樹脂成形品の成形方法及び成形装置
【課題】金型のコアバックにより溶融樹脂の発泡を促進すると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性の低下を抑制すること。
【解決手段】
押し出し成形された非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体Pが金型21、22のキャビティC内に配置されるよう金型21、22を型締めする工程と、筒状成形体PをキャビティC内で膨らませてブロー成形体を成形した状態で、キャビティC内のブロー成形体P内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出工程と、金型21、22をコアバックさせてキャビティCの容積を増大させながら溶融樹脂をブロー成形体P内部で発泡させる発泡工程と、を有し、発泡工程において、コアバックによるキャビティCの容積の増大に伴って延伸されるブロー成形体Pの被延伸部分に近接する部位(部分B)に充填される溶融樹脂の温度を他の部位に充填される溶融樹脂の温度に比べて高く設定することを特徴とする。
【解決手段】
押し出し成形された非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体Pが金型21、22のキャビティC内に配置されるよう金型21、22を型締めする工程と、筒状成形体PをキャビティC内で膨らませてブロー成形体を成形した状態で、キャビティC内のブロー成形体P内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出工程と、金型21、22をコアバックさせてキャビティCの容積を増大させながら溶融樹脂をブロー成形体P内部で発泡させる発泡工程と、を有し、発泡工程において、コアバックによるキャビティCの容積の増大に伴って延伸されるブロー成形体Pの被延伸部分に近接する部位(部分B)に充填される溶融樹脂の温度を他の部位に充填される溶融樹脂の温度に比べて高く設定することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂成形品の成形技術として、熱可塑性樹脂発泡層を有するパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して加熱することにより表皮付き発泡成形体を製造する方法が提案されている(例えば特許文献1)。この方法によれば、表面が平滑で、また、強度の高い成形品を生成することができる。
【0003】
また、他の発泡成形体の成形技術として、金型内に発泡性の樹脂を充填し、金型をコアバックさせることにより金型内のキャビティの容積を増大させながら樹脂の発泡を促進させる方法が提案されている。この方法によれば、軽量で強度の高い成形品を生成することができる一方、表面の平滑性が劣るという課題がある。
【0004】
そこで、上述した表皮付き発泡成形体の成形方法と金型のコアバックによる成形方法とを組み合わせることにより、表面が平滑で、軽量かつ強度の高い成形品を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−284149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、表皮付き発泡成形体を金型のコアバックにより発泡成形する場合、表皮材(パリソン)は金型のコアバック前に、キャビティ内でブローされることにより、金型内壁に密着する。これにより、パリソンは除々に冷却されるため、パリソンの延性は低下する。この状態で金型をコアバックした場合には、コアバックに伴って現れる金型内壁付近で、延性が低下したパリソンが延伸されることになるため緊張状態が高まる。このため、コアバックによる溶融樹脂の発泡が抑制されると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、金型のコアバックにより溶融樹脂の発泡を促進すると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る発明においては、押し出し成形された非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体が金型のキャビティ内に配置されるよう金型を型締めする工程と、前記筒状成形体を前記キャビティ内で膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出工程と、前記金型をコアバックさせて前記キャビティの容積を増大させながら前記溶融樹脂を前記ブロー成形体内部で発泡させる発泡工程と、を有し、前記発泡工程において、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定することを特徴とする樹脂成形品の成形方法が提供される。
【0008】
また、請求項9に係る本発明においては、金型を型締め及び型開きすると共に、キャビティの容積を増大させるコアバック動作を行う金型可動機構と、非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体を押し出し成形する押出成形機と、型締め状態のキャビティ内で前記筒状成形体を膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出機と、前記溶融樹脂の発泡時に、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定する温度設定手段と、を有することを特徴とする樹脂成形品の成形装置が提供される。
【0009】
上記の請求項1及び請求項9に係る発明によれば、前記溶融樹脂の発泡時に、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される溶融樹脂の温度を他の部位に充填される溶融樹脂の温度に比べて高く設定するため、前記ブロー成形体の前記被延伸部分における温度を高めることができる。すなわち、前記ブロー成形体の前記被延伸部分における延性低下を抑制することができる。従って、前記金型のコアバックにより前記溶融樹脂の発泡を促進すると共に、前記ブロー成形体の前記金型内壁に対する追従性を向上することができる。
【0010】
請求項2及び請求項10に係る発明においては、前記溶融樹脂を射出する射出機に設けられたヒータにより、前記射出機内に存在する前記溶融樹脂の温度を、射出口側は他の部位に比べて高くなるように設定してもよい。この構成によれば、簡易な構成によって、前記金型のコアバックにより前記溶融樹脂の発泡を促進すると共に、前記ブロー成形体の前記金型内壁に対する追従性を向上することができる。
【0011】
また、請求項3及び請求項11に係る発明においては、前記溶融樹脂を射出する射出機内に、冷却速度の異なる前記溶融樹脂を存在させ、射出口側に存在する前記溶融樹脂は他の部分に比べて冷却速度が遅い特性を有するものであってもよい。この構成によれば、前記被延伸部分に近接する部位に冷却速度が遅い特性を有する溶融樹脂が射出されるため、該部位における発泡の低減を抑制することができる。
【0012】
また、請求項4及び請求項12に係る発明においては、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を制御する温度設定手段を設け、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記温度設定手段により前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定してもよい。この構成によれば、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定するため、発泡が停止した溶融樹脂の固化を促進することができる。
【0013】
また、請求項5及び請求項13に係る発明においては、前記温度設定手段は、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に形成された流路に温度調整された媒体を流通させて温度を設定してもよい。この構成によれば、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位を簡便、容易に温度調整することができる。
【0014】
また、請求項6及び請求項14に係る発明においては、前記発泡性の溶融樹脂には、補強繊維が含有されていてもよい。この構成によれば、前記発泡性の溶融樹脂に前記補強繊維を含有させるという簡便、容易な処理で、前記樹脂成形品の強度を向上することができる。
【0015】
また、請求項7及び請求項15に係る発明においては、前記発泡性の溶融樹脂には、物理発泡剤が含有されていてもよい。この構成によれば、樹脂成形品内部に微細発泡セルを形成することができ、当該樹脂成形品の強度を高めることができる。
【0016】
また、請求項8及び請求項16に係る発明においては、前記物理発泡剤が超臨界状態の流体であってもよい。この場合、より微細な発泡セルを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金型のコアバックにより溶融樹脂の発泡を促進すると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<共通の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形装置Aの概略構成図である。射出成形装置Aは、非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体であるパリソンPを押出す押出機10と、押出機10の下方に配設された成形機20と、を備える。
