説明

樹脂封止済基板の冷却装置、冷却方法及び搬送装置、並びに樹脂封止装置

【課題】電子部品等が装着された基板を樹脂封止成形した後、電子部品等に悪影響を与えることなく樹脂封止済基板を冷却し、かつ反りを防止する。
【解決手段】本発明は樹脂封止成形した後の樹脂封止済基板21Aの冷却を行う基板冷却装置である。本発明に係る基板冷却装置を適用した樹脂封止済基板の搬送装置は、樹脂封止済基板21Aを保持する保持体40と、保持体40に設けられて樹脂封止済基板21Aを吸引する吸引手段と、吸引手段が樹脂封止済基板21Aを吸引する方向に設けられて樹脂封止済基板21Aが密着する密着面を有する冷却板31を有する。吸引手段は、樹脂封止済基板21Aと密着面との間に閉空間を形成する弾性支持部32と、閉空間に位置するように冷却板31に設けられて冷却板31の厚さ方向に貫通する貫通孔33aと、貫通孔33aと吸気経路33bを通じて閉空間内の空気を吸気する吸気手段33cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に装着された電子部品等を樹脂封止した樹脂封止済基板の冷却装置、冷却方法及び搬送装置、並びに基板上に装着された電子部品等を樹脂封止する樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上下両型からなる成形型を備えた樹脂封止装置を用いて、基板に装着した電子部品等を樹脂により封止して成形することが行われている。上下両型の一方は、樹脂を封入するキャビティを有している。樹脂封止は、まず、基板に装着した電子部品等がキャビティ内に収容されるように上下両型で基板を挟み、次いで高温で融解させた樹脂材料をキャビティに流し込んだ後、これを硬化させることにより行われる(トランスファ成形)。樹脂材料を硬化させた後、ラックへの収納や、樹脂封止済基板は切断等の後処理を行うために、樹脂封止成形型から所定の位置に搬送される。
【0003】
このような樹脂封止成形を行う際に、樹脂封止前基板や樹脂封止済基板の搬送に用いられる装置として、例えば特許文献1に記載の装置がある。この搬送装置は、上下両型間に進退自在に配置した搬送プレートと、搬送プレートに上下方向に昇降自在に嵌装させた基板搬送体とを備えている。基板搬送体の上面には樹脂封止前基板の載置部が、基板搬送体の下面には樹脂封止済基板の係着部が設けられており、更に基板搬送体の下面係着部には、樹脂封止済基板を吸着支持させる吸着支持手段が配置されている。
【0004】
電子部品等の樹脂封止は、上述の通り、高温で融解させた樹脂を硬化させることにより行われるため、樹脂封止直後の基板は高温になっている。樹脂材料と基板材料は異なる熱収縮率を有する。このため、成形型から外した樹脂封止済基板をそのまま放置すると自然冷却して樹脂封止済基板に反りが生じやすい。樹脂封止済基板に反りが生じると、ラックへの収納時に支障を来たす、或いは基板を正確に切断できない、等の問題が生じる。
【0005】
このような問題を解消するため、例えば特許文献2では、樹脂封止装置の内部に放熱板を備え、放熱板と基板載置部で樹脂封止成形物を挟持して冷却することにより、成形物の反りを防止する、反り防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-105326号公報
【特許文献2】特開平3-129864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2に記載の装置では、上下から大きな圧力を加えて樹脂封止済基板を挟持し続けたままの状態としなければならない。このため、樹脂封止部内の電子部品等を破損させたり、樹脂封止済基板の外形を変形させたりする等、不所望の影響を与える可能性がある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、電子部品等が装着された基板を樹脂封止成形した後の樹脂封止済基板を、電子部品等に対する悪影響を小さく抑えつつ樹脂封止済基板を冷却でき、かつ反りを防止することができる、樹脂封止済基板の冷却装置及び冷却方法を提供するとともに、前記冷却装置を備える樹脂封止済基板の搬送装置及び樹脂封止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本願の第一発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、樹脂封止成形型を用いて基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形した後の樹脂封止済基板を冷却する基板冷却装置であって、
