説明

波長可変レーザ装置およびその制御方法

【課題】 波長可変レーザのフロント側に配置された波長検知部を用いてダークチューニングで発振波長を調整することができる波長可変レーザ装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】 波長可変レーザ装置の制御方法は、波長可変半導体レーザと、波長可変半導体レーザの出力と光結合され消光状態と透過状態との間で出力光強度を制御する半導体マッハツェンダ変調器と、波長可変半導体レーザとマッハツェンダ変調器との間に設けられ、波長可変半導体レーザから半導体マッハツェンダ変調器に入力される光の波長を検知する波長検知部とを備える波長可変レーザ装置において、半導体マッハツェンダ変調器を透過状態よりも光減衰率が大きい状態に制御し、その後、波長検知部の検知結果に基づいて波長可変半導体レーザの出力波長を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変レーザ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学デバイスとして波長可変レーザがあげられる。波長可変レーザは、バーニア効果などを利用して発振波長を選択することができる。波長可変レーザの発振波長をフィードバック制御する場合に、波長検知部が用いられる。しかしながら、波長可変レーザは、起動時またはチャネル切替時において、目標の波長から大幅に外れた波長の光を出力することがある。そこで、発振波長が所定の波長範囲に達するまでフロント側の光出力を禁止する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−26968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光出力側(フロント側)に波長検知部を配置した波長可変レーザ装置では、波長可変レーザにある程度の光を出力させなければ、正確なフィードバック制御を行うことができない。一方で、特許文献1の技術では、フロント側の光出力が禁止される。したがって、特許文献1の技術は、フロント側に波長検知部を配置した波長可変レーザ装置に適用することができない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、波長可変レーザのフロント側とマッハツェンダ変調器との間に配置された波長検知部を用いてレーザモジュール外部への光出力を抑えつつ発振波長を調整することができる(ダークチューニング)波長可変レーザ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る波長可変レーザ装置の制御方法は、波長可変半導体レーザと、前記波長可変半導体レーザの出力と光結合され消光状態と透過状態との間で出力光強度を制御する半導体マッハツェンダ変調器と、前記波長可変半導体レーザと前記マッハツェンダ変調器との間に設けられ、前記波長可変半導体レーザから前記半導体マッハツェンダ変調器に入力される光の波長を検知する波長検知部とを備える波長可変レーザ装置において、前記半導体マッハツェンダ変調器を前記半導体マッハツェンダ変調器の透過状態よりも光減衰率が大きい状態に制御し、その後、前記波長検知部の検知結果に基づいて前記波長可変半導体レーザの出力波長を調整することを特徴とするものである。本発明に係る波長可変レーザ装置の制御方法によれば、波長可変半導体レーザのフロント側に配置された波長検知部を用いてレーザモジュール外部への光出力を抑えつつ発振波長を調整することができる。
【0007】
前記光減衰率が大きい状態への制御は、前記半導体マッハツェンダ変調器の2つの光カプラの間に設けられた1対のアームに対し、光吸収を起こすための逆バイアス電圧を印加することによる光吸収特性を使用してもよい。前記光減衰率が大きい状態への制御は、前記半導体マッハツェンダ変調器の2つの光カプラ間に設けられた1対のアームのうち一方または両方にバイアス電圧を印加することにより発生するマッハツェンダ干渉の消光状態を使用してもよい。前記半導体マッハツェンダ変調器をマッハツェンダ干渉による消光状態に制御する際に、前記半導体マッハツェンダ変調器への変調信号の入力を停止してもよい。
【0008】
