説明

測位装置による移動状況の検出装置

【課題】 本発明はGPS機能を有する携帯機器に関し、特に測位装置のみによって携帯機器を所持する者の移動状況を判断し、対応する適切なサービスを自動的に提供することができる測位装置による移動状況の検出装置である。
【解決手段】 本発明は測位装置2によって測定した情報を速度・角速度算出装置3によって計算し、予め設定された速度・角速度・モード対応テーブル5を参照し、上記計算結果に対応する移動モードを選択し、サービス提供装置A〜Cが供給するサービスの中の最適なサービスを自動的に選択する構成であり、加速度センサ等の他のセンサを使用することなく、測位装置のみによって自動的に移動手段を知ることができる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測位装置のみを用い、測位装置を内蔵する携帯機器を所持する者の移動状況を検出する移動状況検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、GPS(global positioning system)を利用したカーナビゲーションや、インターネットを利用して地図情報を取得し、歩行ナビを行う歩行ナビゲーションシステム等の地図情報を利用した各種システムが提案されている。例えば、特許文献1にはGPSによる位置測定や、基地局による位置測定、更に電波マーカによる位置測定が可能な携帯機器を使用し、複数の位置測定手段によってどのような場所においても携帯機器を保持する者の所在地を知ることができる携帯機器が提案されている。
【特許文献1】特開2004−272276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の装置では、携帯機器を所持する者の位置は測定できるが、携帯機器を所持する者が歩行しているか、電車に乗っているか、自動車に乗っているかを判別することはできない。
【0004】
また、複数の測定装置によって移動状況の検出を行うシステムも提案されているが、GPS測位装置のみで利用者の移動状況を知ることができる装置は存在しない。さらに、判別した利用者の移動状況に基づいて、自動的に適切なサービスを提供するシステムも提案されていない。
【0005】
そこで、本発明はGPSを搭載した携帯機器において、測位装置のみによって携帯機器を所持する者の移動状況を判別し、対応する適切なサービスを自動的に提供することができる測位装置による移動状況の検出装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は本発明によれば、携帯機器に内蔵され、携帯機器の位置を測定する測位手段と、該測位手段が測定する位置情報に基づいて、前記携帯機器を所持する者の移動速度と、角速度を算出する演算手段と、該演算結果に基づいて、速度・角速度・モード対応テーブルを参照し、対応するモードを選択する選択手段と、該選択結果に基づいて、前記モードに対応するサービスに自動切り替えを行う切替手段とを有する測位装置による移動状況の検出装置を提供することによって達成できる。
【0007】
このように構成することにより、例えば加速度計等の他のセンサを使用することなく、測位手段のみにより移動速度と角速度を算出し、携帯電話機等の携帯機器を所持する者の移動状況を判断し、対応する適切なサービスを自動的に提供することができる。
【0008】
また、前記モードに基づいて、前記携帯機器を所持する者の現在の交通手段を推定する構成である。このように構成することにより、これまで利用者が携帯機器に対して直接又は間接的に現在の交通手段の情報を入力していたが、この処理を自動的に行うことができ、利用者に交通手段等の情報を入力させる煩雑な操作が不要となる。
【0009】
したがって、例えば自動車での移動中であると判断する時、例えば経路ナビゲーション情報を自動的に選択し、鉄道での移動中であると判断する時、時刻表情報を自動的に選択するという適切な情報選択を行うことができる。
【0010】