a) 前記樹脂封止済基板を保持する保持体と、
b) 前記保持体に設けられた、前記樹脂封止済基板を吸引する吸引手段と、
c) 前記吸引手段が前記樹脂封止済基板を吸引する方向に設けられ、前記樹脂封止済基板が密着する密着面を有する冷却板と
を有することを特徴とする。
【0010】
本願の第二発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、
前記吸引手段が、前記樹脂封止済基板と前記冷却板の前記密着面との間の空気を吸気する吸気手段を備えることを特徴とする。
【0011】
本願の第三発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、
さらに、前記吸引手段が、
前記冷却板に設けられた、前記樹脂封止済基板を吸引する際に前記樹脂封止済基板に当接して該樹脂封止済基板と前記密着面との間に一又は複数の閉空間を形成する弾性支持部と、
前記閉空間に位置するように前記冷却板に設けられた、該冷却板の厚さ方向に貫通する一又は複数の貫通孔とを有し、
前記吸気手段が前記貫通孔を通じて前記閉空間内の空気を吸気することを特徴とする。
【0012】
本願の第四発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、
更に、
d) 前記冷却板を冷却する冷却手段
を備えることを特徴とする。
【0013】
本願の第五発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、前記冷却手段が、前記冷却板に送風する送風手段であることを特徴とする。
【0014】
本願の第六発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、前記冷却板が、前記密着面側に一又は複数の溝を有し、前記送風手段が該溝に空気を送給することを特徴とする。
【0015】
本願の第七発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、前記冷却手段が、前記冷却板に取り付けられたペルチェ素子を備えることを特徴とする。
【0016】
本願の第八発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置は、前記冷却板の密着面には、前記樹脂封止済基板の樹脂封止部分が密着することを特徴とする。
【0017】
本願の第九発明に係る樹脂封止済基板の搬送装置は、上記第一発明から第八発明のいずれかに記載の基板冷却装置を備えることを特徴とする。
【0018】
本願の第十発明に係る樹脂封止装置は、基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形する樹脂封止装置であって、上記第一発明から第八発明のいずれかに記載の基板冷却装置を備えることを特徴とする。
【0019】
本願の第十一発明に係る樹脂封止済基板の冷却方法は、樹脂封止成形型を用いて基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形したあとの樹脂封止済基板を冷却する基板冷却方法であって、
a) 前記樹脂封止済基板を保持する工程と、
b) 保持された前記樹脂封止済基板を冷却板に向かって吸引し、該冷却板が有する密着面に前記樹脂封止済基板を密着させることによって前記樹脂封止済基板を冷却する工程と
を有することを特徴とする。
【0020】
本願の第十二発明に係る樹脂封止済基板の冷却方法は、前記冷却する工程では、前記冷却板に向かって送風することを特徴とする。
【0021】
本願の第十三発明に係る樹脂封止済基板の冷却方法は、前記冷却する工程では、前記樹脂封止済基板の樹脂封止部分を前記密着面に密着させることを特徴とする。
【0022】
本願の第十四発明に係る樹脂封止済基板の冷却方法は、前記冷却する工程では、前記樹脂封止済基板を搬送しながら該樹脂封止済基板を冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置及び冷却方法によれば、樹脂封止済基板を吸引することで該樹脂封止済基板を冷却板の密着面に密着させ、前記樹脂封止済基板の熱を奪うようにしたので、基板と樹脂の熱収縮率の差に起因する樹脂封止済基板の反りを防止しつつ冷却することができる。また、上下から大きな圧力を加えて樹脂封止済基板を冷却していた従来技術に比べて樹脂封止成形された電子部品に及ぶ影響を小さく抑えることができる。
