説明

洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法

【課題】本発明は被洗浄乾燥物を有機溶剤の蒸気エリア内に設置して洗浄及び乾燥処理を行う洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法に関し、乾燥じみの発生を確実に防止し高い洗浄及び乾燥品質を実現することを課題とする。
【解決手段】有機溶剤23の蒸気エリア25内に設置されたローバ11(被洗浄乾燥物)の洗浄及び乾燥を行う工程(ステップ16〜21−1)と、蒸気エリア25からローバ11を取り出す工程(ステップ22〜25)とを有する洗浄乾燥方法において、蒸気エリア25内の温度を検出し、この蒸気エリア25の温度がローバ11の表面に有機溶剤23が結露可能な温度(T)以下であるときは、ステップ21−1からステップ22への移行を禁止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法に係り、特に被洗浄乾燥物を有機溶剤の蒸気エリア内に設置して洗浄及び乾燥処理を行う洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にウェーハや磁気ヘッド等の電子部品の製造工程では、製造過程で電子部品に付着した接着剤などの付着物を除去するため、各製造工程間で超音波洗浄機などの洗浄装置を用いたウエット洗浄を行っている。また洗浄後、電子部品を収納した収納ケースを洗浄乾燥装置に設置し、電子部品の表面を乾燥させている(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、特許文献1に開示された従来の一例である洗浄乾燥装置(ベーパ乾燥装置という)を模式的に示している。図1に例示されたベーパ乾燥装置1は、装置の外郭を構成する装置本体2と、この装置本体2の内部に被洗浄物(ウェーハや磁気ヘッド等の電子部品)が収納された収納ケース10を支持する昇降ステージ8と、収納ケース10の表面において有機溶剤と置換された水等の洗浄液Sを回収する溶剤排出部9とを備えている。
【0004】
図2は、磁気ヘッド用の収納ケース10を示している。同図に示すように、磁気ヘッドはローバ11として収納ケース10内に複数個が列設された構成とされている。また、各ローバ11は、枠形状とされた収納ケース10の両端部(図では、上下端部)が保持され、その間の部分は収納ケース10から露出した状態となっている。これにより、後述するようにローバ11(磁気ヘッド)の表面に有機溶剤を結露させることができる。
【0005】
前記装置本体2は、下部に有機溶剤3が充填されると共に、その下部にはヒータ4が設けられている。このヒータ4が加熱することにより有機溶剤3は蒸発し、蒸気エリア5を形成する。また、乾燥槽2の上端部内側には、蛇管からなって内部に冷却水を循環する冷却管6が設けられている。この冷却管6は内部に冷却水を循環させることにより乾燥槽2内に冷却エリア7が形成される。この冷却エリア7において、ヒータ4によって加熱された有機溶剤3のベーパは冷却されて液化し滴下する。これにより、乾燥槽2の外部にベーパが排出されて失われることを防止している。
【特許文献1】特開平11−040536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のベーパ乾燥機1では、高温の有機溶剤の蒸気が充満した乾燥槽2内に低い温度の収納ケース10(被洗浄乾燥物)が投入されると、収納ケース10内に収納された電子部品の表面に有機溶剤が結露し、この有機溶剤が表面に付着している汚れと共に流れ落ちる。これにより、電子部品表面の洗浄が行われる。その後、収納ケース10が蒸気と同じ温度になると、収納ケース10の表面の有機溶剤が蒸発し乾燥が行われる。しかしながら、上記した従来の洗浄乾燥方法では、電子部品の表面の洗浄効果が低く、洗浄乾燥処理後に電子部品の表面に汚れの染みが発生する場合があるいという問題点もあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、被洗浄乾燥物に対する洗浄品質及び洗浄効率の向上を図りうる洗浄乾燥装置及び洗浄乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、本発明の第1の観点からは、
有機溶媒を貯留した洗浄乾燥槽と、
該洗浄乾燥槽の前記有機溶媒の貯留量が所定値以下となった際、前記洗浄乾燥槽に前記有機溶媒を補給する補給手段と、
前記有機溶剤の蒸気が発生する蒸気エリア内に被洗浄乾燥物を装着脱する装着脱装置とを有し、
前記蒸気エリア内で前記被洗浄乾燥物の洗浄処理及び乾燥処理を行う洗浄乾燥装置において、
前記蒸気エリアの温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるとき、前記装着脱装置の駆動を禁止させる第1の停止手段とを設けた洗浄乾燥装置により解決することができる。
【0009】
また上記の課題は、本発明の他の観点からは、
有機溶剤の蒸気が発生する蒸気エリア内に設置された前記被洗浄乾燥物の洗浄及び乾燥を行う第1工程と、
前記蒸気エリアから前記被洗浄乾燥物を取り出す第2の工程とを有する洗浄乾燥方法において、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるときは、前記第1工程から前記第2工程への移行を禁止させる洗浄乾燥方法により解決することができる。
【0010】
また上記発明において、 更に前記第1の工程の終了後、噴射ノズルから前記有機溶剤と同一の有機溶剤を前記蒸気エリア内に設置された前記被洗浄乾燥物に向け噴射する第3の工程を有し、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるとき、前記第1工程から前記第3工程への移行を禁止させることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸気エリアの温度が被洗浄乾燥物の表面に有機溶剤が結露可能な温度以下であるとき装着脱装置の駆動が停止されるため、結露による染みが表面に残った状態で被洗浄乾燥物が蒸気エリアから取り出されることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0013】
