説明

液状樹脂組成物および半導体装置

【課題】フリップチップ方式の半導体装置においてフィラー高充填化が可能で、高い信頼性を有し、狭ギャップへの充填性に優れる液状樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、及び(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を含むことを特徴とする液状樹脂組成物で、好ましくは、化合物(D)はナフタレン環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物であり、化合物(D)の含有量が、液状樹脂組成物全体に対して、0.005重量%以上0.3重量%以下である液状樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状樹脂組成物および半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリップチップ方式の半導体装置では半導体素子と基板とを半田バンプで電気的に接続している。このフリップチップ方式の半導体装置は、接続信頼性を向上するために半導体素子と基板との間にアンダーフィル材と呼ばれる液状樹脂組成物を充填して半田バンプの周辺を補強している。このようなアンダーフィル充填型のフリップチップパッケージにおいては、近年のLow−Kチップの採用や半田バンプの鉛フリー化に伴い、熱応力によるLow−K層の破壊や半田バンプのクラックを防ぐためにアンダーフィル材にはより一層の低熱膨張化が求められる。
アンダーフィル材を低熱膨張化するにはフィラーの高充填化が必須であるが、フィラーの充填率の上昇に伴って粘度も増加し、半導体素子と基板の間隙へのアンダーフィル材の充填性が低下し、生産性が著しく悪くなるという問題がある。
例えば大粒径のフィラーを適用すれば高充填化に伴う粘度上昇は抑えられるが、フィラーの沈降や狭ギャップでのフィラー詰まりによる充填性の低下が問題となる。またこれまでフィラー充填率の上昇に伴う充填性の低下を解決するための多くの手法が提案されたが(例えば、特許文献1、2参照)、いずれも問題を解決するには不十分であり、狭ギャップ充填性を損なうことなくフィラー高充填化可能な画期的な手法が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119929号公報
【特許文献2】特開2003−137529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、フリップチップ方式の半導体装置においてフィラー高充填化が可能で、高い信頼性を有し、狭ギャップへの充填性に優れる液状樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記[1]〜[7]に記載の本発明により達成される。
[1](A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、及び(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を含むことを特徴とする液状樹脂組成物。
[2]前記化合物(D)は芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物である[1]項に記載の液状樹脂組成物。
[3]前記化合物(D)は、ナフタレン環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物である[1]項に記載の液状樹脂組成物。
[4]前記化合物(D)は、ナフタレン環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物である[3]項に記載の液状樹脂組成物。
[5]前記化合物(D)の含有量が、液状樹脂組成物全体に対して、0.005重量%以上0.3重量%以下である[1]〜[4]項のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
[6]前記フィラー(C)の最大粒子径が25μm以下、かつ平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である[1]〜[5]項のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
[7][1]〜[6]項のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物を用いて、半導体素子と基板を封止して作製されたことを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、フリップチップ実装方式の半導体装置においてフィラー高充填化が可能で、高い信頼性を有し、狭ギャップへの充填性に優れる液状樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の液状樹脂組成物および半導体装置について説明する。
本発明は、フリップチップ方式の半導体装置において半導体素子と基板との間を封止するために用いる液状樹脂組成物に関するものであって、(A)エポキシ樹脂と、(B)アミン硬化剤と、(C)フィラーと、(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を含むことを特徴とする。
なお、下記は例示であり、本発明は何ら下記に限定されるものではない。以下に本発明の液状樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0008】
本発明で用いる(A)エポキシ樹脂は、一分子中にエポキシ基を2個以上有するものであれば特に分子量や構造は限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジルトルイジン、ジアミノジフェニルメタン型グリシジルアミン、アミノフェノール型グリシジルアミンなどの芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールプロパン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレンおよび/またはビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンオキシド、アリサイクリックジエポキシ−アジペイドなどの脂環式エポキシなどの脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
