説明

流体通路を内部に備えたハウジングへのチェックバルブの取付け手段

【課題】弁座の変形を防止して弁体と弁座との閉鎖性を確保し、流体通路を内部に備えたハウジングに対するチェックバルブのガタツキを防止し、始動時における必要な流体流量を確保することができる流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段を提供する。
【解決手段】流体通路を内部に備えたハウジング46の収容空間52にチェックバルブ10と波ワッシャ54とを入れ、抜け出し防止手段58,62で収容空間52内からチェックバルブ20と波ワッシャ54が抜け出さないようにする。チェックバルブ10と波ワッシャ54とを収容空間52内に取付けた状態においては、波ワッシャ54に反発力が加えられている状態とする。この波ワッシャ54に、チェックバルブ10の弁作動による振動が吸収され、弁座24への衝撃が減少すると共に、ハウジング46とチェックバルブ10との間に発生するガタツキを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体通路を内部に備えたハウジングへのチェックバルブの取付け手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、流体通路を内部に備えたエンジンや燃料ポンプ等の装置(機械)のハウジングには、その燃料通路を開閉すると共に、料通路内の燃料の逆流を防止するための燃料用チェックバルブが取付けられている。例えば特許文献1には、燃料ポンプとその燃料ポンプに取付ける燃料用チェックバルブの従来構造が示されており、図4にその従来構造を示す。
【0003】
燃料ポンプ70のケーシング72には、その内部に、燃料タンク(図示せず)からの燃料が導入される上流側燃料通路74と、エンジン(図示せず)へ燃料を供給する下流側燃料通路76と、それら上流側燃料通路74と下流側燃料通路76とを連絡するものであってケーシング72の外面から内部に向けて穿設される収容空間78とが形成されている。燃料用チェックバルブ80は、燃料ポンプ70の収容空間78内に挿入されて、その挿入先端部を収容空間78内の底面82に当接させ、その後、燃料用チェックバルブ80を燃料ポンプ70のケーシング72から抜け出さないように、抜け出し防止手段によって燃料ポンプ70に燃料用チェックバルブ80を固定させている。その抜け出し防止手段については後述する。
【0004】
燃料用チェックバルブ80は、主部材84とシート部材86とからなるボディ88を有し、そのボディ88内に2箇所に開口する燃料連絡通路90が形成されている。燃料用チェックバルブ80が燃料ポンプ70に取付けられた状態では、燃料連絡通路90の一方の開口部は上流側燃料通路74と連絡し、燃料連絡通路90の他方の開口部は下流側燃料通路76と連絡するよう設定されている。シート部材86の一端には弁座92が設けられており、その弁座92は燃料用チェックバルブ80の燃料連絡通路90の途中に位置している。燃料連絡通路90の途中には、燃料連絡通路90を開閉するためのボール弁94と、そのボール弁94を弁座92に着座する方向に付勢するスプリング96と、が備えられている。
【0005】
このような構成の燃料用チェックバルブ80においては、エンジン停止時にスプリング96の付勢力によってボール弁94が弁座92に着座して燃料連絡通路90が閉鎖され、上流側燃料通路74と下流側燃料通路76とが遮断される。一方、エンジン駆動時には、上流側燃料通路74の燃料圧が高くなって、その燃料圧がスプリング96に抗してボール弁94を弁座92から離して燃料連絡通路90が開放され、上流側燃料通路74と下流側燃料通路76とが連絡される。
【0006】
燃料ポンプ70のケーシング72には、収容空間78の位置を中心としてその周辺に複数の雌螺子部98が設けられている。燃料ポンプ70のケーシング72には、雌螺子部98に合致した位置に螺子部より大径の穴100を形成したプレート102が取り付けられるもので、プレート102の穴100をケーシング72の雌螺子部98の位置に合わせて、プレート102をケーシング72に接合させる。その後、雄螺子104をプレート102の穴100から挿入して、雄螺子104とケーシング72の雌螺子部98とを螺合させることで、燃料ポンプ70のケーシング72にプレート102を固定させる。収容空間78に挿入した燃料用チェックバルブ80は、挿入後端部がケーシング72に固定されたプレート102と接触し、挿入先端部は収容空間78の底面82に接触するので、燃料用チェックバルブ80はケーシング72とプレート102とで挟持される。この結果、燃料用チェックバルブ80の収容空間78からの抜け出しが防止されると共に、収容空間78内での燃料用チェックバルブ80のガタつきが防止される。
