説明

新規な高親和性のチオフェンベースおよびフランベースのキナーゼリガンド

本明細書中に、サイクリン依存性キナーゼ2のインヒビター、このインヒビターを含む組成物、ならびにこのインヒビターおよびインヒビター組成物を使用する方法が記載されている。このインヒビターおよびこれらを含む組成物は、疾患もしくは疾患症状を処置するのに有用である。このインヒビターは、フランもしくはチオフェン誘導体である。本発明はまた、CDK−2インヒビター化合物を作る方法、CDK−2を阻害する方法、および疾患もしくは疾患症状を処置するための方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、プロテインキナーゼインヒビター(例えば、サイクリン依存性キナーゼ、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK/ERK)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3β)などのインヒビター)として有用な新規な化合物、この化合物を含む薬学的組成物、ならびに疾患(例えば、癌、炎症、関節炎、ウイルス性疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)、心臓血管の疾患および真菌性疾患)を処置するためにこの化合物および組成物を使用する処置の方法に関連している。本明細書中で開示される化合物は、サイクリン依存性キナーゼインヒビター(例えば、CDK−1インヒビターおよびCDK−2インヒビター)として特に有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
細胞の増殖および分化は、高度に制御されたプロセスであって、これが制御されないと、異常な細胞融合を引き起こし得、しばしば疾患状態をもたらす。タンパク質のリン酸化は、細胞機能を制御するために使用される、翻訳前の主なメカニズムの一つである。プロテインキナーゼは、セリン残基、スレオニン残基およびチロシン残基のリン酸化を、ATPもしくはGTPのいずれかを使用して触媒する。ヒトゲノムの分析によって、約500種のプロテインキナーゼが存在するという予言が示された(非特許文献1;非特許文献2)。これらのキナーゼによるリン酸化の調節が失われた場合、多くの疾患(アルツハイマー病、炎症および癌が挙げられる)が起こり得る(非特許文献3;非特許文献4)。
【0003】
多数の細胞シグナルが、増殖、分化およびアポトーシスを刺激し得、そしてこれらのプロセスを調節するための重要なメカニズムは、細胞周期を含み、これは、DNA合成および有糸分裂のG1、S、G2およびM期を通じた経路を調節することによって細胞分裂を制御する。真核生物の細胞周期中の進行は、キナーゼのうちのサイクリン依存性キナーゼ(CDK)ファミリーによって制御される。CDKは主に、セリン/スレオニンキナーゼであり、これらは、いくつかの異なる調節サブユニット(サイクリンと呼ばれる)に結合する。異なるCDK/サイクリンのヘテロ二量体は、細胞周期内の種々のプロセスを調節し、ゆえに、DCK4/サイクリンDおよびCDK2/サイクリンEは、G1期からS期の開始への制御を調節すると考えられている。CDK2およびCDK1とヘテロ二量体を形成するための、サイクリンDおよびサイクリンEのダウンレギュレーションならびにサイクリンAのアップレギュレーションは、S期からG2への経路を促進する。最後に、CDK1(Cdc2)/サイクリンB(および恐らくCDK1(Cdc2)/サイクリンA)の活性複合体は、G2期からM期への遷移を促進すると考えられている(非特許文献5によって論説されている)。CDKに関して公知の基質のいくつかは、腫瘍抑制網膜芽細胞腫タンパク質(RB)および関連するファミリーのメンバー(p107およびp130)である(非特許文献6)。CDK4もしくはCDK2によるRBのリン酸化は、E2F転写因子の放出を誘発し、これは次に、調節タンパク質の発現を促進して、細胞周期の進行および細胞増殖を刺激する。ヒトの腫瘍において、RB機能の制御は、RB遺伝子の突然変異、CDK4の増幅、サイクリンDおよびサイクリンEの過剰発現、CDK4特異的タンパク質インヒビター(p16INK4A)の不活性化、ならびにCDKインヒビターのp27KIP1のレベルにおける崩壊をとおして崩壊されることが観察されている(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)。これらの機能的崩壊は、乳癌、結腸癌、胃癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌および他のヒト癌の発生の一因であると考えられている(非特許文献10;非特許文献11)。
【0004】
細胞周期の経路の制御されない調節が、ヒト癌の原因であると考えられているという事実によって、低分子インヒビターによる非調節DCK活性の阻害が、癌の処置において有益であると考えるに至った。多くの化学合成の試みが、CDK特異的ATP競合性インヒビターの開発に対して取り組まれてきたが、ほんの数種類の分子のみしかヒトの臨床試験には進んでいない。これらとしては、フラボピリドール(flavopiridol)、ロスコビチン(roscovitine)(CYC−202)および2−アミノチアゾール誘導体であるBMS−387032が挙げられる(非特許文献12;非特許文献13;非特許文献14)。
【非特許文献1】Manning G.、Whyte D.B.、Martinez R.、Hunter T、Sudarsanam S.、Science 298、1912、2002
【非特許文献2】Kostich M、English J、Madison V、Gheyas F、Wang L、Qiu P、Greene J、Laz TM.、Genome Biol. 3(9)、2002
【非特許文献3】Cohen P.、Eur.J. Biochem. 268、5001−5010、2001
【非特許文献4】Cohen P.、Nat. Rev. Drug Discovery 1、309−315、2002
【非特許文献5】Murray A.、Cell 116、221−234、2004
【非特許文献6】Grana X.、Garriga J.およびMayol X.、Oncogene 17、3365−3383、1998
【非特許文献7】Sherr, C.、Roberts J.、Genes Dev. 13、1501−1512、1999
【非特許文献8】Hall M.、 Peters G.、Adv. Cancer Res. 68、67−108、1996
【非特許文献9】Stewart T.、Wesfall M.、Pietenpol J.、Trends Pharmacol. Sci. 24、139−145、2003
【非特許文献10】Tsihlias J.、Kapusta L.、Slingerland J.、Annu. Rev. Med. 50、401−423、1999
【非特許文献11】Lloyd R.、Erickson L.、Jin L.、Kulig E.、Qian X.、Cheville J.、Scheithauser B.、Am. J. Pathol. 154(4)、313−323、1999
【非特許文献12】Zhai,S.、Senderowicz A.、Sausville E.、Figg W.、Ann. Pharmacother. 36、905−911、2002
【非特許文献13】McClue S.、Blake D.、Clarke R.、Cummings L.、Fischer P.、MacKenzie M.、Stewart K.、Wang S.、Zhelev N.、Zheleva D.、Lane D.、Int. J. Cancer 102(5)、463−468、2002
【非特許文献14】Misra R.ら、J.Med. Chem. 47、1719−1728、2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒト疾患の処置のためにCDKインヒビターを開発する必要性があり、したがって、これらの疾患の予防もしくは改変のために有用な化合物を記載することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、新規な化合物およびこれらの化合物を含む組成物、ならびにこの化合物を使用する方法に関連している。この化合物は、CDK−2を含む治療上の適用(被験体(例えば、ネコ、イヌ、ウマもしくはヒト)における疾患もしくは疾患症状の調節を含む)において有用な複素環式分子である。これらの疾患としては、アルツハイマー病、癌、糖尿病および炎症が挙げられる。この化合物(その立体異性体を含む)は、単独もしくは組み合わせた方法のいずれかで合成されて、化合物の構造的および立体化学的に異なるライブラリーをもたらす。
【0007】
本発明において挙げられる化合物によるCDK−2阻害は、蛍光偏光置換アッセイを使用してこれらの化合物とCDK−2との間の結合親和力(Ki)を測定することによって実証および定量された。特定の実施形態において、この化合物は、アリールアミド部分で置換されるチオフェン化合物である。一実施形態において、本明細書中で提供されるのは、式1:
【0008】
【化17】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルであって、ここで、
Aは、OもしくはSであり;
20は、
【0009】
【化18】

であり;
21は、−C(O)N(R2526)もしくは−N(R26)C(O)R25であり;
22は、水素、アルキル、オキソ、アミド、シアノ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり;
23は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アミド、アリール、アルコキシオキソ、ハロ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シアノ、オキソもしくはアミノアルキルであって、ここで、このアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリール、アルコキシオキソ、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびアミノアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか、または2つのP隣接部分が一緒になって、それらが結合しているこのアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル環に縮合したアルキレンジオキシ部分を形成し;
24は、水素、ハロ、アルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルであり、ここで、このアルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか;または2つのR24基は、フェニル環上の1,2もしくは1,3配置において原子を置換するが、このR24は、一緒に結合して、−O−(CH−O−、−S−(CH−O−、−S−(CH−S、−CH=CH−CH=N−、−N=CH−CH=N−もしくは−S−CH=N−を形成することが示され、ここでyは、1もしくは2であるか;
あるいは、R23およびR24は一緒になってアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環を形成し、ここで、このアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環は、それらが結合していると示されているフェニル環に縮合され;
25は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリもしくはアルコキシアリールであり、ここで、このアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、およびアルコキシアリールのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたQ置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Qは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロアルキル、スルホンアミド、4〜6員のラクトン環もしくはアルキレンジオキシであり、ここで、各Qは、非置換であるか、もしくはアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて独立して置換され;
26は、水素、アルキルもしくは低級アルキルであるか;
あるいは、R25およびR26は、一緒に結合して、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し得;
nは、1もしくは2であり;そして
tは、1もしくは2である。
【0010】
一実施形態において、基R20、R21、R22、R23、R24、R25およびR26、n、tなどは、生じる化合物がCDK−2に対して阻害効果を有するように選択される。
【0011】
いくつかの実施形態は、本明細書中に記載の化合物の薬学的に受容可能な誘導体(塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物、水和物およびプロドラッグが挙げられる)を含む。
【0012】
適切な経路および方法による投与のために処方された、有効濃度の1つ以上の本明細書中で提供される化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体を含む薬学的組成物(この送達量は、CDK−2によって調節されるかそうでなければ影響を受ける疾患もしくは障害の1つ以上の症状の処置、予防もしくは改善に関して有効である)もまた提供される。有効量および有効濃度は、このいずれの疾患もしくは障害のいずれの症状を改善するのにも有効である。CDK−2によって調節されるかそうでなければ影響を受けることが関与している疾患もしくは障害の1つ以上の症状の処置、予防もしくは改善の方法が提供される。このような方法としては、本明細書中に提供される化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体のうちの1つ以上を使用した、炎症性疾患、神経変性疾患、癌および糖尿病のうちの1つ以上の症状の処置、予防および改善の方法が挙げられる。炎症性疾患の非限定的な例(xample)は、急性膵炎、慢性膵炎、ぜんそく、アレルギーおよび成人性呼吸窮迫症候群である。神経変性疾患の非限定的な例は、急性アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳虚血および他の神経変性疾患である。糖尿病の非限定的な例は、真性糖尿病および尿崩症(例えば、I型糖尿病およびII型糖尿病)である。
【0013】
本方法の実施において、有効量のこの化合物もしくは治療上有効な濃度のこの化合物を含む組成物(これらは、CDK−2媒介性疾患もしくは障害(炎症性疾患、神経変性疾患、癌および糖尿病の処置のための、全身系の送達(非経口、経口もしくは静脈内送達を含む)または局所的もしくは表面的な塗布のために処方される)が、これらの疾患もしくは障害を発症している個々に投与される。この量は、この疾患もしくは障害の1つ以上の症状を改善もしくは取り除くに有効である。
【0014】
梱包物質、本明細書中に提供されている化合物もしくは組成物、またはその薬学的に受容可能な誘導体(これは、CDK−2の活性、媒介性疾患もしくは障害を調節するのに有効である)を含む製造物品が、梱包物質内に提供されており、そしてこの化合物もしくは組成物またはその薬学的に受容可能な誘導体が、CDK−2の活性、媒介性疾患もしくは障害を調節するために使用されていることを示しているラベルが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(詳細な説明)
(A.定義)
そうでないと定義されていない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。全ての特許、出願、公開された出願および他の公開は、その全体が参考として援用される。本明細書中の用語に関する複数の定義が存在する場合には、そうでないと述べられていない限り、そのセクション内の定義が支配する。
【0016】
本明細書中で使用される場合、化合物の薬学的に受容可能な誘導体としては、その塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグが挙げられる。このような誘導体は、当業者によって、このような誘導に関する公知な方法を使用して容易に調製され得る。生成された化合物は、実質的な毒性効果をともなわずに動物もしくはヒトに投与され得、これは、薬学的に活性であるかもしくはプロドラッグのいずれかである。特定の実施形態において、化合物の塩形態は、この化合物の溶解速度および経口のバイオアベイラビリティーを向上させる。
【0017】
上記および本開示にわたって使用される場合、以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである:
「患者」は、ヒトおよび動物の両方を包含する。
【0018】
「哺乳動物」は、ヒトおよび他の哺乳類の動物を意味する。
【0019】
「アルキル」は、直鎖状でも分枝状でもよく、約1〜約20個の炭素原子を鎖中に含む脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖中に約1〜約12個の炭素原子を含む。さらに好ましいアルキル基は、鎖中に約1〜約6個の炭素原子を含む。分枝状とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルもしくはプロピル)が直鎖状のアルキル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキル」は、直鎖状でも分枝状でもよい鎖中に約1〜約6個の炭素原子を有する基を意味する。「アルキル」は、非置換であってもよいし、もしくは1つ以上の置換基によって必要に応じて置換されてもよく、この置換基は同じであっても異なっていてもよく、それぞれの置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、−O−C(O)−アルキル、−O−C(O)−アリール、−O−C(O)−シクロアルキル、カルボキシおよび−C(O)O−アルキルからなる群より独立して選択される。適切なアルキル基の非限定的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルが挙げられる。
【0020】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む脂肪族炭化水素基を意味し、ここで、この鎖は直鎖状でも分枝状でもよく、そしてこの基は、鎖中に約2〜約15個の炭素原子を含む。好ましいアルケニル基は、鎖中に約2〜約12個の炭素原子を有しており;さらに好ましくは、鎖中に約2〜約6個の炭素原子を有する。分枝状とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルもしくはプロピル)が直鎖状のアルケニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルケニル」は、約2〜約6個の炭素原子が鎖中にあることを意味し、この鎖は、直鎖状でも分枝状でもよい。「アルケニル」は、非置換であってもよいし、もしくは1つ以上の置換基によって必要に応じて置換されてもよく、この置換基は同じであっても異なっていてもよく、各置換基は、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシおよび−S(アルキル)からなる群より独立して選択される。適切なアルケニル基の非限定的な例としては、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブト−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニルおよびデセニルが挙げられる。
【0021】
「アルキレン」は、上記で定義したアルキル基から水素原子を取り除いて得られる二官能基を意味する。アルキレンの非限定的な例としては、メチレン、エチレン、およびプロピレンが挙げられる。
【0022】
「アルケニレン」は、上記で定義したアルケニル基から水素原子を取り除いて得られる二官能基を意味する。アルケニレンの非限定的な例としては、−CH=CH−、−C(CH)=CH−および−CH=CHCH−が挙げられる。
【0023】
「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む脂肪族炭化水素基を意味し、ここで、この鎖は、直鎖状でも分枝状でもよく、そしてこの基は、約2〜約15個の炭素原子を鎖中に含む。好ましいアルキニル基は、鎖中に約2〜約12個の炭素原子を含み;さらに好ましくは、鎖中に約2〜約4個の炭素原子を含む。分枝状とは、1つ以上の低級アルキル基(例えば、メチル、エチルもしくはプロピル)が直鎖状のアルキニル鎖に結合していることを意味する。「低級アルキニル」は、約2個〜約6個の炭素原子が鎖中にあることを意味し、この鎖は、直鎖状でも分枝状でもよい。適切なアルキニル基の非限定的な例としては、エチニル、プロピニル、2−ブチニルおよび3−メチルブチニルが挙げられる。「アルキニル」は、非置換であってもよいし、もしくは1つ以上の置換基によって必要に応じて置換されてもよく、この置換基は同じであっても異なっていてもよく、各置換基は、アルキル、アリールおよびシクロアルキルからなる群より独立して選択される。
【0024】
「アリール」は、約6〜約14個の炭素原子(好ましくは約6〜約10個の炭素原子)を含む芳香族の単環式もしくは多環式の環系を意味する。アリール基は、1つ以上の同じでも異なっていてもよい「環系置換基」で必要に応じて置換され得、これは本明細書中で定義するとおりである。適切なアリール基の非限定的な例としては、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0025】
「ヘテロアリール」は、約5〜約14個の環原子(好ましくは約5〜約10個の環原子)を含む芳香族の単環式もしくは多環式の環系であって、ここで、環原子のうちの1個以上は炭素とは異なる元素(1つもしくは組み合わせ)であり、例えば、窒素、酸素もしくは硫黄であるものを意味する。好ましいヘテロアリールは、約5〜約6個の環原子を含む。「ヘテロアリール」は、1つ以上の同じでも異なっていてもよい「環系置換基」によって必要に応じて置換され得、これは本明細書中で定義するとおりである。ヘテロアリールの根名(root name)の前の接頭辞のアザ、オキサもしくはチアはそれぞれ、少なくとも窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子が環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、対応するN−酸化物へと必要に応じて酸化され得る。「ヘテロアリール」はまた、上記で定義したアリールに縮合した上記で定義したヘテロアリールも含む。適切なヘテロアリールの非限定的な例としては、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、ピリドン(N−置換ピリドンを含む)、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、オキシンドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリルなどが挙げられる。用語、「ヘテロアリール」はまた、部分的に飽和したヘテロアリールの部分(例えば、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリルなど)も意味する。
【0026】
「アラルキル」もしくは「アリールアルキル」は、アリール−アルキル−基を意味し、ここで、アリールおよびアルキルは、上記のとおりである。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例としては、ベンジル、2−フェネチルおよびナフタレニルメチルが挙げられる。親部分への結合は、アルキルを介してである。
【0027】
「アルキルアリール」は、アルキル−アリール基を意味し、ここで、アルキルおよびアリールは、上記のとおりである。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例はトリルである。親部分への結合は、アリールを介してである。
【0028】
「シクロアルキル」は、約3〜約10個の炭素原子(好ましくは約5〜約10個の炭素原子)を含む非芳香族の単環式もしくは多環式の環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルキルは、1つ以上の同じであっても異なっていてもよい「環系置換基」で必要に応じて置換され得、それらは上記で定義したとおりである。適切な単環式シクロアルキルの非限定的な例として、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的な例として、1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチルなどが挙げられる。
【0029】
「シクロアルキルアルキル」は、アルキル部分(上記で定義した)を経て親核に結合する上記で定義したシクロアルキル部分を意味する。適切なシクロアルキルアルキルの非限定的な例として、シクロヘキシルメチル、アダマンチルメチルなどが挙げられる。
【0030】
「シクロアルケニル」は、約3〜約10個の炭素原子(好ましくは、約5〜約10個の炭素原子)を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む非芳香族の単環式もしくは多環式の環系を意味する。好ましいシクロアルケニル環は、約5〜約7個の環原子を含む。シクロアルケニルは、1つ以上の同じであっても異なっていてもよい「環系置換基」で必要に応じて置換され得、それらは上記で定義したとおりである。適切な単環式シクロアルケニルの非限定的な例として、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニルなどが挙げられる。適切な多環式シクロアルケニルの非限定的な例はノルボルニレニルである。
【0031】
「シクロアルケニルアルキル」は、アルキル部分(上記で定義した)を経て親核に結合する上記で定義したシクロアルケニル部分を意味する。適切なシクロアルケニルアルキルの非限定的な例として、シクロペンテニルメチル、シクロヘキセニルメチルなどが挙げられる。
【0032】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素を意味する。好ましいのは、フッ素、塩素および臭素である。
【0033】
「環系置換基」は、芳香族もしくは非芳香族の環系に結合した置換基を意味し、例えば、環系上の利用可能な水素にとって代わる。環系置換基は、同じでも異なっていてもよく、各置換基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、−O−C(O)−アルキル、−O−C(O)−アリール、−O−C(O)−シクロアルキル、−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NH、−C(=NH)−NH(アルキル)、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−、YNSO−および−SONYからなる群より独立して選択され、ここで、YおよびYは、同じでも異なっていてもよく、そして、水素、アルキル、アリール、シクロアルキルおよびアラルキルからなる群より独立して選択される。「環系置換基」はまた、環系上の2つの隣接した炭素原子上の2つの利用可能な水素(1つのHがそれぞれの炭素上にある)を同時に置換する単一の部分も意味し得る。このような部分の例としては、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、−C(CH−などが挙げられ、例えばそれらは:
【0034】
【化19】

