説明

昇圧電源装置

【課題】電源電圧の変動やノイズ、発熱を効果的に低減可能な昇圧電源装置の提供。
【解決手段】電源電圧VBが供給されるコイル2とグランド電位との間に直列に設けられたFET3と、コイル2とFET3との間にアノードが接続されたダイオード6のカソードとグランド電位との間の経路に直列に接続されたインジェクタ駆動用のコンデンサ5とを備え、FET3をオンしてから該FET3に流れる駆動電流Isが上側電流閾値iHまで増加するとFET3をオフし、その後コイル2からコンデンサ5に流れる充電電流Icが下側電流閾値iLまで減少するとFET3をオンする、という動作を繰り返してコンデンサ5を充電する昇圧電源装置1にて、VB又はエンジン回転数が所定値以下と判定した場合に、iHを下げiLを上げることでIsの増加範囲を縮小させる。また装置筐体の内部温度が所定値以上と判定した場合に、iHを下げてIsのピーク値を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される昇圧電源装置に関し、特に燃料噴射制御装置に用いられる昇圧電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料噴射弁(いわゆるインジェクタ)を駆動してエンジンへの燃料噴射を制御する燃料噴射制御装置には、バッテリ電圧よりも高い昇圧電圧をコンデンサに発生させる昇圧回路が備えられている。そして、この種の燃料噴射制御装置では、燃料噴射弁に内蔵された開弁用アクチュエータ(ソレノイドやピエゾアクチュエータ)へ、上記コンデンサから放電させることで、その燃料噴射弁を速やかに開弁させるようにしている。
【0003】
ここで、昇圧回路としては、一端に電源電圧としてのバッテリ電圧が供給されるコイルと、そのコイルの他端と基準電位としてのグランド電位(=0V)との間の経路上に2つの出力端子が直列に接続されたFETと、コイルの他端とFETのコイル側の出力端子とを結ぶ電流経路にアノードが接続されたダイオードと、そのダイオードのカソードとグランド電位との間の経路に直列に接続されたコンデンサとを備え、FETを繰り返しオン/オフさせて、FETのオフ時にコイルから放出されるエネルギー(フライバックエネルギー)でコンデンサを充電するものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
更に詳しく説明すると、そのような昇圧回路を制御する制御部は、「FETをオンしてから、そのFETを介してコイルに流れる駆動電流が上側電流閾値にまで増加したと判定すると、FETをオフし、その後、コイルからダイオードを介してコンデンサに流れる充電電流が下側電流閾値にまで減少したと判定すると、FETを再びオンする」という動作を繰り返すことにより、FETをオン/オフさせ、コンデンサの充電電圧が目標電圧になればFETのオン/オフ(即ち、コンデンサの充電)を停止する。
【特許文献1】特開2001−15332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の昇圧回路において、スイッチング素子としてのFETには、駆動電流として、下側電流閾値から上側電流閾値までの範囲の電流が流れることとなるが、その各電流閾値(延いては、FETのオン時において駆動電流が増加する範囲)は、エンジンの制御に必要な最大の昇圧能力(充電能力)を満たす値に設定されている。尚、駆動電流の増加範囲が大きいほど、コイルに蓄積されるエネルギーが大きくなるため、昇圧能力が大きくなる。また、コイルへの電源電圧は、FETに流れる駆動電流の増加に伴って低下するため、その駆動電流の増加範囲が大きいほど、電源電圧を過渡的に大きく変動させることとなる。
【0006】
このため、エンジンの低回転時など、大きな昇圧能力が必要とされない場合には、FETに流れる駆動電流の増加範囲が必要以上のものとなり、その結果、コイルへの電源電圧が必要以上に変動したり、その電源電圧に無視できないレベルのノイズを発生させてしてしまう可能性がある。
【0007】
そして、一般に、コイルへの電源電圧は、昇圧回路が搭載される燃料噴射制御装置や他の各種装置の作動用電源としても用いられるため、その電源電圧に生じる変動やノイズは、それら各装置に影響を及ぼす可能性がある。また、電源電圧のノイズは、車両に搭載されている各装置への放射ノイズ源にもなる。
【0008】
更に、エンジンの始動時やバッテリが劣化した低電圧時において、電源電圧としてのバッテリ電圧が過渡的に大きく減少方向へ変動すると、各装置が正常に作動できなくなり、延いては、規定の最低作動電圧を確保できなくなる可能性がある。
【0009】
そして、そのような電源電圧の過渡的な低下を回避するためには、燃料噴射制御装置において、昇圧回路のコイルに電源電圧を供給する電源ラインに、インダクタ及びコンデンサからなるフィルタ回路を設けると共に、そのフィルタ回路のインダクタやコンデンサを大型化する(定数が大きいものにする)必要があるため、装置のコスト増加を招いてしまう。
【0010】
また、従来の昇圧回路では、常に大きな駆動電流をFETに流すこととなるため、FETから必要以上の熱が発生してしまうという問題もある。
そこで、本発明は、電源電圧の変動やノイズ、発熱を効果的に低減可能な昇圧電源装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の昇圧電源装置は、一端に電源電圧が供給されるコイルと、そのコイルの他端と電源電圧よりも低い基準電位との間の経路上に、2つの出力端子が直列に接続され、オンすることでコイルに駆動電流を流すスイッチング素子と、スイッチング素子がオンからオフされたときにコイルから放出されるエネルギーにより充電されるコンデンサと、スイッチング素子をオン/オフさせることでコンデンサの充電電圧を電源電圧よりも高い目標電圧にする充電制御手段とを備えている。そして、コンデンサの充電電荷は、車両のエンジンへの燃料噴射タイミングが到来する毎に、燃料噴射弁を開弁させるためのアクチュエータへ該アクチュエータの駆動電力として放電されるようになっている。
【0012】
そして特に、請求項1の昇圧電源装置には、スイッチング素子のオン時における前記駆動電流の増加範囲を変更する変更手段が備えられている。
このため、例えば、昇圧能力よりも電源電圧の低下抑制を優先すべき状況が発生したと判定した場合に、変更手段に駆動電流の増加範囲を縮小させるようにすれば、電源電圧の過度の低下(具体的には、その電源電圧を作動用電源としている装置が作動不能になるような低下)を防ぐことができる。また、昇圧能力が低くても良い状況になればなるほど、変更手段に駆動電流の増加範囲を小さくさせるようにしたり、昇圧能力が低くても良い状況になったと判定した場合に、変更手段に駆動電流の増加範囲を縮小させるようにすれば、電源電圧の必要以上の変動やノイズの発生を防止することができる。
【0013】
ここで、昇圧能力よりも電源電圧の低下抑制を優先すべき状況としては、例えば電源電圧が所定値以下に低下したという状況が考えられる。
そこで、請求項2の昇圧電源装置では、請求項1の昇圧電源装置において、電源電圧が所定値以下に低下したと判定した場合に、変更手段に駆動電流の増加範囲を縮小させる変更制御手段を設けている。
【0014】
この構成によれば、電源電圧が所定値以下になった場合に、その電源電圧がスイッチング素子のオンによる駆動電流の増加に伴い過渡的に大きく低下して、その電源電圧を作動用電源とする装置の正常作動可能な最低値を下回ってしまう、といった不具合を防止することができる。このため、例えばエンジン始動時等における装置の最低作動電圧を低くすることができる。
【0015】
また、昇圧能力が低くても良い状況としては、エンジン回転数(エンジンの回転数)が低い場合が考えられる。エンジン回転数が低ければ、燃料噴射弁の駆動間隔が長くなり、コンデンサの放電頻度が小さくなるためである。
【0016】
そこで、請求項3の昇圧電源装置では、請求項1の昇圧電源装置において、エンジンの回転数に応じて、変更手段に駆動電流の増加範囲を変更させる変更制御手段を設けている。例えば、変更制御手段は、エンジン回転数が低いほど変更手段に駆動電流の増加範囲を小さくさせるように構成することができる。また、変更制御手段は、請求項4に記載の如く、エンジン回転数が所定値以下であると判定した場合に、変更手段に駆動電流の増加範囲を縮小させるように構成することもできる。
