説明

水晶振動片の製造方法

【課題】量産性に優れ、振動部の占有割合の高い逆メサ型の水晶振動片の製造方法を提供する。
【解決手段】ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハ30を用いた水晶振動片10の製造方法であって、+Y′軸側主面から加工を施す場合に、振動部16を構成する肉薄部形成領域34と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、前記肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶振動片の製造方法に係り、特に逆メサ型の水晶振動片等を製造する場合に、励振に有効な肉薄部の占有率を大きく採ることに好適な水晶振動片の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波数化と水晶振動片の機械的強度確保の両立を実現可能とする逆メサ型水晶振動片では近年、益々の小型化が要望されてきている。こうした小型薄型化が進められる水晶振動片では、大きな問題として、水晶振動片そのものに起因する問題と、水晶デバイスを構成する上で他の構成部材との間に生ずる問題といった2つの問題が挙げられることが多い。このような問題のうち、水晶振動片そのものに起因する問題としては、次のような事項を挙げることができる。
【0003】
例えば、振動部としての肉薄部の確保に係る問題である。具体的には、小型化が進む水晶振動片の形状形成には、量産性の高いウエットエッチングによる工法が採られることが多い。しかし、ウエットエッチングによる水晶の加工は、水晶の結晶方位の影響を受けてしまう。逆メサ型の水晶振動片を製造する場合、エッチング面に現れる結晶面によって、そのエッチングレートが異なり、振動部としての肉薄部の周囲には、残渣と呼ばれる傾斜面(結晶面)が現れる。
【0004】
水晶振動片を構成する水晶素板のサイズが小さくなった場合、肉厚部から肉薄部に至るまでの残渣の割合が増すこととなり、確保される肉薄部の有効面積が小さくなってしまう。振動部である肉薄部の有効面積が小さくなった場合、励振電極の寸法も小さくせざるを得ない。そして、励振電極の寸法が極端に小さい場合、水晶から安定した信号を取り出すことができなくなったり、エネルギー閉じ込めが不十分となり、周波数温度特性を示すグラフに、支持部からの応力等の影響や、ディップが現れることがある。
【0005】
こうした問題を解消するために、逆メサ型の水晶振動片における肉薄部の占める割合を大きくすることに関する技術が、特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0006】
特許文献1に開示されている逆メサ型の水晶振動片は、逆メサ型の水晶振動片を製造した後に、不要となる肉厚部の一部をダイシングするというものである。
また、特許文献2に開示されている逆メサ型の水晶振動片は、肉薄部の形成を研磨により行い、ダイシングにより個片化するというものである。
【0007】
また、水晶デバイスを製造する上での他の構成部材との間に生ずる問題としては、次のような事項を挙げることができる。例えば、パッケージや基板に水晶振動片を実装した際に生ずる応力と周波数特性に関する問題である。具体的には、パッケージや基板に導電性接着剤やバンプを介して水晶振動片を実装すると、パッケージや基板が受けた応力、あるいは水晶と基板やパッケージの線膨張率の違いによって生ずる応力が水晶振動片に作用する。こうした場合、水晶振動片は周波数特性にズレを生じさせてしまう。
【0008】
このような問題は、水晶振動片の小型化、薄型化が進むほど大きな影響となることより、周波数特性の変化と応力の関係(応力感度)についての研究が進められてきた。このような研究の成果として、非特許文献1には、ATカット水晶素板に関する応力感度についての説明がある。非特許文献1によれば、ATカット水晶素板では、結晶軸であるX軸をY′軸回りに−X軸から、−Z′軸へ向かう方向へ60°または120°回転させた方向が、もっとも応力感度が鈍くなる事が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−33640号公報
【特許文献2】特開2001−144578号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J.M.Ratajski,“The Force Sensitivity of AT−Cut Quartz Crystals”,20th Annual Symposium on Frequency Control,(1966)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献に開示されている逆メサ型の水晶振動片は、確かに肉薄部の占有率は向上する。しかし、両者とも水晶振動片の製造に機械加工を必要とするため、ウエットエッチングのみの工法で製造される水晶振動片に比べて量産性が落ちる。
【0012】
そこで本発明では、量産性に優れ、振動部の占有割合の高い逆メサ型の水晶振動片の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0014】
第1の形態の製造方法は、ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハを用いた水晶振動片の製造方法であって、+Y′軸側主面から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部を、−Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の+Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、前記肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有することを特徴とする水晶振動片の製造方法。
【0015】
第2の形態の製造方法は、ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハを用いた水晶振動片の製造方法であって、+Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部を、−Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、少なくとも前記肉薄部形成領域の+Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、前記振動部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部を前記ウエハの両主面からウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有することを特徴とする水晶振動片の製造方法。
【0016】
[適用例1]水晶素板に対し、振動部を構成する肉薄部と振動部に隣接した肉厚部とをウエットエッチングにより形成する水晶振動片であって、前記水晶素板はATカット水晶素板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸とのそれぞれに平行な縁辺を有し、前記肉薄部の形成は+Y′軸側主面または−Y′軸側主面のいずれか一方から行い、+Y′軸側主面からエッチングを行った場合には少なくとも+Z″軸側端部に肉厚部を設け、−Y′軸側主面からエッチングを行った場合には少なくとも−Z″軸側端部に肉厚部を設けたことを特徴とする水晶振動片。
このようにして構成される水晶振動片によれば、量産性に優れ、水晶素板に対する振動部、すなわち肉薄部の占有割合を高めることができる。
【0017】
[適用例2]適用例1に記載の水晶振動片であって、前記肉薄部において、前記肉厚部を設けた端部以外の端部に肉厚部非形成領域を設けたことを特徴とする水晶振動片。
