説明

液晶表示装置

【課題】立体表示、あるいは2方向の映像を表示することが可能な液晶表示装置であって、解像度の低下がなく安価に構成することのできる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】OCBモード液晶を用いて構成される液晶画素PXをマトリクス状に配した表示パネルDPと、前記表示パネルを照明する第1及び第2のバックライト(BLa,BLb)と、前記表示パネルを制御する駆動制御手段CNTとを備えた液晶表示装置であって、前記第1及び第2のバックライトからの光が、前記表示パネルの表示面に垂直で液晶分子の配向方向に沿った平面を対称面として、所定角度で前記表示パネルから出射する液晶表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体表示、あるいは2方向の映像を表示することが可能な液晶表示装置に関し、特に解像度の低下がなく安価に構成することのできる液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、軽量、薄型、低消費電力などの特徴を生かして、パーソナルコンピュータ、情報携帯端末、テレビジョン、あるいはカーナビゲーションシステム等の表示装置として広く利用されている。
この液晶表示装置は、一つの二次元情報を表示するのが通常であるが、それに留まらず、立体表示、あるいは同一画面で同時に異なる画面表示が可能な液晶表示装置が提案されている。例えば、車載用で運転席と助手席で見える映像が異なる2画面表示装置や、右目用の映像と左目用の映像をそれぞれ表示することによって立体表示を行う3次元表示装置などが提案されている。
【0003】
このような表示を可能とする技術として、視差バリア方式が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
図18は、視差バリア方式の概念図である。液晶パネルDPには、右方向用の画素と、左方向用の画素とが個別に形成されている。そして、斜め方向からは、その各々の画素を透過して出射する光の一方の光を観測できるように、視差バリア層51を形成する。なお、その視差バリア51としてレンチキュラーレンズを設けて指向性を高めることもできる。
【特許文献1】特開平5−107663号公報
【特許文献2】特開平10−161061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1、2記載の方法では、例えば、液晶パネルDPの垂直画素ライン毎に左右の画像を表示する必要がある。そのため、液晶パネルDPの1ラインの画素が右画像用画素ラインと左画像用画素ラインとに分担されることとなるため、それぞれの画像の解像度は液晶パネルDPの画素数に比して低下する。さらに、液晶パネルDPの他に視差バリア層51を精度良く形成する必要があるため安価に構成できないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、立体表示、あるいは2方向の映像を表示することが可能な液晶表示装置であって、解像度の低下がなく安価に構成することのできる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、OCBモード液晶を用いて構成される液晶画素をマトリクス状に配した表示パネルと、前記表示パネルを照明する第1及び第2のバックライトと、前記表示パネルを制御する駆動制御手段とを備えた液晶表示装置において、前記第1及び第2のバックライトからの光が、前記表示パネルの表示面に垂直で液晶分子の配向方向に沿った平面を対称面として、所定角度で前記表示パネルから出射する液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、立体表示、あるいは2方向の映像を表示することが可能な液晶表示装置であって、解像度の低下がなく安価に構成することのできる液晶表示装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
〔第1の実施の形態〕
以下の実施の形態では立体表示を行う場合を例として説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0009】
図1は、本発明の概要を説明する図である。
本発明に係る液晶表示装置では、透過型の液晶パネルDPの下にバックライトBLを備えている。そして、バックライトBLは、光源52aおよびバックライト導光板53aを有するバックライトBLa、光源52bおよびバックライト導光板53bを有するバックライトBLbで構成される。ここで、光源52aをオンしたときは、光はバックライト導光板53aによって図の右方向に出射され、光源52bをオンしたときは、光はバックライト導光板53bによって図の左方向に出射される。
