説明

放射線検出装置

【課題】放射線を短時間で精度よく検出することができる放射線検出装置を提供する。
【解決手段】放射線検出素子10は、予め定めた放射線検出領域に均一に配置され、被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に応じた画像用電気信号をスイッチング素子を介して信号配線に出力する複数のフォトダイオード12Aと、前記画像用放射線検出素子の一部を分割した放射線検出素子であると共に予め定めた繰り返しパターンで配置され、前記被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に応じたモニタ用電気信号を配線に直接出力する複数のフォトダイオード12Bと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置に係り、照射された放射線の放射線画像を検出する放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリックス基板上にX線感応層を配置し、X線情報を直接デジタルデータに変換できるFPD(flat panel detector)等の放射線検出素子を用いた放射線画像撮影装置が実用化されている。このFPDは、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがあり、急速に普及が進んでいる。
【0003】
この種の放射線検出素子は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式や、放射線を一度CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光を半導体層で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。
【0004】
ところで、一般的な放射線画像撮影装置は、放射線画像撮影装置と放射線源との間で放射線の曝射タイミングの校正が必要となる。放射線画像撮影装置及び放射線源の組み合わせ毎に異なるため、これらの設置時に行う校正作業は非常な煩わしさとなる。特に、可搬型の放射線画像撮影装置の場合、複数種類の放射線源を使用することが多く、また、緊急用途で使用する際には、校正作業が大きな作業負荷となっているため、この煩わしさを解消することが求められている。
【0005】
従来では、1画素又は特定エリアの数画素の信号を放射線検出に使用していたが、この場合、放射線検出の判定に使用できる領域が狭く、かつ、信号の値が小さい。
【0006】
そして、放射線撮影においては、被ばく線量を低減するために少ない線量の放射線を狭い領域のみに照射する必要があるが、放射線検出に利用できる信号は、人体を透過した微弱な信号のみとなるため、確実に放射線を検出するのが困難となる。また、人体を透過せず放射線が照射される素抜け部が放射線の照射領域に存在する場合でも、その領域に放射線検出用の画素が存在しなければ放射線を検出することができない。
【0007】
特許文献1には、ソースフォロワ型の構造とすることにより、光電変換素子の信号電荷の非破壊読み出しを可能にした放射線撮像装置が開示されている。この装置では、1ラインずつ信号電荷を読み出してX線の照射開始を判定し、暗電流を読み出すリセット動作を実施している。
【0008】
また、特許文献2には、ゲート配線の上方にX線モニタ用の専用素子を備えた放射線検出装置が開示されている。この装置では、X線モニタ用の専用素子は特定のエリアに配置されると共に専用配線に接続され、AEC(自動露出制御)に用いられる。
【0009】
特許文献3には、放射線を画像にする撮像用光電変換素子の近傍に、放射線量をモニタするモニタ用光電変換素子が配置された放射線撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−126072号公報
【特許文献2】特開2005−147958号公報
【特許文献3】特開2004−228516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、読み出しを行っているラインしかX線の検出に関与しないため、素抜け部の存在しない領域ではX線検出が可能な程度の信号強度が得られない、という問題があった。
【0012】
また、特許文献1には、複数画素の画素値を合算することが開示されているが、スイッチング素子を備えるため、単純に合算しただけではスイッチングノイズ(フィードスルーノイズ)も合算されてしまい、数〜十画素程度までしか合算できない(スイッチングノイズで検出部が飽和してしまう)、という問題もあった。
【0013】
また、特許文献2に記載された技術では、X線モニタ用の専用素子を特定のエリアのみに配置しているため、放射線の検出に十分な信号を得るためには積分時間を延ばす必要があり、また、照射野を絞った撮影の場合に放射線を検知できない、という問題があった。
【0014】
また、X線モニタ用の専用素子がゲート配線の上方に配置しているため、寄生容量が増大する、という問題もあった。
【0015】
さらに、TFT製造時における自動面検を行うことができないため、製造歩留り低下が発生する、という問題もあった。
【0016】
