説明

案内制御装置、案内制御方法、及び案内制御プログラム

【課題】自車が走行を開始する道路の交通の流れに応じた案内情報を出力することが可能となる、案内制御装置、案内制御方法、及び案内制御プログラムを提供すること。
【解決手段】案内制御装置10は、自車が道路に対して走行を開始する初期走行位置から所定距離内に位置する、道路が接続する信号交差点の有無を判定する判定部11bと、初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点が有るものと判定部11bが判定した場合、信号交差点の信号機の点灯状態を特定する点灯状態特定部11cと、点灯状態特定部11cが特定した点灯状態に応じて道路の走行を開始する際の案内情報の出力制御を行う案内制御部11dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内制御装置、案内制御方法、及び案内制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転支援のための各種の案内情報を運転者に提示する案内制御装置が用いられている。この案内制御装置は、CCDカメラや赤外線センサ等の各種センサを用いて自車の周囲状況を監視し、液晶モニタや音声出力装置等を介して必要な情報を運転者に出力する。
【0003】
例えば、駐車場に前向き駐車した状態から後退走行する際の車両の運転者の負担を軽減するための車両用運転支援装置が提案されている。この車両用運転支援装置は、車両に搭載したカメラ及び障害物センサにより取得した情報に基づき自車周囲の空間情報を演算すると共に、当該空間情報、走行軌跡、及び車両寸法に係る諸元情報を参照することにより、後退走行時の車両転向方向を含む駐車場からの退場方法を算出し、その退場方法をモニタ等を介して運転者に報知する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−12987号公報(段落0004、0005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、単に他の駐車車両や壁等の障害物との接触を回避しつつ駐車位置から退出する方法を報知するものに過ぎず、自車が走行を開始する道路における交通の流れを考慮していなかった。従って、自車が道路上の走行を開始する初期走行位置の近傍に交差点がある場合、自車が走行を開始する道路に交差点から進入してくる他車を運転者が即座に把握することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、自車が走行を開始する道路の交通の流れに応じた案内情報を出力することが可能となる、案内制御装置、案内制御方法、及び案内制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の案内制御装置は、自車が道路に対して走行を開始する初期走行位置から所定距離内に位置する、前記道路が接続する信号交差点の有無を判定する判定手段と、前記初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点が有るものと前記判定手段が判定した場合、当該信号交差点の信号機の点灯状態を特定する点灯状態特定手段と、前記点灯状態特定手段が特定した点灯状態に応じて前記道路の走行を開始する際の案内情報の出力制御を行う案内制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の案内制御装置は、請求項1に記載の案内制御装置において、前記点灯状態特定手段は、前記信号交差点の信号機のうち、前記自車が進入する進入道路の信号機の点灯状態を特定し、前記案内制御手段は、前記点灯状態特定手段が特定した前記進入道路の信号機の点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の案内制御装置は、請求項1又は2に記載の案内制御装置において、前記点灯状態特定手段は、前記信号交差点において前記自車が進入する進入道路と交差する交差道路の信号機の点灯状態を特定し、前記案内制御手段は、前記点灯状態特定手段が特定した前記交差道路の信号機の点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うことを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の案内制御装置は、請求項3に記載の案内制御装置において、前記案内制御手段は、前記交差道路の信号機の点灯状態に応じて当該交差道路から前記進入道路へ他車が進入可能であるか否かを判断し、当該判断結果に応じて案内情報の出力制御を行うことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の案内制御方法は、自車が道路に対して走行を開始する初期走行位置から所定距離内に位置する、前記道路が接続する信号交差点の有無を判定する判定ステップと、前記初