説明

気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を備える多気筒内燃機関

【課題】異常検出実行による排気エミッション悪化を抑制することができる多気筒内燃機関を提供する。
【解決手段】排気ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段(20,21)と、所定の対象気筒の燃料噴射量を増量し、少なくとも当該増量後の対象気筒の回転変動に基づき、気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段(100)と、排気通路内に二次空気を導入する二次空気導入手段(30、32,34)とを備えている。そして、検出手段による燃料噴射量の増量に対応させて、二次空気導入手段による二次空気の導入を実行制御することで、排気エミッション悪化を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気筒間空燃比のばらつき異常検出装置を備える多気筒内燃機関に係り、特に、検出時における排気エミッションの悪化を抑制することのできる多気筒内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、触媒を利用した排気浄化システムを備える内燃機関では、排気中有害成分の触媒による浄化を高効率で行うため、内燃機関で燃焼される混合気の空気と燃料との混合割合、すなわち空燃比のコントロールが欠かせない。こうした空燃比の制御を行うため、内
燃機関の排気通路に空燃比センサを設け、これによって検出された空燃比を所定の目標空燃比に一致させるようフィードバック制御を実施している。
【0003】
一方、多気筒内燃機関においては、通常、全気筒に対し同一の制御量を用いて空燃比制御を行うため、空燃比制御を実行したとしても実際の空燃比が気筒間でばらつくことがある。このときばらつきの程度が小さければ、空燃比フィードバック制御で吸収可能であり、また触媒でも排気中有害成分を浄化処理可能なので、排気エミッションに影響を与えず、特に問題とならない。
【0004】
しかし、例えば一部の気筒の燃料噴射系が故障するなどして、気筒間の空燃比が大きく
ばらつくと、排気エミッションを悪化させてしまい、問題となる。このような排気エミッションを悪化させる程の大きな空燃比ばらつきは異常として検出するのが望ましい。特に
自動車用内燃機関の場合、排気エミッションが悪化した車両の走行を未然に防止するため、気筒間空燃比ばらつき異常を車載状態で検出することが要請されており(所謂OBD;
On-Board Diagnostics)、最近ではこれを法規制化する動きもある。
【0005】
例えば特許文献1に記載の装置においては、いずれかの気筒に空燃比異常が生じていると判断した場合に、空燃比異常となっている気筒が失火するまでの間、各気筒へ噴射する燃料の噴射時間を所定時間ずつ短縮させ、これによって異常気筒を特定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−112244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、いずれかの気筒に空燃比異常が生じている場合、当該気筒の燃料噴射量を強制的に増量または減量すると、当該気筒の回転変動が顕著に大きくなる。よってこのような回転変動の増大を検出することで、空燃比ばらつき異常を検出することが可能である。
【0008】
しかし、燃料噴射量の増量または減量は排気エミッションを少なからず悪化させてしまう。よって燃料噴射量の増量または減量は、排気エミッションを極力悪化させない形式で行うのが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、異常検出実行による排気エミッション悪化を抑制することができる、気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を備える多気筒内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を備える多気筒内燃機関の一形態は、排気ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段と、所定の対象気筒の燃料噴射量を増量し、少なくとも当該増量後の前記対象気筒の回転変動に基づき、気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、排気通路内に二次空気を導入する二次空気導入手段と、前記検出手段による前記燃料噴射量の増量に対応させて、前記二次空気導入手段による二次空気の導入を実行制御する導入実行制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この形態によれば、検出手段による燃料噴射量の増量に対応させて、導入実行制御手段により、二次空気導入手段による二次空気の導入が実行制御される。したがって、この二次空気の導入量を燃料噴射量の増量分に対応させて導入することにより、排気ガスの空燃比が所定の値に制御される。この結果、異常検出実行による排気エミッション悪化を抑制することができる。
【0012】