この場合、樹脂封止済基板の基板部分が冷却板の密着面に密着するように構成すれば、樹脂封止成形された電子部品に対する悪影響をより小さく抑えることができる。一方、樹脂封止済基板の樹脂封止部が冷却板の密着面に密着するように構成すれば、高温状態の樹脂封止部から直接熱を奪うことができるため、冷却効率が向上する。
【0024】
また、樹脂封止済基板と冷却板の密着面との間の空気を吸気する吸気手段を設ければ、樹脂封止済基板と冷却板との密着性を高めることができ、樹脂封止済基板の反り防止効果、冷却効率の双方を高めることができる。特に、樹脂封止済基板と密着面との間に閉空間を形成し、吸気手段により該閉空間内の空気を吸気するように吸引手段を構成すれば、より一層、樹脂封止済基板と冷却板との密着性を高めることができる。
更に、冷却手段を備えることにより樹脂封止済基板の冷却効率を高めることができる。
そのほか、本発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置の構成を、樹脂封止済基板を搬送する搬送装置や基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形する樹脂封止装置に用いることにより、樹脂封止済基板を冷却しつつ効率的に搬送を行うことや、樹脂封止からの一連の工程で樹脂封止済基板を冷却すること等もできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】基板上に装着された電子部品等の樹脂封止工程を説明する図。
【図2】樹脂封止済基板の搬送工程の概略を説明する図。
【図3】実施例1における吸着部の構造を説明する図。
【図4】実施例1において冷却板の上面(密着面)を樹脂封止部の下面に密着させる動作を説明する図。
【図5】実施例2における吸着部の構造を説明する図。
【図6】実施例2において冷却板の上面(密着面)を樹脂封止部の下面に密着させる動作を説明する図。
【図7】吸着部の変形例の構造を説明する図。
【図8】吸着部の別の変形例の構造を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る基板冷却装置は、樹脂封止成形型を用いて基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形した後の樹脂封止済基板を冷却する装置である。本発明に係る基板冷却装置の説明に先立ち、基板上の電子部品等の樹脂封止成形について図1を参照して説明する。樹脂封止成形は、上型11と下型12から成る成形型を備えた樹脂封止装置で行われる。図1の装置例では、上型11が基板固定機構を有し、下型12が樹脂を注入するためのキャビティ13を有する。基板固定機構としては、例えば、基板21を上方から吸引することにより吸着固定する機構や、基板21を上型に係着させる機構等が用いられる。
【0027】
前記樹脂封止装置において、まず、上型11の基板固定部に電子部品22を装着した基板21を固定し(図1(a)参照)、下型12のキャビティ13に常温において液状の(流動性を有する)樹脂材料23を注入する。その後、キャビティ13の温度を上昇させるとともに、下型12を上昇させて上型11の下面と下型12の上面を密着させ、加圧する(図1(b)参照)。そして、この状態を数分間維持してキャビティ13内の樹脂を硬化させる。これにより、圧縮成形による樹脂封止成形が完了し、基板21上の電子部品22等が硬化した樹脂によって封止される。樹脂封止成形後は、図1(c)に示すように、上型11に基板21を固定したまま下型12を下降させる。以下、樹脂封止成形された基板を樹脂封止済基板21A、電子部品22が硬化した樹脂によって封止された部分を樹脂封止部24と呼ぶ(図1(d)参照)。なお、樹脂材料23として粉状、粒状等の固形の材料を使用して、キャビティ13の温度を上昇させることによってその材料を融解させても良い。
【0028】
基板上に装着された電子部品等の樹脂封止が完了すると、ラックへの収納や、切断等の後処理を行うため、樹脂封止済基板は樹脂封止装置から取り外されて搬送される。以下、本発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置を基板搬送装置に適用した具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0029】
実施例1に係る樹脂封止済基板の搬送装置は、図2(a)に示すように、樹脂封止済基板を搬送する搬送プレート40と、搬送プレート40上に設けられた吸着部30、搬送プレート40を水平方向に移動させるための搬送プレート駆動機構(図示せず)、及び吸着部30を鉛直方向に移動させるための吸着部駆動機構50からなる。