図3乃至図7は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置20の全体構成を説明するための図である。図3は洗浄乾燥装置20の構成図であり、図4は洗浄乾燥装置20の配管系統図である。また、図5は装置本体21の外観図であり、図6は制御装置36の外観図であり、図7はタンクユニット34の外観図である。
【0014】
先ず、図3を用いて洗浄乾燥装置20の全体構成について説明する。洗浄乾燥装置20は、大略すると装置本体21、タンクユニット34、循環ユニット35、及び制御装置36等により構成されている。タンクユニット34(外観を図7に示す)は、装置本体21に供給する有機溶剤23を貯留するものである。また、循環ユニット35は、装置本体21とタンクユニット34との間で有機溶剤23を循環させるものである。
【0015】
装置本体21は、洗浄乾燥槽22、ヒータ24、冷却管26、昇降ステージ28、溶剤回収部29、及び噴射ノズル30等を有した構成とされている。
【0016】
洗浄乾燥槽22(図5に外観を示す)は、内部に約10リットルの有機溶剤23を貯留できる構成とされている。本実施例では、有機溶剤23としてイソプロピルアルコール(IPA)を使用している。
【0017】
洗浄乾燥槽22の底面には、加熱部としてヒータ24が配設されている。またヒータ24には、加熱温度を監視するための温度センサーが設置されている。このヒータ24によって洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23は常時加熱されており、これにより有機溶剤23の蒸気が発生し、洗浄乾燥槽22内には蒸気エリア25が形成される。この蒸気エリア25の温度は、例えば80℃程度である。
【0018】
昇降ステージ28は、昇降駆動装置33により駆動されることにより、洗浄乾燥槽22内を上下方向(図中、矢印Z1,Z2方向)に移動可能な構成とされている。この昇降ステージ28は、昇降駆動装置33と接続されるアーム部28aと、後述する収納バスケット70(図9参照)が設置されるステージ部28bとにより構成されている。尚、昇降ステージ28及び昇降駆動装置33は、請求項に記載の装着脱装置を構成する。
【0019】
昇降駆動装置33はモータ及びモータの回転運動を直線運動に変換するラック・アンド・ピニオン等により構成されている(図示せず)。また、昇降ステージ28のアーム部28aはこのラック・アンド・ピニオンに連結しており、よって昇降駆動装置33が駆動することによりステージ部28bは昇降動作を行う。
【0020】
昇降ステージ28には後述する収納バスケット70(図9参照)が設置されるが、この収納バスケット70の設置位置付近には4個の温度センサー31A〜31Dが上下方向(Z1,Z2方向)に並んで配設されている。この温度センサー31A〜31Dは、蒸気エリア25内の温度分布を検出する。温度センサー31A〜31Dは制御装置36に接続されており、制御装置36は温度センサー31A〜31Dからの温度検出信号に基づき蒸気エリア25内の温度を求める。
【0021】
尚、温度センサー31A〜31Dは請求項に記載の温度検出手段を構成する。また、温度センサー31A〜31Dは必ずしも昇降ステージ28に配設する必要はなく、蒸気エリア25の温度分布が測定できる位置であれば他の位置に配設する構成としてもよい(例えば、洗浄乾燥槽22に直接配設することも可能)。
【0022】
昇降ステージ28は、ステージ部28bに収納バスケット70を設置或いは回収する位置(以下、設置/回収位置という)と、収納バスケット70に装着された被洗浄乾燥物に対して洗浄乾燥処理を行う位置(以下、洗浄乾燥位置という)との間で移動する。設置/回収位置は、洗浄乾燥槽22の上部位置に設定されている。また、洗浄乾燥位置は、有機溶剤23に近い洗浄乾燥槽22の下部位置に設定されている。
【0023】
従って、設置/回収位置及び洗浄乾燥位置で昇降ステージ28の昇降動作を禁止させる必要がある。このため、洗浄乾燥槽22内の洗浄乾燥位置には位置センサー32Aが設置されると共に、洗浄乾燥槽22内の設置/回収位置には位置センサー32Cが配置されている。この各位置センサー32A,32Cは制御装置36に接続されており、よって制御装置36は各位置センサー32A,32Cの出力信号に基づき、ステージ部28b(収納バスケット70)が設置/回収位置或いは洗浄乾燥位置に達したことを検知する。
【0024】
また、位置センサー32Aと位置センサー32Cとの間には、位置センサー32Bが設置されている。後述するように、昇降ステージ28は上昇する際、上昇速度の切替を行うが、位置センサー32Bはこの速度切替位置に配置されている。この位置センサー32Bも制御装置36に接続されており、よって位置センサー32Bからの出力により制御装置36は昇降ステージ28が速度切替位置に達したことを検知する。
【0025】
噴射ノズル30は、有機溶剤23を噴射するノズルである。有機溶剤23は、循環ユニット35によりタンクユニット34から噴射ノズル30に供給される。本実施例では、2個の噴射ノズル30が対向するよう洗浄乾燥槽22内に配置されているが、噴射ノズル30の配置位置や配置数はこれに限定されるものではない。
【0026】
この噴射ノズル30は、昇降ステージ28が洗浄乾燥位置にあるときの収納バスケット70に対して有機溶剤23を噴射する構成とされている。また、本実施例では噴射ノズル30の噴出口を扁平な形状とすることにより、図10に示すように、有機溶剤23が収納ケース10(ローバ11)に噴射される位置が、横長の楕円形状となるよう構成している。収納ケース10の形状は矩形状であるため、この構成とすることにより噴射位置が円形である構成に比べ、収納ケース10に対して有機溶剤23を効率よく噴射することができる。
【0027】
更に、本実施例では収納バスケット70に対する有機溶剤23の噴射効率を高めるため、噴射ノズル30を図中矢印A1,A2方向に移動(回動)可能な構成としている。この噴射ノズル30を移動させるノズル移動機構60について、図8を用いて説明する。図8(A)はノズル移動機構60の側面図、図8(B)はノズル移動機構60の動作説明図、図8(C)はノズル移動機構60の正面図である。
【0028】
ノズル移動機構60は、シリンダ61、回転ブロック62、及び連結部65等により構成されている。シリンダ61は図8(A)における右端部を洗浄乾燥槽22に植設された回転支点63に軸承されている。このシリンダ61は、制御装置36により駆動制御され、駆動されることによりシャフト66を直線状に移動させる。