【0017】
そして、このような請求項3,4の昇圧電源装置によれば、エンジン回転数が低い場合に、電源電圧に必要以上の変動が生じたりノイズが発生してしまうことを防止することができる。特に、エンジン回転数が低い場合には、概して車室内が静かであるため、車載音響機器からの音にノイズの影響が現れると気になりやすいが、そのような不具合を防止することができる。また特に、請求項4の昇圧電源装置によれば、駆動電流の増加範囲を縮小するかしないかの切り替えを行うだけで良いため、構成を簡単なものにすることができる。
【0018】
ところで、燃料噴射制御のなかには、エンジン回転数が低くても、エンジンの出力を大きくする必要がある場合(登坂走行時など)には、各気筒へ燃料を噴射すべき行程において、燃料を複数回噴射して出力アップを図るものがある。そして、そのような複数回噴射が実施される場合に、スイッチング素子がコイルに流す駆動電流の増加範囲を小さくすると、コンデンサの充電能力が低下するため、燃料噴射弁の駆動に必要な充電電荷が十分に得られなくなる可能性がある。
【0019】
そこで、請求項5の昇圧電源装置では、請求項4の昇圧電源装置において、変更制御手段は、エンジン回転数が所定値以下で、且つ、燃料噴射弁の駆動間隔が所定値以上であると判定した場合に、変更手段に駆動電流の増加範囲を縮小させるようにしている。そして、この構成によれば、エンジン回転数が所定値以下の場合でも、燃料噴射弁の駆動間隔が所定値以上でなければ、駆動電流の増加範囲が縮小されないため、燃料噴射弁の駆動に必要な充電電荷が得られなくなることを回避することができる。
【0020】
一方、例えば、変更手段は、充電制御手段がスイッチング素子をオンさせる時間(オン時間)を変えることで、駆動電流の増加範囲を変えるように構成することができる。
また、変更手段は、請求項6に記載のように構成することもできる。
【0021】
まず、請求項6の昇圧電源装置では、請求項1〜5の昇圧電源装置において、コイルの他端(電源電圧側とは反対側の端)とスイッチング素子のコイル側の出力端子とを結ぶ電流経路にアノードが接続されたダイオードを備えると共に、コンデンサは、そのダイオードのカソードと基準電位との間の経路に直列に接続されている。
【0022】
そして、充電制御手段は、スイッチング素子をオンしてから駆動電流が上側電流閾値iHにまで増加したと判定するとスイッチング素子をオフし、その後、コイルからダイオードを介してコンデンサに流れる充電電流が下側電流閾値iL(<iH)にまで減少したと判定するとスイッチング素子をオンする、という動作を繰り返すことにより、スイッチング素子をオン/オフさせるようになっている。
【0023】
そして更に、変更手段は、充電制御手段がスイッチング素子をオン/オフさせるのに用いる上側電流閾値iHと下側電流閾値iLとの両方又は一方を変更することにより、駆動電流の増加範囲を変更するようになっている。
【0024】
このような請求項6の昇圧電源装置によれば、下側電流閾値iLから上側電流閾値iHまでの範囲が、駆動電流の増加範囲となり、その増加範囲を正確に可変制御できるため有利である。
【0025】
また、請求項6の昇圧電源装置の更に具体的な構成例としては、請求項7又は8に記載のものが考えられる。
まず、請求項7,8の昇圧電源装置は、請求項6の昇圧電源装置において、充電制御手段は、駆動電流に比例した電圧である駆動電流相当電圧と、充電電流に比例した電圧である充電電流相当電圧とを出力する電流検出手段を備えていると共に、駆動電流相当電圧と上側電流閾値iHに相当する上側閾値電圧ViHとを大小比較することで、駆動電流が上側電流閾値iHにまで増加したか否かを判定し、充電電流相当電圧と下側電流閾値iLに相当する下側閾値電圧ViLとを大小比較することで、充電電流が下側電流閾値iLにまで減少したか否かを判定するようになっている。
【0026】
そして、請求項7の昇圧電源装置では、変更手段が、上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの両方又は一方を変更するようになっており、その変更対象の電圧(ViHとViLとの両方又は一方)を可変出力するための手段として、一定電圧と基準電位との間に直列に接続された複数の抵抗と、その各抵抗の端部のうちの何れか一つを選択し、その選択した端部の電圧を変更対象の電圧として出力する選択手段とを備えている。このため、選択手段に選択させる抵抗の端部を切り替えることで、出力電圧が切り替わることとなる。この構成によれば、上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの両方又は一方を、予め決められた電圧(即ち、上記各抵抗の端部の電圧)のうちの何れかに切り替えることができる。そして、構成が比較的簡単な点で有利である。
【0027】
また、請求項8の昇圧電源装置においても、変更手段は、上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの両方又は一方を変更するようになっているが、その変更対象の電圧(ViHとViLとの両方又は一方)を可変出力するための手段として、D/A変換器を備えている。このため、D/A変換器にデジタルデータを与えることで、出力電圧を任意の値に変更することができる。この構成によれば、上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの両方又は一方を、細かく変更することができるという点で有利である。
【0028】
一方、請求項9の昇圧電源装置も、一端に電源電圧が供給されるコイルと、そのコイルの他端と電源電圧よりも低い基準電位との間の経路上に、2つの出力端子が直列に接続され、オンすることでコイルに駆動電流を流すスイッチング素子と、スイッチング素子がオンからオフされたときにコイルから放出されるエネルギーにより充電されるコンデンサと、スイッチング素子をオン/オフさせることでコンデンサの充電電圧を電源電圧よりも高い目標電圧にする充電制御手段とを備えている。そして、コンデンサの充電電荷は、車両のエンジンへの燃料噴射タイミングが到来する毎に、燃料噴射弁を開弁させるためのアクチュエータへ該アクチュエータの駆動電力として放電されるようになっている。
【0029】
そして特に、請求項9の昇圧電源装置には、スイッチング素子のオン時における前記駆動電流のピーク値を変更する変更手段が備えられている。
このため、例えば、昇圧能力よりもスイッチング素子の発熱抑制を優先すべき状況が発生したと判定した場合に、変更手段に駆動電流のピーク値を低下させるようにすれば、スイッチング素子の過熱を防止することができる。
【0030】
ここで、昇圧能力よりもスイッチング素子の発熱抑制を優先すべき状況としては、例えば、当該昇圧電源装置が収納された筐体の内部又は周囲の温度が所定値以上になったという状況が考えられる。
【0031】
そこで、請求項10の昇圧電源装置では、請求項9の昇圧電源装置において、当該昇圧電源装置が収納された筐体の内部又は周囲の温度が所定値以上であると判定した場合に、変更手段に駆動電流のピーク値を低下させる変更制御手段を設けている。
【0032】
この構成によれば、筐体の内部又は周囲の温度が所定値以上になった場合に、スイッチング素子の発熱が抑制され、筐体内の温度上昇を抑制することができる。このため、筐体内の他の回路や素子が過熱によって作動不能になったり故障してしまったりすることを防止することができる。
【0033】
特に、この種の昇圧電源装置が設けられる燃料噴射制御装置では、制御部としてのマイコンが、筐体内部の異常高温を検知すると、それ以上の高温化が進んで作動不能とならないようにするために、エンジンの回転数や出力を低下させて最低限の車両走行能力を確保する退避運転モードに移行するように構成することが考えられるが、請求項10の昇圧電源装置によれば、筐体内の温度上昇を抑制できるため、マイコンによる上記退避運転モードの制御を確実に実現させることができるようになる。
