説明

機能膜形成方法および機能膜形成体

【課題】機能性微粒子の純度を高めつつ、機能性微粒子を含む機能膜を基材の表面に安定して形成すること。
【解決手段】開放型で不活性ガスを用いて雰囲気制御を行うヘッド24を用いて、液中の機能性微粒子4をミストジェット技術にて所望の分布で基板3上に吐出させる工程と、その後に大気圧プラズマ化学輸送法により薄膜8を成膜させる工程とを交互に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機能膜形成方法および機能膜形成体に関し、特に、半導体基板、ガラス基板または樹脂基板などの基材の表面に機能性微粒子を含む機能膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板やプラスチック基板などの基材表面に機能性微粒子を含む機能膜を厚く形成する方法として、バインダーの結合力を利用して固定化するプロセスが存在する。例えば、機能性微粒子を適当な溶媒中に分散させて、これを基材の表面に塗布し、乾燥させる方法や、ナノ粒子を溶媒に攪拌し、スピンコーティングやインクジェットの手法などで膜形成する方法がある。
【0003】
また、特許文献1には、反応ガスと微粒子を混在させたキャリアガスをプラズマ発生部に吹き付けて微粒子入り膜を形成する技術が開示されている。この技術では、プラズマCVDによる成膜を行うための成膜用ガス中に機能性微粒子を混入することで、プラズマ発生領域内に機能性微粒子を混入し機能膜を形成している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−322033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、バインダーの結合力を利用して機能性微粒子を固定化する方法では、機能性微粒子がバインダーに埋まった状態になるため、機能性微粒子の純度を高めるのが困難となり、機能性微粒子本来の機能を十分に発揮させることができないという問題があった。
【0006】
また、プラズマCVDの成膜用ガス中に機能性微粒子を混入して成膜を行う方法では、プラズマ放電を安定して継続させるのが困難となり、成膜に支障をきたすという問題があった。一方、プラズマ放電を安定して継続させるために、機能性微粒子の粒径を非常に小さくすると、サブミクロンやミクロン単位の大きな粒径の機能性微粒子を含む機能膜を形成することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、機能性微粒子の純度を高めつつ、機能性微粒子を含む機能膜を基材の表面に安定して形成することが可能な機能膜形成方法および機能膜形成体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の機能膜形成方法は、液体中に混在された機能性微粒子を基材の表面に付着させる工程と、前記機能性微粒子が付着された基材上にプラズマにより薄膜を成膜する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、機能性微粒子の純度を高めつつ、機能性微粒子を含む機能膜を基材の表面に安定して形成することが可能という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態1の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態2の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態3の概略構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態4の概略構成を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態5の概略構成を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態6の概略構成を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態7の概略構成を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態8の概略構成を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態9の概略構成を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態10の概略構成を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態11の概略構成を示す断面図である。
【図12】図12は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態12の概略構成を示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態12の概略構成を示す断面図である。
【図14】図14は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態13の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る機能膜形成方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態1の概略構成を示す斜視図である。なお、真空チャンバ7は内部の様子が分るように透視図とした。図1において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8をスパッタリングする成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に吐出する液体吐出口1と、基板3を保持しながら回転させるスピン機構2が設けられている。薄膜8の成膜機構には、基板3を外気と隔離する真空チャンバ7と、薄膜8の原料を供給するターゲット5と、ターゲット5に高周波電力を印加する高周波電源6が設けられている。
