説明

気相成長装置

【課題】複数の基板ホルダーをサセプタにより保持するフェイスダウン型の気相成長装置であっても、1000℃を超える気相成長温度を必要とする3族窒化物半導体のフェイスダウン型の気相成長装置であっても、前記サセプタの重力あるいは加熱による変形を抑制できる気相成長装置を提供する。
【解決手段】基板1を保持する基板ホルダー2、及び該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタ3が備えられた気相成長装置であって、中心部が上向きに凸となるように撓ませたサセプタを、基板ホルダーに回転駆動力を伝達するための回転駆動軸10を介して、上から中心部を押圧して配置した気相成長装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重力により変形したサセプタによる原料ガス流の妨害や他の部材との接触を防止できる気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶膜を基板上に成長する方法には、化学的気相成長(CVD)法等があり、基板加熱を伴うCVD法には熱CVD法等が知られている。熱CVD法により成長される結晶膜の一例としては、青色又は紫外の発光ダイオード又はレーザーダイオード等を製作するためのIII族窒化物半導体がある。例えば、III族窒化物半導体結晶膜の成長は、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、又はトリメチルアルミニウム等の有機金属ガスをIII族金属源として、アンモニアを窒素源として用い、1000℃以上の高温に加熱されたシリコン(Si)、サファイア(Al)又は窒化ガリウム(GaN)等の基板上に結晶膜を気相成長する熱CVD法により行われることがある。近年、このような結晶膜の成長に用いられる基板の直径は、結晶膜の生産性を高めるために大きくなる傾向がある。
【0003】
気相成長装置には、基板の結晶成長面を上向きに配置するもの(フェイスアップ型)、基板の結晶成長面を下向きに配置するもの(フェイスダウン型)がある。また、1バッチあたり1枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置があるが、生産性を向上するために1バッチあたり複数枚の基板上に結晶膜を成長させる気相成長装置も知られている。基板はサセプタにより直接保持されることがあるが、基板を保持した基板ホルダーをさらにサセプタにより保持することもできる。近年は、気相成長に用いられる基板の直径が大きくなり、さらに1バッチあたりの基板枚数も増加する傾向があるので、用いられるサセプタの直径も大きくなっている。
【0004】
気相成長において、均一な膜厚及び膜質を得るには、基板を自転させながら基板上に結晶膜を成長させることが有効であり、このような気相成長装置は、基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタを備えている。また、基板を自公転させながら基板上に結晶膜を成長させることも有効であり、例えば、複数の基板ホルダーをサセプタにより保持する気相成長装置においては、回転自在に保持されたサセプタの上に基板ホルダーを回転自在に保持し、サセプタの回転により基板を公転させ、基板ホルダーの回転により基板を自転させることにより、各基板間及び同一基板面内において、均一な膜厚及び膜質を得ることもできる。
【0005】
例えば特許文献1〜4に記載の気相成長装置のように、サセプタは平らな円盤状であることが多く、サセプタの支持方法としては、リング状の部材によりサセプタの周縁部を支持する方法(特許文献1及び2)、円柱状の部材によりサセプタの中央を支持する方法(特許文献4)等がある。
また、基板ホルダー及びサセプタを回転できる気相成長装置としては、サセプタに連結された駆動軸により基板ホルダーとサセプタの両方に回転駆動力を伝達する気相成長装置(例えば特許文献1及び2)や、サセプタに回転駆動力を伝達するサセプタ回転駆動軸、及び基板ホルダーに回転駆動力を伝達する基板回転駆動軸が別々に設けられ、基板及びサセプタの回転数及び回転方向を任意に設定できる気相成長装置(例えば特許文献3)が知られている。
【0006】
【特許文献1】特開2002−175992号公報
【特許文献2】特開2009−99770号公報
【特許文献3】特開2004−241460号公報
【特許文献4】特開2008−21708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような気相成長装置に備えられるサセプタは、通常は平らな円盤状であるが、サセプタの大きさ、厚み、支持方法によっては、重力により垂れ下り等、変形することがある。サセプタが変形すると、原料ガスが設定された通りに流れなくなり、良好な気相成長が妨害され、さらに変形量が大きい場合は、サセプタがサセプタの対面や原料ガス導入部等の他の部材に接触して部材が破損する等の問題を生じる虞があった。
