説明

樹脂ペースト組成物及び半導体装置

【課題】低粘度で作業性が良く、ブリードアウトが十分に抑制され、信頼性に優れる半導体装置を生産性よく製造することが可能な、樹脂ペースト組成物を提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル化合物と、重合開始剤と、充填材と、環式モノテルペン骨格を有する化合物と、を含有する、樹脂ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペースト組成物及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップの高集積化に伴って半導体チップの発熱量が大きくなってきており、ダイボンド材には高熱伝導特性が求められてきている。また、高温化で使用されるオートモーティブ用途のパッケージにおいても、ダイボンド材の高熱伝導特性が必要である。
【0003】
ダイボンド材の高熱伝導特性を実現するためには、ダイボンド材として用いる樹脂ペースト中の充填材の配合量を多くする必要がある。しかしながら、樹脂ペースト中の充填材の配合量を多くすると、樹脂ペーストの粘度が高くなり作業性が低下してしまう。そのため、従来の樹脂ペーストでは、粘度調整のために溶剤を添加することが一般的である。
【0004】
例えば、特許文献1には、高熱伝導性を有する半導体用樹脂ペーストとして、エポキシ樹脂、酸無水物、イミダゾール化合物、銀粉、溶剤からなる導電ペーストであり、エポキシ樹脂100重量部に対して酸無水物が50〜150重量部、イミダゾール化合物が0.1〜10重量部、銀粉が800〜4000重量部、溶剤が10〜200重量部であることを特徴とする半導体用樹脂ペーストが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−171170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような溶剤を含有する樹脂ペーストを用いて半導体装置を製造すると、樹脂成分の基板へのにじみ出し現象(ブリードアウト)が生じて、半導体装置の信頼性及び生産性が低下するおそれがある。
【0007】
そのため、充填材を多く配合した樹脂ペーストにおいて、粘度を十分に低下させて樹脂ペーストの作業性を向上させることと、ブリードアウトを十分に抑制して半導体装置の信頼性及び生産性を向上させることと、を両立させることは困難である。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低粘度で作業性が良く、ブリードアウトが十分に抑制され、信頼性に優れる半導体装置を生産性よく製造することが可能な、樹脂ペースト組成物を提供することを目的とする。また本発明は、上記樹脂ペースト組成物を用いて製造された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル化合物と、重合開始剤と、充填材と、環式モノテルペン骨格を有する化合物と、を含有する、樹脂ペースト組成物を提供する。
【0010】
本発明の樹脂ペースト組成物は、低粘度で作業性に優れる。また、本発明の樹脂ペースト組成物によれば、ブリードアウトが十分に抑制され、信頼性に優れる半導体装置を生産性良く製造することができる。
【0011】
本発明においては、環式モノテルペン骨格を有する化合物が粘度調整剤として働くことで低粘度化が実現されるとともに、環式モノテルペン骨格を有する化合物によって樹脂成分と充填材との親和性が向上し、ブリードアウトの抑制が実現されると考えられる。
【0012】
本発明において、環式モノテルペン骨格を有する化合物の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量基準で1〜10質量%であることが好ましい。環式モノテルペン骨格を有する化合物の含有量が上記範囲であると、上述の効果が一層顕著に奏される。
【0013】
本発明の樹脂ペースト組成物は、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤をさらに含有していてもよい。
【0014】
また、本発明の樹脂ペースト組成物は、カップリング剤をさらに含有していてもよい。
【0015】
また、本発明の樹脂ペースト組成物は、可とう化剤をさらに含有していてもよく、該可とう化剤としては液状ゴム、熱可塑性樹脂等を選択することができる。
【0016】
本発明の樹脂ペースト組成物において、上記充填材は銀粉であってもよい。このような樹脂ペースト組成物は、高熱伝導特性に一層優れるとともに、樹脂成分と充填材との親和性が一層向上し、ブリードアウトが一層抑制される。
【0017】
本発明はまた、支持部材と、半導体素子と、支持部材及び半導体素子の間に配置され、支持部材及び半導体素子を接着する接着層と、を備え、接着層が、上記樹脂ペースト組成物の硬化物を含む、半導体装置を提供する。
【0018】
本発明の半導体装置は、上記樹脂ペースト組成物の硬化物を含む接着層により、支持部材と半導体素子とが接着されているため、ブリードアウトが生じ難く、信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低粘度で作業性が良く、ブリードアウトが十分に抑制され、信頼性に優れる半導体装置を生産性よく製造することが可能な、樹脂ペースト組成物が提供される。また本発明によれば、上記樹脂ペースト組成物を用いて製造された半導体装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の樹脂ペースト組成物及び半導体装置の好適な実施形態について以下に説明する。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味する。すなわち、「(メタ)アクリロイルオキシ基を有する」とは、アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基を有することを意味する。
【0021】
本実施形態に係る樹脂ペースト組成物は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(以下、場合により「(A)成分」と称する。)と、重合開始剤(以下、場合により「(B)成分と称する。」)と、充填材(以下、場合により「(C)成分」と称する。)と、環式モノテルペン骨格を有する化合物(以下、場合により「(D)成分」と称する。)と、を含有する。
【0022】