【0019】
押出機10は、パリソンPを押し出し成形して型開き状態の金型のキャビティ間に垂下させる装置である。パリソンPを構成する非発泡性の溶融樹脂としては、例えば、ポリプロピレンを挙げることができる。ここで、パリソンPは、押出機10によって押し出し成形された筒状成形体の状態と、その筒状成形体をキャビティ内で膨らませたブロー成形体の状態とを共に含むものである。
【0020】
成形機20は、金型部を構成する一組の金型21、22と、各金型21を移動させる油圧アクチュエータ23、24と、を備える。金型21は、方形の開口部を有する枠状の本体部21aと、本体部21aの開口部に挿入されたコア部21bと、を備える。コア部21bは、金型22に対して相対的に可動すると共に型締時に金型22とキャビティを形成する。本体部21aは、コア部21bの外周に配設され型締時にはコア部21b及び金型22に当接すると共に、コア部21bのコアバック動作に伴って金型22から離間しつつキャビティの一部を形成する。油圧アクチュエータ23は、本体部21aとコア部21bとをそれぞれ独立して移動可能に構成されている。例えば、金型を型締め又は型開きする際には、本体部21a及びコア部21bを共に前進又は後退させる。また、キャビティの容積を増大させるコアバック動作を行う際には、コア部21bのみを後退させる。これにより、金型に所望の動作を行わせることができる。
【0021】
金型22には、吹き込みノズル25が挿脱可能に装着されている。吹き込みノズル25は不図示の駆動手段により移動可能に構成されており、金型22の内方へ突出した吹き込み位置と、当該内方から離脱した退避位置とで移動される。吹き込みノズル25は、圧縮気体の供給装置26から供給される圧縮気体をパリソンP内に吹き込んでこれを膨らませるためのノズルである。なお、供給装置26は、例えばコンプレッサと、圧縮気体の送出・遮断等を切換える制御弁等から構成される。
【0022】
金型22には発泡性の溶融樹脂を射出する射出機27が装着されている。射出機27は、射出口27c及び金型22に形成された樹脂通路22aを介して、型締め状態のキャビティ内でパリソンPを膨らませた状態で、パリソンP内に溶融樹脂を射出する。
【0023】
射出機27には、発泡剤供給装置28が接続されている。発泡剤供給装置28は、超臨界ガス発生装置28aと、ボンベ28bとを備える。発泡剤供給装置28は、ボンベ28bに充填された炭酸ガスや窒素ガス等のガスを超臨界状態の不活性ガスに遷移させる装置である。発泡剤供給装置28により発生した超臨界ガスは、発泡剤として射出機27のスクリューシリンダ27b内に導入され、スクリューシリンダ27b内の溶融樹脂(例えば、ポリプロピレン)に溶解され、発泡性の溶融樹脂が生成される。
【0024】
次に、射出成形装置Aによる樹脂成形品の成形方法について、図2及び図3を参照して説明する。まず、図2(a)に示すように、押出機10からパリソンPを押し出し垂下させる。続いて金型21及び22の型締めを行い、パリソンPを金型21及び22により形成されるキャビティC内に配置する。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、吹き込みノズル25から圧縮気体を吹き出すことで、金型21、22内のキャビティCにおいてパリソンPを膨らませる。圧縮気体の吹込みにより、パリソンPは金型21及び22の内壁面に密着するようにして膨らむ。
【0026】
次に、図3(a)に示すように、射出機27から発泡性の溶融樹脂Rを、樹脂通路22aを介して射出する。溶融樹脂Rの射出により、パリソンPの一部が破れて穿孔され、膨らんだパリソンP内に溶融樹脂Rが充填される。
【0027】
溶融樹脂Rの充填の際、吹き込みノズル25を大気開放とすることでパリソンP内の空気が排出され、溶融樹脂Rの充填効率が高められる。なお、吹き込みノズル25からパリソンP内の空気を吸引して溶融樹脂Rの充填効率を更に高めることもできる。
【0028】
図3(b)に示すように、吹き込みノズル25を退避位置へ移動し、溶融樹脂Rの充填が完了すると、図3(c)に示すように、コア部21bをコアバックしてキャビティCの空間を増大させる。これにより、溶融樹脂Rの発泡が促進される。しかし、コアバックを行う際には、パリソンPのうち、コア部21bのキャビティCに面する面の周縁に隣接する部分B(延伸部分)が金型への密着状態から剥離してしまうことがある。つまり、溶融樹脂の発泡作用により、この剥離した部分が再び本体部21aに密着しなければ、部分Bにおいて樹脂成形品の正規形状が得られないこととなる。この課題を解決する手段については、後述の実施形態の中で詳細に説明する。
【0029】
本実施形態では、溶融樹脂Rに混入される発泡剤として超臨界ガスを用いた例を説明したが、発泡剤はこれに限られず、他の種類の発泡剤でもよい。ただし、化学発泡剤よりも物理発泡剤の方が中実樹脂成形品X内部に微細発泡セルを形成することができ、中実樹脂成形品Xの強度を高めることができる。また、物理発泡剤の中でも本実施形態のように、超臨界状態の流体を用いることでより微細な発泡セルを形成することができる。
【0030】
なお、溶融樹脂Rとしては補強繊維(例えば、ガラス繊維やカーボン繊維等)を含有したものも採用できる。補強繊維を混入しておくことで、コアバック前に樹脂流動に基づいて、流動方向に沿って強制的に配向された補強繊維の内部応力がコアバックに伴って開放され、その配向が開放されて溶融樹脂Rの見かけ上の体積が増加し(スプリングバック現象)、溶融樹脂Rの発泡の促進を更に図ることができる。
【0031】
<溶融樹脂充填時の空気の他の排出例>
上記実施形態では、溶融樹脂Rの充填の際、パリソンP内部の空気の排出を吹き込みノズル25により行なったが、パリソンPを穿孔する穿孔装置を設ける構成も採用することができる。図4は穿孔装置30を用いた例を示す説明図である。
【0032】
図4(a)に示すように、本例の場合、金型22には穿孔装置30が装着されている。穿孔装置30はピン31aが突出して設けられたピストン31と、ピストン31をスライドさせるアクチュエータ32とを備える。金型22にはピストン31の摺動空間22cと摺動空間22cと金型22の外部を連通させる連通路22bが形成されている。また、摺動空間22cに連通して金型22の内壁面に開口した孔を有し、この孔にピン31aが挿入されてピン31aが金型22の内方に突出している。
【0033】
図4(b)に示すように、吹き込みノズル25から圧縮気体をパリソンP内に吹き込み、これを膨らませるとキャビティC内に突出したピン31aの存在によりパリソンPの一部に孔が空けられる。
【0034】
図4(c)に示すように、アクチュエータ32を作動してピストン31を後退させると、パリソンPの孔、ピン31aが挿入されていた孔22d、摺動空間22c並びに連通路22bを流通経路として、パリソンP内の空気が金型22の外部へ排出可能となる。しかして、射出機27からパリソンP内へ溶融樹脂Rを充填すると、パリソンP内の空気が外部に排出されて充填効率を高められる。
【0035】
<溶融樹脂充填時のパリソンPの他の穿孔例>
上記実施形態では、溶融樹脂Rの充填時に、その充填圧によりパリソンPの一部を穿孔して、膨らんだパリソンP内に溶融樹脂Rを充填したが(図3(a)、パリソンPを穿孔する穿孔装置を設ける構成も採用することができる。図5及び図6は穿孔装置40を用いた例を示す説明図である。
【0036】
図5(a)に示すように、本例の場合、金型22には穿孔装置40が装着されている。また、金型22には貫通孔22eと、貫通孔22eと射出機27とを連通させる樹脂通路22fが形成されている。
【0037】
穿孔装置40は貫通孔22e内を摺動し、樹脂通路22fを開閉するシャッタ部材41と、シャッタ部材41をスライドさせるアクチュエータ42と、貫通孔22eを開閉するシャッタ部材43と、シャッタ部材43をスライドさせるアクチュエータ44と、を備える。
【0038】
図5(b)に示すように、吹き込みノズル25から圧縮気体をパリソンP内に吹き込み、これを膨らませる際、シャッタ部材41は樹脂通路22fを閉鎖し、シャッタ部材43は貫通孔22eを閉鎖している。パリソンPが膨らむと、図6(a)に示すように、その一部が貫通孔22eに侵入して凸状の薄肉部P’が形成される。薄肉部P’は、パリソンPが貫通孔22eに侵入する際に延伸されて薄肉化して形成される。
【0039】
この時、アクチュエータ44を作動してシャッタ部材43を降下させると、吹き込みノズル25からの圧縮気体の圧力により、図6(b)に示すように、薄肉部P’が破裂してパリソンPが穿孔される。
【0040】
その後、図6(c)に示すように、アクチュエータ42を作動してシャッタ部材41を後退させて樹脂通路22fを開放する(貫通孔22eと連通状態とする)。続いて射出機27から溶融樹脂Rを押出すことで、パリソンP内に溶融樹脂Rを充填することができる。このように穿孔装置40を用いることで、より確実にパリソンPの一部を穿孔できる。
【0041】