【0029】
回転ブロック62は、洗浄乾燥槽22に回転可能に取り付けられている。この回転ブロック62は、洗浄乾燥槽22を貫通するよう配設された噴射用配管42が同軸的に固定されている。この噴射用配管42の洗浄乾燥槽22の内側の端部には噴射ノズル30が配設され、洗浄乾燥槽22の外側の端部は循環ユニット35に接続されて有機溶剤23が供給される。噴射ノズル30は、この噴射用配管42の先端部に配設されている。
【0030】
また、回転ブロック62には外側に向け延出するアーム部65aが設けられており、このアーム部65aの先端部は連結部65を介してシリンダ61のシャフト66に接続されている。従って、シリンダ61が駆動することにより、回転ブロック62を介して噴射用配管42も回転し、よって噴射ノズル30は図3に矢印A1,A2で示す方向に移動する。例えば、図8(A)に示すように、シリンダ61のシャフト66が矢印X方向に移動すると、連結部65を介して回転ブロック62は噴射用配管42を中心として時計方向に回転し、よって噴射ノズル30は矢印A2方向に移動(回動)する。
【0031】
上記のように噴射ノズル30の噴射口の形状を適宜設定することにより有機溶剤23が収納ケース10(ローバ11)に噴射される位置を横長の楕円形状とし、かつ噴射ノズル30が矢印A1,A2方向に回動する構成とすることにより、有機溶剤23を効率良く収納ケース10(ローバ11)に噴射することができ、洗浄効率を高めることができる。
【0032】
尚、噴射用配管42が洗浄乾燥槽22を貫通する位置には、Oリング64及びパッキン67が配設されており、この位置から有機溶剤23の蒸気が装置本体21の外部に漏洩するようなことはない。
【0033】
再び、図3に戻り洗浄乾燥装置20の説明を続ける。前記した洗浄乾燥位置より下方で有機溶剤23の液面より上方位置には、溶剤回収部29が配設されている。この溶剤回収部29は、洗浄乾燥処理時に収納バスケット70(ローバ11)から滴下する有機溶剤23、及び噴射ノズル30から噴射される有機溶剤23を回収するものである。ここで回収された有機溶剤23は、浄化処理が行われた後にタンクユニット34に戻される。
【0034】
冷却管26は、洗浄乾燥槽22内の噴射ノズル30が設置された上部位置に設置されている。この冷却管26には、図示しない冷却水供給装置から、常時冷却水が供給されている。よって、冷却管26の設置位置の内部は冷却エリア27を形成し、冷却エリア27において蒸発した有機溶剤23は液化し滴下する。これにより、有機溶剤23の蒸気が洗浄乾燥槽22の外部への漏洩し、有機溶剤23が減少することを防止している。
【0035】
制御装置36は上記した各種センサー31A〜31D、32A〜32C及び後述する配管系に配設される各種センサーと接続されており、これらのセンサーからの信号に基づき後述する洗浄乾燥制御処理及び洗浄乾燥槽22に対する有機溶剤23の補給処理を実施する。尚、図6は制御装置36の外観を示しており、制御装置36は入力パネル57及び速度入力スイッチ58A,58B等を設けている。
【0036】
次に、ローバ11(被洗浄乾燥物)を収納する収納バスケット70について説明する。図9は、収納バスケット70を示す斜視図である。収納バスケット70は、バスケット本体71、ケース装着部72、及び把持部73等を有した構成とされている。
【0037】
バスケット本体71は昇降ステージ28のステージ部28bに載置される部分であり、本実施例では2つの収納ケース10を装着できる構成とされている。この収納ケース10は、図2を用いて説明したように枠形状とされており、その内部に本実施例ではスティク状の複数のローバ11が列設されている。各ローバ11は、枠形状とされた収納ケース10の両端部が保持され、その間の部分は収納ケース10から露出した状態となっている。
【0038】
尚、ローバ11(Row Bar)とは、ウェーハから複数の磁気ヘッド素子が一列に配列されたものである。これをダイシングし個片化することにより、個々の磁気ヘッドが製造される。
【0039】
また、バスケット本体71には収納ケース10を装着するためのケース装着部72が設けられている。このケース装着部72は、バスケット本体71に対し収納ケース10を任意の角度θで設置できる構成とされている。本実施例では、収納ケース10の設置角度を70°に設定している。このように、収納ケース10の角度を任意に設定可能とすることにより、噴射ノズル30からの有機溶剤23を略直角の角度でローバ11(磁気ヘッド)に噴射することができ、洗浄効率を高めることができる。
【0040】
尚、把持部73は収納バスケット70を昇降ステージ28に装着脱する際に作業者が把持する部分である。このように、把持部73を設けることにより収納バスケット70の昇降ステージ28への装着脱作業を容易に短時間で行うことが可能となる。
【0041】
次に、図4を用いて洗浄乾燥装置20の配管系統について説明する。
【0042】
供給配管40は、有機溶剤23の流れに対する上流側(以下、単に上流側という)の端部が循環ユニット35に接続されており、また有機溶剤23の流れに対する下流側(以下、単に下流側という)の端部が洗浄乾燥槽22の下部に貯留された有機溶剤23と連通している。この供給配管40には、循環ユニット35によりタンクユニット34に貯留されていた有機溶剤23が供給される。
【0043】
この供給配管40は、補給用配管41と噴射用配管42とに分岐する。補給用配管41は、上流側からバルブ43,流量センサー48が設けられている。バルブ43は制御装置36に駆動制御される電磁弁であり、また流量センサー48はバルブ43の開弁時に供給配管40を流れる有機溶剤23の流量を検出する。また、供給配管40の洗浄乾燥槽22との接続位置と流量センサー48との間には、分岐配管として連通配管53が設けられている。この連通配管53は、後述する液面センサー用配管54に接続されている。
【0044】
噴射用配管42は下流側の端部に噴射ノズル30が設けられており、また噴射ノズル30に至る途中位置にはバルブ44及び流量センサー49が配設されている。バルブ44は制御装置36に駆動制御される電磁弁であり、また流量センサー49はバルブ44の開弁時に噴射ノズル30から噴射される有機溶剤23の流量を検出する。尚、バルブ43,44は常閉弁であり、制御装置36から開弁信号が供給されるまで循環ユニット35から補給用配管41及び噴射用配管42への有機溶剤23の供給は停止されている。
【0045】