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点が有るものと前記判定ステップにおいて判定された場合、当該信号交差点の信号機の点灯状態を特定する点灯状態特定ステップと、前記点灯状態特定ステップにおいて特定された点灯状態に応じて前記道路の走行を開始する際の案内情報の出力制御を行う案内制御ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の案内制御プログラムは、請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の案内制御装置、請求項5に記載の案内制御方法、及び請求項6に記載の案内制御プログラムによれば、点灯状態特定手段が特定した信号交差点の信号機の点灯状態に応じて案内制御手段が案内情報の出力制御を行うので、点灯状態毎に変化する道路の交通の流れに応じて注意を払うべき対象に関する案内情報を出力することができ、運転者が自車を安全に走行させることができる。
【0014】
また、請求項2に記載の案内制御装置によれば、進入道路の信号機の点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うので、進入道路の交通の流れに応じて注意を払うべき対象に関する案内情報を出力することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の案内制御装置によれば、交差道路の信号機の点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うので、進入道路の交通の流れに加えて、交差道路の交通の流れに応じて注意を払うべき対象に関する案内情報を出力することができ、運転者が正確且つ確実な判断を行うことができる。
【0016】
また、請求項4に記載の案内制御装置によれば、交差道路の信号機の点灯状態に応じて交差道路から進入道路へ他車が進入可能であるか否かを判断し、当該判断結果に応じて案内情報の出力制御を行うので、交差道路から進入道路へ進入する他車について注意を払うべきか否かを正確に判断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る案内制御装置、案内制御方法、及び案内制御プログラムの各実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
〔実施の形態1〕
最初に、実施の形態1について説明する。この形態は、自車が道路に対して走行を開始する初期走行位置から所定距離内に位置する、道路が接続する信号交差点の信号機のうち、自車が進入する進入道路の信号機の点灯状態を特定し、当該特定した点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行う形態である。ここで、「自車」とは、本実施の形態1に係る案内制御装置が取り付けられた車両である。「初期走行位置」とは、道路沿いに設けられている駐車場から自車が進入して当該道路を走行する場合における当該道路上の走行開始位置、あるいは、道路の側端に縦列駐車している状態から自車が走行を開始する場合における当該道路上の走行開始位置を含む概念である。また、「進入道路」とは、道路沿いに設けられている駐車場から自車が進入して当該道路を走行する場合における当該道路、及び、道路の側端に縦列駐車している状態から自車が走行を開始する場合における当該道路を含む概念である。また、信号機の「点灯状態」とは、当該信号機に設けられた赤、黄、又は青の各色の信号灯が点灯又は点滅している状態の他、当該信号機に設けられた矢印信号灯が点灯している状態を含む概念である。「案内情報」とは、自車が進入道路に進入する際の運転者に対する注意喚起を含む情報である。本実施の形態では、道路沿いに設けられている駐車場から自車が当該道路に進入する場合について説明する。
【0019】
(構成)
図1は実施の形態1に係る案内制御システムを例示するブロック図である。この案内制御システム1は、案内制御装置10、無線通信部20、車輪速センサ30、ステアリングセンサ40、シフトポジションセンサ50、モニタ60、スピーカ70、現在地検出処理部80、及びカメラ90を備えている。
【0020】
(構成−案内制御装置)
最初に、案内制御装置10の構成について説明する。この案内制御装置10は、制御部11及びデータ記録部12を備えている。
【0021】
制御部11は、案内制御装置10を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る案内制御プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して案内制御装置10にインストールされることで、制御部11の各部を実質的に構成する。
【0022】
