新規硬化性樹脂とその製造方法、及びエポキシ樹脂組成物、電子部品装置
【課題】優れた耐熱性を発現させるとともに揮発性成分の含有量が極めて少ない硬化性樹脂を提供し、それら樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物を封止材料として用いて耐熱性等の信頼性に優れた電子部品装置を実現する。
【解決手段】(a)下式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であり、残存揮発性成分の含有量が硬化性樹脂の全重量基準で10重量%以下である樹脂を硬化剤として用いる。
(式中、nは0〜2の数であり、R1は水素原子、又は炭素数1〜18の置換あるいは非置換の炭化水素基であり、R2はハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、アミノ基、又はカルボニルオキシ基であり、R1及びR2の2以上が結合し環状構造を形成してもよい)
【解決手段】(a)下式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であり、残存揮発性成分の含有量が硬化性樹脂の全重量基準で10重量%以下である樹脂を硬化剤として用いる。
(式中、nは0〜2の数であり、R1は水素原子、又は炭素数1〜18の置換あるいは非置換の炭化水素基であり、R2はハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、アミノ基、又はカルボニルオキシ基であり、R1及びR2の2以上が結合し環状構造を形成してもよい)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規硬化性樹脂とその製造方法に関する。より詳細には、エポキシ樹脂硬化剤として有用な新規硬化性樹脂とその製造方法、その硬化性樹脂を硬化剤として含む成形材料、及び積層板、接着剤、塗料、インキといった幅広い用途の材料として好適なエポキシ樹脂組成物、及びそのエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備える電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形材料、積層板用及び接着剤用材料、各種電子電気部品、塗料及びインキ材料等の分野では、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂が広く使用されている。特に、トランジスタ、IC等の電子部品素子の封止技術に関する分野では、封止材料としてエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。その理由としては、エポキシ樹脂は、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。
【0003】
一方、近年、電子部品の分野では高速化及び高密度化が進んでおり、それに伴って、電子部品の発熱が顕著となってきている。また、高温下で作動する電子部品も増加している。そのため、電子部品に使用されるプラスチック、特にエポキシ樹脂硬化物には高い耐熱性が要求されている。
【0004】
耐熱性をはじめとするエポキシ樹脂硬化物の各種特性を向上させるために、特許文献1及び特許文献2では、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の水酸基含有エポキシ樹脂の少なくとも一部をアルコキシシラン又はその部分縮合物で変性して得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を硬化剤として使用する方法を開示している。また、特許文献3及び特許文献4では、フェノール樹脂の一部をアルコキシシラン又はその部分縮合物で変性して得られるアルコキシ基含有シラン変性フェノール樹脂を硬化剤として使用する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−59013号公報
【特許文献2】特開2002−249539号公報
【特許文献3】特開2000−281756号公報
【特許文献4】特開2001−294639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記方法によれば、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を向上させることが可能となる。しかしながら、上記方法で使用する硬化剤のいずれもがアルコキシシリル基を有するため、エポキシ樹脂とそれら硬化剤との硬化反応時にはメタノール、エタノール等のアルコールが生じることになる。アルコール等の揮発性成分は、硬化物にボイドの発生原因となり、また硬化物の硬化収縮率(成形収縮率)を大きくするため望ましくない。また、上記方法に従って、溶剤を含めた揮発性成分を殆ど含有しないように樹脂を調製した場合には、樹脂の分子量が大きくなり、場合によってはゲル化するため、扱い難い。さらに、それらを使用して得られる硬化物の耐熱性を満足できる程度に向上させる効果は十分でなかった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、耐熱性等の各種望ましい特性を発現させるとともに、揮発性成分の含有量が極めて少なく、分子量を適切に制御することが可能な新規硬化性樹脂を提供することを課題とする。さらに本発明では、それら硬化性樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物を封止材料として使用して、耐熱性等の信頼性に優れた素子を備えた電子部品装置を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のシラン化合物と、フェノール化合物とを反応させることによって得られる硬化性樹脂が有用であり、それら硬化性樹脂の使用によって所期の目的が達成可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の形態は以下に関する。
本発明の一形態は、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、上記硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が上記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【化1】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
上記形態では、(a)一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の上記(a)のシラン化合物におけるR2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることが好ましい。また、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその70重量%以上が2価フェノール化合物であることが好ましい。また、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその50重量%以上が上記(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能なフェノール化合物であることが好ましい。さらに、(a)の少なくとも1種の化合物において、R2が水酸基又は1価のオキシ基であることが好ましい。
本発明の別の形態は、アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有する硬化性樹脂であって、下記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を含むことを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【化2】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化3】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す)
【化4】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mは1以上の整数を示す)
【化5】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、nは0以上の数を示し、mは1以上の整数を示す)
上記形態では、硬化性樹脂におけるアリールオキシシリル結合の全数を基準として、上記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が30%以上であることが好ましい。また、硬化性樹脂に存在する揮発性成分が、硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることが好ましい。
本発明のさらに別の形態は、下記一般式(I-4a)で示される構造を有する化合物及び下記一般式(I-4b)で示される構造部位を有する化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【化6】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化7】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mはそれぞれ独立して、1以上の整数を示す)
本発明のさらに別の形態は、本発明の形態として上述した硬化性樹脂の製造方法に関するものであり、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする。
【化8】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
上記形態では、上記(a)と上記(b)との反応を、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれる触媒の存在下で実施することが好ましい。また、上記触媒が、下記一般式(I-5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩であることが好ましい。
【化9】
(式中、R4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
R5は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
Y−は1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した基であり1以上のR5と互いに結合して環状構造を形成してもよい)
本発明のさらに別の形態は、本発明の一形態である上述の硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
本発明のさらに別の形態は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、上記(B)硬化剤が本発明の一形態である硬化性樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。この形態では、組成物がさらに(C)硬化促進剤を含有することが好ましい。また、組成物がさらに(D)無機充填剤を含有することが好ましい。また、上記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
本発明のさらに別の形態は、本発明の一形態であるエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置に関する。
本発明のさらに別の形態は、本発明の一形態である硬化性樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態である新規硬化性樹脂は様々な用途に使用することが可能である。例えば、新規硬化性樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であり、それらを用いてエポキシ樹脂組成物を構成することによって、優れた耐熱性を示すとともに、ボイド及びクラックの発生が少ない硬化物を提供することが可能である。特に、本発明の一形態としてエポキシ樹脂組成物を調製し、その組成物を用いてIC、LSI等の電子部品を封止することによって、信頼性の高い電子部品装置を提供することが可能となるため、その工業的価値は高い。本願では、2005年2月18日出願の日本国特許出願2005−42108号、同2005−42117号、並びに同2005−42131号明細書、及び2005年11月4日出願の同2005−321439号明細書の全体の開示を参照することによって、本明細書の一部として組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用した2,2'−ビフェノールのIRスペクトルである。
【図2】本発明による硬化性樹脂(合成例1)のIRスペクトルである。
【図3】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用した2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)のIRスペクトルである。
【図4】本発明による硬化性樹脂(合成例2)のIRスペクトルである。
【図5】本発明による硬化性樹脂(合成例3)のIRスペクトルである。
【図6】本発明による硬化性樹脂(合成例4)のIRスペクトルである。
【図7】本発明による硬化性樹脂(合成例5)のIRスペクトルである。
【図8】本発明による硬化性樹脂(合成例6)のIRスペクトルである。
【図9】本発明による硬化性樹脂(合成例7)の1H−NMRスペクトルである。
【図10】本発明による硬化性樹脂(合成例7)のIRスペクトルである。
【図11】本発明による硬化性樹脂(合成例8)の1H−NMRスペクトルである。
【図12】本発明による硬化性樹脂(合成例8)のIRスペクトルである。
【図13】本発明による硬化性樹脂(合成例9)の1H−NMRスペクトルである。
【図14】本発明による硬化性樹脂(合成例9)のIRスペクトルである。
【図15】本発明による硬化性樹脂(合成例10)の1H−NMRスペクトルである。
【図16】本発明による硬化性樹脂(合成例10)のIRスペクトルである。
【図17】本発明による硬化性樹脂(合成例11)の1H−NMRスペクトルである。
【図18】本発明による硬化性樹脂(合成例11)のIRスペクトルである。
【図19】水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック)のGPCチャートである。
【図20】本発明による硬化性樹脂(合成例12)の1H−NMRスペクトルである。
【図21】水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック)のIRスペクトルである。
【図22】本発明による硬化性樹脂(合成例12)のIRスペクトルである。
【図23】本発明による硬化性樹脂(合成例13)の1H−NMRスペクトルである。
【図24】本発明による硬化性樹脂(合成例13)のIRスペクトルである。
【図25】本発明による硬化性樹脂(合成例14)の1H−NMRスペクトルである。
【図26】本発明による硬化性樹脂(合成例14)のIRスペクトルである。
【図27】本発明による硬化性樹脂(合成例15)の1H−NMRスペクトルである。
【図28】本発明による硬化性樹脂(合成例15)のIRスペクトルである。
【図29】本発明による硬化性樹脂(合成例16)の1H−NMRスペクトルである。
【図30】本発明による硬化性樹脂(合成例16)のIRスペクトルである。
【図31】本発明による硬化性樹脂(合成例17)の1H−NMRスペクトルである。
【図32】本発明による硬化性樹脂(合成例17)のIRスペクトルである。
【図33】本発明による硬化性樹脂(合成例20)の1H−NMRスペクトルである。
【図34】ノボラック型フェノール樹脂のIRスペクトルである。
【図35】本発明による硬化性樹脂(合成例20)のIRスペクトルである。
【図36】本発明による硬化性樹脂(合成例21)の1H−NMRスペクトルである。
【図37】本発明による硬化性樹脂(合成例21)のIRスペクトルである。
【図38】本発明による硬化性樹脂(合成例22)の1H−NMRスペクトルである。
【図39】本発明による硬化性樹脂(合成例22)のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一形態である新規硬化性樹脂は、下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする。
【0014】
【化10】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1)における「n」は、0〜2の数であれば特に制限されるものではない。しかし、耐熱性の観点からはn=0又は1であることが好ましく、生成する硬化性樹脂の低応力性の観点からはn=2であることが好ましい。
【0015】
上記「揮発性成分」とは、(a)シラン化合物と(b)フェノール化合物との反応で副生成物として生成する水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、ハロゲン化水素等、及び反応時に任意で使用される溶剤、及び樹脂粘度の調節等の目的で任意に含有する溶剤を意味し、上記反応で主生成物となる硬化性樹脂に存在する未反応のR2基も潜在的な揮発性成分として見なされる。すなわち、未反応のR2基を有する硬化性樹脂は、それらを例えばエポキシ樹脂硬化剤として使用した場合、硬化反応時に水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、又はハロゲン化水素といった揮発性成分を生成することになる。
【0016】
本発明による硬化性樹脂を封止材等の成形材料に用いる場合、上記副生成物及び溶剤は、通常、上記反応時にその大部分が硬化性樹脂から分離除去され、最終的に得られる硬化性樹脂は本質的にそれら成分を含まないことが好ましい。したがって、本明細書に記載する「硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量」とは、副生成物及び溶剤を分離除去した後の硬化性樹脂の全重量を基準としている。さらに「硬化性樹脂中に残存する揮発性成分」とは、反応時に分離除去されずに残った副生成物と溶剤、及び未反応のまま残ったR2基から生じ得る成分を意図しており、本発明ではそれら揮発性成分の全重量が硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする。本発明による硬化性樹脂では、揮発性成分の含有量が5重量%未満であることが好ましく、2重量%未満であることがより好ましく、0.5重量%未満であることがさらに好ましい。なお、未反応のR2基が存在する場合、その重量は、それらが反応して、例えば、水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸といった揮発性成分になった場合を想定して算出される。
【0017】
また、本発明による硬化性樹脂を積層板用、接着剤用、塗料用等の成形材料以外の用途に用いる場合は、副生成物及び必要に応じて使用される溶剤を含んでいても構わない。これらの用途では、条件を設定することでボイドが生じないように副生成物及び溶剤を除去することが容易であるが、未反応R2基の反応と硬化性樹脂の硬化がほぼ同じ条件で起こることから、未反応R2基から生じるR2Hに起因するボイドの発生を避けることは困難である。このような観点から、本発明による硬化性樹脂は、(a)上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂において、反応開始時の上記(a)のシラン化合物におけるR2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
(シラン化合物)
上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物において、R1として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0019】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基で置換したものが挙げられる。
【0020】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したものが挙げられる。
【0021】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基; メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したものであってもよい。
【0022】
なお、上記一般式(I-1)のR1としては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基等の非置換あるいはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基; メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシドキシプロピル基、クロロプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−アミノプロピルアミノプロピル基、ウレイドプロピル基、イソシアネートプロピル基等の置換又は非置換の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる基がより好ましい。
【0023】
一般式(I-1)のR2として記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
【0024】
また、一般式(I-1)のR2として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0025】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0026】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の、R1として先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0027】
上記一般式(I-1)のR2として記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基、及びシリルアミノ基が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0028】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、アリルアミノ基、ビニルアミノ基、シクロペンテニルアミノ基、シクロヘキセニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0029】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、トリルアミノ基、ジメチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、tert−ブチルフェニルアミノ基、メトキシフェニルアミノ基、エトキシフェニルアミノ基、ブトキシフェニルアミノ基、tert−ブトキシフェニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0030】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ脂肪族炭化水素アミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘプチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、メチル−n−ブチルアミノ基、メチル−sec−ブチルアミノ基、メチル−tert−ブチルアミノ基、メチルシクロヘキシルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジビニルアミノ基、ジシクロペンテニルアミノ基、ジシクロヘキセニルアミノ基、アリルメチルアミノ基等の、R1として先に説明した2つの脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0031】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(エチルフェニル)アミノ基、ビス(ブチルフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(メトキシフェニル)アミノ基、ビス(エトキシフェニル)アミノ基、ビス(ブトキシフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブトキシフェニル)アミノ基等の、R1として先に説明した2つの芳香族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0032】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルフェニルアミノ基、メチルナフチルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基によって置換されたアミノ基が挙げられる。
【0033】
「炭素数0〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基」としては、例えば、非置換のシリルアミノ基、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、メチル(トリメチルシリル)アミノ基、メチル(トリフェニルシリル)アミノ基、フェニル(トリメチルシリル)アミノ基、フェニル(トリフェニルシリル)アミノ基等の、シリル基及び/又はアミノ基がR1として先に説明した脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基によって置換されたシリルアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0034】
また、一般式(I-1)のR2として記載した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」、及び「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0035】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、ビニルカルボニルオキシ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたカルボニルオキシ基、及びそれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0036】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基、エチルフェニルカルボニルオキシ基、メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ブトキシフェニルカルボニルオキシ基、フェノキシフェニルカルボニルオキシ基等の、R1として先に説明した芳香族炭化水素基によって置換されたカルボニルオキシ基、及びそれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0037】
上記一般式(I-1)のR2は、特に限定されるものではないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、本発明による硬化性樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として使用して得られる硬化物の長期信頼性に及ぼす影響を考慮すると、R2の少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8のオキシ基であることがさらに好ましい。
【0038】
また、一般式(I-1)に記載した「R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい」とは、R1及びR2が互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、2つのR1がSi原子と結合して環状構造を形成する場合、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられる。
1つのR1と1つのR2とがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基が挙げられる。2つのR2がSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基のジオキシ基が挙げられる。それらの有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換されていてもよい。
【0039】
上記一般式(I-1)の具体的な化合物を以下に例示するが、それらに限られるものではない。n=0のシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン等が挙げられる。
【0040】
n=1のシラン化合物としては、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルアセトキシシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルアセトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
また、n=2のシラン化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン等の置換又は非置換のジアリールジアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアルコキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルシランジオール等の置換又は非置換のジアリールシランジオール、ジフェニルジクロロシラン、ジトリルジクロロシラン、ジメシチルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアリールジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアルキルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン等の置換又は非置換のアリールアルキルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のジアルキルジアセトキシシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアミノシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン等の置換又は非置換のジアリールジアミノシラン、フェニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等の環状シラン化合物、ジメチルメトキシクロロシラン等のジアルキルアルコキシクロロシラン等が挙げられる。
上述の具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(I-1)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。これらシラン化合物の中でも、硬化物の長期安定性、電子部品の長期信頼性等の観点から、R2がオキシ基であるシラン化合物が好ましい。
【0042】
(シラン化合物の部分縮合物)
上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物の部分縮合物は、上記一般式(I-1)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物、又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物が含まれる。特に限定されるものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のR2Hが副生成物として生じる(2≡Si−R2+H2O→≡Si−O−Si≡+2R2H)。
【0043】
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に限定されるものではないが、平均で1.5分子以上であることが好ましく、2〜50分子であることがより好ましく、2〜20分子であることがさらに好ましい。
本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含めばよく、その一部は縮合せずに上記一般式(I-1)で示される化合物のままであってよい。
【0044】
本発明において使用される特定のシラン化合物の部分縮合物は、予め上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。市販品として入手可能な上記一般式(I-1)で示される化合物の部分縮合物の具体例としては、式(I-1)のR2がメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が3〜5のMシリケート51(多摩化学工業株式会社製商品名)、R2がメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が8〜12のメチルシリケート56(多摩化学工業株式会社製商品名)、R2がエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が約5のシリケート40(多摩化学工業株式会社製商品名)、R2がエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が6〜8のシリケート45(多摩化学工業株式会社製商品名)、R1がメチル基、R2がメトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)、R1がn−オクチル基、R2がエトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジ−n−オクチルテトラエトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)等が挙げられる。
【0045】
(フェノール化合物)
本発明において使用可能な(b)フェノール化合物としては、分子内に1以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クミルフェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等のナフトール類等の1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、1価フェノール化合物);
レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシナフタレン、置換又は非置換のビフェノール等の1分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、2価フェノール化合物);
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;および
上記樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
等の分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物が挙げられる。上記フェノール化合物の1種を単独で使用しても、それら化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明において使用可能な(a)フェノール化合物は、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂の粘度の観点では、1分子中に2個以下のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。1分子中のフェノール性水酸基の数が多いほど、生成する硬化性樹脂の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。特に、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、1分子中のフェノール性水酸基が多く、反応点間の分子量が小さいことからゲル化が起こりやすい傾向がある。
【0047】
一方、硬化後の硬化性樹脂における耐熱性の観点では、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。しかし、上述のように分子内のフェノール性水酸基の数が増えると、得られる反応生成物の粘度が高くなる傾向がある。そのため、本発明における(a)フェノール化合物の一形態として、フェノール化合物の全量を基準として、2価フェノール化合物の含有量を、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上とすることが望ましい。例えば、2価フェノール化合物の含有量が70重量%以下、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となると、反応によって得られる反応生成物の粘度が高くなり、取り扱い性に劣る結果となる。
【0048】
本発明における(a)フェノール化合物の別の形態として、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有し、さらにシラン化合物と環化可能なフェノール化合物を用いることも可能である。この場合、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となっても、反応によって得られる反応生成物の粘度は著しく高くならず、取り扱い性が著しく低下することはない。シラン化合物と環化可能な構造を有する分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を使用する場合、それら化合物に由来するフェノール性水酸基が、全フェノール性水酸基中の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0049】
シラン化合物と環化可能なフェノール化合物を用いる場合、より具体的には、流動性の観点では、分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。耐熱性の観点では、、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。しかし、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物との割合は、特に制限されるものではなく、流動性及び耐熱性の必要度に応じて適切に調節することが可能である。なお、環化可能なフェノール性化合物における、少なくとも2個のフェノール性水酸基は、それぞれ以下に示す一般式(I-1a)〜(I-1d)のいずれかに示す位置関係となることが好ましい。
