説明

有機又は無機トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置

【課題】動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を行うことができる有機又は無機トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供する。
【解決手段】有機トランジスタは、基板1の表面に形成された導電層2上の絶縁層3及びそれを含む内面に形成される。導電層2は、ソース又はドレイン電極6に接続される。ゲート電極4は、絶縁層3上にある多孔質金属膜内にあり、ゲート絶縁膜5は、ゲート電極4を覆うようにして形成される。有機半導体層7は、ソース又はドレイン電極6とドレイン又はソース電極8との間に挟まれ、有機トランジスタのチャネルは、有機半導体層7とゲート絶縁膜5との界面に垂直方向に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック、ガラス等の基板上に形成される有機又は無機トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)を始めとする有機(電子)デバイスが注目されている。有機材料を用いる有機デバイスは、無機デバイスに比べて低温で製造でき、これによって、印刷法、インクジェット法等を用いて低コストで製造できるとともに大面積化が容易となる。さらに、有機デバイスは、軽量かつフレキシブルであるため、様々な携帯端末、ディスプレイ、ICタグ等の装置に幅広く適用することができる。
【0003】
有機トランジスタの性能を表す重要なパラメータとして、ドレイン電流ON/OFF比、応答速度及びキャリア移動度を挙げることができるが、現状では、有機TFTのこれらの性能は、無機トランジスタに比べて劣っている。
【0004】
トランジスタの性能を向上させるために、半導体材料の高純度化、薄膜の単結晶化、高誘電率ゲート絶縁膜の使用等の研究が行われているが、ドレイン電流(Id)及び動作速度を向上させるのに最も効果的な手法は、トランジスタのチャネル長(L)を縮小するとともに素子構造を微細化することである。
【0005】
Coxを単位面積当りのゲート酸化膜容量とし、μを移動度とし、Wをチャネル幅とし、Vgをゲート電圧とし、Vthをしきい値電圧とした場合、ドレイン電流Id及び遮断周波数fを、以下の式(1),(2)でそれぞれ表すことができる。
Id=(Cox・μ/2)・(W/L)・(Vg−Vth) (1)
f=μ・(Vg−Vth)/2πL (2)
【0006】
式(1)からわかるように、トランジスタのチャネル長Lが小さくなると、ドレイン電流Idが大きくなる。また、式(2)からわかるように、トランジスタのチャネル長Lが小さくなると、遮断周波数fが向上し、動作速度を高めることができる。
【0007】
しかしながら、有機トランジスタの短チャネル化及び微細化を行う場合、半導体層に用いる有機材料、例えばアセン系分子材料(ペンタセン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン)、フタロアニン系化合物等は、一般的に使用される有機溶媒(アセトン、エタノール、レジスト剥離・現像液等)に対する耐性が弱く、ダメージを受けやすい。このために、従来の無機Siデバイスの微細加工に用いるようなフォトリソグラフィー・エッチング加工を有機トランジスタの製造に適用するのが困難となり、有機トランジスタの微細化が困難であるのが現状である。
【0008】
従来、フォトリソグラフィー・エッチング加工以外の手法を用いて有機トランジスタの微細化を行う手法が提案されており、そのうちの一つでは、有機半導体層形成前にソース・ドレイン電極を、ソフトリソグラフィーの一種であるマイクロコンタクトプリンティング法によって加工し、有機材料にダメージを与えることなくボトムコンタクト型の有機トランジスタを形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
フォトリソグラフィー・エッチング加工以外の手法を用いて有機トランジスタの微細化を行う他の手法によれば、トランジスタの素子構造を通常のMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造(横型構造)からSIT(Static-Induction-Transistor)構造(縦型構造)にすることによって、サブミクロンのチャネル長を形成している(例えば、非特許文献1参照)。この手法では、有機半導体層の膜厚がトランジスタのチャネル長になるため、微細なチャネル長を容易に形成することができ、その結果、遮断周波数が2.3kHzという高い動作速度を実現している。
【特許文献1】特開2003−31816号公報
【非特許文献1】工藤ほか、信学技報、ONE98−50,1998年7月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1によれば、10〜5μm程度のゲート長しか得られないのが現状であり、微細なチャネル長の形成が困難である。また、上記非特許文献1によれば、構造的な問題から素子のOFF時に流れるゲート漏れ電流を抑制するのが困難であり、その結果、良好な動作特性を得るのが困難となっている。一方、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を行うことは、無機トランジスタにおいても要求されている。
