mを透過したX線を検出するFPDユニット3とを備えている。
【0033】
X線透視撮影装置は、他に、天板1の昇降および水平移動を制御する天板制御部4や、後述するFPDユニット3のFPD30の走査を制御するFPD制御部5や、X線管2の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部6を有するX線管制御部7や、後述するFPDユニット3のA/D変換器37から出力されたX線検出信号に基づいて種々の処理を行う画像処理部8や、これらの各構成部を統括するコントローラ9や、処理された画像などを記憶するメモリ部10や、オペレータが入力設定を行う入力部11や、処理された画像などを表示するモニタ12などを備えている。
【0034】
なお、天板制御部4、FPD制御部5、電圧発生部6を有するX線管制御部7、画像処理部8、コントローラ9、メモリ部10、入力部11、モニタ12などで撮像処理部13を構成している。この撮像処理部13とFPDユニット3との間には電気ケーブル14を介在させ、この電気ケーブル14によって、FPDユニット3と撮像処理部13とを互いに電気的に接続する。電気ケーブル14については、パーソナルコンピュータの汎用インターフェイスであるUSBケーブルなどに代表される有線ケーブルを用いる。また、FPDユニット3と撮像処理部13のように外部との間でデータ転送を行う場合には、電気ケーブル14のような有線ケーブルに限定されずに、無線データ転送であってもよいし、メモリーカードなどに代表される記憶媒体にデータを記憶させて、その記憶媒体をFPDユニット3あるいは撮像処理部13から読み出すことによるオフライン転送であってもよい。
【0035】
天板制御部4は、天板1を水平移動させて被検体Mを撮像位置にまで収容したり、昇降、回転および水平移動させて被検体Mを所望の位置に設定したり、水平移動させながら撮像を行ったり、撮像終了後に水平移動させて撮像位置から退避させる制御などを行う。FPD制御部5は、後述するFPD30ごとFPDユニット3を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させることによる走査に関する制御などを行う。高電圧発生部6は、X線を照射させるための管電圧や管電流を発生してX線管2に与え、X線管制御部7は、X線管2を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させるによる走査に関する制御や、X線管3側のコリメータ(図示省略)の照視野の設定の制御などを行う。なお、X線管2やFPD30の走査の際には、X線管2から照射されたX線をFPD30が検出できるようにX線管2およびFPD30ごとFPDユニット3が互いに対向しながらそれぞれの移動を行う。
【0036】
コントローラ9は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、メモリ部10は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。また、入力部11は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。X線透視撮影装置では、被検体Mを透過したX線をFPD30が検出して、検出されたX線に基づいて画像処理部8で画像処理を行うことで被検体Mの撮像を行う。画像処理部8は、この発明における画像処理手段に相当する。
【0037】
FPDユニット3は、FPD30を備えている。このFPD30は、図2に示すように、X線などの放射線が入射することにより光に変換するシンチレータ31と、シンチレータ31の放射線入射面側に設けられた電圧印加電極32と、電圧印加電極32の放射線入射面側に設けられたキャリア収集電極33と、電圧印加電極32の放射線入射面側に設けられ、かつ変換された光をキャリアに変換するフォトダイオードPDと、そのキャリアを取り出すための通常時OFF(遮断)の電荷取り出し用のスイッチ素子である薄膜トランジスタ(TFT)Trとを備えている。なお、光が後述する読み出しパターンのフォトダイオードPDに入射できるように、電圧印加電極32は、ITOなどに代表される透明電極で形成されている。シンチレータ31は、この発明における第1変換層に相当し、フォトダイオードPDは、この発明における光電変換層に相当する。
【0038】
この他に、後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1では、薄膜トランジスタTrのソースに接続されているデータ線34と、薄膜トランジスタTrのゲートに接続されているゲート線35とを備えており、シンチレータ31,電圧印加電極32,フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35が積層されて構成されている。フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35で、図4以降の図面にも示すように、読み出しパターンPを構成する。読み出しパターンPは、この発明における読み出しパターンに相当する。
【0039】
したがって、シンチレータ31の放射線入射面側に読み出しパターンPを設けることになる。また、シンチレータ31で変換された光を読み出しパターンPによってキャリアに変換して読み出す。また、後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1では、フォトダイオードPDを読み出しパターンPに含むように構成している。
【0040】
図2、図3に示すように、縦・横式2次元マトリックス状配列で多数個(例えば、1024個×1024個や4096×4096個)形成されたキャリア収集電極33ごとに、上述した各々の薄膜トランジスタTrがそれぞれ接続されており、それらキャリア収集電極33,および薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。また、電圧印加電極32は、全検出素子DUの共通電極として全面にわたって形成されている。また、上述したデータ線34は、図3に示すように、横(X)方向に複数本に並列されているとともに、上述したゲート線35は、図3に示すように、縦(Y)方向に複数本に並列されており、各々のデータ線34およびゲート線35は各検出素子DUに接続されている。また、データ線34はアンプアレイ回路36に接続されるとともに、アンプアレイ回路36はA/D変換器37に接続されており、ゲート線35はゲートドライバ回路38に接続されている。なお、検出素子DUの配列個数は上述の1024個×1024個や4096×4096個だけでなく、実施形態に応じて配列個数を変更して使用することができる。したがって、検出素子DUが1個のみの形態であってもよい。
【0041】
続いて、本実施例1に係るX線透視撮影装置およびフラットパネル型X線検出器(FPD)の作用について説明する。電圧印加電極32に、例えば1V〜10V程度のバイアス電圧VAを印加した状態で、検出対象である放射線を入射させる。このバイアス電圧VAの印加の制御についてもFPD制御部5から行う。
【0042】
放射線の入射によってシンチレータ31は光に変換し、その光が透明電極である電圧印加電極32を透過した後に読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射される。その光の入射によってフォトダイオードPDは電荷情報としてキャリアを生成する。ゲートドライバ回路38の信号取り出し用の走査信号(すなわちゲート駆動信号)によって、ゲート線35が選択されて、さらに選択されたゲート線35に接続されている検出素子DUが選択指定される。その指定された検出素子DUでの電荷が、選択されたゲート線35の信号によってON状態に移行した薄膜トランジスタTrを経由して、データ線34に読み出される。
【0043】
また、各検出素子DUのアドレス(番地)指定は、データ線34およびゲート線35の信号取り出し用の走査信号(ゲート線35の場合にはゲート駆動信号、データ線34の場合にはアンプ駆動信号)に基づいて行われる。アンプアレイ回路36やゲートドライバ回路38に信号取り出し用の走査信号が送り込まれると、ゲートドライバ回路38から縦(Y)方向の走査信号(ゲート駆動信号)に従って各検出素子DUが選択される。そして、横(X)方向の走査信号(アンプ駆動信号)に従ってアンプアレイ回路36が切り換えられることによって、選択された検出素子DUでの電荷が、データ線34を介してアンプアレイ回路36に送り出される。そして、アンプアレイ回路36で増幅されて、X線検出信号としてアンプアレイ回路36から出力されてA/D変換器37に送り込まれる。A/D変換器37は、FPD30からの電荷信号であるX線検出信号をディジタル化して取り出す。
【0044】
上述の動作によって、例えばX線透視撮影装置の透視X線像の検出に本実施例1に係るFPD30を用いた場合、データ線34を介して外部に読み出された電荷情報(X線検出信号)が画像情報に変換されて、X線透視画像として出力される。
【0045】
ところで、FPDユニット3は、筐体(図示省略)で構成されており、上述したFPD30やアンプアレイ回路36やA/D変換器37やゲートドライバ回路38の他に、燃料電池からなる蓄電池(バッテリ)や記憶媒体(いずれも図示省略)などを収納している。より具体的には、弾性体で形成されたフレキシブル基板(図示省略)によってFPD30と回路用基板(図示省略)とを電気的に接続し、その回路用基板にアンプアレイ回路36やA/D変換器37やゲートドライバ回路38などを搭載する。そして、これらの基板やFPD30などを収納した後に、ゲル状の樹脂(図示省略)を封入してモールドすることで、筐体内の隙間を埋めて、FPD30などを固定する。なお、筐体は、電気または磁気シールド加工が施された樹脂であるのが好ましい。
【0046】
次に、本実施例1に係るFPD30の構造について、図5を参照して説明する。また、本実施例1との比較のための従来のFPDの構造についても、上述した図4を参照して説明する。図4は、図5との比較のための従来のFPDの概略断面図であって、図5は、実施例1に係るFPD30の概略断面図である。
【0047】
上述したように、従来の場合には、図4に示すように、絶縁基板Wの放射線(ここではX線)入射面側に読み出しパターンPを積層形成して、積層形成された読み出しパターンPのX線入射面側にシンチレータ31をさらに積層形成している。入射されたX線はシンチレータ31の入射面側で可視光フォトンphに変換される。したがって、シンチレータ31の厚みが厚いと読み出しパターンPのフォトダイオードに到達するまでに可視光フォトンphは散乱により拡がってしまう。
【0048】
これに対して、本実施例1の場合には、図5に示すように、シンチレータ31の放射線入射面側に読み出しパターンPを積層形成している。したがって、入射された放射線(ここではX線)は読み出しパターンPを透過した後にシンチレータ31の入射面側で大部分が停止して可視光フォトンphに変換される。このとき、シンチレータ31の入射面側の近傍に読み出しパターンPがあるので、可視光フォトンphが散乱することなく、あるいは散乱しても可視光フォトンphがさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンPでキャリア(電荷情報)として変換されて読み出される。その結果、画像の品質向上を図ることができる。
【0049】
また、X線を正確に検出することができる。かかるFPD30のような検出器を撮像装置としてX線透視撮影装置が用いているので、画像処理部8による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【0050】
また、本実施例1の場合には、従来のような絶縁基板がなくても読み出しパターンPを積層形成して、FPD30を構成することができる。絶縁基板は、通常、1mm程度のガラス板で形成されており、ガラス板はバリウム(Ba)などの重金属を含む。したがって、X線を従来とは逆側の裏面(図4では図中の下面)から入射させたとしても、図4のような従来の構造を用いた場合には、絶縁基板WのBaなどの重金属によってX線の減衰を招いてしまう。ところが、本実施例1の場合には、従来のような絶縁基板がないので、入射されたX線は読み出しパターンPを減衰せずに透過、あるいは減衰しても絶縁基板ほどに減衰せずに透過して、シンチレータ31に入射することができるという効果をも奏する。
【0051】
次に、FPD30の製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、実施例1に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。図6では、図中の上面をX線の入射面としている。
【0052】
先ず、図6(a)に示すようにシンチレータ31のX線入射面(図6の図中の上面)側に電圧印加電極32を蒸着によって積層形成する。シンチレータ31を形成する半導体については、CsI、Cd2O2Sなどに例示されるように、用途に応じて適宜選択することができる。また、電圧印加電極32については、シンチレータ31によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射できるように、上述したようにITOなどに代表される透明電極で形成するのが好ましい。
【0053】
電圧印加電極32を形成した後に、電圧印加電極32のX線入射面(上面)側に、図6(b)〜図6(g)に示すように読み出しパターンPとしてフォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35を積層形成する。以下に、より具体的に説明する。
【0054】
図6(b)に示すように、電圧印加電極32の上面にフォトダイオードPDを積層形成する。フォトダイオードPDを積層形成した後に、図6(b)に示すように、フォトダイオードPDの上面にキャリア収集電極33を積層形成する。なお、後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1ではこの発明における光電変換層として、フォトダイオードPDを採用したが、フォトダイオード以外でも光感応型の物質で形成された変換層であれば、光電変換層として用いることができる。
【0055】
キャリア収集電極33を積層形成した後に、図6(c)に示すように、キャリア収集電極33の上面に絶縁膜41を積層形成する。そして、絶縁膜41にスルーホール(貫通孔)としてバイアVIAを設ける。図6(d)に示すように、絶縁膜41の上面にペンタセンで形成されたゲートチャンネル42を積層形成するとともに、バイアVIAの上面にキャリア収集電極33の一部としてバイアVIAを介して電気的に接続されたキャリア収集電極43を積層形成する。このゲートチャンネル42の一端の上面にキャリア収集電極43を積層形成するとともに、ゲートチャンネル42の他端の上面にデータ線34を積層形成する。
【0056】
これら絶縁膜41やゲートチャンネル42やキャリア収集電極43やデータ線34の上面に、図6(e)に示すように、絶縁膜44を積層形成する。図6(f)に示すように、この絶縁膜44の上面に、ゲートGを積層形成する。なお、ゲートGとゲート線35(図2、図3を参照)とは電気的に接続されるように図示を省略する配線やスルーホールで電気的に接続する。
【0057】
さらに、これら絶縁膜44やゲートGの上面に、図6(g)に示すように、絶縁膜45を積層形成する。この絶縁膜45の上面に保護層46(図6では図示省略)を積層形成することで、図2および図5に示すような構造となる(ただし、図2は等価回路)。そして、キャリア収集電極43のゲートチャンネル42側の一端と、データ線34のゲートチャンネル42の一端と、ゲートチャンネル42と、ゲートGと、絶縁膜44とで薄膜トランジスタTrを構成する。これらフォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35の積層形成は、読み出しパターンPの積層形成である。
【0058】
読み出しパターンPの積層形成については、読み出しパターンPの全てを有機薄膜で積層形成してもよいし、読み出しパターンPの少なくとも一部を有機薄膜で積層形成してもよい。有機薄膜による読み出しパターンPの積層形成については、具体的には以下のようなものがある。
【0059】
例えば、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33(図6のキャリア収集電極43も含む),薄膜トランジスタTrの少なくとも一部を有機薄膜で積層形成するとともに、データ線34およびゲート線35の少なくとも一部も有機薄膜で積層形成してもよい。データ線34およびゲート線35を有機薄膜で積層形成する場合には、導電性有機材料を用いる。また、キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTrの少なくとも一部を有機薄膜で積層形成するとともに、データ線34およびゲート線35の少なくとも一部を無機薄膜(例えばITOなどの透明電極)や金属で積層形成して、フォトダイオードPDを変換層の薄膜で積層形成してもよい。