【0013】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。スピン機構2にて回転されている基板3に向けて、機能性微粒子4が混入された液体を液体吐出口1から吐出しスピンコートをする。
【0014】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3を真空チャンバ7内のターゲット5の直下に配置し、高周波電源6を介して高周波電力をターゲット5に印加することにより、スパッタリングにて薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。
【0015】
このように、上述した実施の形態1によれば、スピンコートによる機能性微粒子4の塗布とスパッタリングによる薄膜8の成膜を交互に繰り返すことにより、機能性微粒子4が混入された機能膜を高速に成膜することが可能となる効果がある。機能性微粒子堆積領域とプラズマ発生領域が分離した構成になっているので、機能性微粒子4などの粉体がプラズマ中に混入せずにプラズマを発生させることができ、プラズマ放電を安定して継続させながら成膜が可能となる効果もある。また、液体中に混入する機能性微粒子4のサイズを調節することにより、所望サイズの機能性微粒子4が混入された機能膜を作成できる効果がある。さらに、機能性微粒子4と薄膜8の構成が自由に設定できる効果がある。
【0016】
機能性微粒子4としては、例えば、銀ナノ粒子や銅ナノ粒子、金ナノ粒子などを含んだ金属微粒子、蛍光体微粒子、磁性体微粒子、光触媒微粒子、酸化物微粒子、透明導電微粒子、ダイヤモンド、Si微粒子など種種のものが可能であり、特に直径数ミクロン以下の微粒子が良い。また、機能性微粒子4としては、たんぱく質、アミノ酸、遺伝子またはウイルスなどを含む有機物粒子でもよい。また、機能性微粒子4は、カプセル状のものでもよい。サイズとしては、直径数nmから数μm程度の機能性微粒子4を含有可能である。また、機能性微粒子4が混入される液体としては、水や、アルコール、テトラデカン、デカノールなどの有機溶剤、また、酸やアルカリ性の液体などなんでもよい。また、ターゲット5も、非磁性体および磁性体を含む金属、酸化物金属、カーボン、Siなど種種のものを使用可能である。また、基板3としては、例えば、ガラス基板、樹脂基板または半導体基板などを用いることができ、フレキシブルテープやフレキシブルフィルムなどを用いるようにしてよい。また、基板3の代わりにワイヤ状、チューブ状または球状の基材を用いるようにしてもよい。
【0017】
また、塗布の手法としては、スピンコートに限定されるものではなく、機能性微粒子4を基板3に堆積させることができる手法であれば、スプレーコート、噴霧などの手法でも同様の効果が得られる。また、成膜手法も、スパッタリングだけでなく、ターゲット5などを使用せず、薄膜原料ガスを導入して成膜するプラズマCVDなどの手法でも同様の効果が得られることは言うまでもない。薄膜原料ガスとしては、TEOS、HMDS、シリカ膜、TiO、ITOなどの酸化膜の原料、SiN,TiNなどの窒化膜、SiC,TiC等の炭化膜、DLC,ダイヤモンド,ナノチューブ、ナノファイバーなどの炭素系材料などを使用することができる。ガス状の薄膜原料ガスはそのまま導入できるが、固形や液体の原料は、ガス化してから薄膜原料ガスとして用いればよい。
【0018】
実施の形態2.
図2は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態2の概略構成を示す斜視図である。なお、真空チャンバ7は内部の様子が分るように透視図とした。図2において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8をスパッタリングする成膜機構が一体的に設けられている。ここで、液体吐出口1がターゲット5を介して真空チャンバ7内の基板3上に引き込まれるとともに、スピン機構2が真空チャンバ7内に収容されている。
【0019】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。大気圧状態の真空チャンバ7内において、スピン機構2にて回転されている基板3に向けて、機能性微粒子4が混入された液体を液体吐出口1から吐出しスピンコートをする。
【0020】
次に、真空チャンバ7の内部を真空にし、高周波電源6を介して高周波電力をターゲット5に印加することにより、スパッタリングにて薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0021】
このように、上述した実施の形態2によれば、スピンコートによる機能性微粒子4の塗布とスパッタリングによる薄膜8の成膜が同一装置内で繰り返すことができるため、機能性微粒子4が混入された機能膜をより高速に成膜することが可能となる効果がある。さらに、実施の形態1と同様に、スピンコートやスパッタリングに限定されず、スプレーコートやプラズマCVDなどの手法でも同様の効果が得られる。また、所望のサイズの機能性微粒子4が混入された機能膜も同様に作成できる効果がある。
【0022】
実施の形態3.