【0034】
一方、請求項9,10の昇圧電源装置において、変更手段は、例えば、充電制御手段がスイッチング素子をオンさせる時間(オン時間)を変えることで、駆動電流のピーク値を変えるように構成することができる。オン時間が長くなるほど、駆動電流のピーク値は大きくなるからである。
【0035】
また、変更手段は、請求項11に記載のように構成することもできる。
まず、請求項11の昇圧電源装置では、請求項9又は10の昇圧電源装置において、コイルの他端(電源電圧側とは反対側の端)とスイッチング素子のコイル側の出力端子とを結ぶ電流経路にアノードが接続されたダイオードを備えると共に、コンデンサは、そのダイオードのカソードと基準電位との間の経路に直列に接続されている。
【0036】
そして、充電制御手段は、スイッチング素子をオンしてから駆動電流が上側電流閾値iHにまで増加したと判定するとスイッチング素子をオフし、その後、コイルからダイオードを介してコンデンサに流れる充電電流が下側電流閾値iLにまで減少したと判定するとスイッチング素子をオンする、という動作を繰り返すことにより、スイッチング素子をオン/オフさせるようになっている。
【0037】
そして更に、変更手段は、上側電流閾値iHを変更することにより、駆動電流のピーク値を変更するようになっている。
このような請求項11の昇圧電源装置によれば、上側電流閾値iHが駆動電流のピーク値となり、そのピーク値を正確に可変制御できるため有利である。
【0038】
また、請求項11の昇圧電源装置の更に具体的な構成例としては、請求項12又は13に記載のものが考えられる。
まず、請求項12,13の昇圧電源装置は、請求項11の昇圧電源装置において、充電制御手段は、駆動電流に比例した電圧である駆動電流相当電圧と、充電電流に比例した電圧である充電電流相当電圧とを出力する電流検出手段を備えていると共に、駆動電流相当電圧と上側電流閾値iHに相当する上側閾値電圧ViHとを大小比較することで、駆動電流が上側電流閾値iHにまで増加したか否かを判定し、充電電流相当電圧と下側電流閾値iLに相当する下側閾値電圧ViLとを大小比較することで、充電電流が下側電流閾値iLにまで減少したか否かを判定するようになっている。
【0039】
そして、請求項12の昇圧電源装置では、変更手段が、上側閾値電圧ViHを変更するようになっており、その上側閾値電圧ViHを可変出力するための手段として、一定電圧と基準電位との間に直列に接続された複数の抵抗と、その各抵抗の端部のうちの何れか一つを選択し、その選択した端部の電圧を上側閾値電圧ViHとして出力する選択手段とを備えている。このため、選択手段に選択させる抵抗の端部を切り替えることで、上側閾値電圧ViHが切り替わることとなる。この構成によれば、上側閾値電圧ViHを、予め決められた電圧(即ち、上記各抵抗の端部の電圧)のうちの何れかに切り替えることができる。そして、構成が比較的簡単な点で有利である。
【0040】
また、請求項13の昇圧電源装置においても、変更手段は、上側閾値電圧ViHを変更するようになっているが、その上側閾値電圧ViHを可変出力するための手段として、D/A変換器を備えている。このため、D/A変換器にデジタルデータを与えることで、上側閾値電圧ViHを任意の値に変更することができる。この構成によれば、上側閾値電圧ViHを、細かく変更することができるという点で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に、本発明が適用された実施形態の昇圧電源装置について説明する。尚、本実施形態の昇圧電源装置は、車両のエンジンを制御するエンジン制御装置(燃料噴射制御装置に相当)の一部を成すものであり、そのエンジン制御装置にて燃料噴射弁としてのインジェクタを開弁駆動するための高電圧を生成するものである。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の昇圧電源装置1の構成を表す構成図である。
【0042】
図1に示すように、昇圧電源装置1は、昇圧用のコイル(インダクタ)2と、昇圧用のスイッチング素子であるFET(本実施形態では、NチャネルMOSFET)3と、電流検出用の抵抗4と、インジェクタを駆動するための電荷が蓄えられる充電対象のコンデンサ5と、ダイオード6とからなる昇圧回路7を備えている。
【0043】
コイル2の一端には、インダクタ8及びコンデンサ9からなるフィルタ回路10を介して、電源電圧としてのバッテリ電圧(車載バッテリの電圧)VBが供給され、そのコイル2の他端がFET3の一方の出力端子(ドレイン)に接続されている。そして、FET3の他方の出力端子(ソース)とグランドライン(グランド電位のライン)との間に、電流検出用の抵抗4が接続されている。
【0044】
また、コイル2とFET3との間の経路にダイオード6のアノードが接続されており、そのダイオード6のカソードに、コンデンサ5の一端(正極側)が接続されている。そして、コンデンサ5の他端(負極側)は、FET3のソースと共に、上記抵抗4を介してグランドラインに接続されている。
【0045】
このような昇圧回路7においては、FET3がオンすると、そのFET3及び抵抗4を介してコイル2に駆動電流Isが流れる。そして、その後、FET3がオフすると、コイル2とFET3との接続点に、バッテリ電圧VBよりも高いフライバック電圧(逆起電圧)が発生し、「コイル2→ダイオード6→コンデンサ5→抵抗4→グランドライン」の経路でコンデンサ5に充電電流Icが流れることにより、FET3のオン時にコイル2に蓄積されたエネルギーが放出されて、コンデンサ5が充電される。このため、FET3のオン/オフが繰り返されることで、コンデンサ5の充電電圧が段階的に増加していくこととなる。
【0046】
更に、昇圧電源装置1には、昇圧回路7を制御するために、増幅回路11と、比較器12と、アンド回路13と、駆動回路14と、閾値切替回路15と、充電制御回路16と、マイコン(以下、CPUという)17とが設けられている。尚、CPU17は、昇圧回路7の制御に関する処理だけでなく、エンジンを制御するための様々な処理を行う。
【0047】
ここで、増幅回路11は、抵抗4のFET3側の端部に生じる電圧を増幅して出力する。よって、増幅回路11の出力電圧Vmは、抵抗4に流れる電流に比例した電圧となり、特に、FET3がオンしている場合には、駆動電流Isに比例した電圧(駆動電流相当電圧)となり、FET3がオフしている場合には、充電電流Icに比例した電圧(充電電流相当電圧)となる。
【0048】
比較器12は、増幅回路11の出力電圧Vmと、閾値切替回路15から後述するように出力される閾値電圧Vithとを比較し、「Vith≧Vm」ならば出力をハイにし、「Vith<Vm」ならば出力をローにする。
【0049】
アンド回路13は、比較器12の出力と、充電制御回路16から出力されるハイアクティブの充電許可信号との論理積信号を駆動回路14に出力する。
そして、駆動回路14は、アンド回路13の出力がハイならばFET3をオンさせ、アンド回路13の出力がローならばFET3をオフさせる。
【0050】
充電制御回路16は、コンデンサ5の充電電圧VC(正極側の電圧)をモニタし、その充電電圧VCがバッテリ電圧VBよりも高い目標電圧(例えば200V)に達しておらず、且つ、コンデンサ5がインジェクタの駆動のために放電されない非放電期間であると判定している場合に、アンド回路13への充電許可信号をハイにする。
【0051】
尚、非放電期間か否かは、例えば、CPU17から図示しないインジェクタ駆動用回路へ出力される駆動信号(噴射指令信号とも呼ばれる)が非アクティブレベルか否かで判断する。つまり、その駆動信号が非アクティブレベルであってインジェクタが駆動されない期間中は、コンデンサ5は放電されないからである。また、コンデンサ5の正極側は、上記インジェクタ駆動用回路の一部を成す放電スイッチとしてのFET18を介して、インジェクタの開弁用アクチュエータであるソレノイドのコイルに接続されるようになっている。そして、そのFET18がオンされることで、コンデンサ5からインジェクタのコイルに放電され、その放電電流によりインジェクタが開弁を開始する。尚、こうしたインジェクタ駆動用回路の構成については、例えば特許文献1等に記載されているため説明を省略する。