ここで、前記導入実行制御手段は、前記空燃比検出手段により検出される空燃比が基準値になるように二次空気の導入量をフィードバック制御してもよい。この形態によれば、二次空気の導入量は空燃比が基準値になるようにフィードバック制御されるので、より精確に排気エミッション悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異常検出実行による排気エミッション悪化を極力防止することができ
るという、優れた効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の概略図である。
【図2】触媒前センサおよび触媒後センサの出力特性を示すグラフである。
【図3】回転変動を表す値を説明するためのタイムチャートである。
【図4】回転変動を表す別の値を説明するためのタイムチャートである。
【図5】燃料噴射量を増量または減量したときの回転変動の変化を示すグラフである。
【図6】燃料噴射量の増量と、増量前後の回転変動の変化との様子を示す図である。
【図7】本発明の実施形態におけるアクティブリッチ制御について、その制御ルーチン示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施形態における二次空気導入制御について、その制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0016】
図1に本実施形態に係る内燃機関を概略的に示す。図示される内燃機関(エンジン)1は自動車に搭載されたV型8気筒火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)である。エンジン1は第1のバンクB1と第2のバンクB2とを有し、第1のバンクB1には奇数番気筒、すなわち、#1,#3,#5,#7気筒が設けられ、第2のバンクB2には偶数番気筒、すなわち、#2,#4,#6,#8気筒が設けられている。#1,#3,#5,#7気筒が第1の気筒群をなし、#2,#4,#6,#8気筒が第2の気筒群をなす。
【0017】
各気筒にはインジェクタ(燃料噴射弁)2が設けられている。インジェクタ2は、対応気筒の吸気通路、特に吸気ポート(図示せず)内に向けて燃料を噴射する。また各気筒には、筒内の混合気に点火するための点火プラグ13が設けられている。
【0018】
吸気を導入するための吸気通路7は、前記吸気ポートの他、集合部としてのサージタンク8と、各気筒の吸気ポートおよびサージタンク8を結ぶ複数の吸気マニホールド9と、サージタンク8の上流側の吸気管10とを含む。吸気管10には、上流側から順にエアフローメータ11と電子制御式スロットルバルブ12とが設けられている。エアフローメータ11は吸気流量に応じた大きさの信号を出力する。
【0019】
第1のバンクB1に対して第1の排気通路14Aが設けられ、第2のバンクB2に対して第2の排気通路14Bが設けられる。これら第1および第2の排気通路14A,14Bは、下流触媒19の上流側で合流されている。この合流位置より上流側の排気系の構成は両バンクで同一なので、ここでは第1のバンクB1側についてのみ説明し、第2のバンクB2側については図中同一符号を付して説明を省略する。
【0020】
第1の排気通路14Aは、#1,#3,#5,#7の各気筒の排気ポート(図示せず)と、これら排気ポートの排気ガスを集合させる排気マニホールド16と、排気マニホールド16の下流側に設置された排気管17とを含む。そして排気管17には上流触媒18が設けられている。上流触媒18の上流側及び下流側(直前及び直後)にそれぞれ、排気ガスの空燃比を検出するための空燃比センサである、触媒前センサ20及び触媒後センサ21が設置されている。このように、一方のバンクに属する複数の気筒(あるいは気筒群)に対して、上流触媒18、触媒前センサ20及び触媒後センサ21が各一つずつ設けられている。
【0021】
さらに、排気管17の上流触媒18の上流には、それぞれ二次空気導入管30が開口して配置されており、それぞれの二次空気導入管30はエアポンプ32に接続されている。そして、二次空気導入管30にはエアポンプ32の下流側に制御バルブ34が設けられている。さらに、それぞれの二次空気導入管30でエアポンプ32と制御バルブ34との間には、必要に応じて、圧力センサ36が設けられてもよい。ここで、エアポンプ32の代わりに、所定の圧縮圧力に維持されたエアタンク(不図示)を用いることも可能である。なお、それぞれの二次空気導入管30が1つの共通するエアポンプ32のみを備えること、また、第1および第2の排気通路14A,14Bを合流させないで、これらに個別に下流触媒19を設けることも可能である。
【0022】
エンジン1には、制御手段および検出手段としての電子制御ユニット(以下ECUと称す)100が設けられている。ECU100は、何れも図示されないCPU、ROM、RAM、入出力ポート、および記憶装置等を含むものである。ECU100には、前述のエアフローメータ11、触媒前センサ20、触媒後センサ21のほか、エンジン1のクランク角を検出するためのクランク角センサ22、アクセル開度を検出するためのアクセル開度センサ23、エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ24、その他の各種センサが図示されないA/D変換器等を介して電気的に接続されている。ECU100は、各種センサの検出値等に基づき、所望の出力が得られるように、インジェクタ2、点火プラグ13、スロットルバルブ12等を制御し、燃料噴射量、燃料噴射時期、点火時期、スロットル開度等を制御する。