【0011】
本発明の目的は、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を行うことができる有機又は無機トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による有機又は無機トランジスタは、
基板と、
その基板上に形成されたゲート電極と、
そのゲート電極を被覆するとともに、複数のナノホールを有する多孔質絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を前記ナノホールに設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成したことを特徴とする。
【0013】
本発明による他の有機又は無機トランジスタは、
基板と、
その基板上に形成され、ナノホールに対応する形状を有するゲート電極と、
そのゲート電極を被覆する絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、前記絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成したことを特徴とする。
【0014】
本発明による有機又は無機トランジスタの製造方法は、
ゲート電極を基板上に形成するステップと、
そのゲート電極を被覆するとともに、ナノホールを有する多孔質絶縁膜を形成するステップと、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を前記ナノホールに設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成するステップとを具えることを特徴とする。
【0015】
本発明による他の有機又は無機トランジスタの製造方法は、
ナノホールに対応する形状を有するゲート電極を、基板上に形成するステップと、
そのゲート電極を絶縁膜で被覆するステップと、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、前記絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成するステップとを具えることを特徴とする。
【0016】
本発明による画像表示装置は、
行列配置された複数の画素と、
これら画素にそれぞれ対応する有機又は無機トランジスタとを具え、
その有機又は無機トランジスタが、
基板と、
その基板上に形成されたゲート電極と、
そのゲート電極を被覆するとともに、複数のナノホールを有する多孔質絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を前記ナノホールに設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成し、
前記ソース電極、ゲート電極、又はドレイン電極を、画素間配線として用いるためにライン状に形成したことを特徴とする。
【0017】
本発明による他の画像表示装置は、
行列配置された複数の画素と、
これら画素にそれぞれ対応する有機又は無機トランジスタとを具え、
その有機又は無機トランジスタが、
基板と、
その基板上に形成され、ナノホールに対応する形状を有するゲート電極と、
そのゲート電極を被覆する絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、前記絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成し、
前記ソース電極、ゲート電極、又はドレイン電極を、画素間配線として用いるためにライン状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明による有機又は無機トランジスタによれば、複数のナノホールを有する多孔質絶縁膜が、基板上に形成されたゲート電極を被覆し、ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造をナノホールに設けて、基板と垂直方向にチャネルを形成している。
【0019】
これによって、有機又は無機半導体層の膜厚がチャネル長となるため、サブミクロンオーダの微細な素子を簡単に製造することができる。また、例えば電気化学法によって形成される微細な多孔質膜内にトランジスタを形成することができるので、従来のリソグラフィー技術を用いることなく素子寸法の微細化を達成することができる。これによって、高移動度かつ高遮断周波数の有機トランジスタを実現することができる。このようにして実現された有機トランジスタは、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を達成することができる。
【0020】
本発明による他の有機又は無機トランジスタによれば、その基板上に形成され、ナノホールに対応する形状を有するゲート電極が、基板上に形成されるとともに、絶縁膜によって被覆され、ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、基板と垂直方向にチャネルを形成している。
【0021】
