説明

洗浄装置

【課題】洗浄時におけるウエーハの裏面側への洗浄水の回り込みを抑制することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】ウエーハWの直径よりも小さい直径で保持面14を囲むように保持部11上面に環状に形成された溝部16と、一端が溝部16に連通し他端が大気に開放されるように保持部11に形成された連通路17とを備えることで、保持面14からの負圧吸引漏れによって吸着面に吸い込まれる雰囲気を、連通路17で開放された大気の雰囲気とし、溝部16より外周側におけるウエーハW裏面と保持部11上面との間からの吸い込み雰囲気を全周に亘って均等に低減させるようにし、よって、洗浄時におけるウエーハWの裏面側への洗浄水の回り込みを抑制できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば加工されたウエーハを回転させながら洗浄水により洗浄するスピンナ方式の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された多数の領域にIC、LSI等の回路を形成し、このような回路が形成された各領域を所定のストリート(切断ライン)に沿ってダイシングすることにより個々の半導体チップを製造している。このように半導体ウエーハをダイシングする装置としては、一般に切削装置が用いられている。半導体ウエーハをダイシングする切削装置は、ワークを負圧により保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたワークを切削する切削ブレードを備えた切削機構とを具備している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、ダイシング装置ではダイシング加工を行った後にスピンナ洗浄装置によって加工後のウエーハの洗浄を行うようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−25209号公報
【特許文献2】特開2008−16673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、加工において発生した加工屑はスピンナ洗浄によって洗い落とされるが、洗浄の際に使用される水がウエーハの裏面側に回り込んでしまうという問題があった。このように、洗浄水がウエーハの裏面側に回り込んでしまうと、ウエーハをカセットに収納した際に、下段に収納済みのウエーハの表面に洗浄水が滴り落ちる場合がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、洗浄時におけるウエーハの裏面側への洗浄水の回り込みを抑制することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる洗浄装置は、ウエーハを洗浄する洗浄装置であって、ウエーハを負圧によって吸引保持する保持面を有する保持部と、該保持部を前記保持面に垂直な軸を回転軸として回転させる回転駆動部と、前記保持面に保持されたウエーハに洗浄水を供給するノズルと、ウエーハの直径よりも小さい直径で前記保持面を囲むように前記保持部上面に環状に形成された溝部と、一端が前記溝部に連通し他端が大気に開放されるように前記保持部に形成された連通路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる洗浄装置は、ウエーハの直径よりも小さい直径で保持面を囲むように保持部上面に環状に形成された溝部と、一端が溝部に連通し他端が大気に開放されるように保持部に形成された連通路とを備えるので、保持面からの負圧吸引漏れによって吸着面に吸い込まれる雰囲気を、連通路で開放された大気の雰囲気とし、溝部より外周側におけるウエーハ裏面と保持部上面との間の隙間からの吸い込み雰囲気を遮断させることができるため、洗浄時におけるウエーハの裏面側への洗浄水の回り込みを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の洗浄装置を備える加工装置の構成例を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、本実施の形態の洗浄装置の構成例を示す平面図である。
【図3】図3は、図2の縦断側面図である。
【図4】図4は、変形例の洗浄装置の構成例を示す平面図である。
【図5】図5は、図4の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態である洗浄装置について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の洗浄装置を備える加工装置の構成例を示す外観斜視図であり、図2は、本実施の形態の洗浄装置の構成例を示す平面図であり、図3は、その縦断側面図である。
【0011】
この加工装置1は、ウエーハWを保持する保持テーブル2と、この保持テーブル2に保持されたウエーハWに加工を施す加工手段と、この加工手段で加工されたウエーハWを洗浄するスピンナ方式の洗浄装置10とを備えている。図示しない加工手段は、筐体3内に内蔵されたものであり、ウエーハWに対して例えば切削加工を施すものである。この加工手段は、切削ブレード方式のものでもレーザ加工方式のものでもよい。
【0012】
また、加工や洗浄の対象となるウエーハWは、特に限定されるものではないが、例えばシリコンウエーハ等の半導体ウエーハや、チップ実装用としてウエーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミックス、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、LCDドライバ等の各種電子部品、さらには、ミクロンオーダの加工位置精度が要求される各種加工材料が挙げられる。
【0013】
また、洗浄装置10は、その基本構成として、保持部11と、回転駆動部12と、ノズル13とを備えている。保持部11は、全体的に円盤形状に形成されたもので、上面中央部にウエーハWを負圧によって吸引保持する保持面14を有する。すなわち、保持面14は、ポーラスセラミックス等のポーラス部材により薄い円盤状に形成され、図示しない負圧源に連通させて負圧を作用させることでウエーハWを負圧によって吸引保持する。ここで、負圧吸引時のリークを防止するため、吸引保持対象となるウエーハWは、保持面14の直径よりも大きな直径のものとなる。
