説明

液晶表示装置、その製造方法及び電子機器

【課題】共通配線とソース配線の交差部において、ソース配線の断線故障が抑制されると
共にソース配線と共通配線との間の短絡故障が少なく、信頼性が高い横電界方式の液晶表
示装置、その製造方法及び電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の液晶表示装置10Aは、液晶層を挟持した一対の基板のうち、一方
の基板上には平行に設けられた複数のゲート配線13及び共通配線13と、ゲート配線1
2及び共通配線13と交差する方向に設けられた複数のソース配線17と、複数のゲート
配線12及びソース配線17で区画された領域毎に形成されているとともに共通配線13
に接続された透明導電性材料からなる下電極14と、下電極14の表面に絶縁膜を介して
形成された互いに平行に設けられた複数のスリット20を有する上電極21と、を備え、
ソース配線17と交差する位置の共通配線13の表面には透明導電性材料層14aが形成
されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリンジフィールドスイッチング(Fringe Field Switching:以下、「FF
S」という。)モード等の横電界方式の表示装置、その製造方法及び電子機器に関する。
本発明は、特に共通配線とソース配線の交差部において、ソース配線の断線故障が抑制さ
れると共にソース配線と共通配線との間の短絡故障が少なく、信頼性が高い横電界方式の
液晶表示装置、その製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信機器のみならず一般の電気機器においても液晶表示装置が多く利用され
ている。従来から多く用いられている液晶表示装置は、表面に電極等が形成された一対の
ガラス等からなる基板と、この一対の基板間に形成された液晶層と、からなり、両基板上
の電極に電圧が印加されることにより、液晶を再配列させて光の透過率を変えることによ
り種々の映像を表示する、言わば縦方向電界モードともいうべきものである。このような
縦方向電界モードの液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical
Alignment)モードのものが存在するが、視野角が狭いという問題点が存在するため、M
VA(Multidomain Vertical Alignment)モード等種々の改良された縦方向電界モードの
液晶表示装置が開発されている。
【0003】
一方、上述の縦方向電界方式の液晶表示装置とは異なり、一方の基板にのみ画素電極及
び共通電極からなる一対の電極を備えたIPS(In-Plane Switching)モードないしFF
Sモード等の横方向電界モードの液晶表示装置も知られている。
【0004】
このうちIPSモードの液晶表示装置は、一対の電極を同一層に配置し、液晶に印加す
る電界の方向を基板にほぼ平行な方向として液晶分子を基板に平行な方向に再配列するも
のである。そのため、このIPSモードの液晶表示装置は、前述の縦方向電界方式の液晶
表示装置と比すると非常に広視野角であるという利点を有している。しかしながら、IP
Sモードの液晶表示装置は、液晶に電界を印加するため一対の電極が同一層に設けられて
いるため、画素電極の上側に位置する液晶分子は十分に駆動されず、透過率等の低下を招
いてしまうといった問題点が存在している。
【0005】
このようなIPSモードの液晶表示装置の問題点を解決するために、FFSモードの液
晶表示装置が開発されている(下記特許文献1及び2参照)。このFFSモードの液晶表
示装置は液晶層に電界を印加するための画素電極と共通電極をそれぞれ絶縁膜を介して異
なる層に配置したものである。
【0006】
このFFSモードの液晶表示装置は、IPSモードの液晶表示装置よりも広視野角かつ
高コントラストであり、更に低電圧駆動ができると共により高透過率であるため明るい表
示が可能となるという特徴を備えている。加えて、FFSモードの液晶表示装置は、IP
Sモードの液晶表示装置よりも平面視で画素電極と共通電極との重複面積が大きいために
、より大きな保持容量が副次的に生じ、別途補助容量線を設ける必要がなくなるという長
所も存在している。
【特許文献1】特開2001−235763号公報
【特許文献2】特開2002−182230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のFFSモードの液晶表示装置のアレイ基板は、透明基板上にそれぞれの画素毎に