これによって、ナノホールに対応する形状を有する微細なドット構造が、ゲート電極によって形成され、従来のリソグラフィー技術を用いることなく素子寸法の微細化を達成することができる。これによって、高移動度かつ高遮断周波数の有機トランジスタを実現することができる。このようにして実現された有機トランジスタは、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を達成することができる。ナノホールに対応する形状とは、ナノホールを有するマスク21を通じて金属を堆積し又はエッチングすることによって得られる形状を意味する。
【0022】
本発明による有機又は無機トランジスタの製造方法によれば、ゲート電極を基板上に形成し、ゲート電極を被覆するとともに、ナノホールを有する多孔質絶縁膜を形成し、ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造をナノホールに設けて、基板と垂直方向にチャネルを形成する。これによって、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を行うことができる有機又は無機トランジスタを製造することができる。好適には、前記多孔質絶縁膜を電気化学法によって形成する。
【0023】
本発明による他の有機又は無機トランジスタの製造方法によれば、ナノホールに対応する形状を有するゲート電極を、基板上に形成し、ゲート電極を絶縁膜で被覆し、ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、基板と垂直方向にチャネルを形成する。これによって、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を行うことができる有機又は無機トランジスタを製造することができる。好適には、前記ゲート電極を、ナノホールを有するマスクを用いて形成する。
【0024】
本発明による画像表示装置によれば、ソース電極及びドレイン電極の加工寸法に関係なくナノオーダの微細な有機又は無機トランジスタを形成することができるので、素子の大きさの制約が小さくなる。
【0025】
本発明による他の画像表示装置によれば、ソース電極及びドレイン電極の加工寸法に関係なくナノオーダの微細な有機又は無機トランジスタを形成することができるので、素子の大きさの制約が小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明による有機又は無機トランジスタ及びその製造方法並びに画像表示装置の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1Aは、本発明による有機トランジスタの一実施の形態の断面図である。この有機トランジスタは、基板1と、導電層2と、絶縁層3と、ゲート電極4と、ゲート絶縁膜5と、ソース又はドレイン電極6と、有機半導体層7と、ドレイン又はソース電極8とを具える。
【0027】
基板1を、ガラスや石英材の他に、ポリカーボネイ、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック又はフィルム材によって構成することができる。絶縁層3の材料としては、通常の無機酸化膜SiOや窒化膜SiNなどを適用することができるが、基板1をプラスチックで構成した場合には、有機トランジスタを比較的低い温度で形成する必要があるため、ゲート電極4を陽極酸化して得られる酸化皮膜や、ポリビニルアルコール(PVA)、プルラン、ポリイミド等のスピンコート法、印刷法、インクジェット法等で形成可能な高分子材料が好ましい。
【0028】
ゲート電極4を構成する材料としては、Al,Au,Cr,Ta,Ti等の一般的な金属材料の他に、DEPOT、ポリアニリン等の導電性高分子や、酸化インジウム(ITO)を適用することができ、その形成方法は、特に限定されず、蒸着法やスパッタ法のほかに、スピンコート法、印刷法、インクジェット法、めっきなどの手法を用いることができる。
【0029】
有機半導体層7を構成する材料としては、ペンタセン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン等のアセン系化合物、フタロシアニン系化合物、フラーレン、ポリチオフェン及びこれらの誘導体が用いられる。ソース又はドレイン電極6及びドレイン又はソース電極8を構成する材料としては、一般的な金属材料のほかに導電性高分子も適用可能であり、有機半導体層7をp型の有機半導体材料で構成した場合には、仕事関数の高いものを使用するのが好ましく、有機半導体層7をn型の有機半導体材料で構成した場合には、仕事関数の低いものを使用するのが好ましい。
【0030】
図1Aにおいて、有機トランジスタは、基板1の表面に形成された導電層2上の絶縁層3及びそれを含む内面に形成される。導電層2は、ソース又はドレイン電極6に接続される。ゲート電極4は、絶縁層3上にある多孔質金属膜内にあり、ゲート絶縁膜5は、ゲート電極4を覆うようにして形成される。有機半導体層7は、ソース又はドレイン電極6とドレイン又はソース電極8との間に挟まれ、有機トランジスタのチャネルは、有機半導体層7とゲート絶縁膜5との界面に垂直方向に形成される。
【0031】