【0023】
スロットルバルブ12にはスロットル開度センサ(図示せず)が設けられ、スロットル開度センサからの信号がECU100に送られる。ECU100は、通常、アクセル開度に応じて定まる開度に、スロットルバルブ12の開度(スロットル開度)をフィードバック制御する。
【0024】
またECU100は、エアフローメータ11からの信号に基づき、単位時間当たりの吸入空気の量すなわち吸入空気量を検出する。そしてECU100は、検出したアクセル開度、スロットル開度および吸入空気量の少なくとも一つに基づき、エンジン1の負荷を検出する。
【0025】
ECU100は、クランク角センサ22からのクランクパルス信号に基づき、クランク角自体を検出すると共にエンジン1の回転数を検出する。ここで「回転数」とは単位時間当たりの回転数のことをいい、回転速度と同義である。本実施形態では1分間当たりの回転数rpmのことをいう。
【0026】
触媒前センサ20は所謂広域空燃比センサからなり、比較的広範囲に亘る空燃比を連続的に検出可能である。図2に触媒前センサ20の出力特性を示す。図示するように、触媒前センサ20は、検出した排気空燃比(触媒前空燃比A/Ff)に比例した大きさの電圧信号Vfを出力する。排気空燃比がストイキ(理論空燃比、例えばA/F=14.5)であるときの出力電圧はVreff(例えば約3.3V)である。
【0027】
他方、触媒後センサ21は所謂O2センサからなり、ストイキを境に出力値が急変する特性を持つ。図2に触媒後センサ21の出力特性を示す。図示するように、排気空燃比(触媒後空燃比A/Fr)がストイキであるときの出力電圧、すなわちストイキ相当値はVrefr(例えば0.45V)である。触媒後センサ21の出力電圧は所定の範囲(例えば0〜1V)内で変化する。概して、排気空燃比がストイキよりリーンのとき、触媒後センサの出力電圧Vrはストイキ相当値Vrefrより低くなり、排気空燃比がストイキよりリッチのとき、触媒後センサの出力電圧Vrはストイキ相当値Vrefrより高くなる。
【0028】
上流触媒18及び下流触媒19は三元触媒からなり、それぞれに流入する排気ガスの空燃比A/Fがストイキ近傍のときに、排気中の有害成分であるNOx、HCおよびCOを同時に浄化する。この三者を同時に高効率で浄化できる空燃比の幅(ウィンドウ)は比較的狭い。
【0029】
そこで、エンジンの通常運転時、上流触媒18に流入する排気ガスの空燃比をストイキ近傍に制御するための空燃比制御(ストイキ制御)がECU100により実行される。この空燃比制御は、触媒前センサ20によって検出された排気空燃比が所定の目標空燃比であるストイキになるように、混合気の空燃比(具体的には燃料噴射量)をフィードバック制御する主空燃比制御(主空燃比フィードバック制御)と、触媒後センサ21によって検出された排気空燃比がストイキになるように混合気の空燃比(具体的には燃料噴射量)をフィードバック制御する補助空燃比制御(補助空燃比フィードバック制御)とからなる。
【0030】
このように本実施形態において、空燃比の基準値はストイキであり、このストイキに相当する燃料噴射量(ストイキ相当量という)が燃料噴射量の基準値である。但し、空燃比
および燃料噴射量の基準値は他の値とすることもできる。
【0031】
空燃比制御は、バンク単位で若しくはバンク毎に行われる。例えば、第1のバンクB1側の触媒前センサ20および触媒後センサ21の検出値は、第1のバンクB1に属する#1,#3,#5,#7気筒の空燃比フィードバック制御にのみ用いられ、第2のバンクB2に属する#2,#4,#6,#8気筒の空燃比フィードバック制御には用いられない。逆も同様である。あたかも独立した直列4気筒エンジンが二つあるように、空燃比制御が実行される。また空燃比制御においては、同一バンクに属する各気筒に対し同一の制御量が一律に用いられる。
【0032】
さて、例えば、全気筒のうちの一部の気筒(特に1気筒)において、インジェクタ2の故障等が発生し、気筒間に空燃比のばらつき(インバランス:imbalance)が発生することがある。例えば、第1のバンクB1について、インジェクタ2の閉弁不良により#1気筒の燃料噴射量が他の#3,#5,#7気筒の燃料噴射量よりも多くなり、#1気筒の空燃比が他の#3,#5,#7気筒の空燃比よりも大きくリッチ側にずれる場合である。
【0033】
このときでも、前述の空燃比フィードバック制御により比較的大きな補正量を与えれば、触媒前センサ20に供給されるトータルガス(合流後の排気ガス)の空燃比をストイキに制御できる場合がある。しかし、気筒別に見ると、#1気筒がストイキより大きくリッチ、#3,#5,#7気筒がストイキよりリーンであり、全体のバランスとしてストイキとなっているに過ぎず、エミッション上好ましくないことは明らかである。そこで本実施形態では、かかる気筒間空燃比ばらつき異常を検出する装置が装備されている。
【0034】
ここで、気筒間空燃比のばらつき度合いを表す指標値としてインバランス率なる値を用いる。インバランス率とは、複数の気筒のうちある1気筒のみが燃料噴射量ズレを起こしている場合に、その燃料噴射量ズレを起こしている気筒(インバランス気筒)の燃料噴射量がどれくらいの割合で、燃料噴射量ズレを起こしていない気筒(バランス気筒)の燃料噴射量即ち基準噴射量からズレているかを示す値である。インバランス率をIB(%)、インバランス気筒の燃料噴射量をQib、バランス気筒の燃料噴射量、すなわち、基準噴射量をQsとすると、IB=(Qib−Qs)/Qs×100で表される。インバランス率IBが大きいほど、インバランス気筒のバランス気筒に対する燃料噴射量ズレが大きく、空燃比ばらつき度合いは大きい。