この制御部11は、機能概念的に、自車状態特定部11a、判定部11b、点灯状態特定部11c、案内制御部11d、及び駐車情報格納部11eを備えている。自車状態特定部11aは、自車の現在位置や走行状態等を含む自車状態を特定する自車状態特定手段である。判定部11bは、自車の初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点の有無を判定する判定手段である。点灯状態特定部11cは、信号交差点の信号機の点灯状態を特定する点灯状態特定手段である。案内制御部11dは、点灯状態特定部11cが特定した点灯状態に応じた案内情報の出力制御を行う案内制御手段である。「案内情報」とは、自車が道路の走行を開始する際の運転者に対する注意喚起を含む情報であり、例えばモニタ60やスピーカ70によって出力される情報である。駐車情報格納部11eは、駐車情報を格納する駐車情報格納手段であり、自車が駐車されていることが自車状態特定部11aによって特定された場合に、駐車情報を例えばRAMに格納する。「駐車情報」とは、自車の駐車方向を特定するための情報であり、例えば、自車が道路外の駐車スペースに対して前向き駐車をしている場合には「ON」、それ以外の場合には「OFF」となる前向き駐車フラグを用いることができる。これらの制御部11の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0023】
データ記録部12は、案内制御装置10の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0024】
このデータ記録部12は、地図情報データベース12a(以下データベースを「DB」と称する)を備えている。地図情報DB12aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」とは、信号交差点の有無判定や、信号交差点における信号機の種別の特定に必要な情報であり、例えば、地図をモニタ60に表示するための地図表示データ、交差点に関する交差点データ、及び道路データ等を含んで構成されている。この内、「交差点データ」は、交差路の数や通行方向を特定する交差点の種別に関する交差点情報(例えば、交差点がスクランブル交差点であるか否かの情報を含む)、交差点に接続する道路の道路番号、及び信号機の有無や種別(例えば赤、黄、又は青の信号灯の種別、矢印信号灯の有無等)に関する信号機情報を含むデータであり、「道路データ」は、道路座標、道路番号、歩道の有無や横断歩道の位置に関する歩道情報、中央線の有無や位置に関する境界情報、車線数、及び通行方向等に関する情報を含むデータである。
【0025】
(構成−無線通信部)
無線通信部20は、例えば信号機や路上機(例えばビーコン)に設けられた通信機器との間で無線を介した通信を行なう通信手段である。この無線通信部20を介して、信号機情報や、信号機の点灯状態を特定する点灯状態情報の受信を行う。
【0026】
(構成−車輪速センサ)
車輪速センサ30は、車輪の回転速度を検出し、当該検出値を制御部11に出力するものであり、公知の車輪速センサを用いることができる。
【0027】
(構成−ステアリングセンサ)
ステアリングセンサ40は、車両のステアリングホイールの操舵角を検出し、当該検出値を制御部11に出力するものであり、公知のステアリングセンサを用いることができる。
【0028】
(構成−シフトポジションセンサ)
シフトポジションセンサ50は、車両の変速機を操作するためのシフトレバーのポジションを検出し、当該検出値を制御部11に出力するものであり、公知のシフトポジションセンサを用いることができる。
【0029】
(構成−モニタ)
モニタ60は、案内制御部11dによって出力制御された案内情報を表示するためのものであり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイ、又は車両のフロントガラスにホログラムを投影するホログラム装置等を使用することができる。
【0030】
(構成−スピーカ)
スピーカ70は、案内制御部11dによって出力制御された案内情報を音声出力するためのものであり、公知のスピーカを用いることができる。
【0031】
(構成−現在地検出処理部)
現在地検出処理部80は、自車の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在地検出処理部80は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0032】
(構成−カメラ)
カメラ90は、車両の周囲を撮影するための撮影手段であり、例えば車両の後端部に配置されている。カメラ90により取得された画像情報は、当該カメラ90から制御部11に出力される。このカメラ90は、CCDセンサやCMOSセンサ等の公知の撮像素子、及び魚眼レンズやプリズム等の公知の光学系部品を用いて構成されている。図2は、カメラ90を自車の後端部に設置した場合における画角を例示した図であり、図2(a)は魚眼レンズを用いたカメラ90の画角(以下「魚眼画角」)、図2(b)はプリズムを用いたカメラ90の画角(以下「プリズム画角」)を示している。図2(a)に示したように、魚眼画角は、自車2の後進方向を中心として約180度の画角となる。一方、プリズム画角は、図2(b)に示したように、自車2の左右方向それぞれについての所定の画角となる。なお、図2はあくまで例示であり、自車2の任意の位置に、任意の方向の画角を有するようにカメラ90を配置することができる。