図1Bは、本発明による有機トランジスタの製造方法の一実施の形態の一工程における素子の平面図であり、図1Cは、図1Bに示す素子のI−I断面図である。先ず、プラスチック基板上にAuを蒸着法で形成することによって、基板1上に導電層2を形成する。次いで、イソプロピルアルコール(IPA)で2%に希釈したポリマー絶縁膜ポリビニルフェノール(PVP)を、スピンコート法によって導電層2上に塗布することによって、絶縁層3を形成する。なお、絶縁層3は、ゲート電極4との分離層として機能する。
【0032】
図1Dは、本発明による有機トランジスタの製造方法の次の工程における素子の平面図であり、図1Eは、図1Dに示す素子のII−II断面図である。この場合、基板1のうち導電層2及び絶縁層3が形成されている箇所に、低温スパッタ法によりアルミニウムをスパッタリングすることによって、Al層9を形成する。
【0033】
図1Fは、本発明による有機トランジスタの製造方法の次の工程における素子の平面図であり、図1Gは、図1Eに示す素子のIII−III断面図である。この場合、Al層9を、弱酸性のリン酸水溶液中で陽極酸化し、表面にアルミナ酸化皮膜が形成されたAlのポーラス膜(多孔質膜)を形成する。このようにして形成された酸化皮膜及びAlは、ゲート絶縁膜5及びゲート電極4としてそれぞれ機能する。
【0034】
図1Hは、本発明による有機トランジスタの製造方法の次の工程における素子の断面図である。この場合、素子をIPAに浸し、絶縁層13の露出した部分を剥離する。最後に、ソース又はドレイン電極6、有機半導体層7及びドレイン又はソース電極8を、ゲート絶縁膜5に形成されたナノホール(開口部)10内に順次積層し、図1Aに示す有機トランジスタを製造する。なお、陽極酸化法(電気化学法)によって形成されるナノホール10は、ナノスケール(数十nm〜数百nm)の径を有する。このように製造された図1Aに示す有機トランジスタは、全体が1個のトランジスタとして動作する。
【0035】
また、図1Aに示す有機トランジスタでは、有機半導体層7の膜厚がチャネル長Lとなるため、サブミクロンオーダの微細な素子を簡単に製造することができる。また、陽極酸化法(電気化学法)によって形成した微細な多孔質膜内にトランジスタを形成することができるので、従来のリソグラフィー技術を用いることなく素子寸法の微細化を達成することができる。これによって、高移動度かつ高遮断周波数の有機トランジスタを製造することができる。このようにして製造された有機トランジスタは、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を達成することができる。
【0036】
図2Aは、本発明による有機トランジスタの他の実施の形態の断面図である。この有機トランジスタは、基板11と、導電層12と、ゲート電極13と、ゲート絶縁膜14と、ソース又はドレイン電極15と、有機半導体層16と、ドレイン又はソース電極17とを具える。
【0037】
図2Aにおいて、微細な金属ドット群として導電層12上に配置されたゲート電極13は、多孔質膜のマスクを用いて基板11上に形成され、ソース又はドレイン電極15、有機半導体層16及びドレイン又はソース電極17が、ゲート絶縁膜14の周りに形成される。
【0038】
図2Bは、本発明による有機トランジスタの製造方法の一実施の形態の一工程における素子の平面図であり、図2Cは、図2Bに示す素子のIV−IV断面図である。先ず、プラスチック基板上にAuを蒸着法で形成することによって、基板11上に導電層12を形成する。
【0039】
その後、ドット状のゲート電極13を導電層12上に形成するが、この際、以下説明するように、スルーホール化したポーラスアルミナ膜をマスクとして使用する。図2Dは、マスクの作製方法の一工程における素子の平面図であり、図2Eは、図2Dに示す素子のV−V断面図である。ここで、マスクの作製方法を説明すると、先ず、アルミ膜18を弱酸性のリン酸水溶液などで陽極酸化して、ナノホール(孔)19及びバリア層部分20を形成する。
【0040】
図2Fは、マスクの作製方法の次の工程における素子の平面図であり、図2Gは、図2Fに示す素子のVI−VI断面図である。この場合、開口部19の底部にあるアルミ膜18及びバリア層部分20を、選択的エッチングによって除去することによって、スルーホール化したマスク21を作製することができる。
【0041】
図2Hは、本発明による有機トランジスタの製造方法の他の実施の形態の次の工程における素子の平面図であり、図2Iは、図2Hに示す素子のVII−VII断面図である。図2C〜2Gに示す工程によって作製されたマスク21を、導電層12が形成された基板11上に配置し、金属材料(例えば、タンタル)を、マスク21を通じて堆積することによって、ナノスケール(数十nm〜数百nm)の微細な間隔を有するドット状のゲート電極13が形成される。
【0042】
図2Jは、本発明による有機トランジスタの製造方法の他の実施の形態の次の工程における素子の平面図であり、図2Kは、図2Jに示す素子のVIII−VIII断面図である。この場合、ゲート電極13が形成された基板11を、中性の電解液中で陽極酸化し、多孔質のゲート絶縁膜14を、ゲート電極13の表面に形成する。電解液としては、アンモニアで中性化した1%酒石酸水溶液の他に、中性化した各種酸系水溶液を用いることができる。
【0043】
最後に、ソース又はドレイン電極15、有機半導体層16及びドレイン又はソース電極17を、ゲート絶縁膜14上に順次積層し、図2Aに示す有機トランジスタを製造する。このように製造された図2Aに示す有機トランジスタは、全体が1個のトランジスタとして動作する。