【0030】
吸着部30の構造を図3により説明する。図3(a)は吸着部30の上面図、図3(b)は吸着部30のA-A'断面図である。吸着部30は、冷却板31と、冷却板31の周縁部に沿って設けられた枠状の弾性支持部材32を有する。冷却板31は、樹脂封止部よりも十分に高い剛性を有し、高い熱伝導率を有する材料であるアルミニウム板から構成されている。冷却板31は、樹脂封止済基板21Aの樹脂封止部24の下面とほぼ同じ大きさを有しており、その上面は前記樹脂封止部24の下面が密着する密着面となっている。また、冷却板31は、該冷却板31の厚さ方向に貫通する貫通孔33aを有している。弾性支持部材32は、冷却板31の上面(密着面)から上方に僅かに突出している。さらに、貫通孔33aには、吸気経路33b及び吸気装置33cが接続されている。
【0031】
実施例1に係る樹脂封止済基板の搬送装置の動作を説明する。樹脂封止装置により樹脂封止済基板21Aを成形した後、搬送プレート駆動機構を動作させて、搬送プレート40を樹脂封止装置の上型11、下型12の間の所定位置に移動させる(図2(a)参照)。この所定位置とは、冷却板31の密着面と樹脂封止部24の下面が対向する位置をいう。
【0032】
続いて、吸着部駆動機構50を動作させて、弾性支持部材32の上面が樹脂封止部24の下面に当接する位置まで、吸着部30を上昇させる(図2(b)参照)。上述の通り、弾性支持部材32は冷却板31の密着面から上方に僅かに突出しているため、弾性支持部材32の上面が樹脂封止部24の下面に当接し、その結果、冷却板31の密着面、弾性支持部材32、及び樹脂封止部24の下面によって囲まれた閉空間が形成される(図4(a)参照)。
【0033】
この状態で吸気装置33cを動作させ、貫通孔33a及び吸気経路33bを通じて、この閉空間内の空気を吸気する。また、この閉空間内の吸気開始と同期して、基板21を上型11に固定していた固定機構の動作を解除する。例えば、上型11に基板21を吸引固定している場合は、その吸引を中止する。これにより、弾性支持部材32が徐々に弾性変形して樹脂封止済基板21Aが上型11から冷却部30に移動し、樹脂封止部24の下面が冷却板31の密着面に密着する(図4(b)参照)。弾性支持部材32の弾性特性及び密着面からの突出の程度、吸気装置33cによる吸気の強さは、この吸気により密着面が樹脂封止部24の下面に密着するよう、予め調節しておく。このとき、閉空間内を高真空状態に維持して樹脂封止済基板21Aと密着面との密着性を高めるように調節することが望ましいが、必ずしも高真空状態に維持しなくても良い。そして、この密着状態を保ったまま、吸着部駆動機構50を動作させて吸着部30を下降させ(図2(c)参照)、さらに搬送プレート駆動機構を動作させて樹脂封止済基板21Aを後処理等を行うための所定位置に搬送する。この間、樹脂封止済基板21Aを冷却板31に密着した状態を保つため、樹脂封止済基板21Aの反りを防止して冷却を行いながら、効率的に搬送することができる。
【実施例2】
【0034】
実施例2に係る樹脂封止済基板の搬送装置について説明する。上述した実施例1と吸着部30の構造が異なるが、搬送プレート40、吸着部駆動機構50の構成は実施例1と同じであるため、これらの説明は省略する。図5(a)は吸着部30の上面図、図5(b)は吸着部30のB-B'断面図である。吸着部30は、冷却板31と6個の弾性支持部材32を有する。冷却板31は、樹脂封止部24の下面が密着する密着面と、厚さ方向に貫通する6個の貫通孔33aを有する。弾性支持部材32は、図5(b)に示すように6個の貫通孔33aにそれぞれ設けられており、貫通孔33aに挿通された筒状部32aと筒状部32aの上端部に連結された椀状部32bを有する。筒状部32aは貫通孔33aの内壁に密着して設けられている。椀状部32bは、冷却板31の密着面から上方に僅かに突出しており、その上端部には開口を、下端部には筒状部32aに連通する孔を有する。また、各貫通孔33aには吸気経路33b及び吸気装置33cが接続されている。
【0035】
実施例2に係る樹脂封止済基板の搬送装置の動作について説明する。実施例2においても、実施例1と同様の操作により弾性支持部材32の上面を樹脂封止部24の下面に当接させる。弾性支持部材32の椀状部32bは冷却板31の密着面から上方に僅かに突出しているため、椀状部32bの上面が樹脂封止部24の下面に当接し、その結果、椀状部32bと樹脂封止部24の下面によって囲まれた閉空間が形成される(図6(a)参照)。