肉厚部を設けた端部以外の端部に肉厚部を形成しないようにすることで、肉薄部の占有割合増加を確実なものとすることができる。また、適用例1に記載の水晶振動片と同様に、量産性にも優れることとなる。
【0018】
[適用例3]適用例1に記載の水晶振動片であって、前記Z′軸の回転角度の範囲を−60°から−25°とし、+Y′軸側主面からエッチングを行った場合には+Z″軸側端部および+X′軸側端部に肉厚部を設けると共に、−Z″軸側端部および−X′軸側端部に肉厚部非形成領域を設け、−Y′軸側主面からエッチングを行った場合には−Z″軸側端部および−X′軸側端部に肉厚部を設ける共に、+Z″軸側端部および+X′軸側端部に肉厚部非形成領域を設けたことを特徴とする水晶振動片。
このような特徴を有する水晶振動片によれば、量産性に優れ、水晶素板に対する振動部の占有割合を高め、かつ水晶振動片の機械的強度も確保することができる。
【0019】
[適用例4]適用例1に記載の水晶振動片であって、前記Z′軸の回転角度の範囲を−35°から0°とし、+Y′軸側主面からエッチングを行った場合には+Z″軸側端部および−X′軸側端部に肉厚部を設けると共に、−Z″軸側端部および+X′軸側端部に肉厚部非形成領域を設け、−Y′軸側主面からエッチングを行った場合には−Z″軸側端部および+X′軸側端部に肉厚部を設けると共に、+Z″軸側端部および−X′軸側端部に肉厚部非形成領域を設けたことを特徴とする水晶振動片。
このような特徴を有する水晶振動片も、適用例3と同様に、量産性に優れ、水晶素板に対する振動部の占有割合を高め、かつ水晶振動片の機械的強度も確保することができる水晶振動片とすることができる。
【0020】
[適用例5]適用例1に記載の水晶振動片であって、前記Z′軸の回転角度を−30°±5°とし、+Y′軸側主面からエッチングを行った場合には+Z″軸側端部および±X′軸側端部に肉厚部を設けると共に、−Z″軸側端部に肉厚部非形成領域を設け、−Y′軸側主面からエッチングを行った場合には−Z″軸側端部および±X′軸側端部に肉厚部を設けると共に+Z″軸側端部に肉厚部非形成領域を設けたことを特徴とする水晶振動片。
このような特徴を有する水晶振動片も、上記適用例3、適用例4と同様に、量産性に優れ、水晶素板に対する振動部の占有割合を高め、かつ水晶振動片の機械的強度も確保することができる水晶振動片とすることができる。
【0021】
[適用例6]適用例1または適用例2に記載の水晶振動片であって、前記Z′軸の回転角度を−30°±5°とし、±X′軸側縁辺の一部の外周に肉厚部を設けたことを特徴とする水晶振動片。
このような特徴を有する水晶振動片も、上記適用例3〜適用例5と同様に、量産性に優れ、水晶素板に対する振動部の占有割合を高め、かつ水晶振動片の機械的強度も確保することができる水晶振動片とすることができる。
【0022】
[適用例7]適用例1乃至適用例6のいずれかに記載の水晶振動片であって、前記Z′軸の回転角度を−30°±5°とし、前記水晶素板に配設される電極パターンを構成する接続電極を、前記Z″軸に平行な直線上に配設したことを特徴とする水晶振動片。
このような特徴を有する水晶振動片によれば、実装形態において外部応力の影響を受け難くなる。
【0023】
[適用例8]適用例1乃至適用例7のいずれかに記載の水晶振動片であって、前記振動部における一方の主面に、複数の励振電極を形成したことを特徴とする水晶振動片。
このような特徴を有する水晶振動片は、デバイスとして使用した場合、二重モードフィルタを構成することができる。
【0024】
[適用例9]適用例1乃至適用例8のいずれかに記載の水晶振動片をパッケージ内に実装した水晶デバイス。
このような構成とすることで、水晶振動子、または水晶フィルタを提供することができる。
【0025】
[適用例10]適用例1乃至適用例7のいずれかに記載の水晶振動片と、発振回路とを備えたことを特徴とする水晶発振器。
このような構成とすることで、水晶発振器を提供することができる。
【0026】
[適用例11]ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハを用いた水晶振動片の製造方法であって、+Y′軸側主面から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部を、−Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の+Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、前記肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有することを特徴とする水晶振動片の製造方法。
このような特徴を有する水晶振動片の製造方法によれば、2回のエッチング工程のみで上記いずれかの適用例に記載した水晶振動片の外形形状を形成することが可能となる。よって、ウエットエッチングでのバッチ処理による形状形成が可能なため、優れた量産性を誇ることができる。
【0027】
[適用例12]ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハを用いた水晶振動片の製造方法であって、+Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部を、−Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、少なくとも前記肉薄部形成領域の+Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、前記振動部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部を前記ウエハの両主面からウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有することを特徴とする水晶振動片の製造方法。
このような特徴を有する水晶振動片の製造方法によっても、2回のエッチング工程のみで上記いずれかの適用例に記載した水晶振動片の外形形状を形成することが可能となる。よって、ウエットエッチングでのバッチ処理による形状形成が可能なため、優れた量産性を誇ることができる。また、貫通工程である第2のエッチング工程をウエハの両主面から行うことにより、水晶振動片の側面形状を整えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態に係る水晶振動片の構成を示す図である。
【図2】水晶素板の構成を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第2の電極パターンを示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第3の電極パターンを示す図である。
【図5】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第4の電極パターンを示す図である。
【図6】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第5の電極パターンを示す図である。
【図7】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第6の電極パターンを示す図である。
【図8】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第7の電極パターンを示す図である。
【図9】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第8の電極パターンを示す図である。
【図10】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第9の電極パターンを示す図である。
【図11】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第10の電極パターンを示す図である。
