説明

流量センサーおよび流量検出装置

【課題】液体と気体のどちらにも使用することができ、小型化に適し、電子回路基板などに表面実装することが可能であり、信頼性が高い流量センサーを提供する。
【解決手段】表面実装型のパッケージ12に流量検出手段を内蔵した流量センサー10であって、パッケージ12内に形成され、流体をパッケージ12の下面に設けた流入口30から流量検出手段を通してパッケージ12の下面に設けた流出口32に導く流体流路70と、パッケージ12の外面に設けられ流量検出手段の電気出力が導かれる外部端子40と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、MEMSセンサーチップを表面実装型のパッケージに収納し、気体や液体の流量を検出することができる流量センサーと、この流量センサーを用いた流量検出装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス技術を利用して、これに機械加工技術や材料技術などを組み合わせることによって、基板上に三次元的な微細構造を有するシステムを実現するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術が、近年センサーやポンプなどのデバイスの小型化、軽量化のために広く用いられている。このMES技術を用いたセンサー(MEMSセンサー)としては、例えば加速度センサ、角速度センサー、圧力センサーなどが広く用いられている。
【0003】
近年家庭用(戸建て住宅用)の分散型エネルギープラントとして燃料電池システムの普及と商業化が期待されている。この種の燃料電池では、燃料ガスや液体燃料の流量や、改質器に供給する水量、改質器でできた水素などを燃料電池自体に供給する流量を高精度に検出してその流量を制御することが必要になる。また燃料から必要な水素(H2)を取り出す改質時に一酸化炭素(CO)が生成されるが、この一酸化炭素は電池触媒の性能に悪影響を及ぼすため、一酸化炭素濃度低減のため選択酸化用空気の流量制御も同時に求められる。さらに分析装置や医療関連(投薬、臨床試験など)、自動車をはじめとする輸送機械の分野でも、気体や液体の微少量の流量検出が必要になる。従来より種々の流量計が提案されているが、その多くは気体流量のみを計量するものであって、液体の流量計測に適するものはきわめて少ない。
【0004】
例えば、流体をオリフィスに通し、オリフィスの前後の圧力差をマノメータや2つの圧力センサー等で検出するもの(オリフィス流量計)、流体の流れ内に翼車を設けこの翼車の回転数から流量を検出するもの(タービン流量計)があるが、これらはいずれも大型化する欠点がある。また、流路の管壁から流れに対して斜めに射出した超音波を対向する管壁に設けた超音波センサーで検出し、その時のドップラー効果による検出強度の変化から検出するもの(超音波流量計)、磁界中を通過する流体に発生する磁界直交方向の電圧変化を検出するもの(電磁流量計)、流体をヒータで加熱した時にその前後の流体温度の変化を検出するもの(熱式質量流量計)、等が公知である。
【0005】
特許文献1、特許文献2には,MEMSチップを有する半導体センサーで加速度センサー、角速度センサー、圧力センサーを構成することが開示されているが、これらには流量センサーについての説明はない。特許文献3にはSi(シリコン)基板に形成したMEMSチップにマイクロサイズのガラスチューブを接触させ、ガラスチューブに液体を流すようにした熱式質量流量計(熱式フローセンサー)が開示されている。
【0006】
特許文献4には、差圧式の流量センサの概念が開示されている。すなわち、半導体微細加工技術を用いSi(シリコン)基板にエッチング技術でメンブレン(ダイヤフラムともいう)を形成し、このメンブレンに形成した絞り(少なくとも1つの開口)に流体を通すことによって、メンブレンの両側に流量に比例する差圧を発生させ、この差圧によってメンブレンに生ずる応力(歪み)を、メンブレンに形成した拡散抵抗(ピエゾ抵抗素子)によって電気的に検出するものである。シリコン単結晶は室温では塑性変形しないため特性が変化せず、またメンブレンが基板と一体であるため安定した特性が得られるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−28025
