説明

曲がりホース成型用金型及びこれを用いた曲がりホースの製造方法

【課題】複雑な三次元形状を有し内面にしわやたるみのない高品質の曲がりホースを、低コストで簡便に製造可能な曲がりホース成型金型を提供する。
【解決手段】曲がりホースの成型に用いられる金型であって、前記曲がりホースの所定の曲げ形状に加工された金属棒2と、この金属棒2の長手方向の任意の位置と円周方向の任意の向きに固定可能とされると共に、未加硫の前記ホースを支持可能な複数個のホルダー3とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲がりホース成型用金型及びこれを用いた曲がりホースの製造方法に関し、更に詳しくは、自動車等の車両用エアコン(エアコンディショナー)の冷媒回路等に用いられる曲がりホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両の軽量化を目的として、車両用エアコンの冷媒回路にはアルミニウム合金製配管が使用されているが、コンプレッサ等で発生する振動がパイプを共振させ騒音を引き起こす恐れがある。そこで、配管の共振を抑制するために、ゴムやゴムと樹脂とからなるフレキシブルホースが配管の途中に組み込まれて使用されている。
【0003】
この様な車両用エアコンの冷媒回路に用いられるフレキシブルホースでは、一般に、ゴム層単層、樹脂層単層または樹脂層の外周にゴム層を設けた樹脂−ゴム複合構造からなる内管と、この内管の外周を覆う補強層と、この補強層の外周に設けられた複数のゴム層とからなる外管とにより構成されている。そして、この様な構成からなる内管のバリア層で冷媒に対する耐ガス透過性を確保するとともに、外層のゴム層でホースとしての柔軟性、振動吸収性および耐水分透過性を確保し、更に、前記ゴム層を補強するための繊維補強層を有するのが通常である。
【0004】
また、一般的に、車両用エアコンの内管のゴム層としてはブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムが使用され、樹脂−ゴム複合構造の内管の最内層を形成する樹脂としては、主にポリアミド系の樹脂が多用されている。更に、外層のゴム層としては、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムまたはエチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(以下、EPDMと略す)等がある。
【0005】
しかるに、近年、自動車等車両の軽量化やエンジンルームのコンパクト化等により、配管スペースの狭小化、複雑化が進んでいる。このため車両用エアコンホースについても例外ではなく、狭いスペースに自由に配管出来かつ周辺機器と接触することなく、柔軟性に優れることが要求されている。一方、従来のストレート状のホースでは、これを強制的に曲げて装着する必要性が生じ、装着時の作業が難しくなって、場合によっては周辺機器との接触により装着できない場合が出てくる。
【0006】
従って、これらの要求に答えるために、ホースを曲げた状態で加硫して曲がりホースを製造する方法が採用されている。しかしながら、曲がり形状を有するホースを製造するには、通常、長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレルの周囲に、樹脂およびゴムを同時もしくは段階的に重ねて内管とした後、この内管の表面にポリエステル糸等を編み上げて巻き付けた補強層を設け、この補強層の上から外面ゴムを押出被覆する。この場合、ホースがストレートな直管を製造する場合にはそのまま加硫を行い、その後にマンドレルを抜き取れば加硫済みの樹脂−ゴム複合ホースが得られる。
【0007】
一方、ホースが曲がり形状を呈している曲がり管を製造する場合は、長尺のストレートのマンドレルを抜き取った後に、この未加硫ホースを短尺に寸法切断し、所定の曲がり形状を有する金属製マンドレルを前記未加硫ホースに挿入して加硫するか、ストレートの長尺マンドレルを抜き取った後に寸法切断し、短尺の樹脂またはゴム製マンドレルをこの未加硫短尺ホースに再挿入し、もしくは長尺のマンドレルを挿入したまま寸法切断し、曲がり形状を有する外枠に嵌めて加硫を行うかのどちらかの方法で曲がりホースを製造することになる。
【0008】
前者の製造方法は、内管がゴムの場合は特に問題がなく、広く一般的に採用されている工法であるが、最内管に熱可塑性樹脂を使用する場合、曲がり形状のマンドレルを挿入する際に樹脂とゴムの界面に剥離が生じたり、成型加硫後に金属製マンドレルを抜き取る作業時に内管樹脂表面に傷を生じさせる。また、後者の製造方法では、外層ゴムが未加硫であることから加硫時に外枠と接触して、外面ゴムに傷を生じさせることになる。また、、外枠による曲がり成型の場合は、三次元形状の複雑な形状を有する外枠を作ることが困難で、かつ費用も多大なものとなるため実用には適さない。