【0035】
他方、本実施形態においては、所定の対象気筒の燃料噴射量をアクティブに若しくは強制的に増量または減量し、少なくとも増量または減量後の対象気筒の回転変動に基づき、ばらつき異常を検出する。
【0036】
まず、回転変動について説明する。回転変動とは、エンジン回転速度あるいはクランクシャフト回転速度の変化をいい、例えば、次に述べるような値で表すことができる。本実施形態においては気筒毎の回転変動が検出可能である。
【0037】
図3に回転変動を説明するためのタイムチャートを示す。図示例は直列4気筒エンジンの例であるが、本実施形態のようなV型8気筒エンジンにも適用可能であることが理解されよう。点火順序は#1,#3,#4,#2気筒の順である。
【0038】
図3において、(A)はエンジンのクランク角(°CA)を示す。1エンジンサイクル
は720(°CA)であり、図には逐次的に検出される複数サイクル分のクランク角が鋸
歯状に示されている。
【0039】
図3(B)は、クランクシャフトが所定角度だけ回転するのに要した時間、すなわち回転時間T(s)を示す。ここでは所定角度が30(°CA)であるが、他の値(例えば10(°CA))としてもよい。回転時間Tが長いほどエンジン回転速度は遅く、逆に回転時間Tが短いほどエンジン回転速度は速い。この回転時間Tはクランク角センサ22の出力に基づきECU100により検出される。
【0040】
図3(C)は、後に説明する回転時間差ΔTを示す。図中、「正常」とは、いずれの気筒にも空燃比ずれが生じていない正常な場合を示し、「リーンずれ異常」とは、#1気筒のみにインバランス率IB=−30(%)のリーンずれが生じている異常な場合を示す。リーンずれ異常は例えばインジェクタの噴孔詰まりや開弁不良により生じ得る。
【0041】
まず、各気筒の同一タイミングにおける回転時間TがECUにより検出される。ここでは各気筒の圧縮上死点(TDC)のタイミングにおける回転時間Tが検出される。この回転時間Tが検出されるタイミングを検出タイミングという。
【0042】
次いで、検出タイミング毎に、当該検出タイミングにおける回転時間T2と、直前の検出タイミングにおける回転時間T1との差(T2−T1)がECUにより算出される。この差が図3(C)に示す回転時間差ΔTであり、ΔT=T2−T1である。
【0043】
通常、クランク角がTDCを超えた後の燃焼行程では回転速度が上昇するため回転時間
Tが低下し、その後の圧縮行程では回転速度が低下するため回転時間Tが増大する。
【0044】
しかしながら、図3(B)に示すように#1気筒がリーンずれ異常の場合、#1気筒を点火させても十分なトルクが得られず、回転速度が上昇しづらいので、その影響で#3気筒TDCにおける回転時間Tは大きくなっている。それ故、#3気筒TDCにおける回転時間差ΔTは、図3(C)に示すように大きな正の値となる。この#3気筒TDCにおける回転時間および回転時間差をそれぞれ#1気筒の回転時間および回転時間差とし、それぞれT1およびΔT1で表す。他の気筒についても同様である。
【0045】
次に、#3気筒は正常であるので、#3気筒を点火させたときには回転速度が急峻に上昇する。これにより次の#4気筒TDCのタイミングでは、#3気筒TDCのときに比べ回転時間Tが若干低下しているに過ぎない。それ故、#4気筒TDCにおいて検出された#3気筒の回転時間差ΔT3は、図3(C)に示すように小さな負の値となる。このようにある気筒の回転時間差ΔTが、次点火気筒TDC毎に検出される。
【0046】
以降の#2気筒TDCおよび#1気筒TDCにおいても#4気筒TDCのときと同様の傾向が見られ、両タイミングにおいて検出された#4気筒の回転時間差ΔT4および#2気筒の回転時間差ΔT2はともに小さな負の値となっている。以上の特性が1エンジンサイクル毎に繰り返される。
【0047】
このように、各気筒の回転時間差ΔTは、各気筒の回転変動を表す値であり、各気筒の空燃比ずれ量に相関した値であることが分かる。そこで各気筒の回転時間差ΔTを各気筒の回転変動の指標値として用いることができる。各気筒の空燃比ずれ量が大きいほど、各気筒の回転変動は大きくなり、各気筒の回転時間差ΔTは大きくなる。
【0048】
他方、図3(C)に示すように、正常の場合には回転時間差ΔTが常時ゼロ付近である。図3の例ではリーンずれ異常の場合を示したが、逆のリッチずれ異常、すなわち1気筒のみに大きなリッチずれが生じている場合にも、同様の傾向がある。大きなリッチずれが生じた場合、点火しても燃料過多のため燃焼が不十分となり、十分なトルクが得られず、回転変動が大きくなるからである。
【0049】
次に、図4を参照して、回転変動を表す別の値を説明する。図4(A)は、図3(A)と同様にエンジンのクランク角(°CA)を示す。図4(B)は、前記回転時間Tの逆数である角速度ω(rad/s)を示す。ω=1/Tである。当然ながら、角速度ωが大きいほどエンジン回転速度は速く、角速度ωが小さいほどエンジン回転速度は遅い。角速度ωの波形は、回転時間Tの波形を上下反転した形となる。図4(C)は、前記回転時間差ΔTと同様、角速度ωの差である角速度差Δωを示す。角速度差Δωの波形も、回転時間差ΔTの波形を上下反転した形となる。図中の「正常」および「リーンずれ異常」については図3と同様である。