【0008】
サセプタの重力による変形は様々な形態で生じるが、弾性変形であることが多く、例えば、リング状の部材によりサセプタの周縁部を支持する場合には、サセプタの中心部が下に凸に変形し、その結果として中心部が下向きに凸に変形した状態となり、円柱状の部材によりサセプタの中央部を支持する場合には、サセプタの周辺部が垂れ下り、その結果として中心部が上向きに凸に変形した状態となる。これらの例において示されるように、サセプタの変形量は、サセプタの直径が大きくなりサセプタの厚さが薄くなるほど大きくなる傾向があり、また気相成長温度が高いほど大きくなることが予測できる。また、フェイスアップ型より、フェイスダウン型の方が変形の影響を抑えることが困難である。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、複数の基板ホルダーをサセプタにより保持するフェイスダウン型の気相成長装置であっても、1000℃を超える気相成長温度を必要とするIII族窒化物半導体のフェイスダウン型の気相成長装置であっても、サセプタの重力あるいは加熱によるサセプタの変形の影響を抑制できる気相成長装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発明者らは、このような課題を解決すべく鋭意検討した結果、前述のような気相成長装置において、中心部が凸となるような撓みを有するサセプタを用い、中心部が上向きに凸となるように配置し、上から中心部を押圧して固定することにより、重力によるサセプタの変形の影響を抑制できることを見出し、本発明の気相成長装置に到達した。
すなわち、本発明は、基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタが備えられたフェイスダウン型の気相成長装置であって、中心部が上向きに凸となるように撓ませたサセプタを、上から中心部を押圧して配置したことを特徴とする気相成長装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の気相成長装置は、複数の基板ホルダーを保持する大きなサセプタを有するフェイスダウン型の気相成長装置、あるいは高温の気相成長温度を必要とするIII族窒化物半導体のフェイスダウン型の気相成長装置であっても、重力、ヒータの加熱によるサセプタの変形の影響を抑え、サセプタの対面や原料ガス導入部等の部材の破損を防止することができる。その結果、このようなサセプタが変形しやすい条件下の気相成長であっても、原料ガスが設定された通りに流通しやすくなり、基板に良好な気相成長を行なうことができる。
【0012】
また、本発明の気相成長装置は、中心部が凸となるように撓ませたサセプタを上から押圧して位置を調節することができるので、重力による変形量をあらかじめ予測して正確な撓み量を有するサセプタを製作することを必要とせず、サセプタとその対面の間隙の大きさ(反応炉の上下幅)を容易に精度よく調整することができる。サセプタとその対面の間隙の大きさは、原料ガスの流れ状態に影響を及ぼすことが多いので、間隙の大きさが調整可能であることは、良好で安定した品質の結晶膜を得るためにも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタが備えられた気相成長装置に適用される。以下、本発明の気相成長装置を、図1〜図6に基づいて詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
尚、図1、図6は、本発明の気相成長装置の一例を示す垂直断面構成図であり、図2は、図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面A−A)であり、図3は、図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面B−B)であり、図4は、図1に示した気相成長装置に用いられるサセプタの上面構成図である。図5は、図4のサセプタの垂直断面構成図(断面C−C)であり、気相成長装置に取り付けられる前の押圧がかけられていない状態を示す。
【0014】
本発明の気相成長装置は、図1に示すように、基板1を保持する基板ホルダー2、及び該基板ホルダー2を回転自在に保持するサセプタ3が備えられたフェイスダウン型の気相成長装置であって、前記サセプタ3は、図5に示すように、中心部が凸となるように撓ませたものであり、これを中心部が上向きに凸となるように配置し、上から中心部を押圧して構成した気相成長装置である。
