説明

気相成長装置

【課題】ビューポート内面への反応生成物の付着を効率よく防止することができ、気流の影響をより確実に抑制してレーザー光等による光学的な観察、測定を確実に行うことができる気相成長装置を提供する。
【解決手段】フローチャンネル13の基板対向壁13bに、ビューポート20を介して基板面を光学的に観測する際の光路となる通孔13cを設け、前記基板対向壁とチャンバーの内側面との間に光路部24aを有する冷却手段24を配置し、該冷却手段と前記基板対向壁との間にパージガス流路25を設け、該パージガス流路内に、前記フローチャンネル内を流れる原料ガスAの流れ方向と同一方向で、実質的に同一速度、同一圧力で、かつ、層流状態でパージガスPを流すためのパージガス導入手段25aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローチャンネルを収納したチャンバーに、基板面を光学的に観測するためのビューポートを備えた気相成長装置に関し、特に、有機金属系半導体薄膜、特に窒化物系有機金属系半導体膜を基板面に成長させる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気相成長装置として、気相成長中における基板面の温度や反り、成長中の薄膜の膜厚や組成等を光学的機器によって観察、測定するため、チャンバーの天板部に耐腐食性・耐熱性を有する石英ガラスを嵌め込んだ観察窓(ビューポート)を設けたものが知られており、このビューポートの内面に反応生成物等が付着して曇ることを防止するためにパージガスを流通させたり、基板温度測定時の熱的影響を回避するためにビューポートの一部を熱反射率の低い材料で遮蔽したりしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、光エネルギーを利用する光励起型の気相成長装置として、光導入窓を有する外部管の内部に光導入穴(通孔)を有する内部管を収納した二重管構造の反応管を使用し、内部管の内側に原料ガスを流し、外部管と内部管との間にキャリアガス(パージガス)を流し、光導入穴の近傍で原料ガスとキャリアガスとの流速を略等しくすることにより、光導入穴を通して内部管内から原料ガスが流出することを防止し、これによって光導入窓の内面に反応生成物が付着して曇りを生じることを防止することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
さらに、光導入孔を有するフローチャンネルとビューポートとの間にパージ流路を設け、このパージ流路に原料ガスと同方向、同流速のパージガスを流し、光導入孔を通したガスの出入りを抑制することが提案されている(例えば、特許文献3参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−68415号公報
【特許文献2】特開昭62−188218号公報
【特許文献3】特開2008−53360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された構成と特許文献2に記載された構成とを組み合わせれば、フローチャンネル内面に付着する反応生成物による悪影響を通孔を設けることによって解決できるとともに、通孔の外部側にキャリアガスを略等速で流して原料ガスの流出を防止することによってビューポート内面に反応生成物が付着することを防止できる。
【0007】
しかし、特許文献2に記載されているような二重管構造では、キャリアガス(パージガス)が流れる流路の断面積が大きくなり、大量のキャリアガスを流す必要があり、キャリアガス自体のコストだけでなく、排気ポンプも大容量のものが必要になる。さらに、基板をサセプタにより保持して回転させるととともに、サセプタ裏面に設けたヒーターによって基板を加熱する横型の気相成長装置では、反応管やヒータ部分、サセプタ支持部分等の構造が複雑になり、装置コストが大幅に上昇してしまう。
【0008】
また、薄膜を常圧に近い圧力で成膜する場合、チャンバー内のガスの気流で、光線、例えばレーザー光が揺らぎ、基板面を正確に観測できなくなることがあった。例えば、成膜中の基板面の高さや回転による揺れは、適当な角度で基板面に照射したレーザー光を反射位置で測定することによって行われるが、気流によってレーザー光が揺らぐとノイズが大きくなり、測定が不可能になることがあった。
【0009】
さらに、特許文献3に記載されている構造では、処理温度などの条件によっては、フローチャンネルからの熱を受けてパージガスが昇温し、昇温したパージガスが上昇気流となって気流を乱し、ノイズを十分に小さくできなくなることがあった。
【0010】
そこで本発明は、ビューポート内面への反応生成物の付着を効率よく防止することができ、気流の影響をより確実に抑制してレーザー光等による光学的な観察、測定を確実に行うことができる気相成長装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の気相成長装置は、チャンバーと、該チャンバー内に配置されたフローチャンネルと、該フローチャンネル内に設置された基板と、該基板を加熱する加熱手段と、前記フローチャンネル内に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、前記チャンバーに設けられたビューポートとを備えた気相成長装置において、前記フローチャンネルの基板対向壁に、前記ビューポートを介して基板面を光学的に観測する際の光路となる通孔を設け、前記基板対向壁とチャンバーの内側面との間に光路部を有する冷却手段を配置し、該冷却手段と前記基板対向壁との間にパージガス流路を設け、該パージガス流路内に、前記フローチャンネル内を流れる原料