測定器
【課題】 操作性が高く、かつ、検出精度、検出分解能が高い測定器を提供する。
【解決手段】 スピンドル300の回転に応じてスピンドル300の異なる回転角に対して異なる値の位相信号を発信する位相信号発信手段400と、位相信号を演算処理してスピンドルの絶対位置を求める演算処理部500と、を備える。位相信号発信手段は、位相信号を所定のピッチで発信する。スピンドル300の異なる回転角に対して位相信号は異なる値であるので、位相信号からスピンドル300の回転角が一義的に決定される。インクリメンタル式と違って、位相信号の読み飛ばし等が問題とはならないので、スピンドル300の高速回転を許容して測定器の操作性を向上させることができる。さらに、位相信号の読み飛ばしが問題とはならないので、スピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化できる。
【解決手段】 スピンドル300の回転に応じてスピンドル300の異なる回転角に対して異なる値の位相信号を発信する位相信号発信手段400と、位相信号を演算処理してスピンドルの絶対位置を求める演算処理部500と、を備える。位相信号発信手段は、位相信号を所定のピッチで発信する。スピンドル300の異なる回転角に対して位相信号は異なる値であるので、位相信号からスピンドル300の回転角が一義的に決定される。インクリメンタル式と違って、位相信号の読み飛ばし等が問題とはならないので、スピンドル300の高速回転を許容して測定器の操作性を向上させることができる。さらに、位相信号の読み飛ばしが問題とはならないので、スピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器に関する。例えば、スピンドルを進退させることにより被測定物の寸法等を測定する測定器、例えば、マイクロメータやマイクロメータヘッド等に代表される測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピンドルを螺合回転で進退させることにより被測定物の寸法を測定するマイクロメータあるいはマイクロメータヘッド等の測定器が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
この測定器は、雌ねじを有する本体と、本体の雌ねじに螺合する送りねじを有するスピンドルと、スピンドルの回転を検出する回転検出手段と、回転検出手段から出力される信号に基づいてスピンドルの変位量を求める演算処理手段と、を備える。
【0003】
このような測定器においては、スピンドルに設けられた送りねじのねじピッチによってスピンドルの一回転あたりの変位量が規定され、送りねじのねじピッチは、例えば、0.5mmで設けられるのが一般的である。回転検出手段は、例えば、スピンドルと一体的に回転するロータと、ロータに対向した状態で本体に固定されたステータと、ロータの回転に応じてステータから出力される信号をインクリメントしてロータの回転位相を算出する位相算出手段と、を備える。
【0004】
ロータ1およびステータ2の互いの対向面を図11に示す。
ステータ2は、図11(A)示されるように、ロータ1との対向面において所定の円周上に等間隔に配設された複数の電極板からなる送信電極21と、送信電極21と同心円状に配設されたリング状の受信電極22と、を備え、送信電極21の各電極板には所定のパルス変調発生器から位相が変調された交流信号が送信される。送信電極21は、16の電極板によって構成され、各電極板には45度ずつ位相が異なる交流信号が印加されている。ロータ1は、図11(B)に示されるように、ステータ2との対向面においてステータ2の送信電極21および受信電極22にまたがって対向配置されているとともに送信電極21の電極板のうち所定数の電極板と静電結合される結合電極11を備えている。
【0005】
このような構成において、スピンドルが回転すると、本体とスピンドルとの螺合回転によってスピンドルが軸方向に進退する。このときのスピンドルの回転が回転検出手段にて検出される。すなわち、スピンドルが回転すると、このスピンドルと一体的にロータ1が回転する。
【0006】