【0007】
この特許文献1では、燃料ポンプ70のケーシング72に形成される雌螺子部98と、燃料用チェックバルブ80の抜け出しとガタつきとを防止するためのプレート102と、プレート102をケーシング72の雌螺子部98に螺合するための雄螺子104とで、燃料用チェックバルブ80の燃料ポンプ70への抜け出し防止手段が構成される。この抜け出し防止手段によって、収容空間78からの燃料用チェックバルブ80の抜け出しが防止され、収容空間78内での燃料用チェックバルブ80のガタつきが防止される。
【0008】
燃料用チェックバルブと燃料ポンプとを固定する手段について、特許文献1とは別の構成のものが特許文献2に示されている。特許文献2では、燃料ポンプのケーシングの収容空間の内壁面に雌螺子部を形成すると共に、燃料用チェックバルブの外壁面に雄螺子部を形成する。この雌螺子部と雄螺子部とを螺合することによって、燃料ポンプと燃料用チェックバルブとが固定される。なお、この特許文献2にける燃料用チェックバルブの構造は、特許文献1の燃料用チェックバルブの構造と同じである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3361987号公報
【特許文献2】特表2009−531577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1では、燃料ポンプ70と燃料用チェックバルブ80との抜け出し防止手段として、燃料ポンプ70のケーシング72に、収容空間78の位置を中心としたその周辺に、プレート102を固定するための雌螺子部98を複数個設けている。複数の雌螺子部98をケーシング72に形成するので、燃料ポンプ70のケーシング72は大きいものとなる欠点があった。特許文献1に示す燃料用チェックバルブ80は、プレート102と収容空間78の底面82との間に挟持固定されるため、ボール弁94の弁座92への衝撃が長期にわたって燃料用チェックバルブ80と燃料ポンプ70のケーシング72との固定箇所に及び、燃料用チェックバルブ80と燃料ポンプ70のケーシング72の間に、ガタツキが発生するという欠点があった。また、燃料用チェックバルブ80と燃料ポンプ70のケーシング72とが強固に固定されているので、ボール弁94の弁座92への衝撃が和らげられる箇所が無く、ボール弁94の弁座92への長期にわたる衝撃によって弁座92が磨耗し、弁の閉鎖性が損なわれるおそれがあった。
【0011】
一方、特許文献2では、燃料用チェックバルブの外壁面に雄螺子部を形成するものである。外壁面に雄螺子部を形成する燃料用チェックバルブでは、燃料用チェックバルブのケーシングの外径の大きさが制限される場合に、燃料用チェックバルブの外壁面に形成される雄螺子部の高さ分だけ、燃料用チェックバルブのケーシングの外径を大きくしなければならない。外径の大きさが制限されるものにおいて、燃料用チェックバルブのケーシングの外径が大きくすると、燃料連絡通路の内径やボール弁の直径を小さくせざるを得なくなる。燃料連絡通路の内径が小さくなると、エンジンに供給できる燃料流量が少なくなり、始動時の必要な燃料供給量が得られなくなるという欠点があった。
【0012】
本発明は、上記の問題点に鑑みて為されたものであり、弁座の変形を防止して弁体と弁座との閉鎖性を確保し、流体通路を内部に備えたハウジングに対するチェックバルブのガタツキの発生を防止し、始動時における必要な流体流量を確保することができる流体通路を内部に備えたハウジングへのチェックバルブの取付け手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段は、ケーシングと、前記ケーシング内に形成される流体連絡通路と、前記流体連絡通路の途中を開閉するための弁体と、前記弁体が着座するための弁座を備えたシート部材と、前記弁体を前記弁座に着座させる方向に付勢させるための付勢手段とを有するチェックバルブを、上流側流体通路と下流側流体通路とを内部に形成し、前記上流側流体通路と前記下流側流体通路との両方と連絡する収容空間とを有するハウジングに取り付けるものであって、前記チェックバルブを前記ハウジングの前記収容空間に挿入して、前記チェックバルブを前記ハウジングに抜け出し防止手段で取付けるハウジングとチェックバルブとの取付け手段において、押圧力によって伸縮する弾性部材を前記チェックバルブと共に前記収容空間内に入れ、前記抜け出し防止手段で前記チェックバルブと前記弾性部材とを前記ハウジングの収容空間から抜け出るのを防止し、前記チェックバルブと前記弾性部材とが前記収容空間から抜け出るのを防止した状態では、前記弾性部材に圧縮による反発力が与えられていることを特徴とするものである。