正確で安定したLC型基準発振器のための方法、システム、および装置
【課題】周波数の安定性およびジッタの要件を満たしつつ、CMOS技術における既存の最適化プロセスの手順に依拠した集積化の解決手法を利用した、温度に対して非依存型のLC型発振器を提供する。
【解決手段】実質的に温度に非依存のLC型発振器は、温度ヌル位相に実質的に等しい位相でタンク発振を生成するLC発振器タンク10を用いて達成される。該温度ヌル位相は、LC型発振器の出力発振の周波数の温度変化に伴う変動が最小化されるときの、LC発振器タンク10の位相である。該LC型発振器はさらに、該LC発振器タンク10に接続されて、該温度ヌル位相に実質的に等しい位相で該LC発振器タンク10を発振させる周波数安定化回路を含む。
【解決手段】実質的に温度に非依存のLC型発振器は、温度ヌル位相に実質的に等しい位相でタンク発振を生成するLC発振器タンク10を用いて達成される。該温度ヌル位相は、LC型発振器の出力発振の周波数の温度変化に伴う変動が最小化されるときの、LC発振器タンク10の位相である。該LC型発振器はさらに、該LC発振器タンク10に接続されて、該温度ヌル位相に実質的に等しい位相で該LC発振器タンク10を発振させる周波数安定化回路を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して発振器に関し、特にインダクタ−コンデンサ(LC)タンク型の発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子クロック生成は、従来、必要とされるクロックを生成するのに選択的に乗算または除算される、外部の水晶に基づく基準発振器に依拠してきた。クロックの主要な仕様には、目標とする周波数以外に、周波数の精度と安定性がある。周波数の精度は、電源および温度に対して目標周波数を維持する能力であり、これは通常、該目標周波数からのドリフトとしてパーセントまたはppmで表される。短期間の周波数安定性は、大きい周波数オフセットにおいて発振器の位相ノイズに依存する周期ジッタを用いて測定される。他方、長期間の安定性は、発振器の近接位相ノイズ(close-in phase noise)により影響を受ける。高Q素子(high-Q element)を用いた発振器は、典型的には、低位相ノイズの特性を持ち、よって、良好な周波数安定性を有しており、電源および温度に依存した発振器の振幅利得におけるばらつきに左右されにくい。
【0003】
たとえば、水晶発振器(XO)は、水晶の非常に高い品質係数(Q)に由来して、電源および温度全域にわたって非常に良好な周波数安定性および周波数精度を提供する高Q発振器である。しかしながら、水晶を含め、すべての共振子(振動子)が、温度に対して満足のいく性能を有しているわけではない。したがって、温度に起因した周波数におけるこの“シフト(ずれ)”を低減ないし補償するための回路および技術が必要とされる。温度補償型の水晶発振器(TCXO)は、典型的には、水晶の温度依存性を無効にするための温度依存性を持つ付加的なデバイスを備える。その結果、低温度依存性の発振周波数が得られる。
【0004】
しかしながら、複数の規格、増大する機能性、高データ速度、および、より小型化されて低コスト化されたメモリをサポートする必要性のために、電子システムについてこれまで増大してきた複雑性は、設計者を、増大するゲート密度から恩恵を受けるよう、ディープサブミクロン(deep submicron)のCMOS技術において、SoC(Systems-on-Chip)の開発を介して集積レベルを増大することに向かわせている。水晶発振器による基準クロックは、水晶が本質的にかさばるものであるために、サイズを変更したり集積するのが難しく、よって、電子システムについて可能なサイズおよびコストの低減化を制限してしまっている。
【0005】
高QのMEMS共振器および薄膜バルク音響共振器(FBAR)を使用する最近の取り組みは、高Q素子および特定要素向け集積回路(ASIC)を同じパッケージに集積する可能性を示してきた。しかしながら、高Q素子は、SoCにとって実用的でない特別なパッケージないし較正(キャリブレーション)を必要とすることがあるため、パッケージングによってもたらされる、パフォーマンスに影響するストレスが、厳しい障害としてなお存在している。このストレスは、共振器の温度挙動を変化させるおそれがあり、結果として、大きい周波数シフトをもたらすと共にエージングを加速させるおそれがある。したがって、典型的には、このような取り組みを緩和するように、特別なアセンブリおよびパッケージング技術が必要とされるが、これは、クロックを生成するコストを増大させる。同様の問題は、共振器の材料の機械的特性に依存する共振器にも存在し、これは、注意深い設計および製造手順やプロセスを必要とする。
【0006】
USBおよびSATAのようなアプリケーションのための設計上の要件(これは、それほどの周波数精度および安定性を必要としない)は、良好なジッタ性能を生成する適切なノイズ特性を有することができる、CMOSプロセスで利用可能な比較的低いQ素子を備える発振器を用いても満足されることができる。現在の取り組みでは、リング発振器、弛緩発振器、およびLC発振器が使用されている。しかしながら、これらの実現形態について報告されている周波数精度は、電源および温度に対して大きなドリフトがあり、よって、より厳密な精度および安定性を必要とするアプリケーションにとっては、これらの発振器は役に立たない。温度に対するドリフトを低減するための抑制策として、温度に対する調整(トリミング:trimming)が必要とされるが、これは、SoCにとってコストもかかり、実用的でもない。
【0007】
したがって、周波数の安定性およびジッタの要件を満たしつつ、CMOS技術における既存の最適化プロセスの手順に依拠した集積化の解決手法が利用可能になることが、価値あるものとして必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、実質的に、温度に対して非依存型のLC型発振器を提供する。この発振器は、温度ヌル位相(temperature null phase)に実質的に等しい位相でタンク発振を生成するLC発振器タンクを含む。該温度ヌル位相は、発振器の出力発振の周波数における温度変化に従う変動が最小化されるときの、LC発振器タンクの位相である。該発振器は、さらに、LC発振器タンクに接続された周波数安定化回路を含み、LC発振器タンクを、該温度ヌル位相で動作させる。
【0009】
たとえば、一実施形態において、温度ヌル位相は、ゼロに実質的に等しく、周波数安定化回路は、インダクタ(L)およびコンデンサ(C)の品質係数が、関心のある温度範囲にわたって実質的に等しくなることを可能にするよう選択された値を持つLC発振器タンク内の直列の容量性抵抗を含む。
【0010】
他の実施形態では、温度ヌル位相は、ゼロではなく、周波数安定化回路は、位相制御信号に基づいて、負の該温度ヌル位相に実質的に等しい位相を生成するよう動作する位相シフト回路を含む。
【0011】
さらに他の実施形態では、発振器は、第1の電流をLC発振器タンクに流すよう動作可能な第1の増幅器を含み、周波数安定化回路は、LC発振器タンクに接続されて、第2の電流をLC発振器タンクに流すよう動作可能な第2の増幅器を含む。第1の電流および第2の電流の間の位相シフトは、該第1の電流および第2の電流の間の比に基づいてLC発振器タンクにおける非ゼロ値の位相を生成する。この比は、発振器が、発振器が温度ヌル位相で動作するよう選択される。
【0012】
さらなる他の実施形態では、2つの発振器が、互いに直交位相(直角位相差)となるよう接続され、各発振器が、それぞれの温度ヌル位相において動作することを可能にする。各発振器は、組み合わされた電流をそれぞれのLC発振器タンクに流すよう接続された2つの増幅器を含み、該LC発振器タンクを、温度ヌル位相に実質的に等しくなるよう設定された非ゼロ位相で発振させる。この位相は、各増幅器によって流される電流間の比に基づいて設定される。さらなる実施形態では、自動増幅制御回路が、発振器のそれぞれの出力の振幅を測定し、発振振幅を制御するための制御信号を生成して、これら増幅器が、それらの線形領域で動作するようにし、これにより、発振器の温度依存性に悪影響を持つおそれのある高調波を低減する。
【0013】
他の実施形態では、周波数安定化回路は、さらに、発振出力およびフィードバック信号を受け取るよう接続されると共に、発振出力と該フィードバック信号の間の位相差を示す位相エラー出力信号を生成するよう動作可能な、位相検出器を有する位相ロックループ(PLL)または遅延ロックループ(DLL)を含む。ここで、位相エラー出力信号は、発振出力およびフィードバック信号が一定の位相だけシフトされているときには、ゼロに等しい。VCO(電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator))またはVCDL(電圧制御遅延線(Voltage Controlled Delay Line))は、フィルタリングされた位相エラー出力信号を受け取り、該フィードバック信号を生成する。VCO/VCDLに接続されたプログラム可能な結合回路は、フィードバック信号の一部を発振器に供給して、LC発振器タンクを、非ゼロの位相で発振させる。結合係数(coupling factor)は、発振器タンクが、温度ヌル位相に実質的に等しい位相を持つよう選択される。
【0014】
他の実施形態では、周波数安定化回路は、発振器の動作温度に重畳される温度励起信号を印加するよう動作可能な加熱素子と、出力発振を受け取るよう発振器に接続されると共に、温度励起信号に応答して発振器により生成される周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成するよう出力発振を復調するよう動作可能な復調器と、該周波数偏差信号および温度励起信号を受け取るよう接続されると共に、温度に対する発振器周波数の感度に比例したエラー信号を生成するよう動作可能な周波数エラー生成器と、該エラー信号および基準信号を受け取るよう接続されると共に、LC発振器タンクが温度ヌル位相で動作することが可能となるよう発振器を制御するための制御信号を生成するよう動作可能な比較器と、を備える。定常状態では、該エラー信号は、該基準信号に等しい平均値を持つ。
【0015】
本発明の実施形態は、さらに、LC型発振器を動作させるための方法を提供する。この方法は、該LC型発振器のLC発振器タンクの温度ヌル位相を求めることを含み、ここで、該温度ヌル位相は、LC型発振器の出力発振の周波数における温度変化に従う変動が最小であるときの位相である。該方法は、さらに、周波数安定化回路を提供し、温度ヌル位相に実質的に等しい位相でLC発振器タンクを動作させることと、該温度ヌル位相で発振するLC発振器タンクを備えるLC型発振器を動作させることと、を含む。
【0016】
以下の詳細な説明を添付の図面と共に参照することで、本発明をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態による、例示的なLC発振器タンクを示す回路図である。
【図2】本発明の実施形態による、例示的なLC発振器タンクの位相プロットを示す図図である。
【図3】ゼロ位相で動作するLC発振器タンクの温度に対する発振周波数を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による、例示的なLC発振器タンクの温度ヌル位相を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による、温度ヌル位相で動作している間の、温度に対する周波数偏差を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による、温度ヌル位相で動作するLC発振器タンクを有する例示的に発振器を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態による、LC型発振器を動作させるための例示的な方法を示す流れ図である。
【図8】本発明の実施形態による、温度ヌル位相で動作する例示的なLC発振器タンクを示す回路図である。
【図9】本発明の実施形態による、非ゼロ位相においてLC型発振器を動作させるための方法を示す流れ図である。
【図10】本発明の実施形態による、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された例示的な発振器を示す図である。
【図11】本発明の実施形態による、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された他の例示的な発振器を示す図である。
【図12】本発明の実施形態による、最小の温度依存性で動作するよう設計された例示的な発振器を示す図である。
【図13】本発明の実施形態による、自動振幅制御(AAC)ブロックを備える例示的な発振器を示す図である。
【図14】本発明の実施形態による、温度ヌル位相においてLC発振器タンクを動作させるよう設計された、他の例示的な発振器を示す図である。
【図15A】本発明の実施形態による、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された、フィードバック支援型の発振器を示す図である。
【図15B】本発明の実施形態による、図15Aのフィードバック支援型発振器内で使用するための周波数エラー生成器の例示的な設計を示す図である。
【図15C】本発明の実施形態による、図15Aのフィードバック支援型発振器の安定化ポイントを示す図である。
【図15D】本発明の実施形態による、図15Aのフィードバック支援型発振器内で使用するための例示的な加熱回路を示す回路図である。
【図15E】本発明の実施形態による、図15Dで示される加熱回路から放出される例示的な温度信号を示す図である。
【図16A】本発明の実施形態による、拡張された温度ヌル位相範囲を生成するための例示的な差分LC発振器タンクを示す回路図である。
【図16B】本発明の実施形態による、図16Aの差分LC発振器タンクによって生成される例示的な拡張された温度ヌル位相範囲を示す図である。
【図17A】本発明の実施形態による、例示的な温度調整(トリミング)動作を示す図である。
【図17B】本発明の実施形態による、例示的な温度調整(トリミング)動作を示す図である。
【図18A】本発明の実施形態による、温度変調を用いない場合の、例示的な発振器出力スペクトルを示す図である。
【図18B】本発明の実施形態による、温度変調を用いた場合の、例示的な発振器出力スペクトルを示す図である。
【図19】本発明の実施形態による、温度に対する発振器の周波数感度を求めるための方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、発振器を構成する際に使用されるLC発振器タンク回路10は、インダクタンス(誘導)およびキャパシタンス(容量)のもととなる素子LおよびCから構成される。LC発振器タンク回路10における誘導性素子Lおよび容量性素子Cは、限定されるものではないが、オンチップの集積化されたインダクタ、接着ワイヤ(bond-wires)、金属―絶縁膜―金属(MiM)コンデンサ、金属のフィンガコンデンサ(Metal Finger Capacitor)、金属酸化物半導体(MOS)コンデンサ、セラミック共振器、マイクロ電気機械システム(MEMS)音叉共振器(tuning fork resonator)、MEMSワイングラス共振器(wine-glass resonator)、MEMS型の共振器、表面弾性波(SAW)およびバルク弾性波(BAW)デバイス等のような、様々な種類の共振器および受動素子から構成されることができる。
【0019】
理想的な純粋なインダクタおよびコンデンサの実現は、通常、有限の品質係数(quality factor)Qを持つという物理的な限界に起因して、可能ではない。今日まで、CMOS技術において集積化されたインダクタは、MEMS共振器および水晶に比べると、低いQ係数を持つ。インダクタにおける損失の源には、インダクタの金属の抵抗損(ohmic loss)rLおよび基板の抵抗損rSUBがある。これらの損失は、両方とも、通常温度に依存しており、したがって、インダクタの全体のインピーダンスおよびQは、温度に依存している。