【特許文献2】特開2010−19693
【特許文献3】US6813944B2
【特許文献4】US6253605B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2のものはMEMS技術を用いて加速度、角速度、圧力を検出するものであり、気体や液体の流量を検出するものではなく、流量計を示唆するものでもない。特許文献3のものは、マイクロチューブ内を流れる液体をヒータで加熱するため、応答性を良くするためにはこのマイクロチューブの肉厚を極端に薄くする必要があり、強度上の問題がある。また低沸点の液体を計量する場合は、ヒータの近傍で気泡が発生し易く正確な検出ができなくなるという問題がある。
【0009】
特許文献4にはメンブレンの歪みから流量を検出する原理が示されているだけであり、これをどのように実際のセンサに用いるかについては開示されていない。すなわち家庭用燃料電池システムや携帯機器用の燃料電池、医療機器などでは流量センサーの小型化、特に電気回路基板などに実装し易いことが求められ、液体・気体を問わずにどちらにも使用できることや信頼性が高いことが要求されるが、この特許文献4はこの様な要求に応えるものではない。
【0010】
この発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、液体と気体のどちらにも使用することができ、小型化に適し、電子回路基板などに表面実装することが可能であり、信頼性が高い流量センサーを提供することを第1の目的とする。またこの流量センサーを用いて流量が多い流体の計量を可能にする流量検出装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば第1の目的は、表面実装型のパッケージに流量検出手段を内蔵した流量センサーであって、前記パッケージ内に形成され、流体を前記パッケージの下面に設けた流入口から前記流量検出手段を通して前記パッケージの下面に設けた流出口に導く流体流路と、前記パッケージの外面に設けられ前記流量検出手段の電気出力が導かれる外部端子と、を備えることを特徴とする流量センサー、により達成される。
【0012】
第2の目的は、請求項1の流量センサーを用いた流量検出装置であって、
流量センサーのパッケージが固定され流体の主流路を形成する主管材と、この主管材から流体を分流して前記流量センサーの流入口に導くと共に流出口から主管材の主流路に導く分流路とを備えることを特徴とする流量検出装置、により達成される。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明は、流量検出センサーをパッケージに内蔵したものであるから、小型化でき、信頼性が向上する。またパッケージ内に流体流路を設け、この流体流路の流入口と流出口を共にパッケージの1つの面(下面)にまとめて設けたから、電気回路基板などの実装対象物との流体流路の接続を短くしかつコンパクトにまとめることができ、高密度な実装が可能になる。さらにパッケージの外面に外部端子を設けたからパッケージを表面実装できることになり、一層高密度な実装に適する。
【0014】
第2の発明によれば、この流量センサーのパッケージを流体の主流路となる主管材に固定し、この主管材から流体を分流して流量センサーの流入口に導き、流量センサーの流出口から流体を主流路に戻すようにしたので、流量が多い流体の流量を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例である流量センサーの上面側斜視図
【図2】同じく底面側斜視図
【図3】同じく分解斜視図
【図4】同じく側断面図であって、図2における直線34に沿うIV−IV線断面図
【図5】下基板にセンサーチップを固定した状態を示す斜視図
【図6】下基板に上基板を積層した状態を示す斜視図
【図7】図4におけるVII部の矢視部分の拡大図
【図8】センサーチップの回路パターンを示す平面図
【図9】図8の抵抗素子で形成するホイートストーンブリッジ接続回路