【0052】
閾値切替回路15は、比較器12の出力がハイの場合に、比較器12への閾値電圧Vithとして、FET3のオン時にコイル2に流す駆動電流Isの上限値である上側電流閾値iHに相当する上側閾値電圧ViHを出力し、比較器12の出力がローの場合には、閾値電圧Vithとして、FET3のオフ時にコンデンサ5に流れる充電電流Icの下限値である下側電流閾値iLに相当する下側閾値電圧ViLを出力する。尚、上側閾値電圧ViHは、上側電流閾値iHの電流が抵抗4に流れたときの、増幅回路11の出力電圧Vmと同じ値であり、下側閾値電圧ViLは、下側電流閾値iLの電流が抵抗4に流れたときの、増幅回路11の出力電圧Vmと同じ値である。また、上側電流閾値iHは、下側電流閾値iLよりも大きいため、上側閾値電圧ViHも、下側閾値電圧ViLより大きい。
【0053】
そして更に、閾値切替回路15は、上側閾値電圧ViHとして、第1上側電流閾値iH1に相当する第1上側閾値電圧ViH1と、第2上側電流閾値iH2に相当する第2上側閾値電圧ViH2との、2通りの電圧を切り替えて出力するようになっており、同様に、下側閾値電圧ViLとして、第1下側電流閾値iL1に相当する第1下側閾値電圧ViL1と、第2下側電流閾値iL2に相当する第2下側閾値電圧ViL2との、2通りの電圧を切り替えて出力するようになっている。
【0054】
尚、本実施形態において、各電流閾値の大小関係は、「iH1>iH2>iL2>iL1」であるため、各閾値電圧の大小関係は、「ViH1>ViH2>ViL2>ViL1」である(図4参照)。また、第1下側電流閾値iL1は0Aであるため、それに相当する第1下側閾値電圧ViL1は0Vである。
【0055】
そこで次に、閾値切替回路15の具体的構成を図2に示す。
図2に示すように、閾値切替回路15は、当該昇圧電源装置1を備えたエンジン制御装置内でバッテリ電圧VBから生成される一定電圧VPとグランドラインとの間に直列に接続された4つの抵抗21,22,23,24と、切替スイッチ25,26,27と、レジスタ28,29とを備えている。
【0056】
切替スイッチ25は、抵抗21の抵抗22側の端部と、抵抗22の抵抗23側の端部とのうち、レジスタ28に記憶された上側閾値切替情報が示す方を選択し、その選択した端部の電圧を上側閾値電圧ViHとして出力する。そして、レジスタ28には、CPU17によって上側閾値切替情報が書き込まれる。尚、その上側閾値切替情報は、例えば1ビットデータである。
【0057】
切替スイッチ26は、抵抗23の抵抗24側の端部と、抵抗24のグランドライン側の端部とのうち、レジスタ29に記憶された下側閾値切替情報が示す方を選択し、その選択した端部の電圧を下側閾値電圧ViLとして出力する。そして、レジスタ29には、CPU17によって下側閾値切替情報が書き込まれる。尚、その下側閾値切替情報も、例えば1ビットデータである。
【0058】
切替スイッチ27は、比較器12の出力がハイの場合に、切替スイッチ25から出力される上側閾値電圧ViH(ViH1又はViH2)を、比較器12へ閾値電圧Vithとして出力し、比較器12の出力がローの場合には、切替スイッチ26から出力される下側閾値電圧ViL(ViL1又はViL2)を、比較器12へ閾値電圧Vithとして出力する。
【0059】
そして、本実施形態においては、抵抗21の抵抗22側の端部の電圧が第1上側閾値電圧ViH1で、抵抗22の抵抗23側の端部の電圧が第2上側閾値電圧ViH2で、抵抗24のグランドライン側の端部の電圧(即ちグランドラインの電圧(=0V))が第1下側閾値電圧ViL1で、抵抗23の抵抗24側の端部の電圧が第2下側閾値電圧ViL2である。
【0060】
一方、図1に示すように、昇圧電源装置1では、バッテリ電圧VBが抵抗31,32によって分圧され、その分圧された電圧(分圧電圧)がCPU17に入力される。そして、CPU17は、その分圧電圧をA/D変換することで、バッテリ電圧VBを検出するようになっている。
【0061】
次に、CPU17が、昇圧回路7における上側電流閾値iH及び下側電流閾値iLをバッテリ電圧VBに応じて切り替えるために実行する電流閾値切替処理について、図3を用い説明する。
【0062】
図3に示すように、CPU17が電流閾値切替処理を開始すると、まずS110にて、電流閾値切替電圧VTHを、VTHHとVTHLのうち、低い方のVTHLに初期設定する。尚、電流閾値切替電圧VTHは、電流閾値を切り替えるか否かを決めるバッテリ電圧VBの閾値である。
【0063】
次に、S120にて、バッテリ電圧VBを検出し、そのバッテリ電圧VBが電流閾値切替電圧VTH以下であるか否かを判定する。そして、バッテリ電圧VBが電流閾値切替電圧VTH以下でなければ、S130に進む。
【0064】
S130では、上側電流閾値iHを第1上側電流閾値iH1に設定すると共に、下側電流閾値iLを第1下側電流閾値iL1に設定する。
具体的には、閾値切替回路15のレジスタ28に、抵抗21の抵抗22側の端部を示す上側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から上側閾値電圧ViHとして第1上側電流閾値iH1に相当する第1上側閾値電圧ViH1が出力されるようにする。更に、閾値切替回路15のレジスタ29に、抵抗24のグランドライン側の端部を示す下側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から下側閾値電圧ViLとして第1下側電流閾値iL1に相当する第1下側閾値電圧ViL1が出力されるようにする。
【0065】
そして、次のS140にて、電流閾値切替電圧VTHを、低い方のVTHLに設定する処理を行い、その後、S120に戻る。
また、S120にて、バッテリ電圧VBが電流閾値切替電圧VTH以下であると判定した場合には、S150に移行する。
【0066】
そして、S150では、上側電流閾値iHを第2上側電流閾値iH2に設定すると共に、下側電流閾値iLを第2下側電流閾値iL2に設定する。
具体的には、閾値切替回路15のレジスタ28に、抵抗22の抵抗23側の端部を示す上側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から上側閾値電圧ViHとして第2上側電流閾値iH2に相当する第2上側閾値電圧ViH2が出力されるようにする。更に、閾値切替回路15のレジスタ29に、抵抗23の抵抗24側の端部を示す下側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から下側閾値電圧ViLとして第2下側電流閾値iL2に相当する第2下側閾値電圧ViL2が出力されるようにする。
【0067】
そして、次のS160にて、電流閾値切替電圧VTHを、高い方のVTHHに設定する処理を行い、その後、S120に戻る。
次に、以上のような第1実施形態の昇圧電源装置1の作用及び効果について説明する。
【0068】
まず、分かりやすくするために、閾値切替回路15から比較器12への上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの各々が常に一定であって、昇圧回路7における上側電流閾値iHと下側電流閾値iLとの各々が変更されないものとして説明する。
【0069】
(1)コンデンサ5への充電実施条件が成立しておらず、充電制御回路16からアンド回路13への充電許可信号がローの場合には、FET3がオフしたままになる。そして、この状態において、増幅回路11の出力電圧Vmは0Vになるため、比較器12の出力がハイになり、閾値切替回路15から比較器12への閾値電圧Vithは、上側電流閾値iHに相当する上側閾値電圧ViHとなる。
【0070】
(2)そして、コンデンサ5への充電実施条件が成立して、充電制御回路16からアンド回路13への充電許可信号がローからハイになると、FET3がオンする。