本発明は、前記弾性部材を前記チェックバルブの前記収容空間の挿入後端部と前記抜け出し防止手段との間に配置したことを特徴とするものである。本発明は、前記弾性部材を前記収容空間の底面と前記チェックバルブの前記収容空間の挿入先端部との間に配置したことを特徴とするものである。本発明は、前記ハウジングが、ポンプまたはエンジンのいずれか一方であり、前記ポンプハウジングまたはエンジンハウジングのいずれか一方に前記チェックバルブを挿入する前記収容空間を形成したことを特徴とするものである。本発明は、前記抜け出し防止手段が、前記流体通路を内部に備えた前記ハウジングの前記収容空間の内周面に形成される環状の溝と、前記溝に嵌合させるものであって周方向に弾性力を有する抜止部材とから成り、前記抜止部材が前記溝に嵌合した状態では、前記抜止部材の一部が前記収容空間の内部に突出して前記チェックバルブと前記弾性部材とを前記収容空間内に保持することを特徴とするものである。本発明は、前記抜け出し防止手段が、前記流体通路を内部に備えた前記ハウジングにおける前記収容空間の形成位置の近傍の外面に形成される突出部と、前記突出部に形成される穴と、前記穴に挿通されるピンとから成り、前記穴に前記ピンを取り付けた状態では前記チェックバルブの挿入後端部か前記弾性部材かのいずれかが前記ピンに接触して前記チェックバルブと前記弾性部材とを前記収容空間内に保持することを特徴とするものである。本発明は、前記弾性部材を波ワッシャとすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段によれば、チェックバルブは弾性部材による反発力が与えられた状態で収容空間内に保持されるので、チェックバルブで発生する弁体と弁座との衝突による衝撃を緩和でき、弁座の変形を好適に防止することができる。弁座の変形が防止されることから、長期に渡って弁体と弁座とのシール性を確保することができる。また、収容空間内に備えられるチェックバルブの振動や衝撃が弾性部材によって好適に吸収されるので、流体通路を内部に備えた構造物に対するチェックバルブのガタツキの発生を防止することができる。
【0015】
また、本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段によれば、収容空間に形成した溝に例えばCリング等の抜止部材を取り付けて、チェックバルブが流体通路を内部に備えたハウジングの収容空間内から抜け出るのを防止する。従って、特許文献1のようにポンプのハウジングに雌螺子部を設ける必要が無く、また特許文献2のようにチェックバルブのボディに雄螺子部を形成する必要がない。この結果、流体通路を内部に備えたハウジングの増大化を必要とせず、しかもチェックバルブのボディの薄肉化が可能となり、その結果としてチェックバルブのボディ内の流体連絡通路の大径化と、弁体(ボール弁)の大径化を図ることができる。この流体通路の大径化は流量の大容量化につながるので、弁体を大きくリフトさせなくても僅かなリフト量で十分な通路面積を確保することができ、従来問題であった開弁直後の立ち上がり時の必要流量を確保することができる。さらに、チェックバルブのボディに雄螺子部を設けないことにより、チェックバルブのボディへのねじれや伸びに対する強度確保が不要となり、アルミや真鍮等の安価で加工性の良い材料を使えることが可能となって、材料費や加工費を削減することができる。その他に、組付け時に螺子部から収容空間内への異物混入のおそれを無くすことができる。
【0016】
また、弾性部材をチェックバルブの挿入後端部と抜止部材との間に配置すれば、チェックバルブの挿入先端部が流体通路を内部に備えたハウジングの収容空間の底面と接触して、チェックバルブの挿入先端部と流体通路を内部に備えたハウジングの収容空間の底面との間に、弾性部材を備えるための隙間空間が設けられることが無くなる。隙間空間が設けられることはないので、チェックバルブの流体連絡通路に導入される流体が、隙間空間で攪拌される気泡(空気やベーパー)が発生することを無くし、隙間空間への流体の滞留を無くして、流体流量や流体圧を安定させることができる。また、弾性部材が流体に直接触れることはなくなるので、弾性部材自体の耐久性や信頼性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段の他の実施例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段の他の実施例を示す断面図である。