形成された透明導電性材料からなる共通電極(下電極ともいう)と、この共通電極の表面
に形成された窒化珪素等からなる絶縁膜と、この共通電極に対応する位置の絶縁膜の表面
に形成された複数の互いに平行に形成されたスリットを有する透明導電性材料からなる画
素電極(上電極ともいう)と、を備えている。このうち、透明導電性材料からなる共通電
極及び画素電極は、ITO(Indium Thin Oxide)やIZO(Indium Zink Oxide)から作
成されている。このような従来例のFFSモードの液晶表示装置は、ソース配線が共通配
線ないしゲート配線と交差する位置で、断線故障ないし短絡故障が時折り見受けられた。
この断線故障ないし短絡故障は、ソース配線とゲート配線の交差部よりも、ソース配線と
共通配線との交差部の方が多く見受けられている。
【0008】
発明者等はこの原因を調べるべく種々検討を重ねた結果、
(1)ソース配線及びゲート配線は、2度もエッチング液に触れるために過剰にエッチン
グされ、表面状態ないし断面形状が設計形状から変化していること、
(2)共通電極はそれぞれの画素ごとに形成されているが、隣接する画素間の共通電極は
剥き出しのゲート配線よりも細い共通配線を介して電気的に接続されているだけであるの
で、この細い共通配線に電荷が集中し易くなり、共通配線とソース配線との間にスパーク
が生じ易くなっていること、
が主原因であることを見出した。
【0009】
なお、共通配線及びゲート配線が2度もエッチング液に触れる理由は次のとおりである
。すなわち、共通電極は、最初に透明基板上に複数の共通配線及びゲート配線を互いに平
行となるように形成した後、表面全体に亘って透明導電性材料からなる膜を形成し、フォ
トリソグラフィー法及びエッチング法によって所定のパターンに形成される。ところが、
共通配線及びゲート配線は、通常は表面がMoで被覆されたAl又はAl合金から形成さ
れ、所定のパターンに形成するためには湿式エッチング法が採用されている。また、透明
導電性材料からなる膜のエッチングにも同じく湿式エッチング法が採用されている。
【0010】
そうすると、一旦湿式エッチング法によって所定のパターンに形成された共通配線及び
ゲート配線は透明導電性材料のエッチングが進むに従って再度エッチング液に露出される
ことになる。そのため、ゲート配線及び各画素間の共通配線は2度もエッチング液に接触
することになるので、共通配線及びゲート配線は過剰にエッチングされてその表面状態な
いし断面形状が設計形状から変化してしまうこととなるわけである。その結果、ソース配
線が共通配線やゲート配線との交差部において断線故障ないし短絡故障を起こし易くなっ
ているものと推定される。
【0011】
このようなソース配線の断線故障ないし短絡故障は、共通電極の形成時にソース配線と
の交差部の共通配線及びゲート配線がエッチング液に触れることがない構成とすれば、抑
制することが可能である。そこで、発明者等は、共通電極の形成時に少なくともソース配
線との交差部の共通配線がエッチング液に触れることがない構成について、種々検討を重
ねた。その結果、発明者等は、共通電極のエッチング時にソース配線と共通配線の交差部
、更には必要に応じてソース配線とゲート配線との交差部にも、導電性材料層を形成して
おくと、解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、共通電極の形成時に共通配線やゲート配線のソース配線との交差
部がエッチング液に触れない構成とし、ソース配線の断線故及びソース配線と共通配線や
ゲート配線との間の短絡故障が抑制された、信頼性が高い横方向電界方式の表示装置及び
その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の液晶表示装置は、液晶層を挟持した一対の基板のう
ち、一方の基板上には平行に設けられた複数のゲート配線及び共通配線と、前記ゲート配
線及び共通配線と交差する方向に設けられた複数のソース配線と、前記ゲート配線及びソ
ース配線の交差部近傍に設けられた薄膜トランジスタと、複数の前記ゲート配線及びソー
ス配線で区画された領域毎に形成されているとともに前記共通配線に接続された透明導電
性材料からなる下電極と、前記下電極の表面に絶縁膜を介して形成された互いに平行に設
けられた複数のスリットを有する上電極と、を備え、前記下電極と上電極との間に生じる
電界によって前記液晶層を駆動する液晶表示装置において、
前記ソース配線と交差する位置の共通配線の表面には導電性材料層が形成されているこ
とを特徴とする。
【0014】