【0050】
シラン化合物と環化可能な2価フェノール化合物は、特に限定されるものではないが、例えば一般式(I-1a)〜(I-1d)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
【化11】
(式中、R6は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1a)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0052】
【化12】
(式中、R7は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR7が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1b)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトールが挙げられる。
【0053】
【化13】
(式中、R8は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR8が結合して環状構造を形成してもよく、R9は、炭素数0〜18の2価の有機基を示す)
上記一般式(I−1c)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、1,1’−メチレンジ−2−ナフトールが挙げられる。
【0054】
【化14】
(式中、R10は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR10が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1d)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0055】
分子内にシラン化合物と環化可能な3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物を含有するフェノール化合物としては、例えば一般式(I-1e)〜(I-1g)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
【化15】
(式中、R6は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6が結合して環状構造を形成してもよく、nは平均で0より大きい数を示す)
上記一般式(I-1e)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテコールノボラックが挙げられる。
【0057】
【化16】
(式中、R7は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR7が結合して環状構造を形成してもよく、nは平均で、1より大きい数を示す)
【0058】
【化17】
(式中、R8は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR8が結合して環状構造を形成してもよく、R9は、炭素数0〜18の2価の有機基を示し、nは平均で、1より大きい数を示す)
上記一般式(I-1g)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、パラクレゾールノボラック、ハイオルト型フェノールノボラックが挙げられる。
【0059】
上記一般式(I-1a)〜(I-1g)のR6、R7、R8、及びR10として記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
【0060】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、及びビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したもの挙げられる。
【0061】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0062】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基; メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものであってもよい。
【0063】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0064】
上記カルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0065】
上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0066】
上記カルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0067】
さらに、R6、R7、R8、及びR10として記載した「環状構造を形成してもよい」とは、2以上のR6、R7、R8、又はR10結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の多環芳香族環を形成するような基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換されてもよい。
【0068】
上記一般式(I-1a)〜(I-1g)のR6、R7、R8、及びR10としては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、及び1価の有機基であるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましく、水素原子、水酸基、フェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のR6、R7、R8、又はR10が結合して環状構造を形成する場合、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環となることが好ましい。
【0069】
上記一般式(I-1c)及び(I-1g)のR9は、炭素数0〜18の2価の有機基を示す。炭素数0〜18の有機基としては、特に制限はなく、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、特に制限はなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂肪族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものが挙げられる。
【0070】
中でも、入手しやすさの観点からは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、アルキレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、これらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が置換したものが好ましい。酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、メチレン基、メチルメチレン基、イソプロピルメチレン基、フェニルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルジイソピルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、シクロペンチレン基がより好ましい。
【0071】
本発明の一形態である新規硬化性樹脂は、(a)上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物との反応によって生じるアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有することを特徴とする。この形態では、硬化性樹脂は、下記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を有することが好ましい。このような特定の構造部位を有する硬化性樹脂は、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と環化可能である、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を(b)フェノール化合物として使用することによって得られる。なお、下記一般式(I-2a)および(I-2b)で示される構造部位は、上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物そのものに起因するものであり、下記一般式(I-3a)および(I-3b)で示される構造部位は、シラン化合物において部分的に縮合された部位に起因するものである。
【0072】
【化18】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【0073】
【化19】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す)
ここで、Arとして記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基」とは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等のアリール基を両側に有する2価の有機基、及びフラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等の複素環基を両側に有する2価の有機基、一方にアリール基を有し他方に複素環基を有する2価の有機基等の有機基が含まれる。
【0074】
【化20】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mは1以上の整数を示す)
【0075】
【化21】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、nは0以上の数を示し、mは1以上の整数を示す)
【0076】
ここで、Ar2として記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基」とは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等にm個の置換基による結合部分を有する基等の、アリール基から誘導される2つの結合部分とm個の置換基による結合部分とを有する基が含まれる。また、フラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等にm個の置換基による結合部分を有する基等の、複素環との2つの結合部分とm個の置換基による結合部分とを有する基も含まれる。さらにまた、アリール基から誘導される1つの結合部分と、複素環との1つの結合部分と、m個の置換基による結合部分とを有する基も含まれる。
【0077】
式中の「n」は、0以上の数を示すが、環状構造の生成し易さの観点からは、nは好ましくは0〜10の範囲、より好ましくは0〜5の範囲、さらに好ましくは0〜3の範囲であることが望ましい。
【0078】
上述の構造部位を有する硬化性樹脂は、硬化性樹脂自体を比較的小さい分子量とすることが可能であり、その製造及び製造後の取り扱いが容易となる傾向がある。また、硬化性樹脂中におけるシラン化合物の含有量を高めることが可能となるため、本硬化性樹脂を用いた硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は耐熱性が向上する傾向がある。このような観点から、本発明による硬化性樹脂は、樹脂中に存在するアリールオキシシリル(ArO−Si)結合の全数を基準として、一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、及び(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が30%以上、好ましくは50%以上存在することが好ましい。
【0079】
上述の構造部位を有する硬化性樹脂のケイ素原子の配位数は、4配位が主であるが、5又は6配位となることも可能であり、配位数に関しては制限されるものではない。
n=0である一般式(I-1)で示されるシラン化合物を用いる場合、上記一般式(I-2a)で示される構造部位を有する硬化性樹脂は、下記一般式(I-4a)で示される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
【化22】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【0080】
n=0である一般式(I-1)で示されるシラン化合物を用いる場合、上記一般式(I-2b)で示される構造部位を有する硬化性樹脂は、下記一般式(I-4b)で示される構造部位を有する化合物を含有することが好ましい。
【化23】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mはそれぞれ独立して、1以上の整数を示す)
n=0である一般式(I-1)で示されるシラン化合物を用いる場合、本発明による硬化性樹脂は、樹脂の全重量を基準として、その好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上が、上記一般式(I-4a)及び(I-4b)で示される構造部位を有する硬化性樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。硬化性樹脂の90重量%以上が上記一般式(I-4a)及び/又は(I-4b)で示される構造部位を有する場合、本発明による硬化性樹脂の分子量をさらに低減させることが可能となる。その結果、製造及び製造後の取り扱いがさらに容易となり、またシラン化合物の含有量をさらに高めることが可能となり、耐熱性のさらなる改善が可能となる。
【0081】
(硬化性樹脂の製造方法)
本発明の一形態である新規硬化性樹脂の製造方法は、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする。
【0082】
【化24】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
式中、n、R1、R2の詳細は先に説明した通りである。
【0083】
本発明による製造方法において、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物との反応は、目的とする硬化性樹脂が生成する方法であれば、その反応手段等の制限は特にない。本発明による製造方法では、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。溶媒は、反応後に、ろ別、蒸留等によって除去する。本発明において使用できる溶媒としては、上記(a)と(b)との反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されるものではなく、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒等の公知の溶媒を用いることができる。
【0084】
また、本発明による製造方法において、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物との比率は、反応が進行し目的の化合物が得られる範囲において、特に限定されるものではない。例えば、(a)におけるR2基と、(b)におけるフェノール性水酸基との当量比(すなわち、[(b)フェノール化合物の水酸基数]/[(a)のシラン化合物におけるR2基数])が、0.1〜10の間であることが好ましく、0.5〜5.0の間であることがより好ましく、0.9〜3.0の間であることがさらに好ましい。特に、上記当量比は1付近であることが最も好ましい。上記当量比が0.1未満となる場合、未反応のR2基が残りやすい傾向がある。一方、上記当量比が10よりも大きくなると、反応生成物のエポキシ硬化剤としての有用性が低下し、硬化物の耐熱性は低下する傾向がある。なお、「当量比」とは、仕込み比のことではなく、製造後に生成物中に含有されている(b)のフェノール性水酸基由来の基および(a)のR2基由来の基の比([(b)フェノール化合物の未反応フェノール性水酸基数+(b)フェノール化合物のフェノール性水酸基が反応して生成した結合の数]/[(a)のシラン化合物におけるR2基数+(a)のシラン化合物におけるR2基が反応して生成した結合の数])を意味する。すなわち、揮発、ろ過、洗浄等によって除去されたものは含まないものとする。また、当量比が「1付近」とは、秤量誤差、純度のずれ等によって実際には1.0から少しずれていても良いことを意味する。具体的には、上記当量比は0.9〜1.1が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
【0085】
また、本発明による製造方法において、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物との反応率は、特に限定されるものではないが、反応開始時のシラン化合物及び/又はその部分縮合物における全R2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。反応開始時の全R2基数を基準として、10%を超える数のR2基が未反応となると、反応生成物のエポキシ硬化剤としての有用性は低下し、硬化物のボイドの発生や長期信頼性の低下を招く傾向がある。
【0086】
本発明による製造方法では、目的とする化合物とともに、上記(a)と(b)との反応の副生成物としてR2Hが生成することになる。そのため、本発明による製造方法は、必要に応じて加熱して、反応生成物からR2Hを除去する工程を設けることが好ましい。より具体的な例示としては、以下の通りである:
(a)R2がハロゲン原子であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のハロゲン化水素を除去する;
(a)R2が水酸基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物の水を除去する;
(a)R2がオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアルコール又はアリールオールを除去する;
(a)R2がアミノ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアンモニア又はアミンを除去する;
(a)R2がカルボニルオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のカルボン酸を除去する。
【0087】
本発明による製造方法では、上記(a)と(b)との反応を促進するために、必要に応じて、触媒を使用しても良い。使用可能な触媒としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、及びその誘導体; それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; ピリジン・トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体; 2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類; テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート; 2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩; トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類; それら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体; それら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物とを付加してなる分子内分極を有する化合物; これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物とを反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報に記載)等が挙げられる。
【0088】
本発明による製造方法では、使用するシラン化合物及び/又はその部分縮合物と触媒との組み合わせを特に限定するものではないが、反応の簡便さ及び反応生成物の使用によって達成される硬化物の長期安定性の観点から、下記一般式(I-5)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を触媒として用い、多価フェノール化合物と一般式(I-1)のR2がオキシ基であるシラン化合物とを反応させ、80℃〜300℃に加熱して副生成物のアルコールを除去することによって実施することが好ましい。副生成物となるR2Hの除去容易性の観点からは、R2が炭素数1〜3のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0089】
【化25】
(式中、R4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
R5は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
Y−は、1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のR5と互いに結合して環状構造を形成してもよい)
なお、上記一般式(I-5)のR4として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0090】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0091】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0092】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものであってもよい。
【0093】
一般式(I-5)のR4として記載した用語「2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2又は3つのR4が結合し、全体としてそれぞれ2又は3価の炭化水素基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0094】
なお、上記一般式(I-5)のR4としては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基であることがさらに好ましい。
【0095】
上記一般式(I-5)のR5として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基を含むことを意味する。
【0096】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、R4として先に説明した通りである。
【0097】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0098】
上記カルボニル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0099】
上記オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0100】
上記カルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0101】
上記一般式(I-5)のR5として記載した用語「2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2〜4つのR5が結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、並びにフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、及びそれらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、及びアリーレン基にオキシ基又はジオキシ基が結合した基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0102】
上記一般式(I-5)のR5としては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基、及びメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、R5が結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0103】
上記一般式(I-5)におけるY−は、1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のR2と互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、Y−は水酸基、メルカプト基、ハイドロセレノ基等の16族原子に水素原子が結合した1価の有機基からプロトンが脱離した基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシフェニル基カルボキシナフチル基等のカルボキシル基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からカルボン酸のプロトンが脱離した基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からフェノール性プロトンが脱離した基が挙げられる。
【0104】
また、上記一般式(I-5)中のY−が1以上のR5と結合して環状構造を形成する場合、例えば、Y−は、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基を形成する2価の有機基が挙げられる。
【0105】
先に例示したY−の中でも、特に限定されるものではないが、水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオン、又はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオンを有する1価の有機基であることが好ましい。
【0106】
また、上記一般式(I-5)中のY−が1以上のR5と結合して環状構造を形成する場合、例えば、Y−は、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基が好ましい。
【0107】
また、上記一般式(I-5)で示されるホスホニウム化合物の分子間塩としては、限定されるものではないが、式(I-5)で示されるホスホニウム化合物とフェノール、ナフトール、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物として先に例示した化合物等のフェノール性水酸基を有する化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール基を有する化合物、シュウ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸等との分子間塩化合物が挙げられる。
【0108】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明の一形態である硬化性樹脂は、その樹脂単独で又は他の樹脂と反応して硬化することが可能な硬化性樹脂として様々な用途に使用することが可能である。例えば、封止材等の成形材料、積層板用材料、各種接着剤用材料、各種電子電気部品用材料、及び塗料材料等の用途に使用することが可能である。本発明による硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂等の他の硬化性樹脂と組み合わせて使用することも可能である。また、本発明による硬化性樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であるため、エポキシ樹脂、及び必要に応じてエポキシ樹脂の硬化を促進する他の成分と組み合わせて硬化性樹脂組成物とすることも可能である。
【0109】
本発明の一形態であるエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するものであって、(B)硬化剤が、先に説明した本発明の一形態である新規硬化性樹脂を含むことを特徴とする。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、上記成分(A)及び(B)に、さらに(C)硬化促進剤及び(D)無機充填剤を含有するものであってもよい。また、必要に応じて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加したものであってもよい。以下、本発明によるエポキシ樹脂組成物を構成する主な成分について説明する。
【0110】
(A)エポキシ樹脂
本発明において使用可能な(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよく、特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂)、
ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
ハイドロキノン型エポキシ樹脂;
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;
硫黄原子含有エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂
が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロークラック性及び流動性の点でビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂が好ましく、それらのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、それらの性能を発揮するためには、エポキシ樹脂全量に対して、それらを合計で30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
【0112】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂の中でもR8のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYX-4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、全てのR8が水素原子である4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのR8が水素原子の場合及びR8のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0113】
【化26】
(式(II)中、R8は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数4〜18のアリール基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0114】
スチルベン型エポキシ樹脂としては、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R9のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合と3,3´,5,5´位のうちの3つがメチル基、1つがtert−ブチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合の混合品であるESLV-210(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0115】
【化27】
(式(III)中、R9及びR10は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0116】
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子でありR12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0117】
【化28】
(式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0118】
硫黄原子含有型エポキシ樹脂としては、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´位がtert−ブチル基で6,6´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0119】
【化29】
(式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0120】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましく、例えば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子でありR15がメチル基でi=1であるESCN−190、ESCN−195(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0121】
【化30】
(式(VI)中、R14及びR15は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0122】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化したエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP−7200(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0123】
【化31】
(式(VII)中、R16は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0124】
サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、k=0である1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、EPPN−502H(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0125】
【化32】
(式(VIII)中、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0126】
ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂としては、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でi=1であり、j=0、k=0であるNC−7300(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0127】
【化33】
(式(IX)中、R19〜R21は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示し、pは平均値で0〜1の正数を示し、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の正数であり(l+m)は1〜11の正数を示す)
上記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、R40が水素原子であるNC−3000S(日本化薬株式会社製商品名)、i=0、R40が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのR8が水素原子であるエポキシ樹脂を重量比80:20で混合したCER-3000(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、j=0、k=0であるESN−175(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0129】
【化34】
(式(X)及び(XI)において、R37〜R41は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す)
上記一般式(II)〜(XI)中のR8〜R21及びR37〜R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のR8の全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR9〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R8〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R9とR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0130】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、ナフタレン環を含有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ジメチルナフトール等のナフトール類の誘導体から合成されるナフトール化合物をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(XI-a)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(XI-a)で示されるエポキシ樹脂の中でも、n=1であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43の全てがグリシジルオキシ基であるEXA−4700、EXA−4701(大日本インキ化学株式会社製商品名)、n=0であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43がグリシジルオキシ基であるHP−4032 (大日本インキ化学株式会社製商品名)、n=1であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43の一方が水素原子であり、他方がグリシジルオキシ基であるEXA−4750(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0131】
【化35】
(式(XI-a)中、R41及びR42は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、R43は水素原子又はグリシジルオキシ基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0132】
上記一般式(II)〜(XI)及び(XI-a)中のR8〜R21及びR37〜R43について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のR8の全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR9〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R8〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R9とR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0133】