【0060】
有機薄膜の中でも、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子(本実施例1ではゲートチャンネル42をペンタセンで形成)と、有機高分子とがあり、両者のうちのいずれかを選択することで具体的な積層形成方法が異なる。読み出しパターンPとして有機低分子を選択した場合には蒸着によって積層形成を行い、読み出しパターンPとして有機高分子を選択した場合には印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって積層形成を行う。
【0061】
有機高分子を選択した場合には、キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTrの導体部分(例えばキャリア収集電極33、薄膜トランジスタTrのゲートGなど)をPEDOT(ポリチオフェン系)やPPV(ポリフェニレンビニレン)などに代表される導電性有機材料で形成する。また、絶縁膜41,44,45をポリイミドやポリビニルフェノールなどで形成する。
【0062】
なお、データ線34およびゲート線35の少なくとも一部を有機薄膜以外の無機薄膜や金属で積層形成する場合でも、印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって積層形成を行うことが可能である。この場合には、好ましくは酸化し難い材料(例えば銀や金や白金などの貴金属)をナノサイズ(10-9mm程度)の粒子にして、印刷によってデータ線34やゲート線35の積層形成を行う。また、データ線34やゲート線35のような配線を、上述した蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術(例えばスパッタリングなど)を利用して積層形成してもよい。
【0063】
また、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTrの一部を有機薄膜以外の無機薄膜(例えばアモルファスシリコン)で積層形成する場合には、データ線34やゲート線35でも述べたように、蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術(例えばスパッタリングなど)を利用して積層形成してもよい。
【0064】
このように、読み出しパターンPの少なくとも一部を有機薄膜で形成する場合には、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子は蒸着によって読み出しパターンPを形成するのに適しており、有機高分子は印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって読み出しパターンPを形成するのに適している。したがって、蒸着の場合には有機低分子で読み出しパターンPを形成するのが好ましく、印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)の場合には有機高分子で読み出しパターンPを形成するのが好ましい。また、印刷の場合に、有機薄膜以外の無機薄膜や金属で読み出しパターンの一部(例えばデータ線34やゲート線35のような配線)を形成することも可能である。
【0065】
なお、透明電極であった電圧印加電極32と同様に、読み出しパターンPにおいて、データ線34やゲート線35などの配線、キャリア収集電極33やゲートGなどの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。例えば、シンチレータ31に対してフォトダイオードPDがこれらの配線や電極を挟んで積層形成されている場合には、これらの配線や電極が介在していても、シンチレータ31によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに減衰することなく入射することができる。
【実施例2】
【0066】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図7は、実施例2に係るFPD30の概略断面図であり、図8は、実施例2に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。実施例1と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0067】
上述した実施例1では、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35からなる読み出しパターンPを、シンチレータ31のX線入射面側に設けられた電圧印加電極32の入射面(図6の図中の上面)側に積層形成することで、この発明における第1変換層であるシンチレータ31の入射面側に読み出しパターンPを積層形成する構造であったが、本実施例2では、図7に示すように、読み出しパターンPとシンチレータ31との間に、電圧印加電極32の他にさらに薄膜シートSを介在させる構造である。そのために、本実施例2では、図8に示すようにFPD30を製造する。薄膜シートSを樹脂系の材料で形成する。なお、薄膜シートSについては合成樹脂などのように可塑性であるのが好ましい。可塑性を有することで薄膜シートSに後述する貼り合わせによる力が加わっても、その力に応じて薄膜シートSの形状を自在に変えることができ、貼り合わせの際の密着性を高めることができる。また、薄膜シートSは光透過性のあるプラスチックフィルムであるのが好ましい。光透過性にすることでシンチレータ31によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに減衰することなく入射することができる。薄膜シートSは、この発明における薄膜シートに相当する。
【0068】
先ず、図8(a)に示すように薄膜シートSのX線入射面(上面)側に電圧印加電極32を蒸着によって積層形成する。そして、電圧印加電極32の上面に読み出しパターンPの少なくとも一部を、蒸着あるいは印刷塗布製膜によって形成する。この読み出しパターンPの積層形成は、実施例1の図6(b)〜図6(g)と同様なので、その説明を省略する。読み出しパターンPを形成する材料や積層形成方法については、上述した実施例1を適用すればよい。薄膜シートS上に形成された読み出しパターンPと、シンチレータ31とを貼り合わせる。この貼り合わせの際には、図8(c)に示すように薄膜シートSがシンチレータ31に直接的に接触するように行う。この貼り合わせによって、読み出しパターンPとシンチレータ31との間に電圧印加電極32および薄膜シートSが介在する。
【0069】
上述した本実施例2に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30によれば、読み出しパターンPとこの発明における第1変換層であるシンチレータ31との間に薄膜シートSが介在したFPD30を実現することができる。
【実施例3】
【0070】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。
図9は、実施例3に係るFPD30の概略断面図である。実施例1,2と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0071】
上述した実施例1,2では、シンチレータ31の放射線(ここではX線)入射面側とは逆方向には光を反射させる光反射層がない構造であったが、本実施例3では、図9に示すように光反射層47を設ける構造である。図9(a)は、実施例1のように薄膜シートSがない構造に光反射層47を設けた場合で、図9(b)は、実施例2のように薄膜シートSを介在させた構造に光反射層47を設けた場合である。
【0072】
いずれの場合においても、図9に示すように、シンチレータ31の入射面側で変換された可視光フォトンphが入射面側とは逆方向、すなわちFPD30の外部に散乱する場合がある。このように、可視光フォトンphがシンチレータ31からFPD30のような検出器の外部に向かって散乱しても、光反射層47によって内部に戻すことができる。したがって、外部に向かって散乱した可視光フォトンphをも捉えることができ、画像の品質向上をより一層図ることができる。光反射層47は、この発明における光反射層に相当する。
【実施例4】
【0073】
次に、図面を参照してこの発明の実施例4を説明する。
図10は、実施例4に係る側面視したフラットパネル型X線検出器(FPD)30の等価回路である。実施例1〜3と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0074】
上述した実施例1〜3では、読み出しパターンPをこの発明における第1変換層であるシンチレータ31の放射線入射面側に積層形成する構造であったが、後述する実施例5〜8も含めて、本実施例4では、図10や後述する図12、図13などにも示すように、読み出しパターンPを半導体厚膜51の放射線入射面側に積層形成して、シンチレータ52を読み出しパターンPの放射線入射面側に積層形成する構造である。つまり、半導体厚膜51とシンチレータ52とで読み出しパターンPを挟んだサンドイッチ構造(以下、実施例4〜7の構造を『サンドイッチ構造』と略記する)である。
【0075】
なお、後述する実施例5〜7も含めて、本実施例4では、半導体厚膜51は、シンチレータ52と同様にX線を光に変換する蛍光型の半導体であって、後述する実施例8では、半導体厚膜51は、放射線の入射でキャリアが生成される放射線感応型の半導体である。
【0076】
具体的に説明すると、後述する実施例5〜7も含めて、本実施例4では、図10に示すように、FPD30は、半導体厚膜51と、半導体厚膜51の放射線入射面側に設けられた読み出しパターンP(フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35)と、その読み出しパターンPの放射線入射面側に設けられた電圧印加電極32と、電圧印加電極32の放射線入射面側に設けられたシンチレータ52とを備えている。本実施例4でも電圧印加電極32は、ITOなどに代表される透明電極で形成されている。後述する実施例5〜8も含めて、本実施例4では、半導体厚膜51は、この発明における第1変換層に相当し、シンチレータ52は、この発明における第2変換層に相当する。また、上述した実施例1〜3と同様に、実施例4〜7においても、フォトダイオードPDは、この発明における光電変換層に相当し、読み出しパターンPは、この発明における読み出しパターンに相当する。
【0077】
読み出しパターンPの構造およびFPD30周辺の回路(ゲートドライバ回路38やアンプアレイ回路36)との電気的な接続の態様については、上述した実施例1〜3と同様なので、その説明を省略する。
【0078】
次に、本実施例4に係るFPD30の構造について、図12を参照して説明する。また、本実施例4との比較のための従来のFPDの構造についても、上述した図11を参照して説明する。図11は、図12との比較のための従来のFPDの概略断面図であって、図12は、実施例4に係るFPD30の概略断面図である。また、図11は、同じく従来のFPDであった図5の構造のうち、シンチレータの厚みを薄くした構造であって、他の構造については図5と同じである。
【0079】
上述したように、従来の場合には、図11に示すように、絶縁基板Wの放射線(ここではX線)入射面側に読み出しパターンPを積層形成して、積層形成された読み出しパターンPのX線入射面側にシンチレータ31をさらに積層形成している。したがって、シンチレータ31の厚みが薄すぎると、X線がシンチレータ31を透過して突き抜けてしまい、光に変換することができなくなる。その結果、その光に基づいてシンチレータ31がキャリアに変換することもできなくなる。したがって、X線感度の低下を招く原因となる。
【0080】
これに対して、本実施例4の場合には、図12に示すように、変換層は、この発明における第1変換層である半導体厚膜51とこの発明における第2変換層であるシンチレータ52とで構成され、半導体厚膜51およびシンチレータ52で読み出しパターンPを挟み込むサンドイッチ構造としている。したがって、放射線(ここではX線)入射面側にあるシンチレータ52を放射線(ここではX線)が突き抜けたとしても、放射線(ここではX線)入射面側とは逆の方向にある半導体厚膜51によって突き抜けたX線を捉えることができる。また、入射面側にあるシンチレータ52でも突き抜けなかったX線を捉える場合があるので、半導体厚膜51で捉えられたX線と併せてX線感度の向上を図ることができる。
【0081】
また、X線を正確に検出することができる。かかるFPD30のような検出器を撮像装置としてX線透視撮影装置が用いているので、画像処理部8による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【0082】
また、本実施例4の場合にも、上述した実施例1と同様に、従来のような絶縁基板がなくても読み出しパターンPを積層形成して、FPD30を構成することができる。X線を従来とは逆側の裏面(図11では図中の下面)から入射させたとしても、図11のような従来の構造を用いた場合には、絶縁基板WのBaなどの重金属によってX線の減衰を招いてしまう。ところが、本実施例4の場合には、従来のような絶縁基板がないので、入射されたX線は読み出しパターンPを減衰せずに透過、あるいは減衰しても絶縁基板ほどに減衰せずに透過して、半導体厚膜51あるいはシンチレータ52に入射することができるという効果をも奏する。
【0083】
なお、変換層が放射線(ここではX線)の入射によりキャリア(電荷情報)に変換するタイプで、かつその変換されたキャリアを読み出しパターンPで読み出すFPD30のタイプ、すなわち放射線をキャリアに直接に変換した「直接変換型」と、変換層が放射線(ここではX線)の入射により光に変換するタイプで、かつその変換された光に基づいてキャリアに変換して、その光に基づいたキャリアを読み出しパターンPで読み出すFPD30のタイプ、すなわち放射線を光に一旦変換した後にキャリアに変換することで放射線をキャリアに間接的に変換した「間接変換型」とがある。
【0084】
本実施例4において、変換層は、上述した半導体厚膜51およびシンチレータ52からなり、シンチレータ52をX線が突き抜けて半導体厚膜51でそのX線を捉えた場合と、シンチレータ52でX線を捉えた場合とで、各変換層におけるタイプが異なることがある。
【0085】
例えば、本実施例4のように、半導体厚膜51がシンチレータ52と同様にX線を光に変換する蛍光型の半導体であれば、図12に示すような構造となって、半導体厚膜51またはシンチレータ52でX線をそれぞれ捉えると可視光フォトンphにそれぞれ変換されて読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射される。そして、フォトダイオードPによってキャリアに変換される。この場合には、半導体厚膜51側においてもシンチレータ52側においても、ともに「間接変換型」となる。
【0086】
また、後述する実施例8のように、半導体厚膜51が放射線の入射でキャリアが生成される放射線感応型の半導体であれば、図22に示すような構造となって、シンチレータ52でX線を捉えると可視光フォトンphに変換されて読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射される。そして、フォトダイオードPによってキャリアに変換される。一方、半導体厚膜51でX線を捉えるとキャリアelecに変換されて、読み出しパターンPのキャリア収集電極33に直接に読み出される。このとき、キャリア収集電極33がキャリアを収集するために、図22に示すようにキャリアを溜めるコンデンサCaを備えている。この場合には、シンチレータ52においては「間接変換型」となり、半導体厚膜51においては「直接変換型」となり、「間接変換型」および「直接変換型」が混合したFPD30となる。
【0087】
次に、本実施例4におけるFPD30の製造方法について、図13を参照して説明する。図13は、実施例4に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。図13でも、図中の上面をX線の入射面としている。
【0088】