本発明の液晶表示装置によれば、ソース配線と交差する位置の共通配線の表面には導電
性材料層が形成されているため、ソース配線と交差する位置の共通配線の表面は本来の共
通配線形成材料からなる層と導電性材料層との複層構造となっている。そのため、下電極
形成時に、ソース配線と交差する位置の共通配線の表面が露出することがないから、ソー
ス配線と交差する位置の共通配線が過剰にエッチングされてその表面状態ないし断面形状
が設計形状から変化してしまうことがない。そのため、この共通配線上に絶縁膜を介して
交差するようにソース配線を形成しても、ソース配線の断線故障が少なくなると共に、ソ
ース配線と共通配線間の静電気による短絡故障も少なくなる。
【0015】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記導電性材料層は、前記ソース配線の幅及
び共通配線の幅よりも広く形成されていることが好ましい。
【0016】
ソース配線と交差する位置の共通配線の表面に形成された導電性材料層は、ソース配線
ないし共通配線と同じ幅であっても良いが、特にソース配線の幅及び共通配線の幅よりも
広く形成すると、段差が滑らかになること及び電荷の集中がより減少するため、上記本発
明の効果が顕著に表れる。なお。前記導電性材料層の形状は、方形状、円形状、楕円形状
ないし多角形状であってもよい。
【0017】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記導電性材料層は前記下電極と同じ材料で
形成されていることが好ましい。
【0018】
係る態様の液晶表示装置によれば、導電性材料層を下電極と同じ材料、すなわち透明導
電性材料で形成したため、下電極の形成時に同時に共通配線上に導電性材料層を形成する
ことができ、特に共通配線上に導電性材料層を形成するために工数を増やす必要がなくな
る。
【0019】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記導電性材料層は前記下電極と一体に接続
されていることが好ましい。
【0020】
係る態様の液晶表示装置によれば、導電性材料層は下電極と同じ材料で下電極と一体に
形成されていることになるため、共通配線の表面全体が透明導電性材料層で被覆された状
態となる。したがって、共通配線の抵抗は大きく低下するから、それぞれ共通電極として
作用する下電極の電位が安定化するので、それぞれの画素毎に表示画質のバラツキが少な
くなり、良好な表示画質の液晶表示装置が得られる。
【0021】
また、本発明の液晶表示装置においては、前記導電性材料層は前記ソース配線と交差す
る位置のゲート配線の表面にも形成されており、前記ゲート配線の表面に形成された導電
性材料層は前記ソース配線と交差する位置の共通配線の表面に形成された導電性材料層と
は電気的に分離されていることが好ましい。
【0022】
ゲート配線は共通配線よりも太いため、共通配線とソース配線との交差部と比すると、
ソース配線の断線故障及びソース配線とゲート配線間の短絡故障は少ない。しかしながら
、ソース配線と交差する位置のゲート配線の表面にも導電性材料層を形成すれば、よりソ
ース配線の断線故障及びソース配線とゲート配線間の短絡故障は少なくなる。なお、この
ソース配線と交差する位置のゲート配線の表面に形成した導電性材料層は、ゲート配線と
共通配線との間の短絡を防止するため、ソース配線と交差する位置の共通配線の表面に形
成された導電性材料層とは電気的に分離する必要がある。
【0023】
更に本発明の液晶表示装置の製造方法は、以下の(1)〜(9)の工程を含むことを特
徴とする。
(1)透明な基板の表面全体に亘って導電性層を被覆し、エッチングすることによりゲー
ト電極部分を有する複数のゲート配線及び複数の共通配線を互いに平行に形成する工程、
(2)前記(1)の工程で得られた基板の表面全体に亘って透明導電性層を被覆し、エッ
チングすることにより各画素に対応する位置に前記共通配線と電気的に接続された下電極
と、少なくとも前記下電極間の共通配線の表面に前記透明導電性材料層を形成する工程、
(3)前記(2)の工程で得られた基板の表面全体に亘って第1の絶縁膜を被覆する工程

(4)前記第1の絶縁膜の表面全体に亘って半導体層を被覆し、エッチングすることによ
りゲート電極部分に対応する位置に半導体層を形成する工程、
(5)前記(4)の工程で得られた基板表面全体に亘って導電性層を被覆し、エッチング
することにより、前記ゲート配線及び共通配線と交差する方向にソース配線を設けるとと
もに、それぞれの画素毎にドレイン電極と前記ソース配線に電気的に接続されたソース電