(A)成分は、アクリル酸エステル化合物及びメタアクリル酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む。ここで、アクリル酸エステル化合物は、1分子中に1個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物であり、メタアクリル酸エステル化合物は、1分子中に1個以上のメタアクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0023】
(A)成分としては、例えば、1分子中に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−1)成分」と称する。)、1分子中に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−2)成分」と称する。)、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(以下、場合により「(A−3)成分」と称する。)が挙げられる。
【0024】
(A−1)成分の1個のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ダイマージオールモノアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−ブトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−シアノエチルアクリレート、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレート、アクリロキシエチルホスフェート、アクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートが挙げられる。
【0025】
また、(A−1)成分の1個のメタアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ダイマージオールモノメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−ブトキシエチルメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、フェノキシジエチレングリコールメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−シアノエチルメタクリレート、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレ−ト、ジシクロペンテニルメタクリレ−ト、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレート、メタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロキシエチルフェニルアシッドホスフェート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネートが挙げられる。
【0026】
(A−1)成分としては、樹脂ペースト組成物を用いて製造した半導体装置におけるダイシェア強度が一層向上する観点から、下記式(I)で表される化合物が好ましい。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは脂環式基又は複素環式基を示し、Xは炭素数1〜5のアルキレン基を示し、nは0〜10の整数を示す。nが2以上の整数であるとき、複数存在するXは互いに同一であっても異なっていてもよい。ここで脂環式基は、炭素原子が環状に結合した構造を有する基であり、複素環式基は、炭素原子とヘテロ原子とが環状に結合した構造を有する基である。
【0029】
脂環式基としては、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)又は(1−4)で表される基が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0032】
複素環式基としては、下記式(2−1)、(2−2)、(2−3)又は(2−4)で表される基が挙げられる。
【0033】
【化3】

【0034】
式中、R、R、R、R及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0035】
式(I)で表される化合物としては、例えば、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルアクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、ジシクロペンタニルアクリレ−ト、ジシクロペンテニルアクリレ−ト、テトラヒドロピラニルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルアクリレートシクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−8−イルオキシエチルメタクリレート、2−(トリシクロ)[5.2.1.02,6]デカ−3−エン−9−イルオキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト、ジシクロペンタニルメタクリレ−ト、ジシクロペンテニルメタクリレ−ト、テトラヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルメタクリレートが挙げられる。
【0036】
(A−2)成分の1分子中に2個のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ダイマージオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(アクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。また、(A−2)成分としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジアクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジアクリレート;等も挙げられる。
【0037】
(A−2)成分の1分子中に2個のメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ダイマージオールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ビス(メタクリロキシプロピル)ポリジメチルシロキサン、ビス(メタクリロキシプロピル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。また、(A−2)成分としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート;ビスフェノールA、ビスフェノールF又はビスフェノールADのポリプロピレンオキサイド付加物のジメタクリレート;等も挙げられる。