【図10】本発明の一実施例である流量検出装置の斜視図
【図11】同じく主管材の中心線に沿って断面した斜視図
【図12】同じく主管材の中心線に沿った左側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
請求項1の発明において、流入口と流出口を設ける面は説明の便宜上下面としているが、パッケージを上下面を逆にすればこの下面は上面になるから、実質的には上下どちらの面であっても良い。いずれにしてもこれを実装する対象物(電子回路基板など)に対向する面であればよい。外部端子は、パッケージの外面であればどこに設けても良い。例えばリード付き部品やリードレスのチップ部品のような電極端子を側面に設けたり、BGA(Ball Grid Array)のような電極端子を下面に設けても良い。
【0017】
流量検出手段は、流体通路の途中に設けた絞り(開口、オリフィス)の上流側と下流側の圧力差に基づいて変位するメンブレン(ダイヤフラム)を持ち、メンブレンの変位から流量を検出する差圧式のセンサーが適する(請求項2)。メンブレンに設ける絞りは1つであてもよいが複数であっても良い。1つの絞りを設ける場合は、メンブレンの中央に設けるのがよい。後記するように(請求項6)4個の抵抗器でブリッジ回路を形成する場合に、各抵抗器の均衡が取り易いからである。
【0018】
流量検出手段は、メンブレンと、このメンブレンに固定された歪みゲージとなる抵抗素子とを有するMEMSセンサーであるセンサーチップとするのが良い(請求項3)。この場合は、Si(シリコン)基板の一部(中央部)にエッチングによって薄いメンブレンを形成し、このメンブレンにフォトリソグラフィ技術などによって抵抗素子や回路パターン(内部回路パターン)を形成することができる。すなわち公知の半導体技術を用いてこのセンサーチップを形成する。
【0019】
パッケージは、下基板と上基板とを重ね、これらの間にセンサーチップの周縁部を保持すると共に、メンブレンの下面に流体流路の流入口を開口させ、上基板に形成した流体流路をメンブレンの上面から流出口に連通させるのがよい(請求項4)。この様にすれば流体流路の流入口側を最短長として、流体流路を実質的に上基板だけに形成すれば済むことになり、加工が簡単になる。なお流入口と流出口を逆にすることも可能である。
【0020】
メンブレンはセンサーチップの周囲を残してその内側を薄くエッチングすることにより形成し、このメンブレンの片面(例えば上面)に歪みゲージとなる抵抗器を形成する(請求項5)。なおこの抵抗器は絶縁皮膜によってコーティングしておく。この場合はセンサーチップの周縁が厚くなるのでここを上基板と下基板の間に挟んで保持すればよく、メンブレンに組み立て時に不要な応力が加わらず、特性が安定し、組み立てにも都合がよい。
【0021】
メンブレンは四角形とし、4個の抵抗器を各辺の中央付近に配置しておけば各抵抗器でホイートストーンブリッジを構成する場合に、各抵抗器の条件が揃い都合がよい(請求項6)。上基板にはメンブレンの周囲を囲みかつこの上面に間隙を持って対向する突起(突起状の壁)を設けておき、この上基板には前記間隙に接着剤を供給するための窓を形成しておくことができる(請求項7)。この場合に用いる接着剤は、チクソ性を持つパーフルオロ形の接着剤であり、この接着剤は毛細管現象によって間隙に流入させることができる(請求項10)。
【0022】
この接着剤は流速を伴った時には粘性が小さくて流動性が良く、流速を伴わない時には粘性が高くなる特性(チクソ性)を有するから、接着剤注入時にはメンブレンに不要な応力を加えることがなく毛管力によって自動的に流速を伴って流動し、間隙に円滑に流入して封止される。封止された後は流速が無くなるので接着剤の粘度は高くなり、メンブレン上に不要な接着剤が流出しなくなる。
【0023】
上基板に形成する流体流路は、上基板に重ねた蓋板との間に形成することができる(請求項8)。例えば上基板の上面に凹溝を形成し、この凹溝を蓋板で覆うことで流体流路を簡単な加工で形成できる。
【0024】