極とを形成する工程、
(6)前記(5)の工程で得られた基板の表面全体に亘って第2の絶縁膜を被覆する工程

(7)前記それぞれの画素のドレイン電極上に位置する前記第2の絶縁膜にコンタクトホ
ールを形成する工程、
(8)前記(7)の工程で得られた基板の表面全体に亘って導電性層を被覆し、エッチン
グすることにより各画素に複数のスリットを有する上電極を形成するともに、前記上電極
とドレイン電極とを電気的に導通させる工程、
(9)前記(8)の工程で得られた基板とカラーフィルタ基板とを対向させ、両基板間に
液晶を封入する工程。
【0024】
また、本発明の液晶表示装置の製造方法においては、前記(2)の工程において、前記
ソース配線と交差する位置のゲート配線の表面にも、前記ソース配線と交差する位置の共
通配線の表面に形成された透明導電性材料層とは電気的に分離された状態で、透明導電性
材料層を形成することが好ましい。
【0025】
係る態様の液晶表示装置の製造方法によれば、容易に上記効果を奏する液晶表示装置を
製造することができるようになる。
【0026】
更に、本発明の電子機器は前記いずれかに記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とす
る。
【0027】
本発明の電子機器によれば、ソース配線の断線故障が少なくなると共に、ソース配線と
共通配線間の静電気による短絡故障も少なく、信頼性が向上した液晶表示装置を備えた電
子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態
は、本発明の技術思想を具体化するための液晶表示装置としてFFSモードの液晶表示装
置を例示するものであって、本発明をこのFFSモードの液晶表示装置に特定することを
意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適
応し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面において
は、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺
を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない

【0029】
なお、図1は実施例のFFSモードの液晶表示装置のアレイ基板側の2画素分の概略平
面図である。図2は図1のII−II線に沿った概略断面図である。図3は図1のIII−III線
に沿った概略断面図である。図4A〜図4Gは実施例の1画素分の製造工程を順を追って
示す図1のII−II線に対応する部分の断面図である。図5は図1のソース配線と共通配線
及びゲート配線との交差部近傍における上電極及び絶縁膜を透視して表した平面図である
。図6は図1のVI−VI線に沿った断面図である。図7は実施例の第1の変形例の図6に対
応する平面図である。図8は実施例の第2の変形例の図6に対応する平面図である。図9
は比較例のFFSモードの液晶表示装置のアレイ基板側の2画素分の概略平面図である。
図10は図9のX−X線に沿った断面図である。図11Aは本発明の液晶表示装置を備え
たパーソナルコンピュータを示す図であり、図11Bは本発明の液晶表示装置を備えた携
帯電話機を示す図である。
【実施例1】
【0030】
実施例のFFSモードの液晶表示装置10Aを図1〜図6を参照して製造工程順に説明
する。この実施例のFFSモードの液晶表示装置10Aのアレイ基板ARは、ガラス基板
等の透明基板11の表面全体に亘って下部がAl金属からなり、表面がMo金属からなる
2層膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及び湿式エッチング法によって、Mo/A
lの2層配線からなる複数のゲート配線12及び複数の共通配線13を互いに平行になる
ように形成する(図4A参照)。なお、ここでは共通配線13を隣接する画素のゲート配
線12側に沿って設けた例を示したが、自画素のゲート配線12側に設ける場合も、或い
は隣り合うゲート配線12のほぼ中間に設ける場合もある。
【0031】
次いで、ゲート配線12及び共通配線13を形成した透明基板11の表面全体に亘って
例えばITOからなる透明導電性層を被覆し、同じくフォトリソグラフィー法及び湿式エ
ッチング法によって下電極14を形成する(図4B参照)。このとき、隣接する画素間の
共通配線13上であって、ソース配線と交差する予定の位置に、共通配線13よりも幅広