【0038】
(A−2)成分としては、樹脂ペースト組成物を用いて製造した半導体装置における熱時ダイシェア強度が一層向上する観点から、下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0039】
【化4】

【0040】
式中、R11及びR12はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R13及びR14はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を示し、Y及びYはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p及びqはそれぞれ独立に1〜20の整数を示す。pが2以上の整数であるとき、複数存在するYは互いに同一であっても異なっていてもよい。qが2以上の整数であるとき、複数存在するYは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
(A−3)成分の1分子中に3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
【0042】
(A−3)成分の1分子中に3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンオキシド・プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートが挙げられる。
【0043】
(A)成分としては、上記の化合物のうち一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。例えば(A)成分としては、(A−1)成分と(A−2)成分とを組み合わせて用いることができる。
【0044】
(B)成分は、(A)成分を重合させて樹脂ペースト組成物を硬化させるための成分であり、加熱及び/又は光照射によってラジカルを発生する化合物であることが好ましい。(B)成分としては、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。なお、(B)成分は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系ラジカル開始剤;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)へキサン等の過酸化物;が挙げられる。
【0046】
光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等のアセトフェノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類;が挙げられる。
【0047】
(B)成分としては、樹脂ペースト組成物の硬化物中におけるボイドと呼ばれる空隙の発生を低減できるため、過酸化物が好ましい。また、樹脂ペースト組成物の硬化性及び粘度安定性が一層向上することから、過酸化物の10時間半減期温度は、70〜170℃であることが好ましい。ここで半減期とは、一定温度における、過酸化物が分解してその活性酸素量が1/2になるまでに要する時間を示し、10時間半減期温度とは、半減期が10時間となる温度を示す。
【0048】
半減期は、例えば、以下のようにして測定することができる。まず、ラジカルに対して比較的不活性な溶液、例えばベンゼンを使用して、0.1mol/l濃度の過酸化物溶液を調整し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。そして、所定温度にセットした恒温槽に浸し、熱分解させる。一般的に過酸化物の分解は近似的に一次反応として取り扱うことができるので、t時間後までに分解した過酸化物の濃度x、分解速度定数k、時間t、初期過酸化物濃度aとすると、下記式(i)が成り立つ。
dx/dt=k(a−x) (i)
そして、式(i)を変形すると式(ii)になる。
ln a/(a−x)=kt (ii)
半減期は、分解により過酸化物濃度が初期の半分に減ずるまでの時間であるので、半減期をt1/2で示し、式(ii)のxにa/2を代入すると、式(iii)になる。
kt1/2=ln2 (iii)
したがって、ある一定温度で熱分解させ、得られた直線の傾きから分解速度定数kを求め、式(iii)からその温度における半減期(t1/2)を求めることができる。
【0049】
(B)成分の含有量は、(A)成分の総量100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、2〜7質量部であることがより好ましい。(B)成分の含有量が0.1質量部以上であると樹脂ペースト組成物の硬化性が一層良好となる。また、(B)成分の含有量が10質量部を超えると、樹脂ペースト組成物の硬化時に揮発分が多く発生し、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じやすくなる傾向がある。(B)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
(C)成分は、樹脂ペースト組成物の硬化物に熱伝導性等の特性を付与する成分である。
【0051】
(C)成分としては、特に制限は無いが、例えば、金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム、ステンレス等を含む粉体が挙げられる。粉体の形状は、特に制限は無いが、例えば、球状、フレーク状等の形状が挙げられる。
【0052】
粉体の平均粒径は、0.05〜50μmであることが好ましく、0.1〜30μmであることがより好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー光回折法を利用した粒度分布測定装置でメジアン径として求めることができるものである。メジアン径とは個数基準の粒度分布における累積率が50%となる粒子径(D50)の値を示す。
【0053】
樹脂ペースト組成物は、(C)成分として銀粉を含有することが好ましい。このような樹脂ペースト組成物は、高熱伝導特性に一層優れるとともに、樹脂成分と充填材との親和性が一層向上し、ブリードアウトが一層抑制される。
【0054】
(C)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量に対して60〜95質量%であることが好ましく、70〜93質量%であることがより好ましい。(C)成分の含有量が上記範囲であると、十分な高熱伝導特性が得られるとともに、上記本発明の効果が一層顕著に奏される。