【0036】
この状態で、実施例1と同様に吸気装置33cを動作させ、貫通孔33a及び吸気経路33bを通じて、この閉空間内の空気を吸気し、これと同期して上型11の基板固定機構の動作を解除する。これにより、弾性支持部材32が徐々に弾性変形して樹脂封止済基板21Aが上型11から冷却部30に移動し、樹脂封止部24の下面が冷却板31の密着面に密着する(図6(b)参照)。実施例2においても、実施例1と同様に、弾性支持部材32の弾性特性、椀状部32bの密着面からの突出の程度、吸気装置33cによる吸気の強さは予め調節しておく。以降、実施例1と同様の操作を行うことにより、樹脂封止済基板21Aを後処理等を行うための所定位置に搬送する。このように、上述の実施例1と同様、樹脂封止済基板21Aの反りを防止して冷却を行いながら、効率的に搬送することができる。
【0037】
また、実施例2では、6個の弾性支持部材32を設け、各弾性支持部材32の椀状部32bと樹脂封止部24の下面によって囲まれた閉空間の空気をそれぞれ吸引するようにした。このような構成により、各閉空間の容積はもちろん閉空間6個分の容積も、実施例1の閉空間の容積よりも小さくすることができる。このため、閉空間の空気の吸引を開始してから樹脂封止部24が冷却板31に密着するまでの時間を短縮することができる。
【0038】
上記の実施例はいずれも一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜変更や修正を行うことが可能である。上記の実施例では、本発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置を基板搬送装置に適用した例について説明したが、当然、樹脂封止済基板の冷却のみを行う装置としても良い。
また、上記実施例では圧縮成形により製作された樹脂封止済基板を冷却する例について説明したが、トランスファ成形等、他の成形方式により製作された樹脂封止済基板の冷却についても、本発明に係る樹脂封止済基板の冷却装置を適用することができる。
さらに、図1に示したような、上型に基板を固定し、下型に樹脂材料を注入して、樹脂封止装置から樹脂封止済基板を搬送する場合について説明したが、上型、下型の有する機能が逆である樹脂封止装置から樹脂封止済基板を搬送する場合には、上記例において説明した上下関係を逆にして用いることができる。
そのほか、樹脂封止部24を冷却する場合について説明したが、基板21を冷却することもできる。
【0039】
上記の実施例では、樹脂封止済基板から冷却板に伝導した熱を自然空冷により放熱する構成であったが、上記構成に加え、冷却板を冷却する冷却手段を備えることが望ましい。これにより、樹脂封止済基板から冷却板に伝導した熱の放熱効率を高めることができ、樹脂封止済基板をより一層効率的に冷却することができる。このような手段としては、例えば冷却板に送風するファン、ボルテックスチューブ等の送風手段や、冷却板にペルチェ素子を取り付けて冷却するもの等を用いることができる。冷却板に送風する送風手段を用いる場合、密着面の反対側から冷却板に送風しても良いが、図7(a)の上面図、図7(b)のC-C'断面図に示すように、冷却板31の密着面に溝34を設け、樹脂封止部24の下面と密着面の間に空気を送給することが望ましい。これにより、より一層効率的に樹脂封止済基板を冷却することができる。また、樹脂封止済基板を冷却板によって冷却することに加えて、樹脂封止済基板における冷却板に密着していない面を強制冷却してもよい。
【0040】
上記の実施例では、吸引手段は樹脂封止済基板と冷却板の密着面との間の空気を吸気するものとしたが、基板として鋼系材料をベースとするメタルベース基板を使用する場合には、樹脂封止済基板を磁気吸引するものとしても良い。
また、アルミニウム板から冷却板を構成したが、樹脂材料よりも十分に高い剛性を有し、高い熱伝導率を有する材料であればアルミニウム以外の材料から構成しても良い。
【0041】
図3では冷却板が単一の貫通孔を有する例を示したが、吸着しようとする樹脂封止済基板の大きさ等に応じて、適宜貫通孔の数を増やすことができる。図5に示した冷却板及び弾性支持部材の数についても同様に増減させることができる。
また、図3で示した例では、冷却板の周縁部を取り囲み、単一の閉空間を形成するように弾性支持部材を設けたが、図8に示すように、これを複数の閉空間に分割し、各閉空間の空気を個別に吸気するように吸着部を構成しても良い。図8(a)は上面図、図8(b)はD-D'断面図である。
【符号の説明】
【0042】
11…上型
12…下型
13…キャビティ
21…基板