センサーチップには、メンブレンに設けた歪みゲージとなる抵抗器と、上基板の突起より外周側に形成したパッドとを接続する内部回路パターンを形成し、下基板には外部端子に接続された外部回路パターンを形成し、これら内部回路パターンと外部回路パターンとをワイヤボンディングで接続することができる(請求項9)。このワイヤボンディングした部分には前記間隙に供給したチクソ性接着剤が硬化した後に前記上基板の窓から他の接着剤を供給しておけば、ワイヤボンディング部分の保護、特に振動に対する耐久性の向上に適する(請求項11)。
【0025】
外部端子は前記したように、下基板の側面、あるいは側面から下面に伸びる形状に金属メッキしたものとし、リードレスのチップ部品(表面実装型のコンデンサや抵抗器など)と同様な端子とすることができる(請求項12)。また全ての外部回路パターンを形成した金属板であるリードフレームをパッケージの外面に突出させて固定しこの突出部分を外部端子としても良い(請求項13)。
【0026】
請求項14の流量検出装置では、主流路と分流路との流路断面積を適切に選定することにより分流比を適切に決定することができる。分流路は主流路に交差(例えば直交)しそれぞれ流量センサーの流入口と流出口に連通する第1および第2の副管材で形成し、第1の副管材には主流路の上流方向を指向する開口を形成し、第2の副管材には主流路の下流方向を指向する開口を形成した構造とすることができる(請求項15)。この場合には、流体の動圧が流量センサに及ぼす影響を防止あるいは抑制できる。ここに開口は複数であっても良い。開口はスリットであってもよい。
【0027】
主管材には流量センサーとその制御回路部品とを実装した制御基板を固定し、第1および第2の副管材はこの制御基板を貫通して流量センサーの流入口と流出口に接続することができる(請求項16)。例えば歪みゲージ(抵抗器)の出力電圧を設定するゲイン調整やオフセット電圧調整を行う増幅回路を制御基板に搭載しておけば、歪みゲージの出力信号が配線のノイズの影響を受けにくくなり検出精度の向上に適する。
【実施例1】
【0028】
図1〜4において、符号10は流量センサーであり、表面実装型のパッケージ12に収納したものである。パッケージ12は4辺が8mm程度の小さいものであり、図3に示すように、下基板14と、上基板16と、蓋板18と、銘板20とを積層し固着したものである。下基板14、上基板16、蓋板18は硬質樹脂製である。
【0029】
下基板14の上面には、図3、4により明らかなように、中央より一方に偏心した位置に平面視四角形のセンサーチップ収納室22形成されている。この収納室22はその底部24の各辺長が上部26の各辺長よりも短い四角形であり、2つの四角形の間に水平な段部28を介して同心に重ねた形状となっている。この段部28の上には、後記するセンサーチップ42が固着される。
【0030】
収納室22の底の中央には、流体流路の一部となる流入口30が開口している。この流入口30の下端は下基板14の下面に開口している(図4参照)。下基板14には、前記収納室22の偏心方向と逆側に、流体流路の一部となる流出口32が形成されている。従って平面視で、収納部22と流入口30と流出口32は下基板14の上面中央を通る直線34(図3)上に位置する。なお下基板14の下面には、この直線34に直交する直線上に一対のダボ36、36が形成されている(図2、図4)。ダボ36は、この流量センサー10を電気回路基板などに搭載する際の位置決め用である。
【0031】
下基板14にはまた、前記直線34を挟んでほぼ対称となるように多数(図3、5では8本)の外部回路パターン38が形成されている。これらの外部回路パターン38はフォトリソグラフィ技術によって形成することができる。またこれらの回路パターンを金属板に予め打ち抜き加工したリードフレームを下基板14に固定して不要部分を除去することによって形成しても良い。これらの外部回路パターン38は、一端(内端)が収納部22付近に伸び、他端(外端)は下基板14の左右の側面に沿って下基板14の下面に伸びている。この側面に現れた部分が、流量センサー10の外部端子40となっている。
【0032】