【0009】
そこで、次に述べるような曲がりホースの製造方法が提案されている。このような従来例に係る曲がりホースの製造方法について、図6および図7を参照しながら以下説明する。図6は従来例に係る成型前のストレート状態の未加硫複合ホースの部分切断図、図7は他の従来例に係る実施例を示す3層ホースの押出しの説明図を示している。
【0010】
図6において、この複合曲がりホースの製造方法は、ゴムまたは樹脂製のマンドレル30に、内側より内面樹脂層31、内管未加硫ゴム層32、中間ゴム層34を挟んで2層スパイラル構造とした補強層33,35および外被未加硫ゴム層36が順次積層して未加硫複合ホースが構成され、ストレート状態の前記未加硫複合ホースを形成する第1工程と、外被未加硫ゴム層36上に軟化点が成型加硫時の温度よりも高い性質を持つ樹脂被覆37を施す第2工程と、前記内面樹脂層31が弾性変形を示す温度域にて予熱する第3工程とを有する。
【0011】
同時に引き続き、予め加硫温度付近に加熱した金型に前記予熱された未加硫複合ホース装填する第4工程と、所定の加硫条件にて成型加硫する第5工程と、内面樹脂層31が弾性変形を示す温度域において金型から取り外す第6工程と、内面樹脂層31が弾性変形を示す温度域において前記樹脂被覆37およびマンドレル30を取り外す第7工程と、室温まで冷却する間、目的の成型条件の型に装填しておく第8工程と、の各工程からなる(特許文献1参照)。
【0012】
しかしながら、このような従来例に係る複合曲がりホースの製造方法は、複雑で多段の工程を要するため、工程管理に手間取り製造コストが多大になるという問題点を有している。そこで、図7における他の従来例に係るゴム−樹脂積層曲がりホースの製造方法は、中芯40を流し、これに第一の押出機41で内層ゴムを、第二の押出機42で中間樹脂を、第三の押出機43で外層ゴムを夫々押出して中芯40の外周にこの順序で夫々積層していく。
【0013】
積層された前記ホースは、所定の長さにカットしてこれを予備加硫する。そして、予備加硫したこのホースから中芯40を抜き取り、このホースを所望の曲がりを設けた加硫心棒に差し込み、これを加硫心棒を付けたままで本加硫するのである(特許文献2参照)。
【0014】
ところが、前記従来例に係る樹脂−ゴム複合曲がりホースの製造方法は、中芯40を抜き取った前記未加硫ホースに、加硫心棒を直接差し込み本加硫して成型するため、ホース内面に傷を生じやすく、そのため複雑な三次元形状を有する複合ホースの製造には不向きである。
【0015】
一方、成型マンドレルに形状記憶合金を用いた、次のような従来例に係る曲がりホースの製造方法が提案されている。即ち、この曲がりホースの製造方法は、配合ゴムより未加硫ゴムホースを形成する成形工程と、平板状または針金状の形状記憶合金を螺旋状に巻いて筒状とされた所定温度以上で所定の径を持つ曲がり形状となるように形状記憶されたマンドレルを、外径が前記未加硫ゴムホースの内径より小径の略真直形状として前記未加硫ゴムホースに挿入する挿入工程と、前記マンドレルを前記所定温度以上に加熱して形状記憶変形させ、前記未加硫ゴムホースを所定の屈曲形状に賦形するとともに加硫する加硫工程と、加硫後の曲がりホースから前記マンドレルを引き抜く工程とからなる(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平11−192668号公報
【特許文献2】特開2000−289121号公報
【特許文献3】特開平5−147124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、前記従来例に係る曲がりホースの製造方法は、高価な形状記憶合金を用いなくてはならない上、屈曲形状が複雑な三次元形状であったり曲率の大きいゴムホースの製造には、前記形状記憶合金による形状変形では満足し得る屈曲形状が得られないという問題点があった。
【0017】
従って、本発明の目的は、複雑な三次元形状を有し内面にしわやたるみのない高品質の曲がりホースを、低コストで簡便に製造可能な曲がりホース成型金型及びそれを用いた曲がりホースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に係る曲がりホース成型用金型が採用した手段は、曲がりホースの成型に用いられる金型であって、前記曲がりホースの所定の曲げ形状に加工された金属棒と、この金属棒の長手方向の任意の位置と円周方向の任意の向きに固定可能とされると共に、未加硫の前記ホースを支持可能な複数個のホルダーとを備えてなることを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項2に係る曲がりホース成型用金型が採用した手段は、請求項1に記載の曲がりホース成型用金型において、未加硫の前記ホースが、樹