【0010】
立体表示を行うときは、液晶パネルDPに右の画像を表示する期間で光源52aを点灯し、液晶パネルDPに左の画像を表示する期間で光源を切替えて光源52bを点灯する。このように時分割で液晶パネルDPに左右視差像を順次表示し、これと同期して照明する光源の指向性を切替えることによって、左右の視差画像をそれぞれ左右の眼に導くことができる。
【0011】
なお、図1は液晶表示装置の概略の構成を示している。実際の表示装置においては、液晶パネルDPとバックライトBLとの間に、さらにコリメートレンズ、プリズムフィルムなどの光の指向性を調整する光学素子を適宜設けることができる。
【0012】
ところで、1フレーム期間を時分割して異なる映像を表示するためには、応答速度の速い液晶を使用することが必須の条件となる。このため、本実施の形態では、動画表示に必要とされる高速な液晶応答性を有すると共に、広視野角の実現が可能なOCBモード(Optically Compensated Bend)液晶を使用する。
【0013】
図2は、液晶表示装置の回路構成を概略的に示す図である。
液晶表示装置は液晶パネルDP、液晶パネルDPを照明するバックライトBL(BLa、BLb)、液晶パネルDPおよびバックライトBLを制御する表示制御回路CNTを備える。
【0014】
液晶パネルDPは一対の電極基板であるアレイ基板1および対向基板2間に液晶層3を挟持した構造である。液晶層3は、例えばノーマリホワイトの表示動作のために予めスプレー配向からベンド配向に転移されると共にベンド配向からスプレー配向への逆転移が印加される電圧により阻止される液晶を液晶材料として含む。
【0015】
表示制御回路CNTは、アレイ基板1および対向基板2から液晶層3に印加される液晶駆動電圧により液晶パネルDPの透過率を制御する。スプレー配向からベンド配向への転移は電源投入時に表示制御回路CNTにより行われる所定の初期化処理で比較的大きな電界を液晶に印加することにより得られる。
アレイ基板1では、複数の画素電極PEが透明絶縁基板GL上において略マトリクス状に配置される。また、複数のゲート線Y(Y1〜Ym)が複数の画素電極PEの行に沿って配置され、複数のソース線X(X1〜Xn)が複数の画素電極PEの列に沿って配置される。
【0016】
これらゲート線Yおよびソース線Xの交差位置近傍には、複数の画素スイッチング素子Wが配置される。各画素スイッチング素子Wは例えばゲートがゲート線Yに接続され、ソース−ドレインパスがソース線Xおよび画素電極PE間に接続される薄膜トランジスタからなり、対応ゲート線Yを介して駆動されたときに対応ソース線Xおよび対応画素電極PE間で導通する。
【0017】
各画素電極PEおよび共通電極CEは例えばITO等の透明電極材料からなり、それぞれ配向膜ALで覆われ、画素電極PEおよび共通電極CEからの電界に対応した液晶分子配列に制御される液晶層3の一部である画素領域と共に液晶画素PXを構成する。
【0018】
複数の液晶画素PXは各々画素電極PEおよび共通電極CE間に液晶容量CLCを有する。複数の補助容量線C1〜Cmは各々対応行の液晶画素PXの画素電極PEに容量結合して補助容量Csを構成する。補助容量Csは画素スイッチング素子Wの寄生容量に対して十分大きな容量値を有する。
【0019】
表示制御回路CNTは、ゲートドライバYD、ソースドライバXD、バックライト駆動部LD、駆動用電圧発生回路4、およびコントローラ回路5を備える。
ゲートドライバYDは、複数のスイッチング素子Wを行単位に導通させるように複数のゲート線Y1〜Ymを順次駆動する。ソースドライバXDは、各行のスイッチング素子Wが対応ゲート線Yの駆動によって導通する期間において画素電圧Vsを複数のソース線X1〜Xnにそれぞれ出力する。バックライト駆動部LDは、バックライトBLを駆動する。駆動用電圧発生回路4は、液晶パネルDPの駆動用電圧を発生する。コントローラ回路5は、ゲートドライバYD、ソースドライバXDおよびバックライト駆動部LDを制御する。
【0020】
駆動用電圧発生回路4は、補助容量線Cに印加される補償電圧Veを発生する補償電圧発生回路6を含む容量結合駆動を含んでも良い。また、ソースドライバXDによって用いられる所定数の階調基準電圧VREFを発生する階調基準電圧発生回路7、および対向電極CTに印加されるコモン電圧Vcomを発生するコモン電圧発生回路8を含む。
【0021】
コントローラ回路5は、制御回路10、垂直タイミング制御回路11、水平タイミング制御回路12、画像データ変換回路17、およびバックライト制御回路14を含む。
【0022】