【0020】
該タンクの集積化された容量性部分はまた、そのキャパシタンス値(容量値)の温度依存性だけでなく、有限の温度依存性のQをも被る。結果として、集積化されたLCタンクの物理的な実現は、該タンクのインピーダンスおよびQ係数の強い温度依存性を示し、これは、温度依存型のタンク共振周波数をもたらす。
【0021】
このように、LC発振器タンク10を用いて構成された発振器は、典型的には、該タンク損失を克服するための役割を担う増幅器を有する。発振器が発振を維持するため、バルクハウゼン(Barkhausen)の条件は、開ループ利得(ゲイン)が1より大きいこと、および位相がゼロに等しいことを必要とする。増幅器がゼロ位相をもたらすとすると、発振が起こるためには、LC発振器タンクのインピーダンスZTankは、ゼロ位相を持たなければならない。この位相条件を使用して、以下のように、発振周波数ωOSCが導かれる。
【数1】
【0022】
ここで、φTank=0の発振状態は、以下となる。
【数2】
【0023】
上記の式(1)〜(3)から、rLが温度に依存している場合には、発振周波数が温度に依存する、ということがわかる。温度に従うrLの線形の変動は、発振周波数のほぼ線形の変動となる。加えて、Cにおける温度変動は、温度依存性に強く寄与することとなる。
【0024】
このことは、図2にグラフで示されており、図2には、L、rLおよびCからなるタンクの複数の異なる温度について、位相φTankがプロットされている。ここで、rLの線形の温度依存性は、式(4)のように定義され、αは、rLの温度係数である。
【数3】
【0025】
発振周波数が、φTank=0とこれら位相プロットとの交点を用いて決定される点に注意されたい。温度に対する対応する発振周波数は、図3にプロットされており、これは、ゼロ位相で動作する典型的なLC発振器タンクにおいて、8000ppmの強い温度依存性を示している。
【0026】
図2における位相プロットを再び調べると、タンクの品質係数は温度と共に変化するので、位相プロットは温度と共に変化する。さらに、発振周波数において、温度が低いほどQは高くなり、したがって、温度が低いほど、負の傾斜が大きくなっている。よって、温度に従って、位相プロットの傾斜が変化することになり、これにより、これらのプロットの交点が得られる。
【0027】
該交点が同じ位相で生じるとき、温度に無感応なタンク動作ポイントが作られ、該タンクは、位相φNULLで温度が“ヌル(null、無意味)”の状態で動作するものと言うことができる。温度に対する位相プロットがちょうど同じ位相で交差するときに、この理想的な温度ヌル位相(temperature null phase)が生じる。タンクにおいて理想値φNULLの位相での発振は、温度全体にわたり、ずれ(偏差)がゼロの発振周波数となる。
【0028】
より現実的なタンクは、温度に対し、小さな周波数偏差を伴う温度ヌルを示す。これが、図4にグラフで示されており、ここで、発振の条件は、φTank=φNullであり、温度に対する対応発振周波数がプロットされている。図5に見られるように、温度ヌル位相で発振器を動作させることは、かなり低い温度依存性の発振周波数となる。たとえば、図5において、周波数ドリフトは、わずか290ppmである。これを、図3のゼロ位相における8000ppmの周波数ドリフトと比べると、温度ヌル位相における発振は、より安定した周波数を生成することがわかる。
【0029】
グローバルな温度ヌル(GNull:Global Temperature Null)を、温度範囲の中央TOにおいて、温度に対する発振周波数の変化dfOSC/dTが非常に小さいもしくは変化がゼロの温度範囲ΔTにわたり、最小の周波数偏差Δfをもたらす位相動作ポイントφGNullとして、定義することができる。温度ヌルの品質を計る尺度は、温度に対する発振周波数偏差である。タンクの温度ヌルの良度指数(FOMM:Figure of Merit)は、以下のように定義されることができる。
【数4】
【0030】
ここで、fToは、TOにおける発振周波数である。FOMの値が小さくなるほど、該ヌルの品質は良好になる。完全なヌルは、FOM=0となる。
【0031】
ローカルな温度ヌル(LNull:Local Temperature Null)を、dfOSC/dT=0の位相動作ポイントφLNullとして定義されることができる。代替的に、LNullを、温度T+δの位相プロットとT−δの位相プロットの交点というように、温度Tにおいて定義されることができる。ここで、δは、極小の値である。
【0032】
温度TOに対するGNullの発振周波数ωGNullは、温度(TO+ΔT)と(TO−ΔT)における2つの位相カーブの交点を見つけることによって導出されてもよい。rLの線形温度依存性を持つLC発振器タンクについて、GNullにおける位相および周波数は、次のようになる。
【数5】
【0033】
上記の式(6)および(7)から、ωGNull>ωoであり、ωGNullがΔTの弱い関数(weak function)であることがわかる。さらに、φLNullは、負の値であり、かつΔTの非常に弱い関数であり、これは、以下のように、TO(ΔT=0)におけるLNullが、(2ΔT)の温度範囲のGNullの中央であることを示す。
【数6】
【0034】
このように、関心のある温度範囲のLNullポイントを用いてGNullを位置付けることが可能である。
【0035】
GNullのFOMは、一般に、タンクのQが増えるにつれ、またインダクタの抵抗(ohmic)損の温度係数αが減少するようにつれ、向上する。しかしながら、温度依存の能動性のキャパシタンス(active capacitance)および(または)受動性のキャパシタンス(passive capacitance)を用いることによって、GNullのFOMを向上させることが可能である。たとえば、再び図1を参照すると、コンデンサCは、温度依存型のコンデンサであることができる。発振周波数は、タンクのインピーダンスに依存しており、その容量性の部分は、キャパシタンスの二次もしくはそれ以上に高い次数の温度依存性(second order or higher temperature dependence)が、関心のある温度範囲にわたって全体的な周波数偏差を減少させるよう働くことができるという点で、非常に効果的である。
【0036】
図6を参照すると、LC発振器5は、従来のように、LC発振器タンク10に対してゼロ位相に非常に近いところで動作するよう設計されており、よって、温度ヌルを通常逃してしまっている。バルクハウゼンの条件を満たすため、図6に示すように、本発明の実施形態では、周波数安定化回路20を使用して、LC発振器タンク10が温度ヌル位相で発振しつつ、LC発振器5が、ゼロの開ループ位相で発振するのを可能にする。たとえば、一実施形態では、周波数安定化回路20をLC発振器タンク10に含めて、温度ヌル位相をゼロ近くに動かす。他の実施形態では、周波数安定化回路20は、LC発振器タンク10を、非ゼロ値の温度ヌル位相で発振させると共に、該温度ヌル位相と同じ大きさで逆向きの位相を提供して、LC発振器5が、実際にゼロの開ループ位相で発振するのを可能にし、これによりバルクハウゼンの条件を満たすようにする。周波数安定化回路20はまた、較正/トリミングの動作中に、および(または)リアルタイムの動作中に、温度ヌル位相にLC発振器タンクの位相を設定するよう動作するコントローラを含むことができる。LC発振器タンク10および周波数安定化回路20の様々な形態については、図8、図10〜15を参照して後述される。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に従う、温度非依存型のLC型発振器を動作させるための例示的な方法を示す流れ図である。ブロック110において、LC発振器タンクが提供され、その温度ヌル位相が推定される。この温度ヌル位相は、温度変化に対する周波数変動が最小となるときの位相である。ブロック120において、周波数安定化回路が提供され、発振器がゼロの開ループ位相を持つように、LC発振器タンクを、温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振させる。ブロック130において、温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振するLC発振器タンクを用い、LC型発振器を動作させる。たとえば、一実施形態において、LC型発振器をトリミングして、温度ヌル位相に実質的に等しい位相を選択し、特定の温度範囲にわたって実質的に温度に非依存の発振周波数を生成することができる。
【0038】
図8を参照すると、従来の発振器の実現形態を使用するとともに、温度ヌルの利益を享受するため、LC発振器タンク10を、φGNull〜0を持つよう設計することができる。これは、関心のある温度範囲にわたって、インダクタの品質係数QLおよびコンデンサの品質係数QCを等しくすることにより達成されることができる。図8に示すように、直列の抵抗rCが、周波数安定化回路20として、LC発振器タンク10に追加され、インダクタLおよびコンデンサCの両方に、有限の品質係数を持たせる。直列の抵抗rLおよびrCの両方が温度依存型であるとすると、φTank=0の位相条件を用いた発振周波数は、以下のようになる。
【数7】
【0039】
CおよびLが温度に非依存である場合、上記式を調べると、関心のある温度範囲にわたってQLおよびQCが等しければ、発振周波数が、ゼロの位相において、LC発振器タンク10の固有周波数(natural frequency)となり、温度に非依存であることがわかる。これは、温度ヌル(GNull)をゼロ位相に動かすことと等価である。これを達成するため、rCは、
【数8】
を満たすよう選択される。QL=QCならば、ゼロ位相における温度ヌルは、rL=rCで維持される。Cおよび(または)Lが温度依存ならば、rCの値は、ゼロ位相周辺のGNullとなるよう選択される。
【0040】
図9は、本発明の実施形態に従う、非ゼロ位相でLC型発振器を動作させるための方法200を示す流れ図である。図9において、LC発振器タンクの温度ヌル位相がブロック210で推定されると、ブロック220において、周波数安定化回路がLC発振器内に提供され、発振器の開ループ伝達関数に、LC発振器タンクの該推定された温度ヌル位相とは逆の位相を取り入れる。その後、ブロック230において、ゼロの開ループ位相のバルクハウゼン位相条件を違反することなく、LC発振器タンクが温度ヌル位相で発振するように、LC型発振器を動作させる。たとえば、発振器のゼロの開ループ位相のために、LC型発振器内の増幅器を、定常状態において、−φGNull(グローバルヌル位相の負の値)に等しい位相を提供するよう設計することができる。
【0041】
図10は、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相においてLC発振器タンク10を動作させるよう設計された、例示的なLC型発振器5を示す図である。前述したように、温度ヌル位相で動作することにより、温度に対して非常に高い安定性を有した発振器5とすることができる。温度ヌルで(温度が無意味な状態で)動作する発振器5を実現するため、周波数安定化回路20を提供して、LC発振器タンク10を温度ヌル位相で動作しつつ、LC発振器5を、ゼロの開ループ位相で発振させることができる。
【0042】
周波数安定化回路20は、増幅器(gmトランスコンダクタ)30および位相シフト回路(“ejφ”ブロック)40を有する。増幅器30は、位相シフト回路40と組み合わさって、定常状態において、GNullの負の値(−φGNull)に等しい位相を提供するよう設計されている。さらに、増幅器30および位相シフト回路40は、生成された該位相が低い温度依存性を有するよう設計されている。例示的な動作において、位相シフト回路40は、増幅器30の出力の位相をシフトし、これは、LC発振器タンク10を、タンクの温度ヌル位相において、または該ヌル位相近くで、非ゼロの位相で発振させる。たとえば、増幅器が十分な利得を持っていれば、LC発振器タンク10における位相が、位相シフト回路40によって生成される位相に大きさが等しくかつ逆である場合の周波数で、LC発振器タンク10は発振することとなる。
【0043】
位相シフト回路40は、最適な位相動作ポイントに可能な限り近づくようにするため、位相制御信号φControlを介して、位相の正確な生成を可能にするとともに、位相の大きさを制御することができる。位相制御信号φControlを使用して、位相動作ポイントを調整するための較正/トリミングの動作中に、および(または)位相動作ポイントの精細な調整を行うためのリアルタイムの動作中に(すなわち、発振器5を含むデバイスがユーザによって使用中であるときに)、固定の位相動作ポイントを設定することができる。たとえば、コントローラ/プロセッサは、発振器5の出力を測定して、これに応答して位相制御信号φControlを生成することができる。位相制御の精度は、最終的な位相動作ポイントがグローバルヌルにどれほど近づけるかを決める。
【0044】
こうして、図10に示すように、能動回路(gmトランスコンダクタ30および位相シフト回路40)は、発振周波数におけるタンクのインピーダンスが、以下の式のようになるように、同じ大きさの、かつ逆の位相を提供する。
【数9】
【0045】
したがって、位相シフトφが、タンクのφNullに近ければ、温度にほぼ非依存の周波数での動作が達成される。温度ヌルに可能な限り近いところで動作するよう発振器を調整するため、位相シフト回路40を、位相を制御する機能を備えた能動位相シフタ(shifter)および(または)受動位相シフタを用いて実現することができる。
【0046】
図11は、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された、他の例示的な発振器5を示す図である。図11の設計において、位相シフトθを持つ、2つの等しくない電流(ここで、比=mとする)が、タンク10に流され、該2つの構成要素の比mに依存する位相シフトを持つ総電流Itotalを生成する。Itotalの組み合わされた位相シフトφは、LC発振器タンク10を、非ゼロの位相で発振させる。比mおよび位相シフトθは、LC発振器タンク10を、該タンクの温度ヌル位相において、もしくは該ヌル位相近くで発振させるように選択される。
【0047】
たとえば、図11に示されるように、第1の増幅器(gmトランスコンダクタ)30aは、電流I1をタンク10に流すと共に、第2の増幅器(m*gmトランスコンダクタ)30b(これは、周波数安定化回路20を形成する)は、第2の電流m*I1(正確には、以下の(a)のように表される)をタンク10に流す。LC発振器タンク10において生成される結果としての位相は、I1およびI2の比mおよびI2の位相θの関数である。たとえば、m=1およびθ=90度であれば、LC発振器タンクを流れる電流の結果としての位相は、−45度になるであろう。したがって、45度より小さい大きさの位相シフトを生成するため、典型的には、比mを1より小さく、位相シフトθを90度より小さくすることができる。
【数10】
【0048】
増幅器30bに接続される電圧(以下の(b)のように表される)を、弱い温度依存を持つ任意の手法を用いて生成することができる。たとえば、複数の位相を生成するよう設計された複数の接続された発振器(たとえば、N個の同一の発振器)は、所望の電圧(以下の(b)のように表される)を生成することができる。一例として、2つのみの発振器を必要とする直交位相(θ=90°)の使用を介して、該所望の電圧を生成することができる。
【数11】
【0049】
直交位相を用いる一実施形態が、図12に示される。図12において、発振器5は、互いに直交に発振する、2つのほぼ同一の発振器タンク10aおよび10bを有する。増幅器30bおよび30cは、ほぼ同じトランスコンダクタンスgmを生成すると共に、位相シフトされたトランスコンダクタンス(m*gm)をそれぞれタンク10aおよび10bに提供する。利得ブロック60は、180°の位相シフトを生成し、2つのタンク10aおよび10bを、互いに90°だけ位相がずれた状態にする。したがって、各タンク10aおよび10bにおける全体の位相シフトφは、単なる結合比(coupling ratio)mの関数であり、以下のように表される。