本発明に係る波長可変レーザ装置は、波長可変半導体レーザと、前記波長可変半導体レーザのフロント側出力光が入力される半導体マッハツェンダ変調器と、前記波長可変半導体レーザと前記半導体マッハツェンダ変調器との間に設けられ、前記波長可変半導体レーザから前記半導体マッハツェンダ変調器に入力される光の波長を検知する波長検知部と、を備えることを特徴とするものである。本発明に係る波長可変レーザ装置によれば、波長可変半導体レーザのフロント側に配置された波長検知部を用いてレーザモジュール外部への光出力を抑えつつ発振波長を調整することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、波長可変レーザのフロント側に配置された波長検知部を用いて発振波長を調整することができる波長可変レーザ装置およびその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1に係る波長可変レーザ装置の全体構成を説明するための概略図である。
【図2】変調器の詳細を説明するための図である。
【図3】ルックアップテーブルの例を示す図である。
【図4】波長可変半導体レーザの起動時のダークチューニングを表すフローチャートの一例を示す図である。
【図5】バイアス電圧について説明するための図である。
【図6】ダークチューニングの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施例1に係る波長可変レーザ装置100の全体構成を説明するための概略図である。図1を参照して、波長可変レーザ装置100は、波長可変半導体レーザ10、波長検知部20、変調器30、制御部50などを備える。波長可変半導体レーザ10は、温度制御装置60a上に配置されている。波長検知部20および変調器30は、温度制御装置60b上に配置されている。温度制御装置60a,60bは、ペルチェ素子などから構成される。波長可変半導体レーザ10と波長検知部20との間には、レンズ70aが配置されている。波長検知部20と変調器30との間には、レンズ70bが配置されている。変調器30の出力端側には、レンズ70cが配置されている。
【0012】
波長可変半導体レーザ10は、SG−DBR(Sampled Grating Distributed Bragg Reflector)領域11、SG−DFB(Sampled Grating Distributed Feedback)領域12、および半導体光増幅(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)領域13が順に連結した構造を有する。SG−DBR領域11は、グレーティングが所定の間隔で設けられた光導波路を含む。すなわち、SG−DBR領域11の光導波路には、回折格子を有する第1の領域とこの第1の領域に連結されかつスペース部となる第2の領域とが設けられている。SG−DBR領域11の光導波路は、吸収端波長がレーザ発振波長よりも短波長側にある半導体結晶からなる。SG−DBR領域11上には、ヒータ14が設けられている。
【0013】
SG−DFB領域12は、グレーティングが所定の間隔で設けられた光導波路を含む。すなわち、SG−DFB領域12の光導波路には、回折格子を有する第1の領域とこの第1の領域に連結されかつスペース部となる第2の領域とが設けられている。SG−DFB領域12の光導波路は、目的とする波長でのレーザ発振に対して利得を有する半導体結晶からなる。SG−DFB領域12上には、電極15が設けられている。
【0014】
SOA領域13は、電流制御によって光に利得を与える、または光を吸収するための半導体結晶からなる光導波路を含む。SOA領域13上には、電極16が設けられている。なお、SG−DBR領域11、SG−DFB領域12およびSOA領域13の光導波路は、互いに光結合している。
【0015】
波長検知部20は、波長可変半導体レーザ10のフロント側に配置されており、ビームスプリッタ21a,21b、エタロン22、および受光素子23a,23bを備える。ビームスプリッタ21a,21bは、波長可変半導体レーザ10と変調器30とを結ぶ光軸上に配置されている。受光素子23aは、ビームスプリッタ21aの分岐光軸上に配置されている。受光素子23bは、ビームスプリッタ21bの分岐光軸上に配置されている。エタロン22は、ビームスプリッタ21bと受光素子23bとの間に配置されている。
【0016】
変調器30は、半導体基板上に形成されたメサ状の光導波路の経路を組み合わせて構成されるマッハツェンダ変調器である。図2(a)は、変調器30の拡大図である。図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図である。図2(c)は、図2(a)のB−B線断面図である。
【0017】