先ず、図13(a)に示す半導体厚膜51のX線入射面(上面)に、図13(b)〜図13(f)に示すように読み出しパターンPを積層形成する。この読み出しパターンPの積層形成は、実施例1の図6(b)〜図6(g)とはほぼ逆の手順となる。半導体厚膜51を形成する半導体については、CdTe、CdZnTe、PbI2、PbOや、アモルファスセレンなどのようなアモルファス型の半導体や多結晶型の半導体などに例示されるように、用途に応じて適宜選択することができる。読み出しパターンPを形成する材料や積層形成方法については、上述した実施例1を適用すればよい。
【0089】
図13(b)に示すように半導体厚膜51の上面にゲートGを積層形成し、半導体厚膜51およびゲートGの上面に絶縁膜45を積層形成する。ゲートGおよび絶縁膜45を積層形成した後に、図13(c)に示すように、ゲートGにゲートチャンネル42が対向するように、ゲートチャンネル42、キャリア収集電極43およびデータ線34を積層形成する。
【0090】
薄膜トランジスタTr(図13(f)を参照)を構成するゲートチャンネル42やキャリア収集電極43やデータ線34などを積層形成した後は、図13(d)に示すように、絶縁膜44を積層形成して、その絶縁膜44にバイアVIAを設ける。図13(e)に示すように、このバイアVIAの上面にキャリア収集電極43を一部としてバイアVIAを介して電気的に接続されたキャリア収集電極33を積層形成する。そして、キャリア収集電極33を積層形成した後に、キャリア収集電極33の上面にフォトダイオードPDを積層形成する。この図13(b)〜図13(e)を経て、実施例1の図6(b)〜図6(g)とはほぼ逆の手順で積層形成された読み出しパターンPが完成する。
【0091】
図13(f)に示すように、読み出しパターンPのフォトダイオードPDの上面に実施例1と同様の電圧印加電極32を積層形成する。そして、電圧印加電極32の上面にシンチレータ52を積層形成する。また、電圧印加電極32についても、上述した実施例1と同様に、シンチレータ52によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射できるように、ITOなどに代表される透明電極で形成するのが好ましい。
【0092】
また、実施例1でも述べたように、読み出しパターンPにおいて、データ線34やゲート線35などの配線、キャリア収集電極33やゲートGなどの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。
【実施例5】
【0093】
次に、図面を参照してこの発明の実施例5を説明する。
図14は、実施例5に係るFPD30の概略断面図であり、図15は、実施例5に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。実施例4と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0094】
上述した実施例4では、この発明における第1変換層である半導体厚膜51のX線入射面側に読み出しパターンPを直接に積層形成する構造であったが、本実施例4では、図14に示すように、読み出しパターンPと半導体厚膜51との間に薄膜シートSを介在させる構造である。そのために、本実施例5では、図15に示すようにFPD30を製造する。薄膜シートSの材料や効果については、実施例2と同様である。つまり、本実施例5は、図14に示すように、実施例2の薄膜シートSと実施例4のサンドイッチ構造とを組み合わせた実施例である。
【0095】
先ず、図15(a)に示す薄膜シートSに、図15(b)に示すように読み出しパターンPや電圧印加電極32やシンチレータ52を積層形成する。この読み出しパターンPや電圧印加電極32やシンチレータ52の積層形成は、実施例4の図13(b)〜図13(f)と同様なので、その説明を省略する。読み出しパターンPを形成する材料や積層形成方法については、上述した実施例1を適用すればよい。
【0096】
図15(c)に示すように、薄膜シートS上に電圧印加電極32やシンチレータ52とともに形成された読み出しパターンPと、半導体厚膜51とを貼り合わせる。この貼り合わせの際には、図15(d)に示すように薄膜シートSが半導体厚膜51に直接的に接触するように行う。この貼り合わせによって、読み出しパターンPと半導体厚膜51との間に薄膜シートSが介在する。
【0097】
上述した本実施例4に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30によれば、読み出しパターンPとこの発明における第1変換層である半導体厚膜51との間に薄膜シートSが介在したFPD30を実現することができる。
【実施例6】
【0098】
次に、図面を参照してこの発明の実施例6を説明する。
図16は、実施例6に係るFPD30の概略断面図であり、図17は、実施例6に係るFPD3の製造工程を示す概略断面図である。実施例4,5と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0099】
上述した実施例5では、薄膜シートS上に形成された読み出しパターンPとこの発明における第1変換層である半導体厚膜51とを貼り合わせる構造であったが、本実施例6では、図16に示すように、読み出しパターンPと薄膜シートS上に形成されたこの発明における第2変換層であるシンチレータ52とを貼り合わせる構造である。
【0100】
先ず、図17(a)に示すように、薄膜シートSのX線入射面(上面)側に電圧印加電極32を蒸着によって積層形成する。そして、図17(b)に示すように、電圧印加電極32の上面にシンチレータ52を積層形成する。一方で、半導体厚膜51に読み出しパターンPを積層形成して、図17(c)に示すように、読み出しパターンPと薄膜シートS上に電圧印加電極32とともに形成されたシンチレータ52とを貼り合わせる。この貼り合わせの際には、図17(c)に示すように薄膜シートSが読み出しパターンPの保護層46に直接的に接触するように行う。この貼り合わせによって、読み出しパターンPとシンチレータ52との間に、電圧印加電極32および薄膜シートSが介在する。
【0101】
上述した本実施例6に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30によれば、この貼り合わせによってFPD30を実現することができる。なお、この貼り合わせの場合には、上述した実施例2や実施例5と相違して、貼り合わせを行う基台が薄膜シートS以外にも例えば電圧印加電極32がある。したがって、実施例2,5のように必ずしも薄膜シートSが必要でなく、電圧印加電極32にシンチレータ52を積層形成した後に、読み出しパターンPとシンチレータ52とを貼り合わせてもよい。この場合には、薄膜シートSが介在しないので、光をフォトダイオードに確実に入射させることができる。
【実施例7】
【0102】
次に、図面を参照してこの発明の実施例7を説明する。
図18〜図20は、実施例7に係るFPD30の概略断面図である。実施例4〜6と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0103】
上述した実施例4〜6では、半導体厚膜51およびシンチレータ52の各面には光を反射させる光反射層がない構造であったが、本実施例7では、半導体厚膜51およびシンチレータ52の少なくとも一方に光反射層47を設ける構造である。図18は、半導体厚膜51およびシンチレータ52の各面に光反射層47(47a,47b)を設けた場合で、図19は、シンチレータ52の上面(X線入射面)のみに光反射層47bを設けた場合で、図20は、半導体厚膜51の下面(X線入射面とは逆方向の面)のみに光反射層47aを設けた場合である。また、図18〜図20の各枝図の(a)は、実施例4のように薄膜シートSがない構造に光反射層47を設けた場合で、各枝図(b)は、実施例5,6のように薄膜シートSを介在させた構造に光反射層47を設けた場合である。
【0104】
半導体厚膜51の入射面側で変換された可視光フォトンphが入射面側とは逆方向、すなわちFPD30の外部に散乱する場合がある。このように、可視光フォトンphが半導体厚膜51からFPD30のような検出器の外部に向かって散乱しても、図18または図20に示すように、半導体厚膜51の下面に積層形成された光反射層47aによって内部に戻すことができる。
【0105】
一方、シンチレータ52の入射面側で変換された可視光フォトンphが入射面側、すなわちFPD30の外部に散乱する場合がある。このように、可視光フォトンphがFPD30のような検出器の外部に向かって散乱しても、図18または図19に示すように、シンチレータ52の上面に積層形成された光反射層47bによって内部に戻すことができる。
【0106】
したがって、いずれの場合においても、外部に向かって散乱した可視光フォトンphをも捉えることができ、画像の品質向上をより一層図ることができる。光反射層47a,47bは、この発明における光反射層に相当する。
【0107】
なお、上述した各実施例では、フォトダイオードPDを読み出しパターンPに含んでいている。したがって、光は読み出しパターンPに含まれたフォトダイオードPDによってキャリアに変換されつつ、そのキャリアが読み出しパターンPで読み出される。
【実施例8】
【0108】
次に、図面を参照してこの発明の実施例8を説明する。
図21は、実施例8に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30の概略断面図である。実施例4〜7と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0109】
上述した実施例4〜7では、上述したように、半導体厚膜51は、シンチレータ52と同様にX線を光に変換する蛍光型の半導体であったが、本実施例8では、半導体厚膜51は、放射線の入射でキャリアが生成される放射線感応型の半導体である。また、半導体厚膜51で変換されたキャリアを一旦溜めるために、図21や後述する図22、図23などにも示すように、コンデンサCaを新たに備えている。
【0110】
具体的に説明すると、本実施例8では、FPD30は、上述した実施例4における図10や図11と同様の構造に、図21〜図23に示すように、キャリア収集電極33への収集キャリアを溜める電荷蓄積用のコンデンサCaをさらに備えている。そして、コンデンサCaに蓄積された電荷(キャリア)を薄膜トランジスタTrが取り出すように構成されている。本実施例8では、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,コンデンサCa,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35で、図22、図23に示すように、読み出しパターンPを構成する。読み出しパターンPは、この発明における読み出しパターンに相当する。
【0111】
なお、本実施例8では、図21に示すように、各々のコンデンサCaおよび薄膜トランジスタTrがキャリア収集電極33ごとにそれぞれ接続されており、それらキャリア収集電極33,コンデンサCa,および薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。キャリアを読み出す際には、選択された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積された電荷(キャリア)が、データ線34を介してアンプアレイ回路36に送り出される。
【0112】
FPD30周辺の回路(ゲートドライバ回路38やアンプアレイ回路36)との電気的な接続の態様については、上述した実施例1〜7と同様なので、その説明を省略する。
【0113】
次に、本実施例8に係るFPD30の構造について、図22を参照して説明する。変換層は、この発明における第1変換層である半導体厚膜51とこの発明における第2変換層であるシンチレータ52とで構成され、半導体厚膜51およびシンチレータ52で読み出しパターンPを挟み込むサンドイッチ構造としているのは実施例4と同じである。相違点は、本実施例8では上述したように半導体厚膜51が放射線感応型の半導体であることと、コンデンサCaを新たに備えていることである。
【0114】
したがって、実施例4でも述べたように、シンチレータ52でX線を捉えると可視光フォトンphに変換されて読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射され、フォトダイオードPによってキャリアに変換される。一方、半導体厚膜51でX線を捉えるとキャリアelecに変換されて、読み出しパターンPのキャリア収集電極33に直接に読み出される。コンデンサCaに一旦溜められてデータ線34を介してアンプアレイ回路36に送り出される。
【0115】
次に、本実施例8におけるFPD30の製造方法について、図23を参照して説明する。図23は、実施例4に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。図23でも、図中の上面をX線の入射面としている。
【0116】
先ず、図23(a)に示す半導体厚膜51のX線入射面(上面)に、図23(b)に示すように、ゲートGおよび蓄積容量対向電極48を積層形成し、半導体厚膜51、ゲートGおよび蓄積容量対向電極48の上面に絶縁膜45を積層形成する。ゲートG、絶縁膜45および蓄積容量対向電極48を積層形成した後に、図23(c)に示すように、ゲートGにゲートチャンネル42が対向するとともに、蓄積容量対向電極48にキャリア収集電極43が対向するようにゲートチャンネル42、キャリア収集電極43およびデータ線34を積層形成する。この蓄積容量対向電極48については接地する。蓄積容量対向電極48などの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。
【0117】
ゲートチャンネル42やキャリア収集電極43やデータ線34などを積層形成した後は、図23(d)に示すように、絶縁膜44を積層形成して、その絶縁膜44にバイアVIAを設ける。図23(e)に示すように、このバイアVIAの上面にキャリア収集電極43を一部としてバイアVIAを介して電気的に接続されたキャリア収集電極33を積層形成する。そして、キャリア収集電極33を積層形成した後に、キャリア収集電極33の上面にフォトダイオードPDを積層形成する。
【0118】
図23(f)に示すように、読み出しパターンPのフォトダイオードPDの上面に実施例1と同様の電圧印加電極32を積層形成して、電圧印加電極32の上面にシンチレータ52を積層形成する。なお、キャリア収集電極43と絶縁膜44と蓄積容量対向電極48とでコンデンサCaを構成する。
【0119】
また、実施例1、4でも述べたように、読み出しパターンPにおいて、データ線34やゲート線35などの配線、キャリア収集電極33やゲートGなどの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。特に、本実施例8のように、半導体厚膜51でX線を捉えた場合には、半導体厚膜51によって変換されたキャリアが、これらの配線や電極を通って読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射するので、透明な導電材料の配線や電極を通っても減衰することなくフォトダイオードPDに入射することができる。
【0120】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0121】
(1)上述した各実施例では、図1に示すようなX線透視撮影装置を例に採って説明したが、この発明は、例えばC型アームに配設されたX線透視撮影装置にも適用してもよい。また、この発明は、X線CT装置にも適用してもよい。
【0122】
(2)上述した各実施例では、X線を検出するX線検出器を例に採って説明したが、この発明は、ECT(Emission Computed Tomography)装置のように放射性同位元素(RI)を投与された被検体から放射されるγ線を検出するγ線検出器に例示されるように、放射線を検出する放射線検出器であれば特に限定されない。同様に、この発明は、上述したECT装置に例示されるように、放射線を検出して撮像を行う装置であれば特に限定されない。
【0123】
(3)上述した実施例4〜8では、シンチレータ52に代表される第2変換層においては「間接変換型」であったが、「直接変換型」にも適用することができる。
【0124】
(4)上述した実施例8において、上述したキャリア収集電極33がキャリアを収集するのにコンデンサCaの容量に対して十分に収集できない場合には、そのコンデンサCaとは別に蓄積素子(例えば0.1〜10pF程度が最適)を配設してもよい。キャリア収集電極33がキャリアを収集するたびに容量の小さいコンデンサCaに一旦蓄積した後に、別に配設した蓄積素子にキャリアを収集するようにする。この蓄積素子の電極についても、有機薄膜あるいは無機薄膜のいずれであってもよい。