液面センサー用配管54と回収配管55は、連結されて排出配管56とされている。この排出配管56の下流側の端部はタンクユニット34に接続されている。液面センサー用配管54は、その上流側に液面センサー37が配設されている。
【0046】
また、液面センサー用配管54の液面センサー37と排出配管56との接合位置との間には、バルブ45が配設されている。このバルブ45は、制御装置36に駆動制御される電磁弁である。このバルブ45も常閉弁であり、制御装置36から開弁信号が供給されるまで、洗浄乾燥槽22に貯留された有機溶剤23の装置本体21からの排出は停止されている。
【0047】
液面センサー37は、洗浄乾燥槽22の下部に貯留された有機溶剤23の液面検出を行うセンサーである。バルブ43,45が閉弁した状態で、洗浄乾燥槽22と有機溶剤23は連通配管53により連通した状態となっている。よって、有機溶剤23内の有機溶剤23の液面の高さは、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の液面の高さと等しくなっている。
【0048】
この液面センサー37の内部には、液面検出位置の異なる検出部37a〜37cが配設されており、各検出部37a〜37cは制御装置36に接続されている。よって、制御装置36は、液面センサー37(検出部37a〜37c)からの検出信号により、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の液面の高さ、即ち有機溶剤23内における有機溶剤23の貯留量を検知することができる。
【0049】
尚、洗浄乾燥槽22の有機溶剤23が貯留される位置には、温度センサー50が配設されている。この温度センサー50は、洗浄乾燥槽22に貯留された洗浄乾燥槽22の温度を検出するセンサーである。この温度センサー50で検出された有機溶剤23の温度は、制御装置36に送信される。
【0050】
一方、冷却管26は、例えば洗浄乾燥装置20が設置される磁気ヘッド工場の冷却水供給口と接続されている。この冷却管26には、温度監視用の温度センサー51と、流量監視用の流量センサー52が設置されている。
【0051】
上記のように構成された洗浄乾燥装置20において、噴射ノズル30から有機溶剤23を噴射するには、バルブ43を閉弁すると共にバルブ44を開弁する。これにより、循環ユニット35から供給配管40に供給された高圧の有機溶剤23は、噴射用配管42を通り噴射ノズル30から噴射される。
【0052】
また、液面センサー37の液面検出により、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の貯留量が減った場合には、バルブ44,45を閉弁すると共に、バルブ43を開弁する。これにより、循環ユニット35から供給配管40に供給された高圧の有機溶剤23は補給用配管41を通り洗浄乾燥槽22内に流入し、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の貯留量は増大する。
【0053】
この際、洗浄乾燥槽22内に流入する有機溶剤23は加熱が行われていないため、流入後所定時間の間は洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の温度が低下し、これに伴い蒸気エリア25の温度も通常の温度(本実施例では80℃)よりも低下する。これについて、図19を用いて説明する。図9は洗浄処理時における蒸気エリア25内の温度推移を示す図である。図中、矢印Aで示す蒸気エリア25内の温度低下は、補給のために洗浄乾燥槽22内に有機溶剤23を補給することにより発生した温度低下である。
【0054】
このように一時的に有機溶剤23の補給に伴い蒸気エリア25内の温度が急激に低下し、有機溶剤23の結露可能な温度以下となると、被洗浄乾燥物であるローバ11の表面に有機溶剤23が結露する可能性がある。この結露が発生した状態で、ローバ11(収納ケース10)を有機溶剤23から取り出すと、ローバ11の表面に結露に起因した染みが発生してしまうことは前述した通りである。
【0055】
一方、液面センサー37の液面検出により、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の貯留量が増大した場合には、バルブ43,44を閉弁すると共に、バルブ45を開弁する。これにより、洗浄乾燥槽22内に貯留されていた有機溶剤23は連通配管53及び排出配管56を介してタンクユニット34に排出され、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の貯留量は減少する。
【0056】
次に、図11〜図19を参照し、洗浄乾燥処理時における洗浄乾燥装置20の動作、制御装置36が実施する洗浄乾燥処理、及び制御装置36が実施する洗浄乾燥槽22への有機溶剤23の補給処理について説明する。尚、図11〜図16は洗浄乾燥装置20の洗浄乾燥処理時における動作を示す図であり、図17は制御装置36が実施する洗浄乾燥処理のフローチャートであり、図20は制御装置36が実施する洗浄乾燥槽22への有機溶剤23の補給処理のフローチャートである。また、図11〜図16において、図2〜図10に示した構成と同一構成については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0057】
洗浄乾燥装置20が起動すると、制御装置36は洗浄乾燥処理及び有機溶剤23の補給処理を開始する。説明の便宜上、先ず図20を用いて有機溶剤23の補給処理について説明する。洗浄乾燥装置20が起動すると、制御装置36はステップ30(図ではステップをSと略称している)において、液面センサー37からの信号に基づき、洗浄乾燥槽22内に貯留されている有機溶剤23の液面が所定値以上であるかどうかを判定する。
【0058】
ここで、ステップ30における所定値とは蒸気エリア25に適正に有機溶剤23の蒸気を発生させることができる有機溶剤23の適正貯留量の範囲における最大貯留量に対応する液面高さとしている。尚、洗浄乾燥装置20が起動した直後においては、常閉弁であるバルブ43,45は閉弁(OFF)状態となっている。
【0059】
