説明

液状エポキシ樹脂組成物

【課題】 硬化後の液状エポキシ樹脂組成物のマイグレーションを防止し、かつ液状エポキシ樹脂組成物の保存時の増粘を抑制することを課題とする。したがって、保存特性に優れ、硬化後には耐マイグレーション性に優れた高信頼性の液状エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)アミノフェノール型エポキシ樹脂を含有する液状エポキシ樹脂、(B)酸無水物硬化剤、および(C)イミダゾール化合物を含有し、(A)成分が、エポキシ樹脂:100重量部に対して、アミノフェノール型エポキシ樹脂を5〜90重量部を含有することを特徴とする、液状エポキシ樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状エポキシ樹脂組成物に関し、特に、チップオンフィルムパッケージ用半導体素子の封止に適した液状エポキシ樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ドライバIC等の半導体装置のさらなる配線等の高密度化、高出力化に対応可能な半導体素子の実装方式であるCOF(Chip On Film)パッケージ等の半導体パッケージで、フリップチップボンディングが利用されている。一般的に、フリップチップボンディングでは、半導体素子と基板をバンプで接合し、半導体素子と基板の間隙を、アンダーフィル材と呼ばれる液状半導体封止剤で封止する。
【0003】
近年、液晶ドライバICの高密度化、高出力化の要求に応えるため、液晶ドライバICを搭載する配線パターンのファインピッチ化が進んでいる。このファインピッチ化により、液晶ドライバICの動作温度が着々と上昇している。アンダーフィル剤で封止された半導体パッケージにおいて、アンダーフィル剤のガラス転移温度を超える温度域で、配線間に電位差を与えると、配線間にマイグレーションが発生する。マイグレーションは、配線パターンの金属が、電気化学反応によって溶出し、配線間の抵抗値低下が生じる現象である。
【0004】
このマイグレーションを抑制するために、金属イオン結合剤を含むアンダーフィル剤が報告されている。このアンダーフィル剤は、電気化学反応によって溶出した金属イオンを、金属イオン結合剤で固定化することにより、マイグレーションの抑制を図っている。
【0005】
しかしながら、アンダーフィル剤に金属イオン結合剤を含有させると、アンダーフィル剤が保存時に増粘する、アンダーフィル剤のガラス転移温度が低下する等のアンダーフィル剤としての特性が低下してしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−333085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化後の液状エポキシ樹脂組成物のマイグレーションを防止し、かつ液状エポキシ樹脂組成物の保存時の増粘を抑制することを課題とする。したがって、保存特性に優れ、硬化後には耐マイグレーション性に優れた高信頼性の液状エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した液状エポキシ樹脂組成物に関する。
〔1〕(A)アミノフェノール型エポキシ樹脂を含有する液状エポキシ樹脂、(B)酸無水物硬化剤、および(C)イミダゾール化合物を含有し、(A)成分:100重量部に対して、アミノフェノール型エポキシ樹脂を5〜90重量部を含有することを特徴とする、液状エポキシ樹脂組成物。
〔2〕(A)成分に含有されるアミノフェノール型エポキシ樹脂が、式(1):
【化1】

で表される、上記〔1〕記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔3〕さらに、(D)エラストマーを含有する、上記〔1〕または〔2〕記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔4〕さらに、(E)シランカップリング剤を含有する、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔5〕(B)成分が、(A)成分:1当量に対して、0.6〜1.2当量の比率である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔6〕(C)成分が、(A)成分:100質量部に対して、0.1〜5質量部である、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔7〕(D)成分が、(A)成分:100質量部に対して、5〜30質量部である、上記〔3〕〜〔6〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔8〕24時間後の粘度上昇率が、300%以下である、上記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔9〕(C)成分を、アミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分の少なくとも一部に分散させ、マスタバッチとした後、マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合することにより得られる、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物。
〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物を含む、チップオンフィルムパッケージ用封止剤。
〔11〕上記〔10〕記載の液状半導体封止剤を用いて封止された、半導体装置。