【0009】
さらに本発明の場合、芳香族環にグリシジル構造またはグリシジルアミン構造が結合した構造を含むエポキシ樹脂が耐熱性、機械特性、耐湿性が高くなる点からより好ましく、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂は信頼性、特に接着性が低くなる点から使用する量を制限するほうがさらに好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用しても良い。
【0010】
本発明の液状樹脂組成物は、室温で液状であるので、(A)エポキシ樹脂として、1種の(A)エポキシ樹脂のみを含む場合は、その1種の(A)エポキシ樹脂は、室温で液状であり、また、2種以上の(A)エポキシ樹脂を含む場合は、それら2種以上の(A)エポキシ樹脂全部の混合物が、室温で液状である。そのため、(A)エポキシ樹脂が、2種以上の(A)エポキシ樹脂の組合せの場合、(A)エポキシ樹脂は、全てが室温で液状のエポキシ樹脂の組合せであってもよく、あるいは、一部が室温で固形のエポキシ樹脂あっても他の室温で液状のエポキシ樹脂と混合することにより、混合物が室温で液状となるのであれば、室温で液状のエポキシ樹脂と室温で固形のエポキシ樹脂との組合せであってもよい。なお、(A)エポキシ樹脂が、2種以上のエポキシ樹脂が組合せの場合、必ずしも、使用する全てのエポキシ樹脂を混合してから、他の成分と混合して、液状樹脂組成物を製造する必要はなく、使用するエポキシ樹脂を別々に混合して、液状樹脂組成物を製造してもよい。本発明で、(A)エポキシ樹脂が、室温で液状であるとは、エポキシ樹脂成分(A)として使用する全てのエポキシ樹脂を混合した場合に、その混合物が室温で液状になるということである。
本発明において、室温で液状であるが、室温とは25℃を指し、また、液状とは樹脂組成物が流動性を有していることを指す。
【0011】
前記(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、本発明の液状樹脂組成物全体の5〜30重量%が好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、反応性や組成物の耐熱性や機械的強度、封止時の流動特性に優れる。
【0012】
本発明に用いる(B)アミン硬化剤とは、エポキシ樹脂を硬化し得るものであれば特に構造は限定されない。前記アミン硬化剤としては、例えばジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m−キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン脂肪族ポリアミン、イソフォロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ポリアミン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジンなどのピペラジン型のポリアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4−アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド−ジ−P−アミノベンゾエートなどの芳香族ポリアミン類などが挙げられる。
これらのアミン硬化剤は、1種単独で用いても、2種以上の組合せでも良く、さらに半導体装置の封止用途を考慮すると、耐熱性、電気的特性、機械的特性、密着性、耐湿性が高くなる点から芳香族ポリアミン型硬化剤が一層好ましい。さらに本発明の液状樹脂組成物がアンダーフィルとして用いられることを踏まえると、室温(25℃)で液状を呈するものがより好ましい。
【0013】
前記(B)アミン硬化剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の液状樹脂組成物全体の5〜30重量%が好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、反応性や組成物の機械的特性や耐熱性などに優れる。
前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量に対する前記(B)アミン硬化剤の活性水素当量の比は0.6〜1.4が好ましく、特に0.7〜1.3が好ましい。前記アミン樹脂硬化剤の活性水素当量が前記範囲内であると、反応性や樹脂組成物の耐熱性が特に向上する。
【0014】
本発明で用いる(C)フィラーは、破壊靭性などの機械的強度、熱時寸法安定性、耐湿性を向上することから、液状樹脂組成物が(C)フィラーを含有することにより、半導体装置の信頼性を特に向上することができる。
前記(C)フィラーとしては、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラスなどのケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、合成シリカ、結晶シリカなどのシリカ粉末などの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイトなどの炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムなどの硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素などの窒化物などを用いることができる。
これらの(C)フィラーは、1種単独でも2種以上の組合せでも良い。これらの中でも樹脂組成物の耐熱性、耐湿性、強度などを向上できることから溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ粉末が好ましい。前記(C)フィラーの形状は、特に限定されないが、粘度・流動特性の観点から形状は球状であることが好ましい。
【0015】