制御回路10は、外部信号源SSから入力される同期信号SYNC’に基づいて新たな同期信号SYNC(VSYNC,DE)を生成するとともに、表示制御回路CNT各部の動作を制御する信号を生成する。
垂直タイミング制御回路11は、制御回路10から入力される同期信号SYNC(VSYNC,DE)に基づいてゲートドライバYDなどに対する制御信号CTYを発生する。水平タイミング制御回路12は、制御回路10から入力される同期信号SYNC(VSYNC,DE)に基づいてソースドライバXDに対する制御信号CTXを発生する。
【0023】
画像データ変換回路17は、複数の画素PXに対して外部信号源SSから入力される画像データDI(左画像データ、右画像データ)を一時保存すると共に、所定タイミングでソースドライバXDに出力する。バックライト制御回路14は、垂直タイミング制御回路11から出力される制御信号CTYに基づいてバックライト駆動部LDを制御する。
【0024】
画像データDIは複数の液晶画素PXに対する複数の画素データからなり、1フレーム期間(垂直走査期間V)に左画像データ、右画像データについて2回更新される。制御信号CTYはゲートドライバYDに供給され、制御信号CTXは画像データ変換回路17から得られる画素データDOと共にソースドライバXDに供給される。制御信号CTYは上述のように順次複数のゲート線Yを駆動する動作をゲートドライバYDに行わせるために用いられ、制御信号CTXは画像データ変換回路17の液晶画素PX単位に得られ直列に出力される画素データDOを複数のソース線Xにそれぞれ割り当てると共に出力極性を指定する動作をソースドライバXDに行わせるために用いられる。
【0025】
ゲートドライバYDはゲート線Yを選択するために例えばシフトレジスタ回路を用いて構成される。ここで、ゲートパルスは、左画像データと右画像データとについての2種を出力する。
なお、本実施の形態の左画像データと右画像データの表示動作については後で詳細に説明する。
【0026】
ソースドライバXDは階調基準電圧発生回路7から供給される所定数の階調基準電圧VREFを参照してこれら画素データDOをそれぞれ画素電圧Vsに変換し、複数のソース線X1〜Xnに並列的に出力する。
【0027】
画素電圧Vsは共通電極CEのコモン電圧Vcomを基準として画素電極PEに印加される電圧であり、例えばフレーム反転駆動およびライン反転駆動を行うようコモン電圧Vcomに対して極性反転される。2倍速の垂直走査速度で反射部表示駆動を行う場合には、例えばライン反転駆動(1H反転駆動)およびフレーム反転駆動を行うようコモン電圧Vcomに対して極性反転される。
【0028】
また、補償電圧Veは1行分のスイッチング素子Wが非導通となるときにこれらスイッチング素子Wに接続されるゲート線Yに対応した補助容量線CにゲートドライバYDを介して印加され、これらスイッチング素子Wの寄生容量によって1行分の画素PXに生じる画素電圧Vsの変動を補償する容量結合駆動であっても良い。
【0029】
ゲートドライバYDが例えばゲート線Y1をオン電圧により駆動してこのゲート線Y1に接続された全ての画素スイッチング素子Wを導通させると、ソース線X1〜Xn上の画素電圧Vsがこれら画素スイッチング素子Wをそれぞれ介して対応画素電極PEおよび補助容量Csの一端に供給される。
【0030】
また、ゲートドライバYDはこのゲート線Y1に対応した補助容量線C1に補償電圧発生回路6からの補償電圧Veを出力し、ゲート線Y1に接続された全ての画素スイッチング素子Wを1水平走査期間だけ導通させた直後にこれら画素スイッチング素子Wを非導通にするオフ電圧をゲート線Y1に出力する。補償電圧Veはこれら画素スイッチング素子Wが非導通になったときにこれらの寄生容量によって画素電極PEから引き抜かれる電荷を低減して画素電圧Vsの変動、すなわち突き抜け電圧ΔVpを実質的にキャンセルする。
【0031】
図3は、ソースドライバXDの構成を概略的に示す図である。
ソースドライバXDは、シフトレジスタ21、サンプリング・ロードラッチ22、デジタルアナログ(D/A)変換回路23、および出力バッファ回路24を含む。
制御信号CTXには、一行分の画素データの取り込み開始タイミングを制御する水平スタート信号STH、シフトレジスタ21において水平スタート信号STXをシフトさせる水平クロック信号CKHが含まれている。
【0032】
シフトレジスタ21は、水平スタート信号STHを水平クロック信号CKHに同期してシフトし、画素データDOを順次直並列変換するタイミングを制御する。サンプリング・ロードラッチ22は、シフトレジスタ21の制御により1ライン分の画素PXに対する画素データDOを順次ラッチし、並列的に出力する。デジタルアナログ(D/A)変換回路23は、画素データDOをアナログ形式の画素電圧に変換する。出力バッファ回路24は、D/A変換回路23から得られるアナログ画素電圧をソース線X1,・・・,Xnに出力する。そして、D/A変換回路23は、階調基準電圧発生回路7から発生される複数の階調基準電圧VREFを参照するように構成される。なお、階調基準電圧発生回路7は、1フレーム期間において制御回路10からの切替信号に応じて、階調基準電圧VREFを左画像データ用と右画像データ用に切替えて出力する。