〔12〕(C)成分を、アミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分の少なくとも一部に分散させ、マスタバッチとした後、マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合することを特徴とする、上記〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の液状エポキシ樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明〔1〕によれば、保存特性に優れ、硬化後に耐マイグレーション性に優れる液状エポキシ樹脂組成物を提供することができる。
【0010】
本発明〔11〕によれば、耐マイグレーション性に優れた高信頼性の半導体部品を容易に提供することができる。
【0011】
本発明〔12〕によれば、耐マイグレーション性に優れたエポキシ樹脂組成物の保存特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】樹脂組成物の注入性の評価方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔液状エポキシ樹脂組成物〕
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、(A)アミノフェノール型エポキシ樹脂を含有する液状エポキシ樹脂、(B)酸無水物硬化剤、および(C)イミダゾール化合物を含有し、(A)成分:100重量部に対して、アミノフェノール型エポキシ樹脂を5〜90重量部を含有することを特徴とする。
【0014】
(A)成分含有される部アミノフェノール型エポキシ樹脂は、架橋密度の高い樹脂骨格を形成することにより、マイグレーションの発生を抑制する。アミノフェノール型エポキシ樹脂は、好ましくは、式(2):
【0015】
【化2】

【0016】
で表され、2個の官能基がオルト位またはパラ位にあるものがより好ましく、式(1):
【0017】
【化3】

【0018】
で表されるものが、硬化性、耐熱性、接着性、耐久性、耐マイグレーション性の観点から、特に好ましい。市販品としては、三菱化学製アミノフェノール型エポキシ樹脂(グレード:JER630、JER630LSD)が挙げられる。
【0019】
アミノフェノール型エポキシ樹脂以外の(A)成分としては、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ナフタレン型エポキシ樹脂、液状水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、液状脂環式エポキシ樹脂、液状アルコールエーテル型エポキシ樹脂、液状環状脂肪族型エポキシ樹脂、液状フルオレン型エポキシ樹脂、液状シロキサン系エポキシ樹脂等が挙げられ、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状シロキサン系エポキシ樹脂が、硬化性、耐熱性、接着性、耐久性の観点から好ましい。また、エポキシ当量は、粘度調整の観点から、80〜250g/eqが好ましい。市販品としては、新日鐵化学製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(品名:YDF8170)、新日鐵化学製ビスフェノールF型エポキシ樹脂(品名:YDF870GS)、DIC製ナフタレン型エポキシ樹脂(品名:HP4032D)、信越化学製シロキサン系エポキシ樹脂(品名:TSL9906)等が挙げられる。アミノフェノール型エポキシ樹脂以外の(A)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0020】
アミノフェノール型エポキシ樹脂は、(A)成分:100重量部に対して、5〜90重量部を含有されると、耐マイグレーション性の観点から好ましい。
【0021】
(B)成分は、良好な反応性(硬化速度)、適度な粘性付与を付与する。(B)成分としては、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、メチルナジック酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられ、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物が好ましい。市販品としては、三菱化学製酸無水物(グレード:YH306、YH307)等が挙げられる。(B)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0022】
(C)成分は、硬化促進剤であり、(C)成分としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等が挙げられる。(C)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0023】
(B)成分は、(A)成分:1当量に対して、0.6〜1.2当量の比率であると好ましく、0.6〜1.0当量であると、より好ましい。(A)成分の当量はエポキシ当量であり、(B)成分の当量は酸無水物当量である。0.6以上であると、反応性、硬化後の液状エポキシ樹脂組成物のPCT試験での耐湿信頼性、耐マイグレーション性が良好であり、一方、1.2以下であると、増粘倍率が高くなり過ぎず、ボイドの発生が抑制される。
【0024】
(C)成分は、(A)成分:100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3.0質量部含有される。0.05質量部以上であると、反応性が良好であり、5質量部以下であると、耐湿信頼性が良好あり、更に増粘倍率が安定である。
【0025】