【0033】
(処理)
このように構成される案内制御システム1によって実行される処理について説明する。案内制御システム1が実行する処理は、自車2が駐車した際に実行される駐車処理と、自車2が駐車場から道路に進入する際に実行される進入処理とに大別される。これらの駐車処理と進入処理とについて、以下説明する。
【0034】
(処理−駐車処理)
まず、駐車処理について説明する。図3は駐車処理を示したフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この駐車処理は、自車2の走行開始後に自動的に起動される。走行開始後、自車状態特定部11aは、自車2が駐車されたか否かを監視し(SA2)、駐車される迄、現在地検出処理部80を介して自車位置を継続的に取得する(SA1)。ここで、自車2が駐車されたか否かの判断基準は任意であり、例えば、車輪速センサ30を介して取得した車輪の回転速度が0であり、シフトポジションセンサ50を介して取得したシフトレバーのポジションがパーキングポジションとなっており、且つ、パーキングブレーキが掛けられている場合に、自車2が駐車されたものと判定する。
【0035】
自車2が駐車されたものと判定した場合(SA2、Yes)、自車状態特定部11aは、自車2が道路外の駐車場に前向き駐車されたか否かを判定する(SA3)。ここで、「前向き駐車」とは、駐車スペースに対して自車2が前進しながら進入され駐車された場合をいう。一方、駐車スペースに対して自車2が後進しながら進入され駐車された場合は「後向き駐車」と称する。
【0036】
なお、自車2が道路外の駐車場に駐車されたか否かの判定基準は任意であり、例えば、SA2にて自車2が駐車されたものと判定した際、自車位置と道路データとに基づいて自車2が道路上にあるか否かを判定し、自車2が道路上にない場合、自車2が道路外の駐車場に駐車されたものと判定することができる。また、自車2が前向き駐車された否かの判定基準は任意であり、例えば、上記SA2において駐車判定を行う直前のシフトレバーのポジションが、前進用ポジション(ドライブ、セカンド等)であった場合には前向き駐車されたものと判定し、後進用ポジション(リバース)であった場合には後向き駐車されたものと判定する。また、SA2において駐車判定を行うまでに取得した自車位置に基づく当該自車2の移動軌跡によって、自車2が前進しながら前向き駐車されたのか、あるいは切返し操作等を行った後に後進しながら後向き駐車されたのかを判定してもよい。あるいは、前向き駐車又は後向き駐車の何れに該当するかの選択を要求する旨の表示をモニタ60に出力させ、所定の操作手段を介して運転者に選択させてもよい。
【0037】
SA3の判定の結果、自車2が道路外の駐車場に前向き駐車されたものと判定した場合(SA3、Yes)、駐車情報格納部11eは、前向き駐車フラグに「ON」を格納する(SA4)。一方、自車2が道路外の駐車場に前向き駐車されなかったものと判定した場合(それ以外の場合。例えば道路外の駐車場に後向き駐車された場合や道路上に駐車された場合等)(SA3、No)、駐車情報格納部11eは、前向き駐車フラグに「OFF」を格納する(SA5)。なお、SA2にて自車2が駐車されたものと判定した際、自車位置と道路データとに基づいて自車2が道路上にあるか否かを判定し、自車2が道路上にある場合、自車2が道路上に駐車されていると判定し、その旨を駐車情報格納部11eにより格納させておいてもよい。この場合の処理については後述の変形例2にて説明する。これにて駐車処理を終了する。
【0038】
(処理−進入処理)
次に、進入処理について説明する。図4は進入処理を示したフローチャート、図5は、進入処理実行時における、信号交差点の信号機の点灯状態と交通の流れとの関係を示した平面図、図6は進入処理実行時において案内制御部11dに出力制御されたモニタ60の画面を例示した図である。
【0039】
この進入処理において、案内制御システム1を起動させるタイミングは任意であり、例えば、エンジンが始動された場合に案内制御システム1が起動されるようにすることができる。案内制御システム1が起動すると、図4に示すように、自車状態特定部11aは、駐車情報格納部11eによって格納された駐車情報である前向き駐車フラグを参照し、前向き駐車フラグが「ON」であるか否かを判定する(SB1)。前向き駐車フラグが「ON」でなかった場合(前向き駐車フラグが「OFF」であった場合)(SB1、No)、例えば自車2が道路外の駐車場に後向き駐車された場合等には、自車状態特定部11aは、案内情報の出力を行わなくても運転者が目視等にて自ら安全確認を容易に行うことが可能であり、案内情報の出力制御を行う必要はないものとし、進入処理を終了する。
【0040】