次にセンサーチップ42を説明する。このセンサーチップ42は、半導体製造工程を利用して4辺が3mm程度の大きさのSi(シリコン)基板44に形成される。シリコン単結晶のSi基板44は前記下基板14の収納部26に入る寸法の平板であり、その下面中央には四角錐面46で囲まれた薄いメンブレン48が形成されている。このメンブレン48は公知のエッチング、(例えばICP(誘導結合プラズマ)、RIE(反応性イオンエッチング)などにより形成できる。このメンブレン48の中央には、絞りとなる開口50が形成されている。この開口50は同様にエッチングやレーザ加工などで形成できる。開口50の直径は測定レンジ(範囲)や流体種(液体か気体かなど)によっては変更してもよいが、この実施例では直径50μmとしている。
【0033】
なお図8に示す点線はメンブレン48の外周に形成される前記四角錐面46であり、この四角錐面46の外側は図4に示す周囲部52である。この周囲部52はエッチングされずに厚く残ったシリコン基板44の一部である。
【0034】
メンブレン48を形成したシリコン基板44の上面には、4個の抵抗素子(歪みゲージ)R1〜R4と、外周縁に沿って形成した多数(6個)のパッド(電極)54(54a〜54f)と、これらをつなぐ内部回路パターン56とが形成されている(図8、9)。これらはフォトリソグラフィなどの半導体製造技術を用いて形成することができる。なお抵抗R1〜4は図8に示すように、平面視で四角形のメンブレン48の各辺中央から僅かに内側に位置し、回路パターン54は抵抗R1〜4から外周方向に伸びてからメンブレン48の外周(四角錐面の外周)に沿って形成されたパッド54にそれぞれ接続されている。
【0035】
図8でパッド58a、58bは温度センサのパッドであり、これらの間には温度センサーとなる感熱抵抗素子60が形成されている。センサーチップ42の上面には、パッド54、58の内側に窒化シリコンSiNや、炭化シリコンSiCなどの絶縁皮膜を成膜して、これを保護膜とする。
【0036】
このように形成されたセンサーチップ42は、下基板14の収納部22に収納される。すなわち図2に示すように、収納部22に上から装填し、シリコン基板44の周囲部52を収納部22の段部28に保持する。なおこのセンサーチップ42は接着剤を用いてこの収納部22に固定される。この状態でセンサーチップ42のパッド54、58は、下基板14の外部回路パターン38の内側の端部にワイヤボンディングされる。すなわち図5に示すように、Au(金)あるいはAl(アルミ)のワイヤ62をパッド54,58と外部回路パターン38とに熱圧着あるいは超音波接合により接続する。
【0037】
前記上基板16の下面(下基板14に対向する面)にはにはセンサーチップ42の上面に間隙64(図7)を持って対向する突起66が形成されている。すなわちこの突起66は平面視で四角錐面46の上方に位置し、メンブレン48を囲む垂れ壁状である。この間隙64には後でチクソ性接着剤68を毛細管現象あるいは表面張力を利用して流入させる。間隙64は好ましくは5〜15マイクロメートルとする。
【0038】
上基板16には、メンブレン48の中央の上方に開口しかつ前記中央の直線34(図3)に平行な流体流路70が形成されている。この流体流路70の他端は前記下基板14の流出口32に連通する。この流体流路70は、上基板16の上面に形成した凹溝72(図3参照)を前記蓋板18で上方から塞ぐことによって、上基板16の上面と蓋板18との間に形成することができる。この様にすれば、上基板16に水平な流体流路70を半導体加工技術(エッチングなど)で容易に形成することができる。
【0039】
前記上基板16を熱硬化性接着シート17を挟んで下基板14に重ねることにより(図3)、メンブレン48の上面に突起64が所定間隙64を持って対向し、この状態で上基板16は下基板14に接着固定される。なお上基板16および蓋板18には、図3、6に示すように、突起66の外側からセンサーチップ42の上面周囲に臨む4つの窓74が形成されている。これらの窓74は前記したように、センサーチップ42と突起66との間にチクソ性接着剤68を供給する際に利用される。またこの接着剤68が硬化した後には、この窓74から他の接着剤を注入し、ワイヤ62を固定する。
【0040】