でかつソース配線よりも幅広の透明導電性材料層14aをアイランド状、例えば矩形状に
形成する(図1、図5及び図6参照)。この下電極14は、ゲート配線12ないしゲート
電極Gとは接続されておらず、共通配線13と電気的に接続されて共通電極として機能す
る。なお、アイランド状の透明導電性材料層14aは共通配線13と電気的に接続されて
いるが、ここでは下電極14とは直接接続されていない。また、アイランド状の透明導電
性材料層14aをソース配線及び共通配線よりも幅広としたのは後工程で設けられるソー
ス配線の段差が滑らかになるようにすること及び静電気による電荷が集中しないようにす
るためである。
【0032】
なお、この湿式エッチング時には、隣接する画素間の共通配線13上のソース配線と交
差する予定の位置に、共通配線13よりも幅広でかつソース配線よりも幅広の透明導電性
材料層14aをアイランド状に残すようにしたので、ソース配線と交差予定位置の共通配
線13は、エッチング液に触れることがない。そのため、ソース配線と交差予定位置の共
通配線13の表面状態ないし断面形状は設計形状のとおりに形成することができる。
【0033】
このようにして下電極14及びアイランド状の透明導電性材料層14aを形成した後、
この表面全体に窒化硅素層からなる第1の絶縁膜15を被覆する(図4C参照)。次いで
、例えばa−Si層及びna−Si層を第1の絶縁膜15の表面全体に亘って被覆した
後に、同じくフォトリソグラフィー法及びエッチング法によって、TFT形成領域にa−
Si層及びna−Si層からなるアイランド状の半導体層16を形成する(図4D参照
)。この半導体層16が形成されている位置のゲート配線12の領域がTFTのゲート電
極Gを形成する。
【0034】
次いで、例えばMo/Al/Moの3層構造の導電性層を半導体層16を形成した透明
基板11の表面全体に亘って被覆し、同じくフォトリソグラフィー法及びエッチング法に
よって、ソース配線17及びドレイン電極Dを形成する(図4E参照)。このソース配線
17のソース電極S部分及びドレイン電極D部分は、いずれも半導体層16の表面に部分
的に重なっている。
【0035】
更に、この基板の表面全体に窒化硅素層からなる絶縁膜18を被覆した後、ドレイン電
極Dに対応する位置の絶縁膜18にコンタクトホール19を形成してドレイン電極Dの一
部を露出させる(図4F参照)。次いで、この表面全体に亘って例えばITOからなる透
明導電性層を被覆し、同じくフォトリソグラフィー法及びエッチング法によって、図1に
示したパターンとなるように、ゲート配線12及び信号線17で囲まれた領域の絶縁膜1
8上に、互いに平行にフリンジフィールド効果を発生させるための複数のスリット20を
有する上電極21を形成する(図4G参照)。この上電極21はコンタクトホール19を
介してドレイン電極Dと電気的に接続されているため、画素電極として機能する。
【0036】
更に、この表面全体に亘り所定の配向膜(図示せず)を形成することによりアレイ基板
ARが完成される。そして、このようにして製造されたアレイ基板ARと別途製造された
カラーフィルタ基板とを対向させ、周囲をシール材でシールして両基板間に液晶を注入す
ることにより実施例に係るFFSモードの液晶表示装置10Aが得られる。なお、カラー
フィルタ基板は、図示省略したが、ガラス基板等の透明基板の表面に順次カラーフィルタ
層、オーバーコート層及び配向膜が設けられており、共通電極が設けられていない外は従
来のTN(Twisted Nematic)方式の液晶表示装置用のものと実質的に同一の構成を備え
ている。
【0037】
このようにして作製された実施例のFFSモードの液晶表示装置10Aによれば、ソー
ス配線17と共通配線13の交差部にアイランド状の透明導電性材料層14aが形成され
得いるため、下電極14の形成時にソース配線17との交差部の共通配線13はエッチン
グ液に触れることがない。そのため、ソース配線17との交差部の共通配線13の表面状
態及び断面形状が設計形状どおりとなっているので、ソース配線17が共通配線13と交
差する部分において断線故障が生じ難くなっている。加えて、共通配線13に静電気が誘
導されても、この静電気はアイランド状の透明導電性材料層14aの存在によって電荷が
分散されるため、共通配線13とソース配線との間に静電破壊が生じ難くなる。
【0038】
なお、上記実施例では、ソース配線17と共通配線13と交差する部分において共通配
線上に下電極14と同材料からなるアイランド状の透明導電性材料層14aを形成した例
を示したが、他の導電性材料を用いても上述のような効果を奏させることができる。しか