【0125】
(5)上述した各実施例では、読み出しパターンPの少なくとも一部を、蒸着あるいは印刷によって形成したが、読み出しパターンPの一部を、蒸着あるいは印刷によって形成して、それ以外の読み出しパターンPを、蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術(例えばスパッタリングなど)を利用して積層形成するというように、蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術と蒸着あるいは印刷とを組み合わせて読み出しパターンPを形成してもよい。蒸着や印刷以外のパターン技術として、上述したスパッタリング以外にも、液相に浸漬させてパターン形成を行うゾルーゲル法を用いてもよい。
【0126】
(6)上述した各実施例では、フォトダイオードPDは検出素子DUごとに分離形成されていたが、フォトダイオードPDを全面にわたって積層形成してもよい。また、フォトダイオードPDはPIN構造であってもよい。フォトダイオードPDの寄生容量が大きい場合には、上述した実施例8のようなコンデンサCaに代表される蓄積素子は必ずしも必要でない。
【0127】
(7)上述した各実施例では、フォトダイオードPDに代表される光電変換層を読み出しパターンPに含んで構成したが、読み出しパターンPに対して、フォトダイオードPDのみを電圧印加電極32などと同様に独自に積層形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】各実施例に係るX線透視撮影装置のブロック図である。
【図2】X線透視撮影装置に用いられている実施例1に係る側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図3】平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図4】図5との比較のための従来のフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図5】実施例1に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図6】(a)〜(g)は、実施例1に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図7】実施例2に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施例2に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図9】(a),(b)は、実施例3に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図10】実施例4に係る側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図11】図12との比較のための従来のフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図12】実施例4に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図13】(a)〜(f)は、実施例4に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図14】実施例5に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図15】(a)〜(c)は、実施例5に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図16】実施例6に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図17】(a)〜(c)は、実施例6に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図18】(a),(b)は、実施例7に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図19】(a),(b)は、実施例7に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図20】(a),(b)は、実施例7に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図21】実施例8に係る側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図22】実施例8に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図23】(a)〜(f)は、実施例8に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0129】
8 … 画像処理部
30 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
31、52 … シンチレータ
33、43 … キャリア収集電極
34 … データ線
35 … ゲート線
47 … 光反射層
51 … 半導体厚膜
Ca … コンデンサ
Tr … 薄膜トランジスタ
S … 薄膜シート
P … 読み出しパターン
PD … フォトダイオード
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野、工業分野、さらには原子力分野などに用いられる放射線検出器およびそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検出された放射線に基づいて撮像を行う撮像装置は、放射線を検出する放射線検出器を備えている。X線検出器を例に採って説明する。X線検出器はX線感応型のX線変換層(変換層)を備えており、X線の入射によりX線変換層はキャリア(電荷情報)に変換し、その変換されたキャリアを読み出すことでX線を検出する。X線変換層としては非晶質のアモルファスセレン(a−Se)膜が用いられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
被検体にX線を照射して放射線撮像を行う場合には、被検体を透過した放射線像がアモルファスセレン膜上に投影されて、像の濃淡に比例したキャリアが膜内に発生する。その後、膜内で生成されたキャリアが、2次元状に配列されたキャリア収集電極に収集されて、所定時間(『蓄積時間』とも呼ばれる)分だけ積分された後、薄膜トランジスタを経由して外部に読み出される。
【0004】
このようなX線検出器を製造するには、2次元状に配列された薄膜トランジスタからなるスイッチング素子や上述したキャリア収集電極などをパターン形成したガラス基板(絶縁基板)上に、アモルファスセレン膜を蒸着することで得られる(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
ところで、ガラス基板上に蒸着あるいは印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって有機分子で薄膜トランジスタなどのパターンを形成する技術が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。有機分子の中でも、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子は蒸着によって形成するのに適しており、有機高分子は転写やインクジェット法によって形成するのに適している。
【0006】
なお、上述したX線変換層を備えたX線検出器は、X線変換層がX線を直接にキャリアに変換する「直接変換型」と呼ばれる検出器であるが、X線を光に変換して、光をキャリアに変換する「間接変換型」と呼ばれる検出器がある。この検出器の場合には、上述したX線変換層の替わりに、シンチレータなどの変換層と光感応型の物質で形成された変換層(例えばフォトダイオード)とを備えている。入射したX線をシンチレータによって光に変換し、フォトダイオードによってその光をキャリアに変換する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】米国特許第5,262,649号明細書
【非特許文献1】W. Zhao, et al. , "A flat panel detector for digital radiology using active matrix readout of amorphous selenium," Proc. SPIE Vol. 2708, pp. 523 - 531, 1996.
【非特許文献2】S. Adachi, et al. , "Experimental Evaluation of a-Se and CdTe flat-panel X-ray detector for Digital Radiology and Fluoroscopy," Proc. SPIE Vol. 3977, pp. 38 - 47, 2000.
【非特許文献3】“「有機トランジスタ、プリンタブル集積回路」−ナノエレクトロニクス”、[online]、インターネット< URL : http://www.nanoelectronics.jp/kaitai/printableofet/2.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば「間接変換型」のX線検出器において、入射されたX線はシンチレータの入射面側で大部分が停止する。したがって、シンチレータの層の厚みが厚いとシンチレータによって変換された光は散乱により拡がってしまい、撮像によって得られた画像の空間分解能を著しく劣化させてしまう原因となる。図4にそのときの概略図を示す。通常は、図4に示すように、絶縁基板WのX線入射面側に読み出しパターンPを積層形成して、積層形成された読み出しパターンPのX線入射面側にシンチレータ31をさらに積層形成する。ここで、読み出しパターンは、シンチレータ31によって変換された可視光フォトンphをキャリアに変換して読み出すものであって、薄膜トランジスタやキャリア収集電極やフォトダイオードなどを含む。なお、フォトダイオードは、可視光フォトンphをキャリアに変換する変換層である。
【0008】
図4からも明らかなように、入射されたX線はシンチレータ31の入射面側で可視光フォトンphに変換される。したがって、シンチレータ31の厚みが厚いと読み出しパターンPのフォトダイオードに到達するまでに可視光フォトンphは散乱により拡がってしまう。
【0009】
また、「間接変換型」以外の「直接変換型」のX線検出器であっても、シンチレータやX線変換層の厚みが逆に薄すぎると、X線が層を透過して突き抜けてしまう。突き抜けたX線は、当然キャリア(X線検出信号)にならないので、X線感度の低下を招く原因となる。例えば、X線停止能力(ストッピングパワー)のかなり高いCsIをかなり厚く(例えば500μm程度)積層形成しても、捉えることができるX線は入射されたX線の70%程度であって残りの30%は信号損失となる。図11にそのときの概略図を示す。図4でも述べたように、絶縁基板WのX線入射面側に読み出しパターンPおよびシンチレータ31を順に積層形成する。
【0010】
図11からも明らかなように、シンチレータ31の厚みが薄すぎると、X線がシンチレータ31を透過して突き抜けてしまい、光に変換することができない。その結果、その光に基づいてキャリアに変換することもできなくなる。したがって、X線感度の低下を招く原因となる。
【0011】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、画像の品質向上または放射線感度の向上を図ることができる放射線検出器およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
すなわち、ガラス基板などに代表される絶縁基板上にスイッチング素子やキャリア収集電極などをパターン形成した後に、アモルファスセレン膜などに代表される変換層をX線入射面側に積層形成するという発想でなく、変換層のX線入射面側にパターン形成するという逆の発想に着目してみた。してみると、上述した非特許文献3の基板の替わりに変換層を用いれば、変換層のX線入射面側に蒸着あるいは印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によってパターン形成することが可能になる。そして、「間接変換型」のように変換層がシンチレータの場合には、X線は読み出しパターンを透過した後にシンチレータの入射面側で大部分が停止して光に変換される。このとき、シンチレータの入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンでキャリアとして読み出されて、画像の品質向上が図れるという知見を得た。
【0013】
さらに、「間接変換型」や「直接変換型」を含めて、変換層とを2つに分けて、一方の変換層のX線入射面側に読み出しパターンを積層形成し、読み出しパターンのX線入射面側に他方の変換層を積層形成する、すなわち2つの変換層で読み出しパターンを挟み込むことで、X線入射面側の変換層をX線が突き抜けたとしても、X線入射面側とは逆の方向の変換層によって突き抜けたX線を捉えることができるので、X線感度の向上が図れるという知見を得た。
【0014】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、変換された電荷情報を読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成することを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、読み出しパターンを第1変換層の放射線入射面側に積層形成する。入射された放射線は読み出しパターンを透過した後に第1変換層の入射面側で大部分が停止して光の情報に変換される。このとき、第1変換層の入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンで電荷情報として変換されて読み出される。その結果、画像の品質向上を図ることができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成することを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、第1変換層の放射線入射面側に読み出しパターンを積層形成し、読み出しパターンの放射線入射面側に第2変換層を積層形成する、すなわち2つの変換層で読み出しパターンを挟み込むことで、放射線入射面側にある第2変換層を放射線が突き抜けたとしても、放射線入射面側とは逆の方向にある第1変換層によって突き抜けた放射線を捉えることができる。また、放射線入射面側にある第2変換層でも突き抜けなかった放射線を捉える場合があるので、第1変換層で捉えられた放射線と併せて放射線感度の向上を図ることができる。
【0018】
上述したこれらの発明の材料における読み出しパターンの一例は、読み出しパターンの少なくとも一部を有機薄膜で形成することである(請求項3に記載の発明)。読み出しパターンの少なくとも一部を有機薄膜で形成する場合には、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子は後述する蒸着によって読み出しパターンを形成するのに適しており、有機高分子は後述する印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって読み出しパターンを形成するのに適している。
【0019】
上述したこれらの発明の読み出しパターンの形成の一例は、読み出しパターンの少なくとも一部を蒸着によって形成することである(請求項4に記載の発明)。蒸着の場合には、上述した有機低分子で読み出しパターンを形成するのが好ましい。
【0020】
上述したこれらの発明の読み出しパターンの形成の他の一例は、読み出しパターンの少なくとも一部を印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって形成することである(請求項5に記載の発明)。印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)の場合には、上述した有機高分子で読み出しパターンを形成するのが好ましい。また、印刷塗布製膜の場合に、有機薄膜以外の無機薄膜や金属で読み出しパターンの少なくとも一部(例えば配線部分)を形成することも可能である。