この実施例によれば、流入口30から流入した流体(気体または液体)は、メンブレン48の下方に入り、メンブレン48の絞り50を通って流体流路70に入り、流出口32から流出する。流体が絞りを通る時の絞り効果によってメンブレン48の両面間に圧力差が生じ、メンブレン48が低圧側である上側に変位する。この変位により抵抗R1〜4に加わる応力が変化し、その抵抗値が変化する。この結果図9に示すブリッジ回路の出力が変化する。この出力電圧の変化はメンブレン48の両面に加わる圧力差に対応する。この圧力差は、ハーゲンポアズイユの法則によれば流体の流量に比例するから、この圧力差を検出することにより流量を検出することができる。
【実施例2】
【0041】
図10〜12はこの流量センサー10を用いた流量検出装置を示している。これらの図において符号80は流体が通る主流路82を形成する主管材である。主管材80の管壁にはその長さ方向に沿う基板収納部84が一体に形成されている。この基板収納部84には制御基板86が収納される。この制御基板86の上面には流量センサー10と、その出力信号の増幅回路とが実装され、必要に応じて他の演算回路例えばゲイン調整やオフセット電圧調整を行う回路などを実装しておいても良い。
【0042】
ここに流量センサー10は、前記メンブレン48の中心を通る直線34(図3)が主流路82と平行で、かつ流入口30が流出口32より主流路82の上流側に位置するように固定される。また制御基板86と主管材80の間には、流量センサー10の下方に位置する接続部材88が介在する。
【0043】
接続部材88の下面には図11に示すように、流量センサー10の流入口30と流出口32の距離だけ離して第1および第2の副管材90、92の上端が固定されている。接続部材88は主管材80の管壁に開けた開口に液密に固定され、この時に第1および第2の副管材90、92が主流路82を横断して固定される。第1および第2の副管材90、9
2の上端はこの接続部材88を貫通し、さらに制御基板86に設けた開口を介して流量センサー10の流入口30および流出口32に液密に接続されるものである。
【0044】
第1の副管材90には流体の上流方向を指向する開口としての複数のスリット94が、第2の副管材92には流体の下流方向を指向する開口としての複数のスリット96がそれぞれ形成されている。この結果、主流路82の流体流の一部が分流路となる副管材90、92を介して流量センサー10に分流される。流量センサー10は、この分流路に分流された流量を検出することで、主管材80に流れる全流量を特定することができる。
【0045】
前記制御基板86には、流量センサー10の信号増幅回路と共に、この様な主流路82と分流路の分流比により流量センサー10の出力を補正して主流路82の流量を求めるための演算を行う演算回路、温度補正回路など適宜の回路を搭載しておくことができる。
【符号の説明】
【0046】
10 流量センサー
12 パッケージ
14 下基板
16 上基板
18 蓋板
22 センサーチップ収納部
30 流入口(流体流路の一部)
32 流出口(流体流路の一部)
34 下基板の上面中央を通る直線
38 外部回路パターン
40 外部端子
42 センサーチップ(流量検出手段)
44 シリコン基板
48 メンブレン
50 絞り(開口)
54 パッド
56 内部回路パターン
62 ワイヤ
64 間隙
66 突起
68 チクソ性接着剤
70 流体流路
74 窓(接着剤注入用)
80 主管材
82 主流路
86 制御基板
88 接続部材
90 第1の副管材(分流路)
92 第2の副管材(分流路)
94,96 開口(スリット)
R1、R2、R3、R4 抵抗素子(歪みゲージ、抵抗器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装型のパッケージに流量検出手段を内蔵した流量センサーであって、
前記パッケージ内に形成され、流体を前記パッケージの下面に設けた流入口から前記流量検出手段を通して前記パッケージの下面に設けた流出口に導く流体流路と、
前記パッケージの外面に設けられ前記流量検出手段の電気出力が導かれる外部端子と、
を備えることを特徴とする流量センサー。