【図12】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第11の電極パターンを示す図である。
【図13】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第12の電極パターンを示す図である。
【図14】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用する第13の電極パターンを示す図である。
【図15】第1の実施形態に係る水晶振動片に採用することができるその他の電極パターンを示す図である。
【図16】水晶振動片の製造方法の第1の実施形態に係る工程を示す図である。
【図17】水晶振動片の製造方法の第1の実施形態における第1のエッチング終了時の個片形成領域の断面形状を示す図である。
【図18】水晶振動片の製造方法の第1の実施形態における第2のエッチング終了時の個片形成領域の断面形状を示す図である。
【図19】水晶振動片の製造方法の第2の実施形態に係る工程を示す図である。
【図20】水晶振動片の製造方法の第2の実施形態における第1のエッチング終了時の個片形成領域の断面形状を示す図である。
【図21】水晶振動片の製造方法の第2の実施形態における第2のエッチング終了時の個片形成領域の断面形状を示す図である。
【図22】第1の実施形態に係る水晶振動片の応用形態を示す図である。
【図23】第2の実施形態に係る水晶振動片の構成を示す図である。
【図24】第2の実施形態に係る水晶振動片に採用する第2の電極パターンを示す図である。
【図25】第2の実施形態に係る水晶振動片の応用形態を示す図である。
【図26】第3の実施形態に係る水晶振動片の構成を示す図である。
【図27】第3の実施形態に係る水晶振動片に採用することのできる電極パターンの例を示す図である。
【図28】第3の実施形態に係る水晶振動片の応用形態を示す図である。
【図29】第4の実施形態に係る水晶振動片の構成を示す図である。
【図30】第4の実施形態に係る水晶振動片の応用形態を示す図である。
【図31】発明に係る水晶デバイスに含まれる水晶振動子の構成を示す図である。
【図32】発明に包含される水晶振動子のその他の構成を示す図である。
【図33】接続電極をZ″軸に沿って配置した水晶振動片を実装するための水晶振動子のパッケージ構造を示す図である。
【図34】水晶デバイスとして二重モードフィルタを構成する場合に採用する水晶振動片の構成を示す図である。
【図35】発明に係る水晶デバイスに含まれる水晶発振器のうちの第1の実施形態に係る水晶発振器の構成を示す図である。
【図36】発明に係る水晶デバイスに含まれる水晶発振器のうちの第2の実施形態に係る水晶発振器の構成を示す図である。
【図37】発明に包含される水晶発振器のその他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の水晶振動片の製造方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1〜図21を参照して、本発明の製造方法により製造される水晶振動片に係る第1の実施形態について説明する。なお、図2において図2(A)は実施形態に係る水晶素板の平面構成を示す模式図であり、図2(B)は同水晶素板の断面構成を示す模式図である。
【0030】
水晶振動片10は、水晶素板12と、当該水晶素板12の表面に形成された電極パターンにより構成される。実施形態に係る水晶振動片10では、水晶素板12としてATカットと呼ばれるカット角で切り出された水晶素板をいわゆる面内回転させたものを用いている。ATカットとは、水晶の結晶軸であるX軸とZ軸とを含む平面(Y面)をX軸を基点として+Z軸を−Y軸方向へ約35度15分回転させて得られる主面(X軸とZ′軸とを含む主面)を有するように切り出された水晶素板である。そして、本実施形態に用いる水晶素板は、このX軸とZ′軸とを含む主面の中で、さらにY′軸を基点とし、+Z′軸を+X軸方向へ回転させることを正の回転角としたとき、X軸、Z′軸をそれぞれ−30°±5°程度回転させて得られるX′軸、Z″軸に沿った(平行な)縁辺を有するものである。なお、水晶デバイスの原材料として一般的に使用されているのは右水晶であるが、左水晶を用いた場合であっても、本発明を実施する上で問題は無い。左水晶とは、右水晶の結晶軸に対し、例えばZ軸とX軸とを有する面を基準として、結晶軸を示した際に、当該結晶軸が鏡像関係に位置することとなる水晶である。ここで、左水晶と右水晶とは、その物理定数が同じであるため、結晶軸に従った回転角、カット角等を間違わなければ、水晶素板を形成する上で、上記説明および以下の説明をそのまま適用することで、所望する水晶振動片を構成することができる。
【0031】
図2に示す構成の水晶素板12では、水晶素板12の長手方向をZ″軸、短手方向をX′軸、さらに厚さ方向をY′軸と定めることができる。また、実施形態に係る水晶素板12は、肉薄の振動部16と、これに隣接する固定部となる肉厚部14とを有する。
【0032】
水晶素板12をウエットエッチングにより加工する場合、水晶の結晶方位の異方性により、結晶面の析出によるエッチングレートの相違が生ずることがある。特にATカットと呼ばれるカット角で切り出された水晶素板は、ウエットエッチングによる加工面に現れる残渣(傾斜面)の存在が問題とされることが多い。加工面における残渣の多寡は、カット角や面内回転角等、種々の切り出し角度を要因として変わってくる。
【0033】
例えば、一般的なATカット水晶素板をウエットエッチングにより逆メサ型に加工した場合、肉薄部の2辺、具体的には−Z′軸側段差部と+X軸側段差部に、比較的大きな残渣が現れることとなる。一方、本実施形態で採用する面内回転角で切り出した水晶素板12をウエットエッチングにより逆メサ型に加工した場合、大きな残渣は−Z″軸側の一辺のみに現れることとなる。このような水晶素板12を採用することで、振動部16と肉厚部14との間に生ずる残渣を減らす事ができ、水晶振動片10を構成する上での有効な振動部16の占有率を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態に係る水晶素板12は、外形形状形成時に、残渣が現れる側(−Z″軸側)の肉薄部の端部を肉厚部非形成領域とし、肉厚部をウエットエッチングにより除去している。このように肉厚部の一部を除去することで、残渣が生ずる要因を無くすことができ、水晶振動片10を構成する上で水晶素板12全体に対する振動部16の占有率を向上させることができる。
【0035】
このため、本実施形態に係る水晶素板12は、肉薄の振動部16に隣接する肉厚部14を、−Z″軸側以外の縁辺に沿って略U字状に備えるようにしている。このような構成であっても、水晶振動片10の機械的強度を保つことができるからである。
【0036】
このような外形形状を有する水晶素板12には、励振電極18,24、接続電極22,28、および引出し電極20,26といった電極パターンが設けられる。以下に、本実施形態の水晶素板12に設けられる電極パターンについて、図面を参照して説明する。
【0037】
まず、第1の電極パターンについて、図1を参照して説明する。第1の電極パターンは、振動部16の表面側に配設される励振電極18をZ″軸方向に長辺を有する矩形とし、振動部16の裏面側に配設される励振電極24をX′軸方向に長辺を有する矩形としている。このように、矩形の励振電極18,24同士を振動部16を介した表裏面で交差させるようにし、その一部が振動部16の表と裏で重なるようにすることで、振動部16の表裏に配設される励振電極18,24にズレが生じた場合であっても、励振に寄与することとなる励振電極18,24の重なり部分の面積は同じとなる。よって、量産される水晶振動片10の発振特性の差異を小さくすることができる。
【0038】
