説明

液処理装置および液処理方法

【課題】被処理体の周縁部の処理空間の雰囲気を容易に制御し、かつ、水平方向における大きさを小さくし、さらに、ウエハを処理するための処理空間を小さくすること。
【解決手段】液処理装置は、第二筐体20と、第二筐体20に当接可能な第一筐体10と、被処理体Wを保持する保持部1と、保持部1によって保持された被処理体Wを回転させる回転駆動部60と、保持部1によって保持された被処理体Wの表面の周縁部に処理液を供給する表面側処理液供給ノズル51a,52aと、保持部1によって保持された被処理体Wの裏面側に配置され、被処理体Wを経た処理液を貯留する貯留部23と、を備えている。第一筐体10および第二筐体20の各々は一方向に移動可能となり、第一筐体10と第二筐体20とが当接および離隔可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハなどからなる被処理体の周縁部に、洗浄液を供給する液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体ウエハなどの基板(被処理体)を保持する基板保持手段(保持部)と、基板保持手段により保持された基板を回転させる回転手段(回転駆動部)と、回転する基板の上面周縁部に処理液を供給するノズルと、を備えた基板処理装置(液処理装置)が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−41444号号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に示すような従来技術の構成では、エッジ部を処理する処理空間が開放されている。このため、処理空間内の雰囲気を制御することが困難であり、かつ、洗浄液の蒸発量が多くなってしまう。また、振り切られた処理液を回収する回収カップを、ウエハの周縁外方を囲む様な大きさで設けることが必要となり、液処理装置の大きさが大きくなってしまう。
【0004】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被処理体の周縁部の処理空間の雰囲気制御を容易にでき、かつ、水平方向における大きさを小さくすることができ、さらに、被処理体を処理するための処理空間を小さくすることができる液処理装置を提供することと、このような液処理装置を用いた液処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による液処理装置は、
第二筐体と、
前記第二筐体に対向して配置された第一筐体と、
前記第二筐体の内方に配置され、被処理体を保持する保持部と、
前記保持部によって保持された前記被処理体を回転させる回転駆動部と、
前記保持部によって保持された前記被処理体の表面の周縁部に処理液を供給する表面側処理液供給ノズルと、
前記保持部によって保持された前記被処理体の裏面側に配置され、該被処理体を経た処理液を貯留する貯留部と、を備え、
前記第一筐体および前記第二筐体の各々が一方向に移動可能となり、該第一筐体と該第二筐体とが当接および離隔可能となっている。
【0006】
本発明による液処理装置において、
前記保持部によって保持された前記被処理体の裏面側で周縁外方に向かって突出して配置され、該被処理体を経た処理液を案内する裏面側案内部をさらに備え、
前記貯留部は、前記裏面側案内部の前記第一筐体側と反対側に位置し、該裏面側案内部によって案内された処理液を貯留することが好ましい。
【0007】
本発明による液処理装置において、
前記第一筐体と前記第二筐体との間に配置され、該第一筐体と該第二筐体との間を密封するシール部材をさらに備えたことが好ましい。
【0008】
本発明による液処理装置において、
前記保持部によって保持された前記被処理体の表面側に配置され、前記被処理体の表面を経た処理液を案内する表面側案内部をさらに備えたことが好ましい。
【0009】
本発明による液処理装置において、
前記被処理体を加熱するための加熱部をさらに備えたことが好ましい。
【0010】
本発明による液処理装置において、
前記保持部によって保持された前記被処理体に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