【0055】
(D)成分は、環式モノテルペン骨格を有する化合物である。ここで環式モノテルペン骨格は、10個の炭素原子からなるモノテルペン骨格のうち、環構造を有するものをいい、環式モノテルペン骨格には、単環式のモノテルペン骨格及び二環式のモノテルペン骨格が含まれる。
【0056】
単環式モノテルペン骨格としては、例えば、下記式(3−1)、(3−2)、(3−3)、(3−4)で表される炭素骨格が挙げられる。
【0057】
【化5】

【0058】
二環式モノテルペン骨格としては、例えば、下記式(4−1)、(4−2)、(4−3)、(4−4)、(4−5)で表される炭素骨格が挙げられる。
【0059】
【化6】

【0060】
(D)成分において、環式モノテルペン骨格を構成する炭素原子間の結合のうち、全ての結合が単結合であってもよく、一部が不飽和結合であってもよい。また、(D)成分において、環式モノテルペン骨格を構成する炭素原子には、ヒドロキシル基、アシルオキシ基等が結合していてもよい。
【0061】
単環式モノテルペン骨格を有する化合物としては、p−メンタン、d−リモネン、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート等が挙げられる。
【0062】
ターピネオールとしては、式(5−1)で表されるα−テルピネオール、式(5−2)で表されるβ−テルピネオール、式(5−3)で表されるγ−テルピネオール、式(5−4)で表されるテルピネオールが挙げられ、これらの混合物を用いることもできる。
【0063】
【化7】

【0064】
ターピネオールとしては、例えば、ガムテレビン油から誘導されるα−ターピネオール、β−ターピネオール及びγ−ターピネオールの異性体混合物である「ターピネオールC」(日本テルペン化学株式会社製、商品名)が商業的に入手可能である。
【0065】
ジヒドロターピネオールとしては、式(6−1)で表される化合物、式(6−2)で表される化合物が挙げられる。
【0066】
【化8】

【0067】
ジヒドロターピネオールとしては、例えば、ガムテレビン油から誘導されるターピネオールの異性体混合物に水素添加したものを、日本テルペン化学株式会社より商業的に入手可能である。
【0068】
ジヒドロターピニルアセテートとしては、式(7−1)で表される化合物、式(7−2)で表される化合物が挙げられる。なお、式中、Acはアセチル基を示す。
【0069】
【化9】

【0070】
ジヒドロターピニルアセテートとしては、例えば、ガムテレビン油から誘導されるターピネオールの異性体混合物に水素添加してエステル化したものを、日本テルペン化学株式会社より商業的に入手可能である。
【0071】
二環式モノテルペン骨格を有する化合物としては、ピナン、イソボルニルチオシアノアセテート、4−[1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル]シクロヘキサノール(「イソボニルシクロヘキサノール」ともいう。)、2,6,6−トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタン、2,6,6−トリメチルビシクロ[3.3.1]ヘプト−2−エン(「α−ピネン」ともいう。)等が挙げられる。
【0072】
二環式モノテルペン骨格を有する化合物としては、下記式(8−1)、(8−2)又は(8−3)で表される化合物が好ましい。
【0073】
【化10】

【0074】
式中、R15、R16及びR17はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基又はヒドロキシシクロヘキシル基を示す。
【0075】
樹脂ペースト組成物は、(D)成分として式(8−1)、(8−2)又は(8−3)で表される化合物を含有することが好ましい。また、(D)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0076】
(D)成分の含有量は、樹脂ペースト組成物の総量に対して1〜10質量%であることが好ましく、2〜7質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることがさらに好ましい。(D)成分の含有量が1質量%以上であると、樹脂ペースト組成物の作業性が一層向上する傾向にある。また、(D)成分の含有量が10質量%を超えると、樹脂ペースト組成物の硬化時にボイドと呼ばれる空隙が生じやすくなる傾向がある。すなわち、(D)成分の含有量を10質量%以下とすることで、ボイドの発生が十分に抑制される。
【0077】
樹脂ペースト組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、例えば、樹脂ペースト組成物は、可とう化剤(以下、場合により「(E)成分」と称する。)をさらに含有していてもよい。可とう化剤は、樹脂ペースト組成物の硬化物に可とう性を付与する成分である。樹脂ペースト組成物に(E)成分を添加することによって、熱膨張又は収縮に対する応力緩和の効果が得られる。
【0078】
(E)成分としては、例えば、液状ゴム、熱可塑性樹脂が挙げられる。液状ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、エポキシ化ポリブタジエン、マレイン化ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンゴム、カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴム、アミノ末端アクリロニトリルブタジエンゴム、ビニル末端アクリロニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム等のポリブタジエン骨格を有する液状ゴムが挙げられる。
【0079】
液状ゴムの数平均分子量は、500〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。数平均分子量が500以上であると、可とう化効果に一層優れ、10000以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレンの検量線を利用して測定(以下、GPC法という)した値である。
【0080】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸アルキル等のアクリル樹脂、ε−カプロラクトン変性ポリエステル、フェノキシ樹脂、ポリイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0081】