さらに、前記端末装置が推定した交通手段の情報を前記位置情報と共に情報センタに送信し、該内容に応じて前記情報センタが情報を生成するために実行する処理を自動的に切り替える機能を有する。このように構成することにより、利用者に提供する情報を端末で自動的に切り替えて選択するだけでなく、例えばセンタ側で対応するサービスに切り替えることができ、供給する情報の品質を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記課題は本発明によれば、携帯機器に設けられた測位手段の計測情報のみによって携帯機器を所持する者の移動状況を判断し、対応する適切なサービスを自動的に選択することができる。
【0012】
また、上記判断を自動的に行い、適切なサービスへの切り替えを自動的に行うので、利用者に交通手段を入力させる操作を不要にすることができる。
さらに、利用者に提供する情報を端末で自動的に切り替えて選択するだけでなく、例えばセンタ側で位置情報を照合する対象の電子地図を交通手段によって切り替えるなどの処理を行うことができ、供給する情報の品質を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態で使用する携帯機器1の内部構成を示す図であり、特に測位装置及び移動状況の検出装置の構成を示す。
【0014】
同図に示すように、本例の構成は、測位装置2、速度・角速度算出装置3、テーブル参照装置4、速度・角速度・モード対応テーブル5、切り換え装置6、表示装置7で構成されている。また、切り換え装置6を介してサービス提供装置A〜Cより対応するサービスが提供される。また、切り換え装置6は後述するモード、及び位置情報に基づいて上記サービスを切り換える。
【0015】
測位装置2は、当該装置2が内蔵された携帯機器1の存在位置の位置情報を測定し、出力する。すなわち、測位装置2が内蔵された携帯機器1の現在位置を経度(X)と緯度(Y)のデータとして検出し、速度・角速度算出装置3に出力する。
【0016】
速度・角速度算出装置3は、上記位置情報(X,Y)から、携帯機器1の移動速度と角速度を算出する。したがって、携帯機器1を所持する者が歩行していれば歩行速度と角速度が算出され、携帯機器1を所持する者が自動車を運転していれば自動車の移動速度と角速度が算出され、携帯機器1を所持する者が電車に乗っていれば電車の移動速度と角速度が算出される。
【0017】
図2は本例を説明する図であり、(a)は移動速度が速い場合の例を示し、(b)は移動速度が遅い場合の例を示す。尚、速度のデータについては計測の時間間隔(データの取得間隔)が一定であれば、速度の移動距離は正比例し、例えば同図(a)の場合も、同図(b)の場合も図3に示す計算式(1)によって測定できる。
【0018】
一方、角速度については、GPSの測位誤差の期待値が何れの位置においても一定とみなされることから、見かけの角速度へのGPS誤差の影響は移動速度に反比例する。以下、具体的に説明する。
【0019】
移動速度が速い場合、1回の測定間隔△Tに携帯機器1を所持する者が移動する距離は長く、例えば同図(a)に示す位置I(Xi−2、Yi−2)、位置II(Xi−1、Yi−1)、位置III(Xi、Yi)の各間隔は広い。この時、各位置I、II、IIIにおける真の位置に対するGPSの測位誤差半径の期待値は一定であり、同図(a)の各位置を中心にした点線の円で示す範囲である。したがって、次の位置に対する見かけの相対角度(ω△T)は、見かけの角速度(ω)×測定時間間隔(△T)であり、GPSの測位誤差の相対角度への影響は小さい。
【0020】
一方、移動速度が遅い場合、1回の測定間隔で携帯機器1を所持する者が移動する距離は短く、例えば同図(b)に示す位置I〜IIIの各間隔は短い。また、移動速度が遅い場合でも各位置におけるGPS測位誤差半径の期待値は一定であり、従って見かけの相対角度(ω△T)は大きくなり、GPSの測位誤差の相対角度への影響は大きくなる。
【0021】
本例では角速度の上記特徴を利用し、速度及び角速度のデータを取得し、速度及び角速度の関係と利用者の移動モードの関係を対応させるテーブルを作成したものである。さらに、上記テーブルを基に前述の速度・角速度・モード対応テーブル5をシステム内に構築し、実際に得られた携帯機器1の所持者の移動モードを判別し、自動的に移動モードを取得して対応するサービス提供装置(A〜C)の情報を選択するものである。
【0022】
このように構成することにより、加速度センサ等の他の検知手段を必要とすることなく、本例の測位装置2のみによって携帯機器1の所持者の移動モードを判断し、対応するサービスを自動的に取得する移動状況の検出装置を提供することができるものである。