接続電極22,28は、+Z″軸側に設けられた肉厚部14の縁辺に沿って設けられ、引出し電極20,26を介して励振電極18,24と電気的に接続されている。引出し電極20,26は、肉厚部14と肉薄の振動部16との段差部を跨ぐ部分の線幅を大きくとるようにすると良い。このような構成とすることにより、電極パターンを構成する金属膜の膜厚が薄くなる傾向にある振動部16と肉厚部14との間の段差部において、引出し電極20,26の断線が生ずることを防止することができる。ここで、引出し電極20は、Z″軸方向に沿って段差部まで配設された励振電極18から、段差部を跨ぐようにして−X′軸側縁辺へと引き回し、当該縁辺に沿って接続電極22まで引き回される。また、引出し電極26は、X′軸に沿って+X′軸側縁辺まで配設された励振電極24から、当該縁辺に沿って+Z″軸側縁辺まで引き回されて接続電極28に接続される。
なお当然に、段差部を跨ぐ引出し電極の幅が狭い場合であっても、本実施形態の一部であることに変わりは無い。
【0039】
また、接続電極28は、裏面側から延びる引出し電極26を水晶素板12の側面を介して表面側へ引き回す事で、励振電極24との電気的接続が図られる。このような構成とすることで、一方の面(例えば表面)に2つの接続電極22,28が配設されることとなる。このため、水晶振動片10を基板やパッケージに実装する際に、導電性接着剤の上塗布をする必要が無くなる。導電性接着剤の上塗布が不要となることにより、過塗布された導電性接着剤が金属性のパッケージ側面や他の電極等に触れ、短絡を生じさせるといった事態を防止することができる。また、水晶振動片10の実装形態として、バンプを用いる事も可能となる等、実装方法の幅を増やすことができる。
【0040】
次に、第2の電極パターンについて、図3を参照して説明する。第2の電極パターンは、上述した第1の電極パターンに対して、水晶素板12の表裏面に配設されるパターンを逆にした形態のものである。よって、その機能を同一とする箇所には同一の符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0041】
次に、第3の電極パターンについて、図4を参照して説明する。第3の電極パターンは、振動部16の表裏面に配設する励振電極18,24の形状、寸法を同一とし、両者の間にズレが無いように配設する。接続電極22,28の配設位置は第1、第2の電極パターンと同様であり、引出し電極20,26は次のような形態としている。すなわち、表面側の励振電極18と接続電極22とを繋ぐ引出し電極20は、Z″軸に沿って肉薄の振動部16と肉厚部14との間の段差部まで引き回され、段差部を跨ぐようにして−X′軸側まで引き回されることで段差部を跨ぐ部分の幅を広くとり、−X′軸側の縁辺に沿って接続電極22へと引き回される。一方、裏面側の励振電極24と表面側に配設した接続電極28とを繋ぐ引出し電極26は、+X′軸側の縁辺まで引き回され、+X′軸側の縁辺に沿って+Z″軸側縁辺まで引き回され、水晶素板12の側面を介して表面側に配設された接続電極28へと引き回される。
【0042】
次に、第4の電極パターンについて、図5を参照して説明する。第4の電極パターンは、上述した第3の電極パターンに対して、水晶素板12の表裏面に配設されるパターンを逆にした形態のものである。よって、その機能を同一とする箇所には同一の符号を付して、詳細な説明は省略することとする。
【0043】
次に、第5の電極パターンについて、図6を参照して説明する。第5の電極パターンは、上述した第3、第4の電極パターンと、引出し電極20,26の引き回し形態を異ならせている。すなわち、表面側の引出し電極20は、励振電極18から−X′軸側の縁辺まで引き回され、−X′軸側の縁辺に沿って+Z″軸側縁辺まで引き回されている。これに対し、裏面側に配設された引出し電極26は、励振電極24から+X′軸側の縁辺まで引き回され、+X′軸側の縁辺に沿って+Z″軸側縁辺まで引き回される。つまり、第5の電極パターンは、水晶素板12の表裏面で対象な形態の電極パターンを形成しているのである。
【0044】
次に、第6の電極パターンについて、図7を参照して説明する。第6の電極パターンは、上述した第5の電極パターンの形態に近似している。相違点としては、表面側の励振電極18の寸法を、裏面側の励振電極24の寸法よりも小さくした点にある。このような構成とすることにより、振動部16の表裏面に配設される、表面励振電極18と励振電極24との間にズレが生じた場合であっても、励振に寄与することとなる振動部16の面積は同じとなる。よって、量産される水晶振動片10の発振特性の差異を小さくすることができる。
【0045】
次に、第7の電極パターンについて、図8を参照して説明する。第7の電極パターンは、上述した第1の電極パターンに近似している。相違点としては、肉厚部14に配設する接続電極22,28を、Z″軸に沿った方向に並べた点にある。このため、表面側の励振電極18と接続電極22、および引出し電極20は、Z″軸に沿って直線上に配設されている。一方、裏面側の励振電極24、引出し電極26の構成は、第1の電極パターンと同じであり、水晶素板12の側面を介して表面側へ引き回された後の構成を異ならせている。すなわち、裏面側の励振電極24と電気的に接続される接続電極28が、表面側の接続電極22、引出し電極20、励振電極18の延長線上に位置するように配置され、表面側へ引き回された引出し電極26がこれに接続されている。ここで、Z″軸の方向は、Y′軸を基点として+X軸を−Z′軸方向へ回転させる回転角を正の回転角として、X軸をY´軸回りに+60°回転させた方向と同じとなる場合に特に有利な効果を奏することとなる。X軸をY′軸回りに+60°回転させた方向(Z′軸をY′軸回りに−30°回転させた方向)は、水晶の振動特性が外力による応力の影響を最も受けにくい方向、すなわち応力感度が最も鈍い方向なのである。このため、この方向に沿って接続電極22,28を配設することにより、支持部を伝って水晶素板12に負荷される応力の影響を抑制することができる。
【0046】
次に、第8の電極パターンについて、図9を参照して説明する。第8の電極パターンは、上述した第7の電極パターンに近似している。相違点としては、裏面側に配設した電極パターンのうちの、引出し電極26を長辺方向中心線(不図示)を基準として線対称に配設した点にある。このようにして引出し電極26を配設することで、表面側へ引き回す際の断線の危険性を低減することができる。
【0047】
次に、第9の電極パターンについて、図10を参照して説明する。第9の電極パターンも、上述した第7の電極パターンに近似している。相違点としては、水晶素板12の表裏面における励振電極18,24の配設方向を逆転させた点(裏面側励振電極24をZ″軸に沿って配設、表面側励振電極18をこれに交差するように配設)。および裏面側引出し電極26の引き回しを葛篭折状とした点にある。引出し電極26の引き回しを図10のような形態とすることで、表裏面におけるパターンの重なり部分が増える事が無い。
【0048】
次に、第10の電極パターンについて、図11を参照して説明する。第10の電極パターンは、上述した第3から第5の電極パターンと、第7の電極パターンとを組み合わせたような形態である。具体的には、振動部16の表裏に配設する励振電極18,24の形状、配設位置を一致させ、接続電極22,28の配設位置をZ″軸に平行な直線上としているのである。そして、励振電極18,24の近傍に位置する引出し電極20,26の線幅を細くすることで、振動部16の表裏における励振電極18,24のズレにより生ずる容量変化を小さくするようにしている。引出し電極20,26に関するその他の構成については、上述した第7の電極パターンと同様である。
【0049】
次に、第11の電極パターンについて、図12を参照して説明する。第11の電極パターンは、上述した第10の電極パターンに、第9の電極パターンの引出し電極20,26を採用した形態である。
【0050】
次に、第12の電極パターンについて、図13を参照して説明する。第12の電極パターンは、上述した第11の電極パターンに近似している。相違点としては、振動部16の表裏に配設する引出し電極20,26を表裏対象、すなわち上述した第5、第6の電極パターンに近似させた点にある。