ステップ30で液面が所定値以上であると判断された場合、換言すると洗浄乾燥槽22内に過剰の有機溶剤23が貯留されている場合は、処理はステップ31に進み、制御装置36はバルブ43の閉弁状態(OFF)を維持しつつ、バルブ45を開弁(ON)する。これにより、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23は、連通配管53、バルブ45、及び排出配管56を介してタンクユニット34に向け排出される。これにより、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の貯留量は減少し、有機溶剤23の液面は低下する。
【0060】
制御装置36はステップ32により、有機溶剤23の液面の高さが基準値となるまでステップ31の状態(バルブ43→OFF,バルブ45→ON)を維持する。ここで基準値とは、蒸気エリア25に適正に有機溶剤23の蒸気を発生させることができる有機溶剤23の適正貯留量の範囲(最大貯留量と最小貯留量)の平均となる液面高さである。
【0061】
一方、ステップ32において有機溶剤23の液面の高さが所定値まで低下したと判断されると、処理はステップ33に進み、バルブ43及びバルブ45を閉弁状態(OFF)とする。これにより、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の充填量が所定量よりも多い場合、制御装置36により自動的に所定量となるよう制御される。
【0062】
一方、ステップ30において、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の液面高さが所定以上ではないと判断されると、処理はステップ34に進む。ステップ34では、制御装置36は液面センサー37からの信号に基づき、洗浄乾燥槽22内に貯留されている有機溶剤23の液面が所定値以下であるかどうかを判定する。
【0063】
ここで、ステップ34における所定値とは蒸気エリア25に適正に有機溶剤23の蒸気を発生させることができる有機溶剤23の貯留量の範囲における最低量の貯留量に対応する液面高さとしている。
【0064】
ステップ34で液面が所定値以下であると判断された場合、換言すると洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23が減少している場合は、処理はステップ35に進み、制御装置36はバルブ43の開弁状態(ON)とすると共にバルブ45を閉弁(OFF)する。これにより、循環ユニット35から供給される有機溶剤23は、供給配管40及び補給用配管41を介して洗浄乾燥槽22に供給される。これにより、洗浄乾燥槽22内に有機溶剤23が補給され、有機溶剤23の液面は上昇する。
【0065】
制御装置36はステップ36により、有機溶剤23の液面の高さが基準値となるまでステップ31の状態(バルブ43→ON,バルブ45→OFF)を維持する。一方、ステップ36において有機溶剤23の液面の高さが基準値まで上昇したと判断されると、処理はステップ37に進み、バルブ43及びバルブ45を閉弁状態(OFF)とする。これにより、洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の充填量が所定量よりも少ない場合、制御装置36により自動的に基準所定量となるよう制御される。このステップ30〜37の処理は、洗浄乾燥装置20が駆動している間は繰り返し実行される。
【0066】
次に、制御装置36が実施する洗浄乾燥処理について説明する。
【0067】
洗浄乾燥装置20の洗浄乾燥処理が開始すると、ヒータ24、循環ユニット35、制御装置36が起動すると共に、冷却管26に対して冷却水の供給が開始される。そして、先ず制御装置36に対して初期設定が行われる(図17のステップ10)。
【0068】
このステップ10では、昇降ステージ28を昇降させる際の第1の速度V1,昇降ステージ28を上昇させる際の第2の速度V2,及び後述する噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射開始及び停止のタイミングの決定に用いる第1の温度T1及び第2の温度T2が設定される。この設定処理は、図6に示す入力パネル57及び速度入力スイッチ58A,58Bを用いて行われる。
【0069】
本実施例では、第1の速度V1を例えば9.5mm/secに設定し、第2の速度V2を2.5mm/secに設定している。また、第1の温度T1は蒸気エリア25内の温度と略等しい温度に設定しており、本実施例では80℃に設定している。また、第2の温度T2は蒸気エリア25内に設置された収納ケース10(ローバ11)の表面に対し有機溶剤23の結露が発生する温度に設定されており、本実施例では24℃に設定されている。尚、この第1及び第2の速度V1,V2、及び第1及び第2の温度T1,T2は、使用する有機溶剤23の種類や洗浄乾燥槽22の容積、また収納ケース10(ローバ11)の種類や形状により変化するものであり、上記した例に限定されるものではない。
【0070】
上記のようにステップ10で初期設定が終了すると、制御装置36は昇降ステージ28を設置/回収位置に移動させる。具体的には、制御装置36は各位置センサー32A〜32Cからの信号に基づき昇降ステージ28の現在の位置を検知し(ステップ11)、昇降ステージ28が設置/回収位置に位置していない場合には昇降駆動装置33を駆動して昇降ステージ28を設置/回収位置まで速度V1で移動させる(ステップ12)。
【0071】
このステップ11,12の処理により昇降ステージ28が設置/回収位置まで移動すると、昇降ステージ28に収納ケース10が収納された収納バスケット70が装着される。図11は、収納バスケット70が昇降ステージ28に装着された状態を示している。
【0072】
昇降ステージ28に収納バスケット70が装着されると、制御装置36は再び昇降駆動装置33を駆動し、昇降ステージ28を洗浄乾燥位置に向け速度V1で移動する(ステップ13)。この時の昇降ステージ28の下降速度は、第1の速度V1とされている。制御装置36は、洗浄乾燥位置に配設された位置センサー32Aが昇降ステージ28を検知するまで、昇降ステージ28の下降を継続する(ステップ14,15)。
【0073】
位置センサー32Aにより昇降ステージ28が洗浄乾燥位置まで移動したと判断されると、制御装置36は昇降ステージ28の移動を禁止させる。図12は、昇降ステージ28が洗浄乾燥位置まで移動した状態を示している。
【0074】
昇降ステージ28が洗浄乾燥位置まで移動することにより、被洗浄乾燥物となるローバ11は蒸気エリア25内に装着された状態となり、よってローバ11に対して第1の洗浄乾燥処理が行われる(ステップ16)。また制御装置36は、昇降ステージ28が洗浄乾燥位置まで移動したと同時に、第1の洗浄乾燥処理の処理時間(以下、第1の経過時間)の計測を開始する。