図3は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態3の概略構成を示す斜視図である。なお、真空チャンバ7および雰囲気制御部材10は内部の様子が分るように透視図とした。図3において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8をスパッタリングする成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、図1の構成に加え、機能性微粒子4が混入された液体を塗布する箇所の雰囲気を制御できる雰囲気制御部材10と、雰囲気制御部材10に不活性ガスを流入させる不活性ガス流入路9が設けられている。なお、雰囲気制御部材10は、必ずしも基板3を覆うように構成されたチャンバ状のものでなくても、外気を遮断するエアカーテンなどで実質的に雰囲気制御可能なものであれば何でもよい。
【0023】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。不活性ガス流入路9から雰囲気制御部材10内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、スピン機構2にて回転されている基板3に向けて、機能性微粒子4が混入された液体を液体吐出口1から吐出しスピンコートをする。
【0024】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3を真空チャンバ7内のターゲット5の直下に配置し、高周波電源6を介して高周波電力をターゲット5に印加することにより、スパッタリングにて薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0025】
このように、上述した実施の形態3によれば、雰囲気制御した空間で機能性微粒子4を基板3の表面に塗布するため、実施の形態1の効果に加えて、機能性微粒子4の酸化などの変質を防ぐ効果を得ることができる。
【0026】
実施の形態4.
図4は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態4の概略構成を示す斜視図である。なお、雰囲気制御真空チャンバ11は内部の様子が分るように透視図とした。図4において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8をスパッタリングする成膜機構が一体的に設けられている。ここで、この成膜機構には、図3の真空チャンバ7の代わりに雰囲気制御真空チャンバ11が設けられ、液体吐出口1がターゲット5を介して雰囲気制御真空チャンバ11内の基板3上に引き込まれるとともに、スピン機構2が雰囲気制御真空チャンバ11内に収容されている。また、雰囲気制御真空チャンバ11には、不活性ガスを内部に流入させる不活性ガス流入路9が設けられている。
【0027】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。不活性ガス流入路9から雰囲気制御真空チャンバ11内に窒素やヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、雰囲気制御真空チャンバ11内のスピン機構2にて回転されている基板3に向けて、機能性微粒子4が混入された液体を液体吐出口1から吐出しスピンコートをする。
【0028】
次に、雰囲気制御真空チャンバ11の内部を真空にし、高周波電源6を介して高周波電力をターゲット5に印加することにより、スパッタリングにて薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0029】
このように、上述した実施の形態4によれば、雰囲気制御した空間で機能性微粒子4が混入された機能膜を形成するため、実施の形態2の効果に加えて、機能性微粒子4の酸化などの変質を防ぐ効果を得ることができる。
【0030】
実施の形態5.
図5は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態5の概略構成を示す断面図である。図5において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて成膜する成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に噴霧するスプレーヘッド12と、基板3を保持するステージ13が設けられている。薄膜8の成膜機構には、高周波電力が印加される上部電極31aと、接地電位が印加される下部電極31bと、薄膜8の原料を供給するターゲット5と、上部電極31aに高周波電力を印加する高周波電源6が設けられている。
【0031】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。機能性微粒子4が混入された液体をスプレーヘッド12からステージ13上の基板3に向けてスプレーコートをする。ここで、スプレーヘッド12及びステージ13は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布することができる。
【0032】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3を下部電極31b上に配置し、高周波電源6を介して高周波電力を上部電極31aに印加することによりターゲット5からの大気圧プラズマを発生させ、薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0033】
このように、上述した実施の形態5によれば、大気圧下で機能性微粒子4が混入された機能膜を形成するため、実施の形態1の効果に加えて、真空排気に伴う時間をなくすことができるため、より高速に成膜できる効果がある。
【0034】
実施の形態6.