【0021】
上述したこれらの発明の一例は、読み出しパターンを薄膜シート上に形成し、薄膜シート上に形成された読み出しパターンと第1変換層とを貼り合わせることである(請求項6に記載の発明)。この場合には、読み出しパターンと第1変換層との間に薄膜シートが介在した放射線検出器を実現することができる。
【0022】
また、上述したこれらの発明の他の一例は、第1変換層の放射線入射面側に読み出しパターンを直接に積層形成することである(請求項7に記載の発明)。この場合には、読み出しパターンが第1変換層に直接に接触した放射線検出器を実現することができる。
【0023】
また、上述したこれらの発明の他の一例は、読み出しパターンと第2変換層とを貼り合わせることである(請求項8に記載の発明)。この貼り合わせによって放射線検出器を実現することができる。
【0024】
また、上述したこれらの発明において、第1変換層の放射線入射面側とは逆方向に、あるいは第1変換層および第2変換層の少なくとも一方に、光を反射させる光反射層を積層形成するのが好ましい(請求項9に記載の発明)。光が変換層から検出器の外部に向かって散乱しても、光反射層によって内部に戻すことができる。したがって、外部に向かって散乱した光をも捉えることができ、画像の品質向上または放射線感度の向上を図ることができる。
【0025】
また、上述したこれらの発明のさらなる他の一例は、放射線の情報に基づいた光の情報を電荷情報に変換する光電変換層を読み出しパターンに含むことである(請求項10に記載の発明)。これによって、光の情報は読み出しパターンに含まれた光電変換層によって電荷情報に変換されつつ、その電荷情報が読み出しパターンで読み出される。
【0026】
また、請求項11に記載の発明は、放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、変換された電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とするものである。
【0027】
[作用・効果]請求項11に記載の発明によれば、入射された放射線は読み出しパターンを透過した後に第1変換層の入射面側で大部分が停止して光の情報に変換され、第1変換層の入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンで電荷情報として変換されて読み出され、画像の品質向上を図ることができる。その結果、放射線を正確に検出することができる。かかる検出器を撮像装置が用いているので、画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【0028】
また、請求項12に記載の発明は、放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成するとともに、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成し、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とするものである。
【0029】
[作用・効果]請求項12に記載の発明によれば、放射線入射面側にある第2変換層を放射線が突き抜けたとしても、放射線入射面側とは逆の方向にある第1変換層によって突き抜けた放射線を捉えることができるので、放射線感度の向上を図ることができる。その結果、放射線を正確に検出することができる。かかる検出器を撮像装置が用いているので、画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
この発明に係る放射線検出器およびそれを用いた撮像装置によれば、入射された放射線は読み出しパターンを透過した後に第1変換層の入射面側で大部分が停止して光の情報に変換され、第1変換層の入射面側の近傍に読み出しパターンがあるので、光が散乱することなく、あるいは散乱しても光がさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンで電荷情報として変換されて読み出され、画像の品質向上を図ることができる(請求項1に記載の発明)、あるいは放射線入射面側にある第2変換層を放射線が突き抜けたとしても、放射線入射面側とは逆の方向にある第1変換層によって突き抜けた放射線を捉えることができるので、放射線感度の向上を図ることができる(請求項2に記載の発明)。
【実施例1】
【0031】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るに係るX線透視撮影装置のブロック図であり、図2は、X線透視撮影装置に用いられている側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路であり、図3は、平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1では、放射線検出器としてフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」という)を例に採るとともに、撮像装置としてX線透視撮影装置を例に採って説明する。また、実施例1〜8では「間接変換型」のFPDとして以下を説明する。
【0032】
後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1に係るX線透視撮影装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1と、その被検体Mに向けてX線を照射するX線管2と、被検体Mを透過したX線を検出するFPDユニット3とを備えている。
【0033】
X線透視撮影装置は、他に、天板1の昇降および水平移動を制御する天板制御部4や、後述するFPDユニット3のFPD30の走査を制御するFPD制御部5や、X線管2の管電圧や管電流を発生させる高電圧発生部6を有するX線管制御部7や、後述するFPDユニット3のA/D変換器37から出力されたX線検出信号に基づいて種々の処理を行う画像処理部8や、これらの各構成部を統括するコントローラ9や、処理された画像などを記憶するメモリ部10や、オペレータが入力設定を行う入力部11や、処理された画像などを表示するモニタ12などを備えている。
【0034】
なお、天板制御部4、FPD制御部5、電圧発生部6を有するX線管制御部7、画像処理部8、コントローラ9、メモリ部10、入力部11、モニタ12などで撮像処理部13を構成している。この撮像処理部13とFPDユニット3との間には電気ケーブル14を介在させ、この電気ケーブル14によって、FPDユニット3と撮像処理部13とを互いに電気的に接続する。電気ケーブル14については、パーソナルコンピュータの汎用インターフェイスであるUSBケーブルなどに代表される有線ケーブルを用いる。また、FPDユニット3と撮像処理部13のように外部との間でデータ転送を行う場合には、電気ケーブル14のような有線ケーブルに限定されずに、無線データ転送であってもよいし、メモリーカードなどに代表される記憶媒体にデータを記憶させて、その記憶媒体をFPDユニット3あるいは撮像処理部13から読み出すことによるオフライン転送であってもよい。
【0035】
天板制御部4は、天板1を水平移動させて被検体Mを撮像位置にまで収容したり、昇降、回転および水平移動させて被検体Mを所望の位置に設定したり、水平移動させながら撮像を行ったり、撮像終了後に水平移動させて撮像位置から退避させる制御などを行う。FPD制御部5は、後述するFPD30ごとFPDユニット3を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させることによる走査に関する制御などを行う。高電圧発生部6は、X線を照射させるための管電圧や管電流を発生してX線管2に与え、X線管制御部7は、X線管2を水平移動させたり、被検体Mの体軸の軸心周りに回転移動させるによる走査に関する制御や、X線管3側のコリメータ(図示省略)の照視野の設定の制御などを行う。なお、X線管2やFPD30の走査の際には、X線管2から照射されたX線をFPD30が検出できるようにX線管2およびFPD30ごとFPDユニット3が互いに対向しながらそれぞれの移動を行う。
【0036】
コントローラ9は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されており、メモリ部10は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体などで構成されている。また、入力部11は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。X線透視撮影装置では、被検体Mを透過したX線をFPD30が検出して、検出されたX線に基づいて画像処理部8で画像処理を行うことで被検体Mの撮像を行う。画像処理部8は、この発明における画像処理手段に相当する。
【0037】
FPDユニット3は、FPD30を備えている。このFPD30は、図2に示すように、X線などの放射線が入射することにより光に変換するシンチレータ31と、シンチレータ31の放射線入射面側に設けられた電圧印加電極32と、電圧印加電極32の放射線入射面側に設けられたキャリア収集電極33と、電圧印加電極32の放射線入射面側に設けられ、かつ変換された光をキャリアに変換するフォトダイオードPDと、そのキャリアを取り出すための通常時OFF(遮断)の電荷取り出し用のスイッチ素子である薄膜トランジスタ(TFT)Trとを備えている。なお、光が後述する読み出しパターンのフォトダイオードPDに入射できるように、電圧印加電極32は、ITOなどに代表される透明電極で形成されている。シンチレータ31は、この発明における第1変換層に相当し、フォトダイオードPDは、この発明における光電変換層に相当する。
【0038】
この他に、後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1では、薄膜トランジスタTrのソースに接続されているデータ線34と、薄膜トランジスタTrのゲートに接続されているゲート線35とを備えており、シンチレータ31,電圧印加電極32,フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35が積層されて構成されている。フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35で、図4以降の図面にも示すように、読み出しパターンPを構成する。読み出しパターンPは、この発明における読み出しパターンに相当する。
【0039】
したがって、シンチレータ31の放射線入射面側に読み出しパターンPを設けることになる。また、シンチレータ31で変換された光を読み出しパターンPによってキャリアに変換して読み出す。また、後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1では、フォトダイオードPDを読み出しパターンPに含むように構成している。
【0040】
図2、図3に示すように、縦・横式2次元マトリックス状配列で多数個(例えば、1024個×1024個や4096×4096個)形成されたキャリア収集電極33ごとに、上述した各々の薄膜トランジスタTrがそれぞれ接続されており、それらキャリア収集電極33,および薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。また、電圧印加電極32は、全検出素子DUの共通電極として全面にわたって形成されている。また、上述したデータ線34は、図3に示すように、横(X)方向に複数本に並列されているとともに、上述したゲート線35は、図3に示すように、縦(Y)方向に複数本に並列されており、各々のデータ線34およびゲート線35は各検出素子DUに接続されている。また、データ線34はアンプアレイ回路36に接続されるとともに、アンプアレイ回路36はA/D変換器37に接続されており、ゲート線35はゲートドライバ回路38に接続されている。なお、検出素子DUの配列個数は上述の1024個×1024個や4096×4096個だけでなく、実施形態に応じて配列個数を変更して使用することができる。したがって、検出素子DUが1個のみの形態であってもよい。
【0041】
続いて、本実施例1に係るX線透視撮影装置およびフラットパネル型X線検出器(FPD)の作用について説明する。電圧印加電極32に、例えば1V〜10V程度のバイアス電圧VAを印加した状態で、検出対象である放射線を入射させる。このバイアス電圧VAの印加の制御についてもFPD制御部5から行う。
【0042】
放射線の入射によってシンチレータ31は光に変換し、その光が透明電極である電圧印加電極32を透過した後に読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射される。その光の入射によってフォトダイオードPDは電荷情報としてキャリアを生成する。ゲートドライバ回路38の信号取り出し用の走査信号(すなわちゲート駆動信号)によって、ゲート線35が選択されて、さらに選択されたゲート線35に接続されている検出素子DUが選択指定される。その指定された検出素子DUでの電荷が、選択されたゲート線35の信号によってON状態に移行した薄膜トランジスタTrを経由して、データ線34に読み出される。
【0043】
また、各検出素子DUのアドレス(番地)指定は、データ線34およびゲート線35の信号取り出し用の走査信号(ゲート線35の場合にはゲート駆動信号、データ線34の場合にはアンプ駆動信号)に基づいて行われる。アンプアレイ回路36やゲートドライバ回路38に信号取り出し用の走査信号が送り込まれると、ゲートドライバ回路38から縦(Y)方向の走査信号(ゲート駆動信号)に従って各検出素子DUが選択される。そして、横(X)方向の走査信号(アンプ駆動信号)に従ってアンプアレイ回路36が切り換えられることによって、選択された検出素子DUでの電荷が、データ線34を介してアンプアレイ回路36に送り出される。そして、アンプアレイ回路36で増幅されて、X線検出信号としてアンプアレイ回路36から出力されてA/D変換器37に送り込まれる。A/D変換器37は、FPD30からの電荷信号であるX線検出信号をディジタル化して取り出す。
【0044】
上述の動作によって、例えばX線透視撮影装置の透視X線像の検出に本実施例1に係るFPD30を用いた場合、データ線34を介して外部に読み出された電荷情報(X線検出信号)が画像情報に変換されて、X線透視画像として出力される。
【0045】
ところで、FPDユニット3は、筐体(図示省略)で構成されており、上述したFPD30やアンプアレイ回路36やA/D変換器37やゲートドライバ回路38の他に、燃料電池からなる蓄電池(バッテリ)や記憶媒体(いずれも図示省略)などを収納している。より具体的には、弾性体で形成されたフレキシブル基板(図示省略)によってFPD30と回路用基板(図示省略)とを電気的に接続し、その回路用基板にアンプアレイ回路36やA/D変換器37やゲートドライバ回路38などを搭載する。そして、これらの基板やFPD30などを収納した後に、ゲル状の樹脂(図示省略)を封入してモールドすることで、筐体内の隙間を埋めて、FPD30などを固定する。なお、筐体は、電気または磁気シールド加工が施された樹脂であるのが好ましい。
【0046】
次に、本実施例1に係るFPD30の構造について、図5を参照して説明する。また、本実施例1との比較のための従来のFPDの構造についても、上述した図4を参照して説明する。図4は、図5との比較のための従来のFPDの概略断面図であって、図5は、実施例1に係るFPD30の概略断面図である。
【0047】
上述したように、従来の場合には、図4に示すように、絶縁基板Wの放射線(ここではX線)入射面側に読み出しパターンPを積層形成して、積層形成された読み出しパターンPのX線入射面側にシンチレータ31をさらに積層形成している。入射されたX線はシンチレータ31の入射面側で可視光フォトンphに変換される。したがって、シンチレータ31の厚みが厚いと読み出しパターンPのフォトダイオードに到達するまでに可視光フォトンphは散乱により拡がってしまう。
【0048】
これに対して、本実施例1の場合には、図5に示すように、シンチレータ31の放射線入射面側に読み出しパターンPを積層形成している。したがって、入射された放射線(ここではX線)は読み出しパターンPを透過した後にシンチレータ31の入射面側で大部分が停止して可視光フォトンphに変換される。このとき、シンチレータ31の入射面側の近傍に読み出しパターンPがあるので、可視光フォトンphが散乱することなく、あるいは散乱しても可視光フォトンphがさほどに拡がらずに済んで読み出しパターンPでキャリア(電荷情報)として変換されて読み出される。その結果、画像の品質向上を図ることができる。