図7(a)は穿孔装置40を用いた例の変形例を示す図である。同図の例では、金型22にはその内方に突出した円筒部22gが形成されている。また、金型22には円筒部22g内から金型22の外部へ通じる貫通孔22e'と、貫通孔22e’と射出機27とを連通させる樹脂通路22f’が形成されている。貫通孔22e'内には樹脂通路22f'を開閉するシャッタ部材41’と、シャッタ部材41’を貫通孔22e’内でスライドさせるアクチュエータ42’とが配設されている。
【0042】
本例の場合、吹き込みノズル25から圧縮気体をパリソンP内に吹き込み、これを膨らませる際、シャッタ部材41’は樹脂通路22f'を閉鎖している。パリソンPが膨らむと、図7(a)に示すように、その一部が円筒部22gの存在により一旦凹状となって、円筒部22gに侵入して凸状となった薄肉部P’が形成される。薄肉部P’は、パリソンPが円筒部22gに密着し、また、貫通孔22eに侵入する際に延伸されて薄肉化して形成される。
【0043】
この時、アクチュエータ42’を作動してシャッタ部材41’を後退させると、吹き込みノズル25からの圧縮気体の圧力により、図7(b)に示すように、薄肉部P’が破裂してパリソンPが穿孔される。
【0044】
なお、シャッタ部材41’は、図7(c)に示すように、その先端が尖ったシャッタ部材41"として構成し、円筒部22gからその先端が突出するように構成してもよい。この場合、薄肉部P”はシャッタ部材41”の先端表面に密着して凹状に形成されることになる。シャッタ部材41の先端が尖っており、かつ、金型22の内方に突出していることから、薄肉部P”はより脆弱となって破れ易くなる。
【0045】
<第1の実施形態>
図8は、第1の実施形態に係る射出成形装置A−1の概略構成図である。前述した共通の全体構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
射出機27’は、射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側にヒータHを備える。ヒータHは、射出口27c’周辺に存在する溶融樹脂の温度を調整する。本実施形態では、ヒータHによって、射出機27’内に存在する溶融樹脂の温度を射出口27c’側ほど高くなるように設定する。
【0047】
この構成によれば、射出機27’の射出口27c’側に存在する、相対的に温度が高い溶融樹脂を先にパリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)に射出することができる。射出口27c’から射出された溶融樹脂は、金型21、22側から冷却されるが、射出された溶融樹脂の温度が高ければ、溶融樹脂が固化温度に冷却されるまでに時間が掛かる。従って、その間において、部分Bにおける発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22の内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0048】
なお、射出機27’は、本実施形態では、ヒータHを射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側に部分的に設けたが、樹脂溜め部分の全体に配することで溶融樹脂の温度を制御する構成としてもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、射出口27c’側に存在する溶融樹脂の温度を、他の部位に比べて、高く設定することで、パリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)の溶融樹脂の温度を調整したが、本実施形態では、金型22に2台の射出機27、27’を接続し、両者から射出される溶融樹脂の温度に差を設けることで、部分Bの溶融樹脂の温度のみを高くする。前述した共通の全体構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係る射出成形装置A−2の概略構成図である。金型22には、2台の射出機27、27’が接続されている。射出機27’は、第1実施形態と同様のものであり、射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側にヒータHを備える。一方、射出機27は、ヒータHを備えていない。射出機27’内の溶融樹脂は、ヒータHで温められるため、射出機27内の溶融樹脂に比べて、高温となる。射出機27’で生成された溶融樹脂は、射出口27c’から射出される。一方、射出機27で生成された溶融樹脂は、射出口27cから射出される。射出口27c’は、部分Bに射出することができるような位置に配され、射出口27cは、射出口27c’からある程度離れた位置に配される。
【0051】
この構成によれば、射出機27、27’から異なる温度の溶融樹脂を異なる射出口27c、27c’から射出するため、高温の溶融樹脂R’を確実に部分Bに射出することができる。従って、部分Bに高温の溶融樹脂を配することができるため、部分Bの発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22の内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
なお、射出機27’は、本実施形態では、ヒータHを射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側に部分的に設けたが、樹脂溜め部分の全体に配することで溶融樹脂の温度を制御する構成としてもよい。また、射出機27’だけでなく、射出機27にもヒータHを設けて、射出機27から射出される溶融樹脂の温度と、射出機27’から射出される溶融樹脂の温度との間に差を設ける構成としてもよい。
【0052】
<第3の実施形態>
第1、第2の実施形態では、射出機27’に設けられたヒータHにより溶融樹脂の温度を調整したが、本実施形態では、本体部21aに設けられた温度設定手段により、温度調整された媒体を流通させることで、パリソンP内に射出された後の溶融樹脂の温度を調整する。前述した共通の全体構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図10は、第3の実施形態に係る射出成形装置A−3の構成を示す図である。金型21の本体部21a内、つまり、パリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)に接する本体部21a内には、冷温水流路21a’が形成されており、冷温水供給装置30と接続されている。冷温水供給装置30と冷温水流路21a’の間は、ホースでつながれており、冷水、温水を切り替える切替弁33がその途中に配されている。すなわち、冷温水流路21a’に温度調整された媒体を流通させることで、冷温水流路21a’が温度設定手段として機能する。
【0054】
図11は、射出成形装置A−3と冷温水供給装置30との動作手順を示す説明図である。横軸を時間軸として、上段、中段に各工程の処理を示し、下段にその工程に対応する冷温水流路21a’への冷温水の供給状態を示す。まず、図2、3で示すように、パリソンPを金型21、22内に垂れ下げる。パリソンPの垂下が終了した付近で、切替弁33により、冷水から温水に切り替える。その後、金型21、22を閉じ、パリソンP内へのブロー工程、パリソンP内への溶融樹脂射出工程、コアバック工程を経る。ここで、コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、切替弁33により温水から冷水に切り替える。本実施形態では、コアバックの完了と同時に温水から冷水に切り替える。その後、キャビティ内の溶融樹脂の温度を冷却させる冷却工程を経て、金型21、22を開き、樹脂成形品を取り出す。
【0055】
この構成によれば、部分B周辺の金型温度を、他の部位に比べて、高めることができ、それに伴って、部分Bにおける溶融樹脂の温度を高めることができる。これにより、射出機27’にヒータHを設けた場合と同様に、部分Bの発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。また、コアバック工程が終了した時点で、温水から冷水に切り替えることができるため、冷却時間を短縮することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、コアバックが終了した時点で、温水から冷水に切り替えたが、溶融樹脂の射出が終了してからコアバックが終了するまでの間に、温水から冷水に切り替えることで、冷却時間を更に短縮することができる。これにより、サイクルタイムの短縮につながる。
【0057】
また、本実施形態では、冷水と温水とを一時に完全に切り替える方法としたが、冷水と温水とを除々に切り替える方法としてもよい。つまり、冷水と温水との切り替えは、溶融樹脂の伝熱特性、樹脂温度、金型温度等に応じて、任意に設定することができる。
【0058】
〈第4の実施形態〉
第1の実施形態では、射出機27’に設けられたヒータHにより、溶融樹脂の温度を調整したが、本実施形態では、射出機27内に冷却速度の異なる、2種類の溶融樹脂を存在させることで、キャビティC内に射出された溶融樹脂の温度を調整する。前述した共通の全体構成と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