上記一般式(II)〜(XI)及び(XI-a)中の「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(B)成分の溶融粘度が高くなるため、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0134】
(B)硬化剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、(B)硬化剤として、先に示した本発明による新規硬化性樹脂を使用することを特徴とする。本発明によるエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤となる本発明による硬化性樹脂との配合比率は、(A)エポキシ樹脂における全エポキシ基の数と(B)本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数及び本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基の数の合計との比率、すなわち、[(本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数)+(本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中の全エポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。
上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0135】
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、(B)硬化剤として、先に示した本発明による硬化性樹脂以外の化合物を含んでもよい。硬化剤として併用可能な化合物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物、ジアミン、ポリアミン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の無水有機酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸化合物が挙げられ、これらの樹脂の1種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用することが好ましい。
【0136】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明による硬化性樹脂に加えて硬化剤としてフェノール化合物を併用する場合、(B)硬化剤となる成分の合計量を基準として、本発明による硬化性樹脂の配合量を、30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。(B)硬化剤における本発明による硬化性樹脂の含有量が30重量%未満となると低吸水性の特性が低下し、本発明によって達成可能な効果が低減する傾向がある。
【0137】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用する場合、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤として本発明の硬化性樹脂及び併用するフェノール化合物の配合比率は、(A)エポキシ樹脂の全エポキシ基数と、(B)本発明による硬化性樹脂の−ArO−Si結合数、本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基の数及び併用する化合物のフェノール性水酸基数の合計との比率、すなわち、[(本発明による硬化性樹脂の−ArO−Si結合の数)+(本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基数)+(併用するフェノール化合物のフェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0138】
上述の範囲において、硬化剤として本発明による硬化性樹脂と併用することが可能なフェノール化合物は、特に限定されず、硬化剤として一般に使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物であってよい。例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;
これら樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
上述のフェノール化合物の中でも、耐リフロークラック性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これらアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂は、そのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、本発明による硬化性樹脂の効果を発揮させるために、上述のフェノール樹脂は、硬化剤の全量に対して、合計で好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下で併用することが望ましい。
【0140】
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XII)〜(XIV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0141】
【化36】
(式(XII)〜(XIV)において、R22〜R28は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、jは0〜2の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0142】
上記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、R23が全て水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、k=0であるXL−225、XLC(三井化学株式会社製商品名)、MEH−7800(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIV)で示されるフェノール樹脂の中でも、j=0、R27のk=0、R28のk=0であるSN−170(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0143】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0であるDPP(新日本石油化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0144】
【化37】
(式(XV)中、R29は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0145】
サリチルアルデヒド型フェノール樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0146】
下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0であるMEH−7500(明和化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0147】
【化38】
(式(XVI)中、R30及びR31は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0148】
ベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0149】
下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、q=0であるHE−510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0150】
【化39】
(式(XVII)中、R32〜R34は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、qは0〜5の整数、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の正数であり(l+m)は1〜11の正数を示す)
【0151】
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0152】
下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社製商品名)、HP−850N(日立化成工業株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0153】
【化40】
(式(XVIII)中、R35及びR36は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0154】
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるR22〜R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23〜R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22〜R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22およびR23の全てについて同一でも異なってもよく、R30およびR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0155】
上記一般式(XII)〜(XVIII)における「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(B)硬化性樹脂成分の溶融粘度が高くなるため、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0156】
(C)硬化促進剤
本発明による硬化性樹脂組成物では、必要に応じて硬化剤促進剤を配合してもよい。使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体; それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類; テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート; 2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩; トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類; それら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体; それら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報に記載)が挙げられる。これら硬化促進剤を併用する場合、中でも、流動性の観点からは有機ホスフィン類とπ結合をもつ化合物とを付加してなる分子内分極を有する化合物; 有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物; 硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。特に、下記一般式(I-5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩を使用することが好ましい。なお、式中、R4、R5、Y−は先に説明した通りである。
【0157】
【化41】
本発明によるエポキシ樹脂組成物における(C)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成されれば特に制限はない。しかし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性における改善の観点からは、(A)エポキシ樹脂の合計100重量部に対し、(C)硬化促進剤を合計で好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは1〜7.0重量部の割合で配合することが望ましい。配合量が0.1重量部未満では樹脂組成物を短時間で硬化させることが困難であり、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合がある。
【0158】
(D)無機充填剤
本発明の硬化性樹脂組成物には、(D)無機充填剤を必要に応じてさらに配合することができる。特に、硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、(D)無機充填剤を配合することが好ましい。本発明において用いられる(D)無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるものであってよく、特に限定されるものではない。
例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛等が挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これら無機充填剤の1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
(D)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、硬化性樹脂組成物に対して55〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が55体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向にあり、90体積%を超えると硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
【0160】
また、(D)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満では硬化性樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下する傾向がある。
【0161】
流動性の観点からは、(D)無機充填剤の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、(D)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70重量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいことから配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0162】
(各種添加剤)
本発明による硬化性樹脂組成物では、必要に応じて上述の成分(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加してもよい。しかし、本発明による硬化性樹脂組成物には、以下の添加剤に限定することなく、必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を追加してもよい。
【0163】
(カップリング剤)
本発明の封止用硬化性樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
【0164】
カップリング剤の配合量は、(D)無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0165】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤; イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、二級アミノ基を有するカップリング剤が流動性及びワイヤ流れの観点から好ましい。
【0166】
(イオン交換体)
本発明の硬化性樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特に硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(XIX)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0167】
(化42)
Mg1−XAlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(XIX)
(0<X≦0.5、mは正の数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0168】
(離型剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01重量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10重量%を超えると接着性が阻害される可能性がある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
【0169】
(応力緩和剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤を必要に応じて配合することができる。応力緩和剤を配合することにより、パッケージの反り変形量、パッケージクラックを低減させることができる。使用できる応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の可とう剤(応力緩和剤)であれば特に限定されるものではない。一般に使用されている可とう剤としては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したものが挙げられる。
【0170】
(難燃剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。本発明において用いられる難燃剤としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機若しくは無機の化合物、金属水酸化物が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して1〜30重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
【0171】
(着色剤)
また、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合しても良い。
【0172】
先に説明した本発明の硬化性樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕する等の方法で得ることができる。樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると取り扱いが容易である。
【0173】
本発明の別の形態である電子部品装置は、上述の硬化性樹脂組成物によって封止した素子を備えることを特徴とする。電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものが挙げられ、それら素子部を本発明の硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。より具体的には、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の硬化性樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の硬化性樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の硬化性樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)が挙げられる。中でも、本発明の硬化性樹脂組成物は高温における弾性率低下が少ないため、耐熱性、高温動作保証等が要求されている用途に好適に使用することができる。具体的には、パワーモジュールパッケージ、車載用途パッケージ、SiC等の高温でも動作する半導体のパッケージ等が挙げられる。また、CCDイメージセンサー、MOSイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、CPD、EPROM、LED、OEL等の光半導体素子を備える中空パッケージ型の装置にも有効に使用することができる。さらに、プリント回路板においても本発明の硬化性樹脂組成物を有効に使用することができる。
【0174】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等の方法を用いてもよい。
【実施例】
【0175】
以下、本発明について実施例によってより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
〔新規樹脂の合成例〕
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)200g(1.07mol)及びトルエン215mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)112g(0.54mol)を約60分かけて滴下し、約6時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。
反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、188gの固体の生成物を得た。
【0176】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、エタノール及びエトキシ基は観測されなかった。IR測定の結果を図1及び2に示す。図1は原料となる2,2'−ビフェノールのIRスペクトル、図2は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図2)によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XX)の単位構造を有し、下記一般式(XXI)で示される構造の硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0177】
【化43】
【化44】
【0178】
(合成例2)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.39mol)及びトルエン79mlを投入し、100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)41g(0.20mol)を約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.50g(0.0014mol)加え、約120〜130℃で24時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を一晩にわたって室温で放置し、トルエンを100ml加えた後に、固形物をろ過し、トルエンで洗浄し、次いで乾燥することによって、49.4gの固体の生成物を得た。
【0179】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、エタノール及びエトキシ基は観測されなかった。IR測定の結果を図3及び4に示す。図3は原料となる2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)のIRスペクトル、図4は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図4)によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図3を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XXII)の単位構造を有し、下記一般式(XXIII)で示される構造の硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0180】
【化45】
【0181】
【化46】
【0182】
(合成例3)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)119g(0.64mol)及びトルエン319mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)30gを約30分かけて滴下し、約7時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除いた。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、69gの固体の生成物を得た。
【0183】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図5に示す。図5によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XX)及び/又は下記一般式(XXIV)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0184】
【化47】
【0185】
【化48】
【0186】
(合成例4)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール150g(0.81mol)及びトルエン230mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)54gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、110℃で6時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、90gの固体の生成物を得た。
【0187】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図6に示す。図6によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は一般式(XXIV)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0188】
(合成例5)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール150g(0.81mol)及びトルエン268mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)63gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、110℃で10時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、110gの固体の生成物を得た。
【0189】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図7に示す。図7によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は一般式(XXIV)でで示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0190】
(合成例6)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール150g(0.81mol)及びトルエン322mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)76gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、110℃で10時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、118gの固体の生成物を得た。
【0191】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図8に示す。図8によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は一般式(XXIV)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0192】
(合成例7)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)(東京化成工業株式会社製試薬)180g(0.79mol)及びトルエン194mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)46gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.90g(0.0024mol)加え、120〜130℃で20時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物168gを固体として得た。
【0193】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図9)によれば、メトキシ基及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図10に示す。図10によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図3を参照)が減少していることが確認された。
以上の結果から、生成物は下記一般式(XXII)及び/又は(XXV)で示される単位構造を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0194】
【化49】
【0195】
【化50】
【0196】
(合成例8)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)156g(0.84mol)及びトルエン159mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液に1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アヅマックス株式会社販売試薬)95gを約90分かけて滴下し、約110℃で5時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物182gを固体として得た。
【0197】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図11)から、原料である1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサンのメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.9%であることを確認した。生成物のIR測定の結果を図12に示す。図12によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0198】
(合成例9)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)155g(0.83mol)及びトルエン222mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にフェニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製AY43−040)110g(0.55mol)を約60分かけて滴下し、約120〜130℃で42時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物197gを固体として得た。
【0199】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図13)から、原料であるフェニルトリメトキシシランのメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.6%であることを確認した。生成物のIR測定の結果を図14に示す。図14によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0200】
(合成例10)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)195g(1.05mol)及びトルエン161mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製AY43−026)95g(0.40mol)を約50分かけて滴下し、約110〜120℃で4時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物195gを固体として得た。
【0201】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図15)によれば、原料である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図16に示す。図16によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0202】
(合成例11)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)及びトルエン215mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にジフェニルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製AZ−6183)131g(0.54mol)を約75分かけて滴下し、約100〜110℃で12時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過、乾燥することによって、164gの固体の生成物を得た。
【0203】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図17)によれば、原料であるジフェニルジメトキシシランのメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図18に示す。図18によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)の単位構造を有し、さらに下記一般式(XXVI)で示される構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0204】
【化51】
【0205】
(合成例12)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布でを有する)107g及びトルエン140mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430) 46.6g(0.224mol)を約20分かけて滴下し、130℃で37時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物109gを得た。
【0206】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図20)によれば、原料であるテトラエトキシシランのエトキシ基、及び副生成物であるエタノール由来のシグナルは観測されなかった。IR測定の結果を図21及び図22に示す。図21は原料となる2,2'−ビフェノールのIRスペクトル、図22は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図22)によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XXVII)及び/又は(XXVIII)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0207】
【化52】
【0208】
【化53】
【0209】
(合成例13)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)100g及びトルエン140mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430) 37.4g(0.180mol)を約20分かけて滴下し、130℃で16時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物99gを得た。
【0210】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図23)によれば、原料であるテトラエトキシシランのエトキシ基、及び副生成物であるエタノール由来のシグナルは観測されなかった。図24は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図24によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は(XXVIII)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0211】
(合成例14)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)100g及びトルエン192mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430) 29.9g(0.144mol)を約10分かけて滴下し、130℃で14時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物98gを得た。
【0212】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図25)によれば、原料であるテトラエトキシシランのエトキシ基、及び副生成物であるエタノール由来のシグナルは観測されなかった。図26は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図26によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は(XXVIII)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0213】
(合成例15)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール100g(0.537mol)及びトルエン152mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.50g(0.0013mol)加え、さらにメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名MTMS−A) 55.0gを約20分かけて滴下し、120℃で12時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用い約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣をテフロンコーティングした金属製容器に移して、室温まで冷却することによって、固体の生成物112gを得た。