(3)FET3がオンした後、そのFET3を介してコイル2に流れる駆動電流Isが上側電流閾値iHにまで増加すると、比較器12の出力がハイからローになって、FET3がオフすると共に、閾値切替回路15から比較器12への閾値電圧Vithが、下側電流閾値iLに相当する下側閾値電圧ViLとなる。更に、FET3がオフしたことにより、コイル2からエネルギーが放出されてコンデンサ5が充電される。
【0071】
(4)その後、コンデンサ5に流れる充電電流Icが下側電流閾値iLにまで減少すると、比較器12の出力がローからハイになって、再びFET3がオンすると共に、閾値切替回路15から比較器12への閾値電圧Vithが上側閾値電圧ViHとなる。
【0072】
そして、上記(3),(4)の動作が繰り返されることにより、コンデンサ5が段階的に充電され、コンデンサ5の充電電圧VCが目標電圧に達して充電実施条件が成立しなくなると、上記(1)の状態に戻る。
【0073】
ここで特に、本実施形態の昇圧電源装置1では、図4に示すように、電源電圧としてのバッテリ電圧VBがVTHLよりも高ければ、図3におけるS130の処理により、上側電流閾値iHが第1上側電流閾値iH1に設定されると共に、下側電流閾値iLが第1下側電流閾値iL1に設定される。そして、バッテリ電圧VBがVTHL以下になると、その後、バッテリ電圧VBがVTHHよりも高くなるまでは、図3におけるS150の処理により、上側電流閾値iHが第2上側電流閾値iH2に設定されると共に、下側電流閾値iLが第2下側電流閾値iL2に設定され、これにより、FET3のオン時における駆動電流Isの増加範囲が縮小される。尚、図4及び図4と同様の後述する他のタイムチャートにおいては、駆動電流Isが斜めに上昇している期間が、FET3のオン期間である。
【0074】
このため、バッテリ電圧VBがVTHL以下に低下して、昇圧能力よりもバッテリ電圧VBの低下抑制を優先すべき状況になった場合には、駆動電流Isの増加範囲が、それまでのiL1からiH1までの範囲から、iL2からiH2までの範囲に縮小されることとなり、その結果、バッテリ電圧VBの過度の低下を防ぐことができる。具体的には、バッテリ電圧VBが、FET3のオンによる駆動電流Isの増加に伴い過渡的に大きく低下して、そのバッテリ電圧VBを作動用電源とする装置の正常作動可能な最低値を下回ってしまう、といった不具合を防止することができる。
【0075】
具体的には、図5に示すように、もし、上側電流閾値iHと下側電流閾値iLとの各々が、iH1とiL1とに固定されているとすると、エンジンの始動やバッテリの劣化によってバッテリ電圧VBが低下した場合にも、FET3のオンによって駆動電流Isが大きく増加するため、低下したバッテリ電圧VBが更に大きく過渡的に低下することとなる。そして、バッテリ電圧VBは、エンジン制御装置や他の装置の作動用電源として使用されているため、そのバッテリ電圧VBが、例えばエンジン制御装置の内部にてCPU17がリセットされることとなるリセット電圧を下回ると、エンジン制御装置の正常作動を継続することができなくなってしまう。
【0076】
これに対して、本実施形態の昇圧電源装置1によれば、図4に示すように、バッテリ電圧VBがリセット電圧を下回ってしまうことを回避することができるのである。
また、図1におけるフィルタ回路10は、エンジン制御装置の内部や他の装置へのバッテリ電圧VBがFET3のオン/オフによって過度に変動しないように設けられているが、本実施形態の昇圧電源装置1によれば、そのフィルタ回路10のインダクタ8やコンデンサ9として、定数が大きいものを用いなくても、バッテリ電圧VBがリセット電圧を下回ってしまうことを回避することが可能となり、延いては、エンジン制御装置の小型化とコスト低減とを達成することができる。
【0077】
尚、本実施形態では、抵抗4、増幅回路11、比較器12、アンド回路13、駆動回路14、閾値切替回路15、及び充電制御回路16が充電制御手段に相当し、そのうち、抵抗4と増幅回路11が電流検出手段に相当している。そして、閾値切替回路15における抵抗21〜24、切替スイッチ25,25、及びレジスタ28,29が変更手段に相当し、CPU17が実行する図3の処理が変更制御手段に相当している。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の昇圧電源装置について説明する。尚、符号は、第1実施形態と同じものを用いる。
【0078】
第2実施形態の昇圧電源装置1は、第1実施形態と比較すると、CPU17が、図3の電流閾値切替処理に代えて、図6の電流閾値切替処理を実行する点が異なっている。そして、図6の電流閾値切替処理は、昇圧回路7における上側電流閾値iH及び下側電流閾値iLをエンジン回転数に応じて切り替えるための処理である。
【0079】
図6に示すように、CPU17が電流閾値切替処理を開始すると、まずS210にて、電流閾値切替回転数RPMTHを、RPMTHHとRPMTHLのうち、高い方のRPMTHHに初期設定する。尚、電流閾値切替回転数RPMTHは、電流閾値を切り替えるか否かを決めるエンジン回転数の閾値である。また、RPMTHHとRPMTHLは、両方共に、アイドル回転数よりは高い値に設定されている(図7参照)。
【0080】
次に、S220にて、エンジン回転数を検出し、そのエンジン回転数が電流閾値切替回転数RPMTH以下であるか否かを判定する。尚、エンジン回転数は、周知のクランクセンサ(図示省略)からのパルス信号に基づいて検出される。
【0081】
そして、エンジン回転数が電流閾値切替回転数RPMTH以下であれば、S250に進んで、図3のS150と同様に、上側電流閾値iHを第2上側電流閾値iH2に設定すると共に、下側電流閾値iLを第2下側電流閾値iL2に設定する。
【0082】
そして、次のS260にて、電流閾値切替回転数RPMTHを、高い方のRPMTHHに設定する処理を行い、その後、S220に戻る。
また、S220にて、エンジン回転数が電流閾値切替回転数RPMTH以下ではないと判定した場合には、S230に移行して、図3のS130と同様に、上側電流閾値iHを第1上側電流閾値iH1に設定すると共に、下側電流閾値iLを第1下側電流閾値iL1に設定する。
【0083】
そして、次のS240にて、電流閾値切替回転数RPMTHを、低い方のRPMTHLに設定する処理を行い、その後、S220に戻る。
次に、以上のような第2実施形態の昇圧電源装置1の作用及び効果について説明する。
【0084】
図7に示すように、第2実施形態の昇圧電源装置1では、電流閾値切替回転数RPMTHが、最初、高い方のRPMTHHに初期設定される。そして、エンジンが始動して、エンジン回転数が未だRPMTHH以下である場合には、図6におけるS250の処理により、上側電流閾値iHが第2上側電流閾値iH2に設定されると共に、下側電流閾値iLが第2下側電流閾値iL2に設定され、これにより、FET3のオン時における駆動電流Isの増加範囲が縮小される。
【0085】
そして、エンジン回転数が上昇してRPMTHHを超えると、その時点からエンジン回転数がRPMTHL以下になるまでは、図6におけるS230の処理により、上側電流閾値iHが第1上側電流閾値iH1に設定されると共に、下側電流閾値iLが第1下側電流閾値iL1に設定され、これにより、FET3のオン時における駆動電流Isの増加範囲が、最大の昇圧能力が得られる本来の範囲に拡大される。
【0086】
その後は、エンジン回転数がRPMTHL以下になると、図6におけるS250の処理により、上側電流閾値iHが第2上側電流閾値iH2に設定されると共に、下側電流閾値iLが第2下側電流閾値iL2に設定され、エンジン回転数がRPMTHHよりも高くなると、図6におけるS230の処理により、上側電流閾値iHが第1上側電流閾値iH1に設定されると共に、下側電流閾値iLが第1下側電流閾値iL1に設定されることとなる。
【0087】
このため、エンジンが始動してからエンジン回転数がRPMTHHを超えるまでの間と、エンジン回転数がRPMTHHを超えてからRPMTHL以下になった場合には、駆動電流Isの増加範囲が、iL2からiH2までの範囲に縮小されることとなり、その結果、バッテリ電圧VBに必要以上の変動やノイズが発生するのを防止することができる。そして、バッテリ電圧VBのノイズが抑制されることで、車両に搭載されている各装置への放射ノイズが抑制される。
【0088】