一方、前向き駐車フラグが「ON」であった場合(SB1、Yes)、自車状態特定部11aは、シフトレバーのポジションがリバースとなるまで待機する(SB2、No)。シフトレバーのポジションがリバースとなった場合(SB2、Yes)、自車2が前向き駐車の状態から後方に進入すると判断し、現在地検出処理部80を介して自車2の位置を取得する(SB3)。判定部11bは、当該取得した自車位置と地図情報DB12aに格納されている地図情報とに基づき、駐車場から自車2が道路に進入して走行を開始する初期走行位置を特定すると共に、自車2が走行を開始する車線の通行方向後方において初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点であって、自車2が進入する進入道路が接続する信号交差点の有無を判定する(SB4)。SB4において初期走行位置を特定する処理としては、例えば、図5に示したように、自車位置と自車2が駐車されている駐車場の出口中央とを通るように引いた仮想直線と、駐車場に接している車線の中心線との交点を、初期走行位置として特定してもよい。
【0041】
図4に戻り、初期走行位置から所定距離内に進入道路と接続する信号交差点があると判定した場合(SB4、Yes)、点灯状態特定部11cは、地図情報DB12aに含まれている交差点データを参照し、信号交差点に設置されている信号機の種別を特定すると共に、無線通信部20を介して当該信号機から点灯状態情報を取得する(SB5)。なお、無線通信部20を介して点灯状態情報を取得できない場合は、カメラ90を介して信号交差点の信号機の撮影データを取得し、当該撮影データを画像解析することにより点灯状態を特定させてもよい。さらに、信号交差点に設置されている各信号機間の点灯状態の対応関係を特定するためのデータを予めデータ記録部12に格納しておくことにより、カメラ90を介して撮影した信号機の点灯状態に対応する他の信号機の点灯状態を当該データに基づき特定することができるので、カメラ90によって撮影できない信号機の点灯状態についても特定することが可能である。
【0042】
点灯状態特定部11cは、取得した点灯状態情報に基づき、信号交差点の信号機のうち、自車2が進入する進入道路の信号機4aの点灯状態が「赤」か否かを判定する(SB6)。その結果、点灯状態が「赤」であった場合(SB6、Yes)、点灯状態特定部11cは、SB5で取得した点灯状態情報及びSB5で特定した信号機種別に基づき、交差道路から進入道路へ他車3が進入する可能性があるか否かを判定する(SB7)。「交差道路」とは、信号交差点において進入道路と交差する1以上の道路を意味する。例えば、交差道路の信号機4bの点灯状態が「青」若しくは「黄」である場合、又は右左折用の矢印信号が点灯している場合、交差道路から進入道路へ他車3が進入可能と判断する。
【0043】
交差道路から進入道路へ他車3が進入可能と判定した場合(SB7、Yes)、点灯状態特定部11cは、SB5で取得した点灯状態情報及びSB5で特定した信号機種別に基づき、交差道路から進入道路への他車3の進入方向が一方向に限定されているか否かを判定する(SB8)。その結果、他車3の進入方向が一方向に限定されている場合(SB8、Yes)、例えば、交差道路の信号機4bの点灯状態が右折用の矢印信号のみ点灯している状態であり、交差道路からの右折車のみが進入可能である場合(図5(b)の状態)、案内制御部11dは、当該交差道路からの右折車に特に注意すべき状況と判断し、信号交差点を右折した他車3の接近に注意する旨の案内情報(以下「注意喚起1」)をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う(SB9)。例えば、注意喚起1としては「交差点を右折した車が接近する可能性があります。」のような合成音声を出力する。
【0044】
他車3の進入方向が一方向に限定されていない場合(SB8、No)、例えば、交差道路の信号機4bの点灯状態が「青」又は「黄」であり、交差道路から右折車及び左折車が進入可能である場合(図5(c)の状態)、案内制御部11dは、当該交差道路からの右折車及び左折車に特に注意すべき状況と判断し、信号交差点を右折又は左折した他車3の接近に注意する旨の案内情報(以下「注意喚起2」)をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う(SB10)。例えば、注意喚起2としては「交差点を右折又は左折した車が接近する可能性があります。」のような合成音声を出力する。
【0045】
一方、SB4において初期走行位置から所定距離内に進入道路と接続する信号交差点がないと判定した場合(SB4、No)、SB6において進入道路の信号機4aの点灯状態が「赤」でない場合(SB6、No)(図5(a)の状態)、及び交差道路から進入道路へ他車3が進入不可と判定した場合(SB7、No)(例えば信号交差点がスクランブル交差点である場合において、当該交差点の全ての車両用信号が「赤」であった場合等)、案内制御部11dは、周囲に均等に注意を払うべき状況と判断し、周囲に注意して後退する旨の案内情報(以下「注意喚起3」)をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う(SB11)。例えば、注意喚起3としては「周囲に注意してください。」のような合成音声を出力する。