脂チューブの外側に複数のゴム層とこの複数のゴム層間に介在する補強層とを被覆された樹脂−ゴム複合ホースであって、更に、前記樹脂チューブ内に樹脂製またはゴム製のマンドレルが内在することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項3に係る曲がりホース成型用金型が採用した手段は、請求項1または2に記載の曲がりホース成型用金型において、前記金属棒が、この金属棒を支持する台座に立設して固定されたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明の請求項4に係る曲がりホース成型用金型が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の曲がりホース成型用金型において、前記ホルダーが、未加硫の前記ホース外径と同等な幅を有する開口部を備え、この開口部に未加硫の前記ホースを差し込んで支持可能とされたことを特徴とするものである。
【0022】
本発明の請求項5に係る曲がりホースの製造方法が採用した手段は、長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレルの周囲に、樹脂層単独または樹脂層の外周にゴム層を重ねて内管とした後、この内管の外周を覆う補強層を設け、この補強層の上から単層または複数のゴム層を押出被覆した樹脂−ゴム複合ホースとなし、次いで、この樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断した後、前記請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載の曲がりホース成型用金型にセットして所定の曲がり形状とした状態で加硫し、その後、前記曲がりホース成型用金型から除去し、前記マンドレルを抜き取って樹脂−ゴム複合曲がりホースを製造することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の請求項6に係る曲がりホースの製造方法が採用した手段は、請求項5に記載の曲がりホースの製造方法において、未加硫の前記樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断する前に、予備加硫することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1に係る曲がりホース成型用金型によれば、曲がりホースの成型に用いられる金型であって、前記曲がりホースの所定の曲げ形状に加工された金属棒と、この金属棒の長手方向の任意の位置と円周方向の任意の向きに固定可能とされると共に、未加硫の前記ホースを支持可能な複数個のホルダーとを備えてなるので、複雑な三次元形状を有する曲がりホースにも対応可能な簡便で安価な曲がりホース成型用金型を提供し得る。
【0025】
また、本発明の請求項2に係る曲がりホース成型用金型によれば、未加硫の前記ホースが、樹脂チューブの外側に複数のゴム層とこの複数のゴム層間に介在する補強層とを被覆された樹脂−ゴム複合ホースであって、更に、前記樹脂チューブ内に樹脂製またはゴム製のマンドレルが内在するので、複雑な三次元形状も自在に形成し得ると共に、加硫時の前記ホースの収縮防止が可能となる。
【0026】
更に、本発明の請求項3に係る曲がりホース成型用金型によれば、前記金属棒が、この金属棒を支持する台座に立設して固定されたものであるから、未加硫の前記ホースの前記金型へのセット、及び加硫後の曲がりホースの前記金型からの除去における作業性が向上する。
【0027】
また更に、本発明の請求項4に係る曲がりホース成型用金型によれば、前記ホルダーが未加硫のホース外径と同等な幅を有する開口部を備え、この開口部に前記未加硫のホースを差し込んで支持可能とされたので、簡便な手段によって前記ホースを支持出来ると共に前記ホルダーへのホース着脱が簡単に行える。
【0028】
一方、本発明の請求項5に係る曲がりホースの製造方法によれば、長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレルの周囲に、樹脂層単独または樹脂層の外周にゴム層を重ねて内管とした後、この内管の外周を覆う補強層を設け、この補強層の上から単層または複数のゴム層を押出被覆した樹脂−ゴム複合ホースとなし、次いで、この樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断した後、前記請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の曲がりホース成型用金型にセットして所定の曲がり形状とした状態で加硫し、その後、前記曲がりホース成型用金型から除去し、前記マンドレルを抜き取って樹脂−ゴム複合曲がりホースを製造するので、複雑な三次元形状を有し内面にしわやたるみのない高品質の曲がりホースを低コストで製造できる。