前記窒素ガス供給部から供給される窒素ガスを加熱する加熱部をさらに備えたことが好ましい。
【0011】
本発明による液処理装置において、
前記第一筐体と前記第二筐体によって形成される空間内の気体または液体を排出する排出部をさらに備え、
前記排出部は、前記被処理体の回転方向に沿って、前記空間内の気体または液体を排出することが好ましい。
【0012】
本発明による液処理方法は、
第二筐体と、該第二筐体に対向して配置された第一筐体と、前記第二筐体の内方に配置され、被処理体を保持する保持部と、該保持部によって保持された前記被処理体の裏面側に配置された貯留部と、を有する液処理装置を用いた液処理方法であって、
前記第一筐体および前記第二筐体の各々が、互いに離隔する離隔工程と、
前記保持部によって、前記被処理体を保持する保持工程と、
前記第一筐体および前記第二筐体の各々が、互いに近接して当接する当接工程と、
前記保持部によって保持された前記被処理体を回転させる回転工程と、
前記保持部によって保持された前記被処理体の表面の周縁部に処理液を供給する表面側処理液供給工程と、
前記貯留部によって、前記被処理体を経た処理液を貯留する貯留工程と、
を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第一筐体および第二筐体の各々が一方向に移動可能となり、第一筐体と第二筐体とが当接および離隔可能となっている。このため、被処理体の周縁部の処理空間の雰囲気制御を容易にすることができ、かつ、液処理装置の水平方向における大きさを小さくすることができる。また、第一筐体と第二筐体とが当接することによって、ウエハの周縁部を処理するための処理空間が形成されるので、処理空間を小さくすることができる。このため、処理空間内の雰囲気を容易に制御することができ、かつ、洗浄液の蒸発量を少なくすることもできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態
以下、本発明に係る液処理装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図3(a)(b)は本発明の実施の形態を示す図である。
【0015】
図1に示すように、液処理装置は、下方カップ(第二筐体)20と、下方カップ20に対向して配置され、下方カップ20に当接可能な上方カップ(第一筐体)10と、下方カップ20の内方に配置され、被処理体である半導体ウエハW(以下、ウエハWという)を保持する保持部1と、保持部1から下方に延びる回転軸5と、この回転軸5を回転させることによって、保持部1で保持されたウエハWを回転させる回転駆動部60と、を備えている。なお、保持部1は真空吸着でウエハWを保持している。
【0016】
このうち、回転駆動部60は、図1に示すように、回転軸5の周縁外方に配置されたプーリ62と、このプーリ62に巻きかけられた駆動ベルト63と、この駆動ベルト63に駆動力を付与することによって、プーリ62を介して回転軸5を回転させるモータ61とを有している。また、回転軸5の周縁外方にはベアリング66が配置されている。
【0017】
また、図1に示すように、上方カップ10には、Oリングなどからなるシール部材30が設けられている。また、上方カップ10と下方カップ20の各々が上下方向に移動可能となっており、上方カップ10と下方カップ20とは、当接することもできるし、離隔することもできるようになっている(図3(a)(b)参照)。なお、上方カップ10と下方カップ20とが当接するときには、シール部材30によって、上方カップ10と下方カップ20との間が密封されることとなる。なお、本実施の形態では、上方カップ10にシール部材30が設けられている態様を用いて説明するが(図3(a)参照)、これに限られることなく、下方カップ20にシール部材30が設けられていてもよい。
【0018】
また、図1に示すように、上方カップ10は、保持部1によって保持されたウエハWの表面の周縁部に対向する位置に長穴10a,10bを有し、この長穴10a,10b内にウエハWの表面の周縁部に洗浄液(処理液)を供給する表面側処理液供給ノズル51a,52aが設けられている。なお、図1において、ウエハWの表面は上方側に位置し、ウエハWの裏面は下方側に位置している。
【0019】