のような部分を形成する。
【0035】
「ヘテロアリールアルキル」は、アルキル部分(上記で定義した)を経て親核に結合する上記で定義したヘテロアリール部分を意味する。適切なヘテロアリールの非限定的な例として、2−ピリジニルメチル、キノリニルメチルなどが挙げられる。
【0036】
「ヘテロシクリル」は、約3〜約10個の環原子を含む非芳香族の飽和した単環式もしくは多環式の環系を意味し、好ましくは約5〜約10個の環原子であり、ここで、環系内の1つ以上の原子は炭素とは異なる元素であり、例えば、窒素、酸素、もしくは硫黄のどれか1つか、もしくはそれらの組み合わせである。環系内には隣接した酸素原子および/もしくは硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクリルの根名の前の接頭辞のアザ、オキサもしくはチアはそれぞれ、少なくとも窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子が環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリル環内の任意の−NHは、保護されて存在し得、例えば−N(Boc)、−N(CBz)、−N(Tos)基などとしてであり;このような保護もまた本発明の一部であるとみなされる。ヘテロシクリルは、1つ以上の同じであっても異なっていてもよい「環系置換基」によって必要に応じて置換され得、それらは本明細書中で定義したとおりである。ヘテロシクリルの窒素原子もしくは硫黄原子は、対応するN−酸化物、S−酸化物もしくはS,S−二酸化物へと必要に応じて酸化され得る。適切な単環式のヘテロシクリル環の非限定的な例として、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ラクタム、ラクトンなどが挙げられる。「ヘテロシクリル」はまた、単一の部分(例えば、カルボニル)も意味し得、これは、環系上の同じ炭素原子上の2つの利用可能な水素を同時に置換する。このような部分の例は、ピロリドン:
【0037】
【化20】

である。
【0038】
「ヘテロシクリルアルキル」は、アルキル部分(上記で定義した)を経て親核に結合する上記で定義したヘテロシクリル部分を意味する。適切なヘテロシクリルアルキルの非限定的な例として、ピペリジニルメチル、ピペラジニルメチルなどが挙げられる。
【0039】
「ヘテロシクレニル」は、約3〜約10個の環原子(好ましくは、約5〜約10個の環原子)を含む非芳香族の単環式もしくは多環式の環系であって、ここで、環系中の原子のうちの1個以上が炭素とは異なる元素(1個もしくは組み合わせ)(例えば、窒素原子、酸素原子、もしくは硫黄原子)であり、そして少なくとも1つの炭素−炭素二重結合もしくは炭素−窒素二重結合を有するものを意味する。この環系内には隣接した酸素原子および/もしくは硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクレニル環は約5〜約6個の環原子を含む。ヘテロシクレニルの根名の前の接頭辞のアザ、オキサもしくはチアはそれぞれ、少なくとも窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子が環原子として存在することを意味する。ヘテロシクレニルは、1個以上の環系置換基によって必要に応じて置換され得、「環系置換基」は、上記で定義したとおりである。ヘテロシクレニルの窒素原子もしくは硫黄原子は、対応するN−酸化物、S−酸化物もしくはS,S−二酸化物へと必要に応じて酸化され得る。適切なヘテロシクレニル基の非限定的な例としては、1,2,3,4−テトラヒドロピリジニル、1,2−ジヒドロピリジニル、1,4−ジヒドロピリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラニル、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、ジヒドロチオフェニル、ジヒドロチオピラニルなどが挙げられる。「ヘテロシクレニル」はまた、単一の部分(例えば、カルボニル)も意味し得、これは、環系上の同じ炭素原子上の2つの利用可能な水素を同時に置換する。このような部分の例は、ピロリジノン:
【0040】
【化21】

である。
【0041】
「ヘテロシクレニルアルキル」は、アルキル部分(上記で定義した)を経て親核に結合する上記で定義されたヘテロシクレニル部分を意味する。
【0042】
本発明のヘテロ原子含有の環系において、N、OもしくはSに隣接する炭素原子にはヒドロキシル基は存在せず、ならびに別のヘテロ原子に隣接する炭素にはNもしくはS基が存在しないことに注意するべきである。ゆえに、例えば、環:
【0043】
【化22】