熱可塑性樹脂の数平均分子量は、10000〜300000であることが好ましく、20000〜200000であることがより好ましい。数平均分子量が10000以上であると、可とう化効果に一層優れ、300000以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。なお、数平均分子量は、GPC法により測定した値である。
【0082】
樹脂ペースト組成物は、硬化物の弾性率をより低減できる観点から、(E)成分としてエポキシ化ポリブタジエンを含有することが好ましい。
【0083】
エポキシ化ポリブタジエンは、一般に市販されているポリブタジエンを、過酸化水素水、過酸類等によりエポキシ化することによって容易に得ることができる。
【0084】
エポキシ化ポリブタジエンとしては、例えば、B−1000、B−3000、G−1000、G−3000(以上、日本曹達(株)製)、B−1000、B−2000、B−3000、B−4000(以上、日本石油(株)製)、R−15HT、R−45HT、R−45M(以上、出光石油(株)製)、エポリードPB−3600、エポリードPB−4700(以上、ダイセル化学工業(株)製)等が市販品として入手可能である。エポキシ化ポリブタジエンのオキシラン酸素濃度は、3〜18%であることが好ましく、5〜15%であることがより好ましい。
【0085】
また、樹脂ペースト組成物は、硬化物の弾性率をより低減できるとともに、ダイシェア強度をより向上できる観点からは、(E)成分としてカルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムを含有することが好ましい。カルボキシ基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとしては、式(9)で表される化合物が好ましい。
【0086】
【化11】

【0087】
式中、mは5〜50の整数を示し、a及びbはそれぞれ独立に1以上の整数を示す。aとbの比(a/b)は、95/5〜50/50であることが好ましい。
【0088】
式(9)で表される化合物としては、例えば、Hycar CTBN−2009×162,CTBN−1300×31,CTBN−1300×8、CTBN−1300×13、CTBN−1009SP−S、CTBNX−1300×9(いずれも宇部興産株式会社製)が市販品として入手可能である。
【0089】
樹脂ペースト組成物は、作業性及び接着強度が一層向上する観点から、(E)成分としてエポキシ化ポリブタジエンとカルボキシル基を有するアクリロニトリルブタジエンゴムとを併用することが好ましい。
【0090】
(E)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して10〜200質量部であることが好ましく、20〜100質量部であることがより好ましく、40〜80質量部であることがさらに好ましい。(E)成分の含有量が10質量部以上であると、可とう化効果に一層優れ、200質量部以下であると、可とう化剤による樹脂ペースト組成物の粘度上昇が十分に抑えられ、作業性が一層良好になる。
【0091】
樹脂ペースト組成物は、エポキシ樹脂(以下、場合により「(F)成分」と称する。)及びエポキシ樹脂硬化剤(以下、場合により「(G)成分」と称する。)をさらに含有していてもよい。
【0092】
(F)成分としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂、下記式(10)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0093】
【化12】

【0094】
式中、vは0〜5の整数を示す。
【0095】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、AER−X8501(旭化成工業(株)、商品名)、R−301(油化シェルエポキシ(株)、商品名)、YL−980(油化シェルエポキシ(株)、商品名)等を用いることができる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、YDF−170(東都化成(株)、商品名)等を用いることができる。また、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂としては、R−1710(三井化学工業(株)、商品名)等を用いることができる。
【0096】
また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、N−730S(大日本インキ化学工業(株)、商品名)、Quatrex−2010(ダウ・ケミカル社、商品名)等を用いることができる。また、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、YDCN−702S(東都化成(株)、商品名)、EOCN−100(日本化薬(株)、商品名)等を用いることができる。
【0097】
また、多官能エポキシ樹脂としては、EPPN−501(日本化薬(株)、商品名)、TACTIX−742(ダウ・ケミカル社、商品名)、VG−3010(三井化学(株)、商品名)、1032S(油化シェルエポキシ(株)、商品名)等を用いることができる。また、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂としては、HP−4032(大日本インキ化学工業(株)、商品名)等を用いることができる。
【0098】
また、脂環式エポキシ樹脂としては、CELー3000(ダイセル化学工業(株)、商品名)、E−1000−6.5(日本石油化学(株)、商品名)等を用いることができる。また、アミン型エポキシ樹脂としては、ELM−100(住友化学工業(株)、商品名)、YH−434L(東都化成(株)、商品名)等を用いることができる。また、レゾルシン型エポキシ樹脂としては、デナコールEX−201(ナガセ化成工業(株)、商品名)等を用いることができる。
【0099】
また、ネオペンチルグリコール型エポキシ樹脂としては、デナコールEX−211(ナガセ化成工業(株)、商品名)等を用いることができる。また、ヘキサンディネルグリコール型エポキシ樹脂としては、デナコールEX−212(ナガセ化成工業(株)、商品名)を用いることができる。また、エチレン・プロピレングリコール型エポキシ樹脂としては、デナコールEX−810、811、850、851、821、830、832、841、861(ナガセ化成工業(株)、商品名)等を用いることができる。また、式(10)で表されるエポキシ樹脂としては、E−XL−24、E−XL−3L(三井化学(株)、商品名)等を用いることができる。
【0100】
上記のうち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0101】