また、図2に示すように、表面側処理液供給ノズル51a,52aには水平方向駆動部41a,41bが設けられている。そして、この水平方向駆動部41a,41bによって、表面側処理液供給ノズル51a,52aは、長穴10a,10b内を水平方向に移動可能となっている。
【0020】
ところで、本願で洗浄液とは、薬液やリンス液のことを意味している。そして、薬液としては、例えば、希フッ酸などを用いることができる。他方、リンス液としては、例えば、純水(DIW)などを用いることができる。
【0021】
また、この表面側処理液供給ノズル51a,52aは、図2に示すように、薬液供給部(図示せず)から供給される薬液をウエハWの表面に供給する表面側薬液供給ノズル51aと、リンス液供給部(図示せず)から供給されるリンス液をウエハWの表面に供給する表面側リンス液供給ノズル52aとからなっている。
【0022】
また、図2に示すように、表面側薬液供給ノズル51aは連結部材51を介して水平方向駆動部41aに連結されており、この連結部材51が水平方向に移動されることによって、表面側薬液供給ノズル51aは水平方向に移動されることとなる。また同様に、表面側リンス液供給ノズル52aは連結部材52を介して水平方向駆動部41bに連結されており、この連結部材52が水平方向に移動されることによって、表面側リンス液供給ノズル52aは水平方向に移動されることとなる。そして、表面側リンス液供給ノズル52aは、表面側薬液供給ノズル51aよりもウエハWの内方側まで移動することができる(長穴10bが長穴10aよりもウエハWの内方側まで延びている)。このため、表面側リンス液供給ノズル52aは、表面側薬液供給ノズル51aがウエハWに薬液を供給する位置よりもウエハWの内方側に、リンス液を供給することができる。
【0023】
また、図1に示すように、下方カップ20は、保持部1によって保持されたウエハWの裏面の周縁部に対向する位置に長穴20a,20bを有し、この長穴20a,20b内にウエハWの裏面の周縁部に洗浄液を供給する裏面側処理液供給ノズル56a,57aが設けられている。
【0024】
また、裏面側薬液供給ノズル56aは連結部材56を介して水平方向駆動部42aに連結されており、この連結部材56が水平方向に移動されることによって、裏面側薬液供給ノズル56aは水平方向に移動されることとなる。また同様に、裏面側リンス液供給ノズル57aは連結部材57を介して水平方向駆動部42bに連結されており、この連結部材57が水平方向に移動されることによって、裏面側リンス液供給ノズル57aは水平方向に移動されることとなる。
【0025】
また、この裏面側処理液供給ノズル56a,57aも、薬液供給部(図示せず)から供給される薬液をウエハWの裏面に供給する裏面側薬液供給ノズル56aと、リンス液供給部(図示せず)から供給されるリンス液をウエハWの裏面に供給する裏面側リンス液供給ノズル57aとからなっている。そして、裏面側リンス液供給ノズル57aは、裏面側薬液供給ノズル56aよりもウエハWの内方側まで移動することができ、裏面側薬液供給ノズル56aがウエハWに薬液を供給する位置よりもウエハWの内方側に、リンス液を供給することができる。
【0026】
また、図1に示すように、下方カップ20は、保持部1によって保持されたウエハWの表面側に配置され、ウエハWの表面を経た洗浄液を案内する表面側案内部22と、保持部1によって保持されたウエハWの裏面側に配置され、ウエハWの裏面を経た洗浄液を案内する裏面側案内部21と、この裏面側案内部21の下方側(上方カップ10側と反対側)に、表面側案内部22と裏面側案内部21によって案内された洗浄液を貯留する貯留部23と、を有している。なお、裏面側案内部21は周縁外方に向かって突出しており、裏面側案内部21と下方カップ20の内壁20iとの間隙Gは狭くなっている。
【0027】
また、図1に示すように、下方カップ20の表面側案内部22の内方には、ウエハWに供給された洗浄液がはねて、飛び散ることを防止する突起部29が設けられている。
【0028】
また、図1に示すように、下方カップ20には、保持部1によって保持されたウエハWの裏面側に窒素ガスを供給する裏面側窒素ガス供給部(窒素ガス供給部)47が設けられている。また、裏面側窒素ガス供給部47には、この裏面側窒素ガス供給部47から供給される窒素ガスを加熱する加熱部31が設けられている。