【0046】
このように進入処理における各案内情報としての注意喚起1から注意喚起3の具体的な出力方法は任意であり、例示したようなスピーカ70からの音声出力の他、モニタ60による画面表示出力、あるいはこれらを組合わせて出力させることができる。例えば「注意喚起1」の案内情報をモニタ60に画面表示出力させる場合、図6(a)に示したように、矢印を用いて交差道路から進入道路への他車3の進入方向を明示し、運転者が注意すべき方向を容易に把握できるようにすることができる。
【0047】
図4のSB9、SB10、又はSB11の処理が実行された後、自車状態特定部11aは、駐車場からの進入が完了したか否かを判定する(SB12)。当該判定の具体的な基準は任意であり、現在地検出処理部80を介して取得した自車2の現在位置と、地図情報DB12aに格納されている道路データとに基づき、自車2が道路上に位置していると判断した場合に、駐車場からの進入が完了したものと判定させることができる。
【0048】
駐車場からの進入が完了していないものと判定した場合(SB12、No)、自車状態特定部11aはSB3に戻り、自車2の現在位置を再度取得する(SB3)。一方、駐車場からの進入が完了したものと判定した場合(SB12、Yes)、進入処理を終了する。
【0049】
(変形例1)
なお、上述した処理に加えて、あるいは上述した処理の一部に代えて、以下に説明する変形例1又は変形例2のような処理を行ってもよい。信号交差点と自車2の走行開始位置との間に、信号機のない交差点が存在する場合は、当該交差点から他車3が進入する可能性もあるため、信号交差点のみを考慮した案内情報では不十分である可能性がある。このため、当該信号機のない交差点に関する案内情報を運転者に報知するようにしてもよい。
【0050】
例えば、図4のSB4において、判定部11bは、初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点の有無を判定する際に、さらに、初期走行位置から所定距離内に位置する信号機のない交差点の有無を判定する。そして、当該信号機のない交差点があると判定した場合、案内制御部11dは、SB9からSB11において注意喚起1から注意喚起3のいずれかを出力する際に、さらに、当該信号機のない交差点の存在を報知するための案内情報をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う。例えば、図6(b)に示したように、当該信号機のない交差点を図示する。これにより、運転者は、信号交差点以外の交差点からの進入にも留意しつつ、信号交差点から進入道路への他車3の進入に十分な注意を払うことができる。
【0051】
(変形例2)
また、道路の側端に縦列駐車している状態から自車2が進入する場合にも、図4の進入処理を適用することができる。図7は、縦列駐車している状態から自車2が進入する場合における、信号交差点の信号機の点灯状態と交通の流れとの関係を示した平面図である。
【0052】
例えば、図4のSB1において前向き駐車フラグがONではないと判定した場合(SB1、No)、自車状態特定部11aは、現在地検出処理部80を介して取得した自車2の位置や、駐車前の走行履歴等に基づき、自車2が縦列駐車されているか否かを判定する。具体的には、例えば自車位置と道路データとに基づいて自車2が道路上にあるか否かを判定し、自車2が道路上にある場合、自車2が道路上に駐車されているものと判定することができる。また、自車2が道路上に駐車されているか否かの判定を前述の駐車処理にて行い、道路上に駐車されていると判定した場合、その旨を駐車情報として駐車情報格納部11eによって格納させておき、当該駐車情報に基づいて、自車2が縦列駐車されているか否かを判定させてもよい。そして、自車2が縦列駐車されていると判定した場合には、SB1及びSB2の処理を省略し、SB3から進入処理を実行させる。
【0053】
この場合、図7(a)の状態は、SB6において進入道路の信号機4aの点灯状態が「赤」でなく、他車3が進入道路を通行可能な場合(SB6、No)に該当するので、案内制御部11dが注意喚起3をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う(SB11)。また、図7(b)の状態は、交差道路からの右折車のみが進入可能である場合(SB8、Yes)に該当するので、案内制御部11dが注意喚起1をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う(SB9)。また、図7(c)の状態は、交差道路から右折車及び左折車が進入可能である場合(SB8、No)に該当するので、案内制御部11dが注意喚起2をモニタ60やスピーカ70から出力させるように出力制御を行う(SB10)。