【図4】従来のポンプとチェックバルブとを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、流体通路を内部に備えたハウジングにチェックバルブを取付ける取付け手段に係るものである。
【実施例1】
【0019】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段の一実施例を示す断面図である。本発明は、燃料だけでなく各種の流体に適用することができるものである。本実施例におけるチェックバルブ10は、主部材12とシート部材14とを組み合わせて成るケーシング16を有し、そのケーシング16に、2個の開口部を有する流体連絡通路18が形成される。この2個の開口部を有する流体連絡通路18は、一方は後述する流体通路を内部に備えたハウジング46(後述する)の上流側流体通路48と連絡し、他方は後述する流体通路を内部に備えたハウジング46の下流側流体通路50と連絡するケーシング16は、主部材12とシート部材14との2個の部材から構成されるとしたがケーシング16の外側表面は、主部材12のみから構成されるものであっても良い。
【0020】
主部材12は有底円筒形状をしており、内部には一端が開口する第一空間20が形成されている。シート部材14は円筒形状をしており、その内部には両端が開口する第二空間22が形成されている。シート部材14の一方側の端面には弁座24が形成されており、その弁座24側を先頭としてシート部材14が主部材12の第一空間20内に挿入される。シート部材14弁座24の位置が、主部材12の第一空間20の軸方向のほぼ中間位置に配置した位置で、主部材12とシート部材14とが既知の抜け出し防止手段で固定される。主部材12とシート部材14とが固定された状態では、主部材12の第一空間20は、シート部材14が存在する領域とシート部材14が存在しない領域とから成り、シート部材14が存在しない領域を第一空間主領域20aとする。この第一空間主領域20aは、シート部材14の第二空間22と連絡する。主部材12の第一空間主領域20aとシート部材14の第二空間22とは、前記流体連絡通路18の一部を構成する。
【0021】
第一空間主領域20aの内部には、弁座24に接触するためのボール弁(弁体)26と、そのボール弁26を弁座24に着座させるための付勢手段としてのスプリング28とが備えられている。シート部材14の第二空間22の内部には、チェックバルブ10内に流入してくる燃料の中に混在する気泡(空気やベーパー)や異物を除去するためのフィルタ30が備えられている。主部材12の第一空間20内にシート部材14を挿入固定した状態では、主部材12の第一空間20の開口部側の端面と、筒状のシート部材14の挿入後端部の端面とを同一面32とするのが望ましいが、必ずしもそれに限るものではない。主部材12とシート部材14の同一面32には、フィルタ30がシート部材14の第二空間22内から抜け出さないようにその内部に保持するための環状のフィルタ保持部材34が取り付けられる。なお、シート部材14の第二空間22の内部に取付けられるフィルタ30は、弾力性があってシート部材14の第二空間22から外れないものとすれば、フィルタ保持部材34を省略することができる。
【0022】
ボール弁26は、第一空間主領域20a内に軸方向に移動可能な状態で収容されている。ボール弁26は、第一空間主領域20a内に軸方向に沿って縮設されているスプリング28によって、エンジン停止時には弁座24に着座させられる。ボール弁26が弁座24に着座している間は、ボール弁26によって、第一空間主領域20aとシート部材14の第二空間22とは遮断され、チェックバルブ10の流体連絡通路18は閉鎖されている。一方、エンジン駆動時には、シート部材14の第二空間22の流体圧が、ボール弁26を弁座24に着座させるスプリング28の付勢力に打ち勝って、ボール弁26を弁座24から離れさせる。これによって、チェックバルブ10の流体連絡通路18が開かれる。
【0023】