内では、2および5のマークの炭素に直接結合した−OHは存在しない。
【0044】
例えば、部分:
【0045】
【化23】

のような互変異性の形態は、本発明の特定の実施形態において等価であるとみなされることにも注意するべきである。
【0046】
「アルキニルアルキル」は、アルキニル−アルキル−基を意味し、ここで、アルキニルおよびアルキルは上記のとおりである。好ましいアルキニルアルキルは、低級アルキニル基および低級アルキル基を含む。親部分への結合は、アルキルを介してである。適切なアルキニルアルキル基の非限定的な例としては、プロパルギルメチルが挙げられる。
【0047】
「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール−アルキル−基を意味し、ここで、ヘテロアリールおよびアルキルは上記のとおりである。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例としては、ピリジルメチルおよびキノリン−3−イルメチルが挙げられる。親部分への結合は、アルキルを介してである。
【0048】
「ヒドロキシアルキル」は、HO−アルキル−基を意味し、ここで、アルキルは上記に定義したとおりである。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含む。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的な例としては、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが挙げられる。
【0049】
「アシル」は、H−C(O)−、アルキル−C(O)−もしくはシクロアルキル−C(O)−基を意味し、ここで、多種の基は上記のとおりである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。好ましいアシルは、低級アルキルを含む。適切なアシル基の非限定的な例としては、ホルミル、アセチルおよびプロパノイルが挙げられる。
【0050】
「アロイル」は、アリール−C(O)−基を意味し、ここで、アリール基は上記のとおりである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。適切な基の非限定的な例としては、ベンゾイルおよび1−ナフトイルが挙げられる。
【0051】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、ここで、アルキル基は上記のとおりである。適切なアルコキシ基の非限定的な例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、およびn−ブトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0052】
「アリールオキシ」は、アリール−O−基を意味し、ここで、アリール基は上記のとおりである。適切なアリールオキシ基の非限定的な例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0053】
「アラルキルオキシ」は、アラルキル−O−基を意味し、ここで、アラルキル基は上記のとおりである。適切なアラルキルオキシ基の非限定的な例としては、ベンジルオキシおよび1−ナフタレンメトキシもしくは2−ナフタレンメトキシが挙げられる。親部分への結合は、エーテル酸素を介してである。
【0054】
「アルキルチオ」は、アルキル−S−基を意味し、ここで、アルキル基は上記のとおりである。適切なアルキルチオ基の非限定的な例としては、メチルチオおよびエチルチオが挙げられる。親部分への結合は、硫黄を介してである。
【0055】
「アリールチオ」は、アリール−S−基を意味し、ここで、アリール基は上記のとおりである。適切なアリールチオ基の非限定的な例としては、フェニルチオおよびナフチルチオが挙げられる。親部分への結合は、硫黄を介してである。
【0056】
「アラルキルチオ」は、アラルキル−S−基を意味し、ここで、アラルキル基は上記のとおりである。適切なアラルキルチオ基の非限定的な例は、ベンジルチオである。親部分への結合は、硫黄を介してである。
【0057】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的な例としては、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが挙げられる。親部分への結合は、カルボニルを介してである。
【0058】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール−O−C(O)−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例としては、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが挙げられる。親部分への結合は、カルボニルを介してである。
【0059】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例は、ベンジルオキシカルボニルである。親部分への結合は、カルボニルを介してである。
【0060】
「アルキルスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルである基である。親部分への結合は、スルホニルを介してである。
【0061】
「アリールスルホニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。親部分への結合は、スルホニルを介してである。
【0062】
用語「置換された」は、示された原子上の1つ以上の水素が、記載された群から選択されたものでとって代えられており、ただし、示された原子の既存の状況下での通常の原子価を超えておらず、そして、この置換が安定した化合物を生じることを意味する。置換基および/もしくは可変物との組み合わせは、このような組み合わせによって安定した化合物を生じる限り、許容可能である。「安定した化合物」もしくは「安定した構造」は、反応混合物から有用な程度の純度への単離、および有効な治療剤への処方に耐えるのに十分に頑丈な化合物を意味する。
【0063】
用語、「必要に応じて置換された」は、特定の基、ラジカルもしくは部分での必要に応じた置換を意味する。
【0064】
用語、化合物についての「精製された」、「精製された形態」もしくは「単離され、そして精製された形態」は、合成プロセス(例えば、反応混合物から)もしくは天然供給源またはこれらの組み合わせから単離された後のこの化合物の物理的状態をいう。したがって、用語、化合物についての「精製された」、「精製された形態」もしくは「単離され、そして精製された形態」は、精製プロセスまたは本明細書中に記載するか、もしくは当業者に周知のプロセス(例えば、クロマトグラフィー、再結晶など)から得られた後の、本明細書中に記載するか、もしくは当業者に周知の標準的な分析技術によって特徴付けるに十分な純度を有するこの化合物の物理的状態をいう。
【0065】
本明細書中の本文、スキーム、実施例および表中の原子価が満たされていない任意の炭素およびヘテロ原子は、原子価を満たすために十分な数の水素原子を有するとみなされることもまた注意されるべきである。
【0066】
化合物中の官能基が「保護された」と称された場合、これは、この化合物が反応に供される場合に、保護された位置における望ましくない副反応を防ぐためにこの基が修飾された形態であることを意味する。適切な保護基は、当業者によって、ならびに標準的な教科書(例えば、T.W.Greeneら、Protective Groups in organic Synthesis(1991)、Wiley、New York)を参照することによって認識される。
【0067】
任意の構成要素中もしくは式I中で、1つより多くの何らかの可変物(例えば、アリール、複素環、Rなど)が存在する場合、それぞれの存在箇所におけるその定義は、他の全ての存在箇所におけるその定義とは独立する。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語、「組成物」は、特定の要素を特定の量で含む生成物、ならびに特定の要素の特定の量での組み合わせから直接的にもしくは間接的に生じた任意の生成物を包含することが意図される。
【0069】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物もまた本明細書中で企図される。プロドラッグに関する議論は、A.C.S. Symposium SeriesのT.Higuchi and V.Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems(1987)14およびBioreversible Carriers in Drug Design、(1987) Edward B.Roche(編)、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press内に提供されている。用語、「プロドラッグ」は、インビボで変換されて式(I)の化合物またはこの化合物の薬学的に受容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物を生成する化合物(例えば、薬物の前駆物質)を意味する。この変換は、種々のメカニズムによって(例えば、代謝プロセスもしくは化学的プロセスによって)起こり得て、例えば、血液中の加水分解をとおしてである。プロドラッグの使用に関する議論は、A.C.S. Symposium SeriesのVol.14のT.Higuchi and W.Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」によって、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design(編)Edward B.Roche、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987内に提供されている。
【0070】
例えば、式(I)の化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩、水和物もしくは溶媒和物が、カルボン酸官能基を有する場合、プロドラッグは、酸の基の水素原子を、基(例えば、(C−C)アルキル、(C−C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C−C)アルキルアミノ(C−C)アルキル(例えば、β−ジメチルアミノエチル)、カルバモイル−(C−C)アルキル、N,N−ジ(C−C)アルキルカルバモイル−(C−C)アルキルおよびピペリジノ−、ピロリジノ−もしくはモルホリノ(C−C)アルキルなど)で置き換えることによって形成されるエステルを含み得る。
【0071】
同様に、式(I)の化合物が、アルコール官能基を含む場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を、基(例えば、(C−C)アルカノイルオキシメチル、1−((C−C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C−C)アルカノイルオキシ)エチル、(C−C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C−C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C−C)アルカノイル、α−アミノ(C−C)アルカニル、アリールアシルおよびα−アミノアシルもしくはα−アミノアシル−α−アミノアシル(ここで、各α−アミノアシル基は、天然のL−アミノ酸より独立して選択される)、P(O)(OH)、−P(O)(O(C−C)アルキル)もしくはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基を取り除くことで生じるラジカル)など)で置き換えることによって形成され得る。
【0072】
式(I)の化合物がアミン官能基を含む場合、プロドラッグは、アミン基中の水素原子を、基(例えば、RおよびR’がそれぞれ独立して(C−C10)アルキル、(C−C)シクロアルキル、ベンジルであるか、あるいはR−カルボニルが天然α−アミノアシルもしくは天然α−アミノアシルである、R−カルボニル、RO−カルボニル、NRR’−カルボニル、YがH、(C−C)アルキルもしくはベンジルである−C(OH)C(O)OY、Yが(C−C)アルキルであり、Yが(C−C)アルキル、カルボキシ(C−C)アルキル、アミノ(C−C)アルキルまたはモノ−N−もしくはジ−N,N−(C−C)アルキルアミノアルキルである−C(OY)Y、YがHもしくはメチルであり、そしてYがモノ−N−もしくはジ−N,N−(C−C)アルキルアミノモルホリノ、ピペリジン−1−イルまたはピロリジン−1−イルである−C(Y)Yなど)で置き換えることによって形成され得る。
【0073】
本発明の一つ以上の化合物は、非溶媒和物および薬学的に受容可能な溶媒(例えば、水、エタノールなど)との溶媒和物の形態で存在し得、本発明は溶媒和物および非溶媒和物の両方の形態を包含することを意図されている。「溶媒和物」は、一つ以上の溶媒分子をもつ本発明の化合物の物理的会合を意味する。この物理的会合は、様々な程度のイオン結合および水素結合を含む共有結合を含む。特定の実例中では、溶媒和物は単離可能で、例えば一つ以上の溶媒分子が結晶性の固体の結晶格子内に含まれている。「溶媒和物」は、溶液相と単離可能な溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物の非限定的な例としては、エタノレート(ethanolate)、メタノレート(methanolate)などが挙げられる。「水和物」は、溶媒分子がHOである溶媒和物である。
【0074】
本発明の1つ以上の化合物は、必要に応じて溶媒和物に変換され得る。溶媒和物の調製は、一般的に公知である。ゆえに、例えば、M.Cairaら、J.Pharmaceutical Sci.、93(3)、601−611(2004)は、酢酸エチル中のならびに水からの抗真菌性のフルコナゾールの溶媒和物の調製を記載している。溶媒和物、半溶媒和物、水和物などの同様の調製は、E.C.van Tonderら、AAPS PharmSciTech.、5(1)、論説12(2004);およびA.L.Binghamら、Chem.Commun.、603−604(2001)によって記載されている。典型的な非限定的なプロセスは、本発明の化合物を望ましい量の望ましい溶媒(有機溶媒もしくは水またはこれらの混合物)に、周囲温度より高い温度で溶解し、そしてこの溶液を結晶を形成するに十分な速度で冷却し、この結晶は、次いで、標準的な方法によって単離されることを含む。分析技術(例えば、I.R.分光学)は、溶媒和物(もしくは水和物)としての結晶中のその溶媒(もしくは水)の存在を示す。
【0075】
「有効量」もしくは「治療上有効な量」は、上記の疾患を阻害し、ゆえに、所望する治療効果、改善効果、阻害効果もしくは予防効果を生じるのに有効な本発明の化合物もしくは組成物の量を説明すると意味される。
【0076】
式Iの化合物は、塩を形成し得、この塩もまた本発明の範囲内にある。他に示されない限り、本明細書中の式Iの化合物への言及は、その塩への言及を含むと理解される。用語「塩」は、本明細書中で使用される場合、無機酸および/もしくは有機酸を使って形成される酸性塩、ならびに無機塩基および/もしくは有機塩基を使って形成される塩基性塩を示す。さらに、式Iの化合物が塩基性部分(例えば、ピリジンもしくはイミダゾールだが、これらに限定されない)、および酸性部分(例えば、カルボン酸だが、これに限定されない)の両方を含む場合、両性イオン(「分子内塩」)が形成され得、これは、本明細書中で使用される場合、用語「塩」に含まれる。薬学的に受容可能な(すなわち、非毒性で生理学上受容可能な)塩が好ましいが、他の塩もまた有用である。例えば、媒質中(例えば、塩を沈殿させる媒質中もしくはその後凍結乾燥を行う水性媒質中)で式Iの化合物とある量(例えば、等量)の酸もしくは塩基を反応させることにより、式Iの化合物の塩が形成され得る。
【0077】
典型的な酸付加塩としては、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩(トシレートとしても公知)などが挙げられる。さらに、塩基性の薬学的化合物から一般的に薬学的に有用な塩を形成するために適切であると考えられる酸は、例えばP.Stahlら、 Camille G.(編) Handbook of Pharmaceutical Salts. Properties, Selection and Use.(2002) Zurich:Wiley−VCH;S.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1) 1−19;P.Gould,International J.of Pharmaceutics(1986)33 201−217;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996)、Academic Press、New Yorkによって;およびThe Orange Book(Food & Drug Administration、Washington,D.C.ウェブサイトにて)中で議論されている。これらの開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0078】
典型的な塩基性塩としては、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、リチウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびマグネシウム塩)、有機塩基(例えば、有機アミン)(例えば、ジシクロヘキシルアミン、t−ブチルアミン)との塩、およびアミノ酸(例えば、アルギニン、リジン)との塩などが挙げられる。塩基性の窒素含有基は、薬剤(例えば、ハロゲン化低級アルキル(例えば、メチル、エチルおよびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、硫酸ジアルキル(例えば、硫酸のジメチル、ジエチルおよびジブチル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、デシル、ラウリルおよびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物)、ハロゲン化アラルキル(例えば、ベンジルおよびフェネチルの臭化物)など)によって、四級化され得る。
【0079】
このような酸性塩および塩基性塩は全て、本発明の範囲内の薬学的に受容可能な塩であることが意図されており、全ての酸性塩および塩基性塩は、本発明の目的のためには、対応する化合物の遊離した形態と等価であるとみなされる。
【0080】
本発明の化合物の薬学的に受容可能なエステルは、以下の基を含む:(1)ヒドロキシ基のエステル化によって得られるカルボン酸エステル(ここで、エステルグループのカルボン酸部分の非カルボニル部分は、直鎖状もしくは分枝状のアルキル(例えば、アセチル、n−プロピル、t−ブチルもしくはn−ブチル)、アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル)、アリール(例えば、必要に応じて(例えば、ハロゲン、C1−4アルキルもしくはC1−4アルコキシで)置換されたフェニル)あるいはアミノから選択される);(2)スルホネートエステル(例えば、アルキルスルホニルもしくはアラルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル);(3)アミノ酸エステル(例えば、L−バリルもしくはL−イソロイシル);(4)ホスホネートエステルおよび(5)モノ−、ジ−もしくはトリホスフェートエステル。ホスフェートエステルは、例えば、C1−20アルコールもしくはその反応性誘導体によって、あるいは2,3−ジ(C6−24)アシルグリセロールによってさらにエステル化され得る。
【0081】
式Iの化合物、ならびにその塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグは、それらの互変異性体の形態で(例えば、アミドもしくはイミノエーテルとして)存在し得る。このような互変異性の形態は全て、本明細書中で、本発明の一部として企図される。
【0082】
式(I)の化合物は、不斉のもしくはキラル中心を含み得て、ゆえに、さまざまな立体異性体の形態で存在し得る。ラセミ混合物を含む式(I)の化合物およびそれらの混合物のすべての立体異性体の形態は、本発明の一部となることが意図される。さらに、本発明は、すべての幾何異性体および位置異性体を包含する。例えば、式(I)の化合物が二重結合もしくは縮合環を含む場合、シス−およびトランス−の形態の両方ならびにその混合物が、本発明の範囲内に包含される。
【0083】
ジアステレオマーの混合物は、それらの物理的、化学的相違を基に、当業者に周知の方法によって(例えば、クロマトグラフィー、および/もしくは分別結晶によって)、それらの個々のジアステレオマーに分離され得る。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールもしくはMosherの酸塩化物のようなキラルの補助物)との反応により、そのエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換し、そのジアステレオマーを分離し、それぞれのジアステレオマーを対応する純粋なエナンチオマーに変換する(例えば、加水分解)ことによって、分離され得る。また、式(I)の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であり得、これらは本発明の一部とみなされる。エナンチオマーもまたキラルHPLCカラムの使用によって分離され得る。
【0084】
式(I)の化合物は、異なる互変異性体の形態で存在し得ることもまた可能であり、このような形態は全て本発明の範囲内である。また、例えば、本化合物の全てのケト−エノールおよびイミン−エナミンの形態は、本発明内に包含される。
【0085】
本化合物(この化合物の塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグ、ならびにこのプロドラッグの塩、溶媒和物、およびエステルを含む)の全ての立体異性体(例えば、幾何異性体、光学異性体など)(例えば、エナンチオマー形態(不斉炭素がなくても存在し得る)、回転異性体の形態、アトロプ異性体、およびジアステレオマーの形態を含む多種の置換基上の不斉炭素のために存在し得るもの)は、位置異性体(例えば、4−ピリジルおよび3−ピリジル)と同様に、本発明の範囲内で企図される。(例えば、式(I)の化合物が二重結合もしくは縮合環を含む場合、シス−およびトランス−の形態の両方ならびにその混合物が、本発明の範囲内に包含される。また、例えば、本化合物の全てのケト−エノールおよびイミン−エナミンの形態は、本発明内に包含される。)。
【0086】
本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば他の異性体を実質的に含まなくてもよいし、または例えばラセミ体として、または他の全てと、もしくは他の選択された異性体と混合されてもよい。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって定義されているようにS配置もしくはR配置を有し得る。「塩」、「溶媒和物」、「エステル」、「プロドラッグ」などの用語の使用は、本発明の化合物のエナンチオマー、立体異性体、回転異性体、互変異性体、位置異性体、ラセミ体もしくはプロドラッグの塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグに等しく適用されると意図される。
【0087】
本発明はまた、同位体的に標識された本発明の化合物を包含し、これは、本明細書中に詳述した化合物と同一であるが、一つ以上の原子が、通常天然で確かめられる原子質量もしくは質量数と異なる原子質量もしくは質量数を有する原子と置換される。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の同位体(例えば、それぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Cl)が挙げられる。
【0088】
特定の同位体的標識をした式(I)の化合物(例えば、Hおよび14Cで標識をしたもの)は、化合物および/もしくは基質の組織類別アッセイにおいて有用である。トリチウム(すなわち、H)および炭素−14(すなわち、14C)同位体は、それらの調製の容易さおよび検出のし易さのために、特に好ましい。さらに、重水素(すなわち、H)のようなより重い同位体を有する置換基は、より高い代謝の安定性(例えば、インビボの半減期を伸ばす、または必要投与量を下げる)から生じる特定の治療上の利点を生じ得て、ゆえに、いくつかの状況においては好ましくなり得る。同位体的標識をした式(I)の化合物は、一般的に、本明細書の後記のスキームおよび/もしくは実施例において開示される手順と類似した手順にしたがって、同位体的標識をしていない因子を適切な同位体的標識をした因子で置換することによって調製され得る。
【0089】
式Iの化合物の多形形態ならびに、式Iの化合物の塩、溶媒和物、エステルおよびプロドラッグの多形形態は、本発明に含まれることが意図される。
【0090】
本明細書中で使用する場合、実質的に純粋とは、このような純度を評価するために当業者が使用する標準的な分析の方法(例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS))によって決定される場合に、容易に検出可能な不純物を有しないように見えるくらい十分に均質であるか、もしくはさらなる精製が、物質の物理的特性および化学的特性(例えば、酵素活性および生物学的活性)を検出可能に変えないくらいに十分に純粋であることを意味する。実質的に化学的に純粋な化合物を生成するための化合物の精製方法は、当業者にとって公知である。しかしながら、実質的に化学的に純粋な化合物は、立体異性体の混合物であり得る。このような場合、さらなる精製によって、化合物の特定の活性が強化され得る。
【0091】
用語、化合物についての「精製された」、「精製された形態」もしくは「単離され、そして精製された形態」は、合成プロセスもしくは天然供給源またはこれらの組み合わせから単離された後のこの化合物の物理的状態をいう。したがって、用語、化合物についての「精製された」、「精製された形態」もしくは「単離され、そして精製された形態」は、精製プロセスまたは本明細書中に記載するもしくは当業者に周知のプロセスから得られた後の、本明細書中に記載するか、もしくは当業者に周知の標準的な分析技術によって特徴付けるに十分な純度を有するこの化合物の物理的状態をいう。
【0092】
本明細書中で使用する場合、「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルケニル」、「置換シクロアルキニル」、「置換アリール」、「置換ヘテロアリール」、「置換ヘテロシクリル」、「置換アルキレン」、「置換アルケニレン」、「置換アルキニレン」、「置換シクロアルキレン」、「置換シクロアルケニレン」、「置換シクロアルキニレン」、「置換アリーレン」、「置換ヘテロアリーレン」および「置換ヘテロシクリレン」はそれぞれ、1個以上の置換基(特定の実施形態においては、1個、2個、3個もしくは4個の置換基)で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、シクロアルキニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基およびヘテロシクリレン基を意味し、ここで、この置換基は、本明細書中で定義したとおりである(例えば、一実施形態においては、Pより選択される)。
【0093】
本明細書中で使用する場合、「アミド」は、2価の基である−C(O)NH−を意味する。「チオアミド」は、二価の基である−C(S)NH−を意味する。「オキシアミド」は、2価の基である−OC(O)NH−を意味する。「チアアミド」は、2価の基である−SC(O)NH−を意味する。「ジチアアミド」は、2価の基である−SC(S)NH−を意味する。「ウレイド」は、2価の基である−HNC(O)NH−を意味する。「チオウレイド」は、2価の基である−HNC(S)NH−を意味する。
【0094】
本明細書中で使用する場合、「ハロアルコキシ」は、Rがハロアルキル基であるRO−を意味する。
【0095】
本明細書中で使用する場合、「ヘテロシクリルオキシ」は、Rがヘテロシクリル基であるRO−を意味し、ヘテロアリールオキシは、Rがヘテロアリール基であるRO−を意味する。
【0096】
任意の所定の置換基の数が特定されない場合(例えば、ハロアルキル)、1個以上の置換基が存在し得る。例えば、「ハロアルキル」は、1個以上の同じかもしくは異なるハロゲンを有し得る。別の例としては、「C1−3アルコキシフェニル」は、1個、2個もしくは3個の炭素を有する同じかもしくは異なるアルコキシ基のうちの1つ以上を有し得る。
【0097】
本明細書中で使用される場合、特定の化合物もしくは薬学的組成物を投与することによる特定の障害の症状の改善は、この組成物の投与が原因であり得るもしくはこの組成物の投与に関連し得る任意の軽減(永続的であるかもしくは一時的であるか、恒久的であるかもしくは短期的であるか)を意味する。
【0098】
本明細書中で使用する場合、IC50は、最大応答(例えば、CDK−2キナーゼ活性の調節)の、このような応答を測定するアッセイにおける、50%阻害に達する特定のテスト化合物の量、濃度もしくは用量を意味する。
【0099】
本明細書中で使用する場合、EC50は、用量依存の応答を、特定の応答(この応答は、特定のテスト化合物によって誘発、刺激もしくは強化される)の最大発現の50%で引き出すような特定のテスト化合物の用量、濃度もしくは量を意味する。
【0100】
アミノ酸残基の場合、このような残基は、L−形態もしくはD−形態のいずれかであり得る。天然のアミノ酸残基の配置は一般的にLである、特定されていない場合、残基はL形態である。本明細書中で使用する場合、用語、「アミノ酸」は、α−アミノ酸を意味し、これは、ラセミ体であるか、あるいはD−配置もしくはL−配置のいずれかである。アミノ酸の名称の前に「d」の名称がつく(例えば、dAla、dSer、dValなど)のは、アミノ酸のD−異性体を意味する。アミノ酸の名称の前に「dl」の名称がつく(例えば、dlPip)のは、アミノ酸のL−異性体とD−異性体との混合物を意味する。本明細書中に提供される化合物のキラル中心は、インビボでエピマー化を受け得ると理解されるべきである。したがって、当業者は、インビボでエピマー化を受ける化合物に関しては、化合物をその(R)形態で投与することは、化合物をその(S)形態で投与することと同等であることを認識する。
【0101】
本明細書中で使用する場合、任意の保護基、アミノ酸および他の化合物についての略語は、そうでないと示されていない限り、それらの一般的使用、認識された略語もしくはIUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature((1972) Biochem.11:942−944を参照されたい)にしたがう。本明細書中で使用される略語のうちのいくつかは、以下に列挙される。
【0102】
(B.化合物)
一実施形態において、本明細書中で提供される組成物および方法において使用するための本明細書中で提供される化合物は、式Iを有しており、ここで、可変物は以下に記載するとおりである。このような実施形態の全ての組み合わせは、本開示の範囲内である。
【0103】
一実施形態において、R20は、
【0104】
【化24】