図6は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態6の概略構成を示す断面図である。図6において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて成膜する成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に噴霧するミストジェットヘッド19と、基板3を保持するステージ13が設けられている。このミストジェットヘッド19には、横断面が放物線状に形成された振動波反射体14と、この振動波反射体14の上面に絶縁材16を介して接合された圧電振動子17と、振動波反射体14の下面に接合されたノズルプレート15が設けられている。なお、ノズルプレート15は、振動波反射体14の放物面の焦点位置点P1にノズルプレート15の入り口が位置するように配置されており、吐出口先端に向かって取り付けられている。機能性微粒子4が混入された液体は、振動波反射体14の側壁と絶縁材16とにより囲まれた液体室20に充填される。圧電振動子17の上面には駆動電極(図示せず)が、下面には共通電極(図示せず)があり、これらの駆動電極と共通電極との間にドライバにより高周波電圧が印加され、機能性微粒子4が混入された液体が噴霧される。
【0035】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。ミストジェットヘッド19では、圧電振動子17を振動させた時、圧電振動子17からの振動波が絶縁材16を介して振動波反射体14の側壁面により反射して、ノズルプレート15の吐出孔に集束し、その吐出孔から機能性微粒子4が混入された液体がミスト流18として吐出され、ステージ13上の基板3の表面に塗布される。ここで、ミストジェットヘッド19及びステージ13は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布することができる。
【0036】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3を下部電極31b上に配置し、高周波電源6を介して高周波電力を上部電極31aに印加することによりターゲット5からの大気圧プラズマを発生させ、薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0037】
このように、上述した実施の形態6によれば、ミストジェットヘッド19を用いることにより、微細なミスト流18として機能性微粒子4を基板3の表面に付着させることができ、実施の形態5の効果に加えて、より均質な機能膜を形成できる効果がある。
【0038】
実施の形態7.
図7は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態7の概略構成を示す断面図である。図7において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて所望の雰囲気中で成膜する成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、図5の構成に加え、機能性微粒子4が混入された液体を塗布する箇所の雰囲気を制御できる雰囲気制御部材10aと、雰囲気制御部材10aに不活性ガスを流入させる不活性ガス流入路9aが設けられている。薄膜8の成膜機構には、図5の構成に加え、薄膜8を成膜する箇所の雰囲気を制御できる雰囲気制御部材10bと、雰囲気制御部材10bに不活性ガスを流入させる不活性ガス流入路9bが設けられている。なお、雰囲気制御部材10a、10bは、必ずしも基板3を覆うように構成されたチャンバ状のものでなくても、外気を遮断するエアカーテンなどで実質的に雰囲気制御可能なものであれば何でもよい。
【0039】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。不活性ガス流入路9aから雰囲気制御部材10a内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、機能性微粒子4が混入された液体をスプレーヘッド12からステージ13上の基板3に向けてスプレーコートをする。ここで、スプレーヘッド12及びステージ13は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布することができる。
【0040】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3を下部電極31b上に配置し、不活性ガス流入路9bから雰囲気制御部材10b内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、高周波電源6を介して高周波電力を上部電極31aに印加することによりターゲット5からの大気圧プラズマを発生させ、薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0041】
このように、上述した実施の形態7によれば、雰囲気制御下で機能性微粒子4が混入された機能膜を形成するため、実施の形態5の効果に加えて、機能性微粒子4の酸化などの変質を防ぐ効果を得ることができる。
【0042】
実施の形態8.
図8は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態8の概略構成を示す断面図である。図8において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて所望の雰囲気中で成膜する成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、図6の構成に加え、機能性微粒子4が混入された液体を塗布する箇所の雰囲気を制御できる雰囲気制御部材10cと、雰囲気制御部材10cに不活性ガスを流入させる不活性ガス流入路9cが設けられている。薄膜8の成膜機構には、図7の薄膜8の成膜機構と同様である。なお、雰囲気制御部材10cは、必ずしも基板3を覆うように構成されたチャンバ状のものでなくても、外気を遮断するエアカーテンなどで実質的に雰囲気制御可能なものであれば何でもよい。
【0043】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。不活性ガス流入路9cから雰囲気制御部材10c内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、ミストジェットヘッド19では、圧電振動子17を振動させた時、圧電振動子17からの振動波が絶縁材16を介して振動波反射体14の側壁面により反射して、ノズルプレート15の吐出孔に集束し、その吐出孔から機能性微粒子4が混入された液体がミスト流18として吐出され、ステージ13上の基板3の表面に塗布される。ここで、ミストジェットヘッド19及びステージ13は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布することができる。
【0044】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3を下部電極31b上に配置し、不活性ガス流入路9bから雰囲気制御部材10b内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、高周波電源6を介して高周波電力を上部電極31aに印加することによりターゲット5からの大気圧プラズマを発生させ、薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0045】
このように、上述した実施の形態8によれば、ミストジェットヘッド19を用いることにより、微細なミスト流18として機能性微粒子4を基板3の表面に付着させることができ、実施の形態7の効果に加えて、より均質な機能膜を形成できる効果がある。
【0046】
実施の形態9.