【0033】
続いて、液晶パネルDPの構造について説明する。なお、以下では、図4に示すように液晶パネルDPの左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、前後方向をZ軸方向と称する。
【0034】
図5は、本発明の実施の形態に係る液晶表示装置が備える液晶パネルの断面図である。
図5に示すように、液晶パネルDPは、2枚の基板、すなわち対向基板2及びアレイ基板1が対向して配されている。そして、対向基板2及びアレイ基板1の間に液晶層3が形成されている。
【0035】
対向基板2は、透明絶縁基板GLの後面に共通電極CE及び配向膜AL2が順に積層形成されて構成されている。また、アレイ基板1は、透明絶縁基板GLの前面に画素電極PE及び配向膜AL1が積層して形成されている。
また、対向基板2の前面には、位相差フィルムRT2が配設されている。この位相差フィルムRT2は、ハイブリッド配向させたディスコチックフィルム69の前面に、負の一軸性を有する位相差フィルム70を積層した構成である。
また、アレイ基板1の後面には、位相差フィルムRT1が配設されている。この位相差フィルムRT1は、ハイブリッド配向させたディスコチックフィルム72、負の一軸性有する位相差フィルム73を順に積層して構成されている。
さらに、位相差フィルムRT2の前面には偏光板PL2が、位相差フィルムRT1の後面には偏光板PL1がそれぞれ配設されている。
【0036】
なお、これらのディスコチックフィルム69及び負の一軸性フィルム70に、正の一軸性を有する位相差フィルムを加えるような構成であってもよい。具体的には、図6に示すように、負の一軸性フィルム70の前面に、正の一軸性フィルム75を積層形成させることにより、ディスコチックフィルム69、負の一軸性フィルム70、及び正の一軸性フィルム75によって位相差フィルムRT2を構成するようにしてもよい。
また、ディスコチックフィルム72及び負の一軸性フィルム73に正の一軸性フィルム76を加えてもよい。
【0037】
次に、上述したように構成された液晶パネルDPの光学特性について説明する。
【0038】
位相差フィルムの特性値である、位相差フィルムの面内方向のリタデーションRe及び厚み方向のリタデーションRthはそれぞれ式(1)、(2)で求められる。
Re=(nx−ny)×d …(1)
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d…(2)
ここで、nx,nyは位相差フィルムの面内方向の屈折率、nzは位相差フィルムの厚み方向の屈折率、dは位相差フィルムの厚みを示す。また、位相差フィルムの面内方向の屈折率nx,nyのうち、大きい方をnxとしている。
【0039】
ところで、液晶層3及び位相差フィルムRT1,RT2では、観察角が変化するとそのリタデーションも変化する。
【0040】
図7は、液晶パネルDPの液晶部分を拡大して示す断面図である。
液晶層3では、例えば、液晶パネルDPの上下方向(Y軸方向)に液晶分子201が配向され、これら液晶分子201は、液晶パネルのDPの表示面に垂直であって、液晶分子201の配向方向に沿った平面であるZ−Y平面(以下、「配向面」という。)においてベンド配向をなしている。OCB液晶では、配向膜AL1,AL2の間にある液晶分子201が弓なり状態に配向(ベンド配向)する点に特徴がある。
【0041】
このベンド配向した液晶分子201に電圧を印加すると、弓のしなり度合いが変化して、液晶層を挟んで2枚の偏光板間を通過する光量が調整されて映像の白と黒とを作る。ベンド配向では、弓のしなりに似た液晶分子201の動きが配向変化の加速効果を生み出し、従来に比べて速く応答することができる。
【0042】
図8は、液晶層3のリタデーションの観察角特性を説明する図である。
液晶分子201の屈折率異方性はその形状の異方性によって生じる。したがって、液晶分子201を観察する場合、観察方向から見た液晶分子201の形状に異方性が存在する場合には、その液晶分子201にはリタデーションが生じる。
【0043】
図8(1)は、液晶分子201が立った状態で観察する場合を示す図である。液晶分子201は棒状であり、この棒状の中心軸がZ軸と一致している。そして観察者はZ軸から角度θだけ傾斜した方向から液晶分子201を観察している。
【0044】