図2(b)を参照して、光導波路は、半導体基板41上に形成されている。光導波路は、半導体基板41上において、下クラッド層42a、コア43、上クラッド層42bがこの順にメサ状に積層された構造を有している。半導体基板41の上面、光導波路の上面および側面には、パッシベーション膜44および絶縁膜45が順に積層されている。
【0018】
半導体基板41は、InPなどの半導体からなる。下クラッド層42aおよび上クラッド層42bは、InPなどの半導体からなる。コア43は、下クラッド層42aおよび上クラッド層42bよりもバンドギャップエネルギが小さい半導体からなり、例えばInGaAsPなどからなる。それにより、コア43を通過する光が下クラッド層42aおよび上クラッド層42bによってとじ込められる。パッシベーション膜44は、InPなどの半導体からなる。絶縁膜45は、SiNなどの絶縁体からなる。
【0019】
図2(a)を参照して、変調器30には、第1入力端31aに接続された第1入力光導波路32aが設けられ、第2入力端31bに接続された第2入力光導波路32bが設けられている。第1入力光導波路32aおよび第2入力光導波路32bは、第1光カプラ33で合流し、第1アーム34aおよび第2アーム34bに分岐する。変調器30の長手方向を対称軸とした場合に、第1アーム34aは第1入力端31aと同じ側に配置され、第2アーム34bは第2入力端31bと同じ側に配置されている。
【0020】
第1アーム34aおよび第2アーム34bは第2光カプラ35で合流し、第1出力端37aに接続された第1出力光導波路36aと、第2出力端37bに接続された第2出力光導波路36bとに分岐する。変調器30の長手方向を対称軸とした場合に、第1出力端37aは第2アーム34bと同じ側に配置され、第2出力端37bは第1アーム34aと同じ側に配置されている。第1アーム34aの光路長と第2アーム34bの光路長との間には、あらかじめ差が設けられている。例えば、第1アーム34aを伝播する光と第2アーム34bを伝播する光とに−0.5πの位相差が生じるような、光路長差が設定されている。
【0021】
第1アーム34aおよび第2アーム34bのそれぞれには、位相調整用電極46および変調用電極47が設けられている。位相調整用電極46および変調用電極47は、互いに離間している。位相調整用電極46および変調用電極47の位置関係は特に限定されるものではないが、本実施例においては、位相調整用電極46は変調用電極47よりも光入力端側に配置されている。第1出力光導波路36aおよび第2出力光導波路36bのそれぞれには、光強度検出電極48が設けられている。
【0022】
図2(c)を参照して、変調用電極47は、上クラッド層42b上において、コンタクト層49を介して配置されている。コンタクト層49は、InGaAsなどの半導体からなる。なお、上クラッド層42bとコンタクト層49との間には、パッシベーション膜44および絶縁膜45は設けられていない。また、位相調整用電極46、変調用電極47および光強度検出電極48は、Auなどの金属からなる。
【0023】
再度図1を参照して、制御部50は、制御ブロック51、ROM(リードオンリメモリ)52、温度制御回路53、駆動回路54、電流検出回路55、温度制御回路56、駆動回路57などを備える。制御ブロック51は、CPU(中央演算処理装置)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等から構成される。ROM52には、波長可変半導体レーザ10および変調器30の制御情報、制御プログラム等が格納されている。波長可変半導体レーザ10の制御情報は、例えば、ルックアップテーブルに記録されている。図3にルックアップテーブルの例を示す。
【0024】
図3を参照して、ルックアップテーブルは、チャネルごとに、初期設定値およびフィードバック制御目標値を含む。初期設定値には、SG−DFB領域12の初期電流値ILD、SOA領域13の初期電流値ISOA、ヒータ14の初期電流値IHeaterおよび温度制御装置60aの初期温度値TLDが含まれる。フィードバック制御目標値は、受光素子23aのフィードバック制御目標値Im1、受光素子23a,23bのフィードバック制御目標値Im2/Im1、およびヒータ14の電力のフィードバック制御目標値PHeaterを含む。
【0025】
続いて、波長可変半導体レーザ10の起動時またはチャネル切替時における発振波長調整について説明する。本実施例においては、ダークチューニングを採用する。ダークチューニングとは、波長可変半導体レーザ10の発振波長が所定の波長範囲に達するまで波長可変レーザ装置100からの光出力を抑制するチューニング方法である。