図9は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態9の概略構成を示す断面図である。図9において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて所望の雰囲気中で成膜する成膜機構が一体的に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構には、機能性微粒子4が混入された液体を基板3の表面に噴霧するスプレーヘッド12と、基板3を保持するステージ32が設けられている。また、薄膜8の成膜機構には、大気圧プラズマにより発生した成膜に寄与する反応種を噴出す噴出型プラズマヘッド22と、薄膜8の原料を供給するターゲット5と、噴出型プラズマヘッド22に高周波電力を印加する高周波電源6が設けられている。また、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を塗布する箇所の雰囲気を制御できる雰囲気制御部材10dと、雰囲気制御部材10dに不活性ガスを流入させる不活性ガス流入路9dと、雰囲気制御部材10dに反応ガスを流入させる反応ガス流入路21が設けられている。
【0047】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。活性ガス流入路9dから雰囲気制御部材10d内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、機能性微粒子4が混入された液体をスプレーヘッド12からステージ32上の基板3に向けてスプレーコートをする。
【0048】
次に、反応ガス流入路21から雰囲気制御部材10d内に反応ガスを流入させながら、高周波電源6を介して高周波電力を噴出型プラズマヘッド22に印加することによりターゲット5と反応ガスを大気圧プラズマ中で反応させ、成膜に寄与する反応種を噴出型プラズマヘッド22から噴出させて薄膜8を成膜する。反応ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素ガス、水素ガスなどの単体や混合ガスが挙げられる。また、成膜手法も、ターゲット5などを使用せず、薄膜原料ガスを導入して成膜するプラズマCVDなどの手法でも同様の効果が得られる。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0049】
また、スプレーヘッド12、噴出型プラズマヘッド22およびステージ32は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布および成膜することができる。反応ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素ガス、水素ガスなどの単体や混合ガスが挙げられる。また、成膜手法も、ターゲット5などを使用せず、薄膜原料ガスを導入して成膜するプラズマCVDなどの手法でも同様の効果が得られる。
【0050】
このように、上述した実施の形態9によれば、同一チャンバ内の雰囲気制御下で機能性微粒子4が混入された機能膜を形成するため、実施の形態7の効果に加えて、機能性微粒子4の酸化などの変質を防ぐ効果を得ることができる。
【0051】
実施の形態10.
図10は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態10の概略構成を示す断面図である。図10において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて所望の雰囲気中で成膜する成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構は、図8の機能性微粒子4の塗布機構と同様である。薄膜8の成膜機構は、図9の構成からスプレーヘッド12を除去した構成と同様である。
【0052】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。不活性ガス流入路9cから雰囲気制御部材10c内に窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスを流入させながら、ミストジェットヘッド19では、圧電振動子17を振動させた時、圧電振動子17からの振動波が絶縁材16を介して振動波反射体14の側壁面により反射して、ノズルプレート15の吐出孔に集束し、その吐出孔から機能性微粒子4が混入された液体がミスト流18として吐出され、ステージ13上の基板3の表面に塗布される。ここで、ミストジェットヘッド19およびステージ13は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布することができる。
【0053】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3をステージ32上に配置し、反応ガス流入路21から雰囲気制御部材10d内に反応ガスを流入させながら、高周波電源6を介して高周波電力を噴出型プラズマヘッド22に印加することによりターゲット5と反応ガスを大気圧プラズマ中で反応させ、成膜に寄与する反応種を噴出型プラズマヘッド22から噴出させて薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0054】
また、噴出型プラズマヘッド22およびステージ32は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に成膜することができる。反応ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素ガス、水素ガスなどの単体や混合ガスが挙げられる。また、成膜手法も、ターゲット5などを使用せず、薄膜原料ガスを導入して成膜するプラズマCVDなどの手法でも同様の効果が得られる。
【0055】
このように、上述した実施の形態10によれば、ミストジェットヘッド19を用いることにより、微細なミスト流18として機能性微粒子4を基板3の表面に付着させることができ、実施の形態9の効果に加えて、より均質な機能膜を形成できる効果がある。
【0056】
実施の形態11.