観察角θが0度である場合、すなわちZ軸方向から観察した場合には、液晶分子201は円形に見え、その形状に異方性がない。従って、液晶分子201はリタデーションを生じない。
【0045】
次に、この初期状態からX軸方向に観察角θだけ視点を移動させた場合には、液晶分子201はX軸方向に長軸を有する形状に見える。従って、液晶分子201には視点移動方向(X軸方向)の成分が遅相となるリタデーションが生じる。
一方、初期状態からY軸方向に観察角θだけ視点を移動させた場合には、液晶分子201はY軸方向に長軸を有する形状に見える。従って、液晶分子201には視点移動方向(Y軸方向)の成分が遅相となるリタデーションが生じる。
【0046】
そして、観察方向から見た液晶分子201の形状の異方性は、X軸方向、Y軸方向ともに観察角θの増大に連れて増加する。従って、液晶分子201のリタデーションは観察角θが増大するにつれて増加する。
【0047】
図8(2)は、液晶分子201が寝た状態で観察する場合を示す図である。液晶分子201は棒状であり、この棒状の中心軸がY軸と一致している。そして観察者はZ軸から角度θだけ傾斜した方向から液晶分子201を観察している。
【0048】
観察角θが0度の状態からX軸方向に観察角θだけ視点を移動させた場合には、液晶分子201はY軸方向に長軸を有する形状に見える。従って、液晶分子201には視点移動方向(Y軸方向)の成分が遅相となるリタデーションが生じる。
そして、観察方向から見た液晶分子201の形状は、観察角θが増大してもほとんど変化しない。従って、液晶分子201のリタデーションは観察角θが増大してもほとんど変化しない。
【0049】
一方、観察角θが0度の状態からY軸方向に観察角θだけ視点を移動させた場合には、液晶分子201がY軸方向に長軸を有する形状に見えるので、液晶分子201には視点移動方向(Y軸方向)の成分が遅相となるリタデーションが生じる。
そして、観察方向から見た液晶分子201の形状の異方性は、観察角θが増大するとともに小さくなる。従って、液晶分子201のリタデーションは観察角θの増大に連れて減少する。
【0050】
図9は、液晶パネルDPを構成する液晶分子の配向方向を示す図である。
図9(1)の矢符80a,80bは、それぞれ対向基板2,アレイ基板1のラビング方向を示している。すなわち、対向基板2及びアレイ基板1は共に、液晶パネルDPの上下方向(Y軸方向)にラビング処理がなされている。したがって、図9(2)に示すように、液晶層3を構成する液晶分子201は、液晶パネルDPの上下方向に沿って配向されていることになる。液晶分子201は配向面、即ち配向方向に沿った平面であるY−Z面内でベンド配向する。
【0051】
このことから、本実施の形態に係る液晶表示装置が備える液晶パネルDPでは、バックライトBLa、BLbからの光は、ラビング方向に沿って配列する液晶分子201の配向面の両側から所定の角度で対称に液晶分子201に入射することになる。この結果、液晶分子201のリタデーションは観察者の左眼位置と右眼位置とで実質的に同じ値となる。従って、左眼と右眼とで観測される映像には変調率の差は生じず高品位の立体表示が得られる。
【0052】
しかしラビング方向が上下方向でない場合、例えば斜め方向である場合は、液晶分子201の配向面の両側から液晶分子201に入射する光の角度が異なる。そうすると、液晶分子201のリタデーションは観察者の左眼位置と右眼位置とで異なる値となる。従って、左眼と右眼とで観測される映像には変調率の差が生じ品位の低い立体表示となる。
【0053】
次に、位相差フィルムRT1,RT2のリタデーションの観察角特性を説明する。
位相差フィルムRT1,RT2は光学負の一軸異方性を有する媒体、例えばディスコチック液晶分子を主体として構成されたフィルムで構成され、そのディスコチックフィルムは円盤状のディスコチック液晶分子がフィルムの厚み方向に積載されて構成されている。
【0054】
図10は、位相差フィルムRT1,RT2のリタデーションの観察角特性を示す図である。
【0055】
まず、図10に示すように、円盤状のディスコチック液晶分子301がX−Y平面に平行に位置している状態を考える。観察角θが0度である場合、即ちZ軸方向から見たディスコチック液晶分子301の形状に異方性はなく、したがって、ディスコチック液晶分子301にはリタデーションは生じない。
【0056】
次に、この状態からX軸方向に観察角θが変化するように視点を移動させた場合には、ディスコチック液晶分子301がY軸方向に長軸を有する形状に見えるので、ディスコチック液晶分子301にはY軸方向の成分が遅相となるリタデーションが生じる。