【0029】
また、本発明の請求項6に係る曲がりホースの製造方法によれば、未加硫の前記樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断する前に予備加硫するので、ホースを構成するゴム層にゴム弾性がある程度付与され、切断後のマンドレル抜き取りやその後の曲がりホース成型用金型へのセット時の接触による損傷防止に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
先ず、本発明の曲がりホース成型用金型に係る実施の形態について添付図1及び2を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係る曲がりホース成型用金型の斜視図、図2は本発明の実施の形態に係る曲がりホース成型金型に未加硫のホースをセットした状態を示す斜視図である。
【0031】
本発明に係る曲がりホース成型用金型1は、曲がりホースの所定の曲げ形状になる様にベンダー等により曲げ加工された金属棒2と、この金属棒2の長手方向の任意の位置に固定されると共に前記未加硫のホース10を支持可能な複数個のホルダー3とを備えてなるものである。
【0032】
前記ホルダー3には、金属棒2が装入可能な貫通孔が設けられており、この貫通孔に前記金属棒2を挿入して、この金属棒2の長手方向及び回転方向の任意の位置で止めネジ4により固定可能とされている。即ち、所望とする曲がり形状を未加硫のホース10に賦形させるため、複数の前記ホルダー3を金属棒2の長手方向や回転方向の任意の位置に移動して、前記金属棒3に固定可能としている。
【0033】
そして、前記ホルダー3には、未加硫のホース10の外径と同等の幅を有する開口部3aが形成されており、図2に示す如く、この開口部3aに未加硫のホース10を差し込んで、所定の曲がり形状にセット可能に構成されている。また、必要に応じて、前記開口部3aに図示しない留め金具を取り付けてホース6の脱落を防止することも出来る。前記金属棒2は、所望とする三次元形状を予め賦形され、鉄製のみがき丸棒材やステンレス鋼棒材からなるものが好ましく用いられる。
【0034】
以上の様な構成により曲がりホース成型用金型として用いることが可能であるが、更に図1及び2に示す如く、金属棒2の一端を台座5に立設して固定されたものが更に好ましい。前記金属棒2が台座5に立設して固定されていると、曲がりホース成型用金型1の周囲から、前記ホルダー3の位置調整や未加硫のホースのセット及び加硫後の曲がりホースの除去が可能となり、作業性が格段に向上するためである。
【0035】
この様な曲がりホース成型用金型1によれば、前記曲がりホースの所定の曲げ形状に加工された金属棒2と、この金属棒2の長手方向の任意の位置と円周方向の任意の向きに固定可能とされると共に、未加硫の前記ホース10を支持可能な複数個のホルダー3とを備えてなるので、複雑な三次元形状を有する曲がりホースにも対応可能な簡便で安価な曲がりホース成型用金型1が得られる。
【0036】
更に、未加硫の前記ホース10が、樹脂チューブの外側に複数のゴム層とこの複数のゴム層間に介在する補強層とを被覆された樹脂−ゴム複合ホースであって、前記樹脂チューブ内に樹脂製またはゴム製のマンドレル6が内在するものが好ましい。樹脂チューブ内に前記マンドレルが内在することによって、複雑な三次元形状も自在に形成し得ると共に、加硫時の前記ホースの収縮防止が可能となるからである。
【0037】
次に、本発明の曲がりホースの製造方法に係る実施の形態1について、以下添付図3及び図4を参照しながら、工程を追って順次説明する。図3は本発明の実施の形態1に係る曲がりホースの製造方法を説明するための工程図、図4は本発明の実施の形態1に係る曲がりホースの製造方法における未加硫の樹脂−ゴム複合ホースの一部切欠斜視図を示す。
【0038】
図3,4において、本発明の実施の形態1に係る曲がりホースの製造方法は、先ず、長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレル6を連続的に供給(ステップ11)しながら、押出機等によって、この長尺マンドレル6の外周に樹脂層7aを形成(ステップ12)した後、この上から内面ゴム層7bを被覆(ステップ13)して内管7を形成する。次いで、この内管7の外周に補強糸を編み込んで補強層8を形成(ステップ14)し、この補強層8の上から外面ゴム層9を押出被覆(ステップ15)して、未加硫の樹脂−ゴム複合ホース10を形成(ステップ16)する。
【0039】