【0214】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図27)によれば、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。図28は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図28によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は(XXIV)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0215】
(合成例16)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)50g及びトルエン152mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、さらにメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名MTMS−A) 27.5gを約10分かけて滴下し、130℃で22時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用い約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物59gを得た。
【0216】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図29)によれば、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。図30は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図30によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は以下に示す一般式(XXIX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【化54】
【0217】
(合成例17)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)100g及びトルエン167mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名Mシリケート51) 39.4gを約20分かけて滴下し、110℃で17時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物108gを得た。
【0218】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図31)によれば、原料であるテトラメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。図32は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図32によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は(XXIX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0219】
(合成例18)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)98.3g(0.472mol)を約20分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で反応を続けた。約3時間反応を続けたところでゲル化が起こり、それ以上反応を続けることができなくなった。
【0220】
(合成例19)
合成例19では、ゲル化を抑えるために、テトラエトキシシランの比率を小さくする方法によって合成を試みた。より具体的には、以下のようにして合成を行った。300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で反応を続けた。約10時間反応を続けたところで、ゲル化が起こりそれ以上反応を続けることができなくなった。
【0221】
(合成例20)
合成例20では、ゲル化を抑えるために、未反応R2基比率を大きくする方法によって合成を試みた。より具体的には、以下のようにして合成を行った。300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で30分間にわたって反応を続けた。その後、反応生成物をテフロンコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、固体の生成物189gを得た。
【0222】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図33)によれば、テトラエトキシシランにおけるR2基数を基準として未反応のR2基数が84%であり、硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として11%であることが確認された。IR測定の結果を図34及び35に示す。図34は原料となるノボラック型フェノール樹脂のIRスペクトル、図35は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図35)によれば、1110〜1000cm−1に原料となるテトラエトキシシランに由来するSi−OR(脂肪族)に特徴的なピーク、および920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークの両方が確認された。以上の結果から、生成物はアリールオキシシリル基及びエトキシシリル基を含有すると推測される。
【0223】
(合成例21)
合成例21では、ゲル化を抑えるため、未反応R2基比率を大きくする方法によって合成を試みた。より具体的には、以下のようにして合成を行った。300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で5時間にわたって反応を続けた。その後、反応生成物をテフロンコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、固体として生成物161gを得た。
【0224】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図36)によれば、テトラエトキシシランにおけるR2基数を基準として未反応のR2基数が39%であり、硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として5.2%であることが確認された。生成物のIR測定の結果(図37)によれば、1110〜1000cm−1に原料となるテトラエトキシシランに由来するSi−OR(脂肪族)に特徴的なピーク、および920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークの両方が確認された。以上の結果から、生成物はアリールオキシシリル基及びエトキシシリル基を含有すると推測される。
【0225】
(合成例22)
合成例22では、ゲル化を抑えるために、テトラエトキシシランの比率を小さくする方法によって合成を試みた。より具体的には以下のようにして合成を行った。500mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)400gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、120℃で18時間にわたって反応を続けた。その後、反応生成物をテフロンコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することで、固体として生成物356gを得た。
【0226】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図38)によれば、テトラエトキシシランにおけるR2基数を基準として未反応のR2基数が8.1%であり、硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準とし0.62%であることが確認された。生成物のIR測定の結果(図39)によれば、1110〜1000cm−1に原料となるテトラエトキシシランに由来するSi−OR(脂肪族)に特徴的なピーク、および920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークの両方が確認された。以上の結果から、生成物はアリールオキシシリル基及びエトキシシリル基を含有すると推測される。
【0227】
なお、合成例1、3、及び8〜11で用いた2,2’−ビフェノールは、東京化成工業株式会社製の試薬であるが、イオンクロマトグラフによって陽イオン濃度及び陰イオン濃度を測定した結果、ナトリウムイオンが600ppm、カリウムイオンが380ppm、塩化物イオンが610ppm、リン酸イオンが130ppm、硝酸イオンが10ppmであった。合成例4〜6及び15で用いた2,2’−ビフェノールは、東京化成工業株式会社製の試薬を精製して用いた。精製後の陽イオン濃度及び陰イオン濃度は、ナトリウムイオンが60ppm、塩化物イオンが9.0ppmであり、それ以外の精製前に検出されたイオンは検出されなかった。2,2’−ビフェノールの具体的な精製方法について以下に説明する。
【0228】
(2,2'−ビフェノールの精製)
3000mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)1500g、トルエン500ml、及び蒸留水1000mlを投入し、それらを約90℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を、約90℃に維持しながら2.5時間にわたって加熱及び攪拌した後に、一晩放置し、析出した固形物をろ過、洗浄(蒸留水1500ml)した。その固形物を、再び3000mlのセパラブルフラスコに投入し、トルエン500ml及び蒸留水1000mlを加え、約90℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を約90℃に維持しながら、2.5時間にわたって加熱及び攪拌した後、一晩放置し、析出した固形物をろ過、洗浄(蒸留水1500ml)した。得られた固形物を70℃で真空乾燥した後に、2000mlのセパラブルフラスコに投入し、500mlのトルエンを加え、加熱して溶解させ溶液とし、微量残っている水を共沸によって除去した。引き続き、その溶液を一晩放置し、析出した固形物をろ過、乾燥することによって、精製した2,2'−ビフェノールを1340g得た。
【0229】
精製前の2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)を用いた合成例1、3、及び8〜11では、触媒なしでも反応は進行した。一方、精製した2,2'−ビフェノールを用いた場合には、触媒なしで反応は進行しなかった。このことから、精製前の2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)に含まれる陽イオン及び/又は陰イオンが反応触媒として作用したと推測される。
合成例1〜22で得られた反応生成物(以下「硬化性樹脂」と称す)の各種測定の詳細は以下の通りである。
(1)1H−NMR
約10mgの硬化性樹脂を約1mlの重アセトンに溶かして溶液とし、溶液をφ5mmの試料管に入れ、ブルカーバイオスピン社製AV−300Mを用いて測定した。シフト値は溶媒に微量含まれるCHD2C(=O)CD3(2.04ppm)を基準とした。
(2)IR
Bio−Rad社製FTS 3000MXを用い、KBr法に従って測定した。
(3)イオンクロマトグラフ
乳鉢を用いて粉砕した硬化性樹脂5g及び蒸留水50gをポリプロピレン製容器に入れ、95℃で20時間加熱して調製した抽出水をろ過し、以下の方法を用いて測定した。この測定値から、先と同様にポリプロピレン製容器に蒸留水50gを入れ、95℃で20時間加熱して調製した水の測定値を差し引き、硬化性樹脂に含まれる各種イオンの値に変換し、イオン濃度とした。
(3−1)陽イオン
ガードカラム(Shim-pack IC-GC3)及び分離カラム(Shim-pack IC-C3)を装着した島津製作所製HIC−6Aイオンクロマトグラフを用いて、溶離液:1mMシュウ酸水溶液/アセトニトリル=5/1、流速:1.1ml/min、カラム温度:30℃の条件で測定した。
(3−2)陰イオン
ガードカラム(IonPac AG9-HC)及び分離カラム(IonPac AS9-HC)を装着したDIONEX社製IC20イオンクロマトグラフを用いて、溶離液:9mM炭酸ナトリウム水溶液、流速:1.0ml/min、カラム温度:30℃の条件で測定した。
(4)GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)
約3mgの樹脂を約3mlのTHFに溶解させ、ガードカラム(TOSOH TSK−guardcolumn HXL−H)、分離カラム(TOSOH TSK−GEL G200H8)及び分離カラム(TOSOH TSK−GEL G100H8)を装着した日立製作所製ポンプ(L−3300)を用いて、溶離液:THF、流速:1.0ml/min、カラム温度:30℃の条件で溶離し、日立製作所製RI検出器(L−6200)を用いて検出した。なお、「分子量」はポリスチレン標準試料の検量線に沿って算出したものである。
【0230】
〔エポキシ樹脂組成物の作製及び特性評価〕
(実施例1〜36、比較例1〜12)
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「YX−4000H」)
エポキシ樹脂2:エポキシ当量195、軟化点77℃のo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学株式会社製商品名「ESCN−190−6」)
エポキシ樹脂3:エポキシ当量195、軟化点62℃のo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学株式会社製商品名「ESCN−190−2」)
エポキシ樹脂4:エポキシ当量282、軟化点59℃のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物(日本化薬株式会社製商品名「NC−3000S」)
エポキシ樹脂5:エポキシ当量168、軟化点68℃のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名「EPPN−502H」)
エポキシ樹脂6:エポキシ当量168、軟化点62℃のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「1032H60」)、
エポキシ樹脂7:エポキシ当量162、軟化点93℃のナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学株式会社製商品名「EXA−4700」)
【0231】
(B)硬化剤
硬化剤1:合成例1で得た硬化性樹脂
硬化剤2:合成例3で得た硬化性樹脂
硬化剤3:合成例2で得た硬化性樹脂
硬化剤4:合成例4で得た硬化性樹脂
硬化剤5:合成例5で得た硬化性樹脂
硬化剤6:合成例6で得た硬化性樹脂
硬化剤7:合成例7で得た硬化性樹脂
硬化剤8:合成例8で得た硬化性樹脂
硬化剤9:合成例9で得た硬化性樹脂
硬化剤10:合成例10で得た硬化性樹脂
硬化剤11:合成例11で得た硬化性樹脂
硬化剤12:合成例12で得た硬化性樹脂
硬化剤13:合成例13で得た硬化性樹脂
硬化剤14:合成例14で得た硬化性樹脂
硬化剤15:合成例15で得た硬化性樹脂
硬化剤16:合成例16で得た硬化性樹脂
硬化剤17:合成例21で得た硬化性樹脂
硬化剤18:合成例22で得た硬化性樹脂
硬化剤A:水酸基当量176、軟化点70℃のフェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製商品名「ミレックスXL−225」)
硬化剤B:水酸基当量93、融点108−110℃の2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)
硬化剤C:水酸基当量200、軟化点67℃のフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製商品名「MEH−7851」)
硬化剤D:水酸基当量103、軟化点86℃のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名「MEH−7500」)
硬化剤E:水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)。
硬化剤F:水酸基当量106、融点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名「HP−850N」)
硬化剤G:合成例20で得た硬化性樹脂
【0232】
(C)硬化促進剤
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物
硬化促進剤2:トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物
【0233】
(D)無機充填剤
平均粒径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカ
(その他の各種添加剤)
カップリング剤:エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名「MA−100」)
離型剤:カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)
【0234】
上述の成分をそれぞれ表1〜4に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例1〜36、比較例1〜12のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
【0239】
次に、実施例1〜36、及び比較例1〜12によって得たそれぞれのエポキシ樹脂組成物を、以下に示す各試験によって評価した。評価結果を表5〜8に示す。なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(2)ガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化した。次いで、ダイヤモンドカッターで長さ55mmに切断し、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックサイエンティフィックエフイー株式会社製)を用い、ダイナミックモードで昇温速度5℃、周波数6.28rad/sの条件でのtanδの測定からガラス転移温度(℃)を求めた。
(3−1)高温時弾性率(240℃)
上記(2)における測定から240℃における貯蔵弾性率(108Pa)を求めた。
(3−2)高温時弾性率(270℃)
上記(2)における測定から270℃における貯蔵弾性率(108Pa)を求めた。
(4)成形収縮率
エポキシ樹脂組成物を上記条件で、長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの外形を有する6本の試験片を成形し、後硬化した。次いで、室温でノギスを用いて長さを小数点第3位まで測定し、予め測定をしておいた成形時(180℃)の金型の長さから収縮率を求めた。
(5)ボイドレス性
エポキシ樹脂組成物を上記条件でアルミ箔の上に長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化を行った後、アルミ接着面の膨れ及び硬化物表面のボイドについて評価した。評価では、膨れ及びボイドの少ないものは「○」、膨れ及びボイドが中程度のものは「△」、膨れ及びボイドの多いものは「×」とした。
【0240】
【表5】
【0241】
【表6】
【0242】
【表7】
【0243】
【表8】
【0244】
本発明による硬化性樹脂を硬化剤として含有する実施例1〜36は、いずれも熱時硬度、ガラス転移温度、高温弾性率及びボイドレス性に優れる。これに対して、本発明による硬化性樹脂を硬化剤として含まない比較例1〜11では、それぞれ、エポキシ樹脂及び充填材量が同じ実施例と比較して、熱時硬度、ガラス転移温度及び/又は高温弾性率の点で劣っている。比較例12は、揮発成分が多いため、ボイドレス性に劣っている。実施例のガラス転移温度はtanδのピークがブロードとなった影響で対応する比較例と比較し低くなっている場合もあるが、高温、特に270℃での弾性率については比較例よりも優れており、耐熱性に優れている。また、本発明による硬化性樹脂は、本質的に揮発成分を含まないか又は揮発成分の含有率が極めて少ないため、ボイドレス性にも優れている。よって、本発明の硬化性樹脂によれば、優れた耐熱性を発現させるとともに、硬化物におけるボイド、クラックの発生を改善することが可能であることは明らかである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規硬化性樹脂とその製造方法に関する。より詳細には、エポキシ樹脂硬化剤として有用な新規硬化性樹脂とその製造方法、その硬化性樹脂を硬化剤として含む成形材料、及び積層板、接着剤、塗料、インキといった幅広い用途の材料として好適なエポキシ樹脂組成物、及びそのエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備える電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、成形材料、積層板用及び接着剤用材料、各種電子電気部品、塗料及びインキ材料等の分野では、エポキシ樹脂等の硬化性樹脂が広く使用されている。特に、トランジスタ、IC等の電子部品素子の封止技術に関する分野では、封止材料としてエポキシ樹脂組成物が広く使用されている。その理由としては、エポキシ樹脂は、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性等の諸特性においてバランスがとれているためである。
【0003】
一方、近年、電子部品の分野では高速化及び高密度化が進んでおり、それに伴って、電子部品の発熱が顕著となってきている。また、高温下で作動する電子部品も増加している。そのため、電子部品に使用されるプラスチック、特にエポキシ樹脂硬化物には高い耐熱性が要求されている。
【0004】
耐熱性をはじめとするエポキシ樹脂硬化物の各種特性を向上させるために、特許文献1及び特許文献2では、ビスフェノール型エポキシ樹脂等の水酸基含有エポキシ樹脂の少なくとも一部をアルコキシシラン又はその部分縮合物で変性して得られるアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂を硬化剤として使用する方法を開示している。また、特許文献3及び特許文献4では、フェノール樹脂の一部をアルコキシシラン又はその部分縮合物で変性して得られるアルコキシ基含有シラン変性フェノール樹脂を硬化剤として使用する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−59013号公報
【特許文献2】特開2002−249539号公報
【特許文献3】特開2000−281756号公報
【特許文献4】特開2001−294639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記方法によれば、エポキシ樹脂硬化物の耐熱性を向上させることが可能となる。しかしながら、上記方法で使用する硬化剤のいずれもがアルコキシシリル基を有するため、エポキシ樹脂とそれら硬化剤との硬化反応時にはメタノール、エタノール等のアルコールが生じることになる。アルコール等の揮発性成分は、硬化物にボイドの発生原因となり、また硬化物の硬化収縮率(成形収縮率)を大きくするため望ましくない。また、上記方法に従って、溶剤を含めた揮発性成分を殆ど含有しないように樹脂を調製した場合には、樹脂の分子量が大きくなり、場合によってはゲル化するため、扱い難い。さらに、それらを使用して得られる硬化物の耐熱性を満足できる程度に向上させる効果は十分でなかった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであり、耐熱性等の各種望ましい特性を発現させるとともに、揮発性成分の含有量が極めて少なく、分子量を適切に制御することが可能な新規硬化性樹脂を提供することを課題とする。さらに本発明では、それら硬化性樹脂を硬化剤として含むエポキシ樹脂組成物を封止材料として使用して、耐熱性等の信頼性に優れた素子を備えた電子部品装置を提供することを課題とする。
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のシラン化合物と、フェノール化合物とを反応させることによって得られる硬化性樹脂が有用であり、それら硬化性樹脂の使用によって所期の目的が達成可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の形態は以下に関する。
本発明の一形態は、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、上記硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が上記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【化1】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
上記形態では、(a)一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の上記(a)のシラン化合物におけるR2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることが好ましい。また、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその70重量%以上が2価フェノール化合物であることが好ましい。また、(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその50重量%以上が上記(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能なフェノール化合物であることが好ましい。さらに、(a)の少なくとも1種の化合物において、R2が水酸基又は1価のオキシ基であることが好ましい。
本発明の別の形態は、アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有する硬化性樹脂であって、下記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を含むことを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【化2】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化3】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す)
【化4】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mは1以上の整数を示す)
【化5】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、nは0以上の数を示し、mは1以上の整数を示す)
上記形態では、硬化性樹脂におけるアリールオキシシリル結合の全数を基準として、上記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が30%以上であることが好ましい。また、硬化性樹脂に存在する揮発性成分が、硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることが好ましい。
本発明のさらに別の形態は、下記一般式(I-4a)で示される構造を有する化合物及び下記一般式(I-4b)で示される構造部位を有する化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする硬化性樹脂に関する。
【化6】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化7】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mはそれぞれ独立して、1以上の整数を示す)
本発明のさらに別の形態は、本発明の形態として上述した硬化性樹脂の製造方法に関するものであり、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする。
【化8】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
上記形態では、上記(a)と上記(b)との反応を、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれる触媒の存在下で実施することが好ましい。また、上記触媒が、下記一般式(I-5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩であることが好ましい。
【化9】
(式中、R4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
R5は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
Y−は1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した基であり1以上のR5と互いに結合して環状構造を形成してもよい)
本発明のさらに別の形態は、本発明の一形態である上述の硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
本発明のさらに別の形態は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、上記(B)硬化剤が本発明の一形態である硬化性樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物に関する。この形態では、組成物がさらに(C)硬化促進剤を含有することが好ましい。また、組成物がさらに(D)無機充填剤を含有することが好ましい。また、上記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有することが好ましい。
本発明のさらに別の形態は、本発明の一形態であるエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置に関する。
本発明のさらに別の形態は、本発明の一形態である硬化性樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態である新規硬化性樹脂は様々な用途に使用することが可能である。例えば、新規硬化性樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であり、それらを用いてエポキシ樹脂組成物を構成することによって、優れた耐熱性を示すとともに、ボイド及びクラックの発生が少ない硬化物を提供することが可能である。特に、本発明の一形態としてエポキシ樹脂組成物を調製し、その組成物を用いてIC、LSI等の電子部品を封止することによって、信頼性の高い電子部品装置を提供することが可能となるため、その工業的価値は高い。本願では、2005年2月18日出願の日本国特許出願2005−42108号、同2005−42117号、並びに同2005−42131号明細書、及び2005年11月4日出願の同2005−321439号明細書の全体の開示を参照することによって、本明細書の一部として組み入れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用した2,2'−ビフェノールのIRスペクトルである。
【図2】本発明による硬化性樹脂(合成例1)のIRスペクトルである。
【図3】本発明による硬化性樹脂の合成例で使用した2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)のIRスペクトルである。
【図4】本発明による硬化性樹脂(合成例2)のIRスペクトルである。
【図5】本発明による硬化性樹脂(合成例3)のIRスペクトルである。
【図6】本発明による硬化性樹脂(合成例4)のIRスペクトルである。
【図7】本発明による硬化性樹脂(合成例5)のIRスペクトルである。
【図8】本発明による硬化性樹脂(合成例6)のIRスペクトルである。
【図9】本発明による硬化性樹脂(合成例7)の1H−NMRスペクトルである。
【図10】本発明による硬化性樹脂(合成例7)のIRスペクトルである。
【図11】本発明による硬化性樹脂(合成例8)の1H−NMRスペクトルである。
【図12】本発明による硬化性樹脂(合成例8)のIRスペクトルである。
【図13】本発明による硬化性樹脂(合成例9)の1H−NMRスペクトルである。
【図14】本発明による硬化性樹脂(合成例9)のIRスペクトルである。
【図15】本発明による硬化性樹脂(合成例10)の1H−NMRスペクトルである。
【図16】本発明による硬化性樹脂(合成例10)のIRスペクトルである。
【図17】本発明による硬化性樹脂(合成例11)の1H−NMRスペクトルである。
【図18】本発明による硬化性樹脂(合成例11)のIRスペクトルである。
【図19】水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック)のGPCチャートである。
【図20】本発明による硬化性樹脂(合成例12)の1H−NMRスペクトルである。
【図21】水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック)のIRスペクトルである。
【図22】本発明による硬化性樹脂(合成例12)のIRスペクトルである。
【図23】本発明による硬化性樹脂(合成例13)の1H−NMRスペクトルである。
【図24】本発明による硬化性樹脂(合成例13)のIRスペクトルである。
【図25】本発明による硬化性樹脂(合成例14)の1H−NMRスペクトルである。
【図26】本発明による硬化性樹脂(合成例14)のIRスペクトルである。
【図27】本発明による硬化性樹脂(合成例15)の1H−NMRスペクトルである。
【図28】本発明による硬化性樹脂(合成例15)のIRスペクトルである。
【図29】本発明による硬化性樹脂(合成例16)の1H−NMRスペクトルである。
【図30】本発明による硬化性樹脂(合成例16)のIRスペクトルである。
【図31】本発明による硬化性樹脂(合成例17)の1H−NMRスペクトルである。
【図32】本発明による硬化性樹脂(合成例17)のIRスペクトルである。
【図33】本発明による硬化性樹脂(合成例20)の1H−NMRスペクトルである。
【図34】ノボラック型フェノール樹脂のIRスペクトルである。
【図35】本発明による硬化性樹脂(合成例20)のIRスペクトルである。
【図36】本発明による硬化性樹脂(合成例21)の1H−NMRスペクトルである。
【図37】本発明による硬化性樹脂(合成例21)のIRスペクトルである。
【図38】本発明による硬化性樹脂(合成例22)の1H−NMRスペクトルである。
【図39】本発明による硬化性樹脂(合成例22)のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一形態である新規硬化性樹脂は、下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする。
【0014】
【化10】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1)における「n」は、0〜2の数であれば特に制限されるものではない。しかし、耐熱性の観点からはn=0又は1であることが好ましく、生成する硬化性樹脂の低応力性の観点からはn=2であることが好ましい。
【0015】
上記「揮発性成分」とは、(a)シラン化合物と(b)フェノール化合物との反応で副生成物として生成する水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、ハロゲン化水素等、及び反応時に任意で使用される溶剤、及び樹脂粘度の調節等の目的で任意に含有する溶剤を意味し、上記反応で主生成物となる硬化性樹脂に存在する未反応のR2基も潜在的な揮発性成分として見なされる。すなわち、未反応のR2基を有する硬化性樹脂は、それらを例えばエポキシ樹脂硬化剤として使用した場合、硬化反応時に水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸、又はハロゲン化水素といった揮発性成分を生成することになる。
【0016】
本発明による硬化性樹脂を封止材等の成形材料に用いる場合、上記副生成物及び溶剤は、通常、上記反応時にその大部分が硬化性樹脂から分離除去され、最終的に得られる硬化性樹脂は本質的にそれら成分を含まないことが好ましい。したがって、本明細書に記載する「硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量」とは、副生成物及び溶剤を分離除去した後の硬化性樹脂の全重量を基準としている。さらに「硬化性樹脂中に残存する揮発性成分」とは、反応時に分離除去されずに残った副生成物と溶剤、及び未反応のまま残ったR2基から生じ得る成分を意図しており、本発明ではそれら揮発性成分の全重量が硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする。本発明による硬化性樹脂では、揮発性成分の含有量が5重量%未満であることが好ましく、2重量%未満であることがより好ましく、0.5重量%未満であることがさらに好ましい。なお、未反応のR2基が存在する場合、その重量は、それらが反応して、例えば、水、アルコール、アンモニア、アミン、カルボン酸といった揮発性成分になった場合を想定して算出される。
【0017】
また、本発明による硬化性樹脂を積層板用、接着剤用、塗料用等の成形材料以外の用途に用いる場合は、副生成物及び必要に応じて使用される溶剤を含んでいても構わない。これらの用途では、条件を設定することでボイドが生じないように副生成物及び溶剤を除去することが容易であるが、未反応R2基の反応と硬化性樹脂の硬化がほぼ同じ条件で起こることから、未反応R2基から生じるR2Hに起因するボイドの発生を避けることは困難である。このような観点から、本発明による硬化性樹脂は、(a)上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂において、反応開始時の上記(a)のシラン化合物におけるR2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
(シラン化合物)
上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物において、R1として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0019】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基で置換したものが挙げられる。