すなわち、TFT製造では、異物・短絡・断線を検査するために、レイヤごとに自動面検を実施しているが、この検査では、回路が同一の繰り返しパターンとなっているか否かを判定基準としている。特許文献2に記載された技術では、画素領域の一部の特定のエリアのみが他のエリアと異なるパターンとなるため、これを異物として検出してしまい、通常の異物検査等を実施することができなくなる、という問題もあった。
【0017】
また、特許文献3に記載された技術では、モニタ用光電変換素子にもTFT、すなわちスイッチング素子が接続されているため、特許文献1に記載された技術と同様に、複数画素の画素値を合算する場合、単純に合算しただけではスイッチングノイズも合算されてしまい、数〜十画素程度までしか合算できない、という問題があった。
【0018】
さらに、特許文献3に記載された技術では、モニタ用光電変換素子が特定のエリアのみに配置しているため、特許文献2に記載された技術と同様に、放射線の検出に十分な信号を得るためには積分時間を延ばす必要があり、また、照射野を絞った撮影の場合に放射線を検知できない、という問題があった。
【0019】
このように、従来では、放射線の検出に必要なS/Nを短時間で得るのが困難である、という問題があった。
【0020】
本発明は上記問題点を解決するために成されたものであり、放射線を短時間で精度よく検出することができる放射線検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、予め定めた放射線検出領域に均一に配置され、被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に応じた画像用電気信号をスイッチング素子を介して信号配線に出力する複数の画像用放射線検出素子と、前記複数の画像用放射線検出素子のそれぞれに隣接して配置されると共に、前記予め定めた放射線検出領域に均一に且つ予め定めた繰り返しパターンで配置され、前記被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に応じたモニタ用電気信号を配線に直接出力する複数のモニタ用放射線検出素子と、を備えたことを特徴としている。
【0022】
この発明によれば、モニタ用放射線検出素子が、画像用放射線検出素子のそれぞれに隣接して配置されると共に、前記予め定めた放射線検出領域に均一に且つ予め定めた繰り返しパターンで配置され、検出した放射線に応じたモニタ用電気信号を配線に直接出力する構成としている。このため、スイッチングノイズ等に影響されることなく、複数のモニタ用放射線検出素子からの信号を積算することができ、放射線を短時間で精度よく検出することができる。また、モニタ用放射線検出素子を予め定めた繰り返しパターンで配置することでTFT製造時における自動面検を行うことができ、歩留まりの低下を抑制することができる。なお、「放射線検出領域」とは、画像用放射線検出素子及びモニタ用放射線検出素子の両方が配置された領域をいい、放射線検出装置全面に限られるものではない。例えば、放射線検出装置の一部の領域、例えば放射線検出装置の周縁部を除いた領域を放射線検出領域として、この領域に画像用放射線検出素子及びモニタ用放射線検出素子の両方を配置してもよい。この場合、放射線検出装置の周縁部に画像用放射線検出素子が配置されていてもよい。
【0023】
なお、請求項2に記載したように、全ての前記画像用放射線検出素子のそれぞれに隣接して前記モニタ用放射線検出素子が配置された構成としてもよい。これにより、より短時間で精度よく放射線を検出することができる。
【0024】
また、請求項3に記載したように、前記モニタ用放射線検出素子から出力された前記モニタ用電気信号を検出するモニタ用電気信号検出手段を備え、前記配線は、前記モニタ用放射線検出素子と前記モニタ用電気信号検出手段とを接続する専用配線である構成としてもよい。これにより、暗電流成分を除去するリセット駆動に関係なく放射線を検出できる。
【0025】
また、請求項4に記載したように、前記配線は、前記信号配線である構成としてもよい。これにより、回路構成を簡単にできる。
【0026】
また、請求項5に記載したように、隣接する前記モニタ用放射線検出素子を一つの信号配線に接続した構成としてもよい。これにより、1ライン当たりの放射線検出の感度を2倍にすることができる。
【発明の効果】
【0027】
このように、本発明によれば、放射線を短時間で精度よく検出することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図3】第1の実施の形態に係る放射線検出素子の一部拡大図である。
【図4】X線検出のシーケンスについて説明するための図である。
【図5】X線検出のシーケンスについて説明するための図である。
【図6】X線の照射について説明するためのイメージ図である。
【図7】X線の照射について説明するためのイメージ図である。
【図8】第2の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図9】第2の実施の形態に係る放射線検出素子の一部拡大図である。
【図10】第3の実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図11】第3の実施の形態に係る放射線検出素子の一部拡大図である。