【0026】
図4は、波長可変半導体レーザ10の起動時のダークチューニングを表すフローチャートの一例を示す図である。図4を参照して、まず、制御ブロック51は、変調器30の光減衰率を上昇させることによって変調器30の光出力を所定のしきい値以下に設定する(ステップS1)。変調器30の光減衰率を上昇させるためには、第1アーム34aおよび第2アーム34bにバイアス電圧を印加して各アームを構成する半導体のバンド端吸収波長を入力光の波長よりも長波長側までシフトさせ、光を吸収させればよい。例えば、第1アーム34aおよび第2アーム34bに10V程度の逆バイアスを印加することによって、変調器30の消光率を−16dBにすることができる(図5(a))。
【0027】
他の例として、第1アーム34aおよび第2アーム34bのいずれか一方のバイアス電圧を、マッハツェンダ干渉の消光位置に最適化すればよい。図5(b)は、マッハツェンダ干渉による消光の一例を示す図である。図5(b)において、横軸は逆バイアス電圧を示し、縦軸は消光率(Loss)を示す。図5(b)の例では、逆バイアス電圧を5V程度に設定することによって、マッハツェンダ干渉の消光が実現される。なお、消光時のバイアス電圧は、あらかじめ測定してルックアップテーブルに格納しておくことができる。図5(c)は、ルックアップテーブルの一例を示す図である。
【0028】
変調器30の光減衰率とバイアス電圧との関係は、変調器30の温度に応じて変化することがある。そこで、制御ブロック51は、バイアス電圧を制御する際には、温度制御装置60bの温度が所定の温度に制御されるように、温度制御回路56を制御する。
【0029】
なお、マッハツェンダ干渉の消光を実現するための逆バイアス電圧は、各光導波路に光吸収領域として機能させる場合に比較して小さくすることができる。したがって、変調器30の破壊抑制の観点から、第1アーム34aおよび第2アーム34bのいずれか一方のバイアス電圧をマッハツェンダ干渉の消光位置に最適化する制御の方がより好ましい。また、この場合、各アームには変調信号が入力されないことが好ましい。消光位置からのずれを抑制することができるからである。したがって、制御ブロック51は、駆動回路57に、変調信号の入力を禁止してもよい。また、各アームへのバイアス電圧は、位相調整用電極46および変調用電極47の少なくともいずれか一方に印加されればよい。なお、マッハツェンダ干渉状態の制御は、逆バイアス電圧の印加以外にも、電流注入によってなすこともできる。
【0030】
次に、制御ブロック51は、温度制御回路53および駆動回路54を制御して、波長可変半導体レーザ10にレーザ発振させる(ステップS2)。具体的には、制御ブロック51は、ルックアップテーブルを参照し、設定されたチャネルに対応する初期電流値ILD、初期電流値ISOA、初期電流値IHeaterおよび初期温度値TLDを取得する。次に、制御ブロック51は、取得した初期設定値に基づいて波長可変半導体レーザ10にレーザ発振させる。
【0031】
具体的には、まず、温度制御回路53は、温度制御装置60aの温度が初期温度値TLDになるように温度制御装置60aを制御する。それにより、波長可変半導体レーザ10の温度が初期温度値TLD近傍の一定温度に制御される。その結果、SG−DFB領域12の光導波路の等価屈折率が制御される。次に、駆動回路54は、初期電流値ILDの大きさを持つ電流を電極15に供給する。それにより、SG−DFB領域12の光導波路において光が発生する。その結果、SG−DFB領域12で発生した光は、SG−DBR領域11およびSG−DFB領域12の光導波路を繰返し反射および増幅されてレーザ発振する。次に、駆動回路54は、初期電流値IHeaterの大きさを持つ電流をヒータ14に供給する。それにより、SG−DBR領域11の光導波路の等価屈折率が所定の値に制御される。次いで、駆動回路54は、初期電流値ISOAの大きさを持つ電流を電極16に供給する。以上の制御によって、波長可変半導体レーザ10は、設定されたチャネルに対応する初期波長で発振する。
【0032】
次いで、制御ブロック51は、ヒータ14の両端の電圧とヒータ14に投入される電流とにより得られる電力に基づいて、ヒータ14の発熱量が規定内にあるか否かを判定する。具体的には、まず、制御ブロック51は、ルックアップテーブルからフィードバック制御目標値PHeaterを取得するとともに、ヒータ14の両端の電圧を取得してその値とヒータ14に投入される電流との積から得られる電力値がフィードバック制御目標値PHeaterを含む所定範囲内にあるか否かを判定する。