【数12】
【0050】
自動振幅制御(AAC)ブロック50は、発振器5の出力Vおよび下記の(c)のように表されるVの動作振幅を検知し、ループ利得がちょうど1となるよう連続的に調整し、増幅器30a〜30dは、それらの線形領域で動作する。これらの詳細は、図13を参照して説明される。
【数13】
【0051】
比mを変動させることは、結合増幅器30aおよび30bのバイアス電流を変倍すること、および/または、能動デバイス(たとえば、MOSトランジスタの差動対)の増幅器30aおよび30d内の大きさ(dimension)を変倍することで行われることができる。たとえば、比mを変倍することは、性能についての小さい不一致および温度に対する安定した温度非依存の結合比率を維持しつつ、増幅器30aおよび30d内のオフ/オンデバイスを切り換えることにより行われることができ、このことは、2つのタンク10aおよび10bにおいて一定の位相を生成する。比mの設定を、発振器のトリミング中に行うことができ、発振器の動作中に固定に維持することができる。これは、アナログまたはデジタル手法を用いて達成されることができる。たとえば、必要な比mの設定を表すデジタルワードを、不揮発性メモリを用いてチップ上に格納し、発振器のライフタイム中の将来の使用のために利用可能とすることができる。AACブロック50が、すべてのトランスコンダクタンス増幅器30a〜30dを、該すべての4つの増幅器がトラッキングゲイン(tracking gain)を確実に持つように制御すべきであり、これにより、効果的な結合比mを、動作中に一定に維持することができる。
【0052】
ヌルに影響する温度依存性の2つの主な源は、(1)温度依存である能動回路の寄生インピーダンス、および(2)タンク10における電流の高調波成分、である。能動回路の寄生容量(線形または非線形)は、温度、電源および出力電圧の揺れ(swing)に従って、周波数シフトを引き起こすおそれがある。さらに、増幅器30の出力抵抗は、タンクの効果的な品質係数を低減し、よって、タンクのFOMを低減するおそれがある。寄生のこのような影響を、発振器5の注意深い設計によって最小にすることができる。たとえば、タンク10の容量(キャパシタンス)を、能動回路の寄生容量より十分大きくなるよう設計し、タンクの容量の温度依存性が支配的なものであって、寄生容量は、温度ヌルの位置や品質にほとんど影響を持たないようにすることができる。さらに、出力抵抗を、タンクの品質係数の低下(これは、該ヌルの位置を変化させるだけでなく、該ヌルの品質を劣化させることがある)を回避するために可能な限り高くすることができる。
【0053】
発振器は、本来、正(ポジティブ)のフィードバックループを持つので、十分な利得を持つ従来の発振器における発振の振幅は、増幅器の非線形性が振幅の増大に制限を与えるまで、増大することとなる。定常状態において、発振器の出力は、その大きな信号利得が1であるように多くの高調波を含んでおり、よって振幅は一定である。しかしながら、能動回路における何らかの非線形性は、高調波をタンク10に流し、これにより、コンデンサとインダクタの間にエネルギーの不均衡を引き起こし、よって、以下に示す式で与えられるように、発振周波数を低くして均衡を回復しようとする。
【数14】
【0054】
ここで、ωosは、高調波を有しない発振周波数であり、Inは、タンクにおける電流のn番目の高調波である。タンクに流された高調波成分が、温度、電源、および発振振幅に依存しているので、発振周波数もまた変動する。高調波の影響を、発振器を発振の限界利得(critical gain、限界ゲイン)の状態で動かすことにより最小にすることができ、これにより、過剰な利得が、発振の振幅を、増幅器の線形領域を超えるレベルにまで増大させてしまうことを防ぐことができ、よって、非常に低い高調波成分を有する発振とすることができる。
【0055】
図13を参照すると、ループ利得がちょうど1になるよう連続的に調節するよう設計された例示的なAACブロック50が示されており、増幅器30は、その線形領域において動作している。AACブロック50は、発振の振幅を測定する振幅検知回路52、該検知した振幅を、基準電圧Vrefと比較する比較回路54、比較回路54の出力に基づいて増幅器30の利得を制御する信号を生成するコントローラ56とを含む。定常状態において、発振の振幅は、増幅器30の線形領域の限界値より小さく、かつ基準電圧の変倍された値に等しいべきである。その一方で、増幅器30の利得は、発振の限界利得の状態で動作するよう設定される。
【0056】
図14は、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された発振器システム15を示す。図14の発振器システム15は、一定の位相θだけその入力(複数)がシフトされるときにゼロの位相エラー出力を生成する位相検出器62を備える位相ロックループ(PLL)または遅延ロックループ(DLL)60を含む。たとえば、位相検出器62は、XORゲートまたはミキサ(アナログの実現形態について)であることができ、定常状態において、直交となっている(すなわち、θ=90°)入力(複数)を持つ。
【0057】
PLL/DLL60は、さらに、ループフィルタ64と、PLL電圧制御発振器(VCO)66(PLLとして動作するとき)または電圧制御遅延線(VCDL)68(DLLとして動作するとき)とを有する。PLLとして動作するとき、基準発振器5の出力(V)は、位相検出器62への入力となり、PLL60が、PLL VCO66の位相を基準発振器5に対してロックし、定常状態において、PLL VCO66および基準発振器5が、同じ周波数を持ち、位相においてθだけシフトされているようにする。こうして、PLL60は、PLL VCO66を、基準発振器5の周波数を追跡(トラッキング)させ、よって、2つの発振器5および66は、同じタンクを持たなくても、常に同じ周波数を持つ。DLLとして動作するときには、発振器5とDLL60の間の位相関係は、VCDL68を用いて達成される。
【0058】
PLL VCO66またはVCDL68の出力(下記の(d)のように表される)は、フィードバック信号として、位相検出器62の入力となり、また、プログラム可能な結合回路70への入力となる。プログラム可能結合回路70は、該PLL/DLLの出力(これは、(d)のように表される)の一部(下記の(e)のように表される)を、基準発振器5に結合し、基準発振器5が、温度ヌルで動作することを可能にする。AACブロック50はまた、2つの発振器5および66の間の結合比mを、温度に対して一定に維持するために、該発振器5および66に接続される。このように、基準発振器5は、必要とされる温度ヌル位相で動作すると共に、低い温度依存性を持つよう動作することができる。
【数15】
【0059】
図15Aは、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相でLC発振器タンク10を動作させるよう設計されたフィードバック支援型発振器5を示す。図15Aに示される発振器システム15は、発振器5の、図8に示すようなLCタンク10および(または)図10に示すような能動回路(すなわち、位相シフト回路40と組み合わさった増幅器30)を調整し、温度ヌル位相にタンクの位相シフトを調節する。
【0060】
発振器システム15は、発振器が、温度に対して特定の感度状態にあるときに安定するフィードバックループを用いて、GNullにおける動作を自動化する。動作温度に重畳される温度励起信号(temperature excitation signal)が、発振器5に印加される。たとえば、温度励起信号は、振幅Tmを持ち、周波数fmの正弦波であることができ、動作温度Topに重畳される。発振器5が温度に感応する場合には、発振器5からの発振25の出力は、温度励起信号に関連する温度が変化するに従って変化し、fmによって周波数変調された発振25となる。
【0061】
発振器5の出力25は、FM復調器75への入力となり、これは、発振周波数偏差を検知する。周波数エラー生成器(FEG:Frequency Error Generator)80は、FM復調器75の出力(周波数偏差)78および温度変動を、温度に対する発振周波数の感度(Δfosc/ΔT)に比例したエラー信号FdTerrに変換する。エラー信号FdTerrおよび基準信号FdTrefは、比較ブロック85において比較され、その結果は、積分器90において積分され、その後、ローパスフィルタ95によってローパスフィルタリングされる。最終的な制御信号(Vctrl)98は、その後、発振器5の動作を制御するのに用いられ、これにより、LCタンク10は、温度ヌル位相で動作することが可能となり、または、位相シフトの直接制御を介して、またはrCを制御することによって、該ヌルをゼロ位相にシフトすることが可能となる。
【0062】
FEG80の実現形態の一例が、図15Bに示されている。FEG80は、ミキサ82、利得ステージ84およびトランスコンダクタ86を含む。ミキサ82は、入力として、FM復調器の出力(周波数偏差)および温度励起信号(温度偏差)を受け取り、Δfosc/ΔTに比例した平均値でエラー信号FdTerrを生成する。図15Bの周波数プロットで示されるように、生成されたエラー信号FdTerrは、温度の上昇に従って、周波数偏差が正であれば平均値を持ち、周波数偏差が負であれば、その符号が逆となる。
【0063】
定常状態において、エラー信号FdTerrは、基準値FdTrefに等しい平均値を持つ。基準信号がゼロならば、フィードバックループは、エラー信号がゼロ平均を持つときに定常状態に達する。ゼロのエラー信号は、Δfosc/ΔT=0と等価であるので、これは、発振器を、動作温度のLNullで動作させるよう調整することと等価である。図15Cに示すように、基準信号が、基準温度Trにおいてゼロ値を持つ温度の関数であるよう設計されている場合には、ループは、以下の場合に安定化する。
【数16】
【0064】
全体的に、ループは、発振器が、温度TrでLNullを持つGNullで動作するよう設計される。一定値βは、ループ利得および温度に対する目標発振周波数の許容値に依存している。
【0065】
図15Dおよび図15Eを参照すると、発振器の温度を変調するため、集積化された電圧制御型の加熱素子300を使用することができ、これは、発振器5を局所的に加熱することができる。加熱素子の一例が図15Dに示されている。加熱素子300は、NMOSトランジスタ310および集積化されたポリシリコン抵抗320を含む。図15Eに示すように、入力制御電圧は、所望の変調周波数におけるレールツーレール(rail-to-rail)の信号であることができ、該入力信号のデューティ信号を変化させて、温度変調Tmに対する振幅を制御することができる。該入力の方形波の振幅を変化させることにより温度を制御することも可能である。
【0066】
複数の加熱素子300を、チップ上に分散させて、発振器システムのほぼすべてのデバイスが同じ温度を持つようにし、これにより、発振器温度全体を制御することができる。可能な限り、すべての接続ワイヤが、電気力線(field line)に垂直になると共に、感応の高い回路ノードおよび信号から遠ざかって、不所望の電気的結合を回避するように、加熱素子300を配置して接続することができる。
【0067】
すべてのLCタンクが、発振器の構成要素の製造プロセスのばらつきに起因して、決定的な温度ヌル位相を持つというわけではない場合、温度ヌル位相のばらつきが生じる。したがって、温度ヌル位相に近づけるようLCタンク発振器を動作させるのに、トリミング(trimming, 調整)技術が必要とされる場合がある。所望の発振周波数の温度に伴うばらつきが低くなるほど(周波数安定性が良好なほど)、LC発振器タンクの位相動作は温度ヌル位相に対して近づくこととなり、また、これが近づくほど、トリミングはより高価なものとなりうる。トリミングのコストを低減するため、測定の数および複雑さは最小にされるべきであり、また、測定が行われる温度の数も最小にされるべきである。少ない測定のみを用いて常温で発振器をトリミングすること、すなわち最小のトリミングを必要とするようLCタンク発振器を設計することは、非常に経済的な価値があるものである。
【0068】
図16Aを参照すると、差動発振器(differential oscillator)において、意図的に不一致とされている一対のタンク10aおよび10bを用いる差動タンク10が示されている。たとえば、L1/C1の値およびL2/C2の値は、タンク10bのL1/C1の共振周波数が、タンク10aのL2/C2の共振周波数とわずかに異なるよう選択される。図16Bに示すように、そのようなタンク10の設計は、単一位相とは異なり、複数の位相の範囲にわたって拡張された温度ヌルを示している。差動タンク10の設計を、図8、図10〜15に示すような上記の発振器設計のうちの任意のものに用いることができ、製造プロセスのばらつきを補償する低い温度依存性をもたらす位相範囲内で動作させることができる。
【0069】
前述したように、図8、図10〜15に示される発振器設計のうちの任意のものを用いて、発振器がタンクの温度ヌルで動作したならば、温度にほぼ依存しない発振周波数を達成することができる。しかしながら、該ヌルの位置は、プロセスのばらつきに起因してシフトする(ずれる)おそれがある。このシフトは、アプリケーション(適用分野)次第によっては、許容可能な温度ばらつきを周波数において引き起こすけれども、いかなる温度トリミングも較正も必要とされない。この場合、初期の周波数精度の調節のために常温の較正のみが必要とされる。
【0070】
しかしながら、より要求の高い適用分野では、発振周波数の温度依存性は最小にされるべきであり、GNullで動作させるよう発振器を調整する温度トリミングを再び必要とし、タンクの温度ヌルでの動作を保証する必要があるかもしれない。このトリミング手順の長さおよび複雑さは、商品の試験コストを決定し、最終的な商品の全体のコストを決定する。
【0071】
GNullをLNullに関連づけることができれば、低コストのトリミングのための途が開かれる。なぜならば、GNullを見つけるのに、発振器を、いくつかの、もしくは多くの温度で動作させる(これは、コストがかかる)必要がないからである。たとえば、図17Aおよび17Bに示すように、2つの温度を用い、各温度において、タンクにおける位相シフトを変化させ、発振周波数を観察する。こうして、φNullが、2つの温度間で最小の周波数差分を持つ位相となる。同様に、2つ以上の温度を用いて、必要な温度依存性を達成することができる。
【0072】
図18Aおよび18Bを参照すると、限定されるものではないが、LCタンク型の発振器、水晶型の発振器、MEMS型の発振器、リング発振器、弛緩発振器を含む任意の発振器であって、温度に対する感度を有する発振器を、温度制御を備える発振器として見ることができ、よって、出力の周波数は、発振器温度に対する刺激に応じて変化するおそれがある。発振器温度は、図15Aを参照して述べたように、周波数fmおよび振幅Tmを持つ正弦波信号によって変調される場合には、狭帯域周波数変調(NBFM;Narrow Band Frequency Modulation)の近似を用いると、発振器のスペクトルが、図18Bに示すように、元の発振器周波数からfmだけオフセットされた所においてサイドトーン(side tone)を有するものとなって現れる。このサイドトーンの大きさは、変調振幅Tm、変調周波数fmおよび温度に対する発振器の感度BTに依存している。発振周波数の大きさに対するサイドトーンの大きさSrを、NBFM近似を用いて、以下のように導くことができる。
【数17】
【0073】
上記の分析から、任意の発振器の温度に対する発振周波数の感度BTは、上で定義したように、発振器出力のスペクトルの成分を観察することによって推定されることができる。1つまたは複数の温度における発振器パラメータに応答したBT変動の知識を用い、温度に対して所望のパフォーマンスを示すよう発振器を動作させるためのパラメータを選択することができる。この分析は、分析の容易さおよび簡単さのために正弦波の温度変調を前提としている。しかしながら、温度変調の形態は、正弦波の離散形(discrete)または連続体(continuum)によって分解または近似されることができる任意の形状をとることができ、こうして、発振周波数の温度感度BTを推定する際に上記分析を使用することができる。