【請求項2】
流量検出手段は、流体流路の途中に設けた絞りの上流側と下流側の圧力差に基づいて変位するメンブレンを持ち、前記メンブレンの変位から流量を検出する差圧式のセンサーである請求項1の流量センサー。
【請求項3】
流量検出手段は、メンブレンと、このメンブレンに固定され前記メンブレンの変位に対応して生じる歪みを検出する歪みゲージとを有するセンサーチップで形成されたMEMSセンサーである請求項2の流量センサー。
【請求項4】
パッケージは、流体の流入口と流出口が下面に開口する下基板と、この下基板に重ねられ下基板との間にセンサーチップの周囲部を保持する上基板とを備え、前記流入口はメンブレンの下面に開口し、前記メンブレンの上面は上基板に形成した流体流路によって前記流出口に連通している請求項3の流量センサー。
【請求項5】
メンブレンは、センサーチップの周囲部を残してその内側を薄くエッチングすることにより形成され、前記メンブレンの片面には歪みゲージとなる抵抗器が形成されている請求項4の流量センサー。
【請求項6】
メンブレンは四角形であり、4個の抵抗器がメンブレンの各辺の中央に配置され、各抵抗器はブリッジ回路を形成する請求項5の流量センサー。
【請求項7】
上基板にはメンブレンの周囲を囲みかつこの上面に間隙を持って対向する突起が形成され、この基板には前記間隙に接着剤を供給するための窓が形成されている請求項4の流量センサー。
【請求項8】
上基板に形成される流体流路は、上基板の上面に重ねた蓋板との間に形成されている請求項4の流量センサー。
【請求項9】
センサーチップには、メンブレンに設けた歪みゲージと上基板の突起より外周側に形成されたパッドとを接続する内部回路パターンが形成され、下基板には外部端子に接続された外部回路パターンが形成され、前記内部回路パターンと外部回路パターンとはワイヤボンディングによって接続されている請求項6の流量センサー。
【請求項10】
上基板の突起と下基板との間に形成される間隙に供給する接着剤は、チクソ性を持つパーフルオロ系の接着剤であり、この接着剤は毛細管現象によって前記間隙に流入する請求項7の流量センサー。
【請求項11】
上基板の突起と下基板との間隙に供給した接着剤の硬化後に、前記間隙の外側に他の接着剤が供給されている請求項7の流量センサー。
【請求項12】
外部端子は、下基板の少なくとも側面に形成した金属メッキ層である請求項1の流量センサー。
【請求項13】
外部端子は、外部回路パターンと一体であるリードフレームで形成される請求項8の流量センサー。
【請求項14】
請求項1の流量センサーを用いた流量検出装置であって、
流量センサーのパッケージが固定され流体の主流路を形成する主管材と、この主管材から流体を分流して前記流量センサーの流入口に導くと共に流出口から主管材の主流路に導く分流路とを備えることを特徴とする流量検出装置。
【請求項15】
分流路は、主流路に交差しそれぞれ前記流量センサーの流入口と流出口に連通する第1および第2の副管材を備え、第1の副管材には主流路の上流方向を指向する開口が形成され、第2の副管材には主流路の下流方向を指向する開口が形成されている請求項13の流量検出装置。
【請求項16】
主管材には、流量センサーとその制御回路部品とが実装された制御基板が固定され、第1および第2の副管材はこの制御基板を貫通して流量センサーに接続されている請求項15の流量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−209130(P2011−209130A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77699(P2010−77699)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術開発機構「新エネルギー技術研究開発/新エネルギーベンチャー技術革新事業(燃料電池・蓄電池)/マイクロフローセンサーパッケージの技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(591117413)株式会社菊池製作所 (33)
【Fターム(参考)】