液状エポキシ樹脂組成物は、さらに、(D)成分であるエラストマーを含有すると液状エポキシ樹脂組成物の応力緩和の観点から好ましい。(D)成分としては、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ポリオレフィンゴム、コアシェルゴム等が挙げられる。(D)成分は、固体のものを使用することができる。形態は特に限定されず、例えば粒子状、粉末状、ペレット状のものを使用することができ、粒子状の場合は、例えば平均粒径が10〜200nm、好ましくは30〜100nm、より好ましくは、50〜80nmである。(D)成分は、常温で液状のものも使用することもでき、例えば、平均分子量が比較的低いポリジオルガノシロキサン、ポリブタジエン、エチレンプロピレン、スチレンブタジエン、アクリロニトリルブタジエン、イソプレンが挙げられる。また、(D)成分は、末端にエポキシ基と反応する基を有するものを使用することができ、これらは固体、液状いずれの形態であってもよい。市販品としては、宇部興産製ATBN、CTBN1008−SP等が挙げられる。(D)成分は、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0026】
液状エポキシ樹脂組成物は、さらに、(E)成分を含むと、密着性の観点から好ましい。(E)成分としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。市販品としては、信越化学工業製KBM403、KBE903、KBE9103等が挙げられる。
【0027】
(D)成分は、(A)成分:100質量部に対して、1〜30質量部であると好ましく、5〜30質量部であると、より好ましい。(D)成分が1質量部以上であると、液状エポキシ樹脂組成物の熱膨張を抑制することが可能であり、30質量部以下であると、液状エポキシ樹脂組成物の粘度上昇を抑制することが可能である。
【0028】
(E)成分は、(A)成分:100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.0質量部、より好ましくは0.1〜3.0質量部含有される。0.05質量部以上であると、密着性が向上し、PCT試験での耐湿信頼性がより良好になり、5.0質量部以下であると、液状樹脂組成物の発泡が抑制される。
【0029】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、レベリング剤、シリカフィラー、消泡剤、搖変剤、酸化防止剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
【0030】
液状エポキシ樹脂組成物は、温度:25℃での粘度が50〜2000mPa・sであると、注入性の観点から好ましい。ここで、粘度は、東機産業社製E型粘度計(型番:TVE−22H)で測定する。
【0031】
また、液状エポキシ樹脂組成物は、24時間後の粘度上昇率が、300%以下であると好ましく、48時間後の粘度上昇率が、600%以下であると好ましい。ここで、粘度上昇率は、液状エポキシ樹脂組成物を24時間、48時間室温で保管した後の粘度を測定し、(24または48時間後の粘度)/(初期粘度)を粘度上昇率(単位:%)とする。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、フリップチップボンディングを利用する半導体素子の封止剤に適しており、特に、チップオンフィルムパッケージ用封止剤として適している。
【0033】
〔液状エポキシ樹脂組成物の製造方法〕
本発明の液状エポキシ樹脂組成物の製造方法は、(C)成分を、アミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分の少なくとも一部に分散させ、マスタバッチとした後、マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合することを特徴とする。
【0034】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、ガラス転移温度を超えた温度領域において、アミノフェノール樹脂の弾性率が比較的早く上昇し、マイグレーションが起きやすいゴム弾性領域ではなくなることに、着眼してなされた。ここで、アミノフェノール型エポキシ樹脂とイミダゾール化合物を併用すると、アミノフェノール型エポキシ樹脂とイミダゾール化合物の反応性の高さから、粘度が早く増加し、注入性が悪化してしまうため、チップオンフィルム用等の封止剤には使用できない。
【0035】
このため、本発明では、イミダゾール成分を、予めアミノフェノール型エポキシ樹脂以外の液状エポキシ樹脂(例えば、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂や液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂)に分散させて、マスタバッチ(高濃度分散体)とした後、アミノフェノール型エポキシ樹脂を混合することで、アミノフェノール型エポキシ樹脂を使用する場合に生じる問題点を解決した。
【0036】
したがって、本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、(C)成分を、アミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分の少なくとも一部に分散させ、マスタバッチとした後、マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合することにより、製造することができる。
【0037】
ここで、マスタバッチを作製するとき、(C)成分と混合するアミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分は、(C)成分:100質量部に対して、10〜1000質量部であると好ましく、50〜500質量部であると、より好ましい。
【0038】