【0075】
この第1の洗浄乾燥処理では、蒸気エリア25内に装着されたばかりのローバ11は、蒸気エリア25内の温度(約80℃)に比べて温度が低い(例えば、20℃〜25℃)ため、ローバ11の表面には有機溶剤23が結露する。この結露した有機溶剤23はローバ11の表面を流れ落ち、この時にローバ11の表面の汚れも流れされ、よってローバ11の表面は洗浄される。また、時間の経過と共にローバ11の温度が上昇すると、ローバ11に結露が発生しなくなると共に、表面に付着していた有機溶剤23が熱により気化し、よってローバ11の表面は乾燥する。
【0076】
制御装置36は、ステップ17−1において、温度センサー31A〜31Dから蒸気エリア25の温度を測定し、これに基づきローバ11の温度を検出する。続いて制御装置36は、この温度ローバ11の温度がステップ10で設定した第1の温度(蒸気エリア25内の温度と略等しい温度)になったかどうかを判断する。
【0077】
また制御装置36は、この温度検出処理と共に、昇降ステージ28が洗浄乾燥位置まで移動した以降の第1の経過時間が所定時間1を超えたかどうかを判断する。ここで、所定時間1は実験的に求められる時間であり、蒸気エリア25にローバ11を設置した後、ローバ11の温度が前記した第1の温度となるまでに要する時間である(本実施例では、所定時間1は14minとしている)。
【0078】
ステップ17−1の処理により、ローバ11の温度が第1の温度以下であり、かつ、ローバ11を蒸気エリア25に設置した後の第1の経過時間が所定時間1を超えない間は、ステップ16の第1の洗浄処理が継続される。
【0079】
一方、ローバ11の温度が第1の温度を超え、かつ第1の経過時間が所定時間1を超えたと判断すると、制御装置36は処理をステップ17−2に進め、温度センサー31A〜31Dから測定した蒸気エリア25の温度が所定温度T以上であるかどうかを判定する。ここで所定温度Tとは、被洗浄乾燥物となる収納ケース10(ローバ11)を蒸気エリア25内に装着した際、収納ケース10(ローバ11)の表面に有機溶剤23が結露する可能性がある温度であり、特に本実施例では有機溶剤23が結露する可能性がある温度の上限値を所定温度Tとしている。
【0080】
ステップ17−2で蒸気エリア25の温度が所定温度T未満であると判定される状態は、図20を用いて説明した有機溶剤23の補給処理により循環ユニット35から洗浄乾燥槽22に有機溶剤23が補給された状態である。このとき、補給される有機溶剤23は加熱されていないため、一時的に洗浄乾燥槽22内の有機溶剤23の温度が低下し、これに伴い蒸気エリア25の温度も低下する(この蒸気エリア25の温度低下を図19に矢印Aで示す)。従って、蒸気エリア25に装着されている収納ケース10(ローバ11)の温度も低下する。
【0081】
本実施例では、ステップ17−2の処理により、蒸気エリア25の温度が所定温度T未満である場合は、ステップ18の噴射ノズル30から有機溶剤23を噴射する処理に移行することを禁止する構成としている。このステップ17−2の処理を実施することにより、洗浄乾燥処理の効率化を図ることができる。
【0082】
即ち、後述するように噴射ノズル30から有機溶剤23を収納ケース10(ローバ11)に向け噴射する処理の目的のひとつは、蒸気エリア25で昇温された収納ケース10(ローバ11)の温度を低下させることにある。よって、蒸気エリア25の温度が低下し、これに伴い収納ケース10(ローバ11)の温度も低下している状態で噴射ノズル30から有機溶剤23を収納ケース10(ローバ11)に噴射しても、温度低下している収納ケース10(ローバ11)に有機溶剤23を噴射することになり効率が悪い。しかしながら、本実施例のように蒸気エリア25の温度が所定温度T未満である場合に噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射を禁止することにより、洗浄乾燥処理の効率化を図ることができる。
【0083】
一方、ステップ17−2において、蒸気エリア25内の温度が所定温度T以上であると判断された場合は、処理はステップ18に進む。ステップ18では、制御装置36はバルブ44(図4参照)を開弁し、これにより噴射ノズル30からローバ11に向け有機溶剤23の噴射を開始する。また、これと同時に制御装置36は、噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射時間(以下、第2の経過時間)の計測を開始する。
【0084】
図13は、噴射ノズル30から有機溶剤23が収納ケース10(ローバ11)に向け噴射されている状態を示している。噴射ノズル30からは、20℃程度に温度管理された有機溶剤23(IPA)が収納ケース10(ローバ11)に向け、図中θで示す角度が90°以上の角度を以って噴射される。また有機溶剤23の噴射流量は、例えば毎秒1.4リットルに設定されている。また本実施例では、先に図8を用いて説明したように噴射ノズル30は回動可能な構成となっており、かつ図10を用いて説明したように噴射ノズル30は楕円状に有機溶剤23を噴射しうる構成とされている。このため、収納ケース10(ローバ11)に対して有機溶剤23を効率よく噴射することができる。
【0085】
有機溶剤23が収納ケース10(ローバ11)に噴射されることにより、ローバ11の表面は洗浄される。また、上記のように噴射される有機溶剤23は20℃程度であるため、ステップ17で肯定判断がされた際に約80℃であったローバ11は徐々に冷却される。
【0086】
制御装置36は、ステップ19において、温度センサー31A〜31Dからローバ11の温度を検出し、ローバ11の温度がステップ10で設定した第2の温度(ローバ11の表面に有機溶剤23の結露が発生する温度。具体的には24℃)になったかどうかを判断する。また制御装置36は、この温度検出処理と共に、噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射時間が所定時間2を超えたかどうかを判断する。ここで、所定時間2は実験的に求められる時間であり、噴射ノズル30の噴射開始後、ローバ11の温度が前記した第2の温度となるまでに要する時間である(本実施例では、所定時間2は1minとしている)。
【0087】