図11は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態11の概略構成を示す断面図である。図11において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4が混入された液体を所望の雰囲気中で基板3の表面に塗布する塗布機構と、機能性微粒子4が付着された基板3に薄膜8を大気圧プラズマにて所望の雰囲気中で成膜する成膜機構が別個に設けられている。ここで、機能性微粒子4の塗布機構では、図6のノズルプレート15の代わりにノズルプレート15aが設けられている。このノズルプレート15aには、不活性ガス23を流入させるガス流入路9eが設けられている。なお、ガス流入路9eの吹出口は、ノズルプレート15aから吐出されたミスト流18が不活性ガス23にて囲まれるようにノズルプレート15aの吐出口の周囲に配置されている。薄膜8の成膜機構は、図10の構成と同様である。
【0057】
次に、この機能膜形成装置を用いた機能膜の形成方法を示す。ガス流入路9eを介して窒素、ヘリウムまたはアルゴンなどの不活性ガスをミスト流18の周囲に流出させながら、ミストジェットヘッド19では、圧電振動子17を振動させた時、圧電振動子17からの振動波が絶縁材16を介して振動波反射体14の側壁面により反射して、ノズルプレート15aの吐出孔に集束し、その吐出孔から機能性微粒子4が混入された液体がミスト流18として吐出され、ステージ13上の基板3の表面に塗布される。ここで、ミストジェットヘッド19及びステージ13は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に塗布することができる。
【0058】
次に、この機能性微粒子4が付着された基板3をステージ32上に配置し、反応ガス流入路21から雰囲気制御部材10d内に反応ガスを流入させながら、高周波電源6を介して高周波電力を噴出型プラズマヘッド22に印加することによりターゲット5と反応ガスを大気圧プラズマ中で反応させ、成膜に寄与する反応種を噴出型プラズマヘッド22から噴出させて薄膜8を成膜する。1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。なお、機能性微粒子4および薄膜8などの具体的な材料は、実施の形態1に挙げたものと同様である。
【0059】
また、噴出型プラズマヘッド22およびステージ32は、図示していない機構により相対移動を行い、基板3の全面に成膜することができる。反応ガスとしては、例えば、ヘリウム、アルゴン、窒素ガス、水素ガスなどの単体や混合ガスが挙げられる。また、成膜手法も、ターゲット5などを使用せず、薄膜原料ガスを導入して成膜するプラズマCVDなどの手法でも同様の効果が得られる。
【0060】
このように、上述した実施の形態11によれば、ミストジェットヘッド19のノズルプレート15aにガス流入路9eを設けることにより、必要な部分のみ雰囲気制御でき、実施の形態10の効果に加えて、塗布機構のコンパクト化を図りつつ、より均質な膜を形成できる効果がある。
【0061】
実施の形態12.