同様に、観察角θが0度の状態からY軸方向に観察角θが変化するように視点を移動させた場合には、ディスコチック液晶分子301がX軸方向に長軸を有する形状に見えるので、ディスコチック液晶分子301にはX軸方向の成分が遅相となるリタデーションが生じる。
そして、観察方向から見たディスコチック液晶分子301の形状の異方性は、観察角θの増大に連れて増加するので、ディスコチック液晶分子301のリタデーションは観察角θの増大に連れて増加する。
【0057】
OCBモードの液晶表示装置では、液晶層3において、液晶分子が弓なりに連なるように配向している。このベンド配向の液晶層3に合わせてディスコチック液晶分子301を配することで、視野角特性を改善することができる。
以下、この原理を順次説明する。
【0058】
図11は、液晶層3の液晶分子201のリタデーションを相殺する方法を説明する図である。図11では、棒状の液晶分子201の長軸がディスコチック液晶分子301に垂直に位置している場合を示している。
【0059】
ここで、X軸方向に観察角θを変化させた場合には、上述のように、液晶分子201にはX軸方向の成分が遅相となるリタデーションが生じる。一方、ディスコチック液晶分子301にはY軸方向の成分が遅相となるリタデーションが生じる。従って、両者のリタデーションが相殺される。
【0060】
同様に、Y軸方向に観察角θを変化させた場合には、上述のように、液晶分子201にはY軸方向の成分が遅相となるリタデーションが生じる。一方、ディスコチック液晶分子301にはX軸方向の成分が遅相となるリタデーションが生じる。従って、両リタデーションが相殺される。
【0061】
このことから、棒状の液晶分子201の長軸に垂直にディスコチック液晶分子301を配置すると、観察角θの変化によって液晶分子201に生じるリタデーションを観察角θの変化によってディスコチック液晶分子301に生じるリタデーションによって相殺できることが分かる。
【0062】
ところで液晶層3の内部における液晶分子201のベンド配向を考えると、図7に示すように、液晶層3の中央付近では液晶分子201は立っているが、配向膜AL1,AL2に近づくにつれて寝ている状態に徐々に変化する配向となっている。以下、この配向をハイブリッド配向という。
【0063】
上述の検討より、ハイブリッド配向した液晶分子201に生じるリタデーションを相殺するには、複数のディスコチック液晶分子301を、その各々がハイブリッド配向した液晶分子201の各々の長軸に垂直になるように配置すればよいことが分かる。
即ち、複数のディスコチック液晶分子301を、アレイ対向基板1,対向基板2に平行な状態から垂直な状態に徐々に変化するように積み上げれば、観察角θの変化によってハイブリッド配向した液晶分子201に生じるリタデーションを相殺することが可能となる。
【0064】
図12は、液晶の配列を補償するディスコチック液晶分子の構成を示す図である。
ここで図5において、位相差フィルムRT1,RT2の、ディスコチック液晶分子301がアレイ対向基板1,対向基板2に平行に積み上げられた部分が負の一軸性フィルム70,73に相当し、同じく、ディスコチック液晶分子301がハイブリッド配向した部分がディスコチックフィルム69、72に相当している。
【0065】
図13は、液晶パネルの仕様を示す表である。
但し、本発明はこの数字に示された範囲に限られず適宜調整することができる。例えば、セルギャップが20%増加した場合は、フィルムのRthも約20%増加するように仕様を変更することができる。
【0066】
図14は、液晶パネルDPの透過率分布(左右方向)を示す図である。縦軸は輝度を表し、横軸は観察角を表している。
この図に示すように、透過率分布曲線は観察角θが0度の線を中心として左右対称な形状である。これは、ラビング方向を左右方向と直交する上下方向に定めたことによる効果である。
また、輝度は観察角θが−40度から+40度の範囲にわたってほぼ一定値を示している。これは位相差フィルムRT1,RT2として負の一軸性フィルムを用いていることによる効果である。
【0067】
このように、液晶層3のリタデーションの観察角θの変化に対する変化を、位相差フィルムRT1,RT2のリタデーションの観察角θの変化に対する変化によって相殺した。この結果、全ての方向で視野角特性がほぼ変化しない液晶パネルDPを得ることができた。
【0068】
次に、本実施の形態における液晶表示装置の駆動方法を説明する。本実施の形態では、1フレーム期間中に右画像表示期間と左画像表示期間とが設けられ、それぞれの期間において右画像用、左画像用の画素電圧が液晶画素に供給される。
【0069】
図15は、本実施の形態の液晶表示装置の駆動方法を説明する図である。
図1乃至図3、図15を参照しつつ駆動方法を説明する。上述のようにゲートドライバYDから出力されるゲート線Yを選択するためのゲートパルスは、右画像表示用と左画像表示用の2種が設けられている。