【0049】
また、X線を正確に検出することができる。かかるFPD30のような検出器を撮像装置としてX線透視撮影装置が用いているので、画像処理部8による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【0050】
また、本実施例1の場合には、従来のような絶縁基板がなくても読み出しパターンPを積層形成して、FPD30を構成することができる。絶縁基板は、通常、1mm程度のガラス板で形成されており、ガラス板はバリウム(Ba)などの重金属を含む。したがって、X線を従来とは逆側の裏面(図4では図中の下面)から入射させたとしても、図4のような従来の構造を用いた場合には、絶縁基板WのBaなどの重金属によってX線の減衰を招いてしまう。ところが、本実施例1の場合には、従来のような絶縁基板がないので、入射されたX線は読み出しパターンPを減衰せずに透過、あるいは減衰しても絶縁基板ほどに減衰せずに透過して、シンチレータ31に入射することができるという効果をも奏する。
【0051】
次に、FPD30の製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、実施例1に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。図6では、図中の上面をX線の入射面としている。
【0052】
先ず、図6(a)に示すようにシンチレータ31のX線入射面(図6の図中の上面)側に電圧印加電極32を蒸着によって積層形成する。シンチレータ31を形成する半導体については、CsI、Cd2O2Sなどに例示されるように、用途に応じて適宜選択することができる。また、電圧印加電極32については、シンチレータ31によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射できるように、上述したようにITOなどに代表される透明電極で形成するのが好ましい。
【0053】
電圧印加電極32を形成した後に、電圧印加電極32のX線入射面(上面)側に、図6(b)〜図6(g)に示すように読み出しパターンPとしてフォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35を積層形成する。以下に、より具体的に説明する。
【0054】
図6(b)に示すように、電圧印加電極32の上面にフォトダイオードPDを積層形成する。フォトダイオードPDを積層形成した後に、図6(b)に示すように、フォトダイオードPDの上面にキャリア収集電極33を積層形成する。なお、後述する実施例2〜8も含めて、本実施例1ではこの発明における光電変換層として、フォトダイオードPDを採用したが、フォトダイオード以外でも光感応型の物質で形成された変換層であれば、光電変換層として用いることができる。
【0055】
キャリア収集電極33を積層形成した後に、図6(c)に示すように、キャリア収集電極33の上面に絶縁膜41を積層形成する。そして、絶縁膜41にスルーホール(貫通孔)としてバイアVIAを設ける。図6(d)に示すように、絶縁膜41の上面にペンタセンで形成されたゲートチャンネル42を積層形成するとともに、バイアVIAの上面にキャリア収集電極33の一部としてバイアVIAを介して電気的に接続されたキャリア収集電極43を積層形成する。このゲートチャンネル42の一端の上面にキャリア収集電極43を積層形成するとともに、ゲートチャンネル42の他端の上面にデータ線34を積層形成する。
【0056】
これら絶縁膜41やゲートチャンネル42やキャリア収集電極43やデータ線34の上面に、図6(e)に示すように、絶縁膜44を積層形成する。図6(f)に示すように、この絶縁膜44の上面に、ゲートGを積層形成する。なお、ゲートGとゲート線35(図2、図3を参照)とは電気的に接続されるように図示を省略する配線やスルーホールで電気的に接続する。
【0057】
さらに、これら絶縁膜44やゲートGの上面に、図6(g)に示すように、絶縁膜45を積層形成する。この絶縁膜45の上面に保護層46(図6では図示省略)を積層形成することで、図2および図5に示すような構造となる(ただし、図2は等価回路)。そして、キャリア収集電極43のゲートチャンネル42側の一端と、データ線34のゲートチャンネル42の一端と、ゲートチャンネル42と、ゲートGと、絶縁膜44とで薄膜トランジスタTrを構成する。これらフォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35の積層形成は、読み出しパターンPの積層形成である。
【0058】
読み出しパターンPの積層形成については、読み出しパターンPの全てを有機薄膜で積層形成してもよいし、読み出しパターンPの少なくとも一部を有機薄膜で積層形成してもよい。有機薄膜による読み出しパターンPの積層形成については、具体的には以下のようなものがある。
【0059】
例えば、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33(図6のキャリア収集電極43も含む),薄膜トランジスタTrの少なくとも一部を有機薄膜で積層形成するとともに、データ線34およびゲート線35の少なくとも一部も有機薄膜で積層形成してもよい。データ線34およびゲート線35を有機薄膜で積層形成する場合には、導電性有機材料を用いる。また、キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTrの少なくとも一部を有機薄膜で積層形成するとともに、データ線34およびゲート線35の少なくとも一部を無機薄膜(例えばITOなどの透明電極)や金属で積層形成して、フォトダイオードPDを変換層の薄膜で積層形成してもよい。
【0060】
有機薄膜の中でも、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子(本実施例1ではゲートチャンネル42をペンタセンで形成)と、有機高分子とがあり、両者のうちのいずれかを選択することで具体的な積層形成方法が異なる。読み出しパターンPとして有機低分子を選択した場合には蒸着によって積層形成を行い、読み出しパターンPとして有機高分子を選択した場合には印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって積層形成を行う。
【0061】
有機高分子を選択した場合には、キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTrの導体部分(例えばキャリア収集電極33、薄膜トランジスタTrのゲートGなど)をPEDOT(ポリチオフェン系)やPPV(ポリフェニレンビニレン)などに代表される導電性有機材料で形成する。また、絶縁膜41,44,45をポリイミドやポリビニルフェノールなどで形成する。
【0062】
なお、データ線34およびゲート線35の少なくとも一部を有機薄膜以外の無機薄膜や金属で積層形成する場合でも、印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって積層形成を行うことが可能である。この場合には、好ましくは酸化し難い材料(例えば銀や金や白金などの貴金属)をナノサイズ(10-9mm程度)の粒子にして、印刷によってデータ線34やゲート線35の積層形成を行う。また、データ線34やゲート線35のような配線を、上述した蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術(例えばスパッタリングなど)を利用して積層形成してもよい。
【0063】
また、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTrの一部を有機薄膜以外の無機薄膜(例えばアモルファスシリコン)で積層形成する場合には、データ線34やゲート線35でも述べたように、蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術(例えばスパッタリングなど)を利用して積層形成してもよい。
【0064】
このように、読み出しパターンPの少なくとも一部を有機薄膜で形成する場合には、ペンタセンやナフタセンなどの単結晶に代表される有機低分子は蒸着によって読み出しパターンPを形成するのに適しており、有機高分子は印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)によって読み出しパターンPを形成するのに適している。したがって、蒸着の場合には有機低分子で読み出しパターンPを形成するのが好ましく、印刷塗布製膜(転写やインクジェット法)の場合には有機高分子で読み出しパターンPを形成するのが好ましい。また、印刷の場合に、有機薄膜以外の無機薄膜や金属で読み出しパターンの一部(例えばデータ線34やゲート線35のような配線)を形成することも可能である。
【0065】
なお、透明電極であった電圧印加電極32と同様に、読み出しパターンPにおいて、データ線34やゲート線35などの配線、キャリア収集電極33やゲートGなどの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。例えば、シンチレータ31に対してフォトダイオードPDがこれらの配線や電極を挟んで積層形成されている場合には、これらの配線や電極が介在していても、シンチレータ31によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに減衰することなく入射することができる。
【実施例2】
【0066】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図7は、実施例2に係るFPD30の概略断面図であり、図8は、実施例2に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。実施例1と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0067】
上述した実施例1では、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35からなる読み出しパターンPを、シンチレータ31のX線入射面側に設けられた電圧印加電極32の入射面(図6の図中の上面)側に積層形成することで、この発明における第1変換層であるシンチレータ31の入射面側に読み出しパターンPを積層形成する構造であったが、本実施例2では、図7に示すように、読み出しパターンPとシンチレータ31との間に、電圧印加電極32の他にさらに薄膜シートSを介在させる構造である。そのために、本実施例2では、図8に示すようにFPD30を製造する。薄膜シートSを樹脂系の材料で形成する。なお、薄膜シートSについては合成樹脂などのように可塑性であるのが好ましい。可塑性を有することで薄膜シートSに後述する貼り合わせによる力が加わっても、その力に応じて薄膜シートSの形状を自在に変えることができ、貼り合わせの際の密着性を高めることができる。また、薄膜シートSは光透過性のあるプラスチックフィルムであるのが好ましい。光透過性にすることでシンチレータ31によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに減衰することなく入射することができる。薄膜シートSは、この発明における薄膜シートに相当する。
【0068】
先ず、図8(a)に示すように薄膜シートSのX線入射面(上面)側に電圧印加電極32を蒸着によって積層形成する。そして、電圧印加電極32の上面に読み出しパターンPの少なくとも一部を、蒸着あるいは印刷塗布製膜によって形成する。この読み出しパターンPの積層形成は、実施例1の図6(b)〜図6(g)と同様なので、その説明を省略する。読み出しパターンPを形成する材料や積層形成方法については、上述した実施例1を適用すればよい。薄膜シートS上に形成された読み出しパターンPと、シンチレータ31とを貼り合わせる。この貼り合わせの際には、図8(c)に示すように薄膜シートSがシンチレータ31に直接的に接触するように行う。この貼り合わせによって、読み出しパターンPとシンチレータ31との間に電圧印加電極32および薄膜シートSが介在する。
【0069】
上述した本実施例2に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30によれば、読み出しパターンPとこの発明における第1変換層であるシンチレータ31との間に薄膜シートSが介在したFPD30を実現することができる。
【実施例3】
【0070】
次に、図面を参照してこの発明の実施例3を説明する。
図9は、実施例3に係るFPD30の概略断面図である。実施例1,2と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0071】
上述した実施例1,2では、シンチレータ31の放射線(ここではX線)入射面側とは逆方向には光を反射させる光反射層がない構造であったが、本実施例3では、図9に示すように光反射層47を設ける構造である。図9(a)は、実施例1のように薄膜シートSがない構造に光反射層47を設けた場合で、図9(b)は、実施例2のように薄膜シートSを介在させた構造に光反射層47を設けた場合である。
【0072】
いずれの場合においても、図9に示すように、シンチレータ31の入射面側で変換された可視光フォトンphが入射面側とは逆方向、すなわちFPD30の外部に散乱する場合がある。このように、可視光フォトンphがシンチレータ31からFPD30のような検出器の外部に向かって散乱しても、光反射層47によって内部に戻すことができる。したがって、外部に向かって散乱した可視光フォトンphをも捉えることができ、画像の品質向上をより一層図ることができる。光反射層47は、この発明における光反射層に相当する。
【実施例4】
【0073】
次に、図面を参照してこの発明の実施例4を説明する。
図10は、実施例4に係る側面視したフラットパネル型X線検出器(FPD)30の等価回路である。実施例1〜3と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0074】
上述した実施例1〜3では、読み出しパターンPをこの発明における第1変換層であるシンチレータ31の放射線入射面側に積層形成する構造であったが、後述する実施例5〜8も含めて、本実施例4では、図10や後述する図12、図13などにも示すように、読み出しパターンPを半導体厚膜51の放射線入射面側に積層形成して、シンチレータ52を読み出しパターンPの放射線入射面側に積層形成する構造である。つまり、半導体厚膜51とシンチレータ52とで読み出しパターンPを挟んだサンドイッチ構造(以下、実施例4〜7の構造を『サンドイッチ構造』と略記する)である。
【0075】
なお、後述する実施例5〜7も含めて、本実施例4では、半導体厚膜51は、シンチレータ52と同様にX線を光に変換する蛍光型の半導体であって、後述する実施例8では、半導体厚膜51は、放射線の入射でキャリアが生成される放射線感応型の半導体である。
【0076】
具体的に説明すると、後述する実施例5〜7も含めて、本実施例4では、図10に示すように、FPD30は、半導体厚膜51と、半導体厚膜51の放射線入射面側に設けられた読み出しパターンP(フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35)と、その読み出しパターンPの放射線入射面側に設けられた電圧印加電極32と、電圧印加電極32の放射線入射面側に設けられたシンチレータ52とを備えている。本実施例4でも電圧印加電極32は、ITOなどに代表される透明電極で形成されている。後述する実施例5〜8も含めて、本実施例4では、半導体厚膜51は、この発明における第1変換層に相当し、シンチレータ52は、この発明における第2変換層に相当する。また、上述した実施例1〜3と同様に、実施例4〜7においても、フォトダイオードPDは、この発明における光電変換層に相当し、読み出しパターンPは、この発明における読み出しパターンに相当する。
【0077】
読み出しパターンPの構造およびFPD30周辺の回路(ゲートドライバ回路38やアンプアレイ回路36)との電気的な接続の態様については、上述した実施例1〜3と同様なので、その説明を省略する。
【0078】
次に、本実施例4に係るFPD30の構造について、図12を参照して説明する。また、本実施例4との比較のための従来のFPDの構造についても、上述した図11を参照して説明する。図11は、図12との比較のための従来のFPDの概略断面図であって、図12は、実施例4に係るFPD30の概略断面図である。また、図11は、同じく従来のFPDであった図5の構造のうち、シンチレータの厚みを薄くした構造であって、他の構造については図5と同じである。