【0050】
まず、各気筒の同一タイミングにおける角速度ωがECUにより検出される。ここでも
各気筒の圧縮上死点(TDC)のタイミングにおける角速度ωが検出される。角速度ωは、1を前記回転時間Tで除することにより算出される。
【0051】
次いで、検出タイミング毎に、当該検出タイミングにおける角速度ω2と、直前の検出タイミングにおける角速度ω1との差(ω2−ω1)がECUにより算出される。この差が図4(C)に示す角速度差Δωであり、Δω=ω2−ω1である。
【0052】
通常、クランク角がTDCを超えた後の燃焼行程では回転速度が上昇するため角速度ωが上昇し、その後の圧縮行程では回転速度が低下するため角速度ωが低下する。
【0053】
しかしながら、図4(B)に示すように#1気筒がリーンずれ異常の場合、#1気筒を点火させても十分なトルクが得られず、回転速度が上昇しづらいので、その影響で#3気筒TDCにおける角速度ωは小さくなっている。それ故、#3気筒TDCにおける角速度差Δωは、図4(C)に示すように大きな負の値となる。この#3気筒TDCにおける角速度および角速度差をそれぞれ#1気筒の角速度および角速度差とし、それぞれω1およびΔω1で表す。他の気筒についても同様である。
【0054】
次に、#3気筒は正常であるので、#3気筒を点火させたときには回転速度が急峻に上昇する。これにより次の#4気筒TDCのタイミングでは、#3気筒TDCのときに比べ角速度ωが若干上昇するに過ぎない。それ故、#4気筒TDCにおいて検出された#3気筒の角速度差Δω3は、図4(C)に示すように小さな正の値となる。このようにある気筒の角速度差Δωが、次点火気筒TDC毎に検出される。
【0055】
以降の#2気筒TDCおよび#1気筒TDCにおいても#4気筒TDCのときと同様の傾向が見られ、両タイミングにおいて検出された#4気筒の角速度差Δω4および#2気筒の角速度差Δω2はともに小さな正の値となっている。以上の特性が1エンジンサイクル毎に繰り返される。
【0056】
このように、各気筒の角速度差Δωは、各気筒の回転変動を表す値であり、各気筒の空燃比ずれ量に相関した値であることが分かる。そこで各気筒の角速度差Δωを各気筒の回転変動の指標値として用いることができる。各気筒の空燃比ずれ量が大きいほど、各気筒の回転変動は大きくなり、各気筒の角速度差Δωは小さくなる(マイナス方向に大きくなる)。
【0057】
他方、図4(C)に示すように、正常の場合には角速度差Δωが常時ゼロ付近である。
逆のリッチずれ異常の場合にも同様の傾向がある点は上述した通りである。
【0058】
次に、ある1気筒の燃料噴射量をアクティブに増量または減量したときの回転変動の変化を、図5を参照して説明する。図5において、横軸はインバランス率IBを示し、縦軸は回転変動の指標値としての角速度差Δωを示す。ここでは、全8気筒のうちある1気筒のみのインバランス率IBを変化させ、このときの当該1気筒のインバランス率IBと、当該1気筒の角速度差Δωとの関係を線aで示す。当該1気筒をアクティブ対象気筒という。他の気筒は全てバランス気筒であり、基準噴射量Qsとしてストイキ相当量を噴射しているものとする。
【0059】
横軸において、IB=0(%)とは、アクティブ対象気筒のインバランス率IBが0(%)で、アクティブ対象気筒がストイキ相当量を噴射している正常な場合を意味する。このときのデータが、線a上のプロットbで示される。このIB=0(%)の状態から図中左側に移動すると、インバランス率IBがプラス方向に増加し、燃料噴射量としては過多すなわちリッチな状態となる。逆に、IB=0(%)から図中右側に移動すると、インバランス率IBがマイナス方向に増加し、燃料噴射量としては過少すなわちリーンな状態となる。
【0060】
特性線aから分かるように、アクティブ対象気筒のインバランス率IBが0(%)からプラス方向に増加してもマイナス方向に増加しても、アクティブ対象気筒の回転変動は大きくなり、アクティブ対象気筒の角速度差Δωが0付近からマイナス方向に大きくなる傾向にある。そして、インバランス率IBが0(%)から離れるほど、特性線aの傾きが急になり、インバランス率IBの変化に対する角速度差Δωの変化は大きくなる傾向にある。
【0061】
ここで、矢印cで示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を、ストイキ相当量(IB=0(%))から所定量、強制的に増量したとする。図示例ではインバランス率で約40(%)相当の増量がなされている。このとき、IB=0(%)の近辺では特性線aの傾きが緩やかであることから、増量後においても角速度差Δωは増量前とほぼ変わらず、増量前後の角速度差Δωの差は極小さい。
【0062】
他方、プロットdで示すように、アクティブ対象気筒において既にリッチずれが生じており、そのインバランス率IBが比較的大きなプラス側の値になっているときを考える。図示例ではインバランス率で約50(%)のリッチずれが生じている。この状態から矢印eで示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を同一量、強制的に増量したとすると、この領域では特性線aの傾きが急であることから、増量後の角速度差Δωは増量前より大きくマイナス側に変化し、増量前後の角速度差Δωの差は大きくなる。すなわち燃料噴射量の増量により、アクティブ対象気筒の回転変動は大きくなる。