この未加硫の樹脂−ゴム複合ホース10は通常50〜100m程度の長尺を有するので、これを製品長さに合わせて0.5〜2m程度の所定長に、長尺マンドレル6と共に寸法切断(ステップ17)する。その後、本発明の実施の形態に係る曲がりホース成型用金型1のホルダー3にセット(ステップ18)して、所定の曲がり形状とした状態で加硫(ステップ19)し、次いで、前記曲がりホース成型用金型1のホルダー3から除去(ステップ20)した後、前記マンドレル6を抜き取って(21)樹脂−ゴム複合曲がりホースを得る(ステップ22)。
【0040】
ここで、前記未加硫の樹脂−ゴム複合ホース10は、図4に例示したように、樹脂チューブ7aの外側に内面ゴム層7bを設けた内管7と、この内管7の外側に設けられた繊維補強層8と、この繊維補強層8の外側に被覆された外面ゴム層9と供えている。前記ゴム層は、内面ゴム層7bと外面ゴム層9に限定されることなく、その中間に中間ゴム層を有する場合もあり、また、前記繊維補強層8が複数層ある場合もある。
【0041】
そして更に、本発明に係る未加硫の(樹脂−ゴム複合)ホース10とは、内管7の内側に存在するゴム製または樹脂製の前記マンドレル6も含むものを言う。この様に、未加硫の(樹脂−ゴム複合)ホース10に前記マンドレル6を内在させたままで、本発明の実施の形態に係る曲がりホース成型用金型1にセットして加硫し、所定の曲がり形状を有する(樹脂−ゴム複合)曲がりホースを成型することが肝要である。前記前記マンドレル6を内管7の内側に内在させることにより、加硫時のホースの収縮を防止し得ると共に最内層である樹脂層7aにしわやたるみを発生させることがない。
【0042】
ここで、図4に例示した前記未加硫の樹脂−ゴム複合ホース10の構成について、更に詳しく述べる。前記樹脂チューブ7aとしては、通常ポリアミド樹脂が多用されている。このようなポリアミド樹脂は、PA6,PA66,PA6とPA66の共重合体,PA11,PA12,PA11とPA12の共重合物、変性物、ブレンド物およびPAにオレフィンをブレンドしたもの等が適している。
【0043】
また、前記内面ゴム層7bのゴム材質としてはブチルゴム(IIR)が好ましい。このブチルゴムは、イソブチレンとイソプレンの共重合体であって、耐熱、耐寒、耐候性、耐薬品性および耐屈曲亀裂性に優れる上、ガス透過性が低いという特性を有するゴムであるからである。前記ブチルゴムは、塩素化ブチルゴムや臭素化ブチルゴム等のハロゲン化ブチルゴムでも良い。
【0044】
また、前記外面ゴム層7や中間ゴム層のゴム材質としては、ブチルゴムやEPDMが好ましい。このブチルゴムは、上述したように極めてガス透過性が小さく、反発弾性が低いという性質を持ち、耐熱性、耐候性に優れているからであり、EPDMは、同様に耐熱性、耐候性、耐オゾン性に優れるためである。このようなゴム層の加硫に要する加熱温度と加熱時間は、使用されるゴム原料の架橋特性によって多少の違いはあるが、上述したようなゴム材質の場合は、160℃前後の温度で40分程度の加熱時間が必要である。
【0045】
次に、繊維補強層8について説明すると、複数本の補強糸を引き揃えて内面ゴム層7bの外周面に、交差させて編み込みしつつ巻き付け構成されてなる。前記補強糸は、複数本のポリエステル糸を加撚して構成されたものが強度上好ましい。
【0046】
そして更に、前記長尺マンドレル6としては、ゴム製のものとしてはEPM,EPDM等を、樹脂製のものとしてはポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂及びポリメチルペンテン樹脂(TPX)等を用いることが出来る。この様な材質からなる長尺マンドレル6は、加硫時の加熱に対する耐熱性、柔軟性及び加硫後のマンドレルの抜き取り易さ等の点で優れているためである。
【0047】
次に、本発明の曲がりホースの製造方法に係る実施の形態2について、以下添付図5を参照しながら説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る樹脂−ゴム複合曲がりホースの製造方法を説明するための工程図である。尚、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、加硫方法に相違があり、その他は同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、その相違する点について以下説明する。
【0048】
即ち、本発明の実施の形態2に係る樹脂−ゴム複合曲がりホースの製造方法は、図5に示す如く、未加硫の樹脂−ゴム複合ホース10を寸法裁断(ステップ17)する前に、予備加硫(ステップ19a)するのである。この予備加硫19aは、160℃前後の温度で5分加熱する程度で良い。このような予備加硫19aを行うことによって、前記ゴム層7b,9にある程度の弾性を付与し、前記マンドレル6の抜き取りや曲がりホース成型用金型1へのセットの際の損傷防止に寄与出来る。
【0049】