【0051】
次に、第13の電極パターンについて、図14を参照して説明する。第13の電極パターンは、上述した第10の電極パターンに、第6の電極パターンの励振電極18,24を採用した形態である。
【0052】
なお、上記電極パターンの説明では、いずれも図面において、励振電極は矩形状であるように示したが、例えば第3から第6、第10から第13の電極パターンなどは、円形や楕円、他の多角形等、矩形以外の形状であっても良い。また、上記電極パターンの説明図では、いずれも+Z″軸側に設けられた肉厚部14に、2つの接続電極22,28を配設するように示した。しかしながら、接続電極22,28の配設については、図15に示すように、Z″軸に沿って形成された肉厚部14(±X′軸側縁辺)にZ″軸に沿った方向で配設するようにしても良い。
【0053】
次に、上記のような構成の水晶振動片の製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図16を参照して、水晶振動片の製造方法に係る第1の実施形態について説明する。本発明では、水晶振動片10はウエハ30から、バッチ処理により製造される。まず、ウエハ30の表面に対してマスク32を形成する。マスク32はレジスト等により構成すれば良く、本実施形態の場合、肉厚となる部分、すなわち振動部形成領域(肉薄部形成領域)34と、当該振動部形成領域34の−Z″軸側端部である肉厚部非形成領域の外周部を含む貫通溝形成領域38といった、個片形成領域36の外周部分以外の箇所を保護するマスク32を形成する。なお、本実施形態に係る水晶振動片の製造方法では、ウエハ30の状態で電極パターンの形成までを行うため、水晶振動片10をウエハ30に接続しておくための折り取り部40も、保護部分としてマスク32を形成する(図16(A)参照)。なお、エッチングの方法自体は特に限定するものではない。例えば、ウエハ30の表面を枠で囲い、当該枠内にエッチング液を流し込んで行うようにしても良いし、ウエハ30の裏面および側面をレジスト等により覆った場合には、エッチング液に浸漬しても良い。
【0054】
次に、マスク形成部分以外、すなわち振動部形成領域34と貫通溝形成領域38をウエットエッチングし、ウエハ30の表面に複数の凹陥部を形成する(第1のエッチング)。ここで、本実施形態における第1のエッチングは、+Y′軸側主面から施すようにする(図16(B)参照)。このような条件でエッチングされた水晶素板12を構成する個片形成領域36の断面は、結晶構造の異方性により、図17のような形状となる。なお、図17において、図17(A)は個片形成領域の平面図、図17(B)は同図(A)におけるA−A断面、図17(C)は同図(A)におけるB−B断面を示す図である。図17(B)と図17(A)とを比較すると読み取れるように、本実施形態の製造方法では、−Z″軸側に現れる残渣(斜め部分)42が、肉厚部14の先端部よりも−Z″軸側(先端側)に位置することとなる。
【0055】
次に、一旦マスクを剥離し、ウエハの裏面側にマスク44を形成する。マスクは、肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部を合わせた貫通溝形成領域38のみを開口部とするものであれば良い。新たなマスク44(32)を形成したウエハ30をエッチングし、貫通溝38aを形成する(第2のエッチング)。ウエットエッチングにより貫通溝38aを形成した際の断面は、図18のような形状となる。なお、図18において、図18(A)は個片形成領域36の平面図、図18(B)は同図(A)におけるA−A断面、図18(C)は同図(A)におけるB−B断面を示す図である。図18(B)からも読み取れるように、貫通溝38aの形成工程に係るエッチングを裏面側から実施することにより、肉厚部14側端部(+Z″軸側端部)の張出しを抑えることができる。また、貫通溝38aの形成時にエッチング液が振動部16の表面へ流れ込み、エッチングを進行させる虞があるため、表面側にもマスク32を形成しておくことが望ましい(図16(C)参照)。
【0056】
上記のようにして水晶素板12の外形形状を形成した後、電極パターンの形成を行う。電極パターンの形成は、既存の方法、例えばマスク冶具を用いた蒸着や、蒸着やスパッタにより金属膜を形成した後にフォトリソによりマスク形成を行い、不要部分のエッチングを行う方法等によれば良い。なお、裏面側に配設された引出し電極26(図1等参照)と、表面側に配設された引出し電極26又は接続電極28(図1等参照)との接続は、貫通溝38aを形成した水晶素板12の側面を介して成される。
【0057】
電極パターンの形成を終えたウエハ30から、水晶振動片10を個片化することで、水晶振動片10が完成する。個片化は、折り取り部40から水晶振動片10を折り取る事で成される(図16(D)参照)。
【0058】
次に、水晶振動片の製造方法に係る第2の実施形態について図19を参照して説明する。本実施形態と、上述した第1の実施形態に係る水晶振動片の製造方法との相違点は、第1のエッチングによりエッチングする範囲と、第2のエッチングによりエッチングする範囲を変更した点にある。
【0059】
具体的には、第1のエッチングを行う際には、振動部16を構成する領域(肉薄部形成領域)とエッチング残渣42を考慮した−Z″軸側領域(肉厚部非形成領域の外周部)とを合わせた領域(第1エッチング領域35と称す)以外を覆うマスク32を形成し、振動部16を構成する肉薄部を形成する。なお、第1のエッチングは表面側のみから行う(図19(A)、(B)参照)。
【0060】
次に、一旦マスク32を剥離し、第2のエッチング工程に入る。第2のエッチング工程では、肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部を合わせた貫通溝形成領域以外の領域、すなわち水晶素板12を構成する個片形成領域36、および折り取り部40を被覆するマスク32を形成する。また、第2の実施形態では、ウエハ30の表裏面双方にマスク32,44(図21参照)を形成する。なお、裏面側に形成するマスク44も、表面側に形成するマスク32と同様、貫通溝形成領域以外の領域を被覆するように形成する。
【0061】
上記のようにしてマスク32,44を形成したウエハ30を表裏面双方からウエットエッチングする。貫通溝38aを形成するためのエッチングをウエハ30の表裏面から同時に行うようにすることで、水晶素板12の端部形状が綺麗に仕上がることとなる(図19(C)参照)。
【0062】
上記のようにして水晶素板12の外形形状を形成したウエハ30に対し、電極パターンの形成を行う。電極パターンを形成したウエハ30から、水晶振動片10を個片化し、水晶振動片10が完成する。
【0063】
上記のような構成の水晶振動片10であれば、面内回転角の調整により、ウエットエッチングによる残渣42が大きく現れる箇所を−Z″軸側のみに調整することができる。そして、ウエットエッチングによる残渣42が現れる量の多い−Z″軸側の肉厚部をエッチングすることで、水晶素板12に形成される振動部16の割合を増やすことができる。また、振動部16の割合を増やすことができることにより、水晶振動片10の寸法に対して大きな寸法の励振電極18,24を形成することができる。これにより、エネルギー閉じ込め効果が生じ、温度特性を示すグラフにディップが生ずる事を防ぐことができる。
【0064】
なお、肉薄の振動部16を形成するためのウエットエッチングを施す主面が逆転した場合(−Y′軸側となった場合)、上記Z″軸における±、およびX′軸における±は逆転することとなる。
【0065】
次に、図22を参照して、上記実施形態に係る水晶振動片の応用形態について説明する。本応用形態に係る水晶振動片10は、そのほとんどの構成を上述した第1の実施形態に係る水晶振動片10と同様としている。相違点は、肉薄の振動部16を−Z″軸側以外の縁辺に沿って略U字状に囲う肉厚部14の形態にある。
【0066】