【0029】
また、図1に示すように、上方カップ10の中央部には、保持部1によって保持されたウエハWの表面側に窒素ガスを供給する表面側窒素ガス供給口46aが設けられている。そして、この表面側窒素ガス供給口46aには、窒素ガスを供給する表面側窒素ガス供給部46が連結されている。また、上方カップ10は、その下面が下方に傾斜し、ウエハWと上方カップ10との間の間隙を小さくする下方傾斜部12を有している。
【0030】
また、図2に示すように、下方カップ20には、上方カップ10と下方カップ20との間が密封されたときに、上方カップ10と下方カップ20によって形成される空間内の気体(窒素ガスなど)を排気するとともに、薬液やリンス液などの洗浄液を排液する排出管(排出部)36が連結されている。なお、この排出管36の下流側には、窒素ガスなどの気体と、薬液やリンス液などの洗浄液(液体)とを分離する気液分離部(図示せず)が設けられている。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0032】
まず、上方カップ10が上方に移動して上方位置に位置づけられるとともに、下方カップ20が下方に移動して下方位置に位置づけられる(図3(a)参照)(離隔工程)。その後、ウエハ搬送ロボット(図示せず)によって、ウエハWが保持部1上に載置されて、当該保持部1によって保持される(図3(a)参照)(保持工程)。
【0033】
このように、本実施の形態では、上方カップ10が上方に移動し、かつ、下方カップ20が下方に移動するので、ウエハ搬送ロボットによって、保持部1上にウエハWを容易に載置することができる。このため、ウエハWの周縁部を、所定の処理位置(表面側処理液供給ノズル51a,52aおよび裏面側処理液供給ノズル56a,57aに対向する位置)に容易に位置づけることができる。
【0034】
次に、上方カップ10が下方に移動して下方位置に位置づけられるとともに、下方カップ20が上方に移動して上方位置に位置づけられて、上方カップ10と下方カップ20とが当接される(図3(b)参照)(当接工程)。このとき、上方カップ10に設けられたシール部材30によって、上方カップ10と下方カップ20との間が密封される。
【0035】
次に、回転駆動部60により回転軸5が回転駆動されることによって、保持部1の保持部1で保持されたウエハWが回転される(図3(b)参照)(回転工程)。このとき、モータ61から駆動ベルト63を介してプーリ62に駆動力が付与されることによって、回転軸5が回転駆動される。
【0036】
次に、表面側窒素ガス供給部46から供給された窒素ガスが、上方カップ10に設けられた表面側窒素ガス供給口46aを介して、ウエハWの表面側に向けて窒素ガスが供給される。このとき、裏面側窒素ガス供給部47からも、窒素ガスがウエハWの裏面側に向けて供給される。なお、以下の工程は、ウエハWの表面と裏面に向かって、窒素ガスが供給されている間に行われる。
【0037】
次に、表面側薬液供給ノズル51aから、薬液が、ウエハWの表面に向かって供給される(表面側薬液供給工程)。なお、このように薬液が表面側薬液供給ノズル51aから供給される前に、水平方向駆動部41aによって、表面側薬液供給ノズル51aを長穴10aに沿って移動させて位置決めすることができる(図2参照)。また、これに限られることなく、表面側薬液供給ノズル51aから薬液が供給されている間に、表面側薬液供給ノズル51aを、水平方向駆動部41aによって長穴10aに沿って移動させることもできる。
【0038】
なお、表面側薬液供給ノズル51aを長穴10aに沿って移動させることができるが、この長穴10aは表面側薬液供給ノズル51aが移動する範囲のみに設けられればよい。このため、上方カップ10に設けられる長穴10aの大きさを小さくすることができる。この結果、ウエハWが回転することで発生する気流の流れが、ウエハWの表面側で乱れることを防止することができる。
【0039】