そして、送信電極21の各電極に所定の交流信号を与えると送信電極21→結合電極11→受信電極22の順に電位が受け渡される。ロータ1が回転されている状態においては、送信電極21と結合電極11とで静電結合する送信電極21の電極板の違いにより結合電極11の電位が異なり、したがって、結合電極11と静電結合する受信電極22の電位も異なってくる。この受信電極22の電位を所定のサンプリングピッチでサンプリングすることによりパルス信号が得られ、このパルス信号を位相算出手段にて計数することによりロータの回転位相が求められる。
ロータ1の回転位相はスピンドルの回転位相に等しいので、スピンドルの回転位相と送りねじのピッチ(例えば0.5mm)とに基づいて演算処理手段によりスピンドルの変位が求められる。
【0007】
ここで、スピンドルに設けられる雄ねじのねじピッチが0.5mmまたは0.635mmであると、スピンドル一回転あたりの変位量が小さいため、測定対象が変わるたびに何回転もスピンドルを回転させなければならず、操作性に問題がある。
そこで、例えば、スピンドルの一回転あたりの変位量を大きくするために、送りねじのピッチを1mmないし2mmにまで大きくして、スピンドルの一回転あたりの進退量を大きくすることが考えられる。
【特許文献1】実開昭49−80260号公報
【特許文献2】特開昭54−130152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、送りねじのピッチを1mmないし2mmに大きくすれば、スピンドルの一回転あたりの進退量は大きくなるので、スピンドルの変位速度が大きくなって操作性は格段に向上する。
しかしながら、送りねじのピッチが大きくなる分、回転検出手段の検出精度および検出分解能も向上させなければならない。例えば、送りねじピッチが4倍になったのに、位相の検出分解能がそのままでは、スピンドル変位量の検出分解能は単純に4分の1になってしまうからである。
【0009】
ここで、スピンドルの一回転あたりの検出分解能を上げるには、送信電極21の電極板を微細にして数を増やし、ロータ1の微小な回転角変化を検出するようにすることが考えられる。しかしながら、送信電極21の電極板を増加させると、ロータ1の微小回転によって結合電極11と静電結合する送信電極21の電極板が異なってくるので、受信電極22における電位変化の周期が短くなる。
そのために、位相算出手段においてパルス信号を読み飛ばすなどの検出エラーが頻発して、ロータ1の角度変化を正確に追いかけられなくなるという問題が生じる。
【0010】
ここで、受信電極22の電位をサンプリングするサンプリング周期を短くすればよいとも考えられるが、サンプリング周期にはICなどの速度によりおのずと限界がある。また、サンプリング周期を短くすると、パルス信号にノイズなどの外乱が混入しやすくなるので外部からの電気的外乱によって検出精度がかえって低下するという問題が生じる。さらに、サンプリング周期を短くすると、消費電力が増大して電池寿命が短くなるという問題が生じる。
【0011】
このように、送りねじのハイリード化に対してスピンドルの変位を高精度かつ高分解能に検出することができなかったため、スピンドルを高速送りできる優れた操作性を有するとともに検出精度、検出分解能が高い測定器が望まれていた。
【0012】
本発明の目的は、操作性が高く、かつ、検出精度、検出分解能が高い測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の測定器は、本体と、前記本体に螺合されているとともに回転によって軸方向進退自在に設けられたスピンドルと、前記スピンドルの回転に応じてスピンドルの異なる回転角に対して異なる値の位相信号を発信する位相信号発信手段と、前記位相信号を演算処理して前記スピンドルの絶対位置を求める演算処理手段と、を備え、前記位相信号発信手段は、前記位相信号を所定のピッチで発信し、前記演算処理手段は、前記位相信号に基づいて前記スピンドルの回転角を算出する回転角算出部と、前記回転角算出部にて算出された前記スピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの回転数をカウントする回転数算出部と、前記回転数算出部にてカウントされたスピンドルの回転数と前記回転角算出部にて算出されたスピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの総回転位相を算出する総回転位相算出部と、前記総回転位相算出部にて算出された前記スピンドルの総回転位相に基づいて前記スピンドルの絶対位置を算出するスピンドル位置算出部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成において、スピンドルが回転されると、スピンドルと本体との螺合によりスピンドルが本体に対して進退する。