また、(F)成分には、1分子中に1個のエポキシ基を有する化合物(以下、場合により「単官能エポキシ樹脂」と称する。)も含まれる。
【0102】
単官能エポキシ樹脂としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル、脂肪族モノグリシジルエーテル、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサンが挙げられる。
【0103】
単官能エポキシ樹脂の市販品としては、PGE(日本化薬(株)、商品名、フェニルグリシジルエーテル)、PP−101(東都化成(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、ED−502(旭電化工業(株)、商品名、脂肪族モノグリシジルエーテル)、ED−509(旭電化工業(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、YED−122(油化シェルエポキシ(株)、商品名、アルキルフェノールモノグリシジルエーテル)、KBM−403(信越化学工業(株)、商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、TSL−8350、TSL−8355、TSL−9905(東芝シリコーン(株)、商品名、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、1−(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3,3−ペンタメチルジシロキサン)等が挙げられる。
【0104】
単官能エポキシ樹脂は、樹脂ペースト組成物の特性を阻害しない範囲で使用されることが好ましく、(F)成分の総量に対して10質量%以下で使用されることが好ましく、1〜5質量%以下で使用されることがより好ましい。
【0105】
(F)成分としては、数平均分子量が160〜3000であるエポキシ樹脂が好ましい。ここで数平均分子量は、GPC法により測定した値である。また、(F)成分としては、エポキシ当量が80〜1000であるエポキシ樹脂が好ましく、100〜500であるエポキシ樹脂がより好ましい。
【0106】
(F)成分の含有量は、ダイシェア強度が一層向上する観点から、(A)成分の総量100質量部に対して1〜100質量部であることが好ましく、2〜30質量部であることがより好ましく、5〜20質量部であることがさらに好ましい。(F)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0107】
(G)成分は、(F)成分を重合させて樹脂ペースト組成物を硬化させるための成分である。(G)成分としては、特に制限は無いが、ジシアンジアミド、下記式(11)で表される化合物(二塩基酸ジヒドラジドともいう。)、エポキシ樹脂とアミン化合物との反応物からなるマイクロカプセル型硬化剤、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0108】
【化13】

【0109】
式中、R18はアリーレン基又は炭素数2〜12のアルキレン基を示す。アルキレン基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。また、アリーレン基としては、p−フェニレン基、m−フェニレン基等が挙げられる。
【0110】
イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、等が挙げられる。
【0111】
式(11)で表される化合物としては、ADH、PDH、SDH(いずれも日本ヒドラジン工業(株)、商品名)等を用いることができ、マイクロカプセル型硬化剤としては、ノバキュア(旭化成工業(株)、商品名)等を用いることができ、イミダゾール化合物としては、キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(いずれも四国化成(株)製、商品名)等を用いることができる。
【0112】
(G)成分の含有量は、(A)成分の総量100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜5質量部であることが特に好ましい。(G)成分の含有量が上記範囲であると、硬化性及び保存安定性の双方に優れる樹脂ペースト組成物が得られる。なお、(G)成分は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0113】
(F)成分及び(G)成分を含有する樹脂ペースト組成物は、必要に応じてさらに硬化促進剤を含有していてもよい。
【0114】
硬化促進剤としては、有機ボロン塩化合物、三級アミン類又はその塩、イミダゾール化合物等が挙げられる。
【0115】
有機ボロン塩化合物としては、EMZ・K、TPPK(北興化学工業(株)製、商品名)等を用いることができる。また、三級アミン類又はその塩としては、DBU、U−CAT102、106、830、840、5002(いずれもサンアプロ社、商品名)等を用いることができる。また、イミダゾール化合物としては、キュアゾール、2P4MHZ、C17Z、2PZ−OK(いずれも四国化成(株)商品名)等を用いることができる。
【0116】
硬化促進剤の含有量は、(F)成分の総量100質量部に対して20質量部以下であることが好ましい。また、硬化促進剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
樹脂ペースト組成物は、カップリング剤をさらに含有していてもよい。カップリング剤としては、特に制限はなく、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤等の各種のものが用いられる。カップリング剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0118】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(メタクリロキシエトキシ)シラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリグリシドキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、トリメチルシリルイソシアネート、ジメチルシリルイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン、メチルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、エトキシシラントリイソシアネート等が挙げられる。