図12は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態12の概略構成を示す斜視図、図13は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態12の概略構成を示す断面図である。図12および図13において、この機能膜形成装置には、機能性微粒子4を塗布する塗布機構と噴出型プラズマ成膜機構が一体化されたヘッド24が設けられている。ここで、ヘッド24には、放物線状に形成された振動波反射体14と、この振動波反射体14の上面に絶縁材16を介して接合された圧電振動子17と、振動波反射体14の下面に接合されたノズルプレート15aと、ノズルプレート15a内に形成されたガス流入路9eと、ノズルプレート15aの下面に接合された雰囲気制御部材10eと、雰囲気制御部材10e内に形成された排気路27およびガス流入路28と、ターゲット5と、ターゲット5を冷却する冷却部25が設けられている。
【0062】
なお、ノズルプレート15aは、振動波反射体14の放物面の焦点位置にノズルプレート15aの開口部が位置するように配置されている。機能性微粒子4(例えば直径数10nmから数μm程度のシリコン微粒子)を含有した液体(例えば、水)は、振動波反射体14と絶縁材16とに囲まれた液体室20に充填される。圧電振動子17の上面には駆動電極(図示せず)、下面には共通電極(図示せず)が設けられ、これらの駆動電極と共通電極との間にはドライバにより高周波電圧が印加できる構造になっている。また、雰囲気制御部材10eの中央部では、高周波電源6によりターゲット5に高周波電圧が印加可能な構造になっている。
【0063】
次に、このヘッド24を使用した機能膜の形成方法を示す。ガス流入路9e、28にヘリウム、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスを流しながら、排気路27から排気を行い、基板3とヘッド24との間に酸素のない清浄な環境を作り出す。
【0064】
次に、圧電振動子17に高周波電圧を印加して発生した超音波を液体に導入し、振動波反射体14により、超音波を反射させ、超音波の音響エネルギーを集束させ、さらにノズルプレート15aにより貫通孔に集束させる。このように振動波が集束されることにより、液体中に放出された振動波のエネルギー密度が高められ、機能性微粒子4を含有するミスト流18が吐出孔からステージ13上の基板3に吐出される。ミスト流18が基板3に吐出されると、機能性微粒子4が混入された液体が蒸発し、機能性微粒子4のみが基板3の表面に堆積する。
【0065】
次に、ガス流入路28から不活性ガスを流し、排気路27から排気を行いつつ、ガス流入路9eに反応ガス(例えば、水素ガス、水素・ヘリウム混合ガス、水素・アルゴン混合ガス、水素・窒素混合ガスなど)を流入させ、基板3とヘッド24との間に酸素のない清浄な環境を作り出す。
【0066】
また、ターゲット5(例えば、シリコンターゲット)を冷却部25で冷却し、低温を維持する。基板3は、ヒータ(図示せず)で加熱され高温を維持している。水素化物が揮発性であるシリコンターゲットに高周波電源6から高周波電力を印加することで、水素プラズマの放電を起こし、ガス流入路9eから流れる反応ガス流により、シリコンターゲットと基板3との間で、水素プラズマによる励起した原子状水素との化学反応によるシリコンの水素化物(SiHx)(x=1,2….)の生成、揮発によるエッチングおよびエッチングにより生成された水素化物がプラズマ中で再分解されることによるシリコンターゲット材料の堆積の両工程が同時に起こる。
【0067】
この反応速度は、低温側のターゲット5の表面ではエッチングの方が大きく、堆積の方が小さい。一方、高温側の基板3の表面では、堆積の速度が大きく、エッチングの速度が小さい。従って、両者の温度差を適度に大きくしておくことにより、エッチングおよび堆積の速度差は非常に大きなものとなり、低温側のターゲット5から高温側の基板3への比較的高速の物質移動が生じ、基板3上にシリコンが堆積される。このような密閉空間の減圧下で行われていない物質移動は、大気圧プラズマ化学輸送法と呼ばれている。低温の温度としては、例えば15℃、高温の温度としては、例えば300℃などとし、ターゲット5と基板3との間に285℃程度の温度差があるのが好ましい。従って、低温側を−35℃とすると、高温側は250℃程度が好ましいが、温度差が100℃以上あれば、温度の組み合わせは何℃でもかまわない。
【0068】
このように、上述した実施の形態12によれば、ミスト吐出による機能性微粒子4(例えば、シリコン微粒子)の堆積と、大気圧プラズマ化学輸送法によるターゲット材料(例えば、シリコン)の堆積を順に繰り返すことにより、シリコン微粒子が混入されたシリコン膜を高速に成膜することが可能となる効果がある。また、液体中に混入する機能性微粒子4のサイズを調節することで、所望サイズのシリコン微粒子が混入されたシリコン膜を作製できる効果がある。
【0069】
また、ヘッド24に設けられたガス流入路9e、28および排気路27を用いて、周辺部の局所的な雰囲気制御を行っているので、実施の形態9、10、11のように周辺部を覆って雰囲気制御を行うよりも、機能膜形成装置のコンパクト化を図ることができる。また、ヘッド24と基板3を相対的にスキャニングすることで、面積が拡大した基板3にも容易に対応することができる。なお、1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。
【0070】
実施の形態13.
