説明

樹脂モールド装置

【課題】プリヒート部に隣接する装置に熱拡散するのを低減するとともに、短時間で効率良くプリヒート温度まで昇温することができる樹脂モールド装置を提供する。
【解決手段】プリヒート装置28は、被成形品1を載置したヒータブロック13が移送機構29により受取位置Pから引渡し位置Qへ移送される間にプリヒート位置Rに設けられたトンネルカバー14内で停止させて被成形品1を集中的に予備加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップが基板実装された被形成品を樹脂モールドする樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトランスファー成形や圧縮成形になどによる樹脂モールド装置においては、供給マガジンから供給されたリードフレームや樹脂基板などの被成形品は、プレス部においてモールド金型により成形温度まで加熱し易いように予めプリヒート部へ載置されて成形温度より若干低い温度まで予備加熱されてからローダーに受け渡され、プレス部へ搬入されるようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−100192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プリヒート部はヒータを内蔵したヒータブロックが大気開放された状態で被成形品をプリヒートするため、ヒータブロック及びプリヒートした被形成品からの放熱量が大きいため周囲の環境に与える影響が大きい。即ちプリヒート部に隣接する機構、例えば樹脂タブレット供給部などとは熱伝導し難いように断熱材等で覆う必要がある。また、プリヒートに先立って被成形品の板厚測定を行なう場合には、測定精度を保つためには板厚測定装置への熱伝導を阻害する必要がある。
また、被成形品のヒータ接触面以外は所期のプリヒート温度まで予備加熱し難く、プリヒート時間が長くなると樹脂モールドの効率が低下する。また、ローダーによる被成形品の搬送途中にも温度が低下し易く、プリヒート温度が低いと成形品質が低下するおそれもある。
【0005】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、プリヒート部に隣接する装置に熱拡散するのを低減するとともに、短時間で効率良くプリヒート温度まで昇温することができる樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
被成形品を供給する供給部と、前記供給された被成形品がローダーによって搬入されて樹脂モールドされるプレス部と、前記供給部からプレス部へ搬送される間に被成形品を予備加熱するプリヒート部と、を具備し、前記プリヒート部は、被成形品を受取位置で移載されて予備加熱するヒータブロックと、当該ヒータブロックが被成形品を受け取る受取位置と被成形品をローダーへ引き渡す引渡し位置との間を往復動する移送機構と、前記受取位置と引渡し位置との間のプリヒート位置に設けられ、前記ヒータブロックの周囲を覆うトンネルカバーとを具備したプリヒート装置であって、前記被成形品を載置したヒータブロックが移送機構により受取位置から引渡し位置へ移送される間に前記プリヒート位置に設けられたトンネルカバー内で停止させて被成形品を集中的に予備加熱することを特徴とする。
【0007】
また、前記プリヒート装置は、前記ヒータブロックをトンネル状に覆う第1トンネルカバーと当該第1トンネルカバーの周囲に空間部を設けて重ねて覆う第2トンネルカバーが設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、前記移送機構は、ベース部上に受取位置と引渡し位置にわたって形成された直動レールに沿って往復動する移送体に立設された支持柱にヒータブロックが支持されており、被成形品はヒータブロックのプリヒート面に吸着保持された吸着プレートに吸着保持されたまま移送されることを特徴とする。
【0009】
また、前記移送機構は、引渡し位置に待機するローダーに前記プリヒート装置で予備加熱された被成形品を載置したヒータブロックを移送して引き渡すことを特徴とする。
【0010】
また、前記供給部とプリヒート部との間に被成形品の厚さを計測する厚さ計測部が設けられており、前記トンネルカバーは隣接する前記厚さ計測部への熱伝導を阻害することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記樹脂モールド装置を用いれば、プリヒート装置は被成形品を載置したヒータブロックが移送機構により受取位置から引渡し位置へ移送される間にプリヒート位置に設けられたトンネルカバー内で停止させて被成形品を集中的に予備加熱するので、トンネルカバーによってヒータの熱が隣接する装置へ拡散するのを可能な限り防ぐと共に、トンネルカバー内で集中的にプリヒート温度まで予備加熱することができる。