上述した表面側薬液供給工程の間に、裏面側薬液供給ノズル56aからも、薬液が、ウエハWの裏面に向かって供給される(裏面側薬液供給工程)。なお、このように薬液が裏面側薬液供給ノズル56aから供給される前に、水平方向駆動部42aによって、裏面側薬液供給ノズル56aを長穴20aに沿って移動させて位置決めすることができる。また、これに限られることなく、裏面側薬液供給ノズル56aから薬液が供給されている間に、裏面側薬液供給ノズル56aを、水平方向駆動部42aによって長穴20aに沿って移動させることもできる。
【0040】
なお、裏面側薬液供給ノズル56aは長穴20aに沿って移動させることができるが、この長穴20aは裏面側薬液供給ノズル56aが移動する範囲にのみに設けられればよい。このため、上方カップ10に設けられる長穴10aと同様に、下方カップ20に設けられる長穴20aの大きさを小さくすることができる。この結果、ウエハWが回転することに発生する気流の流れが、ウエハWの裏面側で乱れることを防止することができる。
【0041】
そして、上述のように、表面側薬液供給ノズル51aと裏面側薬液供給ノズル56aから供給された薬液は、貯留部23に貯留され、その後、排出管36によって排出される。
【0042】
次に、表面側リンス液供給ノズル52aから、リンス液が、ウエハWの表面に向かって供給される(表面側リンス液供給工程)。
【0043】
また、裏面側リンス液供給ノズル57aからも、リンス液が、ウエハWの裏面に向かって供給される(裏面側リンス液供給工程)。
【0044】
そして、このように、表面側リンス液供給ノズル52aと裏面側リンス液供給ノズル57aから供給されたリンス液は、貯留部23に貯留され、その後、排出管36によって排出される。
【0045】
なお、表面側リンス液供給ノズル52aは、表面側薬液供給ノズル51aよりもウエハWの内方側まで移動することができ、表面側薬液供給ノズル51aがウエハWに薬液を供給する位置よりもウエハWの内方側に、リンス液を供給することができる(図2参照)。このため、ウエハWの表面に付着した薬液を、ウエハWの内方側から供給されるリンス液によって、確実に除去することができる。
【0046】
また、裏面側リンス液供給ノズル57aも、裏面側薬液供給ノズル56aよりもウエハWの内方側まで移動することができ、裏面側薬液供給ノズル56aがウエハWに薬液を供給する位置よりもウエハWの内方側に、リンス液を供給することができる。このため、ウエハWの裏面に付着した薬液を、ウエハWの内方側から供給されるリンス液によって、確実に除去することができる。
【0047】
また、長穴10aおよび長穴20aと同様に、長穴10bおよび長穴20bも、大きさを小さくすることができる。このため、ウエハWが回転することで発生する気流の流れが、ウエハWの表面側と裏面側で乱れることを防止することができる。
【0048】
ところで、本実施の形態では、表面側薬液供給ノズル51aと表面側リンス液供給ノズル52aが別体を構成し、かつ、裏面側薬液供給ノズル56aと裏面側リンス液供給ノズル57aが別体を構成する態様を用いて説明したが、これに限られない。例えば、薬液の濃度が薄いときには、同じ供給部から、薬液とリンス液とが供給されてもよい。なお、このような場合であっても、リンス液が供給されるウエハW上の位置は、薬液が供給されるウエハW上の位置よりも、内方側にあることが好ましい。
【0049】
また、上述した裏面側薬液供給工程と裏面側リンス液供給工程において、ウエハWの裏面側には、加熱部31によって加熱された窒素ガスが供給されている。このため、ウエハWの裏面を、加熱された窒素ガスによって暖められた状態で、処理することができる。
【0050】
なお、上記では、加熱部31で加熱された窒素ガスによって、ウエハWの裏面側に供給される薬液およびリンス液を暖める態様を用いて説明したが、これに限られない。例えば、窒素ガスを加熱する加熱部31の代わりに、裏面側に供給される薬液およびリンス液を直接暖める加熱部を設けてもよいし、また、ウエハWの表面側に供給される薬液およびリンス液を暖める加熱部を設けてもよい。
【0051】
また、上述した、表面側薬液供給工程、裏面側薬液供給工程、表面側リンス液供給工程および裏面側リンス液供給工程において、ウエハWの表面側と裏面側に窒素ガスが常時供給され続けている。このため、ウエハWに供給される薬液およびリンス液が、所定の処理範囲よりもウエハWの中心側にまで入り込むことを防止することができる。
【0052】