【0044】
本実施の形態によれば、陽極酸化法で形成された多孔質膜をテンプレートマスクとして用いることによって、微細なドット構造を有する有機トランジスタのゲート電極を形成し、従来のリソグラフィー技術を用いることなく素子寸法の微細化を達成することができる。これによって、高移動度かつ高遮断周波数の有機トランジスタを製造することができる。このようにして製造された有機トランジスタは、動作特性を損なうことなく短チャネル化及び微細化を達成することができる。
【0045】
図3Aは、本発明による画像表示装置の一実施の形態の平面図であり、図3Bは、図3AのIX−IX断面図である。この場合、図2Aに示す有機トランジスタを、アクティブスイッチング素子として液晶表示装置を構成している。
【0046】
本実施の形態において、下部のソース又はドレイン電極ライン31と上部のドレイン又はソース電極ライン32との交差する部分が、有機トランジスタの動作領域aとなり、これらソース又はドレイン電極ライン31及びドレイン又はソース電極ライン32を種々選択することによって、動作領域aを任意に選択することができる。
【0047】
画素電極33を、ドレイン又はソース電極ライン32に接続するようスパッタ法で形成する。画素電極33としては、透過型表示装置を構成する場合には透明電極(ITO)を使用し、反射型表示装置を構成する場合には金属反射皮膜を使用する。画像電極33には、選択された動作領域aの有機トランジスタ及びドレイン又はソース電極ライン32を通じて画像データが送られる。ゲートへの信号は、有機トランジスタの基板上の導電層から供給される。
【0048】
従来の有機トランジスタでは、ソース電極及びドレイン電極の加工寸法によって素子の大きさの制約が大きかったが、本実施の形態によれば、ソース電極及びドレイン電極の加工寸法に関係なくナノオーダの微細な有機トランジスタを形成することができるので、素子の大きさの制約が小さくなる。
【0049】
また、ドレインとソース配線の交差部分である動作領域aで複数のチャネルを並列にして有機トランジスタを動作させることができるので、高速動作及び大きなドレイン電流の変調が可能となり、これによって、液晶・電気泳動などの表示素子を駆動した場合、高周波数でも優れた表示特性を得ることができる。
【0050】
図4Aは、本発明による画像表示装置の他の実施の形態の平面図であり、図4Bは、図4AのX−X断面図である。この場合、図1Aに示す有機トランジスタを、アクティブスイッチング素子として液晶表示装置を構成している。
【0051】
本実施の形態において、下部のソース又はドレイン電極ライン41と上部のドレイン又はソース電極ライン42との交差する部分が、有機トランジスタの動作領域bとなり、これらソース又はドレイン電極ライン41及びドレイン又はソース電極ライン42を種々選択することによって、動作領域aを任意に選択することができる。
【0052】
画素電極43を、ドレイン又はソース電極ライン42に接続するようスパッタ法で形成する。画素電極43としては、透過型表示装置を構成する場合には透明電極(ITO)を使用し、反射型表示装置を構成する場合には金属反射皮膜を使用する。画像電極43には、選択された動作領域bの有機トランジスタ及びドレイン又はソース電極ライン42を通じて画像データが送られる。ゲートへの信号は、有機トランジスタの基板上の多孔質膜を構成するAl部分を通じて供給される。
【0053】
図5は、本発明による画像表示装置の他の実施の形態を示す図である。本実施の形態では、図2Aに示す有機トランジスタを、アクティブスイッチング素子としてEL表示装置を構成している。
【0054】
図5において、発光層51は有機トランジスタ52の上に位置し、ドレイン電極53は発行層52の上に位置する。この場合、有機トランジスタ52は、垂直方向にドレイン電流が流れるため、例えば有機半導体層にペンタセンを用いれば、これが正孔輸送層となり、ソース/ドレイン間に印加する電圧に応じて発光層51の輝度を制御することができる。
【0055】
また、図示したように、単画素で複数の有機トランジスタを使用しているので、大きな駆動電流を流すことができ、特に有機EL素子などの駆動に有利である。さらに、図3,4と同様な方法で電極ラインを形成することによって、画像表示素子を構成することができる。
【0056】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
例えば、上記実施の形態において、有機トランジスタの場合について説明したが、一部で高温プロセスが可能である場合には、本発明を無機トランジスタに適用することもできる。なお、無機材料としては、例えばシリコンを用いる。また、PVPの希釈を、上記実施の形態で説明したものに限らず、種々の溶媒及び濃度で行うことができる。
【0057】
また、図2B〜2Kにおいて、金属材料を堆積してゲート電極を形成するためにマスクを使用したが、導電層をエッチングしてゲート電極を形成するためにマスクを使用することもできる。さらに、図5において、図2Aに示す有機トランジスタの代わりに図1Aに示す勇気トランジスタを使用しても、構成及び動作においてほぼ同一となる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による有機トランジスタ及びその製造方法の一実施の形態を示す図である。