主部材12の外壁には、その外壁を一周する環状凹部36が形成され、その環状凹部36と主部材12の内部の第一空間主領域20aとは貫通穴38によって連絡されている。貫通穴38と環状凹部36は、前記流体連絡通路18の一部を構成する。主部材12の外壁には、環状凹部36の位置の軸方向の前後位置に、主部材12の外壁を一周するOリング溝40が2箇所形成されており、そのOリング溝40の内部には夫々Oリング42が取り付けられている。
【0024】
上記構成のチェックバルブ10は、流体通路を内部に備えた装置44(エンジンやポンプ等の機械)のハウジング46に取り付けられる。以後、ハウジング46は、「流体通路を内部に形成した部材」や、「流体通路を内部に備えたエンジンやポンプ等の機械」のハウジングとする。ハウジング46の内部には、例えば燃料タンク(図示せず)からの流体を導入する上流側流体通路48と、例えばエンジン等(図示せず)へ流体を送り出す下流側流体通路50とが形成されている。ハウジング46には更に、外壁から内部に向けて収容空間52が形成され、その収容空間52は上流側流体通路48と下流側流体通路50とに連絡されている。
【0025】
チェックバルブ10はハウジング46に形成された収容空間52に挿入されるが、実施例1では、先ず収容空間52内に弾性部材としての環状の波ワッシャ54を入れ、その後、収容空間52内にチェックバルブ10を挿入する。弾性部材としての波ワッシャ54は、高さ方向に上下に蛇行した環状のOリングであり、中央の空間は流体が通過できる穴となっている。
【0026】
収容空間52に波ワッシャ54とチェックバルブ10とを入れた状態でチェックバルブ10に波ワッシャ54側への押圧力がかかると、波ワッシャ54は挿入方向(軸方向)の高さが圧縮変形され、その高さが低くなる。一方、波ワッシャ54に押圧力がかからなくなると、反発力でその高さが、元の高さに戻るものである。チェックバルブ10を収容空間52に挿入した状態では、環状の波ワッシャ54は、一方側が収容空間52の奥に位置する底面56と接触し、他方側が環状のフィルタ保持部材34(ハウジング24の挿入先端部)と接触する。波ワッシャ54は収容空間52の底面56とハウジング24の挿入先端部との間に介在するので、底面56とチェックバルブ10の挿入先端との間の収容空間52には、この波ワッシャ54の縦方向の高さ分だけの隙間空間60が発生する。この隙間空間60は、流体連絡通路18の一部を構成する。
【0027】
ハウジング46の収容空間52の内壁において、収容空間52の開口部付近に内壁面を一周する環状の溝58が形成されている。この溝58に、抜止部材であるクリップ62を嵌合装着させる。クリップ62は、環状の溝58にちょうど嵌合する大きさのC字形状の弾力性のある金属板(所謂Cリングと呼ばれるもの)であり、周方向に弾力性を有するものである。クリップ62が収容空間52の溝58に取付けられた状態においては、クリップ62のC字形状の内側縁は、収容空間52の半径方向の内側に突出する大きさとなっている。抜止部材であるクリップ62と溝58とで、抜け出し防止手段を構成する。
【0028】
チェックバルブ10を、ハウジング46の収容空間52に取り付ける場合には、ハウジング46の収容空間52に、最初に波ワッシャ54を挿入し、次にチェックバルブ10(フィルタ保持部材34を取り付けたもの)を挿入する。なお、フィルタ保持部材34がチェックバルブ10に取り付けられていない場合には、ハウジング46の収容空間52に、先に環状の波ワッシャ54を入れ、次に環状のフィルタ保持部材34を入れ、その後にチェックバルブ10を入れる。波ワッシャ54とチェックバルブ10をハウジング46の収容空間52に入れた状態では、ケーシング16(主部材12)の挿入方向後端部の位置が溝58の開口部と同じ高さに位置し、溝58にクリップ62を嵌合できない状態となっている。
【0029】
この状態において、チェックバルブ10をハウジング46の収容空間52の奥側(底面56側)に向けて押圧する。波ワッシャ54は高さ方向に変位可能であるので、チェックバルブ10が軸方向に押圧されると、波ワッシャ54は圧縮されてその高さが低くなり、チェックバルブ10は収容空間52の底面56側に向けて移動する。チェックバルブ10が波ワッシャ54を圧縮しながら収容空間52の底面56側に移動することで、チェックバルブ10の挿入後端部で覆われていた溝58の円周方向開口部が露出され、溝58にクリップ62を取り付けることが可能な状態となり、その状態で溝58にクリップ62を取り付ける。波ワッシャ54が圧縮されてその高さが低くなると、波ワッシャ54には圧縮されることによる弾性力即ち反発力が蓄積される。
【0030】