以上、本発明の曲がりホース成型用金型1を用いた曲がりホースの製造方法によれば、長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレル6を内在する樹脂−ゴム複合ホース10を形成し、次いで、この樹脂−ゴム複合ホース10を所定長に切断した後、本発明に係る曲がりホース成型用金型1にセットして所定の曲がり形状とした状態で加硫し、その後、前記曲がりホース成型用金型1から除去し、前記マンドレル6を抜き取って樹脂−ゴム複合曲がりホースを製造するので、複雑な三次元形状を有し内面にしわやたるみのない高品質の曲がりホースを、収縮させることなく低コストで製造できる。
【実施例】
【0050】
<実施例−1>
図3に示した工程に従って、先ず、外径12.0mmのTPX製長尺マンドレルの外周に、厚さ0.15mmのPA6チューブ層を形成した。次いで、ブチルゴム層、繊維補強層、EPDMからなる外面ゴム層を順次形成して、図4の構成からなる外径19.0mmの未加硫の樹脂−ゴム複合ホースを作成した。その後、この未加硫の樹脂−ゴム複合ホースを1.5mに寸法切断し、図1に示した曲がりホース成型用金型1にセットして、所定の曲がり形状とした状態で加硫缶に装填し、温度160℃で40分間保持して加硫した。
【0051】
冷却後これを取り出して、前記曲がりホース成型金型1を除去し、次いでマンドレル6を抜き取ったところ、曲がりホース成型用金型1にセットされた形状通りの形が賦形された樹脂−ゴム複合曲がりホース製品が得られた。この曲がりホースを軸方向に沿って分割し内面を確認したところ、収縮も無くしわやたるみ等の不具合は認められなかった。
【0052】
<実施例−2>
図5に示した工程に従って、先ず、外径12.0mmのTPX製長尺マンドレルの外周に、厚さ0.15mmのPA6チューブ層を形成した。次いで、ブチルゴム層、繊維補強層、EPDMからなる外面ゴム層を順次形成し、図4の構成からなる外径19.0mmの未加硫の樹脂−ゴム複合ホースを作成した。その後、前記複合ゴムホースをストレートな状態に保持したままで加熱炉に装填し、温度160℃で5分間保持して予備加硫した後、寸法切断して長さ1.5mの未加硫樹脂−ゴム複合ホースを10本準備した。
【0053】
次に、図1に示した曲がりホース成型用金型1にセットして、所定の曲がり形状とした状態で加硫缶に装填し、温度160℃で35分間保持して加硫した。冷却後これを取り出して、前記曲がりホース成型用金型1を除去し、次いでマンドレル6を抜き取ったところ、この曲がりホース成型用金型1にセットされた形状通りの形が賦与された10本の曲がりホース製品が得られた。この曲がりホースを軸方向に沿って全数分割してPA6内面を確認したところ、10本全て収縮やしわ、たるみ、傷等の欠陥は認められなかった。
【0054】
<比較例−1>
前記実施例−1と同様に作成した未加硫の樹脂−ゴム複合ホースから、長尺マンドレルを抜き取って加硫したこと以外は、実施例−1と全く同一の処理を行った。得られた曲がりホースを軸方向に沿って分割し内面を確認したところ、PA6チューブ内径の収縮及びしわ発生が認められた。即ち、内管を構成する最内層が樹脂チューブである樹脂−ゴム複合ホースの場合、前記樹脂チューブ内にマンドレル6が存在しない状態で加硫すると、内面の収縮としわが発生し、品質低下を招くことを示している。
【0055】
<比較例−2>
前記実施例−2と同様に作成した樹脂−ゴム複合ホースを予備加硫して所定寸法に切断し、その後長尺マンドレルを抜き取ったこと以外は、実施例−2と全く同一の処理を行った。得られた曲がりホース全数を軸方向に沿って分割し内部を確認したところ、10本のうち2本に収縮が認められ、8本にPA6チューブ内面のしわやたるみが認められた。即ち、内管を構成する最内層が樹脂チューブである樹脂−ゴム複合ホースの場合、予備加硫時は樹脂チューブ内にマンドレル6が存在していても、本加硫時にマンドレル6が存在しない状態であると、内面の収縮やしわ、たるみ等が発生することを示している。
【0056】
以上述べた通り、本発明に係るホース成型用金型は、樹脂−ゴム複合曲がりホースの所定の曲げ形状に加工された金属棒と、この金属棒の長手方向の任意の位置と円周方向の任意の向きに固定可能とされると共に、未加硫の前記樹脂−ゴム複合ホースを支持可能な複数個のホルダーとを備えてなるので、複雑な三次元形状を有する曲がりホースにも対応可能な安価な曲がりホース成型用金型を提供し得る。
【0057】
また、本発明に係る曲がりホースの製造方法によれば、長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレルの周囲に樹脂−ゴム複合ホースを形成し、次いで、この樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断した後、本発明に係る上記曲がりホース成型用金型にセットして所定の曲がり形状とした状態で加硫し、次いで、前記曲がりホース成型用金型から除去して前記マンドレルを抜き取るので、複雑な三次元形状を有し内面に収縮やしわ、たるみのない高品質の樹脂−ゴム複合曲がりホースを低コストで製造できる。