【図12】放射線画像撮影装置の全体構成の変形例を示す構成図である。放射線検出素子の線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。
【0030】
本実施の形態では、X線などの放射線を一旦光に変換し、変換した光を電荷に変換する間接変換方式の放射線検出装置10に本発明を適用した場合について説明する。
【0031】
[第1の実施の形態]
【0032】
図1には、第1の実施の形態に係る放射線検出装置10を用いた放射線画像撮影装置100の全体構成が示されている。
【0033】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、間接変換方式の放射線検出装置10を備えている。なお、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0034】
放射線検出装置10には、光を受けて電荷を発生し、発生した電荷を蓄積するフォトダイオード12A、12Bと、フォトダイオード12Aに蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成される画素20が一方向及び一方向に対する交差方向にマトリクス状に複数配置されている。本実施の形態では、フォトダイオード12A、12Bが、図示しないシンチレータによって変換された光が照射されることにより、電荷が発生する。
【0035】
なお、フォトダイオード12Aは、画像用の放射線検出素子として機能し、フォトダイオード12Bは、放射線モニタ用の放射線検出素子として機能する。なお、フォトダイオード12A、12Bは、予め定めた放射線検出領域に均一に且つ予め定めた繰り返しパターンで配置される。ここで、「放射線検出領域」とは、フォトダイオード12A、12Bの両方が配置された領域をいい、放射線検出装置10の全面に限られるものではない。例えば、放射線検出装置10の一部の領域、例えば放射線検出装置10の周縁部を除いた領域を放射線検出領域として、この領域にフォトダイオード12A、12Bの両方を配置してもよい。この場合、放射線検出装置の周縁部に画像用放射線検出素子としてのフォトダイオード12Aが配置されていてもよい。
【0036】
このように、放射線画像撮影装置100は、各画素が放射線モニタ用のフォトダイオード12Bを備えているので、X線を放射する図示しないX線源と同期をとらなくても、放射線モニタ用のフォトダイオード12Bで放射線を検出するこでX線源から放射線が照射されたことを放射線画像撮影装置100自身が検出し、画像撮影に移行することができる。
【0037】
また、放射線検出装置10には、基板上に、TFTスイッチ4をON/OFFするための複数の走査配線101と、上記フォトダイオード12A、12Bに蓄積された電荷を読み出すための複数の信号配線3と、が互いに交差して設けられている。本実施の形態では、一方向(図1の列方向)の各画素列に信号配線3が1本ずつ設けられ、交差方向(図1の行方向)の各画素列に走査配線101が1本ずつ設けられている。
【0038】
各走査配線101は、それぞれ一方向の画素列の各画素20のTFTスイッチ4のゲートにそれぞれ接続され、各信号配線3は、それぞれ交差方向の画素列の各画素20のTFTスイッチ4のソースに接続されている。
【0039】
さらに、放射線検出装置10には、各信号配線3と並列に共通電極配線25が設けられている。共通電極配線25は、一端及び他端が並列に接続されており、一端が所定のバイアス電圧を供給するバイアス回路110に接続されている。フォトダイオード12A、12Bは共通電極配線25に接続されており、共通電極配線25を介してバイアス電圧が印加されている。
【0040】
フォトダイオード12Aのアノード側は、TFTスイッチ4を介して信号配線3と接続されており、カソード側は、共通電極配線25に接続されている。一方、フォトダイオード12Bのアノード側は、直接信号配線3に接続されており、カソード側は、共通電極配線25に接続されている。なお、本実施形態では、フォトダイオード12A,12BはPIN型フォトダイオードとしたが、これに限定されるものではなく、MIS型ダイオード、NIP型ダイオードを用いてもよい。
【0041】
走査配線101には、各TFTスイッチ4をスイッチングするための制御信号が流れる。このように制御信号が各走査配線101に流れることによって、各TFTスイッチ4がスイッチングされる。
【0042】
信号配線3には、各画素20のTFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて、各画素20に蓄積された電荷に応じた電気信号が流れる。より具体的には、各信号配線3には、当該信号配線3に接続された画素20の何れかのTFTスイッチ4がONされることにより、フォトダイオード12Aに蓄積された電荷量に応じた電気信号が流れる。なお、フォトダイオード12Bには、TFTスイッチ4は接続されていないため、蓄積された電荷量に応じた電気信号がそのまま信号配線3に流れる。
【0043】