である。
【0105】
別の実施形態において、R22は、
【0106】
【化25】

である。
【0107】
別の実施形態において、R20は、
【0108】
【化26】

である。
【0109】
別の実施形態において、R23は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アミド、アリール、アルコキシオキソ、ハロ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シアノ、オキソもしくはアミノアルキルであって、ここで、このアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリール、アルコキシオキソ、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびアミノアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか、または2つのP隣接部分が一緒になって、それらが結合しているこのアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル環に縮合したアルキレンジオキシ部分を形成する。
【0110】
別の実施形態において、R23は、
【0111】
【化27】

である。
【0112】
別の実施形態において、R23は、
【0113】
【化28】

である。
【0114】
別の実施形態において、R24は、水素、ハロ、アルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルであり、ここで、このアルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか;または2つのR24基は、フェニル環上の1,2もしくは1,3配置において原子を置換するが、このR24は、一緒に結合して、−O−(CH−O−、−S−(CH−O−、−S−(CH−S、−CH=CH−CH=N−、−N=CH−CH=N−もしくは−S−CH=N−を形成することが示され、ここでyは、1もしくは2である。
【0115】
別の実施形態において、R20が、
【0116】
【化29】

になるように、R23およびR24が一緒になって環部分を形成し、ここで、この環部分は、それらが結合していると示されるフェニル環に縮合する。
【0117】
別の実施形態において、R25は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリもしくはアルコキシアリールであり、ここで、このアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、およびアルコキシアリールのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたQ置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Qは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロアルキル、スルホンアミド、4〜6員のラクトン環もしくはアルキレンジオキシであり、ここで、各Qは、非置換であるか、もしくはアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて独立して置換される。
【0118】
別の実施形態におて、R25は、
【0119】
【化30】

である。
【0120】
別の実施形態におて、R25は、
【0121】
【化31】

【0122】
【化32】

【0123】
【化33】

である。
【0124】
別の実施形態におて、R25は、
【0125】
【化34】

である。
【0126】
別の実施形態におて、R25は、
【0127】
【化35】

である。
【0128】
別の実施形態におて、R25は、
【0129】
【化36】

であり、ここで、R27は、H、ハロもしくは低級アルキルであり;そして
28は、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクリルもしくはアルキルヘテロシクリルである。
【0130】
別の実施形態において、R25およびR26は一緒に結合して、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し、そしてR21は、
【0131】
【化37】

である。
【0132】
別の実施形態において、R26は、水素、アルキルもしくは低級アルキルであるか、もしくはR25基およびR26基は一緒に結合して、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し、そしてnは1もしくは2である。
【0133】
別の実施形態において、本明細書中で提供されている組成物および方法において使用されるための化合物は、表1に示される式を有する。表1は、代表的な化合物を、それらの分子構造(炭素および二級窒素に結合した水素原子を省略して)およびCDK−2に対するそれらの阻害効果とともに列挙している。表1において、IC50下では、「A」は、≦1μMのIC50を表し;「B」は、>1μMであるが<40μMのIC50を表し;そして「C」は、≧40μMのIC50を表す。
【0134】
【表1−1】

【0135】
【表1−2】

【0136】
【表1−3】

【0137】
【表1−4】

【0138】
【表1−5】

【0139】
【表1−6】

【0140】
【表1−7】

【0141】
【表1−8】

【0142】
【表1−9】

【0143】
【表1−10】

【0144】
【表1−11】

【0145】
【表1−12】

【0146】
【表1−13】

【0147】
【表1−14】

【0148】
【表1−15】

【0149】
【表1−16】

【0150】
【表1−17】

【0151】
【表1−18】

【0152】
【表1−19】

【0153】
【表1−20】

【0154】
【表1−21】

【0155】
【表1−22】

【0156】
【表1−23】

【0157】
【表1−24】

【0158】
【表1−25】

【0159】
【表1−26】

【0160】
【表1−27】

【0161】
【表1−28】

【0162】
【表1−29】

【0163】
【表1−30】

【0164】
【表1−31】

【0165】
【表1−32】

【0166】
【表1−33】

【0167】
【表1−34】

【0168】
【表1−35】

【0169】
【表1−36】

【0170】
【表1−37】

【0171】
【表1−38】

【0172】
【表1−39】

【0173】
【表1−40】

【0174】
【表1−41】

【0175】
【表1−42】

【0176】
【表1−43】

【0177】
【表1−44】

【0178】
【表1−45】

【0179】
【表1−46】

【0180】
【表1−47】

【0181】
【表1−48】

【0182】
【表1−49】

【0183】
【表1−50】

【0184】
【表1−51】

【0185】
【表1−52】

(C.化合物の調製)
本明細書中に記載される化合物は、商業用の供給源より獲得され得るか、もしくは市販の出発物質および試薬を使用して以下に示すような従来の方法によって合成され得る。例えば、化合物は、以下に提供する化学的スキームを使用して作製され得る:
【0186】
【化38】