【0074】
したがって、たとえば図15Aに示すようなフィードバック支援型の設計を用いて、周波数fmで、TOの周辺のTmによって温度を変調し、Srを測定することにより、単一の温度TO(たとえば、常温)でゼロまたはゼロに非常に近い感度を含む、特定の温度感度で動作するよう、発振器をトリミング(調整)することができる。発振器の最小の温度感度を見つけるため、トリミング制御を、最小の温度感度で発振器を動作させることに等価な最小値Srを探索するよう変更させることができる。たとえば、図15Aに示されるフィードバックループを使用して、常温におけるLNullを単に見つけることによりGNullを見つけることができる。ループによって得られた値を、その後の使用のために不揮発性メモリに格納することができる。
【0075】
図19は、本発明の実施形態に従う、温度に対する発振器の周波数感度を求めるための方法400を示す流れ図である。該方法は、ブロック410で始まり、ここで、温度励起信号が、発振器の動作温度に重畳される。ブロック420において、発振器の出力が復調され、温度励起信号に応答して発振器によって生成された周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成する。その後、ブロック430において、温度に対する発振器の周波数感度が求められる。たとえば、温度に対する発振器の周波数感度に比例したエラー信号を、周波数偏差信号および温度励起信号から生成することができる。
【0076】
上記の実施形態の任意のものに従って、温度ヌル位相において動作するよう設計された発振器は、限定されるものではないが、家庭用電子機器、産業機器、計算デバイス、システムインターフェース(たとえば、USB,シリアルATA(SATA:Serial Advance Technology Attachment)およびPCIエクスプレス等)、自動車、医療機器、航空電子機器、通信システムおよびその他の、多くの分野のアプリケーションに適用されることができる。さらに、上記実施形態のいずれかに従う温度ヌル位相で動作するよう設計された発振器は、スタンドアローンの低温度感度発振器として使用されることができ、また、システムオンチップ(SoC:System-on-chips)におけるドロップイン(drop-in)発振器として使用されることができ、また、ユーザがプログラム可能なFPGAチップ内に含めてもよい。
【0077】
ここで使用されているように、用語「実質的に(substantially)」および「およそ(approximately)」は、その対応する用語および(または)項目間の関連性について、産業的に容認される許容誤差(tolerance)を与えるためのものである。そのような産業的に容認される許容誤差は、1パーセント未満から50パーセントに及び、限定されるものではないが、構成要素の値、集積回路のプロセスの変動、温度の変動、立ち上がりおよび立ち下がり時間、および(または)熱雑音等に対応する。項目間のこのような関連性は、数パーセントの差から、相当大きい違いにまで及ぶ。また、ここで使用されているように、用語「〜に接続され(coupled to)」および(または)「結合(coupling)」は、項目間の直接的な接続(結合)だけでなく、介在する何らかの項目(たとえば、限定されるものではないが、何らかの構成要素、素子、回路、、モジュール等)を介して項目間を間接的に結合(接続)することも含む。間接的な接続(結合)については、該介在する項目は、信号の情報を何ら変更するものではなく、その電流レベル、電圧レベル、位相および(または)電力レベルを調節するにとどまる。また、推論結合(inferred coupling)(たとえば一つの要素が他の要素に、推論(inference)によって結合されること)は、上記の接続(結合)と同様に、直接および間接の接続(結合)を含むものである。さらに、用語「動作可能(operable)」は、或る項目が、1または複数の電力接続、入力、出力等を含んで、1つまたは複数の対応する機能を実行し、ひいては、1つまたは複数の他の項目に推論結合することを含むこともある。さらに、「関連付けられる(associated with)」は、直接および(または)間接の、分離した項目の結合および一つの項目が他の項目に埋め込まれることを含む。
【0078】
当該分野の当業者には認識されるように、本願で記載された革新的な概念を、本願の広い範囲にわたって修正ないし変更することができる。したがって、本発明の範囲は、上記述べた特定の例示的な技術に制限されるものではなく、特許請求の範囲によって定義されるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は概して発振器に関し、特にインダクタ−コンデンサ(LC)タンク型の発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子クロック生成は、従来、必要とされるクロックを生成するのに選択的に乗算または除算される、外部の水晶に基づく基準発振器に依拠してきた。クロックの主要な仕様には、目標とする周波数以外に、周波数の精度と安定性がある。周波数の精度は、電源および温度に対して目標周波数を維持する能力であり、これは通常、該目標周波数からのドリフトとしてパーセントまたはppmで表される。短期間の周波数安定性は、大きい周波数オフセットにおいて発振器の位相ノイズに依存する周期ジッタを用いて測定される。他方、長期間の安定性は、発振器の近接位相ノイズ(close-in phase noise)により影響を受ける。高Q素子(high-Q element)を用いた発振器は、典型的には、低位相ノイズの特性を持ち、よって、良好な周波数安定性を有しており、電源および温度に依存した発振器の振幅利得におけるばらつきに左右されにくい。
【0003】
たとえば、水晶発振器(XO)は、水晶の非常に高い品質係数(Q)に由来して、電源および温度全域にわたって非常に良好な周波数安定性および周波数精度を提供する高Q発振器である。しかしながら、水晶を含め、すべての共振子(振動子)が、温度に対して満足のいく性能を有しているわけではない。したがって、温度に起因した周波数におけるこの“シフト(ずれ)”を低減ないし補償するための回路および技術が必要とされる。温度補償型の水晶発振器(TCXO)は、典型的には、水晶の温度依存性を無効にするための温度依存性を持つ付加的なデバイスを備える。その結果、低温度依存性の発振周波数が得られる。
【0004】
しかしながら、複数の規格、増大する機能性、高データ速度、および、より小型化されて低コスト化されたメモリをサポートする必要性のために、電子システムについてこれまで増大してきた複雑性は、設計者を、増大するゲート密度から恩恵を受けるよう、ディープサブミクロン(deep submicron)のCMOS技術において、SoC(Systems-on-Chip)の開発を介して集積レベルを増大することに向かわせている。水晶発振器による基準クロックは、水晶が本質的にかさばるものであるために、サイズを変更したり集積するのが難しく、よって、電子システムについて可能なサイズおよびコストの低減化を制限してしまっている。
【0005】
高QのMEMS共振器および薄膜バルク音響共振器(FBAR)を使用する最近の取り組みは、高Q素子および特定要素向け集積回路(ASIC)を同じパッケージに集積する可能性を示してきた。しかしながら、高Q素子は、SoCにとって実用的でない特別なパッケージないし較正(キャリブレーション)を必要とすることがあるため、パッケージングによってもたらされる、パフォーマンスに影響するストレスが、厳しい障害としてなお存在している。このストレスは、共振器の温度挙動を変化させるおそれがあり、結果として、大きい周波数シフトをもたらすと共にエージングを加速させるおそれがある。したがって、典型的には、このような取り組みを緩和するように、特別なアセンブリおよびパッケージング技術が必要とされるが、これは、クロックを生成するコストを増大させる。同様の問題は、共振器の材料の機械的特性に依存する共振器にも存在し、これは、注意深い設計および製造手順やプロセスを必要とする。
【0006】
USBおよびSATAのようなアプリケーションのための設計上の要件(これは、それほどの周波数精度および安定性を必要としない)は、良好なジッタ性能を生成する適切なノイズ特性を有することができる、CMOSプロセスで利用可能な比較的低いQ素子を備える発振器を用いても満足されることができる。現在の取り組みでは、リング発振器、弛緩発振器、およびLC発振器が使用されている。しかしながら、これらの実現形態について報告されている周波数精度は、電源および温度に対して大きなドリフトがあり、よって、より厳密な精度および安定性を必要とするアプリケーションにとっては、これらの発振器は役に立たない。温度に対するドリフトを低減するための抑制策として、温度に対する調整(トリミング:trimming)が必要とされるが、これは、SoCにとってコストもかかり、実用的でもない。
【0007】
したがって、周波数の安定性およびジッタの要件を満たしつつ、CMOS技術における既存の最適化プロセスの手順に依拠した集積化の解決手法が利用可能になることが、価値あるものとして必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、実質的に、温度に対して非依存型のLC型発振器を提供する。この発振器は、温度ヌル位相(temperature null phase)に実質的に等しい位相でタンク発振を生成するLC発振器タンクを含む。該温度ヌル位相は、発振器の出力発振の周波数における温度変化に従う変動が最小化されるときの、LC発振器タンクの位相である。該発振器は、さらに、LC発振器タンクに接続された周波数安定化回路を含み、LC発振器タンクを、該温度ヌル位相で動作させる。
【0009】
たとえば、一実施形態において、温度ヌル位相は、ゼロに実質的に等しく、周波数安定化回路は、インダクタ(L)およびコンデンサ(C)の品質係数が、関心のある温度範囲にわたって実質的に等しくなることを可能にするよう選択された値を持つLC発振器タンク内の直列の容量性抵抗を含む。
【0010】
他の実施形態では、温度ヌル位相は、ゼロではなく、周波数安定化回路は、位相制御信号に基づいて、負の該温度ヌル位相に実質的に等しい位相を生成するよう動作する位相シフト回路を含む。
【0011】
さらに他の実施形態では、発振器は、第1の電流をLC発振器タンクに流すよう動作可能な第1の増幅器を含み、周波数安定化回路は、LC発振器タンクに接続されて、第2の電流をLC発振器タンクに流すよう動作可能な第2の増幅器を含む。第1の電流および第2の電流の間の位相シフトは、該第1の電流および第2の電流の間の比に基づいてLC発振器タンクにおける非ゼロ値の位相を生成する。この比は、発振器が、発振器が温度ヌル位相で動作するよう選択される。
【0012】
さらなる他の実施形態では、2つの発振器が、互いに直交位相(直角位相差)となるよう接続され、各発振器が、それぞれの温度ヌル位相において動作することを可能にする。各発振器は、組み合わされた電流をそれぞれのLC発振器タンクに流すよう接続された2つの増幅器を含み、該LC発振器タンクを、温度ヌル位相に実質的に等しくなるよう設定された非ゼロ位相で発振させる。この位相は、各増幅器によって流される電流間の比に基づいて設定される。さらなる実施形態では、自動増幅制御回路が、発振器のそれぞれの出力の振幅を測定し、発振振幅を制御するための制御信号を生成して、これら増幅器が、それらの線形領域で動作するようにし、これにより、発振器の温度依存性に悪影響を持つおそれのある高調波を低減する。
【0013】
他の実施形態では、周波数安定化回路は、さらに、発振出力およびフィードバック信号を受け取るよう接続されると共に、発振出力と該フィードバック信号の間の位相差を示す位相エラー出力信号を生成するよう動作可能な、位相検出器を有する位相ロックループ(PLL)または遅延ロックループ(DLL)を含む。ここで、位相エラー出力信号は、発振出力およびフィードバック信号が一定の位相だけシフトされているときには、ゼロに等しい。VCO(電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator))またはVCDL(電圧制御遅延線(Voltage Controlled Delay Line))は、フィルタリングされた位相エラー出力信号を受け取り、該フィードバック信号を生成する。VCO/VCDLに接続されたプログラム可能な結合回路は、フィードバック信号の一部を発振器に供給して、LC発振器タンクを、非ゼロの位相で発振させる。結合係数(coupling factor)は、発振器タンクが、温度ヌル位相に実質的に等しい位相を持つよう選択される。
【0014】
他の実施形態では、周波数安定化回路は、発振器の動作温度に重畳される温度励起信号を印加するよう動作可能な加熱素子と、出力発振を受け取るよう発振器に接続されると共に、温度励起信号に応答して発振器により生成される周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成するよう出力発振を復調するよう動作可能な復調器と、該周波数偏差信号および温度励起信号を受け取るよう接続されると共に、温度に対する発振器周波数の感度に比例したエラー信号を生成するよう動作可能な周波数エラー生成器と、該エラー信号および基準信号を受け取るよう接続されると共に、LC発振器タンクが温度ヌル位相で動作することが可能となるよう発振器を制御するための制御信号を生成するよう動作可能な比較器と、を備える。定常状態では、該エラー信号は、該基準信号に等しい平均値を持つ。
【0015】
本発明の実施形態は、さらに、LC型発振器を動作させるための方法を提供する。この方法は、該LC型発振器のLC発振器タンクの温度ヌル位相を求めることを含み、ここで、該温度ヌル位相は、LC型発振器の出力発振の周波数における温度変化に従う変動が最小であるときの位相である。該方法は、さらに、周波数安定化回路を提供し、温度ヌル位相に実質的に等しい位相でLC発振器タンクを動作させることと、該温度ヌル位相で発振するLC発振器タンクを備えるLC型発振器を動作させることと、を含む。
【0016】
以下の詳細な説明を添付の図面と共に参照することで、本発明をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態による、例示的なLC発振器タンクを示す回路図である。
【図2】本発明の実施形態による、例示的なLC発振器タンクの位相プロットを示す図図である。
【図3】ゼロ位相で動作するLC発振器タンクの温度に対する発振周波数を示す図である。
【図4】本発明の実施形態による、例示的なLC発振器タンクの温度ヌル位相を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による、温度ヌル位相で動作している間の、温度に対する周波数偏差を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による、温度ヌル位相で動作するLC発振器タンクを有する例示的に発振器を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態による、LC型発振器を動作させるための例示的な方法を示す流れ図である。
【図8】本発明の実施形態による、温度ヌル位相で動作する例示的なLC発振器タンクを示す回路図である。
【図9】本発明の実施形態による、非ゼロ位相においてLC型発振器を動作させるための方法を示す流れ図である。
【図10】本発明の実施形態による、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された例示的な発振器を示す図である。
【図11】本発明の実施形態による、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された他の例示的な発振器を示す図である。
【図12】本発明の実施形態による、最小の温度依存性で動作するよう設計された例示的な発振器を示す図である。