また、被成形品をヒータブロックに受取直後から引渡し直前まで加熱し続けるので、予備加熱された被成形品の温度を下げることなくヒートブロックからローダーに引き渡すことができる。
【0012】
また、プリヒート装置は、ヒータブロックの周囲をトンネル状に覆う第1トンネルカバーと当該第1トンネルカバーの周囲に空間部を設けて重ねて覆う第2トンネルカバーが設けられていると、第1トンネルカバーと第2トンネルカバーとの間の空気層がヒータの熱を外部に熱伝導するのを阻害するため、プレヒートを短時間で集中的に効率よく行うことができる。
【0013】
ヒータブロックは、ベース部上に受取位置と引渡し位置にわたって形成された直動レールに沿って往復動する移送体に立設された支持柱に支持されているので、ヒータの熱が移送体や直動レールまで伝わり難く、移送機構の円滑な移送動作を維持することができる。
また、被成形品はヒータブロックのプリヒート面に吸着保持された吸着プレートに吸着保持されたまま移送されるので、被成形品を受取直後から引渡し直前までプリヒートされた吸着プレートに密着させてヒータの熱伝導効率を高めてプリヒートすることができる。また、被成形品の品種切り替えを行なう場合には、吸着プレートを交換すれば足りるので、汎用性が向上する。
【0014】
また、移送機構は、引渡し位置に待機するローダーにプリヒート装置で予備加熱された被成形品を載置したヒータブロックを移送して引き渡すので、引渡し直前まで被成形品をプリヒートすることができプリヒート温度が低下し難く、ローダーが保持している樹脂粉が被成形品に落下することなく引き渡すことができる。
【0015】
また、供給部とプリヒート部との間に被成形品の厚さを計測する厚さ計測部が設けられており、トンネルカバーは隣接する厚さ計測部への熱伝導を阻害するので、厚さ計測部による測定精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】樹脂モールド装置の全体構成例を示す平面レイアウト図である。
【図2】プリヒート装置の垂直断面図である。
【図3】プリヒート部の平面レイアウト図及び側面図である。
【図4】プリヒート装置によるプリヒート動作の説明図である。
【図5】ヒータブロックからプリヒートされた被成形品をローダーへ引き渡す動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、上型側にキャビティ凹部が形成され下型側にポットが形成されるモールド金型を用いたトランスファー成形装置を用いて説明する。また、トランスファー成形装置では、下型を可動型とし上型を固定型として説明する。
【0018】
(樹脂モールド装置の全体構成)
図1は、本発明に係る樹脂モールド装置の一実施形態の各部の平面配置を示す。本実施形態の樹脂モールド装置は、被成形品の供給部A、被成形品の厚さ計測部B、被成形品のプレス部C、樹脂モールド後の成形品の収納部D及び搬送機構Eを備える。また、厚さ計測部Bとプレス部Cとの間にプリヒート部Fが設けられている。また、プレス部Cとプリヒート部Fとの間、及び、プレス部Cと収納部Dとの間には後述する金型駆動機構16のメンテナンスエリアとして用いられるダミーモジュール部Gが設けられている。以下各部の構成について具体的に説明する。
【0019】
(被成形品の供給部A)
被成形品の供給部Aは、短冊状に形成された被成形品1を収納した供給マガジン2を複数備えた供給ストッカ3と、供給マガジン1から被成形品1を突き出すプッシャ4と、プッシャ4によって突き出された被成形品1を向かい合わせに並べ替えるターンテーブル5とを備える。ターンテーブル5の奥側には、対向配置された一対の被成形品1を、相互の配置位置を保持した状態でセットする供給ステージ(セット台)6が配置されている。供給ステージ6の側方には後述するモールド金型のポットの平面配置に合わせて樹脂タブレット7を供給するための樹脂タブレットの供給部8が設けられている。
【0020】
本実施形態の樹脂モールド装置において樹脂モールドの対象とする被成形品1としては、例えば短冊状に形成された樹脂基板1b上に複数の半導体チップ1aが基板実装されている(図3参照)。半導体チップ1aは基板1bに1段あるいは複数段に実装されていても良い。半導体チップはブロック単位で形成されたキャビティごとに樹脂モールドされるようになっている。或いは複数半導体チップを一つのキャビティに収容して樹脂モールドする場合や半導体チップに応じて個別に形成されたキャビティに収容して樹脂モールドされる製品などであっても良い。