尚、図1に示す本発明の気相成長装置の例においては、サセプタ3はリング状の架台20によりその周縁部で支持され、押圧機構22により上から押圧して配置されている。図1に示す気相成長装置で用いられるサセプタ3は、図4に示すように、上に凸となる撓みがあらかじめ設けられており、架台20の上に設置したときに重力による垂れ下がり等の変形が生じても原料ガス導入部7に接することはない。さらにサセプタ3を押圧機構22により押圧することにより、サセプタ3及びサセプタの対面4の間に生じる間隙を調整することもできる。
【0015】
以下に、本発明の気相成長装置の細部について説明する。
図1に示すように、基板1は、成長面を下向きにした状態で基板ホルダー2により保持されている。基板ホルダー2は、直径が2インチ、3インチ、4インチ又は6インチの基板を1枚保持できるが、特にこれらの大きさの基板に限定されない。ここで、ヒータ5からの熱を基板1へ均一に伝達するために、均熱板16を設けてもよい。基板ホルダー2は、基板ホルダー2の下面及びサセプタ3の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して、サセプタ3上に回転自在に保持されている。
【0016】
サセプタ3は、直径300〜1000mm、厚さ3〜30mmの円盤状であることが好ましく、直径600〜1000mm、厚さ3〜20mmの円盤状であることがより好ましいが、特に限定されることはない。また、サセプタ3は、4〜15個の基板ホルダー2を保持できることが好ましいが、特に限定されない。図5に示すように、サセプタ3には、中心部が凸となるような撓みが設けられており、この撓みは気相成長装置に設置されたときの重力による垂れ下がり等の変形と反対方向に凸、すなわち上に凸である。また、サセプタ3に設けられた撓みは球面状であることが好ましいが、球面状に限定されることはない。サセプタ3に設けられた撓み量は、重力により生じる変形量よりも大きく、1〜10mmであることが好ましいが、その撓み量に限定されることはない。また、押圧後のサセプタ3の撓み量は、通常は1mm以下である。尚、本発明において、気相成長装置に設置される前のサセプタの撓みは、重力がかかっていない状態で測定されるものとする。例えば、円盤状のサセプタの撓みは、円盤の半径方向を鉛直方向にして(円盤の外周の一端を紐等で吊るして)測定される。
【0017】
前記のような形状を有するサセプタ3は、サセプタ3の下面及び架台20の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して架台20により回転自在に保持される。さらにサセプタ3は押圧機構22により押圧され、押圧を調整することによりサセプタ3とサセプタの対面4との間の隙間距離が調整される。サセプタ3は押圧により略平板状になることが好ましく、サセプタ3とサセプタの対面4の押圧後の間隙は、8mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましいが、特にこれらの大きさの間隙に限定されない。押圧機構22により所定の押圧がなされたサセプタ3は、サセプタの対面4とともに反応炉6を形成し、反応炉6は、反応容器19に収められ密封されている。尚、ベアリング17は、直径3〜10mmの球形であることが好ましい。ベアリング溝18の鉛直方向の断面は、半円形、三角形又は四角形であることが好ましいが、特に限定されない。
【0018】
図1に示すように、押圧機構22により生じた押圧は、基板ホルダー回転駆動軸10、基板ホルダー回転板12及びベアリング17を介してサセプタ3に伝達される。押圧機構22としては、モータの生成するトルクを基板ホルダー回転駆動軸10の軸方向の力に変換でき、サセプタ3の撓み量の変化をマイクロメータにより計測できる構造の押圧機構があるが、この構造に限定されることはない。
基板ホルダー2により保持された基板1は自転によって回転される。基板ホルダー2は、基板ホルダー2の下面及びサセプタ3の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して、サセプタ3の上に回転自在に保持される。基板ホルダー回転駆動器9からの回転駆動力は、まず、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止された基板ホルダー回転駆動軸10に伝達される。基板ホルダー回転駆動軸10の基板ホルダー回転板側の先端には複数本のツメ11が設けられており、ツメ11が、基板ホルダー回転板12の上面に設けられた差込口23に差し込まれることにより脱着可能に噛み合わさり、回転駆動力が基板ホルダー回転板12に伝達される。
【0019】