ガスの流れ方向と同一方向で、実質的に同一速度、同一圧力で、かつ、層流状態でパージガスを流すためのパージガス導入手段を設けたことを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の気相成長装置は、前記ビューポート内にパージガスを導入するビューポート用パージガス導入手段を備えていること、前記冷却手段が、前記基板を保持して前記加熱手段により加熱されるサセプタの大きさに対応した大きさを有していること、前記基板が回転するサセプタの回転中心から等距離の位置に周方向に複数が設けられ、前記反応ガスが前記回転するサセプタの回転中心からサセプタ外周に向かって流れることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の気相成長装置によれば、フローチャンネルに通孔を設けることによってフローチャンネル内面に反応生成物が付着しても、基板面の光学的観測を確実に行うことができるとともに、特定の条件でパージガスを流すことにより、少ないパージガス量で原料ガスや反応生成物が通孔からビューポート側へ流出することを防止でき、ビューポート内面に反応生成物等が付着して曇ることを防止できるとともに、パージガスがフローチャンネル内に流入して成膜中の薄膜に悪影響を及ぼすことを防止できる。さらに、フローチャンネルの通孔とビューポートとの間に設けた冷却手段によってパージガスの昇温を抑えることができ、パージガスの熱対流が大幅に減少するため、レーザー等を光源とした光測定系のノイズを低減することができる。
【0014】
また、基板対向壁にのみパージガス流路を設けているので、パージガス量を少なくでき、パージガス自体のコスト低減を図れ、排気ポンプの小型化によって装置コストも低減できる。さらに、基板を保持するサセプタや基板を加熱するためのヒーター等の配置を従来の一般的な気相成長装置と同様にして行うことができ、装置コストの上昇を抑えることができる。さらに、フローチャンネルの内面も冷却手段によって冷却することができるので、分解した原料ガスの付着も抑えることができ、フローチャンネルの洗浄回数を少なくすることができ、また、付着してもフレーク状になるので、簡単な洗浄作業で付着物を除去することができる。したがって、気相成長操作全体としての経済性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の気相成長装置の一形態例を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
基板11は、軸線12aを中心として回転する円盤状のサセプタ12の上面で、サセプタ12の回転中心である軸線12aから等距離の位置に基板面を水平方向に向けて複数枚が同心円上に等間隔で保持され、フローチャンネル13の所定位置に配置される。フローチャンネル13等は、密閉状態のチャンバー14内に収納されており、該チャンバー14の中心に設けられた反応ガス供給手段である反応ガス導入口13aからフローチャンネル13内に反応ガスAが基板面と平行な方向に層流状態で導入され、基板面を通過したガス(排ガスB)は、フローチャンネル13の外周部分に連設した排気部15から排出される。
【0017】
前記サセプタ12の下方には、箱状のリフレクター16に収容された加熱手段であるヒーター17が設けられており、このヒーター17によりサセプタ12を介して基板11を所定温度に加熱する。また、サセプタ12は、回転軸18によって支持されており、この回転軸18でサセプタ12を回転させることにより、基板11を回転させて基板上に形成する薄膜の膜厚を平均化させるようにしている。
【0018】
前記チャンバー14の天板部14aには、回転するサセプタ12に設置される複数の基板11の中心位置が通過する円周上の1箇所にビューポート用開口14bが設けられており、このビューポート用開口14bには、ビューポート20を形成する窓部材21が嵌め込まれている。この窓部材21は、円盤状の透光性材料、例えば、耐腐食性・耐熱性を有する石英ガラスからなるもので、外周部をシール材22によって気密にシールした状態で止着部材23により着脱可能に固定されている。
【0019】
また、前記フローチャンネル13の基板対向壁(上部壁)13bには、ビューポート20の中心部に対応した位置に、基板面を光学的に観測する際の光路となる通孔13cが設けられており、上部壁13bの外側面とチャンバー14の内側面との間には、通孔13cに対応した位置に光路部となる貫通孔24aを有する冷却手段24が設けられるとともに、該冷却手段24と前記上部壁13bとの間にパージガス流路25が設けられている。
【0020】
パージガス流路25を流れるパージガスPは、流量調節機構及び圧力調整機構によって所定圧力、所定流量に調整されてパージガス導入手段であるパージガス導入管25aの先端部分からパージガス流路25内に導入され、外周部に設けた排気口(図示せず)から流出して前記排ガスBと合流し、前記排気部15から排出される。あるいは、排ガスBとは合流せずに、単独で排気されて除害設備等に送られる。
【0021】
ここで、前記パージガス流路25を流れるパージガスPは、フローチャンネル13内を基板11の上面と平行な方向に層流状態で流れる反応ガスに対して、流れ方向が同一方向、実質的に同一速度、同一圧力で、かつ、層流状態で流れるように設定され、前記パージガス流路25の流路断面形状や流路断面積は、これらの条件を満たすことができるように設定される。
【0022】