【0020】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したものが挙げられる。
【0021】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基; メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基で置換したものであってもよい。
【0022】
なお、上記一般式(I-1)のR1としては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基等の非置換あるいはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基; メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシドキシプロピル基、クロロプロピル基、メタクリルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基、N−フェニルアミノプロピル基、N−アミノプロピルアミノプロピル基、ウレイドプロピル基、イソシアネートプロピル基等の置換又は非置換の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる基がより好ましい。
【0023】
一般式(I-1)のR2として記載した「ハロゲン原子」には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が含まれる。
【0024】
また、一般式(I-1)のR2として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基」には、例えば「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」、及び「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0025】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素オキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0026】
上記「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素オキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の、R1として先に説明した芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0027】
上記一般式(I-1)のR2として記載した「炭素数0〜18の置換又は非置換のアミノ基」には、例えば、非置換のアミノ基、炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基、芳香族炭化水素アミノ基、ジ脂肪族炭化水素アミノ基、ジ芳香族炭化水素アミノ基、脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基、及びシリルアミノ基が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0028】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、シクロヘプチルアミノ基、アリルアミノ基、ビニルアミノ基、シクロペンテニルアミノ基、シクロヘキセニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0029】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、トリルアミノ基、ジメチルフェニルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基、tert−ブチルフェニルアミノ基、メトキシフェニルアミノ基、エトキシフェニルアミノ基、ブトキシフェニルアミノ基、tert−ブトキシフェニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0030】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ脂肪族炭化水素アミノ基」としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジシクロペンチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジシクロヘプチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、メチルイソプロピルアミノ基、メチル−n−ブチルアミノ基、メチル−sec−ブチルアミノ基、メチル−tert−ブチルアミノ基、メチルシクロヘキシルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジビニルアミノ基、ジシクロペンテニルアミノ基、ジシクロヘキセニルアミノ基、アリルメチルアミノ基等の、R1として先に説明した2つの脂肪族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0031】
「炭素数1〜18の置換又は非置換のジ芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビス(ジメチルフェニル)アミノ基、ビス(エチルフェニル)アミノ基、ビス(ブチルフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブチルフェニル)アミノ基、ビス(メトキシフェニル)アミノ基、ビス(エトキシフェニル)アミノ基、ビス(ブトキシフェニル)アミノ基、ビス(tert−ブトキシフェニル)アミノ基等の、R1として先に説明した2つの芳香族炭化水素基によって置換されたアミノ基、及びこれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0032】
「炭素数1〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素芳香族炭化水素アミノ基」としては、例えば、メチルフェニルアミノ基、メチルナフチルアミノ基、ブチルフェニルアミノ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基によって置換されたアミノ基が挙げられる。
【0033】
「炭素数0〜18の置換又は非置換のシリルアミノ基」としては、例えば、非置換のシリルアミノ基、トリメチルシリルアミノ基、トリエチルシリルアミノ基、トリフェニルシリルアミノ基、メチル(トリメチルシリル)アミノ基、メチル(トリフェニルシリル)アミノ基、フェニル(トリメチルシリル)アミノ基、フェニル(トリフェニルシリル)アミノ基等の、シリル基及び/又はアミノ基がR1として先に説明した脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基によって置換されたシリルアミノ基、及びこれらの脂肪族炭化水素基及び/又は芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子でさらに置換したものが挙げられる。
【0034】
また、一般式(I-1)のR2として記載した「炭素数2〜18の置換又は非置換のカルボニルオキシ基」には、例えば「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」、及び「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」等が含まれる。より具体的な例示は以下の通りである。
【0035】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、tert−ブチルカルボニルオキシ基、シクロプロピルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、シクロペンチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、ビニルカルボニルオキシ基等の、R1として先に説明した脂肪族炭化水素基によって置換されたカルボニルオキシ基、及びそれらの脂肪族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0036】
上記「炭素数2〜18の置換又は非置換の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基」としては、例えば、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基、エチルフェニルカルボニルオキシ基、メトキシフェニルカルボニルオキシ基、ブトキシフェニルカルボニルオキシ基、フェノキシフェニルカルボニルオキシ基等の、R1として先に説明した芳香族炭化水素基によって置換されたカルボニルオキシ基、及びそれらの芳香族炭化水素基部分をアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0037】
上記一般式(I-1)のR2は、特に限定されるものではないが、入手が容易であることから、塩素原子、水酸基、炭素数1〜8を有する置換又は非置換の1価のオキシ基が好ましい。中でも、反応性の観点からは、塩素原子、水酸基又はオキシ基がより好ましく、本発明による硬化性樹脂をエポキシ樹脂硬化剤として使用して得られる硬化物の長期信頼性に及ぼす影響を考慮すると、R2の少なくとも1つが水酸基又は炭素数1〜8のオキシ基であることがさらに好ましい。
【0038】
また、一般式(I-1)に記載した「R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい」とは、R1及びR2が互いに結合し、全体としてそれぞれ2価以上の有機基となる場合を意味する。例えば、2つのR1がSi原子と結合して環状構造を形成する場合、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられる。
1つのR1と1つのR2とがSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、アリーレン基のオキシ基が挙げられる。2つのR2がSi原子と結合して環状構造を形成する場合、上記アルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基のジオキシ基が挙げられる。それらの有機基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシ基等のエポキシ基を含有する基、メタクリルオキシ基、メルカプト基、イミノ基、ウレイド基、イソシアネート基等で置換されていてもよい。
【0039】
上記一般式(I-1)の具体的な化合物を以下に例示するが、それらに限られるものではない。n=0のシラン化合物としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラキス(エトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラプロポキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、テトラアセトキシシラン、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン等が挙げられる。
【0040】
n=1のシラン化合物としては、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリフルオロシラン、フェニルアセトキシシラン、フェニルビス(ジメチルアミノ)クロロシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリクロロシラン、エチルアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルアセトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0041】
また、n=2のシラン化合物としては、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジメシチルジメトキシシラン等の置換又は非置換のジアリールジアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアルコキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン等のアリールアルキルジアルコキシシラン、ジフェニルシランジオール等の置換又は非置換のジアリールシランジオール、ジフェニルジクロロシラン、ジトリルジクロロシラン、ジメシチルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアリールジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジイソプロピルジクロロシラン等の置換又は非置換のジアルキルジクロロシラン、フェニルエチルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン等の置換又は非置換のアリールアルキルジクロロシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のジアルキルジアセトキシシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジエチルシラン等の置換又は非置換のジアルキルジアミノシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシラン等の置換又は非置換のジアリールジアミノシラン、フェニルメチルビス(ジメチルアミノ)シラン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等の環状シラン化合物、ジメチルメトキシクロロシラン等のジアルキルアルコキシクロロシラン等が挙げられる。
上述の具体例は、いずれも工業製品又は試薬として入手可能である。上記一般式(I-1)で示される化合物は、工業製品又は試薬として購入可能な化合物を用いても、公知の方法で合成した化合物を用いても構わない。これらシラン化合物の中でも、硬化物の長期安定性、電子部品の長期信頼性等の観点から、R2がオキシ基であるシラン化合物が好ましい。
【0042】
(シラン化合物の部分縮合物)
上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物の部分縮合物は、上記一般式(I-1)で示される1種の化合物が自己縮合した化合物、又は2種以上の化合物が互いに反応し縮合して生成した化合物が含まれる。特に限定されるものではないが、縮合反応は、必要であれば水を用い、また必要に応じて、酸、アルカリ等の縮合反応を促進する公知の物質を加えて行うことができる。通常の縮合反応では、1分子の水を消費して、1つの縮合反応が起こり、2分子のR2Hが副生成物として生じる(2≡Si−R2+H2O→≡Si−O−Si≡+2R2H)。
【0043】
縮合の度合いは、反応条件により調節することが可能であり、縮合してできる化合物の分子数は、特に限定されるものではないが、平均で1.5分子以上であることが好ましく、2〜50分子であることがより好ましく、2〜20分子であることがさらに好ましい。
本発明で使用可能なシラン化合物は、上述のようにそれらが部分的に縮合した化合物を含めばよく、その一部は縮合せずに上記一般式(I-1)で示される化合物のままであってよい。
【0044】
本発明において使用される特定のシラン化合物の部分縮合物は、予め上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物を縮合させて用いても、フェノール化合物と反応させるときに同時に縮合させても、市販品として入手可能なものを用いても、これらを組み合わせても構わない。市販品として入手可能な上記一般式(I-1)で示される化合物の部分縮合物の具体例としては、式(I-1)のR2がメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が3〜5のMシリケート51(多摩化学工業株式会社製商品名)、R2がメトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が8〜12のメチルシリケート56(多摩化学工業株式会社製商品名)、R2がエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が約5のシリケート40(多摩化学工業株式会社製商品名)、R2がエトキシ基であり、n=0、平均縮合分子数が6〜8のシリケート45(多摩化学工業株式会社製商品名)、R1がメチル基、R2がメトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)、R1がn−オクチル基、R2がエトキシ基であり、n=1、縮合分子数が2の1,3−ジ−n−オクチルテトラエトキシジシロキサン(アズマックス株式会社販売試薬)等が挙げられる。
【0045】
(フェノール化合物)
本発明において使用可能な(b)フェノール化合物としては、分子内に1以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、クミルフェノール、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン等のナフトール類等の1分子中に1個のフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、1価フェノール化合物);
レゾルシン、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ジヒドロキシナフタレン、置換又は非置換のビフェノール等の1分子内に2つのフェノール性水酸基を有する化合物(すなわち、2価フェノール化合物);
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;および
上記樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
等の分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物が挙げられる。上記フェノール化合物の1種を単独で使用しても、それら化合物の2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明において使用可能な(a)フェノール化合物は、特に限定されるものではないが、硬化性樹脂の粘度の観点では、1分子中に2個以下のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。1分子中のフェノール性水酸基の数が多いほど、生成する硬化性樹脂の粘度が高くなり、製造及び/又は製造後の取り扱いが困難となる傾向がある。特に、ノボラック型フェノール樹脂又はレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、1分子中のフェノール性水酸基が多く、反応点間の分子量が小さいことからゲル化が起こりやすい傾向がある。
【0047】
一方、硬化後の硬化性樹脂における耐熱性の観点では、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。しかし、上述のように分子内のフェノール性水酸基の数が増えると、得られる反応生成物の粘度が高くなる傾向がある。そのため、本発明における(a)フェノール化合物の一形態として、フェノール化合物の全量を基準として、2価フェノール化合物の含有量を、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上とすることが望ましい。例えば、2価フェノール化合物の含有量が70重量%以下、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となると、反応によって得られる反応生成物の粘度が高くなり、取り扱い性に劣る結果となる。
【0048】
本発明における(a)フェノール化合物の別の形態として、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有し、さらにシラン化合物と環化可能なフェノール化合物を用いることも可能である。この場合、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量が30重量%以上となっても、反応によって得られる反応生成物の粘度は著しく高くならず、取り扱い性が著しく低下することはない。シラン化合物と環化可能な構造を有する分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を使用する場合、それら化合物に由来するフェノール性水酸基が、全フェノール性水酸基中の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。
【0049】
シラン化合物と環化可能なフェノール化合物を用いる場合、より具体的には、流動性の観点では、分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。耐熱性の観点では、、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物の含有量を30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。しかし、分子内に3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物と分子内に2個のフェノール性水酸基を有する化合物との割合は、特に制限されるものではなく、流動性及び耐熱性の必要度に応じて適切に調節することが可能である。なお、環化可能なフェノール性化合物における、少なくとも2個のフェノール性水酸基は、それぞれ以下に示す一般式(I-1a)〜(I-1d)のいずれかに示す位置関係となることが好ましい。
【0050】
シラン化合物と環化可能な2価フェノール化合物は、特に限定されるものではないが、例えば一般式(I-1a)〜(I-1d)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
【化11】
(式中、R6は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1a)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテコール、2,3−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0052】
【化12】
(式中、R7は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR7が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1b)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ビフェノール、1,1’−ビ−2−ナフトールが挙げられる。
【0053】
【化13】
(式中、R8は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR8が結合して環状構造を形成してもよく、R9は、炭素数0〜18の2価の有機基を示す)
上記一般式(I−1c)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、2,2’−ジヒドロキシジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、1,1’−メチレンジ−2−ナフトールが挙げられる。
【0054】
【化14】
(式中、R10は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR10が結合して環状構造を形成してもよい)
上記一般式(I-1d)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジヒドロキシナフタレンが挙げられる。
【0055】
分子内にシラン化合物と環化可能な3個以上のフェノール性水酸基を有する化合物を含有するフェノール化合物としては、例えば一般式(I-1e)〜(I-1g)に示されるようなフェノール化合物が挙げられ、それらの1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
【化15】
(式中、R6は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR6が結合して環状構造を形成してもよく、nは平均で0より大きい数を示す)
上記一般式(I-1e)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、カテコールノボラックが挙げられる。
【0057】
【化16】
(式中、R7は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR7が結合して環状構造を形成してもよく、nは平均で、1より大きい数を示す)
【0058】
【化17】
(式中、R8は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR8が結合して環状構造を形成してもよく、R9は、炭素数0〜18の2価の有機基を示し、nは平均で、1より大きい数を示す)
上記一般式(I-1g)で示されるフェノール化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、パラクレゾールノボラック、ハイオルト型フェノールノボラックが挙げられる。
【0059】
上記一般式(I-1a)〜(I-1g)のR6、R7、R8、及びR10として記載した用語「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基が結合したものを含むことを意味する。
【0060】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、及びビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したもの挙げられる。
【0061】
上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0062】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基; メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基が挙げられ、それらをさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものであってもよい。
【0063】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0064】
上記カルボニル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0065】
上記オキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0066】
上記カルボニルオキシ基としては、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等で置換したものが挙げられる。
【0067】
さらに、R6、R7、R8、及びR10として記載した「環状構造を形成してもよい」とは、2以上のR6、R7、R8、又はR10結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等の多環芳香族環を形成するような基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、ハロゲン等で置換されてもよい。
【0068】
上記一般式(I-1a)〜(I-1g)のR6、R7、R8、及びR10としては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、及び1価の有機基であるアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換の芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましく、水素原子、水酸基、フェニル基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のR6、R7、R8、又はR10が結合して環状構造を形成する場合、それらが結合するベンゼン環と併せて、ナフタレン環となることが好ましい。
【0069】
上記一般式(I-1c)及び(I-1g)のR9は、炭素数0〜18の2価の有機基を示す。炭素数0〜18の有機基としては、特に制限はなく、例えば、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、炭素数1〜18の2価の炭化水素基等が挙げられる。炭素数1〜18の2価の炭化水素基としては、特に制限はなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基等の脂肪族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したもの、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基等の芳香族炭化水素基及びこれらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン等が置換したものが挙げられる。
【0070】
中でも、入手しやすさの観点からは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、アルキレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、これらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基が置換したものが好ましい。酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホニル基、メチレン基、メチルメチレン基、イソプロピルメチレン基、フェニルメチレン基、シクロヘキシルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルジイソピルメチレン基、メチルフェニルメチレン基、シクロへキシレン基、シクロペンチレン基、シクロペンチレン基がより好ましい。
【0071】
本発明の一形態である新規硬化性樹脂は、(a)上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物との反応によって生じるアリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有することを特徴とする。この形態では、硬化性樹脂は、下記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を有することが好ましい。このような特定の構造部位を有する硬化性樹脂は、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と環化可能である、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を(b)フェノール化合物として使用することによって得られる。なお、下記一般式(I-2a)および(I-2b)で示される構造部位は、上記一般式(I-1)で示されるシラン化合物そのものに起因するものであり、下記一般式(I-3a)および(I-3b)で示される構造部位は、シラン化合物において部分的に縮合された部位に起因するものである。
【0072】
【化18】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【0073】
【化19】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す)
ここで、Arとして記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基」とは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等のアリール基を両側に有する2価の有機基、及びフラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等の複素環基を両側に有する2価の有機基、一方にアリール基を有し他方に複素環基を有する2価の有機基等の有機基が含まれる。
【0074】
【化20】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mは1以上の整数を示す)
【0075】
【化21】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、nは0以上の数を示し、mは1以上の整数を示す)
【0076】
ここで、Ar2として記載した「炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基」とは、特に限定されるものではなく、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、ビフェニレン基、ビナフチレン基、メチレンビスフェニレン基、メチレンビスナフチレン基、オキシビスフェニレン基、スルホニルビスフェニレン基、チオビスフェニレン基等にm個の置換基による結合部分を有する基等の、アリール基から誘導される2つの結合部分とm個の置換基による結合部分とを有する基が含まれる。また、フラニレン、チオフェニレン、イミダゾリレン、メチレンビスフラニレン、メチレンビスチオフェニレン、メチレンビスイミダゾリレン等にm個の置換基による結合部分を有する基等の、複素環との2つの結合部分とm個の置換基による結合部分とを有する基も含まれる。さらにまた、アリール基から誘導される1つの結合部分と、複素環との1つの結合部分と、m個の置換基による結合部分とを有する基も含まれる。
【0077】
式中の「n」は、0以上の数を示すが、環状構造の生成し易さの観点からは、nは好ましくは0〜10の範囲、より好ましくは0〜5の範囲、さらに好ましくは0〜3の範囲であることが望ましい。
【0078】
上述の構造部位を有する硬化性樹脂は、硬化性樹脂自体を比較的小さい分子量とすることが可能であり、その製造及び製造後の取り扱いが容易となる傾向がある。また、硬化性樹脂中におけるシラン化合物の含有量を高めることが可能となるため、本硬化性樹脂を用いた硬化性樹脂組成物から得られる硬化物は耐熱性が向上する傾向がある。このような観点から、本発明による硬化性樹脂は、樹脂中に存在するアリールオキシシリル(ArO−Si)結合の全数を基準として、一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、及び(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が30%以上、好ましくは50%以上存在することが好ましい。
【0079】
上述の構造部位を有する硬化性樹脂のケイ素原子の配位数は、4配位が主であるが、5又は6配位となることも可能であり、配位数に関しては制限されるものではない。
n=0である一般式(I-1)で示されるシラン化合物を用いる場合、上記一般式(I-2a)で示される構造部位を有する硬化性樹脂は、下記一般式(I-4a)で示される構造を有する化合物を含有することが好ましい。
【化22】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【0080】
n=0である一般式(I-1)で示されるシラン化合物を用いる場合、上記一般式(I-2b)で示される構造部位を有する硬化性樹脂は、下記一般式(I-4b)で示される構造部位を有する化合物を含有することが好ましい。
【化23】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mはそれぞれ独立して、1以上の整数を示す)
n=0である一般式(I-1)で示されるシラン化合物を用いる場合、本発明による硬化性樹脂は、樹脂の全重量を基準として、その好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上が、上記一般式(I-4a)及び(I-4b)で示される構造部位を有する硬化性樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。硬化性樹脂の90重量%以上が上記一般式(I-4a)及び/又は(I-4b)で示される構造部位を有する場合、本発明による硬化性樹脂の分子量をさらに低減させることが可能となる。その結果、製造及び製造後の取り扱いがさらに容易となり、またシラン化合物の含有量をさらに高めることが可能となり、耐熱性のさらなる改善が可能となる。
【0081】
(硬化性樹脂の製造方法)
本発明の一形態である新規硬化性樹脂の製造方法は、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする。
【0082】
【化24】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
式中、n、R1、R2の詳細は先に説明した通りである。
【0083】
本発明による製造方法において、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物との反応は、目的とする硬化性樹脂が生成する方法であれば、その反応手段等の制限は特にない。本発明による製造方法では、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。溶媒は、反応後に、ろ別、蒸留等によって除去する。本発明において使用できる溶媒としては、上記(a)と(b)との反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されるものではなく、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系溶媒等の公知の溶媒を用いることができる。
【0084】
また、本発明による製造方法において、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物との比率は、反応が進行し目的の化合物が得られる範囲において、特に限定されるものではない。例えば、(a)におけるR2基と、(b)におけるフェノール性水酸基との当量比(すなわち、[(b)フェノール化合物の水酸基数]/[(a)のシラン化合物におけるR2基数])が、0.1〜10の間であることが好ましく、0.5〜5.0の間であることがより好ましく、0.9〜3.0の間であることがさらに好ましい。特に、上記当量比は1付近であることが最も好ましい。上記当量比が0.1未満となる場合、未反応のR2基が残りやすい傾向がある。一方、上記当量比が10よりも大きくなると、反応生成物のエポキシ硬化剤としての有用性が低下し、硬化物の耐熱性は低下する傾向がある。なお、「当量比」とは、仕込み比のことではなく、製造後に生成物中に含有されている(b)のフェノール性水酸基由来の基および(a)のR2基由来の基の比([(b)フェノール化合物の未反応フェノール性水酸基数+(b)フェノール化合物のフェノール性水酸基が反応して生成した結合の数]/[(a)のシラン化合物におけるR2基数+(a)のシラン化合物におけるR2基が反応して生成した結合の数])を意味する。すなわち、揮発、ろ過、洗浄等によって除去されたものは含まないものとする。また、当量比が「1付近」とは、秤量誤差、純度のずれ等によって実際には1.0から少しずれていても良いことを意味する。具体的には、上記当量比は0.9〜1.1が好ましく、0.95〜1.05がより好ましい。