【0054】
(効果)
このように本実施の形態1によれば、点灯状態特定部11cが特定した信号交差点の信号機の点灯状態に応じて案内制御部11dが案内情報の出力制御を行うので、点灯状態毎に変化する道路の交通の流れに応じて優先的に注意を払うべき対象に関する案内情報を出力することができ、運転者が自車2を安全に走行させることができる。
【0055】
また、進入道路の信号機4aの点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うので、進入道路の交通の流れに応じて優先的に注意を払うべき対象に関する案内情報を出力することができる。
【0056】
また、点灯状態特定部11cが特定した交差道路の信号機4bの点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うので、信号交差点から他車3が進入してこないという運転者の思い込みによる注意力の低下を防止することができ、交差道路から進入道路への他車3の進入方向に応じて、より優先的に注意を払うべき対象への注意喚起を行うことができる。
【0057】
また、交差道路から進入道路へ他車3が進入可能である場合に、交差道路の信号機4bの点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うので、交差道路から進入道路へ進入する他車3についての注意喚起を行うことができる。
【0058】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2について説明する。この形態は、道路沿いに設けられている駐車場から自車が道路に進入する場合において、自車が対向車線に進入するか否かに応じた案内情報の出力制御を行う形態である。なお、実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0059】
(処理−進入処理)
本実施の形態2に係る案内制御システム1によって実行される進入処理について説明する。図8は実施の形態2に係る進入処理を示したフローチャートである。この進入処理におけるSC1からSC11まで、及びSC14の各処理は、図4に示した実施の形態1の進入処理におけるSB1からSB12までの各処理と同様であるので、その説明を省略する。但し、SC14に関しては、SB12の判定に加えて、進入道路の通行方向と自車2の進行方向とを比較し、この比較結果に基づいて駐車場からの進入が完了したか否かの判定を行う。
【0060】
SC9、SC10、又はSC11の処理を実行して案内情報を出力した後、自車状態特定部11aは、自車2が退出する駐車場に接している車線(以下「進入車線」)に対する対向車線に自車2が進入するか否かを判定する(SC12)。対向車線に進入するか否かの判定基準は任意であり、例えば経路案内が設定されている場合は、当該経路に沿って自車2が走行する車線が、進入車線又は対向車線の何れに該当するかに基づいて判定する。あるいは、ステアリングセンサ40を介して取得した自車2の操舵角に基づき自車2の予想進路を特定し、当該予想進路に応じて、自車2が対向車線に進入するか否かを判定する。
【0061】
その結果、自車2が対向車線に進入すると判定した場合(SC12、Yes)、判定部11bは、対向車線を進入車線として設定する(SC13)。続いて、SC4に戻り、SC3で取得した自車位置と地図情報DB12aに格納されている地図情報とに基づき、SC13で設定した進入車線の通行方向後方において初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点の有無を判定する(SC4)。一方、自車2が対向車線に進入しないと判定した場合は(SC12、No)、自車状態特定部11aは、駐車場からの進入が完了したか否かを判定する(SC14)。
【0062】
(効果)
このように実施の形態2によれば、実施の形態1の全部又は一部と同様の効果に加えて、自車2が対向車線に進入するか否かに応じた案内情報の出力制御を行うので、自車2が対向車線に進入する場合においても、信号交差点の信号機の点灯状態毎に変化する道路交通の流れに応じて優先的に注意を払うべき対象に関する案内情報を出力することができる。
【0063】
〔各実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る各実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0064】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0065】
(進入処理について)
上記の各実施の形態では、進入道路の信号機4aの点灯状態が「赤」であった場合に交差道路の信号機4bの点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行う場合を例示して説明したが、まず交差道路の信号機4bの点灯状態を特定し、当該特定した信号機4bの点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うようにしてもよい。