マスタバッチを作製するときには、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロールミル、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0039】
マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合するときに、混合する順序は、特に、限定されない。混合する方法は、マスタバッチを作製する場合と同様でよい。
【0040】
本発明の液状エポキシ樹脂組成物は、ディスペンサー、印刷等で基板の所望の位置に形成・塗布される。ここで、液状エポキシ樹脂組成物は、フレキシブル配線基板等の基板と半導体素子との間に、少なくとも一部が基板の配線上に接するように形成する。
【0041】
本発明の液状樹脂組成物の硬化は、80〜300℃で、30〜300秒間行うことが好ましく、特に200秒以内で硬化させると、チップオンフィルムパッケージ用封止剤として用いるときの生産性向上の観点から好ましい。
【0042】
なお、半導体素子、基板は、所望のものを使用することができるが、フリップチップボンディングの半導体素子とCOFパッケージ用基板の組合せが好ましい。
【0043】
このように、本発明の液状樹脂組成物は、液状半導体封止剤に非常に適しており、この液状半導体封止剤を用いて封止されたフリップチップ型半導体素子を有する半導体部品は、耐マイグレーション性、および耐リード腐食性に優れ、高信頼性である。
【実施例】
【0044】
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
【0045】
〔実施例1〜16、比較例1〜2、参考例1〜10〕
表1〜3に示す配合で、液状樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」という)を作製した。実施例1〜16、比較例1〜2、参考例1〜6では、まず、ビスフェノールF型エポキシ樹脂と(B)成分を混合して、マスタバッチとした後、他の成分を加えた。参考例7〜9では、まず、アミノフェノール型エポキシ樹脂と(B)成分を混合して、マスタバッチとした後、他の成分を加えた。参考例10〜12では、すべての成分を同時に加えた。作製した樹脂組成物は、比較例2以外は、液状であった。比較例2は、(B)成分が溶け残り、固形分が残った状態となり、均一な液状エポキシ樹脂組成物を作製することができなかった。
【0046】
〔粘度の評価〕
作製した直後(30分以内)の樹脂組成物の粘度(初期粘度、単位:mPa・s)を、東機産業社製E型粘度計(型番:TVE−22H)で測定した。表1、表2に、初期粘度の測定結果を示す。また、樹脂組成物を24時間、48時間室温で保管した後の粘度を測定し、(24または48時間後の粘度)/(初期粘度)を粘度上昇率(単位:%)とした。表1〜3に、結果を示す。
【0047】
〔ゲル化時間の評価〕
樹脂組成物のゲル化時間の評価は、以下のように行った。200±2℃の熱板上に、約3mmφの樹脂組成物をニードルで滴下し、樹脂組成物にニードルを適当に接触させながら、樹脂組成物が糸引きをしなくなるまでの時間を、ストップウォッチにより測定し、ゲル化時間とした。表1〜3に、ゲル化時間の評価結果を示す。
【0048】
〔吸水率の評価〕
作製した樹脂組成物を150℃、60分で硬化させた試料の初期重量をW(g)とし、PCT試験槽(121℃±2℃/湿度100%/2atmの槽)中に20時間置いた後、室温まで冷却して得た試験片の重量をW(g)とし、下記式で、吸水率(単位:%)を求めた。
吸水率=(W−W)/W × 100 (%)
表1〜3に、吸水率の評価結果を示す。
【0049】
〔曲げ弾性率の評価〕
離型剤を塗布したガラス板とガラス板との間に、作製した樹脂組成物を挟み、150℃、60分で350μmのシート状に硬化させ、万能試験機((株)島津製作所製 AG−I)を用いて室温での曲げ弾性率を求めた。なお、n=3で測定し、平均値を用いた。また、試験片の膜厚及び幅は、5点測定し、平均値を計算値に用いた。曲げ弾性率は、好ましくは、2.0〜4.2GPaである。表1〜3に、曲げ弾性率の評価結果を示す。
【0050】
〔抽出Clイオン量の評価〕
作製した樹脂組成物を150℃、60分で硬化させて得た試料を、5mm角程度に粉砕した。硬化塗膜:2.5gにイオン交換水25cmを加え、PCT試験槽(121℃±2℃/湿度100%/2atmの槽)中に20時間置いた後、室温まで冷却して得た抽出液を試験液とした。上記の手順で得られた抽出液のClイオン濃度を、イオンクロマトグラフを用いて測定した。表1〜3に、抽出Clイオン量の評価結果を示す。
【0051】
〔注入性の評価〕
図1に、樹脂組成物の注入性の評価方法を説明する模式図を示す。まず、図1(A)に示すように、基板20上に20μmのギャップ40を設けて、半導体素子の代わりにガラス板30を固定した試験片を作製した。但し、基板20としては、フレキシブル基板の代わりにガラス基板を使用した。次に、この試験片を110℃に設定したホットプレート上に置き、図1(B)に示すように、ガラス板30の一端側に、作製した樹脂組成物10を塗布し、図1(C)に示すように、ギャップ40が樹脂組成物11で満たされるまでの時間を測定し、90秒以下で満たされた場合を「良」とした。表1〜3に、注入性の評価結果を示す。
【0052】
〔耐マイグレーション性の評価〕