しながら、他の金属製の導電性材料を用いる場合は、別途この導電性材料からなる層を形
成するための工程が必要となるので、特にこのような他の導電性材料を用いることの利点
はない。また、上記実施例では、アイランド状の透明導電性材料層14aを矩形状に形成
した例を示したが、アイランド状の透明導電性材料層14aは円形状、楕円形状ないし多
角形状であっても良い。また、上記実施例では、下電極14及び上電極21としてITO
を用いた例を示したが、IZOを用いても同様の作用・効果を奏する。更に、上記実施例
では、ゲート配線材料やソース配線材料としてMo/Alの2層構造ないしMo/Al/
Moの3層構造のものを用いたが、Alに変えて例えばNd−Al合金等も使用し得る。
【0039】
また、上記実施例ではソース配線17と共通配線13と交差する部分において共通配線
13上に下電極14と同材料からなるアイランド状の透明導電性材料層14aを形成した
例を示した。しかしながら、この透明導電性材料層14aは、少なくともソース配線17
と共通配線13とが交差する部分において共通配線13上に形成されていれば、その他の
構成を採用しても同様の作用・効果を奏させることができる。
【0040】
そこで、本発明の液晶表示装置で使用し得る変形例について図7及び図8を用いて説明
する。なお、図7及び図8においては、図5に示した構成と同一の構成部分には同一の参
照符号を付与してその詳細な説明は省略する。図7に示した第1の変形例の液晶表示装置
10Bにおいては、実施例ではアイランド状に形成されていた透明導電性材料層14aを
共通配線13の表面全体を覆うようにしたものである。すなわち、第1の変形例の液晶表
示装置10Bでは、隣接する下電極14間は、共通配線13だけでなく共通配線13上の
透明導電性材料層14aによっても電気的に接続された状態となる。従って、この第1の
変形例の液晶表示装置10Bでは、実質的に共通配線13の抵抗は低下するから、それぞ
れ共通電極として作用する下電極14の電位が安定化するので、それぞれの画素毎に表示
画質のバラツキが少なくなり、良好な表示画質の液晶表示装置10Bが得られる。
【0041】
また、図8に示した第2の変形例の液晶表示装置10Cにおいては、第1の変形例の液
晶表示装置10Bの構成に加えて、更にソース配線17と交差する部分のゲート配線12
の表面にも別途アイランド状の透明導電性材料層14bを形成したものである。ゲート配
線12は通常共通配線13よりも幅広に形成されているので、本来ゲート配線と交差する
部分でのソース配線の断線故障やソース配線及びゲート配線間の静電気による短絡故障は
少ない。しかしながら、ソース配線17と交差する部分のゲート配線12の表面にも別途
アイランド状の透明導電性材料層14bを形成すると、第1の変形例の液晶表示装置10
Bと同様の作用効果を奏しながらも、更にゲート配線と交差する部分でのソース配線の断
線故障やソース配線及びゲート配線間の静電気による短絡故障を抑制することができるよ
うになる。
【0042】
[比較例]
比較例のFFSモードの液晶表示装置10Dを図9及び図10を参照して製造工程順に
説明する。なお、比較例のFFSモードの液晶表示装置10Dは、実施例のFFSモード
の液晶表示装置10Aにおいて、ソース配線17と共通配線13と交差する部分の共通配
線13上にアイランド状の透明導電性材料層14aが形成されていない点のみである。そ
のため、以下においては、比較例のFFSモードの液晶表示装置10Dを、実施例のFF
Sモードの液晶表示装置10Aと同一の構成部分については同一の参照符号を用いて、適
宜図1〜図4を援用して説明することとする。
【0043】
この比較例のFFSモードの液晶表示装置10Dのアレイ基板ARは、ガラス基板等の
透明基板11の表面全体に亘って下部がAl金属からなり、表面がMo金属からなる2層
膜を形成した後、フォトリソグラフィー法及び湿式エッチング法によって、Mo/Alの
2層配線からなる複数のゲート配線12及び複数の共通配線13を互いに平行になるよう
に形成する。ここで、ゲート配線及び共通配線13は1回目のエッチング液と接触する工
程を経る。次いで、ゲート配線12及び共通配線13を形成した透明基板11の表面全体
に亘って例えばITOからなる透明導電性層を被覆する。ここまでは実施例の液晶表示装
置10Aの製造工程と同一である。
【0044】
次いで、フォトリソグラフィー法及び湿式エッチング法によって、共通配線13とは電
気的に接続されているが、ゲート配線12ないしゲート電極Gとは接続されていないよう
に、下電極14を形成する。ここでこの湿式エッチング開始前はゲート配線12及び共通