本実施例では、ローバ11の温度が第2の温度(24℃)以上であり、かつ、第2の経過時間が所定時間2を超えない間は、ステップ18の噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射処理を継続する構成とした。
【0088】
一方、ローバ11の温度が第2の温度(24℃)以下となり、かつ第2の経過時間が所定時間1を超えたと判断すると、制御装置36はバルブ44を閉弁し、これにより噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射を停止する。
【0089】
噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射が停止された状態では、ローバ11の温度は第2の温度以下であり、よって蒸気エリア25内に位置したローバ11の表面に再び有機溶剤23の結露が発生しうる状態である。よって、ローバ11に対して第2の洗浄乾燥処理が行われる(ステップ20)。また制御装置36は、噴射ノズル30からの有機溶剤23の噴射が停止されたと同時に、第2の洗浄乾燥処理の処理時間(以下、第3の経過時間)の計測を開始する。
【0090】
このステップ20の第2の洗浄乾燥処理で実施される処理は、ステップ16で説明した第1の洗浄乾燥処理と略同一の処理である。即ち、ローバ11の表面に有機溶剤23が結露し、この結露した有機溶剤23はローバ11の表面を流れ落ち、この時にローバ11の表面の汚れも流され、よってローバ11の表面は洗浄される。また、時間の経過と共にローバ11の温度が上昇すると、ローバ11に結露が発生しなくなり、表面に付着していた有機溶剤23が熱により気化し、よってローバ11の表面は乾燥する。
【0091】
制御装置36は、ステップ21−1において、温度センサー31A〜31Dからローバ11の温度を検出し、ローバ11の温度がステップ10で設定した第1の温度(蒸気エリア25内の温度と略等しい温度)になったかどうかを判断する。また制御装置36は、この温度検出処理と共に、有機溶剤23の噴射が停止された以降の第3の経過時間が所定時間3を超えたかどうかを判断する。ここで、所定時間3は実験的に求められる時間であり、有機溶剤23の噴射が停止された後、ローバ11の温度が前記した第1の温度となるまでに要する時間である(本実施例では、所定時間3は14minとしている)。
【0092】
ステップ21−1で肯定判断が行われると、制御装置36は処理をステップ21−2に進め、温度センサー31A〜31Dから測定した蒸気エリア25の温度が所定温度T以上であるかどうかを判定する。ここでの所定温度Tは、ステップ17−2で説明した所定温度Tと同一である。
【0093】
即ち、ステップ21−2で蒸気エリア25の温度が所定温度T未満であると判定される状態は、前記のように有機溶剤23の補給処理により循環ユニット35から洗浄乾燥槽22に有機溶剤23が補給されることにより、蒸気エリア25の温度が被洗浄乾燥物となる収納ケース10(ローバ11)の表面に有機溶剤23が結露する可能性がある温度まで低下した状態である。
【0094】
本実施例では、蒸気エリア25の温度が所定温度T未満である場合は、ステップ22以降の収納ケース10(ローバ11)の蒸気エリア25からの取り出し処理を禁止する構成としている。このステップ21−2の処理を実施することにより、洗浄処理が終了した収納ケース10(ローバ11)に対して染みが発生することを防止できる。
【0095】
即ち、図19から明らかなように蒸気エリア25の温度低下は短時間であり、この短時間で収納ケース10(ローバ11)の表面に結露する有機溶剤23の量は少なく、洗浄処理時のように流れ落ちるようなことはない。そして、このように有機溶剤23が結露し付着した状態の収納ケース10(ローバ11)を蒸気エリア25から取り出すと、結露した有機溶剤23は蒸発に伴い染みとして残る場合がある。これに対して本実施例では蒸気エリア25の温度が所定温度T未満である場合は、収納ケース10(ローバ11)を蒸気エリア25から取り出すことを禁止するため、収納ケース10(ローバ11)の表面に染みが発生することを防止することができる。
【0096】
一方、ステップ21−2で蒸気エリア25の温度が所定温度T以上であると判定されると処理はステップ22に移り、制御装置36は昇降駆動装置33を駆動制御し、昇降ステージ28をステップ10で設定した第2の速度V2で上昇させる(第2の速度V2は、例えば2.5mm/sec)。
【0097】
制御装置36は、位置センサー32Bからの信号に基づき、昇降ステージ28が速度切替位置に達したかどうかを判断し(ステップ23)、速度切替位置に至るまで昇降ステージ28を第2の速度V2で上昇させる。そして、昇降ステージ28が速度切替位置に達すると、ステップ24において、制御装置36は昇降ステージ28の上昇速度を第1の速度V1に切替える(第2の速度V2は、例えば9.5mm/sec)。図15は、昇降ステージ28が上昇し、速度切替位置に達した状態を示している。
【0098】
その後、制御装置36は昇降ステージ28が設置/回収位置に至るまで第1の速度V1で昇降ステージ28を上昇させ、昇降ステージ28が設置/回収位置まで移動した時点で洗浄乾燥の全工程を終了する。図16は、昇降ステージ28が設置/回収位置まで移動した状態を示している。
【0099】
図18は、本実施例に係る洗浄乾燥装置20の洗浄効果を、図1に示した従来のベーパ乾燥機1による洗浄効果と比較して示す図である。同図に示す実験例では、5インチシリコンウェーハを洗浄乾燥装置20及びベーパ乾燥機1でそれぞれ洗浄乾燥処理を実施し、その後にパーティクルカウンタを用いてウェーハ表面の0.2μm以上のコンタミ数をカウントした。同図に示すように、従来に比べて本実施例に係る洗浄乾燥装置20による方がコンタミ数が低減されていることが分る。よって、本実施例に係る洗浄乾燥装置20によれば、従来に比べて洗浄及び乾燥品質が向上することが実証された。
【0100】
尚、上記した実施例ではステップ16の第1の洗浄乾燥処理、ステップ18の噴射ノズル30から有機溶剤23を噴射することによる洗浄処理、及びステップ20の第1の洗浄乾燥処理をそれぞれ1回のみ実施する例について説明した。しかしながら、ステップ16,18,20の各洗浄乾燥処理は繰り返し実施することが可能なものであり、繰り返し実施することにより更に洗浄乾燥効果を高めることができる。
【0101】