溝58にクリップ62を取付けた後、チェックバルブ10への押圧力を除去すると、圧縮されていた波ワッシャ54の反発力で、チェックバルブ10には収容空間52から外に抜け出る方向の力が加えられる。しかし、チェックバルブ10の挿入後端部が、溝58に取り付けられたクリップ62に当接し、チェックバルブ10が収容空間52から外側への飛び出しが阻止される。チェックバルブ10がクリップ62に当接した状態では、波ワッシャ54には圧縮による反発力が残るように(圧縮されてその高さが低くなっている状態が保たれるように)設定されている。チェックバルブ10の収容空間52からの抜けを防止するための抜け出し防止手段としては、溝58とその溝58に嵌合する抜止部材であるクリップ62とから構成されるのが望ましいが、抜け出し防止手段としてはこの構成に限るものではない。
【0031】
ハウジング46の収容空間52内にチェックバルブ10が抜け出し防止手段によって取り付けられた状態では、チェックバルブ10は収容空間52内から抜け出ることなくハウジング46に保持される。この状態では、波ワッシャ54には反発力が加えられている。この状態では更に、ハウジング46の上流側流体通路48はチェックバルブ10における波ワッシャ54を配置した隙間空間60を介して、シート部材14の第二空間22と連絡する。一方、構造物44の下流側流体通路50は、チェックバルブ10の主部材12に形成された環状凹部36と連絡し、その環状凹部36と貫通穴38とを介して主部材12の内部の第一空間主領域20aと連絡する。
【0032】
チェックバルブ10においては、ボール弁26が弁座24に着座する際に、スプリング28の付勢力によってボール弁26が弁座24に勢い良く衝突する。本発明では、チェックバルブ10におけるボール弁26が弁座24に衝突する振動や衝撃が、チェックバルブ10の挿入先端部とハウジング46の収容空間52の底面56との間に備えられる波ワッシャ54で吸収される。即ち、ボール弁26と弁座24との衝突による衝撃を波ワッシャ54で緩和して、ボール弁26の衝突による弁座24の変形を防止することができる。本発明では、弁座24の変形を防止することができるので、ボール弁26と弁座24との良好なシール性を長期に渡って確保することができ、流体連絡通路18内における流体の安定した流量と流体圧とを保持することができる。また、波ワッシャ54によって、ハウジング46に対するチェックバルブ10の軸方向の振動や衝撃を弾性的に吸収しているので、ハウジング46の収容空間52内でのチェックバルブ10のガタツキも防止することができる。
【0033】
特許文献1では、ポンプとは別体のプレートを用いて、ポンプのハウジングとプレートとで燃料用チェックバルブを挟持する(燃料用チェックバルブの抜け出しを防止する)ものである。そのため、ポンプのハウジングにプレートを固定するための雌螺子部を形成していた。これに対して本発明では、周方向に弾力性を有するクリップ62を収容空間52に形成した溝58に嵌合することで、チェックバルブ10の収容空間52からの抜け出しを防止するものである。よって、本発明では、特許文献1のようなポンプのハウジングにボルトと螺合するための雌螺子部を設けなくても良い。
【0034】
本発明では、特許文献2のように、チェックバルブのケーシングの外壁に雄螺子部を設けなくても良いのである。よって、本発明では、チェックバルブ10のケーシング16の薄肉化が可能となり、チェックバルブ10に形成する流体連絡通路18の大径化を図ることができる。この流体連絡通路18の大径化は流量の大容量化につながるので、ボール弁26を大きくリフトさせなくても僅かなリフト量で十分な開口面積を得ることができ、始動時に必要な流体流量を確保することができる。よって、従来問題であった開弁直後の立ち上がりの流量を大きくすることができる。本発明では更に、チェックバルブ10のケーシング16に螺子部(雄螺子部)を設けないようにしたので、チェックバルブ10のケーシング16のねじれや伸びに対する強度確保が不要となり、アルミや真鍮等の安価で加工性の良い材料を使えることになり、材料費や加工費を削減することができる。その他にも、特にチェックバルブ10の縦方向(ハウジング24の収容空間52の挿入方向)の部品配置の制約が少なくなるのでサイズダウン(特にチェックバルブ10の全長の短縮)を図れたり、組付け時のネジ部からの異物発生のおそれを無くしたりすることができる。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明に係る燃料用チェックバルブの他の実施例について説明する。図2は、本発明に係る燃料用チェックバルブの他の実施例を示す断面図である。図1に示すチェックバルブ10では、ハウジング46の収容空間52の奥側に環状の波ワッシャ54を備え、その後、ハウジング46の収容空間52内にチェックバルブ10を挿入していた。この実施例1では、収容空間52の奥側に環状の波ワッシャ54を備える隙間空間60が形成されていた。しかし、この隙間空間60では、流体が波ワッシャ54によって攪拌されて気泡(空気やベーパー)の発生や流体の滞留が生じるおそれがあった。