図12は、第4の実施形態に係る射出成形装置A−4の構成を示す図であり、図13は、ポリエチレン及びポリプロピレンの温度変化を示す図である。樹脂材料は、本実施形態では、例えば、ポリエチレン(材料A)、ポリプロピレン(材料B)を用いる。図13で示すグラフは、横軸が時間t、縦軸が温度Tとしている。ポリエチレンは、時間t1、温度T1で固化するのに対して、ポリプロピレンは、時間t2、温度T2で固化する(t1>t2、T1<T2)。すなわち、ポリエチレンは、ポリプロピレンに比べて、固化温度に達するまでの時間が長い(冷却速度が遅い)ため、それだけ発泡作用が大きいと言える。
【0060】
ここで、図12に戻り、ポリエチレンとポリプロピレンは、時間差を設けて、ポリエチレンから先に、射出機27内に投入される。従って、射出機27内では、射出口27c側に冷却速度が、他の部位に比べて、遅い特性を有する溶融樹脂が配されることとなる。
【0061】
この構成によれば、冷却速度の遅い溶融樹脂から先にキャビティC内に射出されるため、部分Bに冷却速度の遅い溶融樹脂を配することができる。これにより、溶融樹脂が金型に接した際に冷却されにくくなるため、パリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)の発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22の内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形装置Aの概略構成図である。
【図2】射出成形装置Aによる樹脂成形品の成形手順を示す図であり、(a)は金型21、22間へのパリソンPの垂下状態を示す図、(b)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み状態を示す図である。
【図3】射出成形装置Aによる樹脂成形品の成形手順を示す図であり、(a)は溶融樹脂Rの射出により、パリソンPの一部が破れて穿孔される様子を示す図、(b)は溶融樹脂RのパリソンP内への充填が完了した状態を示す図、(c)は金型21bのコアバックにより溶融樹脂が発泡する様子を示す図である。
【図4】穿孔装置30を用いた例を示す説明図であり、(a)は金型21、22間にパリソンPの垂下時における穿孔装置30の状態を示す図、(b)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置30の状態を示す図、(c)はパリソンP内への溶融樹脂の射出時における穿孔装置30の状態を示す図である。
【図5】穿孔装置40を用いた例を示す説明図であり、(a)は金型21、22間にパリソンPの垂下時における穿孔装置40の状態を示す図、(b)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置40の状態を示す図、(c)はパリソンP内への溶融樹脂の射出時における穿孔装置40の状態を示す図である。
【図6】穿孔装置40を用いた例を示す説明図であり、(a)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置40の状態を示す要部拡大図、(b)は穿孔装置40によりパリソンPが穿孔される様子を示す要部拡大図である。
【図7】穿孔装置40を用いた例の変形例を示す図であり、(a)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置40の状態を示す要部拡大図、(b)は穿孔装置40によりパリソンPが穿孔される様子を示す要部拡大図、(c)はシャッタ部材41”の変形例を示す要部拡大図である。
【図8】第1の実施形態に係る射出成形装置A−1の構成を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る射出成形装置A−2の構成を示す図である。
【図10】第3の実施形態に係る射出成形装置A−3の構成を示す図である。
【図11】射出成形装置A−3と冷温水供給装置30との動作手順を示す説明図である。
【図12】第4の実施形態に係る射出成形装置A−4の構成を示す図である。
【図13】ポリプロピレン及びポリエチレンの温度変化を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
A 射出成形装置
C キャビティ
H ヒータ
P パリソン
10 押出機
20 成形機
21、22 金型
23、24 油圧アクチュエータ
27 射出機
28 発泡剤供給装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂成形品の成形技術として、熱可塑性樹脂発泡層を有するパリソンをブロー成形してなる中空成形体の内部に熱可塑性樹脂発泡体片を充填して加熱することにより表皮付き発泡成形体を製造する方法が提案されている(例えば特許文献1)。この方法によれば、表面が平滑で、また、強度の高い成形品を生成することができる。
【0003】
また、他の発泡成形体の成形技術として、金型内に発泡性の樹脂を充填し、金型をコアバックさせることにより金型内のキャビティの容積を増大させながら樹脂の発泡を促進させる方法が提案されている。この方法によれば、軽量で強度の高い成形品を生成することができる一方、表面の平滑性が劣るという課題がある。
【0004】
そこで、上述した表皮付き発泡成形体の成形方法と金型のコアバックによる成形方法とを組み合わせることにより、表面が平滑で、軽量かつ強度の高い成形品を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開2004−284149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、表皮付き発泡成形体を金型のコアバックにより発泡成形する場合、表皮材(パリソン)は金型のコアバック前に、キャビティ内でブローされることにより、金型内壁に密着する。これにより、パリソンは除々に冷却されるため、パリソンの延性は低下する。この状態で金型をコアバックした場合には、コアバックに伴って現れる金型内壁付近で、延性が低下したパリソンが延伸されることになるため緊張状態が高まる。このため、コアバックによる溶融樹脂の発泡が抑制されると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性が低下してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、金型のコアバックにより溶融樹脂の発泡を促進すると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性の低下を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するため、請求項1に係る発明においては、押し出し成形された非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体が金型のキャビティ内に配置されるよう金型を型締めする工程と、前記筒状成形体を前記キャビティ内で膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出工程と、前記金型をコアバックさせて前記キャビティの容積を増大させながら前記溶融樹脂を前記ブロー成形体内部で発泡させる発泡工程と、を有し、前記発泡工程において、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定することを特徴とする樹脂成形品の成形方法が提供される。
【0008】
また、請求項9に係る本発明においては、金型を型締め及び型開きすると共に、キャビティの容積を増大させるコアバック動作を行う金型可動機構と、非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体を押し出し成形する押出成形機と、型締め状態のキャビティ内で前記筒状成形体を膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出機と、前記溶融樹脂の発泡時に、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定する温度設定手段と、を有することを特徴とする樹脂成形品の成形装置が提供される。
【0009】
上記の請求項1及び請求項9に係る発明によれば、前記溶融樹脂の発泡時に、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される溶融樹脂の温度を他の部位に充填される溶融樹脂の温度に比べて高く設定するため、前記ブロー成形体の前記被延伸部分における温度を高めることができる。すなわち、前記ブロー成形体の前記被延伸部分における延性低下を抑制することができる。従って、前記金型のコアバックにより前記溶融樹脂の発泡を促進すると共に、前記ブロー成形体の前記金型内壁に対する追従性を向上することができる。
【0010】
請求項2及び請求項10に係る発明においては、前記溶融樹脂を射出する射出機に設けられたヒータにより、前記射出機内に存在する前記溶融樹脂の温度を、射出口側は他の部位に比べて高くなるように設定してもよい。この構成によれば、簡易な構成によって、前記金型のコアバックにより前記溶融樹脂の発泡を促進すると共に、前記ブロー成形体の前記金型内壁に対する追従性を向上することができる。
【0011】