第1の実施形態では自由端側(−Z″軸先端部)まであった肉厚部14を、本応用形態では振動部16の途中までとし、肉厚部14の先端側(−Z″軸側)に、振動部16と一体に形成される肉薄部を設けている。
水晶振動片10の機械的強度に余裕がある場合、このような構成の水晶振動片10であっても、本実施形態の一部とみなすことができる。
【0067】
次に、図23を参照して、本発明の製造方法により製造される水晶振動片に係る第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る水晶振動片は、肉薄部の形成面を+Y′軸側、面内回転角(Y′軸を基点としたZ″軸の回転角)ψを0°≧ψ≧−35°とした場合に特に有効である。なお、本実施形態に係る水晶振動片の構成自体は、第1の実施形態に係る水晶振動片と近似している。このため、その機能を同一とする箇所には、図面にaを足した符号を付してその詳細な説明は省略することとする。
【0068】
上述したように、ATカット水晶素板は、面内回転角を変化させることにより、肉薄の振動部と肉厚部との間に生ずる段差部に現れる残渣に違いが生ずる。上記範囲の回転角度だと、残渣は振動部の+X′軸側と−Z″軸側に現れる割合が多い。このため、本実施形態に係る水晶振動片10aでは、+X′軸側と−Z″軸側に位置する縁辺を構成する肉厚部(従来の形態に係る水晶振動片であれば肉厚部であった部分)をエッチング範囲とし、振動部16aを構成する肉薄部の占有範囲割合を広げたのである。
【0069】
次に、本実施形態に係る水晶振動片の電極パターンの構成について説明する。まず、第1の電極パターンについて説明する。第1の電極パターンは、振動部16aの表面側に配設する励振電極18aをZ″軸に沿って配設し、裏面側に配設する励振電極24aをこれに交差するように配設する形態とした。接続電極22a,28aは、+Z″軸側端部に配設し、引出し電極20a,26aにより励振電極18a,24aと接続電極22a,28aとを接続した。表面側に配設された励振電極18aに接続された引出し電極20aは、Z″軸に沿って肉厚部14aまで引き回され、段差部を跨いだ状態で+X′軸側縁辺まで引き回される。このような構成により、段差部を跨ぐ電極膜の幅が増す事となり、段差部での断線が生じにくくなる。+X′軸側縁辺まで引き回された引出し電極20aは、当該縁辺に沿って接続電極22aまで引き回される。
【0070】
一方、裏面側に配設された励振電極24aに接続された引出し電極26aは、−X′軸側縁辺まで引き回された後、当該縁辺に沿って接続電極28aの裏面側まで引き回される。接続電極28aの裏面側まで引き回された引出し電極26aは、水晶素板12aの側面を介して表面側に設けられた接続電極28aへと引き回される。
【0071】
次に、図24を参照して、第2の電極パターンについて説明する。第2の電極パターンは、上述した第1の電極パターンに対し、水晶素板12aの表裏面における電極パターンの配設の構造を逆転させた形態である。したがって、表面側に配設される引出し電極20aは、−X′軸側に位置する段差部を跨いで肉厚部14と肉薄の振動部16aとの間を引き回されることとなる。
【0072】
上記構成の水晶振動片10aの製造方法については、上述した第1の実施形態に係る水晶振動片10の製造方法と、そのほとんどが同様なため、上記説明を援用することとする。なお、相違点としては、+X′軸側に生ずる残渣を考慮して、当該方向に位置する肉厚部もウエットエッチングにより除去する点を挙げることができる。
【0073】
このような構成の水晶振動片10aは、第1の実施形態に係る水晶振動片に比べ、面内回転角ψが0°に近づくほど、振動部の占有率確保に有利な構成となる。また、ウエットエッチングのみでバッチ処理により外形形状を形成することが可能であるため、引用文献1に記載の水晶振動片に比べ、量産性が高く、端部に割れや欠けが生じない。
【0074】
なお、このような構成の水晶振動片10aであっても、振動部16を形成するためのウエットエッチングを施す主面を逆転させた場合(−Y′軸側からウエットエッチングを行った場合)、上記Z″軸における±、およびX′軸における±が逆転することとなる。
【0075】
次に、図25を参照して本実施形態の応用形態について説明する。本応用形態に係る水晶振動片10aは、そのほとんどの構成を上述した第2の実施形態に係る水晶振動片と同様としている。相違点は、肉薄の振動部16aをL字状に囲う肉厚部14aの形態にある。第2の実施形態では自由端側(−Z″軸先端部)まであった肉厚部を、本応用形態では振動部16aの途中までとし、肉厚部14aの先端側に、振動部16aと一体に形成される肉薄部を設けている。
水晶振動片10aの機械的強度に余裕がある場合、このような構成の水晶振動片であっても良く、本実施形態の一部とみなすことができる。
【0076】
次に、図26を参照して本発明の製造方法により製造される水晶振動片に係る第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る水晶振動片は、肉薄部形成面を+Y′軸側、面内回転角(Y′軸を基点としたZ″軸の回転角)ψを−25°≧ψ≧−60°とした場合に特に有効である。なお、本実施形態に係る水晶振動片の構成自体は、上述した第1、第2の実施形態に係る水晶振動片と近似している。このため、その機能を同一とする箇所には、図面にbを足した符号を付してその詳細な説明は省略することとする。
【0077】
上述したように、ATカット水晶素板は、面内回転角を変化させることにより、肉薄部と肉厚部との間に生ずる段差部に現れる残渣に違いが生ずる。上記範囲の回転角度だと、残渣は肉薄部の−X′軸側と−Z″軸側に現れる割合が多い。このため、本実施形態に係る水晶振動片10bでは、−X′軸側と−Z″軸側に位置する縁辺を構成する肉厚部(従来の形態に係る水晶振動片であれば肉厚部であった部分)をエッチング範囲とし、振動部16bを構成する肉薄部の占有範囲割合を広げたのである。
【0078】
上記のような構成の本実施形態の水晶素板10bに配設される電極パターンの形態は、略第2の実施形態に係る水晶振動片10aの電極パターンの形態と同様である。相違点としては、L字型に設けられる肉厚部14の配置位置の違いに伴う違いである。具体的には、本実施形態に係る水晶振動片10bの電極パターンと、第2の実施形態に係る水晶振動片10aの電極パターンとでは、Z″軸と平行な中心線を基準として、線対称な配置形態となるのである。
【0079】
このような構成の水晶振動片10bも、その製造方法については上述した第1の実施形態に係る水晶振動片10の製造方法と、そのほとんどが同様なため、上記説明を援用することとする。なお、第1の実施形態に係る水晶振動片の製造方法との相違点としては、−X′軸側に生ずる残渣を考慮して、当該方向に位置する肉厚部もウエットエッチングにより除去する点を挙げることができる。
【0080】
このような構成の水晶振動片10bは、面内回転角ψが−30°に近づくほど、振動部16bの占有率確保に有利な構成となる。また、ウエットエッチングのみでバッチ処理により外形形状を形成することが可能であるため、引用文献1に記載の水晶振動片に比べ、量産性が高く、端部に割れや欠けが生じない。
【0081】
なお、肉薄な振動部16bを形成するためのウエットエッチングを施す主面が逆転した場合(−Y′軸側となった場合)、上記Z″軸における±、およびX′軸における±は逆転することとなる。また当然に、図27のように、電極パターンの配設構造を逆転させた水晶振動片10bであっても、本実施形態に係る水晶振動片10bということができる。
【0082】
次に、図28を参照して本実施形態の応用形態について説明する。本応用形態に係る水晶振動片10bは、そのほとんどの構成を上述した第3の実施形態に係る水晶振動片と同様としている。相違点は、肉薄の振動部16bをL字状に囲う肉厚部14bの形態にある。第3の実施形態では自由端側(−Z″軸先端部)まであった肉厚部を、本応用形態では振動部16bの途中までとし、肉厚部14bの先端側に、振動部16bと一体に形成される肉薄部を設けている。