また、図1に示すように、上方カップ10が、ウエハWと上方カップ10との間の間隙を、ウエハWの中心部と比較して周縁部の方向で小さくする下方傾斜部12を有しているので、表面側薬液供給工程および表面側リンス液供給工程において、表面側窒素ガス供給口46aから供給された窒素ガスの流速をウエハWの周縁方向に向かうにつれて速くすることができる。このため、ウエハWに供給される薬液およびリンス液が、所定の処理範囲よりもウエハWの中心側にまで入り込むことをより確実に防止することができる。
【0053】
また、図1に示すように、裏面側案内部21が周縁外方に向かって突出しており、裏面側案内部21と下方カップ20の内壁20iとの間隙Gは狭くなっている。このため、表面側薬液供給工程、裏面側薬液供給工程、表面側リンス液供給工程および裏面側リンス液供給工程において用いられた窒素ガスや洗浄液が貯留部23に導かれる際に、その流路が絞られることとなる。この結果、これら窒素ガスや洗浄液を排出管36によって均一に排出することができる(図2参照)。
【0054】
また、図2に示すように、排出管36は、ウエハWの回転方向に沿って、貯留部23に導かれた窒素ガスや洗浄液を排出する。このため、排出管36によって、窒素ガスや洗浄液を確実に排出することができる。
【0055】
上述のようにウエハWの表面と裏面にリンス液を供給し始めてから、所定の時間が経過すると、リンス液供給部(図示せず)からのリンス液の供給が停止される。その後、回転駆動部60によってウエハWが高速に回転され、ウエハWの周縁部が乾燥される(乾燥工程)。
【0056】
次に、上方カップ10が上方に移動して上方位置に位置づけられるとともに、下方カップ20が下方に移動して下方位置に位置づけられる(図3(a)参照)(離隔工程)。その後、ウエハ搬送ロボット(図示せず)によって、ウエハWが保持部1から取り除かれる(取出工程)。
【0057】
このように、本実施の形態では、上方カップ10が上方に移動し、かつ、下方カップ20が下方に移動するので、ウエハ搬送ロボットによって、保持部1上に載置されたウエハWを容易に取り除くことができる。
【0058】
ところで、本実施の形態では、上方カップ10と下方カップ20が上下方向に移動することによってウエハWの出し入れが行われるので、従来技術のように、ウエハWで振り切られた処理液を回収する回収カップを、ウエハWの周縁外方を囲む様な大きさで設ける必要がなくなるので、液処理装置の水平方向の大きさを小さくすることができる。
【0059】
また、上方カップ10と下方カップ20とが当接することによって、上方カップ10および下方カップ20との間で処理空間が形成される。このため、ウエハWの周縁部を処理するための処理空間を小さくすることができる。この結果、当該処理空間内の雰囲気を容易に制御することができ、かつ、洗浄液の蒸発量を少なくすることができ、さらに、窒素ガスの供給量と排気量も少なくすることができる。
【0060】
また、上方カップ10と下方カップ20とが当接するときに、シール部材30によって、上方カップ10と下方カップ20との間が密封されるので、薬液が外部へ流出することを防止することができる。このため、薬液が周辺ユニットに付着したり、薬液が人体に悪影響を及ぼしたりすることをより確実に防止することができる。
【0061】
さらに、このように薬液が外部へ流出することを防止することができるので、上方カップ10、下方カップ20、表面側処理液供給ノズル51a,52aおよび裏面側処理液供給ノズル56a,57aについて耐薬品性を施せばよく、これら以外の部材に耐薬品性を施さなくてもよくなるので、液処理装置の製造コストを下げることができる。
【0062】
ところで、本実施の形態では、表面側薬液供給工程および表面側リンス液供給工程によって表面側処理液供給工程が構成され、裏面側薬液供給工程および裏面側リンス液供給工程によって裏面側処理液供給工程が構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態による液処理装置を示す概略縦断面図。
【図2】本発明の実施の形態による液処理装置を示す上方断面図。
【図3】本発明の実施の形態による液処理装置の駆動態様を示す概略縦断面図。
【符号の説明】
【0064】
1 保持部
10 上方カップ(第一筐体)
10a,10b 長穴