また、請求項3及び請求項11に係る発明においては、前記溶融樹脂を射出する射出機内に、冷却速度の異なる前記溶融樹脂を存在させ、射出口側に存在する前記溶融樹脂は他の部分に比べて冷却速度が遅い特性を有するものであってもよい。この構成によれば、前記被延伸部分に近接する部位に冷却速度が遅い特性を有する溶融樹脂が射出されるため、該部位における発泡の低減を抑制することができる。
【0012】
また、請求項4及び請求項12に係る発明においては、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を制御する温度設定手段を設け、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記温度設定手段により前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定してもよい。この構成によれば、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定するため、発泡が停止した溶融樹脂の固化を促進することができる。
【0013】
また、請求項5及び請求項13に係る発明においては、前記温度設定手段は、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に形成された流路に温度調整された媒体を流通させて温度を設定してもよい。この構成によれば、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位を簡便、容易に温度調整することができる。
【0014】
また、請求項6及び請求項14に係る発明においては、前記発泡性の溶融樹脂には、補強繊維が含有されていてもよい。この構成によれば、前記発泡性の溶融樹脂に前記補強繊維を含有させるという簡便、容易な処理で、前記樹脂成形品の強度を向上することができる。
【0015】
また、請求項7及び請求項15に係る発明においては、前記発泡性の溶融樹脂には、物理発泡剤が含有されていてもよい。この構成によれば、樹脂成形品内部に微細発泡セルを形成することができ、当該樹脂成形品の強度を高めることができる。
【0016】
また、請求項8及び請求項16に係る発明においては、前記物理発泡剤が超臨界状態の流体であってもよい。この場合、より微細な発泡セルを形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金型のコアバックにより溶融樹脂の発泡を促進すると共に、パリソンの金型内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<共通の全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形装置Aの概略構成図である。射出成形装置Aは、非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体であるパリソンPを押出す押出機10と、押出機10の下方に配設された成形機20と、を備える。
【0019】
押出機10は、パリソンPを押し出し成形して型開き状態の金型のキャビティ間に垂下させる装置である。パリソンPを構成する非発泡性の溶融樹脂としては、例えば、ポリプロピレンを挙げることができる。ここで、パリソンPは、押出機10によって押し出し成形された筒状成形体の状態と、その筒状成形体をキャビティ内で膨らませたブロー成形体の状態とを共に含むものである。
【0020】
成形機20は、金型部を構成する一組の金型21、22と、各金型21を移動させる油圧アクチュエータ23、24と、を備える。金型21は、方形の開口部を有する枠状の本体部21aと、本体部21aの開口部に挿入されたコア部21bと、を備える。コア部21bは、金型22に対して相対的に可動すると共に型締時に金型22とキャビティを形成する。本体部21aは、コア部21bの外周に配設され型締時にはコア部21b及び金型22に当接すると共に、コア部21bのコアバック動作に伴って金型22から離間しつつキャビティの一部を形成する。油圧アクチュエータ23は、本体部21aとコア部21bとをそれぞれ独立して移動可能に構成されている。例えば、金型を型締め又は型開きする際には、本体部21a及びコア部21bを共に前進又は後退させる。また、キャビティの容積を増大させるコアバック動作を行う際には、コア部21bのみを後退させる。これにより、金型に所望の動作を行わせることができる。
【0021】
金型22には、吹き込みノズル25が挿脱可能に装着されている。吹き込みノズル25は不図示の駆動手段により移動可能に構成されており、金型22の内方へ突出した吹き込み位置と、当該内方から離脱した退避位置とで移動される。吹き込みノズル25は、圧縮気体の供給装置26から供給される圧縮気体をパリソンP内に吹き込んでこれを膨らませるためのノズルである。なお、供給装置26は、例えばコンプレッサと、圧縮気体の送出・遮断等を切換える制御弁等から構成される。
【0022】
金型22には発泡性の溶融樹脂を射出する射出機27が装着されている。射出機27は、射出口27c及び金型22に形成された樹脂通路22aを介して、型締め状態のキャビティ内でパリソンPを膨らませた状態で、パリソンP内に溶融樹脂を射出する。
【0023】
射出機27には、発泡剤供給装置28が接続されている。発泡剤供給装置28は、超臨界ガス発生装置28aと、ボンベ28bとを備える。発泡剤供給装置28は、ボンベ28bに充填された炭酸ガスや窒素ガス等のガスを超臨界状態の不活性ガスに遷移させる装置である。発泡剤供給装置28により発生した超臨界ガスは、発泡剤として射出機27のスクリューシリンダ27b内に導入され、スクリューシリンダ27b内の溶融樹脂(例えば、ポリプロピレン)に溶解され、発泡性の溶融樹脂が生成される。
【0024】
次に、射出成形装置Aによる樹脂成形品の成形方法について、図2及び図3を参照して説明する。まず、図2(a)に示すように、押出機10からパリソンPを押し出し垂下させる。続いて金型21及び22の型締めを行い、パリソンPを金型21及び22により形成されるキャビティC内に配置する。
【0025】
次に、図2(b)に示すように、吹き込みノズル25から圧縮気体を吹き出すことで、金型21、22内のキャビティCにおいてパリソンPを膨らませる。圧縮気体の吹込みにより、パリソンPは金型21及び22の内壁面に密着するようにして膨らむ。
【0026】
次に、図3(a)に示すように、射出機27から発泡性の溶融樹脂Rを、樹脂通路22aを介して射出する。溶融樹脂Rの射出により、パリソンPの一部が破れて穿孔され、膨らんだパリソンP内に溶融樹脂Rが充填される。
【0027】
溶融樹脂Rの充填の際、吹き込みノズル25を大気開放とすることでパリソンP内の空気が排出され、溶融樹脂Rの充填効率が高められる。なお、吹き込みノズル25からパリソンP内の空気を吸引して溶融樹脂Rの充填効率を更に高めることもできる。
【0028】
図3(b)に示すように、吹き込みノズル25を退避位置へ移動し、溶融樹脂Rの充填が完了すると、図3(c)に示すように、コア部21bをコアバックしてキャビティCの空間を増大させる。これにより、溶融樹脂Rの発泡が促進される。しかし、コアバックを行う際には、パリソンPのうち、コア部21bのキャビティCに面する面の周縁に隣接する部分B(延伸部分)が金型への密着状態から剥離してしまうことがある。つまり、溶融樹脂の発泡作用により、この剥離した部分が再び本体部21aに密着しなければ、部分Bにおいて樹脂成形品の正規形状が得られないこととなる。この課題を解決する手段については、後述の実施形態の中で詳細に説明する。
【0029】
本実施形態では、溶融樹脂Rに混入される発泡剤として超臨界ガスを用いた例を説明したが、発泡剤はこれに限られず、他の種類の発泡剤でもよい。ただし、化学発泡剤よりも物理発泡剤の方が中実樹脂成形品X内部に微細発泡セルを形成することができ、中実樹脂成形品Xの強度を高めることができる。また、物理発泡剤の中でも本実施形態のように、超臨界状態の流体を用いることでより微細な発泡セルを形成することができる。
【0030】
なお、溶融樹脂Rとしては補強繊維(例えば、ガラス繊維やカーボン繊維等)を含有したものも採用できる。補強繊維を混入しておくことで、コアバック前に樹脂流動に基づいて、流動方向に沿って強制的に配向された補強繊維の内部応力がコアバックに伴って開放され、その配向が開放されて溶融樹脂Rの見かけ上の体積が増加し(スプリングバック現象)、溶融樹脂Rの発泡の促進を更に図ることができる。
【0031】
<溶融樹脂充填時の空気の他の排出例>
上記実施形態では、溶融樹脂Rの充填の際、パリソンP内部の空気の排出を吹き込みノズル25により行なったが、パリソンPを穿孔する穿孔装置を設ける構成も採用することができる。図4は穿孔装置30を用いた例を示す説明図である。
【0032】
図4(a)に示すように、本例の場合、金型22には穿孔装置30が装着されている。穿孔装置30はピン31aが突出して設けられたピストン31と、ピストン31をスライドさせるアクチュエータ32とを備える。金型22にはピストン31の摺動空間22cと摺動空間22cと金型22の外部を連通させる連通路22bが形成されている。また、摺動空間22cに連通して金型22の内壁面に開口した孔を有し、この孔にピン31aが挿入されてピン31aが金型22の内方に突出している。
【0033】
図4(b)に示すように、吹き込みノズル25から圧縮気体をパリソンP内に吹き込み、これを膨らませるとキャビティC内に突出したピン31aの存在によりパリソンPの一部に孔が空けられる。