水晶振動片10bの機械的強度に余裕がある場合、このような構成の水晶振動片であっても良く、本実施形態の一部とみなすことができる。
【0083】
次に、図29を参照して本発明の製造方法により製造される水晶振動片に係る第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る水晶振動片は、肉薄部形成面を+Y′軸側、面内回転角(Y′軸を基点としたZ″軸の回転角)ψを−120°≧ψ≧+60°とした場合に特に有効である。なお、本実施形態に係る水晶振動片の構成自体は、上述した第1〜第3の実施形態に係る水晶振動片と近似している。このため、その機能を同一とする箇所には、図面にcを足した符号を付してその詳細な説明は省略することとする。
【0084】
第2、第3の実施形態でも述べたように、ATカット水晶板は、面内回転角を変化させることにより、肉薄部と肉厚部との間に生ずる段差部に現れる残渣に違いが生ずる。上記範囲の回転角度だと、残渣は肉薄部の±X′軸側と−Z″軸側にその量を増減しながら現れる。このため、本実施形態に係る水晶振動片10cでは、±X′軸側と−Z″軸側に位置する縁辺を構成する肉厚部(従来の形態に係る水晶振動片であれば肉厚部であった部分)をエッチング範囲とし、振動部16cを構成する肉薄部の占有範囲割合を広げたのである。
【0085】
このような構成の水晶振動片10cでは、肉厚部14cは支持部となる+Z″軸側縁辺のみとなり、枠部となる肉厚部のほとんどは排除されることとなる。このため、同一寸法の従来の逆メサ型水晶振動片に比べ、水晶素板12c全体の寸法に占める振動部16cの割合が格段に大きくなる。
【0086】
上記のような構成の水晶素板12cに配設する電極パターンの形態は、上述した第1〜第3の実施形態に係る水晶振動片10〜10bに配設した電極パターンのそれぞれを採用することができる。よって詳細な説明は省略することとする。
【0087】
このような構成の水晶振動片10cは、広い範囲で残渣による振動部16cの縮小を防ぐことができ、支持部の強度を確保した状態で振動部16cの占有率を向上させることができる。
【0088】
次に、図30を参照して本実施形態の応用形態について説明する。本応用形態に係る水晶振動片10cは、そのほとんどの構成を上述した第4の実施形態に係る水晶振動片と同様としている。相違点は、肉薄の振動部一端にI字状に形成されていた肉厚部の形態にある。第4の実施形態では固定端側(+Z″軸基端部)のみに設けられていた肉厚部を、本応用形態では振動部16cの途中まで延設し、肉厚部14cをコ字状としたのである。
【0089】
このような構成は、振動部16cが比較的大きい場合、あるいは振動部16cの厚みが極めて薄い場合等に特に有効であり、振動部16cの機械的強度を補助することとなる。このような構成の水晶振動片10cであっても、本実施形態の一部とみなすことができる。
【0090】
次に、本発明の水晶デバイスに係る実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、図31を参照して、水晶デバイスである水晶振動子に係る実施形態について説明する。なお、図31において、図31(A)は水晶振動子の平面図(リッドを除く)であり、図31(B)は同図(A)におけるA−A断面を示す図である。
【0091】
本実施形態に係る水晶振動子50は、パッケージ52と、当該パッケージ52に収容する水晶振動片とを基本として構成される。
パッケージ52は、本実施形態の場合、ベース(底板)となる基板56と、当該基板56の上面に接合されて側壁を構成するシールリング55、および上部開口部を封止するリッド54とより成るものを採用する。
【0092】
パッケージ52の底板を構成する基板56の一方の主面には、水晶振動片10を実装するための内部実装端子58,60、およびその他の配線パターンが配設されており、基板56の他方の主面には、水晶振動子50自体を他の基板等に実装するための、外部実装端子62,64が配設されている。なお、内部実装端子58,60と、外部実装端子62,64とは、電気的に接続されている。
【0093】
シールリング55は、線膨張率が基板56と近似しており、融点の低い金属や合金であることが望ましい。例えば基板56の構成部材をセラミックスとした場合、シールリング55を構成する部材はコバールとすることができる。また、リッド54は、蓋体の役割を担う平板であれば良く、透光性を有するガラスリッド、や導電性を有する金属リッド等、その用途に応じて種々選択することができる。なおリッド54を構成する際には、接合部材の線膨張率に近似した線膨張率を有する部材により構成することが望ましい。
【0094】
上記のような構成のパッケージ52に実装される水晶振動片は、上記第1から第4の実施形態に係る水晶振動片10〜10cのいずれかを採用すれば良い(図31では一例として水晶振動片10を採用)。なお、本実施形態では、水晶素板12の側面を介して引き出し電極26を引き回し、一方の主面(表面側)に2つの接続電極22,28を配設した水晶振動片10を実装している。
【0095】
上記のような構成の水晶振動片10は、導電性接着剤66、あるいはバンプ等の導電性接合部材を介して、基板56に配設された内部実装端子58,60に実装される。
【0096】
このような構成の水晶振動子50の製造方法は、まず、パッケージ52を構成する基板56における内部実装端子58,60に対して、導電性接着剤66を塗布する。次に、接続電極22,28を、導電性接着剤66の上部に合わせるようにして、水晶振動片10を実装する。水晶振動片10の実装が終了した後、周波数調整等の諸工程を経て、上部開口部をリッド54により封止する。リッド54に金属リッドを採用した場合には、封止手段として、シーム溶接を採用することができる。
【0097】
このような構成の水晶振動子50では、上記水晶振動片10に依存した効果の他、導電性接着剤66の上塗布を必要としないといった効果を奏する。このため、導電性の合金であるシールリング55によりキャビティの側壁を構成した場合であっても、水晶振動片10の搭載位置とシールリング55との距離を大きく取る必要性が無くなり、パッケージ52の小型化を実行することができる。また、実装に用いる導電性接合部材として、導電性接着剤66よりも断線の危険性が低いバンプを用いることもでき、実装形態の幅を広げるとともに振動特性の安定化を図ることもできる。
【0098】
なお、水晶振動片10として、接続電極22,28を水晶素板12の表裏面それぞれに配設したものを採用しても良い。この場合、水晶振動片10の実装には、導電性接着剤66を用い、これを上塗布するようにし(図32参照)、水晶素板12における表裏面の導通を図るようにすると良い。このような形態であっても、本実施形態に係る水晶振動子の一部であるとみなすことができる。
【0099】
また、水晶振動片として、図8〜図14に示したような、接続電極22,28をZ″軸に沿って配置したものを採用する場合には、図33に示すようなパッケージを採用すれば良い。図33に示すパッケージ52aは、内部実装端子58,60をパッケージ52の長辺方向に沿って配設したこを特徴とする。内部実装端子58,60を図33のように配設することで、Z′軸をY′軸回りに−30°±5°回転させて得られるZ″軸に沿って接続電極22,28を配設した水晶振動片10を実装することができ、水晶に負荷される応力に対する感度が最も鈍くなる方向に存在する2点で、水晶振動片10を固定することが可能となる。よって、パッケージ等に負荷された応力が周波数特性に与える影響が少ない。
【0100】
上記実施形態では、水晶デバイスの対象として水晶振動子を挙げ、水晶振動片もこれに適するものの例を挙げた。しかしながら、本発明に係る水晶デバイスには、水晶フィルタも含めることができる。例えば、水晶振動片として、図34に示すようなものを採用した場合には、水晶デバイスとして、二重モードフィルタを構成することができる。
【0101】