前記(C)フィラー最大粒子径および平均粒子径は特に限定されないが、最大粒子径が25μm以下、かつ平均粒子径が0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。前記最大粒子径を前記上限値以下とすることにより液状樹脂組成物が半導体装置へ流動する際のフィラー詰まりによる部分的な未充填や充填不良を抑制する効果が高くなる。また前記平均粒子径を前記下限値以上にすることにより、液状樹脂組成物の粘度が適度に低下し、充填性が向上する。
フィラー(C)の平均粒径を測定する方法としては、例えばレーザー回折光散乱法によって求めた粒度分布から算術計算によって得られた数値などを用いることができる。また最大粒径を測定する方法は、前述のような粒度分布計測によって得られた累積分布において累積値99%に達する粒径値、あるいは湿式篩法によって所定サイズの目開きの篩いで篩った際の篩い上残渣の割合が0.1%以下となる粒径値などを用いることができるが、後者のほうが実質的に過大な粒径の無機充填材を含まないので、詰まり防止の観点からいっそう好ましい。
本願の実施例では、平均粒径はレーザー回折光散乱法によって測定し、最大粒径は湿式篩法によって測定した。
前記(C)フィラーの含有量は、本発明の液状樹脂組成物全体の30重量%以上80重量%以下であり、50重量%以上80重量%以下が好ましい。含有量が前記下限値以上であることにより半導体装置の信頼性を向上させる効果が高くなり、前記上限値以下であることにより狭ギャップへの充填性と信頼性のバランスに優れる。
【0016】
本発明に用いる芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物(D)は(B)アミン硬化剤とともにこれを用いることによりフィラーの分散性を向上させ、液状樹脂組成物の狭ギャップの充填性が向上し、特にフィラーを高充填した場合でも良好な充填性が得られる。化合物(D)としては、下記一般式(1)で表される単環式化合物又は下記一般式(2)で表される多環式化合物等を用いることができ、これらの化合部は水酸基以外の置換基を有していても良い。
【0017】
【化1】

(ただし、上記一般式(1)において、R1、R5のどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R3、R4、及びR5は水素、水酸基、または水酸基以外の置換基である。)
【0018】
【化2】

(ただし、上記一般式(2)おいて、R6、R12のどちらか一方が水酸基であり、片方が水酸基のとき他方は水素、水酸基又は水酸基以外の置換基である。R7、R8、R9、R10、及びR11は水素、水酸基、または水酸基以外の置換基である。)
【0019】
前記一般式(1)で表される単環式化合物の具体例として、例えば、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子三エステルまたはこれらの誘導体が挙げられる。また、前記一般式(2)で表される多環式化合物の具体例として、例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのうち、狭ギャップへの充填性と反応性の制御のしやすさから、芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物が好ましい。また、狭ギャップへの充填工程での揮発を考慮した場合、母核は低揮発性で秤量安定性の高いナフタレン環である化合物とすることがより好ましい。この場合、化合物(D)を、具体的には例えば、1,2−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン及びその誘導体等のナフタレン環を有する化合物とすることができる。これらの化合物(D)は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記化合物(D)の含有量は特に限定されないが、本発明の液状樹脂組成物全体の0.005重量%以上0.3重量%以下が好ましく、0.01重量%以上0.2重量%以下が特に好ましく、0.02重量%以上0.1重量%以下が更に好ましい。含有量が前記下限値未満では、フィラーの分散性向上が不十分となり、狭ギャップ充填性が低下する。また含有量が前記上限値を超えると、液状樹脂組成物の増粘を招き、充填性が低下する。
【0021】
本発明の液状樹脂組成物には、前記(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤などの上述した各成分以外に、必要に応じて希釈剤、顔料、難燃剤、レベリング剤、消泡剤などの添加剤を用いることができる。
【0022】
本発明の液状樹脂組成物は、上述した各成分、添加剤などをプラネタリーミキサー、三本ロール、二本熱ロール、ライカイ機などの装置を用いて分散混練したのち、真空下で脱泡処理して製造することができる。
【0023】
本発明の半導体装置は、本発明の液状樹脂組成物を用いて製造される。
具体的にはフリップチップ型半導体装置が挙げられる。このフリップチップ型半導体装置に関しては、半田電極が具備された半導体素子を基板に接続し、該半導体素子と該基板の間隙を封止する。この場合一般的に基板側の半田電極が接合する部位以外の領域は半田が流れないようにソルダーレジストが形成されている。
次に、半導体素子と基板との間隙に本発明の液状樹脂組成物を充填する。充填する方法としては、毛細管現象を利用する方法が一般的である。具体的には、半導体素子の一辺に本発明の液状樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の2辺に前記液状樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法、半導体素子の中央部にスルーホールを開けておき、半導体素子の周囲に本発明の液状樹脂組成物を塗布した後、半導体素子と基板との間隙に毛細管現象で流し込む方法などが挙げられる。また、一度に全量を塗布するのではなく、2度に分けて塗布する方法なども行われる。また、ポッテッィング、印刷などの方法を用いることもできる