【0034】
図4(c)に示すように、アクチュエータ32を作動してピストン31を後退させると、パリソンPの孔、ピン31aが挿入されていた孔22d、摺動空間22c並びに連通路22bを流通経路として、パリソンP内の空気が金型22の外部へ排出可能となる。しかして、射出機27からパリソンP内へ溶融樹脂Rを充填すると、パリソンP内の空気が外部に排出されて充填効率を高められる。
【0035】
<溶融樹脂充填時のパリソンPの他の穿孔例>
上記実施形態では、溶融樹脂Rの充填時に、その充填圧によりパリソンPの一部を穿孔して、膨らんだパリソンP内に溶融樹脂Rを充填したが(図3(a)、パリソンPを穿孔する穿孔装置を設ける構成も採用することができる。図5及び図6は穿孔装置40を用いた例を示す説明図である。
【0036】
図5(a)に示すように、本例の場合、金型22には穿孔装置40が装着されている。また、金型22には貫通孔22eと、貫通孔22eと射出機27とを連通させる樹脂通路22fが形成されている。
【0037】
穿孔装置40は貫通孔22e内を摺動し、樹脂通路22fを開閉するシャッタ部材41と、シャッタ部材41をスライドさせるアクチュエータ42と、貫通孔22eを開閉するシャッタ部材43と、シャッタ部材43をスライドさせるアクチュエータ44と、を備える。
【0038】
図5(b)に示すように、吹き込みノズル25から圧縮気体をパリソンP内に吹き込み、これを膨らませる際、シャッタ部材41は樹脂通路22fを閉鎖し、シャッタ部材43は貫通孔22eを閉鎖している。パリソンPが膨らむと、図6(a)に示すように、その一部が貫通孔22eに侵入して凸状の薄肉部P’が形成される。薄肉部P’は、パリソンPが貫通孔22eに侵入する際に延伸されて薄肉化して形成される。
【0039】
この時、アクチュエータ44を作動してシャッタ部材43を降下させると、吹き込みノズル25からの圧縮気体の圧力により、図6(b)に示すように、薄肉部P’が破裂してパリソンPが穿孔される。
【0040】
その後、図6(c)に示すように、アクチュエータ42を作動してシャッタ部材41を後退させて樹脂通路22fを開放する(貫通孔22eと連通状態とする)。続いて射出機27から溶融樹脂Rを押出すことで、パリソンP内に溶融樹脂Rを充填することができる。このように穿孔装置40を用いることで、より確実にパリソンPの一部を穿孔できる。
【0041】
図7(a)は穿孔装置40を用いた例の変形例を示す図である。同図の例では、金型22にはその内方に突出した円筒部22gが形成されている。また、金型22には円筒部22g内から金型22の外部へ通じる貫通孔22e'と、貫通孔22e’と射出機27とを連通させる樹脂通路22f’が形成されている。貫通孔22e'内には樹脂通路22f'を開閉するシャッタ部材41’と、シャッタ部材41’を貫通孔22e’内でスライドさせるアクチュエータ42’とが配設されている。
【0042】
本例の場合、吹き込みノズル25から圧縮気体をパリソンP内に吹き込み、これを膨らませる際、シャッタ部材41’は樹脂通路22f'を閉鎖している。パリソンPが膨らむと、図7(a)に示すように、その一部が円筒部22gの存在により一旦凹状となって、円筒部22gに侵入して凸状となった薄肉部P’が形成される。薄肉部P’は、パリソンPが円筒部22gに密着し、また、貫通孔22eに侵入する際に延伸されて薄肉化して形成される。
【0043】
この時、アクチュエータ42’を作動してシャッタ部材41’を後退させると、吹き込みノズル25からの圧縮気体の圧力により、図7(b)に示すように、薄肉部P’が破裂してパリソンPが穿孔される。
【0044】
なお、シャッタ部材41’は、図7(c)に示すように、その先端が尖ったシャッタ部材41"として構成し、円筒部22gからその先端が突出するように構成してもよい。この場合、薄肉部P”はシャッタ部材41”の先端表面に密着して凹状に形成されることになる。シャッタ部材41の先端が尖っており、かつ、金型22の内方に突出していることから、薄肉部P”はより脆弱となって破れ易くなる。
【0045】
<第1の実施形態>
図8は、第1の実施形態に係る射出成形装置A−1の概略構成図である。前述した共通の全体構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0046】
射出機27’は、射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側にヒータHを備える。ヒータHは、射出口27c’周辺に存在する溶融樹脂の温度を調整する。本実施形態では、ヒータHによって、射出機27’内に存在する溶融樹脂の温度を射出口27c’側ほど高くなるように設定する。
【0047】
この構成によれば、射出機27’の射出口27c’側に存在する、相対的に温度が高い溶融樹脂を先にパリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)に射出することができる。射出口27c’から射出された溶融樹脂は、金型21、22側から冷却されるが、射出された溶融樹脂の温度が高ければ、溶融樹脂が固化温度に冷却されるまでに時間が掛かる。従って、その間において、部分Bにおける発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22の内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
【0048】
なお、射出機27’は、本実施形態では、ヒータHを射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側に部分的に設けたが、樹脂溜め部分の全体に配することで溶融樹脂の温度を制御する構成としてもよい。
【0049】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、射出口27c’側に存在する溶融樹脂の温度を、他の部位に比べて、高く設定することで、パリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)の溶融樹脂の温度を調整したが、本実施形態では、金型22に2台の射出機27、27’を接続し、両者から射出される溶融樹脂の温度に差を設けることで、部分Bの溶融樹脂の温度のみを高くする。前述した共通の全体構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
図9は、第2の実施形態に係る射出成形装置A−2の概略構成図である。金型22には、2台の射出機27、27’が接続されている。射出機27’は、第1実施形態と同様のものであり、射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側にヒータHを備える。一方、射出機27は、ヒータHを備えていない。射出機27’内の溶融樹脂は、ヒータHで温められるため、射出機27内の溶融樹脂に比べて、高温となる。射出機27’で生成された溶融樹脂は、射出口27c’から射出される。一方、射出機27で生成された溶融樹脂は、射出口27cから射出される。射出口27c’は、部分Bに射出することができるような位置に配され、射出口27cは、射出口27c’からある程度離れた位置に配される。
【0051】
この構成によれば、射出機27、27’から異なる温度の溶融樹脂を異なる射出口27c、27c’から射出するため、高温の溶融樹脂R’を確実に部分Bに射出することができる。従って、部分Bに高温の溶融樹脂を配することができるため、部分Bの発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22の内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
なお、射出機27’は、本実施形態では、ヒータHを射出口27c’とスクリューシリンダ27bとの間の樹脂溜め部分のうち、射出口27c’側に部分的に設けたが、樹脂溜め部分の全体に配することで溶融樹脂の温度を制御する構成としてもよい。また、射出機27’だけでなく、射出機27にもヒータHを設けて、射出機27から射出される溶融樹脂の温度と、射出機27’から射出される溶融樹脂の温度との間に差を設ける構成としてもよい。
【0052】
<第3の実施形態>
第1、第2の実施形態では、射出機27’に設けられたヒータHにより溶融樹脂の温度を調整したが、本実施形態では、本体部21aに設けられた温度設定手段により、温度調整された媒体を流通させることで、パリソンP内に射出された後の溶融樹脂の温度を調整する。前述した共通の全体構成と同一の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0053】
図10は、第3の実施形態に係る射出成形装置A−3の構成を示す図である。金型21の本体部21a内、つまり、パリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)に接する本体部21a内には、冷温水流路21a’が形成されており、冷温水供給装置30と接続されている。冷温水供給装置30と冷温水流路21a’の間は、ホースでつながれており、冷水、温水を切り替える切替弁33がその途中に配されている。すなわち、冷温水流路21a’に温度調整された媒体を流通させることで、冷温水流路21a’が温度設定手段として機能する。
【0054】