【0079】
上述したように、従来の場合には、図11に示すように、絶縁基板Wの放射線(ここではX線)入射面側に読み出しパターンPを積層形成して、積層形成された読み出しパターンPのX線入射面側にシンチレータ31をさらに積層形成している。したがって、シンチレータ31の厚みが薄すぎると、X線がシンチレータ31を透過して突き抜けてしまい、光に変換することができなくなる。その結果、その光に基づいてシンチレータ31がキャリアに変換することもできなくなる。したがって、X線感度の低下を招く原因となる。
【0080】
これに対して、本実施例4の場合には、図12に示すように、変換層は、この発明における第1変換層である半導体厚膜51とこの発明における第2変換層であるシンチレータ52とで構成され、半導体厚膜51およびシンチレータ52で読み出しパターンPを挟み込むサンドイッチ構造としている。したがって、放射線(ここではX線)入射面側にあるシンチレータ52を放射線(ここではX線)が突き抜けたとしても、放射線(ここではX線)入射面側とは逆の方向にある半導体厚膜51によって突き抜けたX線を捉えることができる。また、入射面側にあるシンチレータ52でも突き抜けなかったX線を捉える場合があるので、半導体厚膜51で捉えられたX線と併せてX線感度の向上を図ることができる。
【0081】
また、X線を正確に検出することができる。かかるFPD30のような検出器を撮像装置としてX線透視撮影装置が用いているので、画像処理部8による画像処理の一連の処理で撮像を正確に行うことができる。
【0082】
また、本実施例4の場合にも、上述した実施例1と同様に、従来のような絶縁基板がなくても読み出しパターンPを積層形成して、FPD30を構成することができる。X線を従来とは逆側の裏面(図11では図中の下面)から入射させたとしても、図11のような従来の構造を用いた場合には、絶縁基板WのBaなどの重金属によってX線の減衰を招いてしまう。ところが、本実施例4の場合には、従来のような絶縁基板がないので、入射されたX線は読み出しパターンPを減衰せずに透過、あるいは減衰しても絶縁基板ほどに減衰せずに透過して、半導体厚膜51あるいはシンチレータ52に入射することができるという効果をも奏する。
【0083】
なお、変換層が放射線(ここではX線)の入射によりキャリア(電荷情報)に変換するタイプで、かつその変換されたキャリアを読み出しパターンPで読み出すFPD30のタイプ、すなわち放射線をキャリアに直接に変換した「直接変換型」と、変換層が放射線(ここではX線)の入射により光に変換するタイプで、かつその変換された光に基づいてキャリアに変換して、その光に基づいたキャリアを読み出しパターンPで読み出すFPD30のタイプ、すなわち放射線を光に一旦変換した後にキャリアに変換することで放射線をキャリアに間接的に変換した「間接変換型」とがある。
【0084】
本実施例4において、変換層は、上述した半導体厚膜51およびシンチレータ52からなり、シンチレータ52をX線が突き抜けて半導体厚膜51でそのX線を捉えた場合と、シンチレータ52でX線を捉えた場合とで、各変換層におけるタイプが異なることがある。
【0085】
例えば、本実施例4のように、半導体厚膜51がシンチレータ52と同様にX線を光に変換する蛍光型の半導体であれば、図12に示すような構造となって、半導体厚膜51またはシンチレータ52でX線をそれぞれ捉えると可視光フォトンphにそれぞれ変換されて読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射される。そして、フォトダイオードPによってキャリアに変換される。この場合には、半導体厚膜51側においてもシンチレータ52側においても、ともに「間接変換型」となる。
【0086】
また、後述する実施例8のように、半導体厚膜51が放射線の入射でキャリアが生成される放射線感応型の半導体であれば、図22に示すような構造となって、シンチレータ52でX線を捉えると可視光フォトンphに変換されて読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射される。そして、フォトダイオードPによってキャリアに変換される。一方、半導体厚膜51でX線を捉えるとキャリアelecに変換されて、読み出しパターンPのキャリア収集電極33に直接に読み出される。このとき、キャリア収集電極33がキャリアを収集するために、図22に示すようにキャリアを溜めるコンデンサCaを備えている。この場合には、シンチレータ52においては「間接変換型」となり、半導体厚膜51においては「直接変換型」となり、「間接変換型」および「直接変換型」が混合したFPD30となる。
【0087】
次に、本実施例4におけるFPD30の製造方法について、図13を参照して説明する。図13は、実施例4に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。図13でも、図中の上面をX線の入射面としている。
【0088】
先ず、図13(a)に示す半導体厚膜51のX線入射面(上面)に、図13(b)〜図13(f)に示すように読み出しパターンPを積層形成する。この読み出しパターンPの積層形成は、実施例1の図6(b)〜図6(g)とはほぼ逆の手順となる。半導体厚膜51を形成する半導体については、CdTe、CdZnTe、PbI2、PbOや、アモルファスセレンなどのようなアモルファス型の半導体や多結晶型の半導体などに例示されるように、用途に応じて適宜選択することができる。読み出しパターンPを形成する材料や積層形成方法については、上述した実施例1を適用すればよい。
【0089】
図13(b)に示すように半導体厚膜51の上面にゲートGを積層形成し、半導体厚膜51およびゲートGの上面に絶縁膜45を積層形成する。ゲートGおよび絶縁膜45を積層形成した後に、図13(c)に示すように、ゲートGにゲートチャンネル42が対向するように、ゲートチャンネル42、キャリア収集電極43およびデータ線34を積層形成する。
【0090】
薄膜トランジスタTr(図13(f)を参照)を構成するゲートチャンネル42やキャリア収集電極43やデータ線34などを積層形成した後は、図13(d)に示すように、絶縁膜44を積層形成して、その絶縁膜44にバイアVIAを設ける。図13(e)に示すように、このバイアVIAの上面にキャリア収集電極43を一部としてバイアVIAを介して電気的に接続されたキャリア収集電極33を積層形成する。そして、キャリア収集電極33を積層形成した後に、キャリア収集電極33の上面にフォトダイオードPDを積層形成する。この図13(b)〜図13(e)を経て、実施例1の図6(b)〜図6(g)とはほぼ逆の手順で積層形成された読み出しパターンPが完成する。
【0091】
図13(f)に示すように、読み出しパターンPのフォトダイオードPDの上面に実施例1と同様の電圧印加電極32を積層形成する。そして、電圧印加電極32の上面にシンチレータ52を積層形成する。また、電圧印加電極32についても、上述した実施例1と同様に、シンチレータ52によって変換された光が読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射できるように、ITOなどに代表される透明電極で形成するのが好ましい。
【0092】
また、実施例1でも述べたように、読み出しパターンPにおいて、データ線34やゲート線35などの配線、キャリア収集電極33やゲートGなどの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。
【実施例5】
【0093】
次に、図面を参照してこの発明の実施例5を説明する。
図14は、実施例5に係るFPD30の概略断面図であり、図15は、実施例5に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。実施例4と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0094】
上述した実施例4では、この発明における第1変換層である半導体厚膜51のX線入射面側に読み出しパターンPを直接に積層形成する構造であったが、本実施例4では、図14に示すように、読み出しパターンPと半導体厚膜51との間に薄膜シートSを介在させる構造である。そのために、本実施例5では、図15に示すようにFPD30を製造する。薄膜シートSの材料や効果については、実施例2と同様である。つまり、本実施例5は、図14に示すように、実施例2の薄膜シートSと実施例4のサンドイッチ構造とを組み合わせた実施例である。
【0095】
先ず、図15(a)に示す薄膜シートSに、図15(b)に示すように読み出しパターンPや電圧印加電極32やシンチレータ52を積層形成する。この読み出しパターンPや電圧印加電極32やシンチレータ52の積層形成は、実施例4の図13(b)〜図13(f)と同様なので、その説明を省略する。読み出しパターンPを形成する材料や積層形成方法については、上述した実施例1を適用すればよい。
【0096】
図15(c)に示すように、薄膜シートS上に電圧印加電極32やシンチレータ52とともに形成された読み出しパターンPと、半導体厚膜51とを貼り合わせる。この貼り合わせの際には、図15(d)に示すように薄膜シートSが半導体厚膜51に直接的に接触するように行う。この貼り合わせによって、読み出しパターンPと半導体厚膜51との間に薄膜シートSが介在する。
【0097】
上述した本実施例4に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30によれば、読み出しパターンPとこの発明における第1変換層である半導体厚膜51との間に薄膜シートSが介在したFPD30を実現することができる。
【実施例6】
【0098】
次に、図面を参照してこの発明の実施例6を説明する。
図16は、実施例6に係るFPD30の概略断面図であり、図17は、実施例6に係るFPD3の製造工程を示す概略断面図である。実施例4,5と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0099】
上述した実施例5では、薄膜シートS上に形成された読み出しパターンPとこの発明における第1変換層である半導体厚膜51とを貼り合わせる構造であったが、本実施例6では、図16に示すように、読み出しパターンPと薄膜シートS上に形成されたこの発明における第2変換層であるシンチレータ52とを貼り合わせる構造である。
【0100】
先ず、図17(a)に示すように、薄膜シートSのX線入射面(上面)側に電圧印加電極32を蒸着によって積層形成する。そして、図17(b)に示すように、電圧印加電極32の上面にシンチレータ52を積層形成する。一方で、半導体厚膜51に読み出しパターンPを積層形成して、図17(c)に示すように、読み出しパターンPと薄膜シートS上に電圧印加電極32とともに形成されたシンチレータ52とを貼り合わせる。この貼り合わせの際には、図17(c)に示すように薄膜シートSが読み出しパターンPの保護層46に直接的に接触するように行う。この貼り合わせによって、読み出しパターンPとシンチレータ52との間に、電圧印加電極32および薄膜シートSが介在する。
【0101】
上述した本実施例6に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30によれば、この貼り合わせによってFPD30を実現することができる。なお、この貼り合わせの場合には、上述した実施例2や実施例5と相違して、貼り合わせを行う基台が薄膜シートS以外にも例えば電圧印加電極32がある。したがって、実施例2,5のように必ずしも薄膜シートSが必要でなく、電圧印加電極32にシンチレータ52を積層形成した後に、読み出しパターンPとシンチレータ52とを貼り合わせてもよい。この場合には、薄膜シートSが介在しないので、光をフォトダイオードに確実に入射させることができる。
【実施例7】
【0102】
次に、図面を参照してこの発明の実施例7を説明する。
図18〜図20は、実施例7に係るFPD30の概略断面図である。実施例4〜6と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0103】
上述した実施例4〜6では、半導体厚膜51およびシンチレータ52の各面には光を反射させる光反射層がない構造であったが、本実施例7では、半導体厚膜51およびシンチレータ52の少なくとも一方に光反射層47を設ける構造である。図18は、半導体厚膜51およびシンチレータ52の各面に光反射層47(47a,47b)を設けた場合で、図19は、シンチレータ52の上面(X線入射面)のみに光反射層47bを設けた場合で、図20は、半導体厚膜51の下面(X線入射面とは逆方向の面)のみに光反射層47aを設けた場合である。また、図18〜図20の各枝図の(a)は、実施例4のように薄膜シートSがない構造に光反射層47を設けた場合で、各枝図(b)は、実施例5,6のように薄膜シートSを介在させた構造に光反射層47を設けた場合である。
【0104】
半導体厚膜51の入射面側で変換された可視光フォトンphが入射面側とは逆方向、すなわちFPD30の外部に散乱する場合がある。このように、可視光フォトンphが半導体厚膜51からFPD30のような検出器の外部に向かって散乱しても、図18または図20に示すように、半導体厚膜51の下面に積層形成された光反射層47aによって内部に戻すことができる。
【0105】
一方、シンチレータ52の入射面側で変換された可視光フォトンphが入射面側、すなわちFPD30の外部に散乱する場合がある。このように、可視光フォトンphがFPD30のような検出器の外部に向かって散乱しても、図18または図19に示すように、シンチレータ52の上面に積層形成された光反射層47bによって内部に戻すことができる。
【0106】
したがって、いずれの場合においても、外部に向かって散乱した可視光フォトンphをも捉えることができ、画像の品質向上をより一層図ることができる。光反射層47a,47bは、この発明における光反射層に相当する。
【0107】
なお、上述した各実施例では、フォトダイオードPDを読み出しパターンPに含んでいている。したがって、光は読み出しパターンPに含まれたフォトダイオードPDによってキャリアに変換されつつ、そのキャリアが読み出しパターンPで読み出される。
【実施例8】
【0108】
次に、図面を参照してこの発明の実施例8を説明する。
図21は、実施例8に係るフラットパネル型X線検出器(FPD)30の概略断面図である。実施例4〜7と共通する箇所については、同じ符号を付して図示を省略するとともに、その説明を省略する。なお、X線透視撮影装置については、図1と同様の構成である。
【0109】
上述した実施例4〜7では、上述したように、半導体厚膜51は、シンチレータ52と同様にX線を光に変換する蛍光型の半導体であったが、本実施例8では、半導体厚膜51は、放射線の入射でキャリアが生成される放射線感応型の半導体である。また、半導体厚膜51で変換されたキャリアを一旦溜めるために、図21や後述する図22、図23などにも示すように、コンデンサCaを新たに備えている。
【0110】
具体的に説明すると、本実施例8では、FPD30は、上述した実施例4における図10や図11と同様の構造に、図21〜図23に示すように、キャリア収集電極33への収集キャリアを溜める電荷蓄積用のコンデンサCaをさらに備えている。そして、コンデンサCaに蓄積された電荷(キャリア)を薄膜トランジスタTrが取り出すように構成されている。本実施例8では、フォトダイオードPD,キャリア収集電極33,コンデンサCa,薄膜トランジスタTr,データ線34およびゲート線35で、図22、図23に示すように、読み出しパターンPを構成する。読み出しパターンPは、この発明における読み出しパターンに相当する。
【0111】
なお、本実施例8では、図21に示すように、各々のコンデンサCaおよび薄膜トランジスタTrがキャリア収集電極33ごとにそれぞれ接続されており、それらキャリア収集電極33,コンデンサCa,および薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。キャリアを読み出す際には、選択された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積された電荷(キャリア)が、データ線34を介してアンプアレイ回路36に送り出される。
【0112】
FPD30周辺の回路(ゲートドライバ回路38やアンプアレイ回路36)との電気的な接続の態様については、上述した実施例1〜7と同様なので、その説明を省略する。
【0113】