【図13】本発明の実施形態による、自動振幅制御(AAC)ブロックを備える例示的な発振器を示す図である。
【図14】本発明の実施形態による、温度ヌル位相においてLC発振器タンクを動作させるよう設計された、他の例示的な発振器を示す図である。
【図15A】本発明の実施形態による、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された、フィードバック支援型の発振器を示す図である。
【図15B】本発明の実施形態による、図15Aのフィードバック支援型発振器内で使用するための周波数エラー生成器の例示的な設計を示す図である。
【図15C】本発明の実施形態による、図15Aのフィードバック支援型発振器の安定化ポイントを示す図である。
【図15D】本発明の実施形態による、図15Aのフィードバック支援型発振器内で使用するための例示的な加熱回路を示す回路図である。
【図15E】本発明の実施形態による、図15Dで示される加熱回路から放出される例示的な温度信号を示す図である。
【図16A】本発明の実施形態による、拡張された温度ヌル位相範囲を生成するための例示的な差分LC発振器タンクを示す回路図である。
【図16B】本発明の実施形態による、図16Aの差分LC発振器タンクによって生成される例示的な拡張された温度ヌル位相範囲を示す図である。
【図17A】本発明の実施形態による、例示的な温度調整(トリミング)動作を示す図である。
【図17B】本発明の実施形態による、例示的な温度調整(トリミング)動作を示す図である。
【図18A】本発明の実施形態による、温度変調を用いない場合の、例示的な発振器出力スペクトルを示す図である。
【図18B】本発明の実施形態による、温度変調を用いた場合の、例示的な発振器出力スペクトルを示す図である。
【図19】本発明の実施形態による、温度に対する発振器の周波数感度を求めるための方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、発振器を構成する際に使用されるLC発振器タンク回路10は、インダクタンス(誘導)およびキャパシタンス(容量)のもととなる素子LおよびCから構成される。LC発振器タンク回路10における誘導性素子Lおよび容量性素子Cは、限定されるものではないが、オンチップの集積化されたインダクタ、接着ワイヤ(bond-wires)、金属―絶縁膜―金属(MiM)コンデンサ、金属のフィンガコンデンサ(Metal Finger Capacitor)、金属酸化物半導体(MOS)コンデンサ、セラミック共振器、マイクロ電気機械システム(MEMS)音叉共振器(tuning fork resonator)、MEMSワイングラス共振器(wine-glass resonator)、MEMS型の共振器、表面弾性波(SAW)およびバルク弾性波(BAW)デバイス等のような、様々な種類の共振器および受動素子から構成されることができる。
【0019】
理想的な純粋なインダクタおよびコンデンサの実現は、通常、有限の品質係数(quality factor)Qを持つという物理的な限界に起因して、可能ではない。今日まで、CMOS技術において集積化されたインダクタは、MEMS共振器および水晶に比べると、低いQ係数を持つ。インダクタにおける損失の源には、インダクタの金属の抵抗損(ohmic loss)rLおよび基板の抵抗損rSUBがある。これらの損失は、両方とも、通常温度に依存しており、したがって、インダクタの全体のインピーダンスおよびQは、温度に依存している。
【0020】
該タンクの集積化された容量性部分はまた、そのキャパシタンス値(容量値)の温度依存性だけでなく、有限の温度依存性のQをも被る。結果として、集積化されたLCタンクの物理的な実現は、該タンクのインピーダンスおよびQ係数の強い温度依存性を示し、これは、温度依存型のタンク共振周波数をもたらす。
【0021】
このように、LC発振器タンク10を用いて構成された発振器は、典型的には、該タンク損失を克服するための役割を担う増幅器を有する。発振器が発振を維持するため、バルクハウゼン(Barkhausen)の条件は、開ループ利得(ゲイン)が1より大きいこと、および位相がゼロに等しいことを必要とする。増幅器がゼロ位相をもたらすとすると、発振が起こるためには、LC発振器タンクのインピーダンスZTankは、ゼロ位相を持たなければならない。この位相条件を使用して、以下のように、発振周波数ωOSCが導かれる。
【数1】
【0022】
ここで、φTank=0の発振状態は、以下となる。
【数2】
【0023】
上記の式(1)〜(3)から、rLが温度に依存している場合には、発振周波数が温度に依存する、ということがわかる。温度に従うrLの線形の変動は、発振周波数のほぼ線形の変動となる。加えて、Cにおける温度変動は、温度依存性に強く寄与することとなる。
【0024】
このことは、図2にグラフで示されており、図2には、L、rLおよびCからなるタンクの複数の異なる温度について、位相φTankがプロットされている。ここで、rLの線形の温度依存性は、式(4)のように定義され、αは、rLの温度係数である。
【数3】
【0025】
発振周波数が、φTank=0とこれら位相プロットとの交点を用いて決定される点に注意されたい。温度に対する対応する発振周波数は、図3にプロットされており、これは、ゼロ位相で動作する典型的なLC発振器タンクにおいて、8000ppmの強い温度依存性を示している。
【0026】
図2における位相プロットを再び調べると、タンクの品質係数は温度と共に変化するので、位相プロットは温度と共に変化する。さらに、発振周波数において、温度が低いほどQは高くなり、したがって、温度が低いほど、負の傾斜が大きくなっている。よって、温度に従って、位相プロットの傾斜が変化することになり、これにより、これらのプロットの交点が得られる。
【0027】
該交点が同じ位相で生じるとき、温度に無感応なタンク動作ポイントが作られ、該タンクは、位相φNULLで温度が“ヌル(null、無意味)”の状態で動作するものと言うことができる。温度に対する位相プロットがちょうど同じ位相で交差するときに、この理想的な温度ヌル位相(temperature null phase)が生じる。タンクにおいて理想値φNULLの位相での発振は、温度全体にわたり、ずれ(偏差)がゼロの発振周波数となる。
【0028】
より現実的なタンクは、温度に対し、小さな周波数偏差を伴う温度ヌルを示す。これが、図4にグラフで示されており、ここで、発振の条件は、φTank=φNullであり、温度に対する対応発振周波数がプロットされている。図5に見られるように、温度ヌル位相で発振器を動作させることは、かなり低い温度依存性の発振周波数となる。たとえば、図5において、周波数ドリフトは、わずか290ppmである。これを、図3のゼロ位相における8000ppmの周波数ドリフトと比べると、温度ヌル位相における発振は、より安定した周波数を生成することがわかる。
【0029】
グローバルな温度ヌル(GNull:Global Temperature Null)を、温度範囲の中央TOにおいて、温度に対する発振周波数の変化dfOSC/dTが非常に小さいもしくは変化がゼロの温度範囲ΔTにわたり、最小の周波数偏差Δfをもたらす位相動作ポイントφGNullとして、定義することができる。温度ヌルの品質を計る尺度は、温度に対する発振周波数偏差である。タンクの温度ヌルの良度指数(FOMM:Figure of Merit)は、以下のように定義されることができる。
【数4】
【0030】
ここで、fToは、TOにおける発振周波数である。FOMの値が小さくなるほど、該ヌルの品質は良好になる。完全なヌルは、FOM=0となる。
【0031】
ローカルな温度ヌル(LNull:Local Temperature Null)を、dfOSC/dT=0の位相動作ポイントφLNullとして定義されることができる。代替的に、LNullを、温度T+δの位相プロットとT−δの位相プロットの交点というように、温度Tにおいて定義されることができる。ここで、δは、極小の値である。
【0032】
温度TOに対するGNullの発振周波数ωGNullは、温度(TO+ΔT)と(TO−ΔT)における2つの位相カーブの交点を見つけることによって導出されてもよい。rLの線形温度依存性を持つLC発振器タンクについて、GNullにおける位相および周波数は、次のようになる。
【数5】
【0033】
上記の式(6)および(7)から、ωGNull>ωoであり、ωGNullがΔTの弱い関数(weak function)であることがわかる。さらに、φLNullは、負の値であり、かつΔTの非常に弱い関数であり、これは、以下のように、TO(ΔT=0)におけるLNullが、(2ΔT)の温度範囲のGNullの中央であることを示す。
【数6】
【0034】
このように、関心のある温度範囲のLNullポイントを用いてGNullを位置付けることが可能である。
【0035】
GNullのFOMは、一般に、タンクのQが増えるにつれ、またインダクタの抵抗(ohmic)損の温度係数αが減少するようにつれ、向上する。しかしながら、温度依存の能動性のキャパシタンス(active capacitance)および(または)受動性のキャパシタンス(passive capacitance)を用いることによって、GNullのFOMを向上させることが可能である。たとえば、再び図1を参照すると、コンデンサCは、温度依存型のコンデンサであることができる。発振周波数は、タンクのインピーダンスに依存しており、その容量性の部分は、キャパシタンスの二次もしくはそれ以上に高い次数の温度依存性(second order or higher temperature dependence)が、関心のある温度範囲にわたって全体的な周波数偏差を減少させるよう働くことができるという点で、非常に効果的である。
【0036】
図6を参照すると、LC発振器5は、従来のように、LC発振器タンク10に対してゼロ位相に非常に近いところで動作するよう設計されており、よって、温度ヌルを通常逃してしまっている。バルクハウゼンの条件を満たすため、図6に示すように、本発明の実施形態では、周波数安定化回路20を使用して、LC発振器タンク10が温度ヌル位相で発振しつつ、LC発振器5が、ゼロの開ループ位相で発振するのを可能にする。たとえば、一実施形態では、周波数安定化回路20をLC発振器タンク10に含めて、温度ヌル位相をゼロ近くに動かす。他の実施形態では、周波数安定化回路20は、LC発振器タンク10を、非ゼロ値の温度ヌル位相で発振させると共に、該温度ヌル位相と同じ大きさで逆向きの位相を提供して、LC発振器5が、実際にゼロの開ループ位相で発振するのを可能にし、これによりバルクハウゼンの条件を満たすようにする。周波数安定化回路20はまた、較正/トリミングの動作中に、および(または)リアルタイムの動作中に、温度ヌル位相にLC発振器タンクの位相を設定するよう動作するコントローラを含むことができる。LC発振器タンク10および周波数安定化回路20の様々な形態については、図8、図10〜15を参照して後述される。
【0037】
図7は、本発明の実施形態に従う、温度非依存型のLC型発振器を動作させるための例示的な方法を示す流れ図である。ブロック110において、LC発振器タンクが提供され、その温度ヌル位相が推定される。この温度ヌル位相は、温度変化に対する周波数変動が最小となるときの位相である。ブロック120において、周波数安定化回路が提供され、発振器がゼロの開ループ位相を持つように、LC発振器タンクを、温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振させる。ブロック130において、温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振するLC発振器タンクを用い、LC型発振器を動作させる。たとえば、一実施形態において、LC型発振器をトリミングして、温度ヌル位相に実質的に等しい位相を選択し、特定の温度範囲にわたって実質的に温度に非依存の発振周波数を生成することができる。
【0038】
図8を参照すると、従来の発振器の実現形態を使用するとともに、温度ヌルの利益を享受するため、LC発振器タンク10を、φGNull〜0を持つよう設計することができる。これは、関心のある温度範囲にわたって、インダクタの品質係数QLおよびコンデンサの品質係数QCを等しくすることにより達成されることができる。図8に示すように、直列の抵抗rCが、周波数安定化回路20として、LC発振器タンク10に追加され、インダクタLおよびコンデンサCの両方に、有限の品質係数を持たせる。直列の抵抗rLおよびrCの両方が温度依存型であるとすると、φTank=0の位相条件を用いた発振周波数は、以下のようになる。
【数7】
【0039】
CおよびLが温度に非依存である場合、上記式を調べると、関心のある温度範囲にわたってQLおよびQCが等しければ、発振周波数が、ゼロの位相において、LC発振器タンク10の固有周波数(natural frequency)となり、温度に非依存であることがわかる。これは、温度ヌル(GNull)をゼロ位相に動かすことと等価である。これを達成するため、rCは、
【数8】
を満たすよう選択される。QL=QCならば、ゼロ位相における温度ヌルは、rL=rCで維持される。Cおよび(または)Lが温度依存ならば、rCの値は、ゼロ位相周辺のGNullとなるよう選択される。
【0040】
図9は、本発明の実施形態に従う、非ゼロ位相でLC型発振器を動作させるための方法200を示す流れ図である。図9において、LC発振器タンクの温度ヌル位相がブロック210で推定されると、ブロック220において、周波数安定化回路がLC発振器内に提供され、発振器の開ループ伝達関数に、LC発振器タンクの該推定された温度ヌル位相とは逆の位相を取り入れる。その後、ブロック230において、ゼロの開ループ位相のバルクハウゼン位相条件を違反することなく、LC発振器タンクが温度ヌル位相で発振するように、LC型発振器を動作させる。たとえば、発振器のゼロの開ループ位相のために、LC型発振器内の増幅器を、定常状態において、−φGNull(グローバルヌル位相の負の値)に等しい位相を提供するよう設計することができる。
【0041】
図10は、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相においてLC発振器タンク10を動作させるよう設計された、例示的なLC型発振器5を示す図である。前述したように、温度ヌル位相で動作することにより、温度に対して非常に高い安定性を有した発振器5とすることができる。温度ヌルで(温度が無意味な状態で)動作する発振器5を実現するため、周波数安定化回路20を提供して、LC発振器タンク10を温度ヌル位相で動作しつつ、LC発振器5を、ゼロの開ループ位相で発振させることができる。
【0042】
周波数安定化回路20は、増幅器(gmトランスコンダクタ)30および位相シフト回路(“ejφ”ブロック)40を有する。増幅器30は、位相シフト回路40と組み合わさって、定常状態において、GNullの負の値(−φGNull)に等しい位相を提供するよう設計されている。さらに、増幅器30および位相シフト回路40は、生成された該位相が低い温度依存性を有するよう設計されている。例示的な動作において、位相シフト回路40は、増幅器30の出力の位相をシフトし、これは、LC発振器タンク10を、タンクの温度ヌル位相において、または該ヌル位相近くで、非ゼロの位相で発振させる。たとえば、増幅器が十分な利得を持っていれば、LC発振器タンク10における位相が、位相シフト回路40によって生成される位相に大きさが等しくかつ逆である場合の周波数で、LC発振器タンク10は発振することとなる。
【0043】
位相シフト回路40は、最適な位相動作ポイントに可能な限り近づくようにするため、位相制御信号φControlを介して、位相の正確な生成を可能にするとともに、位相の大きさを制御することができる。位相制御信号φControlを使用して、位相動作ポイントを調整するための較正/トリミングの動作中に、および(または)位相動作ポイントの精細な調整を行うためのリアルタイムの動作中に(すなわち、発振器5を含むデバイスがユーザによって使用中であるときに)、固定の位相動作ポイントを設定することができる。たとえば、コントローラ/プロセッサは、発振器5の出力を測定して、これに応答して位相制御信号φControlを生成することができる。位相制御の精度は、最終的な位相動作ポイントがグローバルヌルにどれほど近づけるかを決める。