図11は、射出成形装置A−3と冷温水供給装置30との動作手順を示す説明図である。横軸を時間軸として、上段、中段に各工程の処理を示し、下段にその工程に対応する冷温水流路21a’への冷温水の供給状態を示す。まず、図2、3で示すように、パリソンPを金型21、22内に垂れ下げる。パリソンPの垂下が終了した付近で、切替弁33により、冷水から温水に切り替える。その後、金型21、22を閉じ、パリソンP内へのブロー工程、パリソンP内への溶融樹脂射出工程、コアバック工程を経る。ここで、コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、切替弁33により温水から冷水に切り替える。本実施形態では、コアバックの完了と同時に温水から冷水に切り替える。その後、キャビティ内の溶融樹脂の温度を冷却させる冷却工程を経て、金型21、22を開き、樹脂成形品を取り出す。
【0055】
この構成によれば、部分B周辺の金型温度を、他の部位に比べて、高めることができ、それに伴って、部分Bにおける溶融樹脂の温度を高めることができる。これにより、射出機27’にヒータHを設けた場合と同様に、部分Bの発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。また、コアバック工程が終了した時点で、温水から冷水に切り替えることができるため、冷却時間を短縮することができる。
【0056】
なお、本実施形態では、コアバックが終了した時点で、温水から冷水に切り替えたが、溶融樹脂の射出が終了してからコアバックが終了するまでの間に、温水から冷水に切り替えることで、冷却時間を更に短縮することができる。これにより、サイクルタイムの短縮につながる。
【0057】
また、本実施形態では、冷水と温水とを一時に完全に切り替える方法としたが、冷水と温水とを除々に切り替える方法としてもよい。つまり、冷水と温水との切り替えは、溶融樹脂の伝熱特性、樹脂温度、金型温度等に応じて、任意に設定することができる。
【0058】
〈第4の実施形態〉
第1の実施形態では、射出機27’に設けられたヒータHにより、溶融樹脂の温度を調整したが、本実施形態では、射出機27内に冷却速度の異なる、2種類の溶融樹脂を存在させることで、キャビティC内に射出された溶融樹脂の温度を調整する。前述した共通の全体構成と同様の構成については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
図12は、第4の実施形態に係る射出成形装置A−4の構成を示す図であり、図13は、ポリエチレン及びポリプロピレンの温度変化を示す図である。樹脂材料は、本実施形態では、例えば、ポリエチレン(材料A)、ポリプロピレン(材料B)を用いる。図13で示すグラフは、横軸が時間t、縦軸が温度Tとしている。ポリエチレンは、時間t1、温度T1で固化するのに対して、ポリプロピレンは、時間t2、温度T2で固化する(t1>t2、T1<T2)。すなわち、ポリエチレンは、ポリプロピレンに比べて、固化温度に達するまでの時間が長い(冷却速度が遅い)ため、それだけ発泡作用が大きいと言える。
【0060】
ここで、図12に戻り、ポリエチレンとポリプロピレンは、時間差を設けて、ポリエチレンから先に、射出機27内に投入される。従って、射出機27内では、射出口27c側に冷却速度が、他の部位に比べて、遅い特性を有する溶融樹脂が配されることとなる。
【0061】
この構成によれば、冷却速度の遅い溶融樹脂から先にキャビティC内に射出されるため、部分Bに冷却速度の遅い溶融樹脂を配することができる。これにより、溶融樹脂が金型に接した際に冷却されにくくなるため、パリソンPの被延伸部分に近接する部位(部分B)の発泡を促進することができると共に、パリソンPの金型21、22の内壁に対する追従性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形装置Aの概略構成図である。
【図2】射出成形装置Aによる樹脂成形品の成形手順を示す図であり、(a)は金型21、22間へのパリソンPの垂下状態を示す図、(b)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み状態を示す図である。
【図3】射出成形装置Aによる樹脂成形品の成形手順を示す図であり、(a)は溶融樹脂Rの射出により、パリソンPの一部が破れて穿孔される様子を示す図、(b)は溶融樹脂RのパリソンP内への充填が完了した状態を示す図、(c)は金型21bのコアバックにより溶融樹脂が発泡する様子を示す図である。
【図4】穿孔装置30を用いた例を示す説明図であり、(a)は金型21、22間にパリソンPの垂下時における穿孔装置30の状態を示す図、(b)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置30の状態を示す図、(c)はパリソンP内への溶融樹脂の射出時における穿孔装置30の状態を示す図である。
【図5】穿孔装置40を用いた例を示す説明図であり、(a)は金型21、22間にパリソンPの垂下時における穿孔装置40の状態を示す図、(b)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置40の状態を示す図、(c)はパリソンP内への溶融樹脂の射出時における穿孔装置40の状態を示す図である。
【図6】穿孔装置40を用いた例を示す説明図であり、(a)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置40の状態を示す要部拡大図、(b)は穿孔装置40によりパリソンPが穿孔される様子を示す要部拡大図である。
【図7】穿孔装置40を用いた例の変形例を示す図であり、(a)はパリソンP内への圧縮気体の吹き込み時における穿孔装置40の状態を示す要部拡大図、(b)は穿孔装置40によりパリソンPが穿孔される様子を示す要部拡大図、(c)はシャッタ部材41”の変形例を示す要部拡大図である。
【図8】第1の実施形態に係る射出成形装置A−1の構成を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る射出成形装置A−2の構成を示す図である。
【図10】第3の実施形態に係る射出成形装置A−3の構成を示す図である。
【図11】射出成形装置A−3と冷温水供給装置30との動作手順を示す説明図である。
【図12】第4の実施形態に係る射出成形装置A−4の構成を示す図である。
【図13】ポリプロピレン及びポリエチレンの温度変化を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
A 射出成形装置
C キャビティ
H ヒータ
P パリソン
10 押出機
20 成形機
21、22 金型
23、24 油圧アクチュエータ
27 射出機
28 発泡剤供給装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出し成形された非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体が金型のキャビティ内に配置されるよう金型を型締めする工程と、
前記筒状成形体を前記キャビティ内で膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記金型をコアバックさせて前記キャビティの容積を増大させながら前記溶融樹脂を前記ブロー成形体内部で発泡させる発泡工程と、
を有し、
前記発泡工程において、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記射出工程では、前記溶融樹脂を射出する射出機に設けられたヒータにより、前記射出機内に存在する前記溶融樹脂の温度を、射出口側は他の部位に比べて高くなるように設定することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記射出工程では、前記溶融樹脂を射出する射出機内に、冷却速度の異なる前記溶融樹脂を存在させ、射出口側に存在する前記溶融樹脂は他の部分に比べて冷却速度が遅い特性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を制御する温度設定手段を設け、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記温度設定手段により前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
前記温度設定手段は、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に形成された流路に温度調整された媒体を流通させて温度を設定することを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
前記発泡性の溶融樹脂には、補強繊維が含有されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
前記発泡性の溶融樹脂には、物理発泡剤が含有されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項8】
前記物理発泡剤は、超臨界状態の流体であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項9】