つまり、エンジン回転数が低い場合には、インジェクタの駆動間隔が長くコンデンサ5の放電頻度は小さくなるため、駆動電流Isの増加範囲をiL2からiH2までの範囲に縮小してバッテリ電圧VBの変動やノイズを抑制するようにしても、昇圧回路7の昇圧能力が不足することはない。また特に、エンジン回転数が低い場合には、エンジンの作動音が小さく車室内が静かであるため、ラジオ等の車載音響機器からの音にノイズの影響が現れると気になりやすいが、そのような不具合を防止することができる。
【0089】
尚、本第2実施形態では、CPU17が実行する図6の処理が変更制御手段に相当している。
一方、図6のS220では、エンジン回転数が電流閾値切替回転数RPMTH以下であり、且つ、エンジン制御処理で設定されたインジェクタの駆動間隔が所定値以上であるか否かを判定し、その両方について肯定判定した場合に、S250へ進むようにしても良い。そして、そのように変形すれば、請求項5の昇圧電源装置について述べた効果を得ることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の昇圧電源装置について説明する。尚、符号は、第1実施形態と同じものを用いる。
【0090】
図8に示すように、第3実施形態の昇圧電源装置1が備えられたエンジン制御装置41には、当該装置41が収納された筐体(エンジン制御装置41のケースであり、図示は省略している)の内部の温度を検出するための温度センサ43が設けられている。そして、温度センサ43の出力はCPU17に入力されるようになっている。
【0091】
尚、温度センサ43は、エンジン制御装置41を構成する基板上において、最も発熱する昇圧回路7のFET3と、最も重要な機能を担うCPU17との間の位置に設けられている。また、温度センサ43は、例えば、周囲温度に応じて変化するダイオードの順方向電圧を温度検出信号として出力する周知のものである。
【0092】
そして更に、第3実施形態の昇圧電源装置1では、第1実施形態と比較すると、CPU17が、図3の電流閾値切替処理に代えて、図9の電流閾値切替処理を実行する。
図9に示すように、CPU17が電流閾値切替処理を開始すると、まずS310にて、異常判定温度TPTHを、TPTHHとTPTHLのうち、高い方のTPTHHに初期設定する。尚、異常判定温度TPTHは、電流閾値を切り替えるか否かを決める温度の閾値である。
【0093】
そして、次のS315にて、下側電流閾値iLを第1下側電流閾値iL1に初期設定する。即ち、閾値切替回路15のレジスタ29に、抵抗24のグランドライン側の端部を示す下側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から下側閾値電圧ViLとして第1下側電流閾値iL1に相当する第1下側閾値電圧ViL1が出力されるようにする。
【0094】
次に、S320にて、温度センサ43の出力から温度を検出し、その温度が異常判定温度TPTH以上であるか否かを判定する。そして、検出した温度が異常判定温度TPTH以上でなければ、S330に進む。
【0095】
S330では、上側電流閾値iHを第1上側電流閾値iH1に設定する。即ち、閾値切替回路15のレジスタ28に、抵抗21の抵抗22側の端部を示す上側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から上側閾値電圧ViHとして第1上側電流閾値iH1に相当する第1上側閾値電圧ViH1が出力されるようにする。
【0096】
そして、次のS340にて、異常判定温度TPTHを、高い方のTPTHHに設定する処理を行い、その後、S320に戻る。
また、S320にて、検出した温度が異常判定温度TPTH以上であると判定した場合には、S350に移行する。
【0097】
そして、S350では、上側電流閾値iHを第2上側電流閾値iH2に設定する。即ち、閾値切替回路15のレジスタ28に、抵抗22の抵抗23側の端部を示す上側閾値切替情報を書き込むことにより、閾値切替回路15から上側閾値電圧ViHとして第2上側電流閾値iH2に相当する第2上側閾値電圧ViH2が出力されるようにする。
【0098】
そして、次のS360にて、異常判定温度TPTHを、低い方のTPTHLに設定する処理を行い、その後、S320に戻る。
次に、以上のような第3実施形態の昇圧電源装置1の作用及び効果について説明する。
【0099】
図10に示すように、第3実施形態では、下側電流閾値iLは第1下側電流閾値iL1のまま固定されている。また、エンジン制御装置41の内部温度がTPTHHより低ければ、図9におけるS330の処理により、上側電流閾値iHが第1上側電流閾値iH1に設定される。
【0100】
そして、エンジン制御装置41の内部温度がTPTHH以上になると、その後、内部温度がTPTHLよりも低くなるまでは、図9におけるS350の処理により、上側電流閾値iHが第2上側電流閾値iH2に設定され、これにより、FET3のオン時における駆動電流Isのピーク値がiH1からiH2に下げられることとなる。
【0101】
また、本第3実施形態において、CPU17は、エンジン制御装置41の内部温度がTPTHH以上になったこと判定すると、その後、内部温度がTPTHLよりも低くなったと判定するまでは、エンジンの制御モードを、通常の正常時モードから異常時モードに切り替えて、エンジンの制御を行う。そして、その異常時モードでは、例えば、エンジンへの燃料噴射回数や噴射量を少なくすることにより、エンジンの回転数や出力を低下させて最低限の車両走行能力を確保する。これは、正常時モードでのエンジン制御を続けると、内部温度が益々上昇してエンジン制御が不能になってしまう可能性があるためであり、そのような事態を防ぐためである。
【0102】
このような第3実施形態の昇圧電源装置1によれば、エンジン制御装置41の内部温度がTPTHH以上に上昇して、昇圧能力よりもFET3の発熱抑制を優先すべき状況になった場合には、駆動電流Isのピーク値が、それまでのiH1からiH2に低下されることとなり、その結果、FET3の発熱が抑制されて、エンジン制御装置41の内部温度の上昇を抑制することができる。このため、エンジン制御装置41におけるCPU17を始めとする回路や素子が過熱によって作動不能になったり故障してしまったりすることを防止することができ、延いては、CPU17による異常時モードでのエンジン制御(いわゆる退避運転モードのエンジン制御)を確実に実施できるようになる。
【0103】
尚、第3実施形態では、CPU17が実行する図9の処理が変更制御手段に相当している。
一方、上記第3実施形態では、下側電流閾値iLを第1下側電流閾値iL1(=0A)に固定しているため、図2に示した閾値切替回路15における切替スイッチ26とレジスタ29は削除することができる。その場合、切替スイッチ27に下側閾値電圧ViLを入力させるラインを、グランドラインに接続しておけば良く、更に図9のS315は削除することができる。
【0104】
また、温度センサ43は、エンジン制御装置41の筐体内における何れの位置に設けても良いが、前述したようにFET3とCPU17との間の位置に設けた方が、FET3からの熱がCPU17の方に伝達されてきたことを確実に検知できるという点で有利である。
【0105】
また、温度センサ43は、エンジン制御装置41の筐体の外部に設けるようにしても良く、その場合には、筐体の周囲温度を検出して、駆動電流Isのピーク値を変更することとなる。そして、そのように構成しても、前述した第3実施形態と同様の効果が得られる。筐体の周囲温度が上昇すれば、それに伴い筐体の内部温度も上昇するからである。
[第4実施形態]
上記各実施形態において、閾値切替回路15は、図11に示す閾値切替回路51に置き換えることもできる。
【0106】
図11の閾値切替回路51は、図2の閾値切替回路15と比較すると、抵抗21〜24及び切替スイッチ25,26の代わりに、2つのD/A変換器52,53を備えており、レジスタ28,29の代わりに、レジスタ54,55を備えている。
【0107】
この閾値切替回路51において、D/A変換器52は、レジスタ54に記憶されたデジタルデータが示す電圧を、切替スイッチ27へ上側閾値電圧ViHとして出力する。そして、レジスタ54には、CPU17によって、上側閾値電圧ViHを示すデジタルデータが書き込まれる。