図14は、本発明に係る機能膜形成装置の実施の形態13の概略構成を示す断面図である。図14において、図13のヘッド24との違いは、ヘッド24aでは、振動波反射体14aの下面はヘッド24aの側部から中央部に向かって下がるように傾斜して形成されており、該面には、略逆ハの字状のノズルプレート15bが配置されている点である。また、ノズルプレート15bの形状に対応して対応して、雰囲気制御部材10fの上面は、側部から中央部に向かって下がるように傾斜して形成されている。
【0071】
ここで、ミスト吐出方向と直交する方向とノズルプレート15bとが成すノズル取付角度θは、鋭角(0°<θ<90°)となっている。ノズル取付角度θを鋭角にすることで、より大きな液滴までメニスカス保持ができるので、高い液体圧力に対してメニスカスの溢れ出しを効果的に抑制することができる。つまり、ミスト吐出量を増大させる効果が達成できる。このため、機能性微粒子4(例えば、シリコン微粒子)の混入量を増加させることができるので、厚膜の機能膜(例えば、シリコン膜)をより高速に成膜できる効果がある。なお、1回の工程では膜厚などが不足する場合は、これらの工程を交互に複数回繰り返すようにしてもよい。また、基板3上に薄膜8を成膜してから、機能性微粒子4と薄膜8とを交互に堆積するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように本発明に係る機能膜形成装置は、機能性微粒子の純度を高めつつ、機能性微粒子を含む機能膜を基材の表面に安定して形成することが可能となり、サブミクロンやミクロン単位の大きな粒径の機能性微粒子を含む機能膜をガラス基板やプラスチック基板などの基材表面に厚く形成する方法に適している。
【符号の説明】
【0073】
1 液体吐出口
2 スピン機構
3 基板
4 機能性微粒子
5 ターゲット
6 高周波電源
7 真空チャンバ
8 薄膜
9、9a〜9d 不活性ガス流入路
10、10a〜10f 雰囲気制御部材
11 雰囲気制御真空チャンバ
12 スプレーヘッド
13、32 ステージ
14、14a 振動波反射体
15、15a、15b ノズルプレート
16 絶縁材
17 圧電振動子
18 ミスト流
19 ミストジェットヘッド
20 液体室
21 反応ガス流入路
22 噴出型プラズマヘッド
23 不活性ガス
24、24a ヘッド
25 冷却部
9e、28 ガス流入路
27 排気路
31a 上部電極
31b 下部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に混在された機能性微粒子を基材の表面に付着させる工程と、
前記機能性微粒子が付着された基材上にプラズマにより薄膜を成膜する工程とを備えることを特徴とする機能膜形成方法。
【請求項2】
雰囲気制御された空間内で前記機能性微粒子を基材の表面に付着させることを特徴とする請求項1記載の機能膜形成方法。
【請求項3】
前記機能性微粒子が混在された液体を噴霧することにより、前記機能性微粒子を基材の表面に付着させることを特徴とする請求項1または2記載の機能膜形成方法。
【請求項4】
局所的に制御された雰囲気中で液体中の機能性微粒子をミストとして基材の表面に吐出する工程と、
局所的に制御された雰囲気中で大気圧プラズマ化学輸送法により前記機能性微粒子と一体化された薄膜を成膜する工程とを備えることを特徴とする機能膜形成方法。
【請求項5】
前記機能性微粒子はシリコン微粒子、前記液体は水、前記薄膜はシリコン薄膜であることを特徴とする請求項4に記載の機能膜形成方法。
【請求項6】
基材と、
前記基材上に設けられ、機能性微粒子上に前記機能性微粒子を含まない薄膜が成膜された機能膜とを備えることを特徴とする機能膜形成体。
【請求項7】
前記機能性微粒子と前記機能性微粒子を含まない薄膜とは前記基材上に交互に堆積されていることを特徴とする請求項6に記載の機能膜形成体。
【請求項8】
前記薄膜は、スパッタ膜であることを特徴とする請求項6または7に記載の機能膜形成体。
【請求項9】
前記薄膜は、プラズマCVD膜であることを特徴とする請求項6または7に記載の機能膜形成体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−111664(P2011−111664A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271595(P2009−271595)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新技術イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】