各信号配線3には、各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する信号回路105が接続されている。また、各走査配線101には、各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号(スキャン信号)を出力する駆動回路104が接続されている。
【0044】
信号回路105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。信号回路105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅してデジタルデータへ変換する。
【0045】
この信号回路105及び駆動回路104には、信号回路105において変換されたデジタルデータに対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、信号回路105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、駆動回路104に対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する制御部106が接続されている。
【0046】
図2には、フォトダイオード12A、12Bの形状を表した平面図を、図3にはひとつの画素20の拡大平面図を示した。なお、図2、3においても、放射線を光に変換するシンチレータは省略している。
【0047】
図2、3に示すように、フォトダイオード12Bは、矩形状の画素20の一部(図2において左上角部)に形成されている。従来では、矩形状の画素20全体を一つのフォトダイオードとするのが通常であったが、本実施形態では、矩形状のフォトダイオードの一部を分割して、分割したフォトダイオードを放射線モニタ用としている。なお、本実施形態では、矩形状の画素としたが、多角形であってもよい。
【0048】
放射線モニタ用のフォトダイオード12Bの面積を大きくし過ぎると、画像用のフォトダイオード12Aの面積が小さくなって画質に影響が出てくる。従って、画素20に対するフォトダイオード12Bの面積の割合は、画質が許容範囲内となる程度、例えば画素20全体の数%〜10%程度とすることが好ましい。なお、本実施形態では、フォトダイオード12Bの位置を画素20の左上角部とし、形状を矩形としたが、位置及び形状は特に限定されるものではない。
【0049】
各信号配線3には、各信号配線3に直接接続されたモニタ用のフォトダイオード12Bに蓄積された電荷に応じた電気信号が出力される。従って、信号回路105には、各信号配線3に接続された複数のモニタ用のフォトダイオード12B(図1,2においては4個であるが、実際は数千個)に蓄積された電荷が積算された電気信号が出力される。すなわち、数千個分のフォトダイオード12Bに蓄積された電気信号がビニングされて信号回路105に出力される。
【0050】
信号回路105では、各信号配線3から出力された電気信号の値と予め定めた閾値とを各々比較し、任意のN本(N≧1)の信号配線3から出力された電気信号の値が前記閾値以上となる場合には、図示しないX線源からX線が放射されたと判定する。ここで、Nは、X線の照射線量などの撮影条件やX線検出素子の感度等より適宜設定することができる。なお、閾値は、信号配線3から出力された電気信号の値がこの値以上であれば、X線源から確実に放射線が放射されたと判定できる値に設定される。なお、信号回路105において、全信号配線3からの電気信号の値を加算し、これと閾値とを比較してX線が照射されたか否かを判定するようにしてもよい。
【0051】
図4には、X線検出モードから画像蓄積モード、画像読み出しモードに至るまでの図示しないX線源から照射されたX線の線量及び放射線検出装置10(X線検出素子)で検出される放射線のX線の線量を概略的に示した。同図に示すように、まず、X線検出モードにおいて、図示しないX線源から放射線が照射されると、徐々にX線の線量が上昇すると共に、放射線検出装置10で検出されるX線の線量も徐々に増加する。
【0052】
ここで、フォトダイオードは、X線が照射されなくても電荷が蓄積し、これがいわゆる暗電流成分となる。このため、X線検出モードにおいては、駆動回路104が、走査配線101に制御信号を出力して各フォトダイオードに蓄積された電荷を信号配線3に出力させると共に、信号回路105が、内蔵された増幅回路をリセットすることにより暗電流成分を除去するリセット駆動を定期的に行う。そして、X線を検出した場合には、リセット駆動を停止して画像蓄積モードに移行する。
【0053】
このリセット駆動の合間の短時間で放射線検出をする必要があるが、従来の一般的なリセット駆動中の積分時間においては、微弱な信号のS/N比は0.01程度と非常に小さい。従って、X線検出を確実に行うためには積分時間を100倍以上にする、100画素以上の信号を合算する、ノイズを1/100以下にする、の少なくとも一つを実行する必要がある。
【0054】
また、X線検出モードにおいて人体を透過したX線(図5の斜線で示す部分)については、画像に使用されないためロスとなる。このロスが発生する時間は極力短いことが好ましい。
【0055】
これに対し、本実施形態では、1本の信号配線3に接続された数千個分のフォトダイオード12Bに蓄積された電荷が積算された信号回路105に出力されるので、精度よく短時間でX線を検出することができる。
【0056】