採用する水晶振動片10dは、水晶素板12dの形態について上述した第1〜第4の実施形態に係る水晶振動片10〜10cと同一のものを採用することができる(図34では一例として水晶振動片10と同一のものを採用)。また、水晶素板12dの表裏面に配設する電極パターンとしては、次のようなものであれば良い。すなわち、一方の主面(例えば振動部16dを形成するためにウエットエッチングを施した側の主面)には、全面に電極24dを形成する。そして、他方の主面(例えば平坦面となっている側の主面)には、2つの励振電極18d,19dと、2つの接続電極22d,23d、およびそれぞれの励振電極18d,19dと接続電極22d,23dとを電気的に接続する引出し電極20d,21dを配設する。
【0102】
ここで、励振電極18d,19dは共に、肉薄に形成された振動部16dに配設される。2つの励振電極18d,19dはそれぞれ、零次対称振動モード(S0モード)と、零次反対称振動モード(A0モード)の振動を個別に励起するように設定される。それぞれの振動モードの共振周波数をfs、faとした場合、二重モードフィルタの通過帯域幅は、2つの共振周波数の差、すなわちfa−fsのほぼ2倍となる。なお、共振周波数fs、faは、振動部16の厚さ、励振電極18d,19dの周波数低下量、および2つの励振電極18d,19dの間の距離dに依存して変化する。このような構成の水晶デバイスであっても、本発明に係る水晶デバイスの1つとみなすことができる。
【0103】
なお、図34では、1つの水晶素板12dに2つの励振電極18d,19dを有する2ポールMCF(Monolithic Crystal Filter)の例を示した。しかしながら、励振電極は2つに限らず、3つ以上であっても良い。例えば、図34にて一方の主面全面に形成した電極24dを2つに分割し、一方の電極24dに対向する2つの励振電極を設けることで2ポールMCFを構成し、他方の電極24dに対向する1つの励振電極により水晶振動子を構成するようにしても良い。また当然に、2ポールMCFを二段に備えた、4ポールのMCFとしても良いし、1つの2ポールMCFと2つの水晶振動子を構成しても良い。水晶素板における振動部の占有面積を増やすために振動部を大きくすることで、前述したように種々の利用可能性が生ずることとなる。
【0104】
次に、本発明の製造方法により製造した水晶振動片を搭載した水晶デバイスに含むことができる水晶発振器に係る実施の形態について図面を参照して説明する。まず、図35を参照して、第1の実施形態に係る水晶発振器について説明する。
【0105】
本実施形態に係る水晶発振器100は、図31、図32に示した水晶振動子50をそのまま利用するもので、水晶振動子50の他、リードフレーム112と発振回路を備えたIC110を有する。
【0106】
具体的には、リードフレーム112の上面にIC110を、リードフレーム112の下面に反転させた水晶振動子50をそれぞれ搭載し、リードフレーム112とIC110、IC110と水晶振動子50をそれぞれ金属ワイヤ114で接続するというものである。
【0107】
また、上記のような構成の水晶発振器100は、IC110の能動面や金属ワイヤ114、および接続部の保護のため、外部実装端子を担うリードフレーム112の先端を除く全体を樹脂130によりモールドすることで構成される。
【0108】
次に、図36を参照して第2の実施形態に係る水晶発振器について説明する。
本実施形態に係る水晶発振器100aは、図36に示すように、1つのパッケージ106の中に、IC110と水晶振動片10を収容する形態を採るものである。図36に示す実施形態の場合、水晶発振器の小型化のために、水晶振動片10とIC110を縦方向に重ねるように配設することとしている。具体的には、パッケージベース104のキャビティを階段状に形成し、最も下の段に位置する底板部にIC110を搭載する。IC110を搭載した段の上の段に、IC110とパッケージベース104とを電気的に接続するための内部端子118を設け、IC110の能動面に設けられた端子116とパッケージベース104に設けた内部端子118とを金属ワイヤ114により接続する。そして、前記内部端子118を設けた段の上の段に、水晶振動片10を実装するための内部実装端子120を設け、導電性接着剤124を介して水晶振動片10を実装する。水晶振動片10を実装した後、パッケージベース104の上部開口部をリッド102により封止する。
【0109】
水晶発振器について、その他の実施形態として、図37に示すようなものを挙げることもできる。図37に示す実施形態は、パッケージベース104として、いわゆるH型断面を有するものを採用したものであり、上下に設けられたキャビティの一方に水晶振動片10を搭載してリッド102により封止すると共に、他方にIC110を搭載するという構成を採る。このような構成の水晶発振器100bであっても、本発明の一部とみなすことができる。
【符号の説明】
【0110】
10………水晶振動片、12………水晶素板、14………肉厚部、16………振動部、18………励振電極、20………引出し電極、22………接続電極、24………励振電極、26………引出し電極、28………接続電極、30………ウエハ、32………マスク、34………振動部形成領域、35………第1エッチング領域、36………個片形成領域、38………貫通溝形成領域、38a………貫通溝形成領域、40………折り取り部、42………残渣、44………マスク、50………水晶振動子、100………水晶発振器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハを用いた水晶振動片の製造方法であって、
+Y′軸側主面から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部を、−Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、前記肉薄部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部、および少なくとも前記肉薄部形成領域の+Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、
前記肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有することを特徴とする水晶振動片の製造方法。
【請求項2】
ATカット水晶板における+Z′軸をY′軸回りに+X軸方向へ回転させることを正の回転角として、Z′軸をY′軸回りに−120°から+60°の範囲で回転させて得られるZ″軸とこれに垂直に交わるX′軸のそれぞれに平行な縁辺を有するウエハを用いた水晶振動片の製造方法であって、
+Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、少なくとも前記肉薄部形成領域の−Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部を、−Y′軸側から加工を施す場合には、振動部を構成する肉薄部形成領域と、少なくとも前記肉薄部形成領域の+Z″軸側端部に設ける肉厚部非形成領域の外周部をウエットエッチングする第1のエッチング工程と、
前記振動部形成領域に隣接した肉厚部形成領域の外周部と前記肉厚部非形成領域の外周部を前記ウエハの両主面からウエットエッチングしてY′軸方向に貫通させる第2のエッチング工程とを有することを特徴とする水晶振動片の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−93847(P2010−93847A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285298(P2009−285298)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【分割の表示】特願2007−341003(P2007−341003)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】