次に、充填した本発明の液状樹脂組成物を硬化させる。硬化条件は、特に限定されないが、例えば100℃〜170℃の温度範囲で1〜12時間加熱を行うことにより硬化できる。さらに、例えば100℃で1時間加熱した後、引き続き150℃で2時間加熱するような、段階的に温度を変化させながら加熱硬化を行っても良い。
このようにして、半導体素子と基板との間が、本発明の液状樹脂組成物の硬化物で封止されている半導体装置を得ることができる。
このような半導体装置には、フリップチップ方式の半導体装置、キャビティーダウン型BGA(Ball Grid Array)、POP(Package on Package)型BGA(Ball Grid Array)、TAB(Tape Automated Bonding)型BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Scale Package)などが挙げられる。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.5重量%と、(B)アミン硬化剤として(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3、最大粒子径が24μm以下、かつ平均粒子径が1μm)70重量%と、(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物として(2,3-ジヒドロキシナフタレン)0.1重量%を3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0025】
(実施例2)
2,3−ジヒドロキシナフタレンの含有量を減らし、全体の含有量を以下のようにした以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.5重量%と、(B)アミン硬化剤として(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3)69.994重量%と、(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物として(2,3-ジヒドロキシナフタレン)0.006重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0026】
(実施例3)
2,3−ジヒドロキシナフタレンの含有量を増やし、全体の含有量を以下のようにした以外は、実施例1と同様に樹脂組成物を作製した
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.35重量%と、(B)アミン硬化剤として(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3)70重量%と、(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物として(2,3-ジヒドロキシナフタレン)0.25重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0027】
(実施例4)
2,3−ジヒドロキシナフタレンの代わりに、1,2−ジヒドロキシナフタレンを用いた以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。
【0028】
(実施例5)
2,3−ジヒドロキシナフタレンの代わりに、ピロガロールを用いた以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作成した
【0029】
(比較例1)
(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を用いず、全体の含有量を以下のようにした以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.5重量%と、(B)アミン硬化剤として(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.5重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3)70重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0030】
(比較例2)
(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を用いず、全体の含有量を以下のようにした以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.5重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3)70重量%、1,4−ジヒドロキシナフタレン0.1重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0031】
(比較例3)
(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を用いず、全体の含有量を以下のようにした以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)21.5重量%と、(B)エポキシ樹脂硬化剤として、アミン硬化剤(日本化薬(株)製 カヤハードAA)8.4重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3)70重量%、1,5−ジヒドロキシナフタレン0.1重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0032】
(比較例4)
(B)アミン硬化剤を用いず、全体の含有量を以下のようにした以外は、実施例1と同様に液状樹脂組成物を作製した。
(A)エポキシ樹脂として(DIC(株)製 EXA−830LVP)16.5重量%と、フェノール硬化剤として(明和化成(株)製 MEH−8000H)14.5重量%と、(C)フィラーとして((株)アドマテックス製、アドマファインSO−E3)68重量%、(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物として(2,3-ジヒドロキシナフタレン)0.1重量%、硬化触媒として(四国化成工業(株)製 キュアゾール(商標)2P4MZ)0.9重量%とを3本ロールにて混練分散した後、真空脱泡して液状樹脂組成物を得た。