次に、本実施例8に係るFPD30の構造について、図22を参照して説明する。変換層は、この発明における第1変換層である半導体厚膜51とこの発明における第2変換層であるシンチレータ52とで構成され、半導体厚膜51およびシンチレータ52で読み出しパターンPを挟み込むサンドイッチ構造としているのは実施例4と同じである。相違点は、本実施例8では上述したように半導体厚膜51が放射線感応型の半導体であることと、コンデンサCaを新たに備えていることである。
【0114】
したがって、実施例4でも述べたように、シンチレータ52でX線を捉えると可視光フォトンphに変換されて読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射され、フォトダイオードPによってキャリアに変換される。一方、半導体厚膜51でX線を捉えるとキャリアelecに変換されて、読み出しパターンPのキャリア収集電極33に直接に読み出される。コンデンサCaに一旦溜められてデータ線34を介してアンプアレイ回路36に送り出される。
【0115】
次に、本実施例8におけるFPD30の製造方法について、図23を参照して説明する。図23は、実施例4に係るFPD30の製造工程を示す概略断面図である。図23でも、図中の上面をX線の入射面としている。
【0116】
先ず、図23(a)に示す半導体厚膜51のX線入射面(上面)に、図23(b)に示すように、ゲートGおよび蓄積容量対向電極48を積層形成し、半導体厚膜51、ゲートGおよび蓄積容量対向電極48の上面に絶縁膜45を積層形成する。ゲートG、絶縁膜45および蓄積容量対向電極48を積層形成した後に、図23(c)に示すように、ゲートGにゲートチャンネル42が対向するとともに、蓄積容量対向電極48にキャリア収集電極43が対向するようにゲートチャンネル42、キャリア収集電極43およびデータ線34を積層形成する。この蓄積容量対向電極48については接地する。蓄積容量対向電極48などの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。
【0117】
ゲートチャンネル42やキャリア収集電極43やデータ線34などを積層形成した後は、図23(d)に示すように、絶縁膜44を積層形成して、その絶縁膜44にバイアVIAを設ける。図23(e)に示すように、このバイアVIAの上面にキャリア収集電極43を一部としてバイアVIAを介して電気的に接続されたキャリア収集電極33を積層形成する。そして、キャリア収集電極33を積層形成した後に、キャリア収集電極33の上面にフォトダイオードPDを積層形成する。
【0118】
図23(f)に示すように、読み出しパターンPのフォトダイオードPDの上面に実施例1と同様の電圧印加電極32を積層形成して、電圧印加電極32の上面にシンチレータ52を積層形成する。なお、キャリア収集電極43と絶縁膜44と蓄積容量対向電極48とでコンデンサCaを構成する。
【0119】
また、実施例1、4でも述べたように、読み出しパターンPにおいて、データ線34やゲート線35などの配線、キャリア収集電極33やゲートGなどの電極についてもITOなどの透明な導電材料で形成するのが好ましい。特に、本実施例8のように、半導体厚膜51でX線を捉えた場合には、半導体厚膜51によって変換されたキャリアが、これらの配線や電極を通って読み出しパターンPのフォトダイオードPDに入射するので、透明な導電材料の配線や電極を通っても減衰することなくフォトダイオードPDに入射することができる。
【0120】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0121】
(1)上述した各実施例では、図1に示すようなX線透視撮影装置を例に採って説明したが、この発明は、例えばC型アームに配設されたX線透視撮影装置にも適用してもよい。また、この発明は、X線CT装置にも適用してもよい。
【0122】
(2)上述した各実施例では、X線を検出するX線検出器を例に採って説明したが、この発明は、ECT(Emission Computed Tomography)装置のように放射性同位元素(RI)を投与された被検体から放射されるγ線を検出するγ線検出器に例示されるように、放射線を検出する放射線検出器であれば特に限定されない。同様に、この発明は、上述したECT装置に例示されるように、放射線を検出して撮像を行う装置であれば特に限定されない。
【0123】
(3)上述した実施例4〜8では、シンチレータ52に代表される第2変換層においては「間接変換型」であったが、「直接変換型」にも適用することができる。
【0124】
(4)上述した実施例8において、上述したキャリア収集電極33がキャリアを収集するのにコンデンサCaの容量に対して十分に収集できない場合には、そのコンデンサCaとは別に蓄積素子(例えば0.1〜10pF程度が最適)を配設してもよい。キャリア収集電極33がキャリアを収集するたびに容量の小さいコンデンサCaに一旦蓄積した後に、別に配設した蓄積素子にキャリアを収集するようにする。この蓄積素子の電極についても、有機薄膜あるいは無機薄膜のいずれであってもよい。
【0125】
(5)上述した各実施例では、読み出しパターンPの少なくとも一部を、蒸着あるいは印刷によって形成したが、読み出しパターンPの一部を、蒸着あるいは印刷によって形成して、それ以外の読み出しパターンPを、蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術(例えばスパッタリングなど)を利用して積層形成するというように、蒸着や印刷以外のフォトリソグラフィ法によるパターン技術と蒸着あるいは印刷とを組み合わせて読み出しパターンPを形成してもよい。蒸着や印刷以外のパターン技術として、上述したスパッタリング以外にも、液相に浸漬させてパターン形成を行うゾルーゲル法を用いてもよい。
【0126】
(6)上述した各実施例では、フォトダイオードPDは検出素子DUごとに分離形成されていたが、フォトダイオードPDを全面にわたって積層形成してもよい。また、フォトダイオードPDはPIN構造であってもよい。フォトダイオードPDの寄生容量が大きい場合には、上述した実施例8のようなコンデンサCaに代表される蓄積素子は必ずしも必要でない。
【0127】
(7)上述した各実施例では、フォトダイオードPDに代表される光電変換層を読み出しパターンPに含んで構成したが、読み出しパターンPに対して、フォトダイオードPDのみを電圧印加電極32などと同様に独自に積層形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】各実施例に係るX線透視撮影装置のブロック図である。
【図2】X線透視撮影装置に用いられている実施例1に係る側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図3】平面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図4】図5との比較のための従来のフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図5】実施例1に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図6】(a)〜(g)は、実施例1に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図7】実施例2に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、実施例2に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図9】(a),(b)は、実施例3に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図10】実施例4に係る側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図11】図12との比較のための従来のフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図12】実施例4に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図13】(a)〜(f)は、実施例4に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図14】実施例5に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図15】(a)〜(c)は、実施例5に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図16】実施例6に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図17】(a)〜(c)は、実施例6に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【図18】(a),(b)は、実施例7に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図19】(a),(b)は、実施例7に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図20】(a),(b)は、実施例7に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図21】実施例8に係る側面視したフラットパネル型X線検出器の等価回路である。
【図22】実施例8に係るフラットパネル型X線検出器の概略断面図である。
【図23】(a)〜(f)は、実施例8に係るフラットパネル型X線検出器の製造工程を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0129】
8 … 画像処理部
30 … フラットパネル型X線検出器(FPD)
31、52 … シンチレータ
33、43 … キャリア収集電極
34 … データ線
35 … ゲート線
47 … 光反射層
51 … 半導体厚膜
Ca … コンデンサ
Tr … 薄膜トランジスタ
S … 薄膜シート
P … 読み出しパターン
PD … フォトダイオード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、変換された電荷情報を読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンの少なくとも一部を有機薄膜で形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンの少なくとも一部を蒸着によって形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンの少なくとも一部を印刷塗布製膜によって形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンを薄膜シート上に形成し、前記薄膜シート上に形成された読み出しパターンと前記第1変換層とを貼り合わせることを特徴とする放射線検出器。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の放射線検出器において、前記第1変換層の放射線入射面側に読み出しパターンを直接に積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンと前記第2変換層とを貼り合わせることを特徴とする放射線検出器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の放射線検出器において、前記第1変換層の放射線入射面側とは逆方向に、あるいは前記第1変換層および第2変換層の少なくとも一方に、光を反射させる光反射層を積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の放射線検出器において、前記放射線の情報に基づいた光の情報を前記電荷情報に変換する光電変換層を前記読み出しパターンに含むことを特徴とする放射線検出器。
【請求項11】
放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、変換された電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成するとともに、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成し、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項1】
放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、変換された電荷情報を読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項2】
放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出する放射線検出器であって、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンの少なくとも一部を有機薄膜で形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンの少なくとも一部を蒸着によって形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンの少なくとも一部を印刷塗布製膜によって形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンを薄膜シート上に形成し、前記薄膜シート上に形成された読み出しパターンと前記第1変換層とを貼り合わせることを特徴とする放射線検出器。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の放射線検出器において、前記第1変換層の放射線入射面側に読み出しパターンを直接に積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれかに記載の放射線検出器において、前記読み出しパターンと前記第2変換層とを貼り合わせることを特徴とする放射線検出器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の放射線検出器において、前記第1変換層の放射線入射面側とは逆方向に、あるいは前記第1変換層および第2変換層の少なくとも一方に、光を反射させる光反射層を積層形成することを特徴とする放射線検出器。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の放射線検出器において、前記放射線の情報に基づいた光の情報を前記電荷情報に変換する光電変換層を前記読み出しパターンに含むことを特徴とする放射線検出器。
【請求項11】
放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を光の情報に変換する第1変換層と、変換された光の情報を電荷情報に変換して読み出す読み出しパターンとを備え、前記読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成し、変換された電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
放射線検出器を用いた撮像装置であって、前記検出器は、放射線の入射により前記放射線の情報を電荷情報あるいは電荷情報の基となる光の情報に変換する変換層と、変換された電荷情報あるいは変換された光の情報に基づいた電荷情報を読み出す読み出しパターンとを備え、前記変換層は、第1変換層と第2変換層とで構成され、読み出しパターンを前記第1変換層の放射線入射面側に積層形成するとともに、前記第2変換層を前記読み出しパターンの放射線入射面側に積層形成し、前記電荷情報を前記読み出しパターンで読み出すことで放射線を検出し、前記装置は、前記検出器と、画像処理を行う画像処理手段とを備え、その画像処理手段は、前記検出器で検出されたデータに基づいて画像処理を行い、その検出器での検出および画像処理手段による画像処理の一連の処理で撮像を行うことを特徴とする撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−170908(P2007−170908A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366371(P2005−366371)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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