このとき、スピンドルの回転に応じて位相信号発信手段からスピンドルの回転角に応じた位相信号が発信される。この位相信号は、スピンドルの異なる回転角に対して異なる値である。なお、回転角θは0°≦θ<360°の範囲であり、すなわち、一回転以内の位相をいう。そして、この位相信号に基づいてスピンドルの回転角が回転角算出部によって一義的に決定される。また、回転角算出部によってスピンドルの回転角が順次算出されるので、算出されるスピンドルの回転角に基づいてスピンドルの回転数が回転数算出部によって算出される。例えば、回転角算出部にて算出されたスピンドルの回転角が、5°→95°→185°→275°→365°と変化する場合、スピンドルが一回転していることになるので、スピンドルが+1回転したことが回転数算出部にてカウントされる。
【0015】
回転数算出部にてカウントされるスピンドルの回転数と回転角算出部にて算出されるスピンドルの回転角に基づいてスピンドルの総回転位相が総回転位相算出部により算出される。例えば、スピンドルの回転数が2であり、回転角が45°であれば、総回転位相は、765°(=360°×2+45°)となる。そして、総回転位相算出部にて算出された総回転位相に基づいてスピンドルの絶対位置がスピンドル位置算出部により算出される。例えば、スピンドルの一回転あたりの進退ピッチが2mmであり、総回転位相が765°である場合、スピンドルの絶対位置は、4.25mm(=765°÷360°×2mm)となる。
【0016】
このような構成によれば、位相信号発信手段からの位相信号に基づいてスピンドルの回転角が求められるところ、スピンドルの異なる回転角に対して位相信号は異なる値であるので、位相信号からスピンドルの回転角が一義的に決定される。従来は、スピンドルの回転に応じたパルス信号をインクリメントすることによりスピンドルの回転位相を検出していたので、スピンドルの回転に対するパルス信号の変化が早すぎると信号の読み飛ばしが頻発して正確にスピンドルの回転位相を検出することができなかった。そのため、スピンドルの回転速度を制限するか、スピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくしてインクリメントが正確に行われるようにしていた。しかし、スピンドルの回転速度を制限するとスピンドルの進退速度が制限されるので測定器の操作性が悪くなり、さらに、スピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくすると、回転角の分解能が低くなるという問題が生じていた。
【0017】
この点、本発明では、位相信号発信手段から発信される一つの位相信号からスピンドルの回転角を一義的に決定することができるので、従来のごとく信号をインクリメントする必要がない。そのため、本発明では、スピンドルの高速回転による信号の読み飛ばし等が問題とはならないので、スピンドルの回転数を制限する必要がなく、スピンドルの高速回転を許容して測定器の操作性を向上させることができる。そして、このようにスピンドルが高速に回転しても位相信号発信手段からの位相信号によりスピンドルの回転角を求めることができる。
さらに、信号の読み飛ばしが問題とはならないので、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。
【0018】
このようにスピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドルの回転角に対する分解能を引き上げることができる。また、位相信号発信手段は、回転数算出部においてスピンドルの回転数を読み飛ばさない程度のピッチで位相信号を発信すればよく、従来のインクリメント式のごとく信号を総てインクリメントする必要がないので、信号発信のタイミングを少なくすることができ、結果として消費電力を低減することができる。
【0019】
このように、本発明では、スピンドルの異なる回転角に対して異なる位相信号を発信する位相信号発信手段を備えることにより、スピンドルの高速回転を許容でき、スピンドルの回転角の分解能を向上させ、さらに、消費電力を低減できるという画期的な効果を奏する。