基板ホルダー回転板12は、基板ホルダー回転板12の下面及びサセプタ3の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して、サセプタ3により回転自在に保持されている。基板ホルダー2は、原料ガス導入部7の周囲に設けられており、基板ホルダー回転板12の外周に設けられた歯車と各基板ホルダー2の外周に設けられた歯車が噛み合わさることにより各基板ホルダー2に回転駆動力が伝達され、各基板ホルダー2は自転により回転する。基板ホルダー回転板12は、直径100〜500mm、厚さ3〜20mmの円盤状であることが好ましいが、特に限定されない。基板ホルダー回転駆動軸10は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。尚、基板ホルダー回転板12の歯車および基板ホルダー2の歯車は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
【0020】
基板1は自転に加えて公転によっても回転する。サセプタ回転駆動器13からの回転駆動力は、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止されたサセプタ回転駆動軸14に伝達される。サセプタ回転板15はサセプタ回転駆動軸14のサセプタ側先端に固定され、サセプタ回転板15の外周に設けられた歯車とサセプタ3の外周に設けられた歯車が噛み合わさることによりサセプタ3に回転駆動力が伝達される。これによりサセプタ3が回転し、サセプタ3上に配置された基板ホルダー2は公転する。気相成長反応中は、基板ホルダー2を常時公転させることが好ましい。サセプタ回転駆動軸14は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。サセプタ回転板15は、直径50〜200mm、厚さ3〜30mmの円盤状を有することが好ましいが、特に限定されることはない。尚、サセプタ回転板15の歯車およびサセプタ3の歯車は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
【0021】
反応炉6の中心部には原料ガス導入部7が設けられ、原料ガスは、原料ガス導入部7から放射状に吹き出し、基板1の成長面に対して水平に供給される。気相成長反応は、反応炉6において、ヒータ5により基板1を加熱しながら、原料ガス導入部7から原料ガスを供給することにより行われ、基板1の成長面には結晶膜が形成される。気相成長反応に用いられた原料ガスは、そのまま反応ガスとして反応ガス排出部8から排出される。気相成長反応中、基板ホルダー2は、常時自転させることが好ましく、常時自公転させることがより好ましい。サセプタ3及び基板ホルダー2の回転方向及び回転速度は、それぞれ、サセプタ回転駆動器13及び基板ホルダー回転駆動器9の回転方向及び回転速度を変化させることにより、任意に設定することができる。各基板間において均一な膜厚及び膜質を得るためには、各基板ホルダー2を反応炉の中心に対して同一円周上に配置して、原料ガス導入部からの距離を等しくすることが好ましいが、特に限定されない。
【0022】
基板ホルダー2、サセプタ3、基板ホルダー回転板12及びサセプタ回転板15は、カーボン系材料又はカーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたものが好ましいが、特に限定されない。基板ホルダー回転駆動軸10、ツメ11及びサセプタ回転駆動軸14は、金属、合金、金属酸化物、カーボン系材料、セラミック系材料、カーボン系材料をセラミック材料でコーティングしたもの、又はこれらの組み合わせが好ましいが、特に限定されない。ベアリング17は、セラミック材料であることが好ましいが、特に限定されない。ここで、合金の例には、ステンレス又はインコネルがあるが、特に限定されない。カーボン系材料の例には、カーボン、パイオロリティックグラファイト(PG)、グラッシカーボン(GC)等があるが、特に限定されない。セラミックス系材料の例には、アルミナ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、窒化ホウ素(BN)等があるが、特に限定されない。
【0023】
特に、基板ホルダー2、サセプタ3、基板ホルダー回転板12及びサセプタ回転板15は、SiCコートカーボン、ベアリング17は、アルミナであることが好ましく、基板ホルダー回転駆動軸10は、基板ホルダー回転駆動器側部分をインコネル製とし、基板ホルダー回転板側部分をSiCコートカーボン製とし、螺旋等で両者を固定することにより一体化したものが好ましく、ツメ11は、SiCコートカーボン製で、基板ホルダー回転駆動軸の基板ホルダー回転板側部分の端面にあらかじめ一体として形成されていることが好ましい。サセプタ回転駆動軸14は、ステンレス製であることが好ましい。
【0024】