従来のカルボキシル保護基を使用して、チオフェンジカルボン酸1を選択的にモノ保護して、2を得る。その後、2中の保護されていないカルボキシル基を、活性剤とのカップリングによって必要に応じて活性化させ、続いて3とカップリングさせて、4を得る。3は、市販のものであり得るか、もしくは当業者に公知の従来の合成技術を使用して、所望するR25基およびR26基を作ることによって獲得され得る。4は、カルボキシルの脱保護化、続いてR20とのカップリングによって、5に変換され得る。
【0187】
アミノチオフェン6を、塩基の存在下、適切な求電子性のR26で処理し、続いてR25アシル誘導体とのカップリングによって、7を獲得し得る。7の保護されたカルボキシルは、脱保護化され、そして必要に応じて活性化され、そしてR20とカップリングされて、8を得る。
【0188】
本明細書中に記載される化合物は、反応混合物から分離され得、そしてカラムクロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーもしくは再結晶のような方法によってさらに精製され得る。当業者によって理解され得るように、本明細書中の式の化合物を合成する更なる方法は、当業者にとって明らかとなる。さらに、種々の合成工程が、代替的順序もしくは順番において実施され得て、所望する化合物を得る。本明細書中に記載する化合物を合成する際に有用である合成化学の変換および保護基の方法論(保護化および脱保護化)は、当該分野において公知であり、例えば、R. Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers (1989);T.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley and Sons (1991);L. FieserおよびM. Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons (1994);およびL. Paquette(編)、Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons (1995)ならびにこれらの続編に記載されるようなものが挙げられる。
【0189】
本発明の化合物は、薬学的特性を有しており;特に、式Iの化合物は、プロテインキナーゼのインヒビター(例えば、サイクリン依存性キナーゼ、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK/ERK)、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK3β)などのインヒビター)であり得る。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)としては、例えば、CDC2(CDK1)、CDK2、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7およびCDK8が挙げられる。新規な式Iの化合物は、増殖性疾患(例えば、癌、自己免疫疾患、ウイルス性疾患、真菌性疾患、神経学的/神経変性障害、関節炎、炎症、抗増殖性疾患(例えば、眼の網膜症)、神経疾患、脱毛疾患および心臓血管疾患)の治療において有用であることが期待される。これらの疾患および障害のうちの多くは、米国特許第6,413,974号に先に列挙されており、この開示は、本明細書中に援用される。
【0190】
さらに特定的に、式Iの化合物は、種々の癌(以下を含むが、これらに限定されない:癌(膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌を含む)、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頚癌、甲状腺癌、前立腺癌、および皮膚癌(扁平上皮癌を含む)を含む);リンパ系の造血性腫瘍(白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B−細胞リンパ腫、T−細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫(Burkett’s lymphoma)を含む));
骨髄直系の造血腫瘍(急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群ならびに前骨髄球白血病を含む);
間葉由来の腫瘍(線維肉腫および横紋筋肉腫を含む);
中枢神経系および末梢神経系の腫瘍(神経膠星状細胞腫、神経芽細胞腫、グリオームおよび神経鞘腫を含む);および
他の腫瘍(黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症(xenoderoma pigmentosum)、角化棘細胞腫(keratoctanthoma),甲状腺小胞癌およびカポージ肉腫を含む)の処置において有用であり得る。
【0191】
一般的に、細胞増殖の調節におけるCDKの重要な役割がゆえに、インヒビターは、可逆性の細胞増殖抑制剤として作用し得、これは、異常な細胞増殖の特徴をなすあらゆる疾患のプロセス(例えば、良性前立腺増殖症、家族性腺腫性ポリポーシス、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、糸球体腎炎、血管形成術もしくは脈管手術後の再狭窄、肥大性瘢痕形成、炎症性腸疾患、移植拒絶、内毒素性ショックおよび真菌性感染)の処置において有用であり得る。
【0192】
式Iの化合物はまた、CDK5がタウタンパク質のリン酸化に関与しているという最近の発見(J. Biochem、(1995)117、741−749)によって示唆されているように、アルツハイマー病の処置においても有用であり得る。
【0193】
式Iの化合物は、アポトーシスを誘発もしくは阻害し得る。アポトーシス応答は、種々のヒト疾患における異常である。式Iの化合物は、アポトーシスの調節因子として、癌(本明細書中上記のタイプの癌が挙げられるが、これらに限定されない)、ウイルス感染(ヘルペスウイルス(herpevirus)、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルス、シンドビスウイルスおよびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)の処置、HIVに感染した個々のAIDS発症、自己免疫疾患(全身性エリテマトーデス、自己免疫媒介性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患および自己免疫真性糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない)、神経変性障害(アルツハイマー病、AIDSに関連した痴呆、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、色素性網膜炎、脊髄性筋萎縮症および小脳変性が挙げられるが、これらに限定されない)、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、心筋梗塞、脳卒中および再灌流障害に関連した虚血性損傷、不整脈、アテローム性動脈硬化症、トキシン誘発性もしくはアルコールに関連した肝臓疾患、血液学的疾患(慢性貧血および再生不良性貧血が挙げられるが、これらに限定されない)、筋骨格系の変性疾患(骨粗しょう症および関節炎が挙げられるが、これらに限定されない)、アスピリン過敏性鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎臓疾患および癌の疼痛の予防において有用である。
【0194】
式Iの化合物は、CDKのインヒビターとして細胞のRNAおよびDNA合成のレベルを調節し得る。したがって、これらの因子は、ウイルス感染(HIV、ヒトパピローマウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン−バーウイルス、シンドビスウイルスおよびアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない)の処置において有用である。
【0195】
式Iの化合物はまた、癌の化学的予防においても有用であり得る。化学的予防は、侵潤性癌の発症を、突然変異の事象の開始をブロックするか、もしくは既に傷害を受けている前悪性細胞の進行をブロックすることのいずれかによって阻害することとして、または腫瘍再発を阻害することとして定義される。
【0196】
式Iの化合物はまた、腫瘍の新脈管形成および転移を阻害することにおいても有用であり得る。
【0197】
式Iの化合物はまた、他のプロテインキナーゼ(例えば、プロテインキナーゼC、her2、raf 1、MEK1、MAPキナーゼ、EGFレセプター、PDGFレセプター、IGFレセプター、PI3キナーゼ、wee1キナーゼ、Src、Abl)のインヒビターとしても作用し得、したがって、これは、他のプロテインキナーゼに関連する疾患の処置において有効であり得る。
【0198】
したがって、本発明の別の局面は、CDKに関連した疾患もしくは状態を有する哺乳動物(例えば、ヒト)を、治療上有効な量の少なくとも1つの式Iの化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物をこの哺乳動物に投与することによって処置する方法である。
【0199】
本発明の化合物はまた、1つ以上の抗癌治療(例えば、放射線治療)および/もしくは1つ以上の抗癌剤(細胞増殖抑制剤、細胞傷害剤(例えば、DNA作用剤(例えば、シスプラチンもしくはドキソルビシン)が挙げられるが、これらに限定されない);タキサン類(例えば、タキソテール、タキソール);トポイソメラーゼIIインヒビター(例えば、エトポシド);トポイソメラーゼIインヒビター(例えば、イリノテカン(もしくはCPT−11)、カンプトスター(camptostar)もしくはトポテカン);チューブリン作用剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルもしくはエポチロン);ホルモン剤(例えば、タモキシフェン);チミジル酸シンターゼインヒビター(例えば、5−フルオロウラシル);代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート(methoxtrexate));アルキル化剤(例えば、テモゾロミド(Schering−Plough Corporation、Kenilworth、New JerseyからのTEMODARTM)、シクロホスファミド);ファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター(例えば、SARASARTM(4−[2−[4−[(11R)−3,10−ジブロモ−8−クロロ−6,11−ジヒドロ−5H−ベンゾ[5,6]シクロヘプタ[1,2−b]ピリジン−11−イル−]−1−ピペリジニル]−2−オキソエチル]−1−ピペリジンカルボキシアミドもしくはSchering−Plough Corporation、Kenilworth、New JerseyからのSCH 66336)、ティピファニブ(tipifanib)(Zarnestra(登録商標)もしくはJanssen PharmaceuticalsからのR115777)、L778,123(Merck & Company、Whitehouse Station、New Jerseyからのファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター)、BMS 214662 (Bristol−Myers Squibb Pharmaceuticals、Princeton、New Jerseyからのファルネシルタンパク質トランスフェラーゼインヒビター);シグナル伝達インヒビター(例えば、イレッサ(Astra Zeneca Pharmaceuticals、Englandより)、タルセバ(EGFRキナーゼインヒビター)、EGFRに対する抗体(例えば、C225)、GLEEVECTM(Novartis Pharmaceuticals、East Hanover、New JerseyからのC−ablキナーゼインヒビター);インターフェロン(例えば、イントロン(Schering− Plough Corporationより)、Peg−イントロン(Schering− Plough Corporationより);ホルモン療法の組み合わせ;アロマターゼの組み合わせ;ara−C、アドリアマイシン、シトキサン(cytoxan)およびゲムシタビンからなる群より選択される)と組み合わせても有用であり得る。
【0200】
他の抗癌剤(抗腫瘍剤としても公知)としては、ウラシルマスタード、クロルメチン(Chlormethine)、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン(Streptozocin)、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン、ロイコビリン(leucovirin)、オキサリプラチン(Sanofi−Synthelabo Pharmaeuticals、FranceからのELOXATINTM)、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン(Mithramycin)、デオキシコフォルマイシン(Deoxycoformycin)、マイトマイシン−C(Mitomycin−C)、L−アスパラギナーゼ、テニポシド(Teniposide)、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン(Amsacrine)、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン(Mitoxantrone)、レバミゾール、ナベルベン(Navelbene)、アナストラゾール(Anastrazole)、レトラゾール(Letrazole)、カペシタビン、レロキサフィン(Reloxafine)、ドロロキサフィン(Droloxafine)もしくはヘキサメチルメラミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0201】
組み合わせの療法を、このような投与の必要な患者に投与する場合、組み合わせた治療剤もしくはこの治療剤を含む薬学的組成物(単数もしくは複数)は、任意の順序(例えば、逐次的に、即時的に、一緒に、同時になど)で投与され得る。このような組み合わせの療法における種々の活性物の量は、異なる量(異なる投薬量)でもよいし、同じ量(同じ投薬量)でもよい。したがって、非限定的な例示的目的では、式Iの化合物およびさらなる治療剤は、固定量(投薬量)で、単一の投薬単位(例えば、カプセル、錠剤など)内に存在し得る。経口投与用の、2つの異なる活性化合物の固定量を含むこのような単一の投薬単位の市販例は、VYTORIN(登録商標)(Merck Schering−Plough Pharmaceuticals、Kenilworth、New Jerseyより入手可能)である。
【0202】
固定用量として処方された場合、このような組み合わせの製品は、本明細書中に記載されている投薬範囲の本発明の化合物と、本明細書中に記載されている投薬範囲の他の薬学的活性剤もしくは治療剤とを使用する。例えば、CDC2インヒビターであるオロムチン(olomucine)は、アポトーシスを誘発する際に、公知の細胞傷害剤と相乗作用することが見出されている(J. Cell Sci、(1995) 108、2897)。式Iの化合物はまた、組み合わせの処方が不適切な場合には、公知の抗癌剤もしくは細胞傷害剤と逐次的にも投与され得る。本発明は、投与の順番に限定されず;式Iの化合物は、この公知の抗癌剤もしくは細胞傷害剤の投与の前もしくは後のいずれかにおいて投与され得る。例えば、サイクリン依存性キナーゼインヒビターであるフラボピリドールの細胞傷害活性は、抗癌剤との投与の順番によって影響を受ける。Cancer Research、(1997) 57、3375。このような技術は、当業者および担当医の技術の範囲内にある。
【0203】
したがって、ある局面において、本発明は、ある量の少なくとも1つの式Iの化合物またはその薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物、およびある量の1つ以上の抗癌治療剤および上に列挙した抗癌剤を含む組み合わせを包含しており、ここで、この化合物/治療剤の量は、所望する治療効果をもたらす。
【0204】
本発明の化合物の薬学的特性は、多くの薬学的アッセイによって確認され得る。後に記載される例示される薬学的アッセイは、本発明の化合物およびその塩とともに実施された。
【0205】
本発明はまた、少なくとも1つの式Iの化合物またはその化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは溶媒和物と、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアとを含む薬学的組成物にも取り組んでいる。
【0206】
(D.薬学的組成物の処方)
本明細書中に提供される薬学的組成物は、治療上有効な量の1つ以上の本明細書中に提供される化合物を薬学的に受容可能なキャリア内に含み、この化合物は、CDK−2に関連した疾患もしくは障害の症状のうちの1つ以上の予防、処置もしくは改善において有用である。CDK−2に関連した疾患もしくは障害としては、炎症性疾患、神経変性疾患、癌および糖尿病が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に提供される化合物の投与に適した薬学的キャリアとしては、投与の特定の方法に適するような当業者にとって公知な任意のキャリアが挙げられる。
【0207】
さらに、この化合物は、組成物中に単独の薬学的活性成分として処方されてもよいし、他の活性成分と合せられてもよい。
【0208】
組成物は、1つ以上の本明細書中に提供される化合物を含む。この化合物は、一実施形態においては、適切な薬学的調製物(例えば、経口投与用の、溶液、懸濁液、錠剤、分散可能な錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性錠もしくはエリキシル剤、または非経口投与用の、無菌溶液もしくは懸濁液、ならびに経皮パッチの調製物および乾性散剤の吸入器)に処方される。一実施形態において、上記の化合物は、当該分野において周知な技術および手順を使用して薬学的組成物に処方される(例えば、Ansel Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第4版 1985、126を参照されたい)。
【0209】
組成物において、有効な濃度の1つ以上の化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体が、適切な薬学的なキャリアと混合される。この化合物は、処方の前に、上記のように対応する塩、エステル、エノールエーテルもしくはエステル、アセテート、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物もしくはプロドラッグとして誘導され得る。この組成物中の化合物の濃度は、投与の際に、CDK−2活性に関連したまたはCDK−2活性に結びついた疾患もしくは障害の症状のうちの1つ以上を処置、予防もしくは改善する量の送達に有効である。
【0210】
一実施形態において、組成物は、単一投薬の投与用に処方される。組成物を処方するために、化合物の重量分割したもの(weight fraction)は、処置される状態が軽減、予防もしくは1つ以上の症状が改善されるくらいに有効な濃度で選択されたキャリア中に溶解、懸濁、分散、もしくはそうでなければ混合される。
【0211】
活性化合物は、薬学的に受容可能なキャリア内に、望ましくない副作用を処置される患者に与えずに治療上有用な効果を出すに十分な量で含まれる。治療上有効な濃度は、本明細書中に記載されるインビトロおよびインビボのシステムを使用して化合物をテストすることによって経験的に決定され得、その後、ヒトへの投与に関してその決定より推定され得る。
【0212】
薬学的組成物中の活性化合物の濃度は、この活性化合物の吸収、不活性化および排出の速度、この化合物の物理化学的特性、投薬スケジュール、および投与される量、ならびに当業者にとって公知の他の要因に依存する。例えば、送達される量は、本明細書に述べるように、CDK−2活性に関連したまたはCDK−2活性に結びついた疾患もしくは障害の症状のうちの1つ以上を改善するに十分である。
【0213】
一実施形態において、治療上有効な投薬は、約0.1ng/ml〜約50〜100μg/mlの活性成分の血漿濃度を生じるべきである。別の実施形態において、薬学的組成物は、1日につき、体重1kgあたり約0.001mg〜約2000mgの化合物の投薬を提供するべきである。薬学的投薬単位の形態は、約0.01mg、0.1mgもしくは1mg〜約500mg、1000mgもしくは2000mgの活性成分を提供するように調製され、一実施形態においては、投薬単位の1形態につき約10mg〜約500mgの活性成分、もしくは必須成分の組み合わせを提供するように調製される。
【0214】
活性成分は、1回で投与されてもよいし、いくつかのより小さな用量に細分され、時間の間隔をおいて投与されてもよい。正確な投薬量および処置の持続期間は、処置される疾患の関数であることは理解されており、これらは、公知のテストプロトコルを使用して経験的に決定され得るか、もしくはインビボもしくはインビトロのテストデータからの推定によって決定され得る。濃度および投薬量の値もまた緩和される状態の重症度によって変わり得ることは注意されるべきである。任意の個々の被験体に関して、特定の投薬レジメンは、個々の必要性および、この組成物の投与の投与者もしくは管理者の専門的判断にしたがって時間経過とともに調節されるべきであるということ、ならびに本明細書中に述べる濃度の範囲は単なる例示的なものであって、特許請求される組成物の範囲もしくは実践を限定するものとは意図されないことはさらに理解されるべきである。
【0215】
この化合物が不十分な溶解度を示す場合、化合物を可溶化させる方法が使用され得る。このような方法は、当業者にとって公知であり、共溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO))の使用、界面活性剤(例えば、TWEEN(登録商標))の使用もしくは水性炭酸水素ナトリウムへの溶解が挙げられるが、これらに限定されない。有効な薬学的組成物を処方するのに、化合物の誘導体(例えば、化合物のプロドラッグ)もまた使用され得る。
【0216】
この化合物を混合もしくは付加した際に、生じた混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得る。生じた混合物の形態は、多くの要因(意図される投与の方法および化合物の選択されたキャリアもしくはビヒクル中への溶解度を含む)に依存する。有効な濃度は、処置される疾患、障害もしくは状態の症状を改善するに十分であり、これは経験的に決定され得る。
【0217】
薬学的組成物は、適切な量の化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体を含む単位投薬の形態(例えば、錠剤、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤、無菌の非経口溶液もしくは懸濁液および経口溶液もしくは懸濁液、ならびにオイル−水型エマルジョン)でヒトおよび動物への投与用に提供される。薬学的に治療的な活性化合物およびその誘導体は、一実施形態においては、単位投薬形態もしくは複数の投薬形態に処方され、そして投与される。単位投薬形態は、本明細書中で使用する場合、当該分野において公知なように、ヒトおよび動物の被験体も適しており、そして個々に梱包された物理的に分離した単位を意味する。各単位投薬は、所望する治療効果を出すに十分な前もって決定された量の治療上活性である化合物を、必要な薬学的キャリア、ビヒクルもしくは希釈剤と共同して含む。単位投薬形態の例としては、アンプルおよび注射器ならびに個々に梱包された錠剤もしくはカプセルが挙げられる。単位投薬形態は、分割してもしくはその複数で投与され得る。複数の投薬形態は、分けられた単位投薬形態で投与される、単一の容器内に梱包された複数の同一の単位投薬形態である。複数の投薬形態の例としては、錠剤もしくはカプセルのバイアル、瓶、またはパイントもしくはガロン瓶が挙げられる。したがって、複数の投薬形態は、パッケージ内で分けられていない複数の単位投薬である。
【0218】
液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、上記で定義した活性化合物と、必要に応じた薬学的なアジュバントをキャリア(例えば、水、食塩水、水性ブドウ糖、グリセロール、グリコール、エタノールなど)中に溶解、分散、もしくはそうでなければ混合させ、それによって溶液もしくは懸濁液を形成することによって調製され得る。所望するのであれば、投与される薬学的組成物はまた、少量の非毒性の補助物質(例えば、潤湿剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤など(例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、および他のこのような薬剤))を含み得る。
【0219】
このような投薬形態を調製するための実際の方法は、公知であるか、もしくは当業者にとって明らかとなる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、Easton、Pa.、第15版、1975を参照されたい)。
【0220】
非毒性のキャリアから構成される均等を保って、0.005%〜100%の範囲内で活性成分を含む投薬形態もしくは組成物が調製され得る。これらの組成物の調製の方法は、当業者にとって公知である。企図される組成物は、0.001%〜100%の活性成分を含み得、一実施形態では、0.1%〜95%、別の実施形態では、75%〜85%である。
【0221】
(1.経口投与用の組成物)
経口の薬学的投薬形態は、固体、ゲルもしくは液体のいずれかである。固体の投薬形態は、錠剤、カプセル、顆粒剤およびバルクの散剤である。経口錠剤のタイプとしては、圧縮された、咀嚼可能なロゼンジおよび錠剤であって、これは、腸溶性錠剤、糖衣錠剤もしくはフィルムコーティング錠剤であり得る。カプセルは、硬いかもしくは軟らかいゼラチンカプセルであり得る一方で、顆粒剤および散剤は、当業者にとって公知の他の成分と組み合わせた非発泡性もしくは発泡性の形態で提供され得る。
【0222】
(a.経口投与用の固体組成物)
特定の実施形態において、処方物は、固体の投薬形態であり、一実施形態においてはカプセルもしくは錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ剤などは、1つ以上の以下の成分もしくは同様の特性を有する化合物を含み得る:結合剤;潤滑剤;希釈剤;グリダント(glidant);崩壊剤;着色剤;甘味料;矯味矯臭剤;湿潤剤;催吐性コーティングおよびフィルムコーティング。結合剤の例としては、微結晶セルロース、トラガカントガム、グルコース溶液、アカシア粘滑薬、ゼラチン溶液、糖みつ、ポリビニルピロリジン、ポビドン、クロスポビドン(crospovidone)、スクロースおよびデンプンペーストが挙げられる。潤滑剤としては、タルク、デンプン、マグネシウムもしくはカルシウムのステアリン酸塩、セキショウシおよびステアリン酸が挙げられる。希釈剤としては例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトールおよび第二リン酸カルシウムが挙げられる。グリダントとしては、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられるが、これに限定されない。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム(crosscarmelose sodium)、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、コーンスターチ、ジャガイモのデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、かんてんおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。着色剤としては例えば、任意の認可され証明された水溶性のFD and C染料、それらの混合物、およびアルミナ水和物に懸濁された水に不溶のFD and C染料が挙げられる。甘味料としては、スクロース、ラクトース、マンニトールおよび人工甘味料(例えば、サッカリン、および多くのスプレー乾燥された香味料)が挙げられる。矯味矯臭剤としては、植物(例えば、果物)から抽出された天然香味料、および快適な感覚を生み出す化合物の合成ブレンド(例えば、ペパーミントおよびサリチル酸メチルであるが、これらに限定されない)が挙げられる。湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンモノオレエート、モノラウリン酸ジエチルグリコールおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。腸溶性コーティングとしては、脂肪酸、脂肪、ろう、シェラック、アンモニアシェラックおよび酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。フィルムコーティングとしては、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000および酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。
【0223】
この化合物、もしくはその薬学的に受容可能な誘導体は、その形態を胃の酸性環境から守る組成物中に提供され得る。例えば、この組成物は、その完全性を胃内で保持し、そして活性化合物を腸内で放出する腸溶性コーティング中に処方され得る。この組成物はまた、制酸性もしくは他のこのような成分と組み合わせて処方され得もする。
【0224】
投薬単位形態がカプセルである場合、それは、上記のタイプの物質に加えて、液体キャリア(例えば、脂肪油)を含み得る。さらに、投薬単位形態は、その投薬単位の物理的形態を改変する種々の他の物質(例えば、糖および他の腸溶剤のコーティング)を含み得る。この組成物はまた、エリキシル、懸濁液、シロップ、水、振りかけ、チューイングガムなどの成分としても投与され得る。シロップは、活性化合物に加えて、スクロースを甘味料として、そして特定の保存料、色素および着色剤ならびに香味料を含み得る。
【0225】