【0036】
図2に示す実施例2では、弾性部材である波ワッシャ54は、ハウジング46の収容空間52の奥側に備えないものである。この実施例2では、ハウジング46の収容空間52の一番奥側にチェックバルブ10を挿入し、その後、弾性部材である波ワッシャ54をハウジング46の収容空間52に入れる。波ワッシャ54をハウジング46の収容空間52に入れた状態では、波ワッシャ54に外力がかからない状態では、溝58の開口部に波ワッシャ54が位置して溝58にクリップ62を取り付けることができない状態に設定される。波ワッシャ54を軸方向に押し付けると、波ワッシャ54の高さが低くなり、溝58の開口部が露出される。溝58の開口部が露出されたることで、溝58にクリップ62を取り付けることができる。
【0037】
溝58にクリップ62を取り付けた状態では、弾性部材である波ワッシャ54は、チェックバルブ10の挿入後端部とクリップ62との間で、上下方向に圧縮されて弾性変形が加えられた状態(高さが低くなった状態)で挟持される。この実施例2においては、波ワッシャ54は、チェックバルブ10の内部を通る流体連絡通路18の外に配置され、収容空間52の内部に実施例1のような隙間空間60が形成されることはない。従って、隙間空間60での気泡の発生そのものを無くすことができる。また、燃料が波ワッシャ54に直接触れなくなるので、波ワッシャ54自体の耐久性や信頼性も向上する。この実施例2においても、実施例1と同じ効果を有する。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明に係る燃料用チェックバルブのさらに他の実施形態について説明する。図3は、本発明に係る燃料用チェックバルブの更に他の実施例(実施例3)を示す断面図である。実施例3においては、チェックバルブ10のハウジング46からの抜け止め防止手段は、実施例1や実施例2で用いたクリップ62と溝58とは異なったものを用いる。実施例3では、構造物44のハウジング46の外面において収容空間52を形成した位置の周囲に、外面より外側に突出する筒状突出部64をハウジング46と一体に形成する。この筒状突出部64において収容空間52の軸方向に対して直角方向に、ピン66を挿入嵌合するための挿入穴68を2個形成する。2個の挿入穴68に、抜止部材であるピン66を挿入する。
【0039】
この実施例3では、実施例1と同様に、収容空間52に先ず弾性部材である波ワッシャ54を入れ、次に収容空間52にチェックバルブ10を入れる。波ワッシャ54を圧縮する外力が働いていない状態では、収容空間52における2個の挿入穴68を連絡する直線方向位置にはチェックバルブ10の挿入後端部が位置し、ピン66を2個の挿入穴68に挿入させることができない。ここで、チェックバルブ10を収容空間52の奥側に向けて押圧して波ワッシャ54を圧縮させた状態とし、その後2個の挿入穴68にピン66を入れ、このピン66によってチェックバルブ10の収容空間52からの抜けを防止することができる。波ワッシャ54によって、チェックバルブ10がピン66に接触して入る状態においては、波ワッシャ54の弾性力がチェックバルブ10をピン66側に押圧する状態となっているなお、この実施例3においては、ピン66に波ワッシャ54を接触させるようにしても良い。この実施例3においても、実施例1と同じ効果を有する。
【0040】
燃料ポンプなどのポンプのハウジング46に収容空間52を形成して、チェックバルブ10を収容空間52に挿入し、ポンプのポンプ室からの吐出される流体通路を上流側流体通路48とし、上流側流体通路48と連絡する収容空間52を経て吐出される下流側流体通路50を他の配管と接続しても良い。また、エンジンのハウジング内部に流体が通過する流体通路を備え、流体通路の一部に収容空間を形成し、チェックバルブ10を収容空間52に挿入し、燃料ポンプ等から吐出された流体をチェックバルブ10に供給する通路を上流側流体通路48とし、チェックバルブ10から吐出された流体が通過する通路を下流側流体通路50としても良い。
【符号の説明】
【0041】