【0021】
(厚さ計測部B)
被成形品1の厚さ計測部Bは、供給部Aからプレス部Cへ搬送される間に被成形品1の厚さを計測する。具体的にはローダー25から被成形品1を移載されて保持したまま搬送する搬送プレート9と、当該搬送プレート9をX−Y方向に走査可能なX−Y走査機構10と、搬送プレート9の搬送路下に被成形品1に対応して配置され、半導体チップを含む基板の総厚及び基板のみの厚さを測定する測定装置11を備えている。
【0022】
(プリヒート部F)
厚さ計測部Bにおいて被成形品1の厚さが計測された被成形品1は、移載部12において、後述するピックアンドプレース12aによって被成形品1が搬送プレート9から移送機構に支持されたヒータブロック13に移載される。ヒータブロック13は、被成形品1を載置したまま後述する移送機構により受取位置からローダー25への引渡し位置まで移送される。そして、ヒータブロック13は移送路の途中に設けられたトンネルカバー14にて所定時間停止することで集中的にプリヒートされて、ローダー25が待機する引渡し位置まで搬送される。トンネルカバー14は、測定装置11に隣接する位置に設けられている。
【0023】
(プレス部C)
プレス部Cは、被成形品1をクランプして樹脂モールドするモールド金型が装着されたプレス装置15が設けられている。プレス装置15は、下型を型開閉方向に押動するプレス機構、モールド金型のポット内で溶融した樹脂をポットからキャビティに充填するトランスファー機構を備える。プレス装置15におけるプレス機構及びトランスファー機構は、公知の樹脂モールド装置に用いられているプレス部の機構と同様である。本実施形態の樹脂モールド装置において特徴とする構成は、被成形品1を樹脂モールドする際に、前述した被成形品の厚さ計測部Fにおける計測結果に基づいて、上型のキャビティインサート(キャビティ深さを規定するインサートブロック)の移動量を制御するようになっている。プレス装置15には例えば上型のインサート部材を型開閉方向に押動する金型駆動機構16aと、下型のインサート部材を型開閉方向に押動する金型駆動機構16bと、キャビティインサートのクランプ面を覆う長尺状のリリースフィルムをリール間で繰り出し及び巻き取りを繰り返すフィルム供給機構17が設けられている。尚、モールド金型は、下型にキャビティが形成されていても良い。
【0024】
リリースフィルムは上型面にインサートブロック間の隙間を利用した公知の吸引機構により吸着保持されるようになっている。リリースフィルムとしては、モールド金型の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。リリースフィルムは、例えば長尺状のフィルム材が用いられ、ロール状に巻き取られた繰出しリールから引き出されて上型クランプ面を通過して巻取りリールへ巻き取られるように設けられる。
【0025】
(成形品の収納部D)
成形品の収納部Dは、アンローダー26によって樹脂モールド後の成形品18を移載する取り出し部19、成形品18からゲート等の不要樹脂を除去するゲートブレイク部20、不要樹脂が除去された製品21を収納する収納マガジン22を備える。製品21は収納マガジン22に収納され、該収納マガジン22は収納ストッカ23に順次収容される。
【0026】
(搬送機構E)
搬送機構Eはプレス部Cへ被成形品1を搬送するローダー25とプレス部Cから成形品を搬送するアンローダー26を備えている。ローダー25及びアンローダー26は、直列に配置された供給部A、厚さ計測部B、プリヒート部F、ダミーモジュール部G、プレス部C、ダミーモジュール部G、収納部D間に連結されたガイドレール27を共用して装置奥側を移動し、プレス部Cに対して各々進退移動可能に設けられている。ローダー25は、供給部Aから被成形品1である基板を受け取って、被成形品1を搬送テーブル9へ受け渡し、樹脂タブレット7を受け取ってからヒータブロック13でプリヒートされた被成形品1を受け取って、これらをプレス部Cの型開きしたモールド金型へ搬入する動作を繰り返す。また、アンローダー26は、樹脂モールド後に離型した成形品18をモールド金型より受け取って、収納部Dの取り出し部19へ移載する動作を繰り返す。
【0027】