【0063】
よって、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量増量したときの少なくとも増量後のアクティブ対象気筒の角速度差Δωに基づき、ばらつき異常を検出することが可能である。
【0064】
すなわち、増量後の角速度差Δωが、図示するように所定の負の異常判定値αより小さい場合(Δω<α)には、ばらつき異常有りと判定し、且つアクティブ対象気筒を異常気筒と特定することができる。逆に、増量後の角速度差Δωが異常判定値αより小さくない場合(Δω≧α)には、少なくともアクティブ対象気筒を正常と判定することができる。
【0065】
あるいは代替的に、図示するように、増量前後の角速度差Δωの差dΔωに基づき、ばらつき異常を検出することも可能である。この場合、増量前の角速度差をΔω1、増量後の角速度差をΔω2とすると、両者の差dΔωをdΔω=Δω1−Δω2と定義することができる。そして差dΔωが所定の正の異常判定値β1を超えた場合(dΔω≧β1)、ばらつき異常有りと判定し、且つアクティブ対象気筒を異常気筒と特定することができる。逆に、差dΔωが異常判定値β1を超えない場合(dΔω<β1)、少なくともアクティブ対象気筒を正常と判定することができる。
【0066】
インバランス率が負の領域で強制減量を行ったときも同様のことが言える。矢印fで示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量をストイキ相当量(IB=0(%))から所定量、強制的に減量したとする。図示例ではインバランス率で約10(%)相当の減量がなされている。増量量に比べ減量量が少ないのは、リーンずれ異常気筒に対しあまりに多くの減量を行ってしまうと失火してしまうからである。このとき、特性線aの傾きが比較的緩やかであることから、減量後の角速度差Δωは減量前より若干小さくなっているだけで、増量前後の角速度差Δωの差は小さい。
【0067】
他方、プロットgで示すように、アクティブ対象気筒において既にリーンずれが生じており、そのインバランス率IBが比較的大きなマイナス側の値になっているときを考える。図示例ではインバランス率で約−20(%)のリーンずれが生じている。この状態から矢印hで示すように、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を同一量、強制的に減量したとすると、この領域では特性線aの傾きが比較的急であることから、減量後の角速度差Δωは減量前より大きくマイナス側に変化し、減量前後の角速度差Δωの差は大きくなる。すなわち燃料噴射量の減量により、アクティブ対象気筒の回転変動は大きくなる。
【0068】
よって、アクティブ対象気筒の燃料噴射量を強制的に所定量減量したときの少なくとも減量後のアクティブ対象気筒の角速度差Δωに基づき、ばらつき異常を検出することが可能である。
【0069】
すなわち、減量後の角速度差Δωが図示するように所定の負の異常判定値αより小さい場合(Δω<α)には、ばらつき異常有りと判定し、且つアクティブ対象気筒を異常気筒と特定することができる。逆に、減量後の角速度差Δωが異常判定値αより小さくない場合(Δω≧α)には、少なくともアクティブ対象気筒を正常と判定することができる。
【0070】
あるいは代替的に、図示するように、減量前後の角速度差Δωの差dΔωに基づき、ばらつき異常を検出することも可能である。この場合も両者の差dΔωをdΔω=Δω1−Δω2と定義することができる。差dΔωが所定の正の異常判定値β2を超えた場合(dΔω≧β2)、ばらつき異常有りと判定し、且つアクティブ対象気筒を異常気筒と特定することができる。逆に、差dΔωが異常判定値β2を超えない場合(dΔω<β2)、少なくともアクティブ対象気筒を正常と判定することができる。
【0071】
ここでは増量量が減量量より顕著に多いため、増量時の異常判定値β1を減量時の異常判定値β2より大きくしている。しかしながら、両異常判定値は、特性線aの特性や増量量と減量量のバランス等を考慮して任意に定めることができる。両異常判定値を同じ値とすることも可能である。
【0072】
各気筒の回転変動の指標値として回転時間差ΔTを用いた場合にも、同様の方法で異常検出および異常気筒特定が可能であることが理解されるであろう。また、各気筒の回転変動の指標値としては、上述した以外の他の値を用いることも可能である。
【0073】
図6には、全8気筒についての燃料噴射量の増量と、増量前後の回転変動の変化との様子を示す。上段が増量前、下段が増量後である。左右方向の左端列に示されているように、増量の方法としては、全気筒一律且つ同時に同一量増量している。すなわちここでは所定の対象気筒が全気筒である。増量前は全気筒のインジェクタ2に対し、ストイキ相当量の燃料を噴射するよう開弁指令がなされており、増量後は全気筒のインジェクタ2に対し、ストイキ相当量より所定量多い燃料を噴射するよう開弁指令がなされている。
【0074】
この増量の仕方は、全気筒同時に行う方法の他、任意数の気筒ずつ順番に且つ交互に行う方法がある。例えば1気筒ずつ増量したり、2気筒ずつ増量したり、4気筒ずつ増量したりする方法がある。増量を行う対象気筒の数および気筒番号は任意に設定できる。
【0075】