【0119】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。
【0120】
アルミニウム系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピオネート等が挙げられる。
【0121】
ジルコネート系カップリング剤としては、テトラプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート、テトラ(トリエタノールアミン)ジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、ジルコニウムアセチルアセトネートアセチルアセトンジルコニウムブチレート、ステアリン酸ジルコニウムブチレート等が挙げられる。
【0122】
カップリング剤の含有量は、(A)成分の総量100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、1〜20質量部であることがより好ましく、2〜15質量部であることがさらに好ましい。カップリング剤の含有量が0.1質量部以上であると、接着強度が一層向上する傾向がある。また、カップリング剤の含有量が30質量部を超えると、樹脂ペースト組成物の硬化時に揮発分が多く発生し、樹脂ペースト組成物の硬化物中にボイドと呼ばれる空隙が生じやすくなる傾向がある。
【0123】
樹脂ペースト組成物は、有機溶剤をさらに含有していてもよい。本実施形態に係る樹脂ペースト組成物においては、(D)成分により低粘度化が達成されるため、必ずしも有機溶剤を配合する必要はないが、(D)成分によるブリードアウト抑制効果を得つつ、更に樹脂ペースト組成物の粘度を低減させるために、有機溶剤を配合することもできる。
【0124】
有機溶剤としては、樹脂ペースト組成物の硬化時のボイド発生を抑制するため、ブチルセロソルブ、カルビトール、酢酸ブチルセロソルブ、酢酸カルビトール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコ−ルメチルエ−テルアセテ−ト、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−メチルエーテル等の比較的沸点の高い有機溶剤が好ましい。
【0125】
有機溶媒の含有量は、ブリードアウト抑制効果を十分に維持するため、(D)成分の総量100質量部に対して100質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0126】
樹脂ペースト組成物は、さらに必要に応じて、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤;フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、高級脂肪酸等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;等を、適宜組み合わせて添加することができる。
【0127】
本実施形態に係る樹脂ペースト組成物は、上述した各成分を一括して又は分割して、撹拌器、ライカイ器、3本ロール、プラネタリーミキサー等の分散・溶解装置を適宜組み合わせた装置に投入し、必要に応じて加熱して、混合、溶解、解粒混練又は分散して均一なペースト状とすることにより得ることができる。
【0128】
樹脂ペースト組成物の25℃における粘度は、作業性の観点から、30〜250Pa・sであることが好ましく、40〜220Pa・sであることがより好ましく、50〜150Pa・sであることがさらに好ましい。
【0129】
本実施形態に係る半導体装置は、支持部材と、半導体素子と、支持部材及び半導体素子の間に配置され、支持部材及び半導体素子を接着する接着層と、を備え、接着層が上記樹脂ペースト組成物の硬化物を含むものである。このような半導体装置は、上記樹脂ペースト組成物の硬化物により、支持部材と半導体素子とが接着されているため、ブリードアウトが生じ難く、信頼性に優れる。
【0130】
支持部材としては、例えば、42アロイリードフレーム、銅リードフレーム等のリードフレーム、ガラスエポキシ基板(ガラス繊維強化エポキシ樹脂からなる基板)、BT基板(シアネートモノマー及びそのオリゴマーとビスマレイミドからなるBTレジン使用基板)等の有機基板が挙げられる。
【0131】
上記樹脂ペースト組成物を用いて半導体素子を支持部材上に接着する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0132】
まず、支持部材上に樹脂ペースト組成物をディスペンス法、スクリーン印刷法、スタンピング法等の方法で塗布して、樹脂層を形成する。次いで、樹脂層の支持基材と反対側の面から半導体素子を圧着し、その後、オーブン、ヒートブロック等の加熱装置を用いて、樹脂層を加熱硬化する。これにより、支持部材上に半導体素子が接着される。
【0133】
支持部材上に半導体素子を接着した後、必要に応じてワイヤボンド工程、封止工程、等を行うことにより、本実施形態に係る半導体装置を得ることができる。なお、ワイヤボンド工程及び封止工程としては、従来公知の方法を採用することができる。
【0134】
上記加熱硬化は、例えば、加熱温度80〜150℃(好ましくは100〜125℃)、加熱時間5分〜3時間(好ましくは15分〜1.5時間)の条件で行うことあgできる。
【0135】
通常、支持部材として有機基板を用いる場合には、有機基板が吸着した水分が接着時の加熱により蒸発してボイドの原因となるおそれがあるため、組み立て前に有機基板の乾燥を行うことが好ましい。
【0136】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0137】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0138】
実施例及び比較例で用いた成分を以下に例示する。
【0139】
(1)(メタ)アクリル酸エステル化合物((A)成分)
・FA−512A(日立化成工業(株)製の商品名、シクロペンテニルオキシエチルアクリレート、表中「FA−512A」と表す。)
・KAYARAD R−551(日本化薬(株)製、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、表中「R−551」と表す。)
(2)重合開始剤((B)成分)
・ジクミルパーオキサイド(表中「B−1」と表す。)
(3)充填材((C)成分)
・TCG−1(徳力化学研究所(株)製銀粉の商品名、形状:フレーク、一次粒子の平均粒径:2μm、表中「TCG−1」と表す。)
・TC−87(徳力化学研究所(株)製銀粉の商品名、形状:フレーク、一次粒子の平均粒径:6μm、表中「TC−87」と表す。)