【0020】
本発明では、前記位相信号発信手段は、前記スピンドルと一体的に回転するロータと、前記ロータに対向した状態で前記本体に設けられ前記ロータの回転角に応じた位相信号を発信するステータと、を備え、前記ステータは、前記ロータの回転を検出して互いに異なる信号を発信する2つの検出トラックとして第1位相信号を発信する第1トラックと第1位相信号とは異なる周期変化をする第2位相信号を発信する第2トラックとを備え、前記ロータの異なる回転角に対して前記第1位相信号と前記第2位相信号との位相差は異なり、前記回転角算出部は、前記位相差に基づいて前記ロータの回転角を算出することが好ましい。
【0021】
このような構成において、スピンドルが回転すると、スピンドルとともにロータが回転する。すると、このロータの回転がステータによって検出される。
ここで、ステータには位相信号を発信する第1トラックと第2トラックとが設けられているところ、第1トラックから第1位相信号が出力され、第2トラックから第2位相信号が出力される。第1位相信号と第2位相信号とはロータの回転に対して異なる周期変化を示し、第1位相信号と第2位相信号との位相差は、ロータの一回転以内においては異なるロータ回転角に対して異なる値であるので、この位相差に基づいてロータの回転角が一義的に決定される。
そして、ロータとスピンドルとは一体的に回転するので、ロータの回転角はすなわちスピンドルの回転角であり、このスピンドルの回転角に基づいてスピンドルの絶対位置が求められる。
【0022】
このような構成によれば、ロータの回転に対して異なる周期変化を示す2つの位相信号(第1位相信号、第2位相信号)の位相差に基づいて、ロータの回転角を一義的に決定することができる。そして、2つの位相信号(第1位相信号、第2位相信号)の位相差がロータの異なる回転角に対して異なる値であるので、第1位相信号と第2位相信号とをサンプリングして2つの信号の位相差を求めれば、ロータの回転角を求めることができる。よって、信号を順番にインクリメントする必要がないので、位相信号の周期変化の早さは問題とならず、スピンドルの高速回転を許容し、さらに、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドルの回転角に対する分解能を引き上げることができる。
【0023】
なお、ロータの回転角を複数の位相信号の位相差によって特定できればよいので、第1位相信号、第2位相信号に加えて第3、第4の位相信号があってもよいことはもちろんである。
【0024】
本発明では、前記ステータは、交流信号が印加される送信電極および一単位で一周期の位相変化に対応する検出パターンを所定数有する受信電極を備え、前記ロータは、前記送信電極および前記受信電極と電磁カップリングするとともに前記受信電極に対応する数の検出パターンを有する結合電極を備えることが好ましい。
【0025】
このような構成において、送信電極に交流信号が印加されると、この送信電極の電流によって送信電極の周囲に誘導磁界が誘起される。この送信電極の周囲に誘起される誘導磁界によって送信電極に電磁カップリングしている結合電極に誘導電流が誘起される。そして、この結合電極の誘導電流によって結合電極の周囲に誘導磁界が誘起される。この結合電極の周囲に誘起される誘導磁界によって結合電極に電磁カップリングしている受信電極に誘導電流が誘起される。すなわち、送信電極→結合電極→受信電極の順に信号が受け渡される。このとき、結合電極と受信電極との検出パターンの重なり度合いがロータの回転角によって異なるので、ロータの回転に応じて受信電極に誘起される信号は周期的に変化する。そして、この受信電極の信号を所定ピッチでサンプリングすることにより、ロータの回転位相を検出することができる。
【0026】
このような構成によれば、結合電極と受信電極とは、周期的に変化する検出パターンを有する電極トラックであるところ、結合電極と受信電極とは電磁カップリングにて信号の送受信を行う電極線によって構成することができる。例えば、結合電極および受信電極の検出パターンをともに複数のコイルを並べることによって構成し、結合電極のコイルパターンと受信電極のコイルパターンとの重なり度合いの違いで異なる位相の信号を得るようにできる。そして、電極線にて検出パターンを構成する場合、電極線のパターンを細密に形成することが容易であるので、コイルの一つ一つのパターンを細密にしてロータの回転に対する位相信号の変化を細密化することが容易となる。その結果、ロータの回転角に対する分解能を向上させることができる。