【0070】
制御信号CTYは、第1スタート信号(右画像表示開始信号)STHA、第2スタート信号(左画像表示開始信号)STHB、クロック信号、および出力イネーブル信号等を含む。
【0071】
第1スタート信号(右画像表示開始信号)STHAは、右画像表示開始タイミングを制御する。第2スタート信号(左画像表示開始信号)STHBは、左画像表示開始タイミングを制御する。クロック信号は、シフトレジスタ回路においてこれらスタート信号STHA,STHBをシフトさせる。出力イネーブル信号は、スタート信号STHA,STHBの保持位置に対応してシフトレジスタ回路によって所定数ずつ順次または一緒に選択されるゲート線Y1〜Ymへの駆動信号の出力を制御する。
【0072】
他方、制御信号CTXはスタート信号、クロック信号、ロード信号、および極性信号等を含む。
先ず右画像表示動作について説明する。
ゲートドライバYDは制御信号CTYの制御により1フレーム期間の1/3期間においてゲート線Y1〜Ymを右画像表示用に順次選択し、各行の画素スイッチング素子Wを1水平走査期間Hだけ導通させる駆動信号としてオン電圧を選択ゲート線Yに供給する。1行分の入力画素データDIが1行分の右画像表示用画素データRに変換される。1行分の右画像表示用画素データRは画像データ変換回路17から直列に出力される。
【0073】
この画素データRが画像データ変換回路17から出力されるタイミングに合わせて、制御回路10は切替信号を階調基準電圧発生回路7に出力する。階調基準電圧発生回路7は、階調基準電圧VREFを右画像表示用に切替えて出力する。
【0074】
ソースドライバXDは上述の階調基準電圧発生回路7から供給される所定数の階調基準電圧VREFを参照してこれら画素データRをそれぞれ画素電圧Vsに変換し、複数のソース線X1〜Xnに並列的に出力する。
【0075】
この右画像表示期間に合わせて制御回路10は、所定タイミングでバックライト制御回路14に点消灯信号を出力する。バックライト制御回路14は、バックライト駆動部LDを駆動してバックライトBLaの点消灯を制御する。
図15では、右画像が表示パネルに表示されてから左画像が表示を開始するまでの1フレーム期間の1/6期間バックライトBLaが点灯する。
【0076】
続いて、左画像表示動作について説明する。ゲートドライバYDは制御信号CTYの制御により1フレーム期間の1/3期間においてゲート線Y1〜Ymを左画像表示用に順次選択し、各行の画素スイッチング素子Wを1水平走査期間Hだけ導通させる駆動信号としてオン電圧を選択ゲート線Yに供給する。1行分の入力画素データDIが1行分の左画像表示用画素データLに変換される。1行分の左画像表示用画素データLは画像データ変換回路17から直列に出力される。
【0077】
この画素データLが画像データ変換回路17から出力されるタイミングに合わせて、制御回路10は切替信号を階調基準電圧発生回路7に出力する。階調基準電圧発生回路7は、階調基準電圧VREFを左画像表示用に切替えて出力する。
【0078】
ソースドライバXDは上述の階調基準電圧発生回路7から供給される所定数の階調基準電圧VREFを参照してこれら画素データLをそれぞれ画素電圧Vsに変換し、複数のソース線X1〜Xnに並列的に出力する。
この左画像表示期間に合わせて制御回路10は、所定タイミングでバックライト制御回路14に点消灯信号を出力する。バックライト制御回路14は、バックライト駆動部LDを駆動してバックライトBLbの点消灯を制御する。
図15では、左画像が表示パネルに表示されてから右画像が表示を開始するまでの1フレーム期間の1/3期間バックライトBLbが点灯する。
【0079】
以上、本発明に係る液晶表示装置を右目用と左目用の映像を交互に切り替える立体表示装置として使用する例について説明したが、本発明はこの形態に限定されない。
本発明は、2方向の映像を映すことができる液晶ディスプレイに関するものであり、図16に示すように、車載用として、運転席と助手席で映す映像を変えるディスプレイとしても良く、図17に示すように、業務用ゲーム機、携帯用ゲーム機などで、対戦ゲームに使っても良い。
【0080】
本発明によれば、A映像とB映像を同じにすれば通常表示となり、表示クオリテイを落とさずに表示できる。このときは、A、Bバックライトを共に点灯したままにしておけばよい。通常は、AB共に同じ映像を映しておくが、ある特殊な状況下だけ、3D表示にしたり、2方向表示にしたりする使い方でもよい。
【0081】
一般に液晶表示素子は、表示する極性を書き込みごとに切り替えてDC電界の蓄積を防ぐ「交流化」を導入している。本発明の場合、実効的には120Hzで駆動することになるが、60Hzで交流化しても良い。これは、A画面とB画面が異質なものであった場合、表示とシンクロしてDCが残留する可能性がある。そのため、A画面でもB画面でも交流化できるように、60Hzの交流化を採用するものである。