【0033】
ヒータ14の発熱量が規定内にあると判定されなかった場合、駆動回路54は、ヒータ14の温度を補正する。これは、ヒータ14に投入される電流を変化させることと、それに伴い変化するヒータ14の両端の電圧との積から得られる電力の変化により実現される。その後、駆動回路54は、ヒータ14の発熱量が規定内に入るようにヒータ14への電力をフィードバック制御する。次に、駆動回路54は、波長可変半導体レーザ10からの出力光強度が所定値以上になるように、SOA領域13に印加する電圧を制御する(ステップS3)。この場合の波長可変半導体レーザ10からの出力光強度は、波長検知部20における波長検知が可能となる強度であればよい。
【0034】
次に、制御ブロック51は、波長検知部20の検出結果に基づいて、波長可変半導体レーザ10の出力光波長を調整する(ステップS4)具体的には、まず、制御ブロック51は、電流検出回路55から、受光素子23aの検出電流Im1および受光素子23bの検出電流Im2を取得する。次に、制御ブロック51は、ルックアップテーブルからフィードバック制御目標値Im2/Im1を取得するとともに、受光素子23aの検出結果と受光素子23bの検出結果の比Im2/Im1を取得し、比Im2/Im1がフィードバック制御目標値Im2/Im1を含む所定範囲内にあるか否かを判定する。
【0035】
波長可変半導体レーザ10の出力光波長が規定内にあると判定されなかった場合、制御ブロック51は、温度制御装置60aの温度を補正する。この場合、SG−DFB領域12の光導波路における利得スペクトルのピーク波長が変化する。その後、制御ブロック51は、波長可変半導体レーザ10の出力光波長が所望の一定値に保持されるようにフィードバック制御する。
【0036】
次に、制御ブロック51は、変調器30に印加されるバイアス電圧を最適点に制御する(ステップS5)。それにより、変調器30の光減衰率が低下するため、変調器30から所定の変調光信号が出力される。次に、制御ブロック51は、受光素子23aの検出結果に基づいて、波長可変半導体レーザ10の出力光強度を調整する(ステップS6)。具体的には、制御ブロック51は、ルックアップテーブルからフィードバック制御目標値Im1を取得するとともに受光素子23aの検知結果Im1を取得し、検知結果Im1がフィードバック制御目標値Im1を含む所定範囲内にあるか否かを判定する。検知結果Im1がフィードバック制御目標値Im1を含む所定範囲内にあると判定されなかった場合、制御ブロック51は、電極16に供給する電流を補正する。その後、制御ブロック51は、波長可変半導体レーザ10の出力光強度が所望の一定値に保持されるようにフィードバック制御される。
【0037】
以上の制御により、波長可変レーザ装置100からの光の出力を抑制しつつ、波長可変半導体レーザ10の発振波長を調整することができる。したがって、波長可変半導体レーザ10のフロント側に波長検知部20が配置されていても、発振波長を調整することができる。
【0038】
図6(a)は、図4のフローチャートの制御方法に従った結果を示す図である。図6(a)において、横軸は波長可変半導体レーザ10の起動開始からの経過時間を示し、縦軸は光強度を示す。なお、図6(a)においては、受光素子23aで検出された光強度(以下、検出光強度)と、波長可変レーザ装置100から出力される光の強度(以下、出力光強度)とが表されている。
【0039】
図6(a)を参照して、波長可変半導体レーザ10の起動開始時においては、波長可変半導体レーザ10から光が出力されないため、検出光強度および出力光強度ともゼロである。波長検知部20の検出結果に基づいて発振波長を調整する際には波長可変半導体レーザ10からある程度の強度の光が出力されるため、所定の検出光強度が得られる。一方、変調器30の光減衰率が所定のしきい値以上に制御されていることから、出力光強度は抑制されている。
【0040】
変調器30に印加されるバイアス電圧が最適点に制御されると、出力光強度が大きくなる。変調器30での光減衰が抑制されるからである。その後、波長可変半導体レーザ10の出力光強度が所望値まで制御されることから、検出光強度および出力光強度の両方とも増加する。このように、波長検知部20における波長調整の間は、波長可変レーザ装置100からの光出力が抑制される。本実施例では変調器30をシャッターとして用いているため、シャッターとして機能する新たな部品を設ける必要がない。
【0041】