【0023】
テーブル参照装置4は、速度・角速度・モード対応テーブル5を参照し、上記計算結果から得られたデータに基づいてモードの判別を行う。すなわち、テーブル参照装置4は、計算結果である速度と角速度のデータに基づいて速度・角速度・モード対応テーブル5を参照し、歩行モードであるか、自動車モードであるか、又は電車モードであるかを判別する。
【0024】
切り替え装置6は、テーブル参照装置4で判別したモードに従って提供されるサービスを切り替える。例えば、複数のサービス提供装置(A,B,C)から提供されるサービスを選択して端末装置7に出力する。
【0025】
図4は上記速度・角速度・モード対応テーブル5の例を示す図である。例えば、「歩行モード」の場合、速度Vの最小値が0であり、最大値がVaであるデータがテーブルに登録されている。また、角速度Wの最小値が0であり、最大値がWaであるデータがテーブルに登録されている。したがって、前述の計算結果が上記範囲にある場合、「歩行モード」と判別される。
【0026】
一方、「自動車モード」の場合、速度Vの最小値がVbであり、最大値がVcである。また、角速度Wの最小値が0であり、最大値がWcである。したがって、前述の計算結果が上記の範囲である場合、「自動車モード」であると判別される。
【0027】
さらに、「電車モード」の場合、速度Vの最小値がVdであり、最大値がVeである。また、角速度Wの最小値が0であり、最大値がWeである。したがって、前述の計算結果が上記の範囲である場合、「電車モード」であると判別される。
【0028】
尚、上記速度・角速度・モード対応テーブル5を模式的に示す図が、図5である。同図の横軸は速度を示し、縦軸は角速度を示す。そして、同図に示すエリア1の領域が前述の「歩行モード」に対応し、エリア2の領域が「自動車モード」に対応し、エリア3の領域が「電車モード」に対応する。尚、同図では、モード毎にエリアが整然と分かれて示されているが、各モードのエリアが一部で重なることもあり、1つのモードについて複数のエリアを用意する構成としてもよい。
【0029】
また、図6は上記速度と角速度の領域分布の設定を行う際のデータ例であり、徒歩の場合、自動車(車)の場合、電車の場合の各場合について取得したデータ例を示す。
したがって、上記データに基づいて作成された速度・角速度・モード対応テーブル5を参照し、実際の測定結果と比較することによって、自動的に携帯機器1を所有する者の移動手段を知ることができる。さらに、この情報を使用して、前述のように切り換え装置6を切り替え、サービス提供装置(A,B,C)の中から最も適切なサービスを選択するものである。
【0030】
例えば、「歩行モード」であれば、サービス提供装置Aから送信される利用者の現在位置近傍のショッピング情報を取得する。一方、「自動車モード」であれば、サービス提供装置Bが提供する経路ナビゲーション情報を取得する。さらに、「電車モード」であれば、サービス提供装置Cが提供する時刻表情報を取得する。以上のように、本例によれば自動的に携帯機器1を所持する利用者の移動モードを取得し、適切な情報を選択することができる。
【0031】
また、上記例では切り換え装置6によってサービス提供者からの情報の選択処理を行い、利用者の移動手段に対応した適切な情報を取得する構成としたが、更にインターネット等のネットワークを介して、センタサーバに前述のモード情報を送り、利用者の位置情報とモード情報に基づいて提供する情報を切り替える処理を行わせる構成としてもよい。
【0032】
例えば、対象の電子地図を交通手段によって切り替え、「自動車モード」である場合、高速道路や一般道路の渋滞情報を含む電子地図の供給を行う。また、「電車モード」である場合、私鉄や地下鉄、更にバス等の交通機関を含む電子地図を供給する。このように構成することにより、更に供給する情報の品質を高めることができる。
【0033】
以上のように、本例によれば、測位装置2の測定結果のみのデータに基づい発明を実現することができる。
尚、上記実施形態の説明において、携帯機器1は携帯電話機に限らず、PDA(personal digital assistants)や電子手帳等であって、測位機能と通信機能を有する携帯機器であれば同様に適用することができる。
【0034】