(4)環式モノテルペン骨格を有する化合物((D)成分)
・テルソルブ MTPH(日本テルペン化学(株)製の商品名、イソボニルシクロヘキサノール、表中「MTPH」と表す。)
・テレビン油(日本テルペン化学(株)製の商品名、2,2,6−トリメチルビシクロ[3,1,1]ヘプト−2−エン、表中「テレビン油」と表す。)
・ピナン(日本テルペン化学(株)製の商品名、2,2,6−トリメチルビシクロ[3,1,1]ヘプタン、表中「ピナン」と表す。)
(5)可とう化剤((E)成分)
・CTBN1300×31(宇部興産(株)製カルボキシ末端アクリロニトリルブタジエン共重合体の商品名、数平均分子量:10000、表中「CTBN」と表す。)
・PB−4700(ダイセル化学工業(株)製エポキシ化ポリブタジエンの商品名、数平均分子量:3500、表中「PB−4700」と表す。)
(6)エポキシ樹脂((F)成分)
・YDCN−700−7(東都化成(株)製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の商品名、表中「YDCN」と表す。)
(7)エポキシ樹脂硬化剤((G)成分)
・ジシアンジアミド(商品名「jERキュアDICY7」、ジャパンエポキシレジン(株)製、表中「DICY」と表す。)
(8)カップリング剤
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製、表中「KBM−403」と表す。)
(9)有機溶剤
・DPMA(ダイセル化学工業(株)製の商品名、ジプロピレングリコ−ルメチルエ−テルアセテ−ト、表中「DPMA」と表す。)
・BFDG(日本乳化剤(株)製の商品名、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、表中「BFDG」と表す。)
・酢酸ブチルセロソルブ(商品名「エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセタート」、東京化成工業(株)製、表中「BCA」と表す。)
【0140】
(実施例1〜7、比較例1〜4)
表1又は表2に示す配合割合(質量比)で各成分を混合し、ライカイ機を用いて混練した後、666.61Pa(5トル(Torr))以下で30分間脱泡処理を行い、樹脂ペースト組成物を得た。
【0141】
得られた樹脂ペースト組成物の特性(粘度、ダイシェア強度、ブリードアウト)を以下の方法で測定した。結果は表1又は表2に示すとおりであった。
【0142】
(粘度の測定)
EHD型回転粘度計(東京計器社製)、3°cone rotorを用いて、0.5rpm、25℃における粘度(Pa・s)を測定した。
【0143】
(ダイシェア強度の測定)
樹脂ペースト組成物を、Agめっき付き銅リードフレームのダイパッド部(サイズ:9mm×11mm)上に、直径約1.5mmの円形に塗布し、この上に4.5mm×6.5mmのAgメッキ付きSiチップ(厚さ約0.4mm)を圧着してダイパッド部とSiチップの間に樹脂ペースト組成物を展延させ、さらにオーブンで180℃まで30分で昇温し、180℃で1時間硬化させ、試験サンプルを得た。
【0144】
得られた試験サンプルについて、自動接着力試験装置(BT4000、Dage社製)を用い、熱時(260℃で20秒保持後)の剪断接着強度(N/チップ)を測定した。なおダイシェア強度の測定は20個の試験サンプルについて行い、その平均値を評価した。
【0145】
(ブリードアウトの評価)
樹脂ペースト組成物を、Agめっき付き銅リードフレーム及びAgリングめっき付き銅リードフレームのダイパッド部(サイズ:9mm×11mm)上に直径約1.5mmの円形に塗布し、25℃で1時間放置した後、オーブンで180℃まで30分で昇温し180℃で1時間硬化させ、試験サンプルを得た。
【0146】
得られた試験サンプルについて光学顕微鏡を用いて、硬化物からのAgめっき面及びCu面へのにじみ幅を観察測定した。なお樹脂ペースト組成物の塗布量は400μgとした。
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
表1及び表2に示すように、実施例1〜7の樹脂ペースト組成物は、通常の溶剤のみを用いた比較例1〜4の樹脂ペースト組成物と比較して、ブリードアウトの抑制に関して顕著な効果が得られた。また、実施例1〜7の樹脂ペースト組成物は、溶剤を用いなかった比較例1と比較して、粘度が低く作業性に優れるものであった。また、実施例1〜7の樹脂ペースト組成物は、比較例2〜4の樹脂ペースト組成物と比較して、同等の粘度及び接着強度が得られた。すなわち、実施例1〜7の樹脂ペースト組成物においては、低粘度化とブリードアウトの低減化とが十分に両立された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル化合物と、重合開始剤と、充填材と、環式モノテルペン骨格を有する化合物と、を含有する、樹脂ペースト組成物。
【請求項2】
前記環式モノテルペン骨格を有する化合物の含有量が、前記樹脂ペースト組成物の総量基準で1〜10質量%である、請求項1に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項3】
エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項4】
カップリング剤をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項5】
可とう化剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項6】
前記可とう化剤が液状ゴム又は熱可塑性樹脂である、請求項5に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項7】
前記充填材が銀粉である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂ペースト組成物。
【請求項8】
支持部材と、半導体素子と、前記支持部材及び前記半導体素子の間に配置され、前記支持部材及び前記半導体素子を接着する接着層と、を備え、
前記接着層が、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂ペースト組成物の硬化物を含む、半導体装置。

【公開番号】特開2012−188465(P2012−188465A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50666(P2011−50666)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】