次に図6を用いて、本発明の気相成長装置の図1以外の一例を、図1の気相成長装置との違いを記述することにより詳細に説明する。したがって、図6に示す気相成長装置は、以下において特に記載のない部分は図1の気相成長装置と同様である。図6は、本発明の気相成長装置の図1以外の一例を示す垂直断面構成図である。
図6の気相成長装置に用いられるサセプタ3は、サセプタ3の外周部に歯車が設けられていない以外は図4と同様のものである。サセプタ回転駆動器13からの回転駆動力は、磁性流体シールを用いて反応容器19に対して回転自在に封止されたサセプタ回転駆動軸14に伝達される。サセプタ回転駆動軸14のサセプタ側の先端には複数本のツメ11が設けられており、ツメ11が、サセプタ3の上面に設けられた差込口23に差し込まれることにより脱着可能に噛み合わさり、回転駆動力がサセプタ3に伝達される。これによりサセプタ3が回転し、サセプタ3上に配置された基板ホルダー2は公転する。
【0025】
また、基板1は公転に加えて自転によっても回転される。すなわち、基板ホルダー2の外周に設けられた歯車が、反応容器19に固定された歯車リング25の内周に設けられた歯車と噛み合わることにより、基板1はサセプタ3の回転に伴って自転する。図6の気相成長装置において、サセプタ回転駆動軸14は、直径10〜50mmの円柱状であることが好ましいが、特に限定されない。尚、固定歯車25の歯車および基板ホルダー2の歯車は、平歯車構造を有することが好ましいが、特に限定されることはない。
図6の気相成長装置において、サセプタ回転駆動軸14は、基板ホルダー回転駆動器側部分をインコネル製とし、基板ホルダー回転板側部分をSiCコートカーボン製とし、螺旋等で両者を固定することにより一体化したものが好ましく、ツメ11は、SiCコートカーボン製で、サセプタ回転駆動軸のサセプタ側部分の端面にあらかじめ一体として形成されていることが特に好ましい。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明がこれらにより限定されるものではない。
【0027】
[実施例]
(気相成長装置の製作)
図1〜5に示すような気相成長装置を製作した。まず、サセプタ3(SiCコートカーボン製、直径720mm、厚さ11mm、6インチの基板を6枚保持可能)を製作したが、サセプタ3には、上に凸の撓みが3mmの撓み量で設けられている。次に、直径6インチのサファイア基板を1枚保持可能である基板ホルダー2(SiCコートカーボン製)6個と、基板ホルダー回転板12(SiCコートカーボン製、直径250mm、厚さ10mm)を上記のサセプタ3により、ベアリング17を介して保持し、基板ホルダー2と基板ホルダー回転板12の平歯車を噛み合わせた。このように基板及び基板ホルダーを保持したサセプタ3を、サセプタ3の下面及び架台20の上面に刻まれたベアリング溝18により挟持されたベアリング17を介して架台20により回転自在に保持した。このときサセプタ3が重力により変形したが、中心部は上に凸に撓んだままであり、サセプタ3の撓み量は2.5mmに減少した。
【0028】
次に、基板ホルダー回転駆動機構及びサセプタ回転駆動機構を設けた。ツメ11は、断面の直径5mm、長さ7mmの円柱状であり、断面の直径20mmの基板ホルダー回転駆動軸10の先端に等間隔で3本設けた。ツメ11の差込口23として、基板ホルダー回転板12の上面に円柱状の凹部を各ツメに対して1つずつ設けた。基板ホルダー回転駆動軸10はインコネル及びSiCコートカーボンからなり、基板ホルダー回転駆動器側部分をインコネル製(直径20mm、長さ270mmの円柱状)とし、基板ホルダー回転板側部分をSiCコートカーボン製(直径20mm、長さ30mmの円柱状)とし、両者をカーボン製の螺旋で固定することにより一体化して基板ホルダー回転駆動軸10とした。ツメ11はSiCコートカーボン製であり、基板ホルダー回転駆動軸10の下面にあらかじめ一体として形成した。サセプタ回転駆動軸14は、直径20mm、長さ300mmのステンレス製とし、サセプタ回転板15は、直径100mm、厚さ11mmのSiCコートカーボン製とし、カーボン製の螺旋でサセプタ回転駆動軸14のサセプタ側先端に固定した。尚、サセプタの対面4、及び架台20はカーボン製とし、反応容器19はステンレス製とした。
【0029】
次に、サセプタ3を押圧できる押圧機構22を設けた。押圧機構22は、モータが生成するトルクを基板ホルダー回転駆動軸10の軸方向の力に変換でき、サセプタ3の撓み量の変化をマイクロメータにより計測できる構造とした。サセプタ3を押圧機構22により押圧し、その押圧を調整することによりサセプタ3とサセプタの対面4との間の隙間距離を調整し、サセプタ3を撓み量0mmの略平面状とした。押圧後、サセプタ3と原料ガス導入部7の間隙は2mmであり、サセプタ3とサセプタの対面4の間隙は5mmであった。
【0030】
(気相成長実験)