対象気筒数が多いほど、全増量時間を短縮できるメリットがあり、排気エミッションが悪化するデメリットがある。逆に対象気筒数が少ないほど、排気エミッションの悪化を抑制できるメリットがあるが、全増量時間が長期化するデメリットがある。
【0076】
各気筒の回転変動の指標値として、図5と同様、角速度差Δωを用いている。
【0077】
例えば左右方向の中央列に示されている正常時、すなわちいずれの気筒においても空燃比ずれ異常が生じていない場合だと、増量前では全気筒の角速度差Δωがほぼ等しく0付近にあり、全気筒の回転変動が少ない。また増量後でも全気筒の角速度差Δωがほぼ等しく若干マイナス方向に大きくなるだけであり、全気筒の回転変動はそれ程大きくならない。故に、増量前後の角速度差の差dΔωは小さい。
【0078】
しかしながら、左右方向の右端列に示されている異常時だと、正常時とは異なる挙動を
示す。この異常時では、#8気筒にのみインバランス率で50%相当のリッチずれ異常が
生じており、#8気筒のみが異常気筒である。この場合、増量前では、#8気筒以外の残
部気筒の角速度差Δωはほぼ等しく0付近にあるが、#8気筒の角速度差Δωは残部気筒の角速度差Δωより若干マイナス方向に大きい。
【0079】
しかしながらそれでも、#8気筒の角速度差Δωと残部気筒の角速度差Δωとの間にはそれ程差がない。よって増量前の角速度差Δωによっては、異常検出と異常気筒特定を十分な精度で行うことができない。
【0080】
他方、増量後だと増量前に比べて、残部気筒の角速度差Δωはほぼ等しく若干マイナス方向に変化するだけであるが、#8気筒の角速度差Δωは大きくマイナス方向に変化する。よって#8気筒の増量前後の角速度差の差dΔωは、残部気筒のそれより顕著に大きくなる。よってこの違いを利用し、異常検出と異常気筒特定を十分な精度で行うことができる。
【0081】
この場合、#8気筒の差dΔωのみが前記異常判定値β1より大きくなるので、#8気筒にリッチずれ異常があることを検出できる。
【0082】
なお、燃料噴射量を強制減量して何れかの気筒のリーンずれ異常を検出する場合にも、同様の方法を採用できることが理解されるであろう。
【0083】
以上が本実施形態におけるばらつき異常検出の概要である。ところで、燃料噴射量の強制増量は排気エミッション(特にHC、CO)を少なからず悪化させてしまう。燃料噴射量をストイキ相当量からずらすからである。このため、燃料噴射量を強制増量して何れかの気筒のリッチずれ異常を検出する場合、排気エミッションを極力悪化させない形式で検出を行うのが望ましい。
【0084】
そこで、以下に説明する実施形態では、気筒間空燃比ばらつき異常を検出するために燃料噴射量の強制増量を実行するのに対応させて、排気通路内に二次空気を導入するように制御する。又はこの逆にする(二次空気量に対応させて強制増量量を決める)ことにより、異常検出用の強制増量に起因する空燃比のずれを回避し、異常検出実行による排気エミッション悪化を抑制することができる。
【0085】
ここで、当該二次空気導入制御は、エンジンが比較的安定した、例えば、暖機後のアイドル運転時に行われる異常検出用の強制増量制御であるアクティブリッチ制御に対応して行われる。まず、このアクティブリッチ制御について、その制御ルーチンの一例を示す図7のフローチャートを参照して説明する。この制御ルーチンは、ECU100により所定の周期毎に繰り返し実行される。すなわち、エンジンの始動などに伴い制御がスタートすると、ステップS701でエンジンの暖機運転が完了したか否かが、例えば、エンジン冷却水の温度を検出するための水温センサ24からの計測値に基づき判断される。完了していなければ完了するまで待って、ステップS702に進む。そして、そこでエンジンがアイドル回転中であるか否かが、例えば、クランク角センサ22によるエンジン回転数とアクセル開度センサ23によるエンジン負荷とに基づき判断される。ここでも、アイドル回転になるまで待って、ステップS703に進む。ステップS703においては、後述するアクティブリッチ制御の実行フラグがオンであるか否かが判断され、オンである(YES)ときはエンジンの始動後に、少なくとも1回アクティブリッチ制御が実行されたものとして、この制御ルーチンは終了される。そして、オフ(NO)のときは、ステップS704に進んでアクティブリッチ制御が実行される。また、このアクティブリッチ制御の実行が終了すると、ステップS705に進んで上述のアクティブリッチ制御の実行フラグをオンにして、この制御ルーチンは終了される。
【0086】
そこで、このアクティブリッチ制御の実行に対応して行われる二次空気導入制御について、図8のフローチャートに示す制御ルーチンの一例を参照して説明する。この制御ルーチンも、ECU100により所定の周期毎に繰り返し実行される。制御がスタートすると、ステップS801でアクティブリッチ制御が実行中か否かが判断される。そして、アクティブリッチ制御が実行中であるときはステップS802に進んで二次空気導入制御を実行し、アクティブリッチ制御が実行中でないときは、この制御ルーチンは一旦終了される。
【0087】
なお、上記アクティブリッチ制御の実行中には空燃比フィードバック制御が停止させられ、燃料噴射量はオープン制御により制御される。このとき燃料噴射量は特に限定されるものではないが、例えば、14.0といった空燃比相当の量に制御される。
【0088】