【0085】
また、本発明による製造方法において、(a)シラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物との反応率は、特に限定されるものではないが、反応開始時のシラン化合物及び/又はその部分縮合物における全R2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。反応開始時の全R2基数を基準として、10%を超える数のR2基が未反応となると、反応生成物のエポキシ硬化剤としての有用性は低下し、硬化物のボイドの発生や長期信頼性の低下を招く傾向がある。
【0086】
本発明による製造方法では、目的とする化合物とともに、上記(a)と(b)との反応の副生成物としてR2Hが生成することになる。そのため、本発明による製造方法は、必要に応じて加熱して、反応生成物からR2Hを除去する工程を設けることが好ましい。より具体的な例示としては、以下の通りである:
(a)R2がハロゲン原子であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のハロゲン化水素を除去する;
(a)R2が水酸基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物の水を除去する;
(a)R2がオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアルコール又はアリールオールを除去する;
(a)R2がアミノ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のアンモニア又はアミンを除去する;
(a)R2がカルボニルオキシ基であるシラン化合物及び/又はその部分縮合物と、(b)フェノール化合物とを反応させた場合は、必要に応じて加熱及び/又は減圧留去、洗浄、ろ過等によって、副生成物のカルボン酸を除去する。
【0087】
本発明による製造方法では、上記(a)と(b)との反応を促進するために、必要に応じて、触媒を使用しても良い。使用可能な触媒としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、及びその誘導体; それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; ピリジン・トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体; 2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類; テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート; 2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩; トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類; それら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体; それら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物とを付加してなる分子内分極を有する化合物; これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物とを反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報に記載)等が挙げられる。
【0088】
本発明による製造方法では、使用するシラン化合物及び/又はその部分縮合物と触媒との組み合わせを特に限定するものではないが、反応の簡便さ及び反応生成物の使用によって達成される硬化物の長期安定性の観点から、下記一般式(I-5)で示されるホスホニウム化合物又はその分子間塩を触媒として用い、多価フェノール化合物と一般式(I-1)のR2がオキシ基であるシラン化合物とを反応させ、80℃〜300℃に加熱して副生成物のアルコールを除去することによって実施することが好ましい。副生成物となるR2Hの除去容易性の観点からは、R2が炭素数1〜3のアルコキシ基であることがさらに好ましい。
【0089】
【化25】
(式中、R4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
R5は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
Y−は、1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のR5と互いに結合して環状構造を形成してもよい)
なお、上記一般式(I-5)のR4として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基」は、炭素数1〜18を有し、置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含むことを意味する。
【0090】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、アリル基、ビニル基等の脂肪族炭化水素基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0091】
また、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基には、置換又は非置換の脂環式炭化水素基も含まれる。置換又は非置換の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロペンテニル基、及びシクロヘキセニル基等、並びにそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、水酸基、アミノ基、及びハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0092】
上記置換又は非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基等のアリール基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基等のアルキル基置換アリール基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、tert−ブトキシフェニル基等のアルコキシ基置換アリール基等が挙げられ、それらはさらにアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものであってもよい。
【0093】
一般式(I-5)のR4として記載した用語「2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2又は3つのR4が結合し、全体としてそれぞれ2又は3価の炭化水素基となる場合を意味する。例えば、Si原子と結合して環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、フェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0094】
なお、上記一般式(I-5)のR4としては、特に限定されるものではないが、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる1価の置換基であることが好ましい。中でも、原料の入手しやすさの観点から、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がより好ましい。フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、o−メトキシフェニル基、p−ヒドロキシフェニル基、m−ヒドロキシフェニル基、o−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジヒドロキシフェニル基、4−(4−ヒドロキシフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−(2−ヒドロキシナフチル)基、1−(4−ヒドロキシナフチル)基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基であることがさらに好ましい。
【0095】
上記一般式(I-5)のR5として記載した「炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基」は、炭素数1〜18を有し、かつ置換されても又は非置換であってもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシ基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニル基、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及び脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素カルボニルオキシ基を含むことを意味する。
【0096】
より具体的には、上記置換又は非置換の脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基としては、R4として先に説明した通りである。
【0097】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、アリルオキシ基、ビニルオキシ基等の上述の脂肪族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。上記芳香族炭化水素オキシ基としては、例えば、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、ブトキシフェノキシ基、フェノキシフェノキシ基等の上述の芳香族炭化水素基に酸素原子が結合した構造を有する基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0098】
上記カルボニル基としては、例えば、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、ブチリル基、シクロヘキシルカルボニル基、アリルカルボニル等の脂肪族炭化水素カルボニル基、フェニルカルボニル基、メチルフェニルカルボニル基等の芳香族炭化水素カルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0099】
上記オキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基等の脂肪族炭化水素オキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、メチルフェノキシカルボニル基等の芳香族炭化水素オキシカルボニル基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0100】
上記カルボニルオキシ基としては、例えば、メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、アリルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基等の脂肪族炭化水素カルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基、メチルフェニルカルボニルオキシ基等の芳香族炭化水素カルボニルオキシ基、及びそれらをアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等で置換したものが挙げられる。
【0101】
上記一般式(I-5)のR5として記載した用語「2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよい」とは、2〜4つのR5が結合し、全体としてそれぞれ2〜4価の有機基となる場合を意味する。例えば、環状構造を形成し得るエチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン等のアルキレン基、エチレニル、プロピレニル、ブチレニル基等のアルケニル基、メチレンフェニレン基等のアラルキレン基、並びにフェニレン、ナフチレン、アントラセニレン等のアリーレン基、及びそれらアルキレン基、アルケニル基、アラルキレン基、及びアリーレン基にオキシ基又はジオキシ基が結合した基が挙げられ、それらはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0102】
上記一般式(I-5)のR5としては、特に限定されるものではないが、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が好ましい。中でも原料の入手しやすさの観点からは、水素原子、水酸基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−メトキシフェニル基等の非置換或いはアルキル基及び/又はアルコキシ基及び/又は水酸基置換のアリール基、及びメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基等の鎖状又は環状のアルキル基から選ばれる置換基がさらに好ましい。2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成する場合は、特に限定されないが、R5が結合しているベンゼン環と併せて、1−(−2−ヒドロキシナフチル)基、1−(−4−ヒドロキシナフチル)基等の多環芳香族基を形成する有機基が好ましい。
【0103】
上記一般式(I-5)におけるY−は、1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した有機基であり、1以上のR2と互いに結合して環状構造を形成してもよい。例えば、Y−は水酸基、メルカプト基、ハイドロセレノ基等の16族原子に水素原子が結合した1価の有機基からプロトンが脱離した基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシフェニル基カルボキシナフチル基等のカルボキシル基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からカルボン酸のプロトンが脱離した基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基を有する炭素数1〜18の1価の有機基からフェノール性プロトンが脱離した基が挙げられる。
【0104】
また、上記一般式(I-5)中のY−が1以上のR5と結合して環状構造を形成する場合、例えば、Y−は、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基を形成する2価の有機基が挙げられる。
【0105】
先に例示したY−の中でも、特に限定されるものではないが、水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオン、又はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシナフチル基、ヒドロキシフリル基、ヒドロキシチエニル基、ヒドロキシピリジル基等のフェノール性水酸基からプロトンが脱離してなる酸素アニオンを有する1価の有機基であることが好ましい。
【0106】
また、上記一般式(I-5)中のY−が1以上のR5と結合して環状構造を形成する場合、例えば、Y−は、それが結合しているベンゼン環と併せて、2−(−6−ヒドロキシナフチル)基等のヒドロキシ多環芳香族基の水酸基からプロトンが脱離した基が好ましい。
【0107】
また、上記一般式(I-5)で示されるホスホニウム化合物の分子間塩としては、限定されるものではないが、式(I-5)で示されるホスホニウム化合物とフェノール、ナフトール、分子内に2以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物として先に例示した化合物等のフェノール性水酸基を有する化合物、トリフェニルシラノール、ジフェニルシランジオール、トリメチルシラノール等のシラノール基を有する化合物、シュウ酸、酢酸、安息香酸等の有機酸、塩酸、臭化水素、硫酸、硝酸等の無機酸等との分子間塩化合物が挙げられる。
【0108】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明の一形態である硬化性樹脂は、その樹脂単独で又は他の樹脂と反応して硬化することが可能な硬化性樹脂として様々な用途に使用することが可能である。例えば、封止材等の成形材料、積層板用材料、各種接着剤用材料、各種電子電気部品用材料、及び塗料材料等の用途に使用することが可能である。本発明による硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アリル樹脂、アルキド樹脂等の他の硬化性樹脂と組み合わせて使用することも可能である。また、本発明による硬化性樹脂は、エポキシ樹脂硬化剤として有用であるため、エポキシ樹脂、及び必要に応じてエポキシ樹脂の硬化を促進する他の成分と組み合わせて硬化性樹脂組成物とすることも可能である。
【0109】
本発明の一形態であるエポキシ樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するものであって、(B)硬化剤が、先に説明した本発明の一形態である新規硬化性樹脂を含むことを特徴とする。本発明によるエポキシ樹脂組成物は、上記成分(A)及び(B)に、さらに(C)硬化促進剤及び(D)無機充填剤を含有するものであってもよい。また、必要に応じて、カップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加したものであってもよい。以下、本発明によるエポキシ樹脂組成物を構成する主な成分について説明する。
【0110】
(A)エポキシ樹脂
本発明において使用可能な(A)エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であればよく、特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂;
ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール、スチルベン系フェノール類等のジグリシジルエーテル(ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂)、
ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;
フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸類のグリシジルエステル型エポキシ樹脂;
アニリン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したもの等のグリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂;
分子内のオレフィン結合をエポキシ化して得られるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル;
ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
ハイドロキノン型エポキシ樹脂;
トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;
オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂;
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物;
硫黄原子含有エポキシ樹脂;
ナフタレン型エポキシ樹脂
が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
上記エポキシ樹脂の中でも、耐リフロークラック性及び流動性の点でビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型フェノール樹脂が好ましく、それらのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、それらの性能を発揮するためには、エポキシ樹脂全量に対して、それらを合計で30重量%以上使用することが好ましく、50重量%以上使用することがより好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
【0112】
ビフェニル型エポキシ樹脂としては、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(II)で示されるエポキシ樹脂の中でもR8のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYX-4000H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、全てのR8が水素原子である4,4´−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのR8が水素原子の場合及びR8のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0113】
【化26】
(式(II)中、R8は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数4〜18のアリール基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0114】
スチルベン型エポキシ樹脂としては、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。
下記一般式(III)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R9のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合と3,3´,5,5´位のうちの3つがメチル基、1つがtert−ブチル基でそれ以外が水素原子でありR10の全てが水素原子の場合の混合品であるESLV-210(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0115】
【化27】
(式(III)中、R9及びR10は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0116】
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂としては、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子でありR12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´,5,5´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−80XY(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0117】
【化28】
(式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0118】
硫黄原子含有型エポキシ樹脂としては、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えば下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4´位とした時の3,3´位がtert−ブチル基で6,6´位がメチル基でそれ以外が水素原子であるYSLV−120TE(新日鐵化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0119】
【化29】
(式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0120】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化したエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましく、例えば下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子でありR15がメチル基でi=1であるESCN−190、ESCN−195(住友化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0121】
【化30】
(式(VI)中、R14及びR15は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0122】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化したエポキシ樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP−7200(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0123】
【化31】
(式(VII)中、R16は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0124】
サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限はないが、サリチルアルデヒド骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、k=0である1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)、EPPN−502H(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0125】
【化32】
(式(VIII)中、R17及びR18は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0126】
ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂としては、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではないが、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でi=1であり、j=0、k=0であるNC−7300(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0127】
【化33】
(式(IX)中、R19〜R21は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示し、pは平均値で0〜1の正数を示し、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の正数であり(l+m)は1〜11の正数を示す)
上記一般式(IX)で示されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体が挙げられ、これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物としては、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び/又はナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(X)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、R40が水素原子であるNC−3000S(日本化薬株式会社製商品名)、i=0、R40が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのR8が水素原子であるエポキシ樹脂を重量比80:20で混合したCER-3000(日本化薬株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で示されるエポキシ樹脂の中でも、i=0、j=0、k=0であるESN−175(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0129】
【化34】
(式(X)及び(XI)において、R37〜R41は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、jは0〜2の整数、kは0〜4の整数を示す)
上記一般式(II)〜(XI)中のR8〜R21及びR37〜R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のR8の全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR9〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R8〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R9とR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0130】
ナフタレン型エポキシ樹脂としては、ナフタレン環を含有するエポキシ化合物であれば、特に限定されるものではない。例えば、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ジメチルナフトール等のナフトール類の誘導体から合成されるナフトール化合物をグリシジルエーテル化したものが好ましく、下記一般式(XI-a)で示されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(XI-a)で示されるエポキシ樹脂の中でも、n=1であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43の全てがグリシジルオキシ基であるEXA−4700、EXA−4701(大日本インキ化学株式会社製商品名)、n=0であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43がグリシジルオキシ基であるHP−4032 (大日本インキ化学株式会社製商品名)、n=1であり、R41及びR42の全てが水素原子、R43の一方が水素原子であり、他方がグリシジルオキシ基であるEXA−4750(大日本インキ化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0131】
【化35】
(式(XI-a)中、R41及びR42は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、R43は水素原子又はグリシジルオキシ基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0132】
上記一般式(II)〜(XI)及び(XI-a)中のR8〜R21及びR37〜R43について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8〜88個のR8の全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR9〜R21及びR37〜R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R8〜R21及びR37〜R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R9とR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0133】
上記一般式(II)〜(XI)及び(XI-a)中の「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(B)成分の溶融粘度が高くなるため、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0134】
(B)硬化剤
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、(B)硬化剤として、先に示した本発明による新規硬化性樹脂を使用することを特徴とする。本発明によるエポキシ樹脂組成物において、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤となる本発明による硬化性樹脂との配合比率は、(A)エポキシ樹脂における全エポキシ基の数と(B)本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数及び本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基の数の合計との比率、すなわち、[(本発明による硬化性樹脂における−ArO−Si結合の数)+(本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中の全エポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。
上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0135】
本発明によるエポキシ樹脂組成物では、(B)硬化剤として、先に示した本発明による硬化性樹脂以外の化合物を含んでもよい。硬化剤として併用可能な化合物としては、エポキシ樹脂を硬化させることができる化合物であれば特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂等のフェノール化合物、ジアミン、ポリアミン等のアミン化合物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の無水有機酸、ジカルボン酸、ポリカルボン酸等のカルボン酸化合物が挙げられ、これらの樹脂の1種以上を組み合わせて使用してもよい。中でも、1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用することが好ましい。
【0136】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明による硬化性樹脂に加えて硬化剤としてフェノール化合物を併用する場合、(B)硬化剤となる成分の合計量を基準として、本発明による硬化性樹脂の配合量を、30重量%以上とすることが好ましく、50重量%以上とすることがより好ましい。(B)硬化剤における本発明による硬化性樹脂の含有量が30重量%未満となると低吸水性の特性が低下し、本発明によって達成可能な効果が低減する傾向がある。
【0137】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化剤として1分子内に2以上のフェノール性水酸基を有する化合物を併用する場合、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤として本発明の硬化性樹脂及び併用するフェノール化合物の配合比率は、(A)エポキシ樹脂の全エポキシ基数と、(B)本発明による硬化性樹脂の−ArO−Si結合数、本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基の数及び併用する化合物のフェノール性水酸基数の合計との比率、すなわち、[(本発明による硬化性樹脂の−ArO−Si結合の数)+(本発明による硬化性樹脂における未反応フェノール性水酸基数)+(併用するフェノール化合物のフェノール性水酸基数)]/[エポキシ樹脂中のエポキシ基数]で、0.5〜2.0の範囲に設定されることが好ましい。上記配合比率は、0.7〜1.5の範囲に設定することがより好ましく、0.8〜1.3の範囲に設定することがさらに好ましい。上記配合比率が0.5未満となると、エポキシ樹脂の硬化が不充分となり、硬化物の耐熱性、耐湿性及び電気特性が低下する傾向にある。一方、上記配合比率が2.0を超えると、硬化剤成分が過剰となり、硬化効率が低下するだけでなく、硬化樹脂中に多量のフェノール性水酸基が残るため、パッケージの電気特性及び耐湿性が低下する傾向にある。
【0138】
上述の範囲において、硬化剤として本発明による硬化性樹脂と併用することが可能なフェノール化合物は、特に限定されず、硬化剤として一般に使用される1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物であってよい。例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物;
フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;
パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;
メラミン変性フェノール樹脂;
テルペン変性フェノール樹脂;
フェノール類及び/又はナフトール類とジシクロペンタジエンから共重合により合成される、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;
シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;
多環芳香環変性フェノール樹脂;
ビフェニル型フェノール樹脂;
トリフェニルメタン型フェノール樹脂;
これら樹脂の2種以上を共重合して得たフェノール樹脂
が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
上述のフェノール化合物の中でも、耐リフロークラック性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これらアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型とアラルキル型の共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂は、そのいずれか1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。但し、本発明による硬化性樹脂の効果を発揮させるために、上述のフェノール樹脂は、硬化剤の全量に対して、合計で好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下で併用することが望ましい。
【0140】
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とジメトキシパラキシレンやビス(メトキシメチル)ビフェニルやこれらの誘導体から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XII)〜(XIV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0141】
【化36】