【図2】本発明による有機トランジスタ及びその製造方法の他の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明による画像表示装置の一実施の形態を示す図である。
【図4】本発明による画像表示装置の他の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明による画像表示装置の他の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1,11 基板
2,12 導電層
3 絶縁層
4,13 ゲート電極
5,14 ゲート絶縁膜
6,15 ソース又はドレイン電極
7,16 有機半導体層
8,17 ドレイン又はソース電極
9 Al層
10,19 ナノホール(孔)
18 アルミ膜
20 バリア層部分
21 マスク
31,41 ソース又はドレイン電極ライン
32,42 ドレイン又はソース電極ライン
33 画素電極
51 発光層
52 有機トランジスタ
53 ドレイン電極
a,b 動作領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
その基板上に形成されたゲート電極と、
そのゲート電極を被覆するとともに、複数のナノホールを有する多孔質絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を前記ナノホールに設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成したことを特徴とする有機又は無機トランジスタ。
【請求項2】
基板と、
その基板上に形成され、ナノホールに対応する形状を有するゲート電極と、
そのゲート電極を被覆する絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、前記絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成したことを特徴とする有機又は無機トランジスタ。
【請求項3】
ゲート電極を基板上に形成するステップと、
そのゲート電極を被覆するとともに、ナノホールを有する多孔質絶縁膜を形成するステップと、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を前記ナノホールに設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成するステップとを具えることを特徴とする有機又は無機トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記多孔質絶縁膜を電気化学法によって形成することを特徴とする請求項3記載の有機又は無機トランジスタの製造方法。
【請求項5】
ナノホールに対応する形状を有するゲート電極を、基板上に形成するステップと、
そのゲート電極を絶縁膜で被覆するステップと、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、前記絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成するステップとを具えることを特徴とする有機又は無機トランジスタの製造方法。
【請求項6】
前記ゲート電極を、ナノホールを有するマスクを用いて形成することを特徴とする請求項5記載の有機又は無機トランジスタ。
【請求項7】
行列配置された複数の画素と、
これら画素にそれぞれ対応する有機又は無機トランジスタとを具え、
その有機又は無機トランジスタが、
基板と、
その基板上に形成されたゲート電極と、
そのゲート電極を被覆するとともに、複数のナノホールを有する多孔質絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を前記ナノホールに設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成し、
前記ソース電極、ゲート電極、又はドレイン電極を、画素間配線として用いるためにライン状に形成したことを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
行列配置された複数の画素と、
これら画素にそれぞれ対応する有機又は無機トランジスタとを具え、
その有機又は無機トランジスタが、
基板と、
その基板上に形成され、ナノホールに対応する形状を有するゲート電極と、
そのゲート電極を被覆する絶縁膜とを具え、
ソース電極、有機又は無機半導体層及びドレイン電極の積層構造を、前記絶縁膜が被覆されたゲート電極の周辺に設けて、前記基板と垂直方向にチャネルを形成し、
前記ソース電極、ゲート電極、又はドレイン電極を、画素間配線として用いるためにライン状に形成したことを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−13128(P2006−13128A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−188068(P2004−188068)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】