金型を型締め及び型開きすると共に、キャビティの容積を増大させるコアバック動作を行う金型可動機構と、
非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体を押し出し成形する押出成形機と、
型締め状態のキャビティ内で前記筒状成形体を膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出機と、
前記溶融樹脂の発泡時に、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定する温度設定手段と、
を有することを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記温度設定手段は、前記射出機に設けられたヒータにより、前記射出機内に存在する前記溶融樹脂の温度を、射出口側は他の部位に比べて高くなるように設定することを特徴とする請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項11】
前記温度設定手段は、前記射出機の射出口側に冷却速度が、他の部位に比べて、遅い特性を有する前記溶融樹脂を配するように設定することを特徴とする請求項9又は10に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項12】
前記温度設定手段は、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に形成された流路に温度調整された媒体を流通させる手段を有し、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記流路に温度調整された媒体を流通させることにより前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項13】
前記金型は、第1型と、当該第1型に対して相対的に可動すると共に型締時に前記第1型とキャビティを形成する第2型と、前記第2型の外周に配設され型締時には前記第1型及び前記第2型に当接すると共に、前記第2型のコアバック動作に伴って前記第2型から離間しつつキャビティの一部を形成する第3型と、を備え、前記流路を前記第3型に形成したことを特徴とする請求項12に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項14】
前記射出機は、補強繊維を含有する前記溶融樹脂を射出することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項15】
前記射出機は、物理発泡剤を含有する前記溶融樹脂を射出することを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項16】
前記射出機は、物理発泡剤として、超臨界状態の流体を含有する前記溶融樹脂を射出することを特徴とする請求項15に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項1】
押し出し成形された非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体が金型のキャビティ内に配置されるよう金型を型締めする工程と、
前記筒状成形体を前記キャビティ内で膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出工程と、
前記金型をコアバックさせて前記キャビティの容積を増大させながら前記溶融樹脂を前記ブロー成形体内部で発泡させる発泡工程と、
を有し、
前記発泡工程において、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。
【請求項2】
前記射出工程では、前記溶融樹脂を射出する射出機に設けられたヒータにより、前記射出機内に存在する前記溶融樹脂の温度を、射出口側は他の部位に比べて高くなるように設定することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項3】
前記射出工程では、前記溶融樹脂を射出する射出機内に、冷却速度の異なる前記溶融樹脂を存在させ、射出口側に存在する前記溶融樹脂は他の部分に比べて冷却速度が遅い特性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項4】
前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を制御する温度設定手段を設け、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記温度設定手段により前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項5】
前記温度設定手段は、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に形成された流路に温度調整された媒体を流通させて温度を設定することを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項6】
前記発泡性の溶融樹脂には、補強繊維が含有されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項7】
前記発泡性の溶融樹脂には、物理発泡剤が含有されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項8】
前記物理発泡剤は、超臨界状態の流体であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形品の成形方法。
【請求項9】
金型を型締め及び型開きすると共に、キャビティの容積を増大させるコアバック動作を行う金型可動機構と、
非発泡性かつ伸縮性のある筒状成形体を押し出し成形する押出成形機と、
型締め状態のキャビティ内で前記筒状成形体を膨らませてブロー成形体を成形した状態で、前記キャビティ内の前記ブロー成形体内部に発泡性の溶融樹脂を射出する射出機と、
前記溶融樹脂の発泡時に、前記コアバックによる前記キャビティの容積の増大に伴って延伸される前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に充填される前記溶融樹脂の温度を他の部位に充填される前記溶融樹脂の温度に比べて高く設定する温度設定手段と、
を有することを特徴とする樹脂成形品の成形装置。
【請求項10】
前記温度設定手段は、前記射出機に設けられたヒータにより、前記射出機内に存在する前記溶融樹脂の温度を、射出口側は他の部位に比べて高くなるように設定することを特徴とする請求項9に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項11】
前記温度設定手段は、前記射出機の射出口側に冷却速度が、他の部位に比べて、遅い特性を有する前記溶融樹脂を配するように設定することを特徴とする請求項9又は10に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項12】
前記温度設定手段は、前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位に形成された流路に温度調整された媒体を流通させる手段を有し、前記コアバック後から脱型時の間の少なくとも一部期間において、前記流路に温度調整された媒体を流通させることにより前記金型における前記ブロー成形体の被延伸部分に近接する部位の温度を他の部位に比べて低く設定することを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項13】
前記金型は、第1型と、当該第1型に対して相対的に可動すると共に型締時に前記第1型とキャビティを形成する第2型と、前記第2型の外周に配設され型締時には前記第1型及び前記第2型に当接すると共に、前記第2型のコアバック動作に伴って前記第2型から離間しつつキャビティの一部を形成する第3型と、を備え、前記流路を前記第3型に形成したことを特徴とする請求項12に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項14】
前記射出機は、補強繊維を含有する前記溶融樹脂を射出することを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項15】
前記射出機は、物理発泡剤を含有する前記溶融樹脂を射出することを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載の樹脂成形品の成形装置。
【請求項16】
前記射出機は、物理発泡剤として、超臨界状態の流体を含有する前記溶融樹脂を射出することを特徴とする請求項15に記載の樹脂成形品の成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2008−173829(P2008−173829A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8475(P2007−8475)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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