活性物質はまた、所望する作用を損なわない他の活性物質もしくは所望する作用を補助する物質(例えば、制酸剤、H2ブロッカーおよび利尿剤)と混合され得もする。この活性成分は、本明細書中に記載されるような化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体である。さらに高い濃度(約98重量%まで)の活性成分が含まれ得る。
【0226】
全ての実施形態において、錠剤およびカプセルの形態は、当業者にとって公知なように、活性成分の溶解を改変もしくは維持するようにコーティングされ得る。したがって、例えば、これらは、従来の腸消化性コーティング(例えば、サリチル酸フェニル、ろうおよび酢酸フタル酸セルロース)でコーティングされ得る。
【0227】
(b.経口投与用の液体組成物)
液体の経口投薬形態としては、水性溶液、エマルジョン、懸濁液、溶液、ならびに/もしくは非発泡性顆粒から再形成された懸濁液、および発泡性顆粒から再形成された発泡性調製物が挙げられる。水性溶液としては、例えば、エリキシルおよびシロップが挙げられる。エマルジョンは、水中油型もしくは油中水型のいずれかである。
【0228】
エリキシルは、透明で、甘みをつけられた水性アルコール調製物である。エリキシル中で使用される薬学的に受容可能なキャリアは、溶媒を含む。シロップは、糖(例えば、スクロース)の濃縮された水性溶液であって、保存薬を含み得る。エマルジョンは、二相系であって、ここで、1つの液体が小球の形態で別の液体中に分散されている。エマルジョン中で使用される薬学的に受容なキャリアは、非水性の液体、乳化剤および保存薬である。懸濁液は、薬学的に受容可能な懸濁剤および保存薬を使用する。液体の経口投薬形態に再形成される非発泡性顆粒中で使用される薬学的に受容可能な物質は、希釈剤、甘味料および潤湿剤を含む。液体の経口投薬形態に再形成される発泡性顆粒中で使用される薬学的に受容可能な物質は、有機酸および二酸化炭素のもとを含む。着色剤および矯味矯臭薬は、上記の投薬形態の全てにおいて使用される。
【0229】
溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコールおよびシロップが挙げられる。保存薬の例としては、グリセリン、メチルおよびプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウムならびにアルコールが挙げられる。エマルジョン中で利用される非水性の液体の例としては、鉱油および綿実油が挙げられる。乳化剤の例としては、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイトおよび界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、Veegumおよびアカシアが挙げられる。甘味料としては、スクロース、シロップ、グリセリンおよび人工甘味料(例えば、サッカリン)が挙げられる。湿潤剤としては、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンモノオレエート、モノラウリン酸ジエチレングリコールおよびポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。有機酸としては、クエン酸および酒石酸が挙げられる。二酸化炭素のもととしては、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸ナトリウムが挙げられる。着色剤としては、任意の認可され証明された水溶性のFD染料およびC染料、ならびにそれらの混合物が挙げられる。矯味矯臭剤としては、植物(例えば、果物)から抽出された天然香味料、および快適な味の感覚を生み出す化合物の合成ブレンドが挙げられる。
【0230】
固体の投薬形態としては、例えば、炭酸プロピレン、植物油もしくはトリグリセリド中の溶液もしくは懸濁液が、一実施形態においては、ゼラチンカプセル内に被包されている。液体の投薬形態としては、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液は、投与のために容易に測定される十分な量の薬学的に受容可能な液体キャリア(例えば、水)で希釈され得る。
【0231】
あるいは、液体もしくは半固体の経口処方物は、活性化合物もしくは塩を植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)および他のこのようなキャリア中に溶解もしくは分散させ、そしてこれらの溶液もしくは懸濁液を硬いもしくは軟らかいゼラチンのカプセル殻内に被包させることによって調製され得る。簡単に述べると、このような処方物としては、本明細書中に提供される化合物を含むもの、ジアルキル化されたモノ−もしくはポリ−アルキレングリコール(1,2−ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール−350−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−550−ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール−750−ジメチルエーテル(ここで、350、550および750は、ポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を意味する)が挙げられるが、これらに限定されない)、および1つ以上の抗酸化物質(例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸およびそのエステルならびにジチオカルバメート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0232】
他の処方物としては、薬学的に受容可能なアセタールを含む水性アルコール溶液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの処方物中で使用されるアルコールとしては、1つ以上のヒドロキシル基を有する任意の薬学的に受容可能な水混和性溶媒(プロピレングリコールおよびエタノールが挙げられるが、これらに限定されない)である。アセタールとしては、低級のアルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール(例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
(2.注入可能物、溶液およびエマルジョン)
一実施形態において注入(皮下、筋内もしくは静脈内のいずれか)によって特性つけられる非経口投与もまた本明細書中で企図される。注入可能なものは、従来の形態(液体溶液もしくは懸濁液のいずれかとして)、注入前に液体中の溶液もしくは懸濁液に適した固体形態に、またはエマルジョンとして調製され得る。この注入可能な溶液およびエマルジョンはまた、1つ以上の賦形剤を含む。適切な賦形剤は、例えば、水、食塩水、ブドウ糖、グリセロールもしくはエタノールである。さらに、所望するのであれば、投与される薬学的組成物もまた少量の非毒性の補助物質(例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、安定化剤、溶解強度剤、および他のこのような薬剤(例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミンおよびシクロデキストリン))を含み得る。
【0234】
一定のレベルの投薬が維持されるような遅延放出性もしくは徐放性系の植え込みもまた本明細書中に企図される。簡単に述べると、本明細書中に提供される化合物は、固体の内部マトリックス(例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑性もしくは非可塑性のポリ塩化ビニル、可塑性ナイロン、可塑性ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、シリコンゴム、ポリジメチルシロキサン、炭酸ケイ素コポリマー、親水性ポリマー(例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのハイドロゲル、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコールおよび、外ポリマー膜によって囲まれている架橋した部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルをともなう塩化ビニルコポリマー、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン)、イオノマーポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム エピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコールコポリマー、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、および体液中に不溶のエチレン/ビニルオキシエタノールコポリマー)中に分散される。この化合物は、放出速度の制御工程において外ポリマー膜をとおって拡散する。このような非経口組成物中に含まれる活性化合物の割合は、その特異的特性ならびにこの化合物の活性および被験体の必要性に高く依存する。
【0235】
この組成物の非経口投与としては、静脈内投与、皮下投与および筋内投与が挙げられる。非経口投与用の調製物としては、注入にすぐに使用できる無菌溶液、使用直前に溶液とすぐに混合できる無菌乾燥の可溶性生成物(例えば、凍結乾燥された散剤)(例えば、皮下注射用錠剤)、注入にすぐに使用できる無菌懸濁液、使用の直前にビヒクルとすぐに混合できる無菌乾燥の不溶性生成物、および無菌エマルジョンが挙げられる。この溶液は、水性もしくは非水性のいずれかであり得る。
【0236】
静脈投与される場合、適切なキャリアとしては、生理食塩水もしくはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、ならびに増粘剤および可溶化剤を含む溶液(例えば、グルコース、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールならびにこれらの混合物)が挙げられる。
【0237】
非経口処方物中で使用される薬学的に受容可能なキャリアとしては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所麻酔、懸濁剤および分散剤、乳化剤、分離剤およびキレート剤、ならびに他の薬学的に受容可能な物質が挙げられる。
【0238】
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注入、リンガー液注入、等張性ブドウ糖注入、無菌水注入、ブドウ糖および乳酸加リンガーの注入が挙げられる。非水性の非経口ビヒクルとしては、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油および落花生油が挙げられる。静菌性もしくは静真菌性の濃度の抗菌剤(フェノールもしくはクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルおよびプロピルp−ヒドロキシ安息香酸エステル、チメロサール、塩化ベンザルコニウムならびに塩化ベンゼトニウム)が、複数用量の容器中に梱包された非経口調製物に加えられなければならない。等張剤としては、塩化ナトリウムおよびブドウ糖が挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩およびクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局所麻酔としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤および分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの分離剤およびキレート剤としては、EDTAが挙げられる。薬学的なキャリアとしてはまた、水混和性ビヒクルとしては、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコール;、そしてpH調節剤としては、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸もしくは乳酸が挙げられる。
【0239】
薬学的な活性化合物の濃度は、注入が、所望する薬学的効果を生じるような有効な量を提供するように調節される。正確な用量は、当該分野において公知なように、患者もしくは動物の年齢、重量および状態に依存する。
【0240】
単位用量の非経口調製物は、アンプル、バイアルもしくは針を有する注射器内に梱包される。非経口投与用の全ての調製物は、当該分野において公知でありかつ行なわれているように、無菌であるべきである。
【0241】
実例的に、活性化合物を含む無菌の水性溶液の静脈内もしくは動脈内注入は、投与の効果的方法である。別の実施形態は、所望する薬学的効果を生じるために必要に応じて注入される活性物質を含む無菌の水性もしくは油状の溶液または懸濁液である。
【0242】
注入可能物は、局所投与もしくは全身投与用に設計される。一実施形態において、治療上有効な投薬は、処置される組織に対して、少なくとも約0.1% w/w〜約90% w/wまでもしくはそれ以上(特定の実施形態においては、1% w/wより多い)の濃度の活性化合物を含むように処方される。
【0243】
この化合物は、微粒化された形態もしくは他の適切な形態に懸濁され得るか、またはより可溶な活性生成物を生成するかもしくはプロドラッグを生成するために誘導され得る。生じた混合物の形態は、多くの要素(意図される投与の方法、および選択されたキャリアもしくはビヒクル中でのその化合物の溶解度を含む)に依存する。有効な濃度は、この状態の症状を改善するに十分であり、これは経験的に決定され得る。
【0244】
(3.凍結乾燥された散剤)
本明細書における関心はまた、凍結乾燥された散剤であり、これは、溶液、エマルジョンおよび他の混合物として投与用に再構築され得る。これらはまた、固体もしくはゲルとしても再構築もしくは処方され得もする。
【0245】
無菌の凍結乾燥された散剤は、本明細書中に提供される化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体を、適切な溶媒に溶解させることによって調製される。この溶媒は、安定性を向上させる賦形剤、またはこの散剤の他の薬学的組成物、もしくはこの散剤から調製された再構築された溶液を含み得る。本明細書中で使用される賦形剤としては、ブドウ糖、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロースもしくは他の適切な薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。この溶媒はまた、緩衝剤(例えば、クエン酸塩、ナトリウムもしくはカリウムのリン酸塩または当業者に公知の他のこのような緩衝剤(一実施形態においては、だいたい中性pHである))を含み得る。凍結乾燥後に、この溶液の無菌ろ過を、当業者に公知である標準的な条件下で行ない、所望する処方物を得る。一実施形態において、生じた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに配分される。各バイアルは、この化合物の単一投与量もしくは複数の投与量を含む。凍結乾燥された散剤は、適切な条件(例えば、約4℃〜室温)下で貯蔵され得る。
【0246】
この凍結乾燥された散剤の、注入用の水との再構築によって、非経口投与における使用のための処方物を得る。再構築のために、凍結乾燥された散剤は、無菌水もしくは他の適切なキャリアに加えられる。正確な量は、選択される化合物に依存する。このような量は、経験的に決定され得る。
【0247】
(4.表面投与)
表面用混合物は、局所投与および全身投与に関して記載されたように調製される。生じた混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得、それらは、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ、パスタ、泡沫、エーロゾル、洗浄剤、スプレー、坐剤、包帯、皮膚パッチ、もしくは表面投与に適した任意の他の処方物として処方される。
【0248】
この化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体は、表面投与のために、エーロゾルとして(例えば、吸入によって)処方され得る。気道への投与のためのこれらの処方物は、ネブライザ用のエーロゾルもしくは溶液の形態であり得るか、またはガス注入用のミクロファイン(microfine)散剤として、単独もしくは不活性キャリア(例えば、ラクトース)との組み合わせられ得る。このような場合、処方物の粒子は、一実施形態においては、50ミクロンより小さい直径を有し、一実施形態においては、10ミクロンよりも小さい直径を有する。
【0249】
この化合物は、局所塗付もしくは表面塗付(例えば、皮膚および粘膜(例えば、眼内)への表面塗布)用に、ゲル、クリームおよびローションの形態に、および眼への塗付または槽内塗付もしくは脊椎内塗付用に処方され得る。表面投与は、経皮送達に関しておよび眼もしくは粘膜への投与に関して、または吸入治療に関しても企図される。活性化合物の鼻の溶液(1つ、もしくは他の薬学的に受容可能な賦形剤と組み合わせて)もまた投与され得る。
【0250】
これらの溶液、特に眼への使用が意図されるものは、0.01%〜10%等張液、pH約5〜7で、適切な塩とともに処方され得る。
【0251】
(5.他の投与経路用の組成物)
他の投与経路(例えば、経皮パッチ(イオン導入および電気泳動デバイスを含む)、および直腸投与)もまた本明細書中に企図される。
【0252】
経皮パッチ(イオン導入および電気泳動デバイスを含む)は、当業者にとって周知である。
【0253】
例えば、直腸投与用の薬学的投薬形態は、全身作用のための直腸坐剤、カプセルおよび錠剤である。本明細書中で使用される直腸坐剤は、直腸への挿入のための固形物を意味し、これは、体温で融解もしくは軟化して、1つ以上の薬学的もしくは治療的な活性成分を放出する。直腸坐剤中で使用される薬学的に受容可能な物質は、基剤もしくはビヒクルおよび融点を上げるための薬剤である。基剤の例としては、カカオバター(カカオ脂)、グリセリン−ゼラチン、カーボワックス(ポリオキシエチレングリコール)および脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。種々の基剤の組み合わせが使用され得る。坐剤の融点を上げるための薬剤としては、鯨ろうおよびろうが挙げられる。直腸坐剤は、圧縮方法によって、もしくは成形することによってのいずれかで調製され得る。直腸坐剤の重量は、一実施形態においては、約2〜3gmである。
【0254】
直腸投与用の錠剤もしくはカプセルは、同じ薬学的に受容可能な物質を使用して、そして経口投与用の処方物に関する方法と同様の方法によって製造される。
【0255】
(6.標的型処方物)
本明細書中に提供される化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体はまた、処置される被験体の特定の組織、レセプターもしくは体の他の領域を標的にされるように処方され得る。多くのこのような標的化方法は、当業者にとって周知である。全てのこのような標的化方法は、即席の組成物における使用に関して本明細書中で企図される。
【0256】
一実施形態において、リポソーム化懸濁液(組織標的型リポソーム(例えば、腫瘍標的型リポソーム)を含む)もまた薬学的に受容可能なキャリアとして適している。これらは、当業者にとって公知である方法にしたがって調製され得る。簡単に述べると、リポソーム(例えば、多重層胞(MLV))は、卵のホスファチジルコリンおよび脳のホスファチジルセリン(7:3モル比率)をフラスコ内部に乾燥させることによって形成され得る。二価カチオンを有しないリン酸緩衝食塩水(PBS)中の、本明細書中に提供される化合物の溶液が加えられ、そして脂質薄膜が分散するまでフラスコを振とうする。生じた小胞を洗浄して皮膜されていない化合物を除去し、遠心法によってペレット化し、その後、PBSに再懸濁させる。
【0257】
(7.製造物品)
この化合物もしくは薬学的に受容可能な誘導体は、梱包物質、本明細書中に提供される化合物もしくはその薬学的に受容可能な誘導体を含む製造物品(これは、CDK−2の活性を調節するのにおいて、またはCDK−2媒介性疾患もしくは障害、またはCDK−2活性が関係している疾患もしくは障害の1つ以上の症状の処置、予防もしくは改善において有効である)として梱包物質内に梱包され得、そして、この化合物もしくは組成物またはその薬学的に受容可能な誘導体が、CDK−2の活性を調節するため、またはCDK−2媒介性疾患もしくは障害、またはCDK−2活性が関係している疾患もしくは障害の1つ以上の症状の処置、予防もしくは改善のために使用されていることを示すラベルが提供される。
【0258】
本明細書中に提供される製造物品は、梱包物質を含む。薬学的生成物を梱包する際に使用するための梱包物質は、当業者にとって周知である。薬学的な梱包物質の例としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、ならびに選択された処方物および意図される投与方法および処置に適した任意の梱包物質が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に提供される化合物および組成物の様々な処方物が、CDK−2が症状もしくは原因に関する媒介物質もしくは一因として関係している任意の疾患もしくは障害に対する種々の処置と同様に企図される。
【実施例】
【0259】
(実施例1:スクリーニングの方法)
蛍光偏光アッセイ
CDK−2およびCDK−2/サイクリンAに結合するリードインヒビターの親和性は、蛍光偏光置換アッセイを使用してKi値を測定することによって決定された。化合物BMS−250595の脱アセチル形態と、Alexa Fluor 647とを反応させて、化合物(BMS−Alexa Fluor647)を生成し、これは、両方のたんぱく質に結合し、そして蛍光偏光置換のシグナルを提供した。結合アッセイを、384ウェルのCostar NBSコーティングプレートで実施した。80mlの総容量は、CDK−2もしくはCDK−2/サイクリンAを、それぞれ2.2mMおよび0.22mMの濃度で含んだ。BMS−Alexa Fluor647の濃度は、50nMであった。化合物の連続希釈したものを12個のウェルに加えた。最終緩衝剤濃度は、10mM Hepes、pH7.5、150mM NaClおよび1mM DTTであった。サンプルを室温で15分間インキュベートし、その後、それぞれ580nMおよび680nMの励起波長および放出波長を使用してAnalyst HT機器で読み取った。置換曲線を非線形回帰のあてはめによって分析して、Zhangら、2004(Zhang R、Mayhood T、Lipari P、Wang Y、Durkin D、Syto R、Gesell J、McNemar CおよびWindsor W、Analytical Biochemistry 331(2004)138−146)による式およびExcelの曲線のあてはめるツールを使用してKi値を決定した。
【0260】
(実施例2:確認方法)
等温滴定熱量測定
等温滴定熱量測定(ITC)を使用して、いくつかのリード化合物に関する結合親和性の完全な熱力学特性を得た。ヒトCDK−2を、10mM Hepes、150mM NaCl、10%グリセロール、1mM DTT、pH7.5中で一晩、緩衝剤を2回変えて透析した。たんぱく質およびリガンドサンプルの両方を、2ml容量に調製した。リガンド溶液を調製するために、20mlの10mMの化合物のストック(DMSO中)を、2mlの緩衝剤に加えた。リガンドサンプルに加えたDMSO濃度を調和するために、20mlのDMSOも2mlのたんぱく質サンプルに加えた。MicroCal MCS ITC(Northampton、MA)および含まれているソフトウェアを使用して、滴定および分析を実施した。20℃および350rpmの速度での混合でITC測定を実施した。注入容量は、15〜18mlで変化し、そして各滴定に関して360秒を記録した。はっきりしたベースラインが観察されない場合、ブランク滴定を実施して、未処理のデータから控除した。
【0261】
(実施例3:親和性の比較方法)
温度依存性円二色性
リードインヒビターの親和性の順番を位置づけることができることは、薬剤の発見においてしばしば重要である。このような方法の一つは、温度依存性円二色性(TdCD)である。約10〜20mMのインヒビター濃度を使用した場合、ナノモル〜マイクロモルのリードの親和性の順序を位置づけ、そして推定し得る。TdCDは、たんぱく質サンプルの温度を上昇させることによってたんぱく質のほぐれを誘発し、そして、遠紫外線の楕円率の変化を測定する(これは、たんぱく質の二次構造の変化を検出する)ことによってほぐれた種類の増加を検出する方法である。リガンド結合していない(unliganded)たんぱく質のほぐれる中間温度をTmという。たんぱく質サンプルへのインヒビターの付加は、たんぱく質に結合した化合物が天然状態を安定化させるので、Tmを上昇させる。化合物の親和性が高くなればなるほど、より高い親和性の化合物を解離させるために増大したエネルギーが必要となるので、見かけ上のTmは高くなる。Tm値からのリガンドの親和性を推定することに関する理論上の説明は、Brandts and Lin (1990)(Brandts, J. F. and Lin, L−N、 Biochemistry 1990 29、6927−6940)によって詳しく記載されている。
3つの対照化合物(BMS−250595、Purvalonal B、AG−12275)を、ITCによって分析し、その後、TdCD法によって特性付けた。ITCから得たKd値を使用して、本研究者らは、各化合物に関して、Tm対Log([Lfree]/Kd)に関する標準曲線を作成することができたが、この[Lfree]は、Tm温度における非結合リガンドの濃度である。TdCDによってTmを測定した後、この標準曲線を使用して化合物のKdを決定する。TdCD法の型どおりの使用によって、たんぱく質に結合するリード化合物の親和性を推定するための比較的速い分析ができる。
【0262】
6セルのペルチェ(peltier)温度制御されたJasco810分光偏光計を使用して、温度依存性のたんぱく質のほぐれのプロフィールを測定した。0.1cmのパッチの長さのセルを使用し、そしてたんぱく質の濃度は、0.2mg/ml(6mM)であった。緩衝剤は、10mM Hepes、150mM NaCl、10%グリセロール、1mM DTT、pH7.5であった。TdCD測定において、波長を230nmに調節した。1℃/分の温度速度を使用し、そして各温度における1サンプルあたり4秒の統合を記録した(0.5℃毎)。4nmのバンド幅を使用して、ノイズに対するシグナルを改善した。
【0263】
(実施例4:合成)
全体的な実験注意
NMRスペクトルは、Mercuryplus400MHz NMR分光計(Varian)を必要とし、δppmで表した。Agilent 1100 Series LC/MSD(四重極、API−ES(大気圧インターフェースエレクトロスプレー(Atmospheric Pressure Interface Electrospray)))を使用して、キャピラリーの電圧を3500Vに設定し、そしてポジティブモードで実施して、LC−MSデータを得た。
【0264】
C18逆相カラムを使用した逆相クロマトグラフィー(20mL/分の流速で、水中0.1%トリフルオロ酢酸〜95:5 アセトニトリル:水の勾配で)をとおした精製を完了させた。UV(Gilson、254nm)もしくは質量スペクトル(Agilent 1100 Series LC/MSD model SL)のシグナルを使用して、サンプルを収集した。
【0265】
KP−SIL 32−63umのカラム、フラッシュカートリッジ 12+Mもしくは25+Mを有する60Aを使用したQuad UV System(P/N 07052)を使用して、Biotage機器で通常相のシリカゲルクロマトグラフィーをかけた。
【0266】
(一般的に使用される略語)
ACN アセトニトリル
AcOH 酢酸
(Boc)O ジ−tert−ブチル−ジカルボネート
CuTC チオフェン−2−カルボン酸銅(I)
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCU ジシクロヘキシル尿素
DCM ジクロロメタン
DIAD ジイソプロピルアゾジカルボキシレート
DIEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DME ジメトキシエタン
DMF ジメチルホルムアミド
DMFDMA N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
DMSO ジメチルスルホキシド
DPPF: 1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
EDCl(EDC) 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩
EtN トリエチルアミン
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
h 時間
HATU N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)ウロニウムヘキサフルオロリン酸塩
Hex ヘキサン
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1−Hydrozybenzotriazole)
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LCMS 液体クロマトグラフィー質量分析
LiBH 水素化ホウ素リチウム
LAH 水素化アルミニウムリチウム
mCPBA メタ−クロロ過安息香酸
MeOH メタノール
NaSMe ナトリウムメチルスルフィド
NMR 核磁気共鳴
Pd(OAc) 酢酸パラジウム
Pd(dba) トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
PdCl(dppf) DCMとの[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)複合体
Pd(PPhCl ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)
PFP ペンタフルオロフェノール
PMB p−メトキシベンジル
Pyr ピリジン
RT 室温
SiO シリカゲル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
TMS トリメチルシリル
Zn(CN) シアン化亜鉛
(実施例1)
【0267】
【化39】