【0033】
[評価項目]
得られた液状樹脂組成物について、以下の評価を行った。
1.充填性
18mm×18mmのガラス板(上)とガラス板(下)とを70±10μmの間隔が空くように張り合わせて、隙間のある平行平面を持つガラスセルを作製した。このガラスセルをホットプレートの上に置き、ガラス板(上)の上面温度が110±1℃になるよう温度調整しながら5分間静置した。その後、ガラスセルの一辺に、液状樹脂組成物を適量塗布し、18mm流れきる時間(流動時間)を測定した。各符号は、以下の通りである。
◎:流動時間が、100s以上、150s未満であったもの。
○:流動時間が、150s以上、250s未満であったもの。
△:流動時間が、250s以上、300s未満であったもの。
×:流動時間が、300s以上であったもの。
【0034】
2.半導体装置の評価
実施例1〜5および比較例1〜4で得られた液状樹脂組成物を半田バンプで接合された回路基板と半導体チップとの隙間に流動、封止し半導体装置を作製し、樹脂充填試験、リフロー試験、温度サイクル試験を実施した。試験、評価に使用した半導体装置の構成部材は以下のとおりである。
半導体チップとしては、日立超LSI社製PHASE−2TEGウエハーに半導体チップの回路保護膜としてポリイミドを用い、半田バンプとしてSn/Ag/Cu組成の無鉛半田を形成したものを15mm×15mm×0.8mmtに切断し使用した。
回路基板には、住友ベークライト(株)製FR5相当の0.8mmtのガラスエポキシ基板をベースとして用い、その両面に太陽インキ製造(株)製ソルダーレジストPSR4000/AUS308を形成し、片面に上記の半田バンプ配列に相当する金メッキパッドを形成したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。
接続用のフラックスにはTSF−6502(Kester製、ロジン系フラックス)を使用した。
半導体装置の組立は、まず充分平滑な金属またはガラス板にドクターブレードを用いてフラックスを50μm厚程度に均一塗布し、次にフリップチップボンダーを用いてフラックス膜に半田バンプが搭載された半導体チップの半田バンプ搭載面側を軽く接触させたのちに離し、半田バンプにフラックスを転写させ、次に半導体チップを回路基板上に圧着させた。次に、IRリフロー炉で加熱処理し半田バンプを溶融接合して作製した。溶融接合後に洗浄液を用いて洗浄を実施した。液状樹脂組成物の充填、封止方法は、作製した半導体装置を110℃の熱板上で加熱し、半導体チップの一辺に調製した液状樹脂組成物を塗布し隙間充填させた後、150℃のオーブンで120分間液状樹脂組成物を加熱硬化し、評価試験用の半導体装置を得た。
【0035】
2.1 充填試験
液状樹脂組成物の充填試験としては、作製した半導体装置の硬化終了後、超音波探傷装置を用いて充填性を確認した。
良好 :隙間を液状樹脂組成物が完全に充填しているもの
未充填:隙間を液状樹脂組成物が完全に充填できなかったもの
2.2 リフロー試験
リフロー試験の試験方法としては、上記の半導体装置をJEDECレベル3の吸湿処理(30℃相対湿度60%で168時間処理)を行った後、IRリフロー処理(ピーク温度260℃)を3回行い、超音波探傷装置にて半導体装置内部での液状樹脂組成物の剥離の有無を確認し、さらに光学顕微鏡を用いて半導体チップ側面部の液状樹脂組成物表面を観察し亀裂の有無を観測した。
2.3 温度サイクル試験
温度サイクル試験としては、上記のリフロー試験を行った半導体装置に(−55℃/30分)と(125℃/30分)の冷熱サイクル処理を施し、250サイクル毎に超音波探傷装置にて半導体装置内部の半導体チップと液状樹脂組成物界面の剥離の有無を確認し、さらに光学顕微鏡を用いてチップ側面部の液状樹脂組成物表面を観察し、亀裂の有無を観測した。上記温度サイクル試験は最終的に1000サイクルまで実施した。
【0036】
以上の結果を表1に詳細にまとめた。
比較例1〜4は、作製した半導体装置の充填性に問題があったため、リフロー試験と温度サイクル試験は実施しなかった。
実施例1〜5の半導体装置は、問題なく作動した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)アミン硬化剤、(C)フィラー、及び(D)芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物を含むことを特徴とする液状樹脂組成物。
【請求項2】
前記化合物(D)は芳香環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物である請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項3】
前記化合物(D)は、ナフタレン環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物である請求項1に記載の液状樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物(D)は、ナフタレン環を構成する2個の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物である請求項3に記載の液状樹脂組成物。
【請求項5】
前記化合物(D)の含有量が、液状樹脂組成物全体に対して、0.005重量%以上0.3重量%以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項6】
前記フィラー(C)の最大粒子径が25μm以下、かつ平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液状樹脂組成物を用いて、半導体素子と基板を封止して作製されたことを特徴とする半導体装置。

【公開番号】特開2011−236355(P2011−236355A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109929(P2010−109929)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】