そこで、このステップS802で実行される二次空気導入制御においては、上記アクティブリッチ制御における燃料噴射量の増量分に対応させて、この二次空気の導入量を制御して二次空気導入管30から導入することにより、上流触媒18及び下流触媒19を流れる排気ガスの空燃比を所定の値(例えば、基準値であるストイキ)に制御して、排気エミッション悪化を抑制するのである。
【0089】
ここで、この二次空気の導入量を制御する形態は種々可能であり、特に限定されるものではないが、それらを例示すると以下の第1ないし第4の態様がある。
【0090】
すなわち、第1の態様は、エアポンプ32がそのオン作動時に一定のエア流量Aqの吐出能力を有する電動ポンプである。この第1の態様の場合は、図1に示されている制御バルブ34はエアポンプ32のオン作動時に開く単なる開閉バルブであり、この一定のエア流量Aqに対応させて、排気ガスの空燃比が所定の値(例えば、基準値であるストイキ)になるように、上記アクティブリッチ制御における燃料噴射量の増量分が決定される。換言すると、エアポンプ32の吐出能力を優先させて、燃料噴射量の増量分が決定されるのである。
【0091】
次に、第2の態様は、図1に示されている制御バルブ34が、例えば、デューティ制御により流量が制御される流量制御バルブである。そして、エアポンプ32はそれへの印加電圧に応じて段階的に吐出エア流量Aqが変わる電動ポンプを用いている。かくて、この第2の態様では、アクティブリッチ制御における燃料噴射量の増量分(例えば、ストイキ相当量の35%、または20%増量分など)に対応させて、排気ガスの空燃比がストイキになるように、印加電圧を変えてエアポンプ32の吐出エア流量Aqを段階的に変えると共に、制御バルブ34をデューティ制御して二次空気導入管30から導入される二次空気の導入量が制御される。この第2の態様によれば、二次空気の導入量を精度よく制御することができる。
【0092】
また、第3の態様は、二次空気導入管30にエアポンプ32と制御バルブ34との間で配置された圧力センサ36を備え、この圧力センサ36により検出される圧力に基づいてエア流量Aqをモニターしつつ、制御バルブ34をデューティ制御して二次空気導入管30から導入される二次空気の導入量を制御するようにしている。この第3の態様によれば、両エアポンプ32において機差ばらつきが存在するような場合でも、それぞれの制御バルブ34を制御するデューティ比を変更することにより、容易に流量を補正することができる。
【0093】
さらに、第4の態様を説明する。この第4の態様は、上述の第1ないし第3の態様がオープン制御であるのに対し、フィードバック制御である点において異なっている。すなわち、この第4の態様では、上述の第2および第3の態様に加えて、上流触媒18の下流の触媒後センサ21によって検出された排気空燃比がストイキになるように、二次空気導入管30から導入される二次空気の導入量をフィードバック制御する。すなわち、二次空気導入量が上述の所望の量になるように、制御バルブ34のデューティ比がフィードバック制御されるのである。この第4の態様によれば、二次空気の導入量は排気空燃比がストイキ(基準値)になるようにフィードバック制御されるので、より精確に排気エミッション悪化を抑制することができる。
【0094】
以上、本発明を上述の実施形態およびその変形例等に基づいて説明したが、本発明は当該実施形態にのみ限定されないことは明らかである。また、本発明は、種々の形式の2つ以上の気筒を有する多気筒エンジンで、ポート噴射形式のエンジンのみならず、筒内噴射形式のエンジン、ガスを燃料として用いるエンジンなどにも適用され得る。
【符号の説明】
【0095】
1 内燃機関(エンジン)
2 インジェクタ
11 エアフローメータ
12 スロットルバルブ
18 上流触媒
19 下流触媒
20 触媒前センサ
21 触媒後センサ
22 クランク角センサ
23 アクセル開度センサ
30 二次空気導入管
32 エアポンプ
34 制御バルブ
36 圧力センサ
100 電子制御ユニット(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの空燃比を検出する空燃比検出手段と、
所定の対象気筒の燃料噴射量を増量し、少なくとも当該増量後の前記対象気筒の回転変
動に基づき、気筒間空燃比ばらつき異常を検出する検出手段と、
排気通路内に二次空気を導入する二次空気導入手段と、
前記検出手段による前記燃料噴射量の増量に対応させて、前記二次空気導入手段による二次空気の導入を実行制御する導入実行制御手段と、
を備えることを特徴とする気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を備える多気筒内燃機関。
【請求項2】
前記導入実行制御手段は、前記空燃比検出手段により検出される空燃比が基準値になるように二次空気の導入量をフィードバック制御することを特徴とする請求項1に記載の気筒間空燃比ばらつき異常検出装置を備える多気筒内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−246903(P2012−246903A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121784(P2011−121784)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】