また、従来のように、例えば図6に示すように、放射線検出素子50に対してモニタ用のフォトダイオード52を極一部の特定のエリアにしか設けなかった場合において、人体の一部、例えば腰椎54の周囲にX線の照射範囲56を限定した場合、X線が人体を透過せずに照射される素抜け部58にはフォトダイオード52が存在しない。また、図6において中央のフォトダイオード52でX線を検出することができるが、人体を透過するため、その強度は非常に小さく、X線が照射されたことを精度よく検出するのは困難である。
【0057】
さらに、図7に示すように、人体の膝部の周囲をX線の照射範囲56とした場合には、その範囲にフォトダイオード52が全く存在しない場合もあり得る。この場合は、X線が照射されてもX線を放射線検出素子50で検出することができず、撮影できないこととなる。
【0058】
これに対し、本実施形態では、図1、2に示すように、全画素に放射線モニタ用のフォトダイオード12Bが設けられている。このため、人体の一部を放射線の照射範囲とした場合でも、X線が人体を透過せずに照射される素抜け部にフォトダイオード12Bが存在する確率が高まる。また、素抜け部に存在するフォトダイオード12Bが少ない場合でも、前述したように、1本の信号配線3に接続された数千個分のフォトダイオード12Bに蓄積された電荷が積算された信号回路105に出力されるので、S/N比を向上させることができ、精度よく短時間でX線を検出することができる。
【0059】
ここで、例えばフォトダイオード12Bの面積を、1画素全体の面積の5%とし、1列の画素数を3000画素とすると、1本の信号配線3に出力される信号の信号強度Sは次式で表される。
【0060】
S=0.05×3000=150
【0061】
また、素抜け部のX線の強度は、人体を透過したX線の強度と比較して、10〜100倍程度となることから、信号強度Sは上記の値よりもさらに10〜100倍程度となり、短時間でX線を検出することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態では、モニタ用のフォトダイオード12Bを、スイッチング素子を介さずに直接信号配線3に接続している。このため、スイッチングノイズが加算されることがなく、精度よくX線を検出することができる。
【0063】
また、全画素に放射線モニタ用のフォトダイオード12Bが設けられているため、回路パターンは全面均一である。これにより、回路が同一の繰り返しパターンとなっているか否かを判定する自動面検において異常と判定されてしまうのを防ぐことができる。
【0064】
そして、画像蓄積モードが終了したら画像読み出しモードへ移行する。画像読み出しモードへの移行は、画像蓄積モードの期間を予め設定しておき、一定期間経過後に画像読み出しモードに移行するようにしてもよいし、モニタ用のフォトダイオード12Bを用いてX線の照射終了を判定し、画像蓄積モードから画像読み取りモードへ移行するようにしてもよい。
【0065】
X線の照射終了を判定する場合は、画像蓄積モード期間中のX線の線量をモニタ用のフォトダイオード12Bで検出し、信号回路105で各信号配線3から出力された電気信号の値と予め定めた閾値とを各々比較し、任意のN本(N≧1)の信号配線3から出力された電気信号の値が前記閾値以下となる場合には、X線の照射が終了したと判定する。ここで、Nは、X線の照射線量などの撮影条件やX線検出素子の感度等より適宜設定することができる。
【0066】
なお、上記のX線の照射終了の判定処理は、後述する第2、第3実施形態においても同様に実行することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
【0068】
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0069】
図8、9には、第2の実施の形態に係る放射線検出装置10Aの構成が示されている。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0070】
図8、9に示すように、放射線検出装置10Aが第1の実施の形態で説明した放射線検出装置10と異なるのは、フォトダイオード12Bのアノード側が、信号配線3に直接接続されているのではなく、専用配線120を介してX線検出回路122に接続されている点である。
【0071】
また、各専用配線120は、互いに接続されてX線検出回路122に接続されている。
【0072】
これにより、X線検出回路122には、全画素のモニタ用のフォトダイオード12Bに蓄積された電荷、すなわち数千画素×数千画素分のフォトダイオード12Bに蓄積された電荷が積算された電気信号が入力されるため、S/N比を大幅に向上させることができ、精度よく短時間で放射線を検出することができる。
【0073】
ここで、例えばフォトダイオード12Bの面積を、1画素全体の面積の5%とし、縦1列及び横1列の画素数を各々3000画素とすると、X線検出回路122に出力される信号の信号強度Sは次式で表される。
【0074】
S=0.05×3000×3000=450000
【0075】