パートA
3,4−ジフルオロニトロベンゼン(318mg、2.0mmol)のDMSO(4mL)中の溶液に、KHPO(418mg、2.4mmol)、続いて1,2,4−トリアゾール(166mg、2.4mmol)を加えた。生じた混合物を、90℃まで加熱し、そしてアルゴン下で18時間攪拌した。この反応物を、室温まで冷却し、そしてEtOAc(50mL)で希釈した。有機層をHOおよびブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、ろ過し、そして濃縮して、粗製の生成物を得た。残渣を、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/EtOAc=80:20)によって精製して、生成物2を白色固体(320mg、77%)として得た。
【0268】
【化40】

パートB
ニトロベンゼン2(320mg、1.54mmol)を、1atmで、THF(20mL)中10% Pd/C(15mg)の存在下で、室温で一晩水素添加した。この反応が完了した後、反応混合物をセライトをとおしてろ過して触媒を除去し、その後、減圧下で濃縮して、粗製の生成物3(270mg)を得た。LC−MS m/z 179.1(M+H)。
【0269】
パートC
DMF(10mL)中の一酸(monoacid)4(1.86g、10mmol)およびHOBt(2.7g、20mmol)の溶液に、EDC(2.0mg、10.5mmol)を加えた。この反応混合物を室温で10分間攪拌した後、4−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−フェニルアミン(2.7g、20mmol)を加えた。生じた混合物を室温で一晩攪拌し、そして、氷−水混合物(100mL)中に注いだ。その後、形成された沈殿物をろ過により収集し、そして飽和したNaHCO、HO、1N HClおよびHOで洗浄した。生じた固体を真空下で一晩乾燥させて、生成物5(2.7g、89%)を得た。
【0270】
【化41】

パートD
THF(40mL)およびMeOH(20mL)中のメチルエステル5(2.7g、8.85mmol)と1N LiOH(20mL)との混合物を、室温で3時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、水相を水(20mL)で希釈した。その後、1N HClを加えて、pHを約3に調節し、そして形成された沈殿物をろ過により収集した。冷水で洗浄した後、固体を減圧下で一晩乾燥させて、生成物6を白色固体(2.31g、90%)として得た。LC−MS m/z 292.1(M+H)。
【0271】
パートE
DMF(5mL)中の一酸6(29mg、0.1mmol)の溶液に、HOBt(27mg、0.2mmol)およびEDC(38mg、0.2mmol)を加えた。この反応混合物を室温で10分間攪拌した後、3(30mg、0.17mmol)を加えた。生じた混合物を室温で一晩攪拌し、そしてHO(20mL)で希釈した。形成された沈殿物をろ過によって収集し、そしてHOで洗浄した。粗製の生成物7を、HPLCによって精製した。LC−MS m/z 452.1(M+H)。
【0272】
(実施例2)
【0273】
【化42】

パートA
ドライDMF(2mL)中の1(60mg、0.2mmol)の溶液に、NaH(40mg、オイル中60%、1mmol)を注意深く加えた。生じた混合物を室温で10分間攪拌し、そしてCHI(280mg、2mmol)を加えた。生じた反応混合物を40℃まで加熱し、そして一晩攪拌した。HO(0.2mL)をこの混合物に加え、そしてこの反応物をさらに3時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、1N HCl(3mL)を残渣に加えた。形成された沈殿物をろ過により収集し、そしてHOで洗浄し、減圧下で一晩乾燥させた。生成物2(41mg、68%)を白色固体として得た。LC−MS m/z 306.1(M+H)。
【0274】
パートB
実施例1、パートEに記載する手順と同じ手順で、化合物3を合成した。粗製の生成物を分取用LCによって精製した。LC−MS m/z 448.1(M+H)。
【0275】
(実施例3)
【0276】
【化43】

パートA
95%EtOH(13.6mL)中の2−ニトロチオフェン(600mg、3.2mmol)とSnCl・2HO(4.86g、25.6mmol)との混合物に、濃HCl(13.6mL)を室温で一滴ずつ加えた(この反応温度を35℃より下に保つために十分な冷却を必要とした)。この添加の後、反応混合物を35℃で2時間攪拌した。EtOHを真空下で除去し、そして水層をヘキサン(50mL×2)で洗浄した。この水層のpHをpH約7に調節し、そしてEtOAc(50mL)で3回抽出した。抽出物を合せて、NaSOで乾燥させた。溶媒をエバポレートした後、生成物を白色固体(332mg、66%)として得た。
【0277】
【化44】