【0044】
こうして、図10に示すように、能動回路(gmトランスコンダクタ30および位相シフト回路40)は、発振周波数におけるタンクのインピーダンスが、以下の式のようになるように、同じ大きさの、かつ逆の位相を提供する。
【数9】
【0045】
したがって、位相シフトφが、タンクのφNullに近ければ、温度にほぼ非依存の周波数での動作が達成される。温度ヌルに可能な限り近いところで動作するよう発振器を調整するため、位相シフト回路40を、位相を制御する機能を備えた能動位相シフタ(shifter)および(または)受動位相シフタを用いて実現することができる。
【0046】
図11は、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された、他の例示的な発振器5を示す図である。図11の設計において、位相シフトθを持つ、2つの等しくない電流(ここで、比=mとする)が、タンク10に流され、該2つの構成要素の比mに依存する位相シフトを持つ総電流Itotalを生成する。Itotalの組み合わされた位相シフトφは、LC発振器タンク10を、非ゼロの位相で発振させる。比mおよび位相シフトθは、LC発振器タンク10を、該タンクの温度ヌル位相において、もしくは該ヌル位相近くで発振させるように選択される。
【0047】
たとえば、図11に示されるように、第1の増幅器(gmトランスコンダクタ)30aは、電流I1をタンク10に流すと共に、第2の増幅器(m*gmトランスコンダクタ)30b(これは、周波数安定化回路20を形成する)は、第2の電流m*I1(正確には、以下の(a)のように表される)をタンク10に流す。LC発振器タンク10において生成される結果としての位相は、I1およびI2の比mおよびI2の位相θの関数である。たとえば、m=1およびθ=90度であれば、LC発振器タンクを流れる電流の結果としての位相は、−45度になるであろう。したがって、45度より小さい大きさの位相シフトを生成するため、典型的には、比mを1より小さく、位相シフトθを90度より小さくすることができる。
【数10】
【0048】
増幅器30bに接続される電圧(以下の(b)のように表される)を、弱い温度依存を持つ任意の手法を用いて生成することができる。たとえば、複数の位相を生成するよう設計された複数の接続された発振器(たとえば、N個の同一の発振器)は、所望の電圧(以下の(b)のように表される)を生成することができる。一例として、2つのみの発振器を必要とする直交位相(θ=90°)の使用を介して、該所望の電圧を生成することができる。
【数11】
【0049】
直交位相を用いる一実施形態が、図12に示される。図12において、発振器5は、互いに直交に発振する、2つのほぼ同一の発振器タンク10aおよび10bを有する。増幅器30bおよび30cは、ほぼ同じトランスコンダクタンスgmを生成すると共に、位相シフトされたトランスコンダクタンス(m*gm)をそれぞれタンク10aおよび10bに提供する。利得ブロック60は、180°の位相シフトを生成し、2つのタンク10aおよび10bを、互いに90°だけ位相がずれた状態にする。したがって、各タンク10aおよび10bにおける全体の位相シフトφは、単なる結合比(coupling ratio)mの関数であり、以下のように表される。
【数12】
【0050】
自動振幅制御(AAC)ブロック50は、発振器5の出力Vおよび下記の(c)のように表されるVの動作振幅を検知し、ループ利得がちょうど1となるよう連続的に調整し、増幅器30a〜30dは、それらの線形領域で動作する。これらの詳細は、図13を参照して説明される。
【数13】
【0051】
比mを変動させることは、結合増幅器30aおよび30bのバイアス電流を変倍すること、および/または、能動デバイス(たとえば、MOSトランジスタの差動対)の増幅器30aおよび30d内の大きさ(dimension)を変倍することで行われることができる。たとえば、比mを変倍することは、性能についての小さい不一致および温度に対する安定した温度非依存の結合比率を維持しつつ、増幅器30aおよび30d内のオフ/オンデバイスを切り換えることにより行われることができ、このことは、2つのタンク10aおよび10bにおいて一定の位相を生成する。比mの設定を、発振器のトリミング中に行うことができ、発振器の動作中に固定に維持することができる。これは、アナログまたはデジタル手法を用いて達成されることができる。たとえば、必要な比mの設定を表すデジタルワードを、不揮発性メモリを用いてチップ上に格納し、発振器のライフタイム中の将来の使用のために利用可能とすることができる。AACブロック50が、すべてのトランスコンダクタンス増幅器30a〜30dを、該すべての4つの増幅器がトラッキングゲイン(tracking gain)を確実に持つように制御すべきであり、これにより、効果的な結合比mを、動作中に一定に維持することができる。
【0052】
ヌルに影響する温度依存性の2つの主な源は、(1)温度依存である能動回路の寄生インピーダンス、および(2)タンク10における電流の高調波成分、である。能動回路の寄生容量(線形または非線形)は、温度、電源および出力電圧の揺れ(swing)に従って、周波数シフトを引き起こすおそれがある。さらに、増幅器30の出力抵抗は、タンクの効果的な品質係数を低減し、よって、タンクのFOMを低減するおそれがある。寄生のこのような影響を、発振器5の注意深い設計によって最小にすることができる。たとえば、タンク10の容量(キャパシタンス)を、能動回路の寄生容量より十分大きくなるよう設計し、タンクの容量の温度依存性が支配的なものであって、寄生容量は、温度ヌルの位置や品質にほとんど影響を持たないようにすることができる。さらに、出力抵抗を、タンクの品質係数の低下(これは、該ヌルの位置を変化させるだけでなく、該ヌルの品質を劣化させることがある)を回避するために可能な限り高くすることができる。
【0053】
発振器は、本来、正(ポジティブ)のフィードバックループを持つので、十分な利得を持つ従来の発振器における発振の振幅は、増幅器の非線形性が振幅の増大に制限を与えるまで、増大することとなる。定常状態において、発振器の出力は、その大きな信号利得が1であるように多くの高調波を含んでおり、よって振幅は一定である。しかしながら、能動回路における何らかの非線形性は、高調波をタンク10に流し、これにより、コンデンサとインダクタの間にエネルギーの不均衡を引き起こし、よって、以下に示す式で与えられるように、発振周波数を低くして均衡を回復しようとする。
【数14】
【0054】
ここで、ωosは、高調波を有しない発振周波数であり、Inは、タンクにおける電流のn番目の高調波である。タンクに流された高調波成分が、温度、電源、および発振振幅に依存しているので、発振周波数もまた変動する。高調波の影響を、発振器を発振の限界利得(critical gain、限界ゲイン)の状態で動かすことにより最小にすることができ、これにより、過剰な利得が、発振の振幅を、増幅器の線形領域を超えるレベルにまで増大させてしまうことを防ぐことができ、よって、非常に低い高調波成分を有する発振とすることができる。
【0055】
図13を参照すると、ループ利得がちょうど1になるよう連続的に調節するよう設計された例示的なAACブロック50が示されており、増幅器30は、その線形領域において動作している。AACブロック50は、発振の振幅を測定する振幅検知回路52、該検知した振幅を、基準電圧Vrefと比較する比較回路54、比較回路54の出力に基づいて増幅器30の利得を制御する信号を生成するコントローラ56とを含む。定常状態において、発振の振幅は、増幅器30の線形領域の限界値より小さく、かつ基準電圧の変倍された値に等しいべきである。その一方で、増幅器30の利得は、発振の限界利得の状態で動作するよう設定される。
【0056】
図14は、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相でLC発振器タンクを動作させるよう設計された発振器システム15を示す。図14の発振器システム15は、一定の位相θだけその入力(複数)がシフトされるときにゼロの位相エラー出力を生成する位相検出器62を備える位相ロックループ(PLL)または遅延ロックループ(DLL)60を含む。たとえば、位相検出器62は、XORゲートまたはミキサ(アナログの実現形態について)であることができ、定常状態において、直交となっている(すなわち、θ=90°)入力(複数)を持つ。
【0057】
PLL/DLL60は、さらに、ループフィルタ64と、PLL電圧制御発振器(VCO)66(PLLとして動作するとき)または電圧制御遅延線(VCDL)68(DLLとして動作するとき)とを有する。PLLとして動作するとき、基準発振器5の出力(V)は、位相検出器62への入力となり、PLL60が、PLL VCO66の位相を基準発振器5に対してロックし、定常状態において、PLL VCO66および基準発振器5が、同じ周波数を持ち、位相においてθだけシフトされているようにする。こうして、PLL60は、PLL VCO66を、基準発振器5の周波数を追跡(トラッキング)させ、よって、2つの発振器5および66は、同じタンクを持たなくても、常に同じ周波数を持つ。DLLとして動作するときには、発振器5とDLL60の間の位相関係は、VCDL68を用いて達成される。
【0058】
PLL VCO66またはVCDL68の出力(下記の(d)のように表される)は、フィードバック信号として、位相検出器62の入力となり、また、プログラム可能な結合回路70への入力となる。プログラム可能結合回路70は、該PLL/DLLの出力(これは、(d)のように表される)の一部(下記の(e)のように表される)を、基準発振器5に結合し、基準発振器5が、温度ヌルで動作することを可能にする。AACブロック50はまた、2つの発振器5および66の間の結合比mを、温度に対して一定に維持するために、該発振器5および66に接続される。このように、基準発振器5は、必要とされる温度ヌル位相で動作すると共に、低い温度依存性を持つよう動作することができる。
【数15】
【0059】
図15Aは、本発明の実施形態に従う、温度ヌル位相でLC発振器タンク10を動作させるよう設計されたフィードバック支援型発振器5を示す。図15Aに示される発振器システム15は、発振器5の、図8に示すようなLCタンク10および(または)図10に示すような能動回路(すなわち、位相シフト回路40と組み合わさった増幅器30)を調整し、温度ヌル位相にタンクの位相シフトを調節する。
【0060】
発振器システム15は、発振器が、温度に対して特定の感度状態にあるときに安定するフィードバックループを用いて、GNullにおける動作を自動化する。動作温度に重畳される温度励起信号(temperature excitation signal)が、発振器5に印加される。たとえば、温度励起信号は、振幅Tmを持ち、周波数fmの正弦波であることができ、動作温度Topに重畳される。発振器5が温度に感応する場合には、発振器5からの発振25の出力は、温度励起信号に関連する温度が変化するに従って変化し、fmによって周波数変調された発振25となる。
【0061】
発振器5の出力25は、FM復調器75への入力となり、これは、発振周波数偏差を検知する。周波数エラー生成器(FEG:Frequency Error Generator)80は、FM復調器75の出力(周波数偏差)78および温度変動を、温度に対する発振周波数の感度(Δfosc/ΔT)に比例したエラー信号FdTerrに変換する。エラー信号FdTerrおよび基準信号FdTrefは、比較ブロック85において比較され、その結果は、積分器90において積分され、その後、ローパスフィルタ95によってローパスフィルタリングされる。最終的な制御信号(Vctrl)98は、その後、発振器5の動作を制御するのに用いられ、これにより、LCタンク10は、温度ヌル位相で動作することが可能となり、または、位相シフトの直接制御を介して、またはrCを制御することによって、該ヌルをゼロ位相にシフトすることが可能となる。
【0062】
FEG80の実現形態の一例が、図15Bに示されている。FEG80は、ミキサ82、利得ステージ84およびトランスコンダクタ86を含む。ミキサ82は、入力として、FM復調器の出力(周波数偏差)および温度励起信号(温度偏差)を受け取り、Δfosc/ΔTに比例した平均値でエラー信号FdTerrを生成する。図15Bの周波数プロットで示されるように、生成されたエラー信号FdTerrは、温度の上昇に従って、周波数偏差が正であれば平均値を持ち、周波数偏差が負であれば、その符号が逆となる。
【0063】
定常状態において、エラー信号FdTerrは、基準値FdTrefに等しい平均値を持つ。基準信号がゼロならば、フィードバックループは、エラー信号がゼロ平均を持つときに定常状態に達する。ゼロのエラー信号は、Δfosc/ΔT=0と等価であるので、これは、発振器を、動作温度のLNullで動作させるよう調整することと等価である。図15Cに示すように、基準信号が、基準温度Trにおいてゼロ値を持つ温度の関数であるよう設計されている場合には、ループは、以下の場合に安定化する。
【数16】
【0064】
全体的に、ループは、発振器が、温度TrでLNullを持つGNullで動作するよう設計される。一定値βは、ループ利得および温度に対する目標発振周波数の許容値に依存している。
【0065】
図15Dおよび図15Eを参照すると、発振器の温度を変調するため、集積化された電圧制御型の加熱素子300を使用することができ、これは、発振器5を局所的に加熱することができる。加熱素子の一例が図15Dに示されている。加熱素子300は、NMOSトランジスタ310および集積化されたポリシリコン抵抗320を含む。図15Eに示すように、入力制御電圧は、所望の変調周波数におけるレールツーレール(rail-to-rail)の信号であることができ、該入力信号のデューティ信号を変化させて、温度変調Tmに対する振幅を制御することができる。該入力の方形波の振幅を変化させることにより温度を制御することも可能である。
【0066】
複数の加熱素子300を、チップ上に分散させて、発振器システムのほぼすべてのデバイスが同じ温度を持つようにし、これにより、発振器温度全体を制御することができる。可能な限り、すべての接続ワイヤが、電気力線(field line)に垂直になると共に、感応の高い回路ノードおよび信号から遠ざかって、不所望の電気的結合を回避するように、加熱素子300を配置して接続することができる。
【0067】
すべてのLCタンクが、発振器の構成要素の製造プロセスのばらつきに起因して、決定的な温度ヌル位相を持つというわけではない場合、温度ヌル位相のばらつきが生じる。したがって、温度ヌル位相に近づけるようLCタンク発振器を動作させるのに、トリミング(trimming, 調整)技術が必要とされる場合がある。所望の発振周波数の温度に伴うばらつきが低くなるほど(周波数安定性が良好なほど)、LC発振器タンクの位相動作は温度ヌル位相に対して近づくこととなり、また、これが近づくほど、トリミングはより高価なものとなりうる。トリミングのコストを低減するため、測定の数および複雑さは最小にされるべきであり、また、測定が行われる温度の数も最小にされるべきである。少ない測定のみを用いて常温で発振器をトリミングすること、すなわち最小のトリミングを必要とするようLCタンク発振器を設計することは、非常に経済的な価値があるものである。
【0068】
図16Aを参照すると、差動発振器(differential oscillator)において、意図的に不一致とされている一対のタンク10aおよび10bを用いる差動タンク10が示されている。たとえば、L1/C1の値およびL2/C2の値は、タンク10bのL1/C1の共振周波数が、タンク10aのL2/C2の共振周波数とわずかに異なるよう選択される。図16Bに示すように、そのようなタンク10の設計は、単一位相とは異なり、複数の位相の範囲にわたって拡張された温度ヌルを示している。差動タンク10の設計を、図8、図10〜15に示すような上記の発振器設計のうちの任意のものに用いることができ、製造プロセスのばらつきを補償する低い温度依存性をもたらす位相範囲内で動作させることができる。