したがって、樹脂モールド装置を構成するユニットを変えてもガイドレール27を連結することで搬送機構Eを変更することなく装置構成を変更することができる。たとえば、図1に示す例は、プレス装置15を1台設置した例であるが、プレス部Cや厚さ計測部Bを複数台連結した樹脂モールド装置を構成することも可能である。
【0028】
(プリヒート部Fの具体的な構成例)
ここで、プリヒート部Fの具体的な構成例について、図2乃至図5を参照して説明する。図2はプリヒート装置28の断面構造を示す。ヒータブロック13は、ヒータ13aを内蔵した加熱ブロックである。ヒータブロック13のプリヒート面(上面)には吸着溝13bが形成されており図示しない吸着管路を介して図外の吸引装置(コンプレッサ)に接続されている。この搭載面には吸着プレート13cが載置されている。吸着プレート13cには、吸着溝13bに連通する吸引孔13dが被成形品1の搭載位置に設けられている。ヒータブロック13は、被成形品1をピックアンドプレース12aより受取位置で移載されると吸着プレート13cに吸着保持されて予備加熱される。
【0029】
ヒータブロック13は、被成形品1を受け取る受取位置Pと被成形品1をローダー25へ引き渡す引渡し位置Qとの間を往復動する移送機構29によって支持されている。具体的には、図3(a)に示すようにベース部30上には受取位置と引渡し位置にわたって直動レール31が形成されている。この直動レース31には移送体32が往復動可能に連繋している。移送体32には図示しない駆動源(サーボモータ)により回転駆動されるボールねじに嵌合するナットが連結されている。よって、駆動源を正逆回転することによりナットを介して連結する移送体32が直動レール31に沿って往復動する。
【0030】
図2において、移送体32には中空円筒状の支持柱33が4か所に立設されており、ヒータブロック13を一体に支持している。
【0031】
図3(a)に示すように、直動レール31の移送路である受取位置Pと引渡し位置Qとの間にはプリヒート位置Rが設けられている。このプリヒート位置Rには、ヒータブロックを覆うトンネルカバー14が測定装置11に隣接して設けられている(図1参照)。
【0032】
次にトンネルカバー14の構成について具体的に説明する。図2において、第1トンネルカバー14aはヒートブロック13の移送方向以外をトンネル状に覆っている。また、第2トンネルカバー14bは、第1トンネルカバー14aをカラー14cにて連結保持することで当該第1トンネルカバー14aの周囲に空間部14dを設けて覆っている。第2トンネルカバー14bはベース部30に立設されており、ヒータブロック13のみならず、支持柱33、移送体32、直動レール31をトンネル状に覆っている。第1トンネルカバー14a及び第2トンネルカバー14bは、例えば金属製(例えばSUS)カバーが好適に用いられる。
【0033】
図3(b)に示すように、被成形品1を載置したヒータブロック13が移送機構29により受取位置Pから引渡し位置Qへ移送される間にトンネルカバー14内で停止させることにより被成形品1を集中的に予備加熱することができる。
【0034】
ここで、プリヒート装置28のプリヒート動作について図3乃至図5を参照して説明する。図3(b)において、移載部12に設けられたピックアンドプレース12aによって保持された被成形品1は、図3(a)に示す受取位置Pに待機するヒータブロック13に移載される(図4(a)参照)。
【0035】
図4(a)において、ヒータブロック13には吸着プレート13cが吸着保持さており、被成形品1は、吸着プレート13cに載置されると吸引孔13dにより基板が吸着保持され、予備加熱が開始される。そして、図示しない駆動源を作動させて移送体32を直動レール31に沿って受取位置Pよりプレヒート位置Rに向かって移動させる。
【0036】
図4(b)において、移送体32はトンネルカバー14内のプリヒート位置Rに移動すると、駆動源を一旦停止して被成形品1を集中的に予備加熱する。このとき、トンネルカバー14(第1トンネルカバー14a,第2トンネルカバー14b)によってヒータ13aの熱が隣接する測定装置11(図1参照)へ拡散するのを可能な限り防ぐと共に、トンネルカバー14内で集中的に成形温度(例えば180℃)より低い所定のプリヒート温度まで予備加熱することができる。特に第1トンネルカバー14aと第2トンネルカバー14bとの間の空気層(図2参照)がヒータ13aの熱を外部に熱伝導するのを阻害するため、プレヒートを短時間で集中的に効率よく行うことができる。
【0037】
尚、図示しないが、トンネルカバー14の上方には、排気ダクトが設けられている。この排気ダクトは、プリヒート位置R周辺の熱気を効率よく排熱するために設けられる。また、トンネルカバー14内の加熱効率を高めるためには、トンネルカバー14の移送方向両側の開口部を覆う開閉蓋(シャッター)を設けても良い。