【0108】
また、D/A変換器53は、レジスタ55に記憶されたデジタルデータが示す電圧を、切替スイッチ27へ下側閾値電圧ViLとして出力する。そして、レジスタ55には、CPU17によって、下側閾値電圧ViLを示すデジタルデータが書き込まれる。
【0109】
一方、切替スイッチ27は、図2に示したものと同じものであり、比較器12の出力がハイの場合に、D/A変換器52から出力される上側閾値電圧ViHを、比較器12へ閾値電圧Vithとして出力し、比較器12の出力がローの場合には、D/A変換器53から出力される下側閾値電圧ViLを、比較器12へ閾値電圧Vithとして出力する。
【0110】
そして、このような閾値切替回路51を用いた場合、CPU17は、レジスタ54,55に書き込むデジタルデータを変更することで、比較器12への上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViL(延いては、上側電流閾値iHと下側電流閾値iL)を変更することができる。
【0111】
例えば、図3のS130では、レジスタ54に、第1上側閾値電圧ViH1を示すデジタルデータを書き込むことにより、上側電流閾値iHを第1上側電流閾値iH1に設定することができ、レジスタ55に、第1下側閾値電圧ViL1を示すデジタルデータを書き込むことにより、下側電流閾値iLを第1下側電流閾値iL1に設定することができる。
【0112】
同様に、図3のS150では、レジスタ54に、第2上側閾値電圧ViH2を示すデジタルデータを書き込むことにより、上側電流閾値iHを第2上側電流閾値iH2に設定することができ、レジスタ55に、第2下側閾値電圧ViL2を示すデジタルデータを書き込むことにより、下側電流閾値iLを第2下側電流閾値iL2に設定することができる。
【0113】
そして、こうしたことは、図6のS230,S250と図9のS315,S330,S350についても同様である。
また、このような閾値切替回路51によれば、上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの各々を、2通りではなく、任意の値に細かく変更することができる。例えば、D/A変換器52,53として、8ビットで可変範囲が1VのD/A変換器を用いたならば、1V/256=約3.9mVの分解能で電圧を変更することができる。
【0114】
よって、例えば、閾値切替回路51を第2実施形態の昇圧電源装置1に適用した場合、CPU17は、エンジン回転数に応じて、そのエンジン回転数が低い場合ほど、上側閾値電圧ViHと下側閾値電圧ViLとの差を小さくする(即ち、駆動電流Isの増加範囲を小さくする)、という制御を行うことができる。
【0115】
尚、閾値切替回路51を第3実施形態に適用する場合には、下側閾値電圧ViLが0Vのままで良いため、その閾値切替回路51からD/A変換器53とレジスタ55を削除すると共に、切替スイッチ27に下側閾値電圧ViLを入力させるラインを、グランドラインに接続しても良い。
【0116】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0117】
例えば、第1又は第2実施形態においては、上側電流閾値iHと下側電流閾値iLとの両方を変更するようにしたが、それらの一方だけを変更するようにしても良い。具体的に説明すると、図3のS150と図6のS250では、上側電流閾値iHを第2上側電流閾値iH2に設定する処理と、下側電流閾値iLを第2下側電流閾値iL2に設定する処理との、何れか一方を行うようにしても良い。
【0118】
また、第1又は第2実施形態の昇圧電源装置1は、駆動電流Is及び充電電流IcをモニタしてFET3をオン/オフさせるものであったため、駆動電流Isの上限値である上側電流閾値iHと充電電流Icの下限値である下側電流閾値iLとを変更することで、駆動電流Isの増加範囲を変更するようにしたが、駆動電流Is及び充電電流Icをモニタせずに(換言すれば、電流閾値iH,iLを設けずに)、FET3を所定のオン時間だけオンし所定のオフ時間だけオフする、といったオープン制御を行う構成の場合には、例えば、FET3のオン時間を変えることで、駆動電流Isの増加範囲を変えるように構成することができる。同様に、第3実施形態についても、FET3のオン時間を変えることで、駆動電流Isのピーク値を変えるように構成しても良い。
【0119】
また、コイル2を駆動するスイッチング素子は、FETに限らず、例えばバイポーラトランジスタでも良い。
また、昇圧回路としては、トランスの一次側コイルのバッテリ電圧側とは反対側とグランド電位との間を断続させるスイッチング素子を繰り返しオン/オフさせて、トランスの二次側コイルに発生する高電圧によりコンデンサを充電するものでも良い。
【0120】
また、インジェクタは、開弁用アクチュエータとしてピエゾアクチュエータを有するものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】第1実施形態の昇圧電源装置の構成を表す構成図である。
【図2】閾値切替回路の構成を表す構成図である。
【図3】第1実施形態の電流閾値切替処理を表すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の昇圧電源装置の作用を表すタイムチャートである。
【図5】第1実施形態の技術が適用されない場合に生じる問題を説明するタイムチャートである。
【図6】第2実施形態の電流閾値切替処理を表すフローチャートである。
【図7】第2実施形態の昇圧電源装置の作用を表すタイムチャートである。
【図8】温度センサの位置を説明する説明図である。
【図9】第3実施形態の電流閾値切替処理を表すフローチャートである。
【図10】第3実施形態の昇圧電源装置の作用を表すタイムチャートである。
【図11】第4実施形態の閾値切替回路の構成を表す構成図である。
【符号の説明】
【0122】
1…昇圧電源装置、2…コイル、3…FET(スイッチング素子)、4…電流検出用の抵抗、5…コンデンサ、6…ダイオード、7…昇圧回路、10…フィルタ回路、11…増幅回路、12…比較器、13…アンド回路、14…駆動回路、15,51…閾値切替回路、16…充電制御回路、21,22,23,24…抵抗、25,25,27…切替スイッチ、28,29,54,55…レジスタ、41…エンジン制御装置、43…温度センサ、52,53…D/A変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に電源電圧が供給されるコイルと、
前記コイルの他端と前記電源電圧よりも低い基準電位との間の経路上に、2つの出力端子が直列に接続され、オンすることで前記コイルに駆動電流を流すスイッチング素子と、
前記スイッチング素子がオンからオフされたときに前記コイルから放出されるエネルギーにより充電されるコンデンサと、
前記スイッチング素子をオン/オフさせることで前記コンデンサの充電電圧を前記電源電圧よりも高い目標電圧にする充電制御手段と、
を備えると共に、前記コンデンサの充電電荷は、車両のエンジンへの燃料噴射タイミングが到来する毎に、燃料噴射弁を開弁させるためのアクチュエータへ該アクチュエータの駆動電力として放電されるようになっている昇圧電源装置において、
前記スイッチング素子のオン時における前記駆動電流の増加範囲を変更する変更手段を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇圧電源装置において、
前記電源電圧が所定値以下に低下したと判定した場合に、前記変更手段に前記駆動電流の増加範囲を縮小させる変更制御手段を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の昇圧電源装置において、
前記エンジンの回転数に応じて、前記変更手段に前記駆動電流の増加範囲を変更させる変更制御手段を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項4】