【0027】
また、従来のごとくロータとステータとの対向面に静電結合する電極板をそれぞれ設けて、これら電極板の電位変化によってロータの回転角を検出する場合、ロータとステータとのギャップが変動してしまうと電極板の電位が変動してしまいロータの回転角を正確に検出できないという問題があった。
この点、本発明では、ステータの送信電極および受信電極とロータの結合電極とは、電磁カップリングにより信号の受け渡しを行うので、ステータとロータとの間のギャップ変動に影響されず、ロータの回転角を正確に検出することができる。
【0028】
なお、ステータに送信電極および受信電極と設け、ロータに結合電極を設ける場合のみならず、逆に、ロータに送信電極および受信電極と設け、ステータに結合電極を設けてもよく、さらに、送信電極、結合電極、受信電極はそれぞれ別個の部材に設けられていてもよく、要は、送信電極、結合電極および受信電極が電磁カップリングしていればよい。
【0029】
本発明では、前記本体は、前記スピンドルの回転を手動で操作するスピンドル操作部を備え、前記位相信号発信手段は、前記スピンドル操作部の手動操作にて可能であるスピンドルの最高回転速度でスピンドルが一回転する時間に少なくとも3回以上の前記位相信号を取得するピッチで前記位相信号をサンプリングすることが好ましい。
【0030】
このような構成において、スピンドル操作部を手動で操作してスピンドルを回転させると、スピンドルが回転される。すると、位相信号発信手段から位相信号が出力される。この位相信号に基づいてスピンドル回転角が回転角算出部にて算出され、さらに、回転角算出部にて算出される回転角を順次監視することにより回転数算出部によりスピンドルの回転数が算出される。スピンドルの回転数を回転数算出部によってカウントするところ、回転数算出部がスピンドルの回転数を読み飛ばさない程度のピッチで位相信号発信手段は位相信号を発信する必要がある。
【0031】
この点、本発明では、手動操作によるスピンドルの最高速でスピンドルが一回転する間に位相信号発信手段から3つの位相信号が出力されれば、スピンドルの回転を追いかけられるので、回転数算出部においてスピンドルの回転数を読み飛ばすことがない。その一方、位相信号発信手段が位相信号を発信するピッチは、回転数算出部においてスピンドルの回転数を読み飛ばさない程度でよいので、従来のインクリメント式に比べて、位相信号発信部が位相信号を発信する回数は格段に少なくてもよい。そして、スピンドルの一回転あたりに位相信号が3回出力できればよいので、逆に、スピンドルの回転速度は位相信号発信手段の位相検出速度と同程度の早さまで許容することができる。その結果、スピンドルの高速回転を許容でき、測定器の操作性を向上させることができる。
【0032】
本発明では、前記受信電極および前記結合電極に設けられる検出パターンの数は9以上であることが好ましい。
【0033】
このような構成において、スピンドルを回転させると、スピンドルとともにロータが回転し、このロータの回転角に応じてステータから位相信号が出力される。この位相信号に基づいてロータの回転角、すなわちスピンドルの回転角が検出される。位相信号発信手段はスピンドルの異なる回転角に対して異なる位相信号を発信するので、一の位相信号から一義的にスピンドルの回転角が回転角算出部によって算出される。ここで、従来のごとく信号をインクリメントすることによってスピンドルの回転位相を算出する場合には、信号を読み飛ばさないためにスピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくしてインクリメントが正確に行われるようにしていた。そのため、スピンドルの回転角の分解能が制限されるという問題が生じていた。
【0034】
この点、本発明では、従来のごとく信号をインクリメントする必要がないので信号の読み飛ばしは問題とならず、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。すなわち、受信電極および結合電極の検出パターンを多くして、ロータの回転に対する位相信号の変化を細密化し、スピンドルの回転角に対する分解能を向上させることができる。
【0035】
本発明では、前記スピンドルは、一回転あたり1mm以上変位することが好ましい。