【0038】
プレヒート位置Rでプレヒートが行われている間に、図5(a)に示すように引渡し位置Qの近傍のガイドレール27には樹脂タブレット7を保持したローダー25が移動して待機している。この状態で、駆動源を起動して移送体32をプリヒート位置Rから引渡し位置Qへ移動させる。図5(b)に示すように、ヒータブロック13に吸着保持されていた被成形品1は、吸着を解除することで引渡し位置Qに待機するローダー25のハンド25aに引き渡される。このとき、引渡し直前まで被成形品1をプリヒートするのでプリヒート温度が低下し難く、ローダー25が保持している樹脂粉が被成形品1に落下することなく引き渡すことができる。
【0039】
次に、樹脂モールド動作の一例について図1を参照して説明する。
供給ステージ6に対向して載置された被成形品1は、ローダー25によって保持され、次いで樹脂タブレット供給部8より供給された樹脂タブレット7が保持された搬送プレート9に搬送されて、被成形品1は搬送プレート9に移載される。
搬送プレート9は、図示しないX−Y走査機構により測定装置11を通過する際に被成形品1の半導体チップエリアの総厚及び個々の被成形品1の基板エリアの板厚計測が行なわれる。厚さ計測の結果は制御部50に転送され、制御部50は計測結果に応じて金型駆動機構16を作動させてキャビティインサートの移動量(キャビティ深さ)を調整する。
【0040】
厚さ計測された後搬送プレート9は、移載部12に設けられたピックアンドプレース12aによって保持されてヒータブロック13に移載される。ヒータブロック13に載置された被成形品1は予備加熱が開始され、ヒータブロック13がプリヒート位置Rに設けられたトンネルカバー14内において停止することにより集中的に予備加熱される。その後ヒータブロック13は、ローダー25が待機する引渡し位置Qへヒータブロック13により搬送される。
そして、ローダー25はヒータブロック13からプリヒートされた被成形品1を受け取ってプレス部Cまでガイドレール27に沿って移動すると、公知の進退機構によってモールド金型へ被成形品1と樹脂タブレット7が搬入される。
【0041】
被成形品1及び樹脂タブレット7がモールド金型に搬入されるとヒータ(図示せず)によって加熱される。プレス装置15からインローダ−25が退出した後、モールド金型により被成形品1がクランプされ、キャビティに樹脂が充填されて樹脂モールドされる。この樹脂モールド操作においては、先に計測した当該被成形品1の厚さ計測結果に基づいて、予め制御部50により金型駆動機構16a,16bを駆動してキャビティ容量が調整された状態で樹脂モールドされる。
【0042】
樹脂モールド後、アンローダー26がプレス装置15内に進入し、成形品18を取り上げてプレス装置15から搬出し成形品18を取り出し部19へ移載する。成形品18は取り出し部19からディゲート部20に搬送され、成形品18からゲート等の不要樹脂を除去され、不要樹脂が除去された製品21は収納マガジン22に順次収納される。
【0043】
以上説明したように、上述した樹脂モールド装置を用いれば、被成形品1を載置したヒータブロック13が移送機構29により受取位置Pから引渡し位置Qへ移送される間にトンネルカバー14内で停止させて被成形品1を集中的に予備加熱するので、トンネルカバー14によってヒータの熱が隣接する測定装置11へ拡散するのを可能な限り防ぐと共に、トンネルカバー14内で集中的にプリヒート温度まで予備加熱することができる。
また、被成形品1をヒータブロック13に受取直後から引渡し直前まで加熱し続けるので、予備加熱された被成形品1の温度を下げることなくローダー25に引き渡すことができる。
【0044】
また、プリヒート装置28は、ヒータブロック13をトンネル状に覆う第1トンネルカバー14aと当該第1トンネルカバー14aと空間部14dを設けて重ねて覆う第2トンネルカバー14bが設けられていると、第1トンネルカバー14aと第2トンネルカバー14bとの間の空気層がヒータ13aの熱を外部に熱伝導するのを阻害するため、プレヒートを短時間で集中的に効率よく行うことができる。
【0045】
ヒータブロック13は、ベース部30上に受取位置Pと引渡し位置Qにわたって形成された直動レール31に沿って往復動する移送体32に立設された中空の支持柱33に支持されているので、ヒータ13aの熱が移送体32や直動レール31まで伝わり難く、移送機構29の円滑な移送動作を維持することができる。