【0082】
もちろん、本表示装置は、60Hzに限るものではない。75Hzの入力波形で実効的に150Hzで駆動しても良い。その場合にはフリッカがさらに少なくなるメリットがある。
【0083】
尚、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の概要を説明する図。
【図2】液晶表示装置の回路構成を概略的に示す図。
【図3】ソースドライバの構成を概略的に示す図。
【図4】液晶パネルの方向について説明する図。
【図5】本発明の実施の形態に係る液晶表示装置が備える液晶パネルの断面図。
【図6】バリエーションの形態に係る液晶表示装置が備える液晶パネルの断面図。
【図7】液晶パネルの液晶部分を拡大して示す断面図。
【図8】液晶層のリタデーションの観察角特性を説明する図。
【図9】液晶パネルを構成する液晶分子の配向方向を示す図。
【図10】位相差フィルムのリタデーションの観察角特性を示す図。
【図11】液晶層の液晶分子のリタデーションを相殺する方法を説明する図。
【図12】液晶の配列を補償するディスコチック液晶分子の構成を示す図。
【図13】液晶パネルの仕様を示す表。
【図14】液晶パネルの透過率分布(左右方向)を示す図。
【図15】本実施の形態の液晶表示装置の駆動方法を説明する図。
【図16】運転席と助手席で映す映像を変えるディスプレイを示す図。
【図17】対戦ゲームを示す図。
【図18】視差バリア方式の概念図。
【符号の説明】
【0085】
1…アレイ基板、2…対向基板、3…液晶層、4…駆動用電圧発生回路、5…コントローラ回路、7…階調基準電圧発生回路、10…制御回路、14…バックライト制御回路、69,72…ディスコチックフィルム、70,73…負の一軸性フィルム、201…液晶分子、301…液晶分子、YD…ゲートドライバ、DI…画像データ、DO,R,L…画素データ、XD…ソースドライバ、RT1、RT2…位相差フィルム、PE…画素電極、CE…共通電極、PX…液晶画素、DP…表示パネル、PL1,PL2…偏光板、BL,BLa,BLb…バックライト、CNT…表示制御回路、X…ソース線、AL1、AL2…配向膜、G…ゲート線、W…スイッチング素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OCBモード液晶を用いて構成される液晶画素をマトリクス状に配した表示パネルと、
前記表示パネルを照明する第1及び第2のバックライトと、
前記表示パネルを制御する駆動制御手段とを備えた液晶表示装置において、
前記第1及び第2のバックライトからの光が、前記表示パネルの表示面に垂直で液晶分子の配向方向に沿った平面を対称面として、所定角度で前記表示パネルから出射すること
を特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、1フレーム期間内で第1及び第2の画像を表示するように制御することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、
前記第1の画像の表示を制御する期間において前記第1のバックライトを点灯するように制御し、
前記第2の画像の表示を制御する期間において前記第2のバックライトを点灯するように制御することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記OCBモード液晶を配向させるラビング処理の方向が前記表示パネルの前面と後面とで平行であることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記表示パネルは、光に負の位相差を与える位相差フィルムを備えることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の画像は、それぞれ異なる方向から観察可能であることを特徴とする請求項5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の画像は、視差像であり、
前記液晶表示装置は立体表示機能を備えたことを特徴とする請求項6に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−287180(P2008−287180A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134525(P2007−134525)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】