配線13ともに透明導電性層によって被覆されているが、エッチングが進行して所定部分
の透明導電性層が全て除かれると、ゲート配線12及び共通配線13の一部が露出してエ
ッチング液に触れるようになる。すなわち、ゲート配線12及び共通配線13はここで2
回目のエッチング液と接触する工程を経ることになる。透明導電性層の厚さは、均一であ
ることが望ましいが、ゲート配線12及び共通配線13の形状には凹凸があることもあり
、ある程度のバラツキが存在している。加えて、湿式エッチング時の撹拌状態も全体的に
均一になるわけではないから、透明導電性層のエッチング速度にも場所によってバラツキ
が生じる。そのため、ゲート配線12及び共通配線13上の透明導電性層がエッチングさ
れて除去される時間には場所によってバラツキが存在する。
【0045】
従って、ゲート配線12及び共通配線13上の透明導電性層が早くエッチングされて除
去された部分は、他の部分の透明導電性層がエッチングされて除去されるまでエッチング
液と接触している状態となる。この透明導電性層のエッチング液には酸性エッチング液が
使用されるが、この酸性エッチング液はMo、AlないしAl合金も溶解してしまうので
、ゲート配線12及び共通配線13の上の透明導電性層が早くエッチングされて除去され
た部分は透明導電性層用のエッチング液によって更にエッチングが進行してしまう。その
ため、比較例のFFSモードの液晶表示装置10のアレイ基板ARにおいては、ゲート配
線12及び共通配線13の断面形状が設計形状から変化してしまったり、幅が細くなった
りすることが生じる。
【0046】
このようにして下電極14を形成した後の液晶表示装置10D完成までの製造工程は、
上述の実施例の液晶表示装置10Aの場合と同様であるので、その詳細な説明は省略する
。このようにして製造された比較例の液晶表示装置10Dでは、ゲート配線及び各画素間
の共通配線は2度もエッチング液に接触することになるので、共通配線及びゲート配線は
過剰にエッチングされてその表面状態ないし断面形状が設計形状から変化してしまうこと
となるわけである。その結果、比較例の液晶表示装置10Dでは、ソース配線の共通配線
やゲート配線との交差部において断線故障や短絡故障が多くなってしまう。
【0047】
以上、本発明の実施例及び変形例の液晶表示装置の例を説明した。このような本発明の
液晶表示装置は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末などの電子機器に
使用することができる。このうち、液晶表示装置41をパーソナルコンピュータ40に使
用した例を図11Aに、同じく半透過型のFFS型の液晶表示パネル46を携帯電話機4
5に使用した例を図11Bに示す。ただし、これらのパーソナルコンピュータ40及び携
帯電話機45の基本的構成は当業者に周知であるので、詳細な説明は省略する
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例のFFSモードの液晶表示装置のアレイ基板側の2画素分の概略平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った概略断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った概略断面図である。
【図4】図4A〜図4Gは実施例の1画素分の製造工程を順を追って示す図1のII−II線に対応する部分の断面図である。
【図5】図1のソース配線と共通配線及びゲート配線との交差部近傍における上電極及び絶縁膜を透視して表した平面図である。
【図6】図1のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】実施例の第1の変形例の図6に対応する平面図である。
【図8】実施例の第2の変形例の図6に対応する平面図である。
【図9】比較例のFFSモードの液晶表示装置のアレイ基板側の2画素分の概略平面図である。
【図10】図9のV−V線に沿った断面図である。
【図11】図11Aは本発明の液晶表示装置を備えたパーソナルコンピュータを示す図であり、図11Bは本発明の液晶表示装置を備えた携帯電話機を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10A〜10D:液晶表示装置 11:透明基板 12:ゲート配線 13:共通配線
14:下電極 14a:透明導電性材料層 15:第1の絶縁膜 16:半導体層 17