10 チェックバルブ
12 主部材
14 シート部材
16 ケーシング
18 流体連絡通路
20 第一空間
20a 第一空間主領域
22 第二空間
24 弁座
26 ボール弁
28 スプリング
34 フィルタ保持部材
44 流体通路を内部に備えた装置
46 ハウジング
48 上流側流体通路
50 下流側流体通路
52 収容空間
54 波ワッシャ
58 溝
60 隙間空間
62 クリップ
64 筒状突出部
66 ピン
68 挿入穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、前記ケーシング内に形成される流体連絡通路と、前記流体連絡通路の途中を開閉するための弁体と、前記弁体が着座するための弁座を備えたシート部材と、前記弁体を前記弁座に着座させる方向に付勢させるための付勢手段とを有するチェックバルブを、上流側流体通路と下流側流体通路とを内部に形成し、前記上流側流体通路と前記下流側流体通路との両方と連絡する収容空間とを有するハウジングに取り付けるものであって、前記チェックバルブを前記ハウジングの前記収容空間に挿入して、前記チェックバルブを前記ハウジングに抜け出し防止手段で取付けるハウジングとチェックバルブとの取付け手段において、押圧力によって伸縮する弾性部材を前記チェックバルブと共に前記収容空間内に入れ、前記抜け出し防止手段で前記チェックバルブと前記弾性部材とを前記ハウジングの収容空間から抜け出るのを防止し、前記チェックバルブと前記弾性部材とが前記収容空間から抜け出るのを防止した状態では、前記弾性部材に圧縮による反発力が与えられていることを特徴とする流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。
【請求項2】
前記弾性部材を前記チェックバルブの前記収容空間の挿入後端部と前記抜け出し防止手段との間に配置したことを特徴とする請求項1記載の流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。
【請求項3】
前記弾性部材を前記収容空間の底面と前記チェックバルブの前記収容空間の挿入先端部との間に配置したことを特徴とする請求項1記載の流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。
【請求項4】
前記ハウジングが、ポンプまたはエンジンのいずれか一方であり、前記ポンプハウジングまたはエンジンハウジングのいずれか一方に前記チェックバルブを挿入する前記収容空間を形成したことを特徴とする請求項1記載の流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。
【請求項5】
前記抜け出し防止手段が、前記流体通路を内部に備えた前記ハウジングの前記収容空間の内周面に形成される環状の溝と、前記溝に嵌合させるものであって周方向に弾性力を有する抜止部材とから成り、前記抜止部材が前記溝に嵌合した状態では、前記抜止部材の一部が前記収容空間の内部に突出して前記チェックバルブと前記弾性部材とを前記収容空間内に保持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。
【請求項6】
前記抜け出し防止手段が、前記流体通路を内部に備えた前記ハウジングにおける前記収容空間の形成位置の近傍の外面に形成される突出部と、前記突出部に形成される穴と、前記穴に挿通されるピンとから成り、前記穴に前記ピンを取り付けた状態では前記チェックバルブの挿入後端部か前記弾性部材かのいずれかが前記ピンに接触して前記チェックバルブと前記弾性部材とを前記収容空間内に保持することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。
【請求項7】
前記弾性部材を波ワッシャとすることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の流体通路を内部に備えたハウジングとチェックバルブとの取付け手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−184820(P2012−184820A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49273(P2011−49273)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000177612)株式会社ミクニ (332)
【Fターム(参考)】