なお、パージガス流路25内を流れるパージガスの流速及び圧力は、フローチャンネル13内を流れる反応ガスの流速及び圧力に対して同一であることが望ましいが、両ガスの条件、フローチャンネル13及びパージガス流路25の形状、フローチャンネル13に設けた通孔13cの形状や位置によってパージガスの流速や圧力には適正な範囲が存在する。例えば、パージガスの流速や圧力が反応ガスの流速や圧力より低く、フローチャンネル13内の反応ガスが通孔13cを通ってパージガス流路25に流出しても、パージガスに同伴されて速やかに排出され、ビューポート20にまで至らない状態ならば、基板面の光学的観測及び成膜に影響を与えることはない。
【0023】
逆に、パージガスの流速や圧力が反応ガスの流速や圧力より高くてパージガスがフローチャンネル13内に流入する条件でも、パージガスが基板面に達することがなく、また、パージガスが反応ガスの流れを大きく乱すことがなければ、薄膜の膜厚分布や膜質に影響を与えることはない。さらに、通孔13cをサセプタ12の中心より下流側に設けることにより、フローチャンネル13からの反応ガスの流出や、フローチャンネル13内へのパージガスの流入による影響をより少なくすることができる。
【0024】
また、高温状態のサセプタ12や基板11、フローチャンネル13の上部壁13bによってパージガスが加熱されるような状態であっても、冷却手段24の内部を流れる冷却流体によってパージガスが昇温することを抑制できるので、パージガス自体の熱対流が抑制でき、測定光の揺らぎを防止して正確な観察、測定を行うことができる。さらに、パージガス流路25内のパージガスの流れを層流状態とすることにより、乱流状態のときに比べて気流による光の揺らぎを抑えることができ、より精密な測定を行うことができる。
【0025】
さらに、ビューポート20内に、窓部材21の内面に向けてパージガスを導入するビューポート用パージガス導入手管26を設けることにより、窓部材21の内面に付着物が付着することを防止できる。また、冷却手段24を、サセプタ12の大きさに対応した大きさ、例えばサセプタの全体に対応した大きさとしたり、原料ガスの流れ方向上流側から一定の距離の部分を除いてガス流れ方向下流側に対応した大きさとしたりすることにより、フローチャンネル13の上部壁13bを効果的に冷却することができるので、分解した原料ガスが上部壁13b内面に付着することを抑えることができ、フローチャンネルの洗浄回数を少なくすることができ、また、付着してもフレーク状になるので、簡単な洗浄作業で付着物を除去することができる。
【0026】
なお、パージガスの種類は任意であり、この種の装置で通常パージガスとして用いられている窒素、水素、アルゴン等を使用することができる。また、ビューポートは、基板表面の状態を観察できれば任意の構造を採用することができ、ビューポートを設ける位置は、基板表面の状態を観察したり、測定したりできる範囲で任意に選択できるが、通孔によって反応ガスの流れに乱れが生じることを抑えるため、できるだけ反応ガスの流れ方向下流側に配置することが好ましい。また、測定機器への熱的影響を避けるため、ビューポートの外側あるいは内側に赤外線反射膜を設けることもできる。
【符号の説明】
【0027】
11…基板、12…サセプタ、12a…軸線、13…フローチャンネル、13a…反応ガス導入口、13b…上部壁、13c…通孔、14…チャンバー、14a…天板部、14b…ビューポート用開口、14c…凹状部、15…排気部、16…リフレクター、17…ヒーター、18…回転軸、20…ビューポート、21…窓部材、22…シール材、23…止着部材、24…冷却手段、24a…貫通孔、25…パージガス流路、25a…パージガス導入管、26…ビューポート用パージガス導入手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバーと、該チャンバー内に配置されたフローチャンネルと、該フローチャンネル内に設置された基板と、該基板を加熱する加熱手段と、前記フローチャンネル内に反応ガスを供給する反応ガス供給手段と、前記チャンバーに設けられたビューポートとを備えた気相成長装置において、前記フローチャンネルの基板対向壁に、前記ビューポートを介して基板面を光学的に観測する際の光路となる通孔を設け、前記基板対向壁とチャンバーの内側面との間に光路部を有する冷却手段を配置し、該冷却手段と前記基板対向壁との間にパージガス流路を設け、該パージガス流路内に、前記フローチャンネル内を流れる原料ガスの流れ方向と同一方向で、実質的に同一速度、同一圧力で、かつ、層流状態でパージガスを流すためのパージガス導入手段を設けたことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
前記ビューポートは、該ビューポート内にパージガスを導入するビューポート用パージガス導入手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、前記基板を保持して前記加熱手段により加熱されるサセプタの大きさに対応した大きさを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記基板は、回転するサセプタの中心から等距離の位置に周方向に複数が設けられ、前記反応ガスは、前記回転するサセプタの回転中心からサセプタ外周に向かって流れることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の気相成長装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−225743(P2010−225743A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69815(P2009−69815)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】