また、上記構成において、携帯機器1は前述の測位装置2、速度・角速度算出装置3、表参照装置4、速度・角速度・モード対応テーブル5、及び切り換え装置6を含む構成としたが、一部の機能をネットワークを介して接続されたセンタサーバに行わせる構成としてもよい。
【0035】
例えば、切り換え装置6の機能をセンタサーバ側に持たせ、モード情報をセンタサーバに送信することによって、直接対応するサービス提供装置の情報を取得する構成としてもよい。また、例えば表参照装置4及び速度・角速度・モード対応テーブル5の機能もセンタサーバ側に持たせ、速度・角速度算出装置3の計算結果をセンタサーバに送信することによって、直接対応するサービス提供装置の情報を取得する構成としてもよい。さらに、速度・角速度算出装置3の機能もセンタサーバ側に持たせ、携帯機器には測位装置2と端末装置とを備え、測位装置2の測定結果をセンタサーバに送信することによって、直接対応するサービス提供装置の情報を取得する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態で使用する携帯機器の内部構成を示す図であり、特に測位装置を含む移動状況の検出装置の構成を示す図である。
【図2】(a)は移動速度が速い場合の速度と角速度との関係を示す図であり、(b)は移動速度が遅い場合の速度と角速度との関係を示す図である。
【図3】移動速度と角速度の計算式を示す図である。
【図4】速度・角速度・モード対応テーブルの構成を説明する図である。
【図5】速度と角速度・モード対応テーブルを模式的に示す図である。
【図6】速度と角速度の領域分布の設定を行う際の取得データの例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 携帯機器
2 測位装置
3 速度・角速度算出装置
4 テーブル参照装置
5 速度・角速度・モード対応テーブル
6 切り換え装置
7 表示装置
A〜C サービス提供装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器に内蔵され、携帯機器の位置を測定する測位手段と、
該測位手段が測定する位置情報に基づいて、前記携帯機器を所持する者の移動速度と、角速度を演算する演算手段と、
該演算結果に基づいて、速度・角速度・モード対応テーブルを参照し、対応するモードを選択する選択手段と、
該選択結果に基づいて、前記モードに対応するサービスに自動切り替えを行う切替手段と、
を有することを特徴とする測位装置による移動状況の検出装置。
【請求項2】
前記モードに基づいて、前記携帯機器を所持する者の現在の交通手段を推定することを特徴とする請求項1記載の測位装置による移動状況の検出装置。
【請求項3】
前記モードに基づいて、前記携帯機器を歩行者が所持するか、又は自動車内の何れかの場所にあるか、又は電車内にあるかを判別することを特徴とする請求項2記載の測位装置による移動状況の検出装置。
【請求項4】
前記端末装置が推定した交通手段の情報を前記位置情報と共に情報センタに送信し、該内容に応じて前記情報センタが情報を生成するために実行する処理を自動的に切り替える機能を有することを特徴とする請求項2、又は3記載の測位装置による移動状況の検出装置。
【請求項5】
前記角速度の計算は、前記測位手段が測定した位置情報の時系列変化の特徴を利用して行うことを特徴とする請求項1記載の測位装置による移動状況の検出装置。
【請求項6】
前記演算手段と、選択手段と、切替手段は、前記携帯機器内に設けられ、前記携帯機器内で交通手段を推定し、情報センタが供給する情報を前記携帯機器側で変更することを特徴とする請求項1記載の測位装置による移動状況の検出装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−292596(P2006−292596A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115178(P2005−115178)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【出願人】(595163261)
【出願人】(501303840)株式会社アイ・トランスポート・ラボ (11)
【出願人】(599126800)株式会社エムティーアイ (17)
【Fターム(参考)】