図6(b)は、波長切替時におけるダークチューニングを表す図である。図6(b)を参照して、波長切替前には、波長可変レーザ装置100は所定の波長で光を出力している。したがって、ダークチューニング前は、出力光強度は所望値となっている。続いて、変調器30の光減衰率が所定のしきい値以上に制御され、波長可変半導体レーザ10からの出力がオフされると、検出光強度および出力光強度の両方ともゼロになる。その後は、図6(a)と同様である。このように、波長切替時においても、波長検知部20における波長調整の間は、波長可変レーザ装置100からの光出力が抑制される。
【0042】
本実施例によれば、変調器30をシャッターとして用いつつ、波長検知部20による波長調整が可能である。この効果は、波長可変半導体レーザ10のフロント側に変調器30が設けられかつ波長可変半導体レーザ10と変調器30との間に波長検知部20が配置されている構成によって得られるものである。
【0043】
なお、本実施例においては、各アームに10V程度の逆バイアスを印加することによって変調器30の消光率を−16dBまで制御しているが、それに限られない。マッハツェンダ変調器は消光状態と透過状態との間で出力光強度を制御するものである。本発明のダークチューニング時には、マッハツェンダ変調器の透過状態よりも光減衰率が大きくなるように各アームに逆バイアスを印加すればよい。なお、ここで、消光状態とは、出力信号として“0”を示すことができている状態を指し、透過状態とは、出力信号として“1”を示すことができている状態を指す。
【0044】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 波長可変半導体レーザ
11 SG−DBR領域
12 SG−DFB領域
13 SOA領域
14 ヒータ
15,16 電極
20 波長検知部
21 ビームスプリッタ
22 エタロン
23 受光素子
30 変調器
50 制御部
51 制御ブロック
52 ROM
53,56 温度制御回路
54,57 駆動回路
55 電流検出回路
100 波長可変レーザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長可変半導体レーザと、前記波長可変半導体レーザの出力と光結合され消光状態と透過状態との間で出力光強度を制御する半導体マッハツェンダ変調器と、前記波長可変半導体レーザと前記マッハツェンダ変調器との間に設けられ、前記波長可変半導体レーザから前記半導体マッハツェンダ変調器に入力される光の波長を検知する波長検知部とを備える波長可変レーザ装置において、
前記半導体マッハツェンダ変調器を前記透過状態よりも光減衰率が大きい状態に制御し、
その後、前記波長検知部の検知結果に基づいて前記波長可変半導体レーザの出力波長を調整することを特徴とする波長可変レーザ装置の制御方法。
【請求項2】
前記光減衰率が大きい状態への制御は、前記半導体マッハツェンダ変調器の2つの光カプラの間に設けられた1対のアームに対し、光吸収を起こすための逆バイアス電圧を印加することによりなされることを特徴とする請求項1記載の波長可変レーザ装置の制御方法。
【請求項3】
前記光減衰率が大きい状態への制御は、前記半導体マッハツェンダ変調器の2つの光カプラ間に設けられた1対のアームの一方または両方にマッハツェンダ干渉による消光をなすためのバイアス電圧を印加することによりなされることを特徴とする請求項1記載の波長可変レーザ装置の制御方法。
【請求項4】
前記半導体マッハツェンダ変調器をマッハツェンダ干渉による消光状態に制御する際に、前記半導体マッハツェンダ変調器への変調信号の入力を停止することを特徴とする請求項3記載の波長可変レーザ装置の制御方法。
【請求項5】
波長可変半導体レーザと、
前記波長可変半導体レーザのフロント側出力光が入力される半導体マッハツェンダ変調器と、
前記波長可変半導体レーザと前記半導体マッハツェンダ変調器との間に設けられ、前記波長可変半導体レーザから前記半導体マッハツェンダ変調器に入力される光の波長を検知する波長検知部と、を備えることを特徴とする波長可変レーザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−119482(P2012−119482A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267688(P2010−267688)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】