このような気相成長装置を用いて、基板1の表面に窒化ガリウム(GaN)を成長させた。まず、基板ホルダー回転駆動器9及びサセプタ回転駆動器13を稼働させて、基板の自転(10rpm)及び公転(1rpm)を開始した。なお、すべての成長が終了するまで、基板の自転及び公転をこれらの速度で継続し、反応容器内を大気圧に保った。次に、原料ガス導入部から水素を流しながら基板の温度を1050℃まで昇温させ、基板のクリーニングを行った。続いて、ヒータ温度を510℃まで下げて、原料ガスとしてトリメチルガリウム(TMG)とアンモニア、キャリアガスとして水素を用いて、基板上にGaNからなる膜厚20μmのバッファー層の成長を行い、バッファー層成長後に、TMGのみ供給を停止し、ヒータ温度を1050℃まで上昇させた。その後、原料ガス導入部から、TMGとアンモニアの他に、キャリアガスとして水素と窒素を供給して、アンドープGaNの成長を1時間行った。
【0031】
以上のようにGaNを成長させた後、基板を室温付近まで放冷させ、反応容器から取り出した。基板の自転及び公転の開始から終了まで、基板ホルダー回転駆動器及びサセプタ回転駆動器は正常に作動し、放冷後に、反応容器内の各部品を目視で点検したところ、腐食、破損等の異常はなかった。また、押圧機構22による押圧を解除したところ、サセプタ3が有していた上に凸の撓みが自然に復元し、その撓み量は3mmであった。
【0032】
[比較例]
(気相成長装置の製作)
撓みを設けない(撓み量0mm)のサセプタを用い、押圧機構による押圧を行わなかった他は実施例と同様の気相成長装置を製作した。サセプタの重力による変形を測定した結果、サセプタの中心部で0.5mm垂れ下っていることが確認できた。
【0033】
以上のように、本発明の実施例の気相成長装置により、重力により変形したサセプタが原料ガス流を妨害し、他の部材に接触することを防止できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、熱CVD法等のための気相成長装置として好適であり、例えば、青色又は紫外の発光ダイオード又はレーザーダイオード等の製造に用いられるIII族窒化物半導体の気相成長装置として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の気相成長装置の一例を示す垂直断面構成図である。
【図2】図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面A−A)である。
【図3】図1に示した気相成長装置の水平断面構成図(断面B−B)である。
【図4】図1に示した気相成長装置に用いられるサセプタの上面構成図である。
【図5】図4のサセプタの垂直断面構成図(断面C−C)であり、気相成長装置に取り付けられる前の押圧がかけられていない状態を示す。
【図6】本発明の気相成長装置の図1以外の一例を示す垂直断面構成図である。
【符号の説明】
【0036】
1 基板
2 基板ホルダー
3 サセプタ
4 サセプタの対面
5 ヒータ
6 反応炉
7 原料ガス導入部
8 反応ガス排出部
9 基板ホルダー回転駆動器
10 基板ホルダー回転駆動軸
11 ツメ
12 基板ホルダー回転板
13 サセプタ回転駆動器
14 サセプタ回転駆動軸
15 サセプタ回転板
16 均熱板
17 ベアリング
18 ベアリング溝
19 反応容器
20 架台
21 蛇腹管
22 押圧機構
23 差込口
24 撓み量
25 歯車リング


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板ホルダー、及び該基板ホルダーを回転自在に保持するサセプタが備えられたフェイスダウン型の気相成長装置であって、中心部が上向きに凸となるように撓ませたサセプタを、上から中心部を押圧して配置したことを特徴とする気相成長装置。
【請求項2】
サセプタが少なくとも基板ホルダーに回転駆動力を伝達するための回転駆動軸を介して押圧される請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項3】
押圧前のサセプタの中心部の撓み量が、1〜10mmである請求項1に記載の気相成長装置。
【請求項4】
押圧後のサセプタの中心部の撓み量が、1mm以下である請求項1に記載の気相成長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−30633(P2013−30633A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165882(P2011−165882)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000229601)日本パイオニクス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】