請求項3に記載の昇圧電源装置において、
前記変更制御手段は、前記エンジンの回転数が所定値以下であると判定した場合に、前記変更手段に前記駆動電流の増加範囲を縮小させること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の昇圧電源装置において、
前記変更制御手段は、前記エンジンの回転数が所定値以下で、且つ、前記燃料噴射弁の駆動間隔が所定値以上であると判定した場合に、前記変更手段に前記駆動電流の増加範囲を縮小させること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の昇圧電源装置において、
前記コイルの他端と前記スイッチング素子の該コイル側の出力端子とを結ぶ電流経路にアノードが接続されたダイオードを備えると共に、
前記コンデンサは、前記ダイオードのカソードと前記基準電位との間の経路に直列に接続されており、
更に、前記充電制御手段は、前記スイッチング素子をオンしてから前記駆動電流が上側電流閾値にまで増加したと判定すると前記スイッチング素子をオフし、その後、前記コイルから前記ダイオードを介して前記コンデンサに流れる充電電流が下側電流閾値にまで減少したと判定すると前記スイッチング素子をオンする、という動作を繰り返すことにより、前記スイッチング素子をオン/オフさせるようになっており、
前記変更手段は、前記上側電流閾値と前記下側電流閾値との両方又は一方を変更することにより、前記駆動電流の増加範囲を変更するようになっていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の昇圧電源装置において、
前記充電制御手段は、前記駆動電流に比例した電圧である駆動電流相当電圧と、前記充電電流に比例した電圧である充電電流相当電圧とを出力する電流検出手段を備えていると共に、前記駆動電流相当電圧と前記上側電流閾値に相当する上側閾値電圧とを大小比較することで、前記駆動電流が前記上側電流閾値にまで増加したか否かを判定し、前記充電電流相当電圧と前記下側電流閾値に相当する下側閾値電圧とを大小比較することで、前記充電電流が前記下側電流閾値にまで減少したか否かを判定するようになっており、
更に、前記変更手段は、
前記上側閾値電圧と前記下側閾値電圧との両方又は一方を変更するようになっていると共に、その変更対象の電圧を可変出力するための手段として、
一定電圧と前記基準電位との間に直列に接続された複数の抵抗と、
前記各抵抗の端部のうちの何れか一つを選択し、その選択した端部の電圧を前記変更対象の電圧として出力する選択手段とを備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項8】
請求項6に記載の昇圧電源装置において、
前記充電制御手段は、前記駆動電流に比例した電圧である駆動電流相当電圧と、前記充電電流に比例した電圧である充電電流相当電圧とを出力する電流検出手段を備えていると共に、前記駆動電流相当電圧と前記上側電流閾値に相当する上側閾値電圧とを大小比較することで、前記駆動電流が前記上側電流閾値にまで増加したか否かを判定し、前記充電電流相当電圧と前記下側電流閾値に相当する下側閾値電圧とを大小比較することで、前記充電電流が前記下側電流閾値にまで減少したか否かを判定するようになっており、
更に、前記変更手段は、
前記上側閾値電圧と前記下側閾値電圧との両方又は一方を変更するようになっていると共に、その変更対象の電圧を可変出力するための手段として、D/A変換器を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項9】
一端に電源電圧が供給されるコイルと、
前記コイルの他端と前記電源電圧よりも低い基準電位との間の経路上に、2つの出力端子が直列に接続され、オンすることで前記コイルに駆動電流を流すスイッチング素子と、
前記スイッチング素子がオンからオフされたときに前記コイルから放出されるエネルギーにより充電されるコンデンサと、
前記スイッチング素子をオン/オフさせることで前記コンデンサの充電電圧を前記電源電圧よりも高い目標電圧にする充電制御手段と、
を備えると共に、前記コンデンサの充電電荷は、車両のエンジンへの燃料噴射タイミングが到来する毎に、燃料噴射弁を開弁させるためのアクチュエータへ該アクチュエータの駆動電力として放電されるようになっている昇圧電源装置において、
前記スイッチング素子のオン時における前記駆動電流のピーク値を変更する変更手段を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項10】
請求項9に記載の昇圧電源装置において、
当該昇圧電源装置が収納された筐体の内部又は周囲の温度が所定値以上であると判定した場合に、前記変更手段に前記駆動電流のピーク値を低下させる変更制御手段を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の昇圧電源装置において、
前記コイルの他端と前記スイッチング素子の該コイル側の出力端子とを結ぶ電流経路にアノードが接続されたダイオードを備えると共に、
前記コンデンサは、前記ダイオードのカソードと前記基準電位との間の経路に直列に接続されており、
更に、前記充電制御手段は、前記スイッチング素子をオンしてから前記駆動電流が上側電流閾値にまで増加したと判定すると前記スイッチング素子をオフし、その後、前記コイルから前記ダイオードを介して前記コンデンサに流れる充電電流が下側電流閾値にまで減少したと判定すると前記スイッチング素子をオンする、という動作を繰り返すことにより、前記スイッチング素子をオン/オフさせるようになっており、
前記変更手段は、前記上側電流閾値を変更することにより、前記駆動電流のピーク値を変更するようになっていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項12】
請求項11に記載の昇圧電源装置において、
前記充電制御手段は、前記駆動電流に比例した電圧である駆動電流相当電圧と、前記充電電流に比例した電圧である充電電流相当電圧とを出力する電流検出手段を備えていると共に、前記駆動電流相当電圧と前記上側電流閾値に相当する上側閾値電圧とを大小比較することで、前記駆動電流が前記上側電流閾値にまで増加したか否かを判定し、前記充電電流相当電圧と前記下側電流閾値に相当する下側閾値電圧とを大小比較することで、前記充電電流が前記下側電流閾値にまで減少したか否かを判定するようになっており、
更に、前記変更手段は、
前記上側閾値電圧を変更するようになっていると共に、その上側閾値電圧を可変出力するための手段として、
一定電圧と前記基準電位との間に直列に接続された複数の抵抗と、
前記各抵抗の端部のうちの何れか一つを選択し、その選択した端部の電圧を前記上側閾値電圧として出力する選択手段とを備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。
【請求項13】
請求項11に記載の昇圧電源装置において、
前記充電制御手段は、前記駆動電流に比例した電圧である駆動電流相当電圧と、前記充電電流に比例した電圧である充電電流相当電圧とを出力する電流検出手段を備えていると共に、前記駆動電流相当電圧と前記上側電流閾値に相当する上側閾値電圧とを大小比較することで、前記駆動電流が前記上側電流閾値にまで増加したか否かを判定し、前記充電電流相当電圧と前記下側電流閾値に相当する下側閾値電圧とを大小比較することで、前記充電電流が前記下側電流閾値にまで減少したか否かを判定するようになっており、
更に、前記変更手段は、
前記上側閾値電圧を変更するようになっていると共に、その上側閾値電圧を可変出力するための手段として、D/A変換器を備えていること、
を特徴とする昇圧電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−41800(P2010−41800A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200989(P2008−200989)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】