【0069】
前述したように、図8、図10〜15に示される発振器設計のうちの任意のものを用いて、発振器がタンクの温度ヌルで動作したならば、温度にほぼ依存しない発振周波数を達成することができる。しかしながら、該ヌルの位置は、プロセスのばらつきに起因してシフトする(ずれる)おそれがある。このシフトは、アプリケーション(適用分野)次第によっては、許容可能な温度ばらつきを周波数において引き起こすけれども、いかなる温度トリミングも較正も必要とされない。この場合、初期の周波数精度の調節のために常温の較正のみが必要とされる。
【0070】
しかしながら、より要求の高い適用分野では、発振周波数の温度依存性は最小にされるべきであり、GNullで動作させるよう発振器を調整する温度トリミングを再び必要とし、タンクの温度ヌルでの動作を保証する必要があるかもしれない。このトリミング手順の長さおよび複雑さは、商品の試験コストを決定し、最終的な商品の全体のコストを決定する。
【0071】
GNullをLNullに関連づけることができれば、低コストのトリミングのための途が開かれる。なぜならば、GNullを見つけるのに、発振器を、いくつかの、もしくは多くの温度で動作させる(これは、コストがかかる)必要がないからである。たとえば、図17Aおよび17Bに示すように、2つの温度を用い、各温度において、タンクにおける位相シフトを変化させ、発振周波数を観察する。こうして、φNullが、2つの温度間で最小の周波数差分を持つ位相となる。同様に、2つ以上の温度を用いて、必要な温度依存性を達成することができる。
【0072】
図18Aおよび18Bを参照すると、限定されるものではないが、LCタンク型の発振器、水晶型の発振器、MEMS型の発振器、リング発振器、弛緩発振器を含む任意の発振器であって、温度に対する感度を有する発振器を、温度制御を備える発振器として見ることができ、よって、出力の周波数は、発振器温度に対する刺激に応じて変化するおそれがある。発振器温度は、図15Aを参照して述べたように、周波数fmおよび振幅Tmを持つ正弦波信号によって変調される場合には、狭帯域周波数変調(NBFM;Narrow Band Frequency Modulation)の近似を用いると、発振器のスペクトルが、図18Bに示すように、元の発振器周波数からfmだけオフセットされた所においてサイドトーン(side tone)を有するものとなって現れる。このサイドトーンの大きさは、変調振幅Tm、変調周波数fmおよび温度に対する発振器の感度BTに依存している。発振周波数の大きさに対するサイドトーンの大きさSrを、NBFM近似を用いて、以下のように導くことができる。
【数17】
【0073】
上記の分析から、任意の発振器の温度に対する発振周波数の感度BTは、上で定義したように、発振器出力のスペクトルの成分を観察することによって推定されることができる。1つまたは複数の温度における発振器パラメータに応答したBT変動の知識を用い、温度に対して所望のパフォーマンスを示すよう発振器を動作させるためのパラメータを選択することができる。この分析は、分析の容易さおよび簡単さのために正弦波の温度変調を前提としている。しかしながら、温度変調の形態は、正弦波の離散形(discrete)または連続体(continuum)によって分解または近似されることができる任意の形状をとることができ、こうして、発振周波数の温度感度BTを推定する際に上記分析を使用することができる。
【0074】
したがって、たとえば図15Aに示すようなフィードバック支援型の設計を用いて、周波数fmで、TOの周辺のTmによって温度を変調し、Srを測定することにより、単一の温度TO(たとえば、常温)でゼロまたはゼロに非常に近い感度を含む、特定の温度感度で動作するよう、発振器をトリミング(調整)することができる。発振器の最小の温度感度を見つけるため、トリミング制御を、最小の温度感度で発振器を動作させることに等価な最小値Srを探索するよう変更させることができる。たとえば、図15Aに示されるフィードバックループを使用して、常温におけるLNullを単に見つけることによりGNullを見つけることができる。ループによって得られた値を、その後の使用のために不揮発性メモリに格納することができる。
【0075】
図19は、本発明の実施形態に従う、温度に対する発振器の周波数感度を求めるための方法400を示す流れ図である。該方法は、ブロック410で始まり、ここで、温度励起信号が、発振器の動作温度に重畳される。ブロック420において、発振器の出力が復調され、温度励起信号に応答して発振器によって生成された周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成する。その後、ブロック430において、温度に対する発振器の周波数感度が求められる。たとえば、温度に対する発振器の周波数感度に比例したエラー信号を、周波数偏差信号および温度励起信号から生成することができる。
【0076】
上記の実施形態の任意のものに従って、温度ヌル位相において動作するよう設計された発振器は、限定されるものではないが、家庭用電子機器、産業機器、計算デバイス、システムインターフェース(たとえば、USB,シリアルATA(SATA:Serial Advance Technology Attachment)およびPCIエクスプレス等)、自動車、医療機器、航空電子機器、通信システムおよびその他の、多くの分野のアプリケーションに適用されることができる。さらに、上記実施形態のいずれかに従う温度ヌル位相で動作するよう設計された発振器は、スタンドアローンの低温度感度発振器として使用されることができ、また、システムオンチップ(SoC:System-on-chips)におけるドロップイン(drop-in)発振器として使用されることができ、また、ユーザがプログラム可能なFPGAチップ内に含めてもよい。
【0077】
ここで使用されているように、用語「実質的に(substantially)」および「およそ(approximately)」は、その対応する用語および(または)項目間の関連性について、産業的に容認される許容誤差(tolerance)を与えるためのものである。そのような産業的に容認される許容誤差は、1パーセント未満から50パーセントに及び、限定されるものではないが、構成要素の値、集積回路のプロセスの変動、温度の変動、立ち上がりおよび立ち下がり時間、および(または)熱雑音等に対応する。項目間のこのような関連性は、数パーセントの差から、相当大きい違いにまで及ぶ。また、ここで使用されているように、用語「〜に接続され(coupled to)」および(または)「結合(coupling)」は、項目間の直接的な接続(結合)だけでなく、介在する何らかの項目(たとえば、限定されるものではないが、何らかの構成要素、素子、回路、、モジュール等)を介して項目間を間接的に結合(接続)することも含む。間接的な接続(結合)については、該介在する項目は、信号の情報を何ら変更するものではなく、その電流レベル、電圧レベル、位相および(または)電力レベルを調節するにとどまる。また、推論結合(inferred coupling)(たとえば一つの要素が他の要素に、推論(inference)によって結合されること)は、上記の接続(結合)と同様に、直接および間接の接続(結合)を含むものである。さらに、用語「動作可能(operable)」は、或る項目が、1または複数の電力接続、入力、出力等を含んで、1つまたは複数の対応する機能を実行し、ひいては、1つまたは複数の他の項目に推論結合することを含むこともある。さらに、「関連付けられる(associated with)」は、直接および(または)間接の、分離した項目の結合および一つの項目が他の項目に埋め込まれることを含む。
【0078】
当該分野の当業者には認識されるように、本願で記載された革新的な概念を、本願の広い範囲にわたって修正ないし変更することができる。したがって、本発明の範囲は、上記述べた特定の例示的な技術に制限されるものではなく、特許請求の範囲によって定義されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器システムであって、
温度ヌル位相に実質的に等しい位相でタンク発振を生成するよう動作可能なLC発振器タンクであって、該温度ヌル位相は、発振器システムの出力発振の周波数における温度変化に対する変動が最小化されるときの位相である、LC発振器タンクと、
前記LC発振器タンクにフィードバックループで接続された増幅器と、
前記発振器タンクに接続された周波数安定化回路であって、該発振器システムの出力発振が実質的にゼロの開ループ位相を持つように、前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相で前記LC発振器タンクを発振させるよう動作可能な周波数安定化回路と、
を備える、発振器システム。
【請求項2】
前記温度ヌル位相は、ゼロに実質的に等しく、
前記LC発振器タンクは、
誘導性素子と、
前記誘導性素子に並列に接続された容量性素子と、
前記誘導性素子に直列に接続された誘導性抵抗と、
前記容量性素子に直列に接続された容量性抵抗であって、前記周波数安定化回路を形成する容量性抵抗と、を備え、
前記容量性抵抗の値は、関心のある温度範囲にわたって、前記誘導性素子の品質係数および前記容量性素子の品質係数が実質的に等しくなるよう選択される、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項3】
前記LC発振器タンクは、さらに、少なくとも二次の温度依存性を有して、関心のある温度範囲にわたって前記LC発振器タンクの周波数偏差を低減するキャパシタンスを含んでおり、該キャパシタンスは、能動キャパシタンスおよび受動キャパシタンスの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項4】
前記周波数安定化回路はさらに、前記LC発振器タンクと、位相制御信号に基づいて負の前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相を生成するよう動作する増幅器と、に接続された位相シフト回路を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項5】
さらに、
前記発振器タンクおよび前記増幅器に接続され、前記出力発振の振幅を測定し、該振幅を基準電圧と比較し、該比較に応じて、前記増幅器の利得を制御するための制御信号を生成するよう動作可能な自動振幅制御回路を備え、
前記制御信号は、前記出力発振の振幅が、該増幅器の線形領域の限界値を超えるのを防ぐように、発振の限界利得の状態で動作するよう該増幅器の利得を設定する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項6】
前記増幅器は、第1の増幅器であり、前記LC発振器タンクに第1の電流を流すよう動作可能であり、
前記周波数安定化回路は、さらに、
前記LC発振器タンクに接続されて、該LC発振器タンクに第2の電流を流すよう動作可能な第2の増幅器を備え、
前記第1の電流および前記第2の電流の間の位相シフトは、前記温度ヌル位相に実質的に等しい非ゼロ位相を前記LC発振器に生成する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項7】
前記第1の電流および前記第2の電流は等しくなく、前記位相の前記非ゼロ値は、該第1の電流および該第2の電流の間の大きさの比および該第1の電流および該第2の電流の間の位相シフトに依存している、
請求項6に記載の発振器システム。
【請求項8】
前記LC発振器タンク、前記第1の増幅器および前記第2の増幅器は、第1の発振器および第2の発振器を備えており、
該第2の発振器は、さらに、
温度変化に対する周波数の変動が最小になるときの第2の温度ヌル位相を持つ第2のタンク発振を生成するよう動作可能な第2のLC発振器タンクと、
前記第2の発振器タンクにフィードバックループで接続され、該第2の発振器タンクに第3の電流を流すよう動作可能な第3の増幅器と、
前記第2のLC発振器タンクに接続され、該第2のLC発振器タンクに第4の電流を流すよう動作可能な第4の増幅器と、を備え、
前記第3の電流および前記第4の電流の間の直交の位相シフトは、前記第2の温度ヌル位相に実質的に等しい非ゼロ値の位相を前記第2のLC発振器タンクに生成し、
前記第2の発振器は、フィードバックループで前記第1の発振器に接続されて、該第1の発振器の該第1の増幅器に直交電圧を提供し、該直交電圧は、該直交の位相シフトを生成し、
前記第3の電流および前記第4の電流は等しくなく、該第2の発振器タンクにおける前記位相の非ゼロ値は、該第3の電流および該第4の電流の間の大きさの比に依存している、
請求項7に記載の発振器システム。
【請求項9】
さらに、
前記第1の発振器および前記第2の発振器に接続されて、該第1および第2の発振器のそれぞれの出力発振の振幅を測定すると共に、前記第1の増幅器および前記第2の増幅器に接続されると共に、前記第3の増幅器および前記第4の増幅器に接続されて、それぞれの前記出力発振の測定された振幅に基づいて、該第1および第2の増幅器のそれぞれの利得を制御すると共に、該第3および第4の増幅器の利得を制御する、自動増幅制御回路を備える、
請求項8に記載の発振器システム。
【請求項10】
前記LC発振器タンクおよび前記増幅器は、基準発振器を備えており、
前記周波数安定化回路は、さらに、位相ロックループ(PLL)を有しており、該位相ロックループは、
前記出力発振およびフィードバック信号を受け取るよう接続され、該出力発振および該フィードバック信号の間の位相差を示す位相エラー出力信号を生成するよう動作可能な位相検出器であって、該位相エラー出力信号は、該出力発振および該フィードバック信号が一定の位相だけシフトされているときにゼロに等しい、位相検出器と、
前記位相エラー出力信号を受け取るよう接続され、前記フィードバック信号としてPLL発振を生成するよう動作可能なPLL発振器と、
前記PLL発振器および前記基準発振器に接続され、該PLL発振の一部を前記基準発振器に供給して、該基準発振器のLC発振器タンクを、前記温度ヌル位相で発振させる、プログラム可能な結合回路と、を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項11】
前記LC発振器タンクおよび前記増幅器は、基準発振器を備えており、
前記周波数安定化回路は、さらに、遅延ロックループ(DLL)を有しており、該遅延ロックループは、
前記出力発振およびフィードバック信号を受け取るよう接続され、該出力発振および該フィードバック信号の間の位相差を示す位相エラー出力信号を生成するよう動作可能な位相検出器であって、該位相エラー出力信号は、該出力発振および該フィードバック信号が一定の位相だけシフトされているときにゼロに等しい、位相検出器と、
前記位相エラー出力信号を受け取るよう接続され、前記フィードバック信号を生成するよう動作可能な電圧制御型遅延線(VCDL)と、
前記VCDLおよび前記基準発振器に接続され、該フィードバック信号の一部を前記基準発振器に供給して、該基準発振器のLC発振器タンクを、前記温度ヌル位相で発振させる、プログラム可能な結合回路と、を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項12】
前記LC発振器タンクおよび前記増幅器は、発振器を備えており、
前記周波数安定化回路は、さらに、周波数安定化フィードバックループを有しており、該周波数安定化フィードバックループは、
前記発振器の動作温度に重畳された温度励起信号を印加するよう動作可能な加熱素子と、
前記出力発振を受け取るよう前記発振器に接続され、該出力発振を復調して、前記温度励起信号に応じて前記発振器によって生成された周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成する復調器と、
前記周波数偏差信号および前記温度励起信号を受け取るよう接続され、温度に対する前記発振器の感度に比例するエラー信号を生成するよう動作可能な周波数エラー生成器と、
前記エラー信号および基準信号を受け取るよう接続され、前記温度ヌル位相で前記LC発振器タンクの動作を可能にするよう前記発振器を制御する制御信号を生成するよう動作可能な比較器と、を備え、