また、被成形品1はヒータブロック13のプリヒート面に吸着保持された吸着プレート13cに吸着保持されたまま移送されるので、被成形品1を受取直後から引渡し直前までプリヒートされた吸着プレート13cに密着させてヒータ13aの熱伝導効率を高めてプリヒートすることができる。また、被成形品1の品種切り替えを行なう場合には、吸着プレート13cを交換すれば足りるので、汎用性が向上する。
【0046】
尚、上述した樹脂モールド装置は、搬送機構Eを共用した供給部A、厚さ計測部B、プレス部C、収納部Dを組み換え可能な装置について例示したが、これらが一体に組み付けられた公知の樹脂モールド装置に適用することも可能である。
また、樹脂モールド装置はトランスファーモールド装置に限らず圧縮成形装置であっても良い。
【符号の説明】
【0047】
A 供給部
B 厚さ計測部
C プレス部
D 収納部
E 搬送機構
F プリヒート部
G ダミーモジュール部
P 受取位置
Q 引渡し位置
R プリヒート位置
1 被成形品
2 供給マガジン
3 供給ストッカ
4 プッシャ
5 ターンテーブル
6 供給ステージ
7 樹脂タブレット
8 樹脂タブレット供給部
9 搬送プレート
9a 切欠き
9b ワーク支持部
9c 吸着孔
10 X−Y走査機構
11 測定装置
12 移載部
12a ピックアンドプレース
13a ヒータ
13b 吸着溝
13c 吸着プレート
13d 吸引孔
13 ヒータブロック
14 トンネルカバー
14a 第1トンネルカバー
14b 第2トンネルカバー
14c カラー
14d 空間部
15 プレス装置
16a,16b 金型駆動機構
17 フィルム供給機構
18 成形品
19 取り出し部
20 ディゲート部
21 製品
22 収納マガジン
23 収納ストッカ
25 ローダー
25a ハンド
26 アンローダー
27 ガイドレール
28 プリヒート装置
29 移送機構
30 ベース部
31 直動レール
32 移送体
33 支持柱
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被成形品を供給する供給部と、
前記供給された被成形品がローダーによって搬入されて樹脂モールドされるプレス部と、
前記供給部からプレス部へ搬送される間に被成形品を予備加熱するプリヒート部と、を具備し、
前記プリヒート部は、被成形品を受取位置で移載されて予備加熱するヒータブロックと、当該ヒータブロックが被成形品を受け取る受取位置と被成形品をローダーへ引き渡す引渡し位置との間を往復動する移送機構と、前記受取位置と引渡し位置との間のプリヒート位置に設けられ、前記ヒータブロックの周囲を覆うトンネルカバーとを具備したプリヒート装置であって、前記被成形品を載置したヒータブロックが移送機構により受取位置から引渡し位置へ移送される間に前記プリヒート位置に設けられたトンネルカバー内で停止させて被成形品を集中的に予備加熱することを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項2】
前記プリヒート装置は、前記ヒータブロックの周囲をトンネル状に覆う第1トンネルカバーと、当該第1トンネルカバーの周囲に空間部を設けて重ねて覆う第2トンネルカバーが設けられている請求項1記載の樹脂モールド装置。
【請求項3】
前記移送機構は、ベース部上に受取位置と引渡し位置にわたって形成された直動レールに沿って往復動する移送体に立設された支持柱にヒータブロックが支持されており、被成形品はヒータブロックのプリヒート面に吸着保持された吸着プレートに吸着保持されたまま移送される請求項1又は2記載の樹脂モールド装置。
【請求項4】
前記移送機構は、引渡し位置に待機するローダーに前記プリヒート装置で予備加熱された被成形品を載置したヒータブロックを移送して引き渡す請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂モールド装置。
【請求項5】
前記供給部とプリヒート部との間に被成形品の厚さを計測する厚さ計測部が設けられており、前記トンネルカバーは隣接する前記厚さ計測部への熱伝導を阻害する請求項1乃至4のいずれか1項記載の樹脂モールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−20446(P2012−20446A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158965(P2010−158965)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】