(式(XII)〜(XIV)において、R22〜R28は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、jは0〜2の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0142】
上記一般式(XII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、R23が全て水素原子であるMEH−7851(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIII)で示されるフェノール樹脂の中でも、i=0、k=0であるXL−225、XLC(三井化学株式会社製商品名)、MEH−7800(明和化成株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIV)で示されるフェノール樹脂の中でも、j=0、R27のk=0、R28のk=0であるSN−170(新日鐵化学株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0143】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0であるDPP(新日本石油化学株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0144】
【化37】
(式(XV)中、R29は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0145】
サリチルアルデヒド型フェノール樹脂としては、サリチルアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0146】
下記一般式(XVI)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0であるMEH−7500(明和化成株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0147】
【化38】
(式(XVI)中、R30及びR31は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0148】
ベンズアルデヒド型とアラルキル型との共重合型フェノール樹脂としては、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として用いたフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0149】
下記一般式(XVII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、k=0、q=0であるHE−510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社製商品名)等が市販品として入手可能である。
【0150】
【化39】
(式(XVII)中、R32〜R34は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、qは0〜5の整数、l、mはそれぞれ平均値で0〜11の正数であり(l+m)は1〜11の正数を示す)
【0151】
ノボラック型フェノール樹脂としては、フェノール類及び/又はナフトール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されるものではないが、下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂が好ましい。
【0152】
下記一般式(XVIII)で示されるフェノール樹脂の中でもi=0、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社製商品名)、HP−850N(日立化成工業株式会社商品名)等が市販品として入手可能である。
【0153】
【化40】
(式(XVIII)中、R35及びR36は水素原子又は炭素数1〜18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なってもよく、iは0〜3の整数、kは0〜4の整数、nは平均値であり、0〜10の正数を示す)
【0154】
上記一般式(XII)〜(XVIII)におけるR22〜R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23〜R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22〜R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22およびR23の全てについて同一でも異なってもよく、R30およびR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0155】
上記一般式(XII)〜(XVIII)における「n」は、0〜10の範囲である必要があり、10を超えた場合は(B)硬化性樹脂成分の溶融粘度が高くなるため、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も高くなり、未充填不良やボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形を引き起こしやすくなる。1分子中の平均nは0〜4の範囲に設定されることが好ましい。
【0156】
(C)硬化促進剤
本発明による硬化性樹脂組成物では、必要に応じて硬化剤促進剤を配合してもよい。使用可能な硬化促進剤としては、例えば、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロアルケン等のシクロアミジン化合物、その誘導体; それらのフェノールノボラック塩及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール類; テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート; 2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩; トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p−トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキル・アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン等の有機ホスフィン類; それら有機ホスフィン類と有機ボロン類との錯体; それら有機ホスフィン類と無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物; これら有機ホスフィン類と4−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ブロモフェノール、4−クロロフェノール、3−クロロフェノール、2−クロロフェノール、4−ヨウ化フェノール、3−ヨウ化フェノール、2−ヨウ化フェノール、4−ブロモ−2−メチルフェノール、4−ブロモ−3−メチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジメチルフェノール、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノール、4−ブロモ−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−クロロ−1−ナフトール、1−ブロモ−2−ナフトール、6−ブロモ−2−ナフトール、4−ブロモ−4´−ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素して得られる分子内分極を有する化合物(特開2004−156036号公報に記載)が挙げられる。これら硬化促進剤を併用する場合、中でも、流動性の観点からは有機ホスフィン類とπ結合をもつ化合物とを付加してなる分子内分極を有する化合物; 有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物; 硬化性の観点からは有機ホスフィン類とハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる分子内分極を有する化合物が好ましい。特に、下記一般式(I-5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩を使用することが好ましい。なお、式中、R4、R5、Y−は先に説明した通りである。
【0157】
【化41】
本発明によるエポキシ樹脂組成物における(C)硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成されれば特に制限はない。しかし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性における改善の観点からは、(A)エポキシ樹脂の合計100重量部に対し、(C)硬化促進剤を合計で好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは1〜7.0重量部の割合で配合することが望ましい。配合量が0.1重量部未満では樹脂組成物を短時間で硬化させることが困難であり、10重量部を超えると硬化速度が速すぎて良好な成形品が得られない場合がある。
【0158】
(D)無機充填剤
本発明の硬化性樹脂組成物には、(D)無機充填剤を必要に応じてさらに配合することができる。特に、硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、(D)無機充填剤を配合することが好ましい。本発明において用いられる(D)無機充填剤としては、一般に封止用成形材料に用いられるものであってよく、特に限定されるものではない。
例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の微粉未、又はこれらを球形化したビーズが挙げられる。さらに、難燃効果のある無機充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛等が挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。これら無機充填剤の1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0159】
(D)無機充填剤の配合量は、本発明の効果が得られれば特に制限はないが、硬化性樹脂組成物に対して55〜90体積%の範囲であることが好ましい。これら無機充填剤は硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の改良を目的に配合するものであり、配合量が55体積%未満ではこれらの特性の改良が不十分となる傾向にあり、90体積%を超えると硬化性樹脂組成物の粘度が上昇して流動性が低下し成形が困難になる傾向がある。
【0160】
また、(D)無機充填剤の平均粒径は1〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。1μm未満では硬化性樹脂組成物の粘度が上昇しやすく、50μmを超えると樹脂成分と無機充墳剤とが分離しやすくなり、硬化物が不均一になったり硬化物特性がばらついたり、狭い隙間への充填性が低下する傾向がある。
【0161】
流動性の観点からは、(D)無機充填剤の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、(D)無機充填剤の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。例えば、無機充填剤を75体積%以上配合する場合、その70重量%以上を球状粒子とし、0.1〜80μmという広範囲に分布したものが好ましい。このような無機充填剤は最密充填構造をとりやすいことから配合量を増加させても材料の粘度上昇が少なく、流動性に優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0162】
(各種添加剤)
本発明による硬化性樹脂組成物では、必要に応じて上述の成分(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填剤に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、応力緩和剤、難燃剤、着色剤といった各種添加剤を追加してもよい。しかし、本発明による硬化性樹脂組成物には、以下の添加剤に限定することなく、必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を追加してもよい。
【0163】
(カップリング剤)
本発明の封止用硬化性樹脂組成物には、樹脂成分と無機充填剤との接着性を高めるために、必要に応じて、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を添加することができる。
【0164】
カップリング剤の配合量は、(D)無機充填剤に対して0.05〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2.5重量%がより好ましい。0.05重量%未満ではフレームとの接着性が低下する傾向があり、5重量%を超えるとパッケージの成形性が低下する傾向がある。
【0165】
上記カップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−[ビス(β−ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(β−アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤; イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、二級アミノ基を有するカップリング剤が流動性及びワイヤ流れの観点から好ましい。
【0166】
(イオン交換体)
本発明の硬化性樹脂組成物には、陰イオン交換体を必要に応じて配合することができる。特に硬化性樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、陰イオン交換体を配合することが好ましい。本発明において用いられる陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができるが、例えば、ハイドロタルサイト類や、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ビスマスから選ばれる元素の含水酸化物が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、下記一般式(XIX)で示されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0167】
(化42)
Mg1−XAlX(OH)2(CO3)X/2・mH2O ……(XIX)
(0<X≦0.5、mは正の数)
これらの陰イオン交換体の配合量は、ハロゲンイオン等の陰イオンを捕捉できる十分な量であれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜30重量%の範囲が好ましく、1〜5重量%がより好ましい。
【0168】
(離型剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、成形時に金型との良好な離型性を持たせるため離型剤を配合してもよい。本発明において用いられる離型剤としては特に制限はなく従来公知のものを用いることができる。例えば、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスが挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、酸化型又は非酸化型のポリオレフィン系ワックスが好ましく、その配合量としては(A)エポキシ樹脂に対して0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜5重量%がより好ましい。ポリオレフィン系ワックスの配合量が0.01重量%未満では離型性が不十分な傾向があり、10重量%を超えると接着性が阻害される可能性がある。ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば市販品ではヘキスト社製のH4、PE、PEDシリーズ等の数平均分子量が500〜10000程度の低分子量ポリエチレンが挙げられる。また、ポリオレフィン系ワックスに他の離型剤を併用する場合、その配合量は(A)エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%が好ましく、0.5〜3重量%がより好ましい。
【0169】
(応力緩和剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、シリコーンオイル、シリコーンゴム粉末等の応力緩和剤を必要に応じて配合することができる。応力緩和剤を配合することにより、パッケージの反り変形量、パッケージクラックを低減させることができる。使用できる応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の可とう剤(応力緩和剤)であれば特に限定されるものではない。一般に使用されている可とう剤としては、例えば、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル−ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル−シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体等のコア−シェル構造を有するゴム粒子が挙げられ、これらを単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系可とう剤が好ましく、シリコーン系可とう剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したものが挙げられる。
【0170】
(難燃剤)
本発明の硬化性樹脂組成物には、難燃性を付与するために必要に応じて難燃剤を配合することができる。本発明において用いられる難燃剤としては特に制限はなく、例えば、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む公知の有機若しくは無機の化合物、金属水酸化物が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤の配合量は、難燃効果が達成されれば特に制限はないが、(A)エポキシ樹脂に対して1〜30重量%が好ましく、2〜15重量%がより好ましい。
【0171】
(着色剤)
また、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を配合しても良い。
【0172】
先に説明した本発明の硬化性樹脂組成物は、各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌、混合し、予め70〜140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練、冷却し、粉砕する等の方法で得ることができる。樹脂組成物は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び重量でタブレット化すると取り扱いが容易である。
【0173】
本発明の別の形態である電子部品装置は、上述の硬化性樹脂組成物によって封止した素子を備えることを特徴とする。電子部品装置としては、例えば、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子等の素子を搭載したものが挙げられ、それら素子部を本発明の硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。より具体的には、例えば、リードフレーム上に半導体素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部をワイヤボンディングやバンプで接続した後、本発明の硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した、DIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC、テープキャリアにバンプで接続した半導体チップを、本発明の硬化性樹脂組成物で封止したTCP(Tape Carrier Package)、配線板やガラス上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子及び/又はコンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子を、本発明の硬化性樹脂組成物で封止したCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール、裏面に配線板接続用の端子を形成した有機基板の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と有機基板に形成された配線を接続した後、本発明の硬化性樹脂組成物で素子を封止したBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)が挙げられる。中でも、本発明の硬化性樹脂組成物は高温における弾性率低下が少ないため、耐熱性、高温動作保証等が要求されている用途に好適に使用することができる。具体的には、パワーモジュールパッケージ、車載用途パッケージ、SiC等の高温でも動作する半導体のパッケージ等が挙げられる。また、CCDイメージセンサー、MOSイメージセンサー、CMOSイメージセンサー、CPD、EPROM、LED、OEL等の光半導体素子を備える中空パッケージ型の装置にも有効に使用することができる。さらに、プリント回路板においても本発明の硬化性樹脂組成物を有効に使用することができる。
【0174】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いて、電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法が最も一般的ではあるが、インジェクション成形法、圧縮成形法等の方法を用いてもよい。
【実施例】
【0175】
以下、本発明について実施例によってより具体的に説明するが、本発明の範囲は以下に示す実施例によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
〔新規樹脂の合成例〕
(合成例1)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)200g(1.07mol)及びトルエン215mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)112g(0.54mol)を約60分かけて滴下し、約6時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。
反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、188gの固体の生成物を得た。
【0176】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、エタノール及びエトキシ基は観測されなかった。IR測定の結果を図1及び2に示す。図1は原料となる2,2'−ビフェノールのIRスペクトル、図2は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図2)によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XX)の単位構造を有し、下記一般式(XXI)で示される構造の硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0177】
【化43】
【化44】
【0178】
(合成例2)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.39mol)及びトルエン79mlを投入し、100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)41g(0.20mol)を約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.50g(0.0014mol)加え、約120〜130℃で24時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を一晩にわたって室温で放置し、トルエンを100ml加えた後に、固形物をろ過し、トルエンで洗浄し、次いで乾燥することによって、49.4gの固体の生成物を得た。
【0179】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、エタノール及びエトキシ基は観測されなかった。IR測定の結果を図3及び4に示す。図3は原料となる2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)のIRスペクトル、図4は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図4)によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図3を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XXII)の単位構造を有し、下記一般式(XXIII)で示される構造の硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0180】
【化45】
【0181】
【化46】
【0182】
(合成例3)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)119g(0.64mol)及びトルエン319mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)30gを約30分かけて滴下し、約7時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除いた。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、69gの固体の生成物を得た。
【0183】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図5に示す。図5によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XX)及び/又は下記一般式(XXIV)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0184】
【化47】
【0185】
【化48】
【0186】
(合成例4)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール150g(0.81mol)及びトルエン230mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)54gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、110℃で6時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、90gの固体の生成物を得た。
【0187】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図6に示す。図6によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は一般式(XXIV)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0188】
(合成例5)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール150g(0.81mol)及びトルエン268mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)63gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、110℃で10時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、110gの固体の生成物を得た。
【0189】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図7に示す。図7によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は一般式(XXIV)でで示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0190】
(合成例6)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール150g(0.81mol)及びトルエン322mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)76gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、110℃で10時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過及び乾燥することによって、118gの固体の生成物を得た。
【0191】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物は溶け難いが、重アセトンに含まれる微量の水に分解しながら溶けると考えられる。そのような溶液の1H−NMR測定の結果によれば、メタノール及びメトキシ基は観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図8に示す。図8によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は一般式(XXIV)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0192】
(合成例7)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)(東京化成工業株式会社製試薬)180g(0.79mol)及びトルエン194mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液にテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製Mシリケート51)46gを約30分かけて滴下した。さらに溶液に、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.90g(0.0024mol)加え、120〜130℃で20時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物168gを固体として得た。
【0193】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図9)によれば、メトキシ基及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図10に示す。図10によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図3を参照)が減少していることが確認された。
以上の結果から、生成物は下記一般式(XXII)及び/又は(XXV)で示される単位構造を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0194】
【化49】
【0195】
【化50】
【0196】
(合成例8)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)156g(0.84mol)及びトルエン159mlを投入し、約100℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、溶液に1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン(アヅマックス株式会社販売試薬)95gを約90分かけて滴下し、約110℃で5時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物182gを固体として得た。
【0197】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図11)から、原料である1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサンのメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.9%であることを確認した。生成物のIR測定の結果を図12に示す。図12によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)で示される構造単位を有する硬化性樹脂を含有すると推測される。
【0198】
(合成例9)
300mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)155g(0.83mol)及びトルエン222mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にフェニルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製AY43−040)110g(0.55mol)を約60分かけて滴下し、約120〜130℃で42時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物197gを固体として得た。
【0199】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図13)から、原料であるフェニルトリメトキシシランのメトキシ基由来のシグナルが、反応開始時を基準として0.6%であることを確認した。生成物のIR測定の結果を図14に示す。図14によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0200】
(合成例10)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)195g(1.05mol)及びトルエン161mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液に3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製AY43−026)95g(0.40mol)を約50分かけて滴下し、約110〜120℃で4時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いでその残渣をテフロン(登録商標)でコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、生成物195gを固体として得た。
【0201】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図15)によれば、原料である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図16に示す。図16によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0202】
(合成例11)
500mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)100g(0.54mol)及びトルエン215mlを投入し、100℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を100℃に維持しながら、溶液にジフェニルジメトキシシラン(東レ・ダウコーニング株式会社製AZ−6183)131g(0.54mol)を約75分かけて滴下し、約100〜110℃で12時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応溶液を、一晩にわたり室温で放置し、析出した固形物をろ過、乾燥することによって、164gの固体の生成物を得た。
【0203】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図17)によれば、原料であるジフェニルジメトキシシランのメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。生成物のIR測定の結果を図18に示す。図18によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピーク(図1を参照)が消失していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)の単位構造を有し、さらに下記一般式(XXVI)で示される構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0204】
【化51】
【0205】
(合成例12)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布でを有する)107g及びトルエン140mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430) 46.6g(0.224mol)を約20分かけて滴下し、130℃で37時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物109gを得た。
【0206】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図20)によれば、原料であるテトラエトキシシランのエトキシ基、及び副生成物であるエタノール由来のシグナルは観測されなかった。IR測定の結果を図21及び図22に示す。図21は原料となる2,2'−ビフェノールのIRスペクトル、図22は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図22)によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は下記一般式(XXVII)及び/又は(XXVIII)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0207】
【化52】
【0208】
【化53】
【0209】
(合成例13)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)100g及びトルエン140mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430) 37.4g(0.180mol)を約20分かけて滴下し、130℃で16時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物99gを得た。