:ソース配線 18:絶縁膜 19:コンタクトホール 20:スリット 21:上電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を挟持した一対の基板のうち、一方の基板上には平行に設けられた複数のゲート
配線及び共通配線と、前記ゲート配線及び共通配線と交差する方向に設けられた複数のソ
ース配線と、前記ゲート配線及びソース配線の交差部近傍に設けられた薄膜トランジスタ
と、複数の前記ゲート配線及びソース配線で区画された領域毎に形成されているとともに
前記共通配線に接続された透明導電性材料からなる下電極と、前記下電極の表面に絶縁膜
を介して形成された互いに平行に設けられた複数のスリットを有する上電極と、を備え、
前記下電極と上電極との間に生じる電界によって前記液晶層を駆動する液晶表示装置にお
いて、
前記ソース配線と交差する位置の共通配線の表面には導電性材料層が形成されているこ
とを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記導電性材料層は、前記ソース配線の幅及び共通配線の幅よりも広く形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記導電性材料層は前記下電極と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1
に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記導電性材料層は前記下電極と一体に接続されていることを特徴とする請求項3に記
載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記導電性材料層は前記ソース配線と交差する位置のゲート配線の表面にも形成されて
おり、前記ゲート配線の表面に形成された導電性材料層は前記ソース配線と交差する位置
の共通配線の表面に形成された導電性材料層とは電気的に分離されていることを特徴とす
る請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
以下の(1)〜(9)の工程を含むことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(1)透明な基板の表面全体に亘って導電性層を被覆し、エッチングすることによりゲー
ト電極部分を有する複数のゲート配線及び複数の共通配線を互いに平行に形成する工程、
(2)前記(1)の工程で得られた基板の表面全体に亘って透明導電性層を被覆し、エッ
チングすることにより各画素に対応する位置に前記共通配線と電気的に接続された下電極
と、少なくとも前記下電極間の共通配線の表面に前記透明導電性材料層を形成する工程、
(3)前記(2)の工程で得られた基板の表面全体に亘って第1の絶縁膜を被覆する工程

(4)前記第1の絶縁膜の表面全体に亘って半導体層を被覆し、エッチングすることによ
りゲート電極部分に対応する位置に半導体層を形成する工程、
(5)前記(4)の工程で得られた基板表面全体に亘って導電性層を被覆し、エッチング
することにより、前記ゲート配線及び共通配線と交差する方向にソース配線を設けるとと
もに、それぞれの画素毎にドレイン電極と前記ソース配線に電気的に接続されたソース電
極とを形成する工程、
(6)前記(5)の工程で得られた基板の表面全体に亘って第2の絶縁膜を被覆する工程

(7)前記それぞれの画素のドレイン電極上に位置する前記第2の絶縁膜にコンタクトホ
ールを形成する工程、
(8)前記(7)の工程で得られた基板の表面全体に亘って透明導電性層を被覆し、エッ
チングすることにより各画素に複数のスリットを有する上電極を形成するともに、前記上
電極とドレイン電極とを電気的に導通させる工程、
(9)前記(8)の工程で得られた基板とカラーフィルタ基板とを対向させ、両基板間に
液晶を封入する工程。
【請求項7】
前記(2)の工程において、前記ソース配線と交差する位置のゲート配線の表面にも、
前記ソース配線と交差する位置の共通配線の表面に形成された透明導電性材料層とは電気
的に分離された状態で、透明導電性材料層を形成したことを特徴とする請求項6に記載の
液晶表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−86114(P2009−86114A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253582(P2007−253582)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】