20 下方カップ(第二筐体)
20a,20b 長穴
20i 内壁
21 裏面側案内部
22 表面側案内部
23 貯留部
30 シール部材
31 加熱部
36 排出管(排出部)
46 表面側窒素ガス供給部
46a 表面側窒素ガス供給口
47 裏面側窒素ガス供給部(窒素ガス供給部)
51a 表面側薬液供給ノズル
52a 表面側リンス液供給ノズル
56a 裏面側薬液供給ノズル
57a 裏面側リンス液供給ノズル
60 回転駆動部
W ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第二筐体と、
前記第二筐体に対向して配置された第一筐体と、
前記第二筐体の内方に配置され、被処理体を保持する保持部と、
前記保持部によって保持された前記被処理体を回転させる回転駆動部と、
前記保持部によって保持された前記被処理体の表面の周縁部に処理液を供給する表面側処理液供給ノズルと、
前記保持部によって保持された前記被処理体の裏面側に配置され、該被処理体を経た処理液を貯留する貯留部と、を備え、
前記第一筐体および前記第二筐体の各々は一方向に移動可能となり、該第一筐体と該第二筐体とが当接および離隔可能であることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
前記保持部によって保持された前記被処理体の裏面側で周縁外方に向かって突出して配置され、該被処理体を経た処理液を案内する裏面側案内部をさらに備え、
前記貯留部は、前記裏面側案内部の前記第一筐体側と反対側に位置し、該裏面側案内部によって案内された処理液を貯留することを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記第一筐体と前記第二筐体との間に配置され、該第一筐体と該第二筐体との間を密封するシール部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記保持部によって保持された前記被処理体の表面側に配置され、前記被処理体の表面を経た処理液を案内する表面側案内部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項5】
前記被処理体を加熱するための加熱部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項6】
前記保持部によって保持された前記被処理体に窒素ガスを供給する窒素ガス供給部と、
前記窒素ガス供給部から供給される窒素ガスを加熱する加熱部をさらに備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記第一筐体と前記第二筐体によって形成される空間内の気体または液体を排出する排出部をさらに備え、
前記排出部は、前記被処理体の回転方向に沿って、前記空間内の気体または液体を排出することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の液処理装置。
【請求項8】
第二筐体と、該第二筐体に対向して配置された第一筐体と、前記第二筐体の内方に配置され、被処理体を保持する保持部と、該保持部によって保持された前記被処理体の裏面側に配置された貯留部と、を有する液処理装置を用いた液処理方法であって、
前記第一筐体および前記第二筐体の各々が、互いに離隔する離隔工程と、
前記保持部によって、前記被処理体を保持する保持工程と、
前記第一筐体および前記第二筐体の各々が、互いに近接して当接する当接工程と、
前記保持部によって保持された前記被処理体を回転させる回転工程と、
前記保持部によって保持された前記被処理体の表面の周縁部に処理液を供給する表面側処理液供給工程と、
前記貯留部によって、前記被処理体を経た処理液を貯留する貯留工程と、
を備えたことを特徴とする液処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−295805(P2009−295805A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148175(P2008−148175)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】