パートB
室温で、2−メチル−4−メトキシ安息香酸(166mg、1mmol)のDCM(5mL)中の溶液に、塩化オキサリル(0.15mL)、続いてDMF(1滴)を加えた。生じた混合物を室温で3時間攪拌し、そして溶媒を真空下でエバポレートした。塩化アセチルの残渣を有するフラスコに、DCM(15mL)、続いて2(100mg、0.64mmol)、ピリジン(0.2mL)および触媒量のDMAPを加えた。この混合物を40℃まで加熱し、そしてこの温度で一晩攪拌した。室温まで冷却した後、EtOAc(80mL)を加え、そして有機物を1N HCl、ブラインで洗浄し、そしてNaSOで乾燥させた。溶媒をエバポレートした後、粗製の生成物3を、次の工程で直接使用した。LC−MS m/z 306.1(M+H)。
【0278】
パートC
実施例1、パートDに記載の手順と同じ手順で、化合物4を合成した。LC−MS m/z 292.1(M+H)。
【0279】
パートD
実施例1、パートEに記載の手順と同じ手順で、化合物5を合成し、そして分取用LCによって精製した。LC−MS m/z 422.0(M+H)。
【0280】
(実施例4)
【0281】
【化45】

パートA
0℃で、DMF(5ml)中の1(157、0.5mmol)とHOBt(200mg、0.64mmol)との混合物に、EDC(181mg、0.95mmol)を加え、そして形成された反応混合物を0℃で10分間攪拌した。その後、(4−アミノ−3−メチル−フェニル)−メタノール(88mg、0.95mmol)を加え、そしてこの反応混合物をまず0℃で0.5時間、そして室温で一晩攪拌した。この反応混合物に水を加え、そして形成された沈殿物をろ過により収集し、そして風乾させた後、次の工程で直接使用した。LC−MS m/z 434.1(M+H)。
【0282】
パートB
0℃で、DMF(2mL)中の1(143mg、0.33mmol)とDIEA(115uL、0.66mmol)との混合物に、MsCl(26uL、0.33mmol)を加えた。生じた混合物を0℃で30分間攪拌し、そしてCsCO(326mg、1.0mmol)、続いてイミダゾール(68mg、1.0mmol)をこの反応物に加えた。この混合物を室温で一晩攪拌し、そしてEtOAc(30mL)で希釈し、そして有機相をHOおよびブラインで洗浄した。濃縮後、残渣をHPLCによって精製して、生成物2を白色固体として得た。LC−MS m/z 484.1(M+H)。
【0283】
(実施例5)
【0284】
【化46】

パートA
0℃で、DMF(5ml)中の1(157mg、0.5mmol)とHOBt(200mg、0.64mmol)との混合物に、EDC(181mg、0.95mmol)を加えた。形成された反応混合物を0℃で10分間攪拌した後、4−アミノ−3−メチルフェノール(117mg、0.95mmol)を加え、そしてこの反応混合物を、まず0℃で0.5時間攪拌し、その後、室温で一晩攪拌した。この反応混合物に、水を加え、そして形成された沈殿物をろ過により収集し、そして風乾させた後、次の工程で直接使用した。LC−MS m/z 420.1(M+H)。
【0285】
パートB
DMF(2ml)中に2(30mg、0.072mmol)、2−ブロモエタノール(14mg、0.107mmol)およびCsCO(34mg、0.107mmol)を含んだ混合物を80℃で一晩攪拌した。この反応混合物に水(15ml)を加え、そしてこの混合物を酢酸エチル(3×15ml)で抽出した。溶媒をエバポレートした後、残渣を分取用HPLCを使用して精製して、所望する生成物を得た。LC−MS m/z 464.1(M+H)。
【0286】
(実施例6)
【0287】
【化47】

パートA
0℃で、DMF(5ml)中の1とHOBt(200mg、0.64mmol)との混合物に、EDC(181mg、0.95mmol)を加え、そして形成された反応混合物を0℃で10分間攪拌した。その後、4−ブロモ−2−メチル−フェニルアミン(175mg、0.95mmol)を加え、そしてこの反応混合物をまず0℃で0.5時間攪拌し、その後、室温で一晩攪拌した。この反応混合物に水を加え、そして形成された沈殿物をろ過によって収集し、そして風乾した後、次の工程で直接使用した。LC−MS m/z 467.1(M+H)。
【0288】
パートB
ジオキサン(2mL)中の2(30mg、0.06mmol)、モルホリン(8mg、0.09mmol)、Pd(dba)(2mg)、ビフェニル−3−イル−ジ−tert−ブチル−ホスファン(2mg、0.006mmol)およびt−ブトキシドナトリウム(12mg、0.012mmol)を含んだ反応混合物を、Arで3回脱ガスさせ、その後、Ar下で90℃で一晩加熱した。室温まで冷却した後、この反応混合物をセライトをとおしてろ過し、そして濃縮した。その後、残渣を、分取用HPLCを使用して精製して、8mgの生成物を得た。LC−MS m/z 489.2(M+H)。
【0289】
(実施例7)
【0290】
【化48】

パートA
0℃で、DMF(5mL)中の1(80mg、0.5mmol)の溶液に、HOBt(135mg、1.0mmol)、続いてEDCl(191mg、1.0mmol)を加えた。0℃で0.5時間攪拌した後、4−[1,2,4]トリアゾール−1−イル−フェニルアミン(80mg、0.5mmol)を加えた。10分後に4−メトキシ−2−メチル−フェニルアミン(70mg、0.5mmol)を加えた。その後、この反応物を室温まで温め、そしてこの温度で一晩攪拌した。水を加え、そして形成された沈殿物をろ過によって収集し、これを分取用HPLCを使用して精製して、所望する生成物(30mg)を得た。LC−MS m/z 418.2(M+H)。
【0291】
本明細書中に引用されている全ての参考は、印刷形態、電子形態、コンピューター可読保存媒体もしくは他の形態であろうとなかろうと、その全体において参考として明確に援用される(要約、記事、雑誌、出版物、教科書、論文、インターネットのウェブサイト、データベース、ソフトウェアのパッケージ、特許および特許公開を含むが、これらに限定されない)。本発明の多くの実施形態が記載された。しかしながら、本発明の意図および範囲から逸脱せずに種々の改変がなされ得ることが理解される。これらの改変としては特に、炭素原子もしくは窒素原子、またはそうでなければ適切なものへの置換基の付加(本明細書によって予見されかつ記載されいているように;生じた分子は、本発明の意図および範囲内にある)が挙げられるが、これに限定されない。したがって、他の実施形態は、本発明の添付の特許請求の範囲および要旨の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物もしくはエステルであって、ここで、
Aは、OもしくはSであり;
20は、
【化2】

であり;
21は、−C(O)N(R2526)もしくは−N(R26)C(O)R25であり;
22は、水素、アルキル、オキソ、アミド、シアノ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシもしくはヘテロシクリルオキシであり;
23は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アミド、アリール、アルコキシオキソ、ハロ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シアノ、オキソもしくはアミノアルキルであって、ここで、該アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリール、アルコキシオキソ、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびアミノアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか、または2つのP隣接部分が一緒になって、それらが結合している該アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル環に縮合したアルキレンジオキシ部分を形成し;
24は、水素、ハロ、アルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルであり、ここで、該アルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか;または2つのR24基は、フェニル環上の1,2もしくは1,3配置において原子を置換するが、該R24は、一緒に結合して、−O−(CH−O−、−S−(CH−O−、−S−(CH−S、−CH=CH−CH=N−、−N=CH−CH=N−もしくは−S−CH=N−を形成することが示され、ここでyは、1もしくは2であるか;
あるいは、R23およびR24は一緒になってアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環を形成し、ここで、該アリール、ヘテロアリールもしくはヘテロシクリル環は、それらが結合していると示されているフェニル環に縮合され;
25は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリもしくはアルコキシアリールであり、ここで、該アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリル、およびアルコキシアリールのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたQ置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Qは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロアルキル、スルホンアミド、4〜6員のラクトン環もしくはアルキレンジオキシであり、ここで、各Qは、非置換であるか、もしくはアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて独立して置換され;
26は、水素、アルキルもしくは低級アルキルであるか;
あるいは、R25およびR26は、一緒に結合して、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し得;
nは、1もしくは2であり;そして
tは、1もしくは2である、化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物もしくはエステル。
【請求項2】
20が、
【化3】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
22が、
【化4】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
20が、
【化5】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
23が、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アミド、アリール、アルコキシオキソ、ハロ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シアノ、オキソ、もしくはアミノアルキルであり、ここで、該アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルアミノ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルヘテロシクリル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリール、アルコキシオキソ、ヘテロアリール、ヘテロシクリルおよびアミノアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか、または2つのP隣接部分が一緒になって、それらが結合している該アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル環に縮合したアルキレンジオキシ部分を形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
23が、
【化6】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
23が、
【化7】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
24が、水素、ハロ、アルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルであり、ここで、該アルキル、アルキレン、低級アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アルコキシ、アミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルチオ、トリハロアルキルのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたP置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Pは、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノもしくはアルキルチオであるか;もしくは2つのR24基は、フェニル環上の1,2もしくは1,3配置において原子を置換するが、該R24は、一緒に結合して、−O−(CH−O−、−S−(CH−O−、−S−(CH−S、−CH=CH−CH=N−、−N=CH−CH=N−もしくは−S−CH=N−を形成することが示され、ここでyは、1もしくは2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
20が、
【化8】

になるように、R23およびR24が一緒になって環部分を形成し、ここで、該環部分は、それらが結合していると示されるフェニル環に縮合する、請求項1〜8に記載の化合物。
【請求項10】
25が、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリルもしくはアルコキシアリールであって、ここで、該アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アルキルヘテロシクリルおよびアルコキシアリールのうちのそれぞれは、非置換であるか、もしくは1〜3個の独立して選択されたQ置換基によって必要に応じて独立して置換されるかのいずれかであり、ここで、Qは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、トリフルオロアルキル、スルホンアミド、4〜6員のラクトン環もしくはアルキレンジオキシであり、ここで、各Qは、非置換であるか、もしくはアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ハロ、ヒドロキシ、オキソ、アミノ、ヘテロシクリルアミノ、アミノアルキル、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群より独立して選択される1つ以上の置換基で必要に応じて独立して置換される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
25が、
【化9】

である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
25が、
【化10】

【化11】

である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
25が、
【化12】

である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
25が、
【化13】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
25が、
【化14】

であり、
ここで、R27が、H、ハロもしくは低級アルキルであり;そして
28が、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アルキルヘテロアリール、ヘテロシクリルもしくはアルキルヘテロシクリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
25およびR26が一緒に結合して、アリール、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し、そしてR21が、
【化15】

【化16】

である、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
26が、水素、アルキルもしくは低級アルキルであるか、もしくはR25およびR26が一緒に結合して、シクロアルキル、ヘテロシクリルもしくはヘテロアリールを形成し、そしてnが1もしくは2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
サイクリン依存性キナーゼの阻害が必要な患者における、1つ以上のサイクリン依存性キナーゼを阻害するための薬剤の製造のための、少なくとも1つの請求項1の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステルもしくはプロドラッグの使用。
【請求項19】
サイクリン依存性キナーゼに関連しているか、サイクリン依存性キナーゼによって調節されるか、サイクリン依存性キナーゼによって媒介されるか、もしくはそうでなければ、サイクリン依存性キナーゼによって影響を受ける1つ以上の疾患を、処置の必要な患者において処置するための薬剤の製造のための、少なくとも1つの請求項1の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステルもしくはプロドラッグの使用。
【請求項20】
前記疾患もしくは障害が、炎症性疾患、神経変性疾患、癌および糖尿病から選択される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記炎症性疾患が、急性膵炎、慢性膵炎、ぜんそく、アレルギーおよび成人性呼吸窮迫症候群から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記神経変性疾患が、急性アルツハイマー病、パーキンソン病、大脳虚血および他の神経変性疾患から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記糖尿病が、真性糖尿病および尿崩症から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
前記糖尿病が、I型糖尿病およびII型糖尿病から選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項25】
前記サイクリン依存性キナーゼがCDK1もしくはCDK2である、請求項18に記載の使用。
【請求項26】
前記キナーゼがCDK2である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記癌が、
膀胱癌、乳癌、結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、頚癌、甲状腺癌、前立腺癌、および扁平上皮癌を含む皮膚癌;
白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B−細胞リンパ腫、T−細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫およびバーキットリンパ腫;
急性および慢性の骨髄性白血病、骨髄異形成症候群ならびに前骨髄球白血病;
線維肉腫、横紋筋肉腫;
神経膠星状細胞腫、神経芽細胞腫、グリオームおよび神経鞘腫;
黒色腫、精上皮腫、奇形癌、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、甲状腺小胞癌およびカポージ肉腫からなる群より選択される、請求項20に記載の使用。
【請求項28】
哺乳動物におけるサイクリン依存性キナーゼに関連した1つ以上の疾患を処置する薬剤の製造のための、(i)ある量の第一化合物(該第一化合物は、請求項1の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステルもしくはプロドラッグである)、および(ii)ある量の少なくとも1つの第二化合物(該第二化合物は、抗癌剤である)の使用であって、ここで、該第一化合物および該第二化合物の量は、治療的効果をもたらす、使用。
【請求項29】
さらに放射線治療を包含する、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記抗癌剤が、細胞増殖抑制剤、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソテール、タキソール、エトポシド、イリノテカン、カンプトスター、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、タモキシフェン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH 66336、R115777、L778,123、BMS 214662、イレッサ、タルセバ、EGFRに対する抗体、グリベック、イントロン、ara−C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、オキサリプラチン、ロイコビリン、ELOXATINTM、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコフォルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミゾール、ナベルベン、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフィンもしくはヘキサメチルメラミンからなる群より選択される、請求項28に記載の使用。
【請求項31】
治療上有効な量の少なくとも1つの請求項1の化合物またはその薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステルもしくはプロドラッグを、少なくとも1つの薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む、薬学的組成物。
【請求項32】
細胞増殖抑制剤、シスプラチン、ドキソルビシン、タキソテール、タキソール、エトポシド、イリノテカン、カンプトスター、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、エポチロン、タモキシフェン、5−フルオロウラシル、メトトレキサート、テモゾロミド、シクロホスファミド、SCH 66336、R115777、L778,123、BMS 214662、イレッサ、タルセバ、EGFRに対する抗体、グリベック、イントロン、ara−C、アドリアマイシン、シトキサン、ゲムシタビン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ダカルバジン、フロクスウリジン、シタラビン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、デオキシコフォルマイシン、マイトマイシン−C、L−アスパラギナーゼ、テニポシド、17α−エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、テストステロン、プレドニゾン、フルオキシメステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、テストラクトン、酢酸メゲストロール、メチルプレドニゾロン、メチルテストステロン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、クロロトリアニセン、ヒドロキシプロゲステロン、アミノグルテチミド、エストラムスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、ロイプロリド、フルタミド、トレミフェン、ゴセレリン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、アムサクリン、プロカルバジン、ミトタン、ミトキサントロン、レバミゾール、ナベルベン、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、レロキサフィン、ドロロキサフィンもしくはヘキサメチルメラミンからなる群より選択される1つ以上の抗癌剤をさらに含む、請求項31に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
患者において1つ以上のサイクリン依存性キナーゼを阻害するための薬剤の製造のための、請求項31の薬学的組成物の使用。
【請求項34】
前記癌が、固形腫瘍である、請求項20に記載の使用。
【請求項35】
前記癌が、細胞傷害剤に対して耐性がある、請求項20に記載の使用。
【請求項36】
精製された形態の、請求項1に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−504756(P2009−504756A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527100(P2008−527100)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/031973
【国際公開番号】WO2007/022258
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】