また、本実施例ではステップ16の第1の洗浄乾燥処理を実施した後に、ステップ18の有機溶剤23の噴射による洗浄を行う構成としたが、有機溶剤23の噴射による洗浄を行った後、第1の洗浄乾燥処理を実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】図1は、従来の一例であるベーパ乾燥機を示す構成図である。
【図2】図2は、被洗浄乾燥物となる収納ケースを示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の構成図である。
【図4】図4は、本発明の一実施例で洗浄燥装置の配管系統図である。
【図5】図5は、装置本体の外観図である。
【図6】図6は、制御装置の外観図である。
【図7】図7は、タンクユニットの外観図である。
【図8】図8は、ノズル移動機構を説明するための図である。
【図9】図9は、収納ケースが搭載される収納バスケットを示す図である。
【図10】図10は、収納ケースが搭載される収納バスケットに噴射ノズルから有機溶剤が噴射されている状態を示す図である。
【図11】図11は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の動作を説明するための図である(その1)。
【図12】図12は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の動作を説明するための図である(その2)。
【図13】図13は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の動作を説明するための図である(その3)。
【図14】図14は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の動作を説明するための図である(その4)。
【図15】図15は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の動作を説明するための図である(その5)。
【図16】図16は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の動作を説明するための図である(その6)。
【図17】図17は、制御装置が実施する洗浄乾燥処理を示すフローチャートである。
【図18】図18は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置の効果を説明するための図である。
【図19】図19は、本発明の一実施例である洗浄乾燥装置による洗浄乾燥処理実施時における蒸気エリアの温度推移を示す図である。
【図20】図20は、制御装置が実施する有機溶剤の補給処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0103】
20 洗浄乾燥装置
21 装置本体
22 洗浄乾燥槽
23 有機溶剤
24 ヒータ
25 蒸気エリア
26 冷却管
27 冷却エリア
28 昇降ステージ
29 溶剤回収部
31,31A〜31D 温度センサー
32A〜32C 位置センサー
33 昇降駆動装置
36 制御装置
37 液面センサー
40 供給配管
41 補給用配管
42 噴射用配管
53 連通配管
55 回収配管
56 排出配管
58A,58B 速度入力スイッチ
60 ノズル移動機構
61 シリンダ
70 収納バスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を貯留した洗浄乾燥槽と、
該洗浄乾燥槽の前記有機溶媒の貯留量が所定値以下となった際、前記洗浄乾燥槽に前記有機溶媒を補給する補給手段と、
前記有機溶剤の蒸気が発生する蒸気エリア内に被洗浄乾燥物を装着脱する装着脱装置とを有し、
前記蒸気エリア内で前記被洗浄乾燥物の洗浄処理及び乾燥処理を行う洗浄乾燥装置において、
前記蒸気エリアの温度を検出する温度検出手段と、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるとき、前記装着脱装置の駆動を禁止させる第1の停止手段と、
を設けた洗浄乾燥装置。
【請求項2】
噴射ノズルから前記有機溶剤と同一の有機溶剤を前記被洗浄乾燥物に向け噴射する噴射手段を更に設け、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるとき、前記噴射手段の駆動を禁止させる第2の停止手段を設けた請求項1に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項3】
前記温度検出手段は、前記被洗浄乾燥物が装着されるステージに配設された単数或いは複数の温度センサである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項4】
前記装着脱装置は、該被洗浄乾燥物が装着されるステージと、該ステージを昇降させる昇降駆動装置とにより構成される請求項1乃至3のいずれか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項5】
有機溶剤の蒸気が発生する蒸気エリア内に設置された前記被洗浄乾燥物の洗浄及び乾燥を行う第1工程と、
前記蒸気エリアから前記被洗浄乾燥物を取り出す第2の工程とを有する洗浄乾燥方法において、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるときは、前記第1工程から前記第2工程への移行を禁止させる洗浄乾燥方法。
【請求項6】
更に、前記第1の工程の終了後、噴射ノズルから前記有機溶剤と同一の有機溶剤を前記蒸気エリア内に設置された前記被洗浄乾燥物に向け噴射する第3の工程を有し、
前記蒸気エリアの温度が前記被洗浄乾燥物の表面に前記有機溶剤が結露可能な温度以下であるとき、前記第1工程から前記第3工程への移行を禁止させる請求項5に記載の洗浄乾燥方法。
【請求項7】
前記温度検出手段は、前記被洗浄乾燥物が装着されるステージに配設された単数或いは複数の温度センサである請求項5又は6に記載の洗浄乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−124025(P2009−124025A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298135(P2007−298135)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】