21A…樹脂封止済基板
22…電子部品
23…樹脂材料
24…樹脂封止部
30…吸着部
31…冷却板
32…弾性支持部材
32a…筒状部
32b…椀状部
33a…貫通孔
33b…吸気経路
33c…吸気装置
34…溝
40…搬送プレート
50…吸着部駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂封止成形型を用いて基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形した後の樹脂封止済基板を冷却する基板冷却装置であって、
a) 前記樹脂封止済基板を保持する保持体と、
b) 前記保持体に設けられた、前記樹脂封止済基板を吸引する吸引手段と、
c) 前記吸引手段によって前記樹脂封止済基板を吸引する方向に設けられ、前記樹脂封止済基板が密着する密着面を有する冷却板と
を有することを特徴とする基板冷却装置。
【請求項2】
前記吸引手段が、前記樹脂封止済基板と前記冷却板の前記密着面との間の空気を吸気する吸気手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の基板冷却装置。
【請求項3】
前記吸引手段が、
前記冷却板に設けられた、前記樹脂封止済基板を吸引する際に前記樹脂封止済基板に当接して該樹脂封止済基板と前記密着面との間に一又は複数の閉空間を形成する弾性支持部と、
前記閉空間に位置するように前記冷却板に設けられた、該冷却板の厚さ方向に貫通する一又は複数の貫通孔とを有し、
前記吸気手段が前記貫通孔を通じて前記閉空間内の空気を吸気する
ことを特徴とする請求項2に記載の基板冷却装置。
【請求項4】
更に、
d) 前記冷却板を冷却する冷却手段
を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の基板冷却装置。
【請求項5】
前記冷却手段が、前記冷却板に送風する送風手段であることを特徴とする、請求項4に記載の基板冷却装置。
【請求項6】
前記冷却板が、前記密着面側に一又は複数の溝を有し、前記送風手段が該溝に空気を送給することを特徴とする、請求項5に記載の基板冷却装置。
【請求項7】
前記冷却手段が、前記冷却板に取り付けられたペルチェ素子を備えることを特徴とする、請求項4に記載の基板冷却装置。
【請求項8】
前記冷却板の密着面には、前記樹脂封止済基板の樹脂封止部分が密着することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の基板冷却装置。
【請求項9】
樹脂封止済基板を搬送する基板搬送装置であって、請求項1から8のいずれかに記載の基板冷却装置を備えることを特徴とする基板搬送装置。
【請求項10】
基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形する樹脂封止装置であって、請求項1から8のいずれかに記載の基板冷却装置を備えることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項11】
樹脂封止成形型を用いて基板上に装着された電子部品を樹脂封止成形した後の樹脂封止済基板を冷却する基板冷却方法であって、
a) 前記樹脂封止済基板を保持する工程と、
b) 保持された前記樹脂封止済基板を冷却板に向かって吸引し、該冷却板が有する密着面に前記樹脂封止済基板を密着させることによって前記樹脂封止済基板を冷却する工程と
を有することを特徴とする基板冷却方法。
【請求項12】
前記冷却する工程では、前記冷却板に向かって送風することを特徴とする請求項11に記載の基板冷却方法。
【請求項13】
前記冷却する工程では、前記樹脂封止済基板の樹脂封止部分を前記密着面に密着させることを特徴とする請求項11又は12に記載の基板冷却方法。
【請求項14】
前記冷却する工程では、前記樹脂封止済基板を搬送しながら該樹脂封止済基板を冷却することを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の基板冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−45839(P2012−45839A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190946(P2010−190946)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(390002473)TOWA株式会社 (192)
【Fターム(参考)】