樹脂組成物の耐イオンマイグレーション性を評価するため、高温高湿バイアス試験(THB試験)を実施した。試験方法は、以下のとおりである。スズメッキ(0.2±0.05μm)された銅配線(パターン幅10μm、線間幅15μm、パターンピッチ25μm)を持つポリイミドテープ基材上に、作製した樹脂組成物を20μm厚みで塗布し、150℃で30分間処理し、封止剤を硬化させて試験片を作製した。この試験片についてイオンマイグレーション評価システム(エスペック社製)を用いて、110℃/湿度85%の条件下で、DC60Vの電圧を印加したときの抵抗値の変化を測定、抵抗値が1.00×10Ωを下回った時点を閾値として、銅配線のマイグレーションを評価した(単位:時間)。抵抗値が閾値を下回らなかったものについては、100時間を越えた時点で試験終了とした。表1〜3に、耐マイグレーション性の評価結果を示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表1〜3からわかるように、実施例1〜16の全てで、粘度上昇率が低く、注入性が良好で、耐マイグレーション性が優れており、曲げ弾性率が所望値であった。これに対して、アミノフェノール型エポキシ樹脂の含有量が少ない比較例1は、耐マイグレーション性が良くなかった。また、(B)成分が、(A)成分:1当量に対して、0.5当量の比率である参考例1〜3は、耐マイグレーション性が良くなく、1.2当量の比率である参考例4〜6も耐マイグレーション性が良くなかった。さらに、参考例1〜3は、原料の(A)成分に由来すると考えられる抽出Clイオン量が多く、室温放置で粘度上昇が見られた。また、アミノフェノール型エポキシ樹脂でマスタバッチを作製した参考例7は、(C)成分が、(A)成分:100質量部に対して、0.13質量部と少ないにもかかわらず、粘度上昇率が高かった。(C)成分を多く含有する参考例8、9では、初期粘度が非常に高く、ゲル化時間が短く、注入性が悪く、粘度上昇率が高かった。配合量が同じである実施例4と参考例8を比較すると、参考例8では、初期粘度が、実施例4の約2.1倍であった。マスタバッチを作製しなかった参考例10〜12は、初期粘度が著しく高く、ゲル化時間が短く、注入性が悪く、粘度上昇率が高かった。配合量が同じである実施例4と参考例121を比較すると、参考例12では、初期粘度が、実施例4の約3.6倍であった。特に、(C)成分の含有量が12.9質量部の参考例12は、初期粘度が著しく高かった。ここで、粘度上昇率が高い場合は保存安定性が悪くなる。また、エポキシ樹脂組成物を、チップオンフィルムパッケージ用封止剤と使用した場合、可使時間が短くなり、使用上の問題となる。更に、注入性が悪い場合は、注入性での問題に加えて、ボイドを巻き込む可能性が高くなり、使用上の問題となる。
【0057】
上記のように、本発明の液状樹脂組成物は、液状樹脂組成物の保存時の増粘を抑制し、かつ硬化後の液状樹脂組成物のマイグレーションを防止でき、特に、フリップチップ型半導体素子を含む半導体部品に適している。
【符号の説明】
【0058】
10、11 液状樹脂組成物
20 基板
30 ガラス板
40 ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アミノフェノール型エポキシ樹脂を含有する液状エポキシ樹脂、(B)酸無水物硬化剤、および(C)イミダゾール化合物を含有し、(A)成分が、エポキシ樹脂:100重量部に対して、アミノフェノール型エポキシ樹脂を5〜90重量部を含有することを特徴とする、液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分に含有されるアミノフェノール型エポキシ樹脂が、式(1):
【化4】

で表される、請求項1記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(D)エラストマーを含有する、請求項1または2記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、(E)シランカップリング剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、(A)成分:1当量に対して、0.6〜1.2当量の比率である、請求項1〜4のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分が、(A)成分:100質量部に対して、0.1〜5質量部である、請求項1〜5のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
(D)成分が、(A)成分:100質量部に対して、5〜30質量部である、請求項3〜6のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
24時間後の粘度上昇率が、300%以下である、請求項1〜7のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
(C)成分を、アミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分の少なくとも一部に分散させ、マスタバッチとした後、マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合することにより得られる、請求項1〜8のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物を含む、チップオンフィルムパッケージ用封止剤。
【請求項11】
請求項10記載の液状半導体封止剤を用いて封止された、半導体装置。
【請求項12】
(C)成分を、アミノフェノール型エポキシ樹脂を除く(A)成分の少なくとも一部に分散させ、マスタバッチとした後、マスタバッチに、アミノフェノール型エポキシ樹脂を含む(A)成分の残部と(B)成分を混合することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項記載の液状エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−193284(P2012−193284A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58477(P2011−58477)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】