【0014】
回転駆動部12は、保持部11を保持面14に垂直な軸φを回転軸として高速で回転させる回転モータ等を内蔵したものである。また、ノズル13は、保持面14に保持されたウエーハWの上面に対して上方から洗浄水を供給するためのものである。このノズル13は、揺動手段15に搭載され、例えばウエーハWに対して外周部・中心部間に渡って半径方向に揺動しながら洗浄水を供給するように構成されている。
【0015】
さらに、本実施の形態の洗浄装置10は、保持部11に溝部16と複数、例えば4個の連通路17とを備えている。溝部16は、ウエーハWの直径よりも小さい直径で保持面14の外周側を全域に亘って囲むように保持部11の上面に環状に形成されている。連通路17は、上端(一端)が溝部16に連通し、下端(他端)が大気に開放されるように保持部11に形成された上下貫通孔からなる。これら連通路17は、例えば円周方向において90度ずつ等間隔で均等となるように溝部16に対して離散的に設けられている。
【0016】
このような構成において、ウエーハWの洗浄時には、対象となるウエーハWを保持面14上に負圧により吸着保持し、回転駆動部12により高速回転させながら、上方からノズル13によって洗浄水を供給することで行われる。これにより、加工手段による加工で発生したウエーハW上の加工屑は、洗浄水によって洗い落とされる。洗浄後の水は、ウエーハW上から落下するとともに、その一部は、ウエーハW端部において裏面側に回り込み、保持部11の外周面端部とウエーハWとによるコーナ部に溜まりやすい状況にある。
【0017】
ここで、溝部16及び連通路17がない場合を考える。保持面14よりウエーハWの方が大きいため、保持面14からの負圧吸引漏れによって吸着面に吸い込まれる雰囲気は、図3中に点線矢印で示すように、保持面14より外周側におけるウエーハW裏面と保持部14上面との間の隙間からの吸い込み雰囲気となる。よって、この吸い込み雰囲気に従いウエーハW裏面と保持部14上面との間の隙間を通って毛細管現象で内部に入り込み、結局、ウエーハWの裏面側に回り込んで濡れた状態となってしまう。
【0018】
しかるに、本実施の形態においては、保持部11に溝部16及び連通路17を備えているので、洗浄時におけるウエーハWの裏面側への洗浄水の回り込みを抑制することができる。すなわち、保持面14からの負圧吸引漏れによって吸着面に吸い込まれる雰囲気は、図3中に実線矢印で示すように、主に連通路17で開放された大気の雰囲気となる。この際、4個の連通路17が円周方向において均等に離散的に設けられ、全周に亘る共通の環状の溝部16に連通しているので、連通路17で開放された大気の雰囲気が全周に亘って均等に作用する。連通路17で開放された大気は、水分があまり含まれていない環境にある。よって、本実施の形態の場合、溝部16より外周側におけるウエーハW裏面と保持部11上面との間の隙間からの吸い込み雰囲気が全周に亘って均等に低減される。この結果、洗浄時におけるウエーハWの裏面側への洗浄水の回り込みが抑制される。
【0019】
図4は、変形例の洗浄装置の構成例を示す平面図であり、図5は、その縦断側面図である。本実施の形態では、連通路17を上下貫通孔として形成したが、図4および図5に示すように、溝状の連通路18としてもよい。すなわち、複数、例えば4個の連通路18は、内方端(一端)が溝部16に連通し、外方端(他端)が大気に開放されるように保持部11の上面側に半径方向に貫通する溝状に形成されている。これら連通路18は、例えば円周方向において90度ずつ等間隔で均等となるように溝部16に対して離散的に設けられている。
【0020】
この変形例の場合も、保持面14からの負圧吸引漏れによって吸着面に吸い込まれる雰囲気は、図5中に実線矢印で示すように、主に連通路18で開放された大気の雰囲気となる(破線矢印は、図3の場合と同様、連通路18がない場合を示している)。この際、4個の連通路18が円周方向において均等に離散的に設けられ、全周に亘る共通の環状の溝部16に連通しているので、連通路18で開放された大気の雰囲気が全周に亘って均等に作用する。連通路18で開放された大気は、保持部11の外周面となるが、吸い込まれる雰囲気は主に連通路18で開放された大気の雰囲気となることで、他のウエーハW裏面と保持部11上面との間の隙間からの吸い込み雰囲気が全周に亘って均等に低減される。さらに、連通路18から吸い込まれた雰囲気に含まれる水分も溝部16の内壁が障害となりウエーハWの裏側に回り込みにくくなる。よって、全周に亘ってウエーハW裏面と保持部11上面との間の隙間からの吸い込みが起こる従来品に比較して、洗浄時におけるウエーハWの裏面側への洗浄水の回り込みが抑制される。
【0021】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、加工装置1に組み込まれた洗浄装置10の例で説明したが、洗浄装置単独機の場合であっても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 洗浄装置
11 保持部
12 回転駆動部
13 ノズル
14 保持面
16 溝部
17,18 連通路
W ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを洗浄する洗浄装置であって、
ウエーハを負圧によって吸引保持する保持面を有する保持部と、
該保持部を前記保持面に垂直な軸を回転軸として回転させる回転駆動部と、
前記保持面に保持されたウエーハに洗浄水を供給するノズルと、
ウエーハの直径よりも小さい直径で前記保持面を囲むように前記保持部上面に環状に形成された溝部と、
一端が前記溝部に連通し他端が大気に開放されるように前記保持部に形成された連通路と、
を備えることを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−177376(P2010−177376A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17177(P2009−17177)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】