【0066】
(案内情報の内容について)
上記の各実施の形態では、他車3の交通の流れを案内する案内情報を出力させる場合を例示して説明したが、その他の情報を案内情報に含めることができる。例えば、点灯状態特定部11cが無線通信部20を介して信号機から点灯状態情報を取得する際、点灯状態が変更されるまでの残り時間を特定する残り時間情報を併せて取得させ、当該残り時間情報を案内情報に含めてモニタ60やスピーカ70から出力させることができる。これにより、他車3の交通の流れが変化するまでの残り時間を運転者が把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1に係る案内制御システムを例示するブロック図である。
【図2】カメラを車両の後端部に設置した場合における画角を例示した図であり、図2(a)は魚眼画角、図2(b)はプリズム画角を示した図である。
【図3】駐車処理を示したフローチャートである。
【図4】進入処理を示したフローチャートである。
【図5】進入処理実行時における、信号交差点の信号機の点灯状態と交通の流れとの関係を示した平面図である。
【図6】進入処理実行時において案内制御部に出力制御されたモニタの画面を例示した図である。
【図7】縦列駐車している状態から自車が進入する場合における、信号交差点の信号機の点灯状態と交通の流れとの関係を示した平面図である。
【図8】実施の形態2に係る進入処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 案内制御システム
2 自車
3 他車
4a 進入道路の信号機
4b 交差道路の信号機
10 案内制御装置
11 制御部
11a 自車状態特定部
11b 判定部
11c 点灯状態特定部
11d 案内制御部
11e 駐車情報格納部
12 データ記録部
12a 地図情報DB
20 無線通信部
30 車輪速センサ
40 ステアリングセンサ
50 シフトポジションセンサ
60 モニタ
70 スピーカ
80 現在地検出処理部
90 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車が道路に対して走行を開始する初期走行位置から所定距離内に位置する、前記道路が接続する信号交差点の有無を判定する判定手段と、
前記初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点が有るものと前記判定手段が判定した場合、当該信号交差点の信号機の点灯状態を特定する点灯状態特定手段と、
前記点灯状態特定手段が特定した点灯状態に応じて前記道路の走行を開始する際の案内情報の出力制御を行う案内制御手段と、
を備えることを特徴とする案内制御装置。
【請求項2】
前記点灯状態特定手段は、前記信号交差点の信号機のうち、前記自車が進入する進入道路の信号機の点灯状態を特定し、
前記案内制御手段は、前記点灯状態特定手段が特定した前記進入道路の信号機の点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の案内制御装置。
【請求項3】
前記点灯状態特定手段は、前記信号交差点において前記自車が進入する進入道路と交差する交差道路の信号機の点灯状態を特定し、
前記案内制御手段は、前記点灯状態特定手段が特定した前記交差道路の信号機の点灯状態に応じて案内情報の出力制御を行うこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の案内制御装置。
【請求項4】
前記案内制御手段は、前記交差道路の信号機の点灯状態に応じて当該交差道路から前記進入道路へ他車が進入可能であるか否かを判断し、当該判断結果に応じて案内情報の出力制御を行うこと、
を特徴とする請求項3に記載の案内制御装置。
【請求項5】
自車が道路に対して走行を開始する初期走行位置から所定距離内に位置する、前記道路が接続する信号交差点の有無を判定する判定ステップと、
前記初期走行位置から所定距離内に位置する信号交差点が有るものと前記判定ステップにおいて判定された場合、当該信号交差点の信号機の点灯状態を特定する点灯状態特定ステップと、
前記点灯状態特定ステップにおいて特定された点灯状態に応じて前記道路の走行を開始する際の案内情報の出力制御を行う案内制御ステップと、
を含むことを特徴とする案内制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とする案内制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−60424(P2010−60424A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226211(P2008−226211)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】