さらに、素抜け部のX線の強度は、前述したように人体を透過したX線の強度と比較して10〜100倍程度となることから、信号強度Sは上記の値よりもさらに10〜100倍程度となり、より短時間でX線を検出することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、専用のX線検出回路122でX線を検出するので、リセット駆動に関係なく放射線を検出できる。
【0077】
[第3の実施の形態]
【0078】
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0079】
図10、11には、第3の実施の形態に係る放射線検出装置10Bの構成が示されている。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0080】
図10、11に示すように、放射線検出装置10Bが第1の実施の形態で説明した放射線検出装置10と異なるのは、1本の信号配線3に、隣接する画素に設けられたフォトダイオード12Bが共通に接続されている点である。
【0081】
これにより、隣接する2列分の画素(数千個×2列分の画素)に設けられたフォトダイオード12Bに蓄積された電荷が1本の信号配線3に出力されるため、放射線検出の感度を向上させることができる。
【0082】
以上、本発明を第1〜第3の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0083】
例えば、上記各実施形態では、全画素にモニタ用のフォトダイオード12Bを設けた場合について説明したが、全画素に設けなくてもよく、モニタ用のフォトダイオード12Bが同一の繰り返しパターンで配置されていればよい。例えば図12に示すように、2×2画素の4画素の領域で見ると、2つのモニタ用のフォトダイオード12Bが斜めに配置されており、このパターンが4画素毎に繰り返されている。このような場合でも、回路が同一の繰り返しパターンとなっているか否かを判定する自動面検において異常と判定されてしまうのを防ぐことができる。
【0084】
また、上記各実施の形態では、間接変換方式の放射線検出装置10に本発明を適用した場合について説明したが、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式の放射線検出素子に適用してもよい。この場合、直接変換方式におけるセンサ部は、放射線が照射されることにより電荷を発生する。
【0085】
また、上記各実施の形態では、X線を検出することにより画像を検出する放射線画像撮影装置100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出対象とする放射線は、X線や可視光、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0086】
その他、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100の構成、及び放射線検出装置10の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
3 信号配線
4 TFTスイッチ(スイッチング素子)
10 放射線検出装置
12A フォトダイオード(画像用放射線検出素子)
12B フォトダイオード(モニタ用放射線検出素子)
20 画素
101 走査配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた放射線検出領域に均一に配置され、被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に応じた画像用電気信号をスイッチング素子を介して信号配線に出力する複数の画像用放射線検出素子と、
前記複数の画像用放射線検出素子のそれぞれに隣接して配置されると共に、前記予め定めた放射線検出領域に均一に且つ予め定めた繰り返しパターンで配置され、前記被写体に照射された放射線を検出し、検出した放射線に応じたモニタ用電気信号を配線に直接出力する複数のモニタ用放射線検出素子と、
を備えた放射線検出装置。
【請求項2】
全ての前記画像用放射線検出素子のそれぞれに隣接して前記モニタ用放射線検出素子が配置された
請求項1記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記モニタ用放射線検出素子から出力された前記モニタ用電気信号を検出するモニタ用電気信号検出手段を備え、前記配線は、前記モニタ用放射線検出素子と前記モニタ用電気信号検出手段とを接続する専用配線である
請求項1又は請求項2記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記配線は、前記信号配線である
請求項1又は請求項2記載の放射線検出装置。
【請求項5】
隣接する前記モニタ用放射線検出素子を一つの信号配線に接続した
請求項4記載の放射線検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−164745(P2012−164745A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22737(P2011−22737)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】