【0036】
具体的には、前記本体は雌ねじを有し、前記スピンドルは、前記本体の雌ねじに螺合する送りねじを有し、前記雌ねじおよび前記送りねじのねじピッチが1mm以上であることが好ましい。あるいは、前記送りねじが多条ねじであることが好ましい。
【0037】
このような構成において、スピンドルが回転されると、スピンドルは一回転あたり1mm以上進退するので、スピンドルの進退速度が速くなり、測定器の操作性が向上する。
ここで、従来は、スピンドルの回転に応じて発信される信号をインクリメントすることによってスピンドルの回転位相を算出しており、信号を読み飛ばさないためにスピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくしてインクリメントが正確に行われるようにしていた。そのため、スピンドルの回転角の分解能が制限されるという問題が生じていた。
【0038】
この点、本発明では、従来のごとく信号をインクリメントする必要がないので信号の読み飛ばしは問題とならず、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。したがって、スピンドルの一回転あたりの進退ピッチが大きくても、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化してスピンドルの回転角の分解能を引き上げることにより、スピンドルの絶対位置の検出分解能を向上させることができる。すなわち、スピンドルの進退ピッチを大きくして操作性を向上させ、かつ、スピンドル絶対位置の分解能も向上させることができるという画期的な効果を奏するができる。
【0039】
本発明では、前記スピンドルは軸方向に沿って設けられた係合部を有し、前記位相信号発信手段は、前記ロータに設けられ前記係合部に係合する係合ピンと、前記係合ピンを前記係合部に向けて予圧する予圧力付与手段と、を備えることが好ましい。
【0040】
このような構成において、スピンドルが回転されると、スピンドルの係合部とロータの係合ピンとの係合により、スピンドルの回転がロータに伝達される。すると、ロータがスピンドルの回転角と同じだけ回転されるとともに、ロータの回転角がステータで読み取られる。よって、スピンドルの回転角を知ることができ、スピンドルの一回転あたりのピッチから、スピンドルの変位量を知ることができる。
【0041】
このような構成によれば、予圧力付与手段によって係合ピンが係合部に向けて予圧されているので、係合ピンと係合部とが確実に隙間なく係合し、スピンドルの回転がロータに正確に伝達される。よって、ロータの回転角をステータにて読み取ることによりスピンドルの回転角を正確に検出することができる。例えば、スピンドルの一回転あたりの進退量が大きい場合、スピンドルの回転角を高分解能で検出しなければ、スピンドル位置の検出分解能を引き上げることができないところ、係合ピンと係合部とのわずかな隙間でも測定に与える影響は大きくなる。
この点、本発明によれば、予圧力付与手段により、係合ピンと係合部とを隙間なく係合させるので、スピンドルの回転を正確にロータに伝達させることができる。その結果、測定精度を向上させることができる。
【0042】
本発明では、前記係合ピンは、前記ロータに対して前記スピンドルの軸方向に直交する方向に摺動自在に設けられ、前記予圧力付与手段は、前記ロータに掛止されるとともに前記係合ピンを前記係合部に向けて付勢する板バネにて構成されていることが好ましい。
【0043】
このような構成によれば、板ばねによる弾性によって、係合ピンが係合部に向けて予圧されるので、係合ピンと係合部との摺動が確保されつつ、係合ピンと係合部が隙間なく係合される。よって、スピンドルの回転が正確にロータに伝達される。その結果、スピンドル回転角の読取誤差が低減され、測定精度を向上させることができる。
【0044】
なお、係合ピンをロータに螺入し、係合ピンの先端がスピンドルの係合部に強く当接するまで係合ピンをねじ込むことによって係合ピンを係合部に向けて予圧してもよい。
【0045】
本発明では、前記位相信号発信手段は、前記係合ピンを前記ロータに対して抜け止めする係合ピン支持手段を備えることが好ましい。
【0046】
このような構成によれば、係合ピン支持手段により係合ピンはロータに対して抜け止めされる。すると、スピンドルをロータから外したときでも係合ピンの位置が維持