【0058】
本発明に係るこのような曲がりホース成型用金型及びこれを用いた曲がりホースの製造方法は、樹脂チューブの外側に複数のゴム層とこの複数のゴム層間に介在する補強層とを被覆された樹脂−ゴム複合曲がりホースの製造方法に用いられるのが好ましいが、このようなホース構成に限定されることなく、例えば、前記樹脂チューブの内側に損傷防止のため薄いゴム層を設けた樹脂−ゴム複合曲がりホースの製造方法にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係る曲がりホース成型用金型の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る曲がりホース成型金型に、未加硫のホースをセットした状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る曲がりホースの製造方法を説明するための工程図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る曲がりホースの製造方法における未加硫の樹脂−ゴム複合ホースの一部切欠斜視図を示す。
【図5】本発明の実施の形態2に係る曲がりホースの製造方法を説明するための工程図である。
【図6】従来例に係る成型前のストレート状態の未加硫複合ホースの部分切断図を示す。
【図7】他の従来例に係る実施例を示す3層ホースの押出しの説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1:曲がりホース成型用金型, 2:金属棒,
3:ホルダー, 3a:開口部,
4:止めネジ, 5:台座, 6:(長尺)マンドレル,
7:内管, 7a:樹脂チューブ, 7b:内面ゴム層,
8:補強層(繊維補強層), 9:外面ゴム層,
10:未加硫の(樹脂−ゴム複合)ホース,
11〜22:樹脂−ゴム複合曲がりホースの製造ステップ,
19a:予備加硫のステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がりホースの成型に用いられる金型であって、前記曲がりホースの所定の曲げ形状に加工された金属棒と、この金属棒の長手方向の任意の位置と円周方向の任意の向きに固定可能とされると共に、未加硫の前記ホースを支持可能な複数個のホルダーとを備えてなることを特徴とする曲がりホース成型用金型。
【請求項2】
未加硫の前記ホースが、樹脂チューブの外側に複数のゴム層とこの複数のゴム層間に介在する補強層とを被覆された樹脂−ゴム複合ホースであって、更に、前記樹脂チューブ内に樹脂製またはゴム製のマンドレルが内在することを特徴とする請求項1に記載の曲がりホース成型用金型。
【請求項3】
前記金属棒が、この金属棒を支持する台座に立設して固定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の曲がりホース成型用金型。
【請求項4】
前記ホルダーが、未加硫の前記ホース外径と同等な幅を有する開口部を備え、この開口部に未加硫の前記ホースを差し込んで支持可能とされたことを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の曲がりホース成型用金型。
【請求項5】
長尺のゴム製もしくは樹脂製のマンドレルの周囲に樹脂層単独または樹脂層の外周にゴム層を重ねて内管とした後、この内管の外周を覆う補強層を設け、この補強層の上から単層または複数のゴム層を押出被覆した樹脂−ゴム複合ホースとなし、次いで、この樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断した後、前記請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載の曲がりホース成型用金型にセットして所定の曲がり形状とした状態で加硫し、その後、前記曲がりホース成型用金型から除去し、前記マンドレルを抜き取って樹脂−ゴム複合曲がりホースを製造することを特徴とする曲がりホースの製造方法。
【請求項6】
未加硫の前記樹脂−ゴム複合ホースを所定長に切断する前に、予備加硫することを特徴とする請求項5に記載の曲がりホースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−23256(P2009−23256A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189827(P2007−189827)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000233619)株式会社ニチリン (69)
【Fターム(参考)】