定常状態において、前記エラー信号は、前記基準信号に等しい平均値を持つ、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項13】
前記周波数エラー生成器は、前記周波数偏差信号および前記温度励起信号を受け取るよう接続され、温度に伴う前記周波数偏差に比例した平均値で前記エラー信号を生成するよう動作可能なミキサを有しており、
生成された前記エラー信号は、上昇する温度に従って、周波数偏差が正の値の場合には正の平均値を有すると共に、周波数偏差が負の値の場合には負の平均値を有する、
請求項12に記載の発振器システム。
【請求項14】
前記周波数安定化フィードバックループは、特定の温度において最小の温度感度で動作するよう前記発振器を調整するよう動作する、
請求項12に記載の発振器システム。
【請求項15】
前記周波数安定化フィードバックループは、さらに、
前記比較器に接続され、該比較器の出力を積分して、積分済み信号を生成する積分器と、
前記積分済み信号を受け取るように接続され、該積分済み信号をフィルタリングして前記制御信号を生成するよう動作可能なローパスフィルタと、を有する、
請求項12に記載の発振器システム。
【請求項16】
前記周波数安定化回路は、さらに、前記LC発振器タンクの位相を前記温度ヌル位相に設定するための制御信号を生成するよう動作可能なコントローラを有する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項17】
前記コントローラは、2つ以上の温度において前記LC発振器タンクの様々な位相にわたって前記出力発振の周波数を測定し、該少なくとも2つの温度間で最小の周波数差分を持つ位相を前記温度ヌル位相に決定するよう動作する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項18】
前記LC発振器タンクは、不一致の一対のLC発振器タンクを有して、前記温度ヌル位相を設定することができる位相範囲を生成する差動タンクを備える、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項19】
温度に対する発振器の周波数感度を求めるための方法であって、
前記発振器の動作温度に重畳される温度励起信号を印加することと、
前記発振器の出力を復調し、前記温度励起信号に応じて前記発振器によって生成された周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成することと、
前記周波数偏差信号および前記温度励起信号から、温度に対する前記発振器の周波数感動に比例したエラー信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項20】
LC型発振器を動作させるための方法であって、
該LC型発振器のLC発振器タンクの温度ヌル位相を推定することであって、該温度ヌル位相は、該LC型発振器の出力発振の周波数における温度変化に従う変動が最小化されるときの位相である、ことと、
周波数安定化回路を設けて、前記LC発振器タンクを、前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振させることと、
前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振している前記LC発振器タンクを用いて、前記LC型発振器を動作させることと、
を含む、方法。
【請求項1】
発振器システムであって、
温度ヌル位相に実質的に等しい位相でタンク発振を生成するよう動作可能なLC発振器タンクであって、該温度ヌル位相は、発振器システムの出力発振の周波数における温度変化に対する変動が最小化されるときの位相である、LC発振器タンクと、
前記LC発振器タンクにフィードバックループで接続された増幅器と、
前記発振器タンクに接続された周波数安定化回路であって、該発振器システムの出力発振が実質的にゼロの開ループ位相を持つように、前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相で前記LC発振器タンクを発振させるよう動作可能な周波数安定化回路と、
を備える、発振器システム。
【請求項2】
前記温度ヌル位相は、ゼロに実質的に等しく、
前記LC発振器タンクは、
誘導性素子と、
前記誘導性素子に並列に接続された容量性素子と、
前記誘導性素子に直列に接続された誘導性抵抗と、
前記容量性素子に直列に接続された容量性抵抗であって、前記周波数安定化回路を形成する容量性抵抗と、を備え、
前記容量性抵抗の値は、関心のある温度範囲にわたって、前記誘導性素子の品質係数および前記容量性素子の品質係数が実質的に等しくなるよう選択される、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項3】
前記LC発振器タンクは、さらに、少なくとも二次の温度依存性を有して、関心のある温度範囲にわたって前記LC発振器タンクの周波数偏差を低減するキャパシタンスを含んでおり、該キャパシタンスは、能動キャパシタンスおよび受動キャパシタンスの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項4】
前記周波数安定化回路はさらに、前記LC発振器タンクと、位相制御信号に基づいて負の前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相を生成するよう動作する増幅器と、に接続された位相シフト回路を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項5】
さらに、
前記発振器タンクおよび前記増幅器に接続され、前記出力発振の振幅を測定し、該振幅を基準電圧と比較し、該比較に応じて、前記増幅器の利得を制御するための制御信号を生成するよう動作可能な自動振幅制御回路を備え、
前記制御信号は、前記出力発振の振幅が、該増幅器の線形領域の限界値を超えるのを防ぐように、発振の限界利得の状態で動作するよう該増幅器の利得を設定する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項6】
前記増幅器は、第1の増幅器であり、前記LC発振器タンクに第1の電流を流すよう動作可能であり、
前記周波数安定化回路は、さらに、
前記LC発振器タンクに接続されて、該LC発振器タンクに第2の電流を流すよう動作可能な第2の増幅器を備え、
前記第1の電流および前記第2の電流の間の位相シフトは、前記温度ヌル位相に実質的に等しい非ゼロ位相を前記LC発振器に生成する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項7】
前記第1の電流および前記第2の電流は等しくなく、前記位相の前記非ゼロ値は、該第1の電流および該第2の電流の間の大きさの比および該第1の電流および該第2の電流の間の位相シフトに依存している、
請求項6に記載の発振器システム。
【請求項8】
前記LC発振器タンク、前記第1の増幅器および前記第2の増幅器は、第1の発振器および第2の発振器を備えており、
該第2の発振器は、さらに、
温度変化に対する周波数の変動が最小になるときの第2の温度ヌル位相を持つ第2のタンク発振を生成するよう動作可能な第2のLC発振器タンクと、
前記第2の発振器タンクにフィードバックループで接続され、該第2の発振器タンクに第3の電流を流すよう動作可能な第3の増幅器と、
前記第2のLC発振器タンクに接続され、該第2のLC発振器タンクに第4の電流を流すよう動作可能な第4の増幅器と、を備え、
前記第3の電流および前記第4の電流の間の直交の位相シフトは、前記第2の温度ヌル位相に実質的に等しい非ゼロ値の位相を前記第2のLC発振器タンクに生成し、
前記第2の発振器は、フィードバックループで前記第1の発振器に接続されて、該第1の発振器の該第1の増幅器に直交電圧を提供し、該直交電圧は、該直交の位相シフトを生成し、
前記第3の電流および前記第4の電流は等しくなく、該第2の発振器タンクにおける前記位相の非ゼロ値は、該第3の電流および該第4の電流の間の大きさの比に依存している、
請求項7に記載の発振器システム。
【請求項9】
さらに、
前記第1の発振器および前記第2の発振器に接続されて、該第1および第2の発振器のそれぞれの出力発振の振幅を測定すると共に、前記第1の増幅器および前記第2の増幅器に接続されると共に、前記第3の増幅器および前記第4の増幅器に接続されて、それぞれの前記出力発振の測定された振幅に基づいて、該第1および第2の増幅器のそれぞれの利得を制御すると共に、該第3および第4の増幅器の利得を制御する、自動増幅制御回路を備える、
請求項8に記載の発振器システム。
【請求項10】
前記LC発振器タンクおよび前記増幅器は、基準発振器を備えており、
前記周波数安定化回路は、さらに、位相ロックループ(PLL)を有しており、該位相ロックループは、
前記出力発振およびフィードバック信号を受け取るよう接続され、該出力発振および該フィードバック信号の間の位相差を示す位相エラー出力信号を生成するよう動作可能な位相検出器であって、該位相エラー出力信号は、該出力発振および該フィードバック信号が一定の位相だけシフトされているときにゼロに等しい、位相検出器と、
前記位相エラー出力信号を受け取るよう接続され、前記フィードバック信号としてPLL発振を生成するよう動作可能なPLL発振器と、
前記PLL発振器および前記基準発振器に接続され、該PLL発振の一部を前記基準発振器に供給して、該基準発振器のLC発振器タンクを、前記温度ヌル位相で発振させる、プログラム可能な結合回路と、を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項11】
前記LC発振器タンクおよび前記増幅器は、基準発振器を備えており、
前記周波数安定化回路は、さらに、遅延ロックループ(DLL)を有しており、該遅延ロックループは、
前記出力発振およびフィードバック信号を受け取るよう接続され、該出力発振および該フィードバック信号の間の位相差を示す位相エラー出力信号を生成するよう動作可能な位相検出器であって、該位相エラー出力信号は、該出力発振および該フィードバック信号が一定の位相だけシフトされているときにゼロに等しい、位相検出器と、
前記位相エラー出力信号を受け取るよう接続され、前記フィードバック信号を生成するよう動作可能な電圧制御型遅延線(VCDL)と、
前記VCDLおよび前記基準発振器に接続され、該フィードバック信号の一部を前記基準発振器に供給して、該基準発振器のLC発振器タンクを、前記温度ヌル位相で発振させる、プログラム可能な結合回路と、を含む、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項12】
前記LC発振器タンクおよび前記増幅器は、発振器を備えており、
前記周波数安定化回路は、さらに、周波数安定化フィードバックループを有しており、該周波数安定化フィードバックループは、
前記発振器の動作温度に重畳された温度励起信号を印加するよう動作可能な加熱素子と、
前記出力発振を受け取るよう前記発振器に接続され、該出力発振を復調して、前記温度励起信号に応じて前記発振器によって生成された周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成する復調器と、
前記周波数偏差信号および前記温度励起信号を受け取るよう接続され、温度に対する前記発振器の感度に比例するエラー信号を生成するよう動作可能な周波数エラー生成器と、
前記エラー信号および基準信号を受け取るよう接続され、前記温度ヌル位相で前記LC発振器タンクの動作を可能にするよう前記発振器を制御する制御信号を生成するよう動作可能な比較器と、を備え、
定常状態において、前記エラー信号は、前記基準信号に等しい平均値を持つ、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項13】
前記周波数エラー生成器は、前記周波数偏差信号および前記温度励起信号を受け取るよう接続され、温度に伴う前記周波数偏差に比例した平均値で前記エラー信号を生成するよう動作可能なミキサを有しており、
生成された前記エラー信号は、上昇する温度に従って、周波数偏差が正の値の場合には正の平均値を有すると共に、周波数偏差が負の値の場合には負の平均値を有する、
請求項12に記載の発振器システム。
【請求項14】
前記周波数安定化フィードバックループは、特定の温度において最小の温度感度で動作するよう前記発振器を調整するよう動作する、
請求項12に記載の発振器システム。
【請求項15】
前記周波数安定化フィードバックループは、さらに、
前記比較器に接続され、該比較器の出力を積分して、積分済み信号を生成する積分器と、
前記積分済み信号を受け取るように接続され、該積分済み信号をフィルタリングして前記制御信号を生成するよう動作可能なローパスフィルタと、を有する、
請求項12に記載の発振器システム。
【請求項16】
前記周波数安定化回路は、さらに、前記LC発振器タンクの位相を前記温度ヌル位相に設定するための制御信号を生成するよう動作可能なコントローラを有する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項17】
前記コントローラは、2つ以上の温度において前記LC発振器タンクの様々な位相にわたって前記出力発振の周波数を測定し、該少なくとも2つの温度間で最小の周波数差分を持つ位相を前記温度ヌル位相に決定するよう動作する、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項18】
前記LC発振器タンクは、不一致の一対のLC発振器タンクを有して、前記温度ヌル位相を設定することができる位相範囲を生成する差動タンクを備える、
請求項1に記載の発振器システム。
【請求項19】
温度に対する発振器の周波数感度を求めるための方法であって、
前記発振器の動作温度に重畳される温度励起信号を印加することと、
前記発振器の出力を復調し、前記温度励起信号に応じて前記発振器によって生成された周波数偏差を示す周波数偏差信号を生成することと、
前記周波数偏差信号および前記温度励起信号から、温度に対する前記発振器の周波数感動に比例したエラー信号を生成することと、
を含む方法。
【請求項20】
LC型発振器を動作させるための方法であって、
該LC型発振器のLC発振器タンクの温度ヌル位相を推定することであって、該温度ヌル位相は、該LC型発振器の出力発振の周波数における温度変化に従う変動が最小化されるときの位相である、ことと、
周波数安定化回路を設けて、前記LC発振器タンクを、前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振させることと、
前記温度ヌル位相に実質的に等しい位相で発振している前記LC発振器タンクを用いて、前記LC型発振器を動作させることと、
を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図15E】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【公開番号】特開2010−50973(P2010−50973A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−192562(P2009−192562)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(507321222)サイ−ウエア・システムズ (2)
【氏名又は名称原語表記】Si−Ware Systems
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−192562(P2009−192562)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(507321222)サイ−ウエア・システムズ (2)
【氏名又は名称原語表記】Si−Ware Systems
【Fターム(参考)】
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