【0210】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図23)によれば、原料であるテトラエトキシシランのエトキシ基、及び副生成物であるエタノール由来のシグナルは観測されなかった。図24は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図24によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は(XXVIII)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0211】
(合成例14)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)100g及びトルエン192mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430) 29.9g(0.144mol)を約10分かけて滴下し、130℃で14時間にわたって反応を進行させた。その際、副生成物となるエタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物98gを得た。
【0212】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図25)によれば、原料であるテトラエトキシシランのエトキシ基、及び副生成物であるエタノール由来のシグナルは観測されなかった。図26は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図26によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は(XXVIII)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0213】
(合成例15)
300mlのセパラブルフラスコに、精製した2,2'−ビフェノール100g(0.537mol)及びトルエン152mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.50g(0.0013mol)加え、さらにメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名MTMS−A) 55.0gを約20分かけて滴下し、120℃で12時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用い約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣をテフロンコーティングした金属製容器に移して、室温まで冷却することによって、固体の生成物112gを得た。
【0214】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図27)によれば、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。図28は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図28によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XX)及び/又は(XXIV)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0215】
(合成例16)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)50g及びトルエン152mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を0.75g(0.0020mol)加え、さらにメチルトリメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名MTMS−A) 27.5gを約10分かけて滴下し、130℃で22時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用い約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物59gを得た。
【0216】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図29)によれば、原料であるメチルトリメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。図30は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図30によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は以下に示す一般式(XXIX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【化54】
【0217】
(合成例17)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)100g及びトルエン167mlを投入し、約100℃に加熱して固形成分を溶解させ溶液とした。その溶液を約100℃に維持しながら、その溶液にトリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.50g(0.0040mol)加え、さらにテトラメトキシシランの部分縮合物(多摩化学工業株式会社製製品名Mシリケート51) 39.4gを約20分かけて滴下し、110℃で17時間にわたって反応を進めた。その際、副生成物となるメタノールを、溶媒として用いたトルエンとの共沸混合物として反応系外に除去した。反応終了後、アスピレータを用いて約80℃で、反応溶液からトルエンを減圧除去し、次いで残渣を80℃で真空乾燥することによって、固体の生成物108gを得た。
【0218】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図31)によれば、原料であるテトラメトキシシランの部分縮合物のメトキシ基、及び副生成物であるメタノール由来のシグナルは観測されなかった。図32は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。図32によれば、920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークが出現していること、及び原料に由来するフェノール性水酸基のO−Hのピークが減少していることが確認された。以上の結果から、生成物は先に示した一般式(XXVII)及び/又は(XXIX)の単位構造を有する硬化性樹脂を含有していると推測される。
【0219】
(合成例18)
300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)98.3g(0.472mol)を約20分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で反応を続けた。約3時間反応を続けたところでゲル化が起こり、それ以上反応を続けることができなくなった。
【0220】
(合成例19)
合成例19では、ゲル化を抑えるために、テトラエトキシシランの比率を小さくする方法によって合成を試みた。より具体的には、以下のようにして合成を行った。300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で反応を続けた。約10時間反応を続けたところで、ゲル化が起こりそれ以上反応を続けることができなくなった。
【0221】
(合成例20)
合成例20では、ゲル化を抑えるために、未反応R2基比率を大きくする方法によって合成を試みた。より具体的には、以下のようにして合成を行った。300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で30分間にわたって反応を続けた。その後、反応生成物をテフロンコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、固体の生成物189gを得た。
【0222】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図33)によれば、テトラエトキシシランにおけるR2基数を基準として未反応のR2基数が84%であり、硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として11%であることが確認された。IR測定の結果を図34及び35に示す。図34は原料となるノボラック型フェノール樹脂のIRスペクトル、図35は本実施例で得られた生成物のIRスペクトルである。生成物のIR測定の結果(図35)によれば、1110〜1000cm−1に原料となるテトラエトキシシランに由来するSi−OR(脂肪族)に特徴的なピーク、および920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークの両方が確認された。以上の結果から、生成物はアリールオキシシリル基及びエトキシシリル基を含有すると推測される。
【0223】
(合成例21)
合成例21では、ゲル化を抑えるため、未反応R2基比率を大きくする方法によって合成を試みた。より具体的には、以下のようにして合成を行った。300mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)200gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、100℃で5時間にわたって反応を続けた。その後、反応生成物をテフロンコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することによって、固体として生成物161gを得た。
【0224】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図36)によれば、テトラエトキシシランにおけるR2基数を基準として未反応のR2基数が39%であり、硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準として5.2%であることが確認された。生成物のIR測定の結果(図37)によれば、1110〜1000cm−1に原料となるテトラエトキシシランに由来するSi−OR(脂肪族)に特徴的なピーク、および920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークの両方が確認された。以上の結果から、生成物はアリールオキシシリル基及びエトキシシリル基を含有すると推測される。
【0225】
(合成例22)
合成例22では、ゲル化を抑えるために、テトラエトキシシランの比率を小さくする方法によって合成を試みた。より具体的には以下のようにして合成を行った。500mlのセパラブルフラスコに、水酸基当量106、軟化点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名HP−850N)400gを投入し、約100℃に加熱して溶融させた。その溶融物を約100℃に維持しながら、トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物を1.00g(0.0026mol)加え、さらにテトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製LS−2430)32.8g(0.157mol)を約10分かけて滴下し、副生成物となるエタノールをアスピレータで減圧して反応系外に除去しながら、120℃で18時間にわたって反応を続けた。その後、反応生成物をテフロンコーティングした金属製容器に移し、室温まで冷却することで、固体として生成物356gを得た。
【0226】
得られた生成物の1H−NMR測定及びIR測定を行った。生成物の1H−NMR測定の結果(図38)によれば、テトラエトキシシランにおけるR2基数を基準として未反応のR2基数が8.1%であり、硬化性樹脂中に残存する揮発成分の含有量が硬化性樹脂の全重量を基準とし0.62%であることが確認された。生成物のIR測定の結果(図39)によれば、1110〜1000cm−1に原料となるテトラエトキシシランに由来するSi−OR(脂肪族)に特徴的なピーク、および920〜970cm−1にSi−OArに特徴的なピークの両方が確認された。以上の結果から、生成物はアリールオキシシリル基及びエトキシシリル基を含有すると推測される。
【0227】
なお、合成例1、3、及び8〜11で用いた2,2’−ビフェノールは、東京化成工業株式会社製の試薬であるが、イオンクロマトグラフによって陽イオン濃度及び陰イオン濃度を測定した結果、ナトリウムイオンが600ppm、カリウムイオンが380ppm、塩化物イオンが610ppm、リン酸イオンが130ppm、硝酸イオンが10ppmであった。合成例4〜6及び15で用いた2,2’−ビフェノールは、東京化成工業株式会社製の試薬を精製して用いた。精製後の陽イオン濃度及び陰イオン濃度は、ナトリウムイオンが60ppm、塩化物イオンが9.0ppmであり、それ以外の精製前に検出されたイオンは検出されなかった。2,2’−ビフェノールの具体的な精製方法について以下に説明する。
【0228】
(2,2'−ビフェノールの精製)
3000mlのセパラブルフラスコに、2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)1500g、トルエン500ml、及び蒸留水1000mlを投入し、それらを約90℃に加熱して固体成分を溶解させ溶液とした。その溶液を、約90℃に維持しながら2.5時間にわたって加熱及び攪拌した後に、一晩放置し、析出した固形物をろ過、洗浄(蒸留水1500ml)した。その固形物を、再び3000mlのセパラブルフラスコに投入し、トルエン500ml及び蒸留水1000mlを加え、約90℃に加熱して溶解させ溶液とした。その溶液を約90℃に維持しながら、2.5時間にわたって加熱及び攪拌した後、一晩放置し、析出した固形物をろ過、洗浄(蒸留水1500ml)した。得られた固形物を70℃で真空乾燥した後に、2000mlのセパラブルフラスコに投入し、500mlのトルエンを加え、加熱して溶解させ溶液とし、微量残っている水を共沸によって除去した。引き続き、その溶液を一晩放置し、析出した固形物をろ過、乾燥することによって、精製した2,2'−ビフェノールを1340g得た。
【0229】
精製前の2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)を用いた合成例1、3、及び8〜11では、触媒なしでも反応は進行した。一方、精製した2,2'−ビフェノールを用いた場合には、触媒なしで反応は進行しなかった。このことから、精製前の2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)に含まれる陽イオン及び/又は陰イオンが反応触媒として作用したと推測される。
合成例1〜22で得られた反応生成物(以下「硬化性樹脂」と称す)の各種測定の詳細は以下の通りである。
(1)1H−NMR
約10mgの硬化性樹脂を約1mlの重アセトンに溶かして溶液とし、溶液をφ5mmの試料管に入れ、ブルカーバイオスピン社製AV−300Mを用いて測定した。シフト値は溶媒に微量含まれるCHD2C(=O)CD3(2.04ppm)を基準とした。
(2)IR
Bio−Rad社製FTS 3000MXを用い、KBr法に従って測定した。
(3)イオンクロマトグラフ
乳鉢を用いて粉砕した硬化性樹脂5g及び蒸留水50gをポリプロピレン製容器に入れ、95℃で20時間加熱して調製した抽出水をろ過し、以下の方法を用いて測定した。この測定値から、先と同様にポリプロピレン製容器に蒸留水50gを入れ、95℃で20時間加熱して調製した水の測定値を差し引き、硬化性樹脂に含まれる各種イオンの値に変換し、イオン濃度とした。
(3−1)陽イオン
ガードカラム(Shim-pack IC-GC3)及び分離カラム(Shim-pack IC-C3)を装着した島津製作所製HIC−6Aイオンクロマトグラフを用いて、溶離液:1mMシュウ酸水溶液/アセトニトリル=5/1、流速:1.1ml/min、カラム温度:30℃の条件で測定した。
(3−2)陰イオン
ガードカラム(IonPac AG9-HC)及び分離カラム(IonPac AS9-HC)を装着したDIONEX社製IC20イオンクロマトグラフを用いて、溶離液:9mM炭酸ナトリウム水溶液、流速:1.0ml/min、カラム温度:30℃の条件で測定した。
(4)GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)
約3mgの樹脂を約3mlのTHFに溶解させ、ガードカラム(TOSOH TSK−guardcolumn HXL−H)、分離カラム(TOSOH TSK−GEL G200H8)及び分離カラム(TOSOH TSK−GEL G100H8)を装着した日立製作所製ポンプ(L−3300)を用いて、溶離液:THF、流速:1.0ml/min、カラム温度:30℃の条件で溶離し、日立製作所製RI検出器(L−6200)を用いて検出した。なお、「分子量」はポリスチレン標準試料の検量線に沿って算出したものである。
【0230】
〔エポキシ樹脂組成物の作製及び特性評価〕
(実施例1〜36、比較例1〜12)
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:エポキシ当量196、融点106℃のビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「YX−4000H」)
エポキシ樹脂2:エポキシ当量195、軟化点77℃のo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学株式会社製商品名「ESCN−190−6」)
エポキシ樹脂3:エポキシ当量195、軟化点62℃のo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(住友化学株式会社製商品名「ESCN−190−2」)
エポキシ樹脂4:エポキシ当量282、軟化点59℃のアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物(日本化薬株式会社製商品名「NC−3000S」)
エポキシ樹脂5:エポキシ当量168、軟化点68℃のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製商品名「EPPN−502H」)
エポキシ樹脂6:エポキシ当量168、軟化点62℃のサリチルアルデヒド型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名「1032H60」)、
エポキシ樹脂7:エポキシ当量162、軟化点93℃のナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学株式会社製商品名「EXA−4700」)
【0231】
(B)硬化剤
硬化剤1:合成例1で得た硬化性樹脂
硬化剤2:合成例3で得た硬化性樹脂
硬化剤3:合成例2で得た硬化性樹脂
硬化剤4:合成例4で得た硬化性樹脂
硬化剤5:合成例5で得た硬化性樹脂
硬化剤6:合成例6で得た硬化性樹脂
硬化剤7:合成例7で得た硬化性樹脂
硬化剤8:合成例8で得た硬化性樹脂
硬化剤9:合成例9で得た硬化性樹脂
硬化剤10:合成例10で得た硬化性樹脂
硬化剤11:合成例11で得た硬化性樹脂
硬化剤12:合成例12で得た硬化性樹脂
硬化剤13:合成例13で得た硬化性樹脂
硬化剤14:合成例14で得た硬化性樹脂
硬化剤15:合成例15で得た硬化性樹脂
硬化剤16:合成例16で得た硬化性樹脂
硬化剤17:合成例21で得た硬化性樹脂
硬化剤18:合成例22で得た硬化性樹脂
硬化剤A:水酸基当量176、軟化点70℃のフェノールアラルキル樹脂(三井化学株式会社製商品名「ミレックスXL−225」)
硬化剤B:水酸基当量93、融点108−110℃の2,2'−ビフェノール(東京化成工業株式会社製試薬)
硬化剤C:水酸基当量200、軟化点67℃のフェノールアラルキル樹脂(明和化成株式会社製商品名「MEH−7851」)
硬化剤D:水酸基当量103、軟化点86℃のサリチルアルデヒド型フェノール樹脂(明和化成株式会社製商品名「MEH−7500」)
硬化剤E:水酸基当量116、軟化点88℃のパラクレゾールノボラック(明和化成株式会社製試作品pCrノボラック、図19のGPCチャートで示される分子量分布を有する)。
硬化剤F:水酸基当量106、融点82℃のノボラック型フェノール樹脂(日立化成工業株式会社商品名「HP−850N」)
硬化剤G:合成例20で得た硬化性樹脂
【0232】
(C)硬化促進剤
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物
硬化促進剤2:トリ−n−ブチルホスフィンと1,4−ベンゾキノンとの付加反応物
【0233】
(D)無機充填剤
平均粒径17.5μm、比表面積3.8m2/gの球状溶融シリカ
(その他の各種添加剤)
カップリング剤:エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製商品名「MA−100」)
離型剤:カルナバワックス(株式会社セラリカNODA製)
【0234】
上述の成分をそれぞれ表1〜4に示す重量部で配合し、混練温度80℃、混練時間15分の条件でロール混練を行うことによって、それぞれ実施例1〜36、比較例1〜12のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0235】
【表1】
【0236】
【表2】
【0237】
【表3】
【0238】
【表4】
【0239】
次に、実施例1〜36、及び比較例1〜12によって得たそれぞれのエポキシ樹脂組成物を、以下に示す各試験によって評価した。評価結果を表5〜8に示す。なお、エポキシ樹脂組成物の成形は、トランスファー成形機を用い、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で行った。また、後硬化は175℃で6時間行った。
(1)熱時硬度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で直径50mm×厚さ3mmの円板に成形し、成形後直ちにショアD型硬度計を用いて測定した。
(2)ガラス転移温度
エポキシ樹脂組成物を上記条件で長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化した。次いで、ダイヤモンドカッターで長さ55mmに切断し、粘弾性測定装置ARES(レオメトリックサイエンティフィックエフイー株式会社製)を用い、ダイナミックモードで昇温速度5℃、周波数6.28rad/sの条件でのtanδの測定からガラス転移温度(℃)を求めた。
(3−1)高温時弾性率(240℃)
上記(2)における測定から240℃における貯蔵弾性率(108Pa)を求めた。
(3−2)高温時弾性率(270℃)
上記(2)における測定から270℃における貯蔵弾性率(108Pa)を求めた。
(4)成形収縮率
エポキシ樹脂組成物を上記条件で、長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの外形を有する6本の試験片を成形し、後硬化した。次いで、室温でノギスを用いて長さを小数点第3位まで測定し、予め測定をしておいた成形時(180℃)の金型の長さから収縮率を求めた。
(5)ボイドレス性
エポキシ樹脂組成物を上記条件でアルミ箔の上に長さ80mm×幅10mm×厚さ3mmの大きさに成形し、後硬化を行った後、アルミ接着面の膨れ及び硬化物表面のボイドについて評価した。評価では、膨れ及びボイドの少ないものは「○」、膨れ及びボイドが中程度のものは「△」、膨れ及びボイドの多いものは「×」とした。
【0240】
【表5】
【0241】
【表6】
【0242】
【表7】
【0243】
【表8】
【0244】
本発明による硬化性樹脂を硬化剤として含有する実施例1〜36は、いずれも熱時硬度、ガラス転移温度、高温弾性率及びボイドレス性に優れる。これに対して、本発明による硬化性樹脂を硬化剤として含まない比較例1〜11では、それぞれ、エポキシ樹脂及び充填材量が同じ実施例と比較して、熱時硬度、ガラス転移温度及び/又は高温弾性率の点で劣っている。比較例12は、揮発成分が多いため、ボイドレス性に劣っている。実施例のガラス転移温度はtanδのピークがブロードとなった影響で対応する比較例と比較し低くなっている場合もあるが、高温、特に270℃での弾性率については比較例よりも優れており、耐熱性に優れている。また、本発明による硬化性樹脂は、本質的に揮発成分を含まないか又は揮発成分の含有率が極めて少ないため、ボイドレス性にも優れている。よって、本発明の硬化性樹脂によれば、優れた耐熱性を発現させるとともに、硬化物におけるボイド、クラックの発生を改善することが可能であることは明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、前記硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が前記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂。
【化1】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項2】
(a)一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の前記(a)のシラン化合物におけるR2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂。
【請求項3】
前記(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその70重量%以上が2価フェノール化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂。
【請求項4】
前記(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその50重量%以上が前記(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能なフェノール化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項5】
前記(a)の少なくとも1種の化合物において、R2が水酸基又は1価のオキシ基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項6】
アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有する硬化性樹脂であって、下記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を含むことを特徴とする硬化性樹脂。
【化2】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化3】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す)
【化4】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mは1以上の整数を示す)
【化5】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、nは0以上の数を示し、mは1以上の整数を示す)
【請求項7】
前記硬化性樹脂におけるアリールオキシシリル結合の全数を基準として、上記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が30%以上であることを特徴とする請求項6に記載の硬化性樹脂。
【請求項8】
前記硬化性樹脂に存在する揮発性成分が、前記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の硬化性樹脂。
【請求項9】
下記一般式(I-4a)で示される構造を有する化合物及び下記一般式(I-4b)で示される構造部位を有する化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする硬化性樹脂。
【化6】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化7】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mはそれぞれ独立して、1以上の整数を示す)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂の製造方法であって、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする製造方法。
【化8】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項11】
前記(a)と前記(b)との反応を、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれる触媒の存在下で実施することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記触媒が、下記一般式(I-5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【化9】
(式中、R4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
R5は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
Y−は1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した基であり1以上のR5と互いに結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記(B)硬化剤が請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
さらに(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項14に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
さらに(D)無機充填剤を含有することを特徴とする請求項14又は15に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【請求項19】
請求項13に記載の硬化性樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【請求項1】
(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、前記硬化性樹脂中に残存する揮発性成分の含有量が前記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂。
【化1】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項2】
(a)一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させて得られる硬化性樹脂であって、反応開始時の前記(a)のシラン化合物におけるR2基数を基準として、未反応のR2基数が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂。
【請求項3】
前記(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその70重量%以上が2価フェノール化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の硬化性樹脂。
【請求項4】
前記(b)のフェノール化合物において、フェノール化合物の全重量を基準としてその50重量%以上が前記(a)の少なくとも1種の化合物と環化可能なフェノール化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項5】
前記(a)の少なくとも1種の化合物において、R2が水酸基又は1価のオキシ基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の硬化性樹脂。
【請求項6】
アリールオキシシリル(ArO−Si)結合を有する硬化性樹脂であって、下記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を含むことを特徴とする硬化性樹脂。
【化2】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化3】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示し、nは0以上の数を示す)
【化4】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mは1以上の整数を示す)
【化5】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、nは0以上の数を示し、mは1以上の整数を示す)
【請求項7】
前記硬化性樹脂におけるアリールオキシシリル結合の全数を基準として、上記一般式(I-2a)、(I-3a)、(I-2b)、および(I-3b)からなる群から選択される少なくとも1種の構造部位を形成するアリールオキシシリル結合が30%以上であることを特徴とする請求項6に記載の硬化性樹脂。
【請求項8】
前記硬化性樹脂に存在する揮発性成分が、前記硬化性樹脂の全重量を基準として10重量%以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の硬化性樹脂。
【請求項9】
下記一般式(I-4a)で示される構造を有する化合物及び下記一般式(I-4b)で示される構造部位を有する化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする硬化性樹脂。
【化6】
(式中、Arは、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される基を両側に有する2価の有機基を示す)
【化7】
(式中、Ar2は、炭素数2〜30を有し、芳香族性を示す環状化合物から誘導される少なくとも2つの結合部分を有する(m+2)価の有機基を示し、mはそれぞれ独立して、1以上の整数を示す)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂の製造方法であって、(a)下記一般式(I-1)で示されるシラン化合物及びその部分縮合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物と、(b)フェノール化合物とを反応させる工程を有することを特徴とする製造方法。
【化8】
(式中、nは、0〜2の数であり、
R1は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なってもよく、
R2は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜18の置換又は非置換のオキシ基、炭素数1〜18の置換又は非置換のアミノ基、及び炭素数2〜18のカルボニルオキシ基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、
R1及びR2の2以上が結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項11】
前記(a)と前記(b)との反応を、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩化合物、環状アミジン化合物、及び環状アミジニウム塩からなる群より選ばれる触媒の存在下で実施することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記触媒が、下記一般式(I-5)で示されるホスフィン化合物又はその分子間塩であることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【化9】
(式中、R4は、それぞれ独立して、水素原子及び炭素数1〜18の置換又は非置換の炭化水素基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR4が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
R5は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、及び炭素数1〜18の置換又は非置換の有機基からなる群より選ばれ、全てが同一でも異なっていてもよく、2以上のR5が互いに結合して環状構造を形成してもよく、
Y−は1以上の放出可能なプロトン(H+)を有する炭素数0〜18の有機基から1つのプロトンが脱離した基であり1以上のR5と互いに結合して環状構造を形成してもよい)
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤とを含有するエポキシ樹脂組成物であって、前記(B)硬化剤が請求項1〜9のいずれかに記載の硬化性樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項15】
さらに(C)硬化促進剤を含有することを特徴とする請求項14に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
さらに(D)無機充填剤を含有することを特徴とする請求項14又は15に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項17】
前記(A)エポキシ樹脂が、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、及びアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフタレン型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【請求項19】
請求項13に記載の硬化性樹脂組成物によって封止された素子を備えることを特徴とする電子部品装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
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【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2011−195841(P2011−195841A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131662(P2011−131662)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2007−503605(P2007−503605)の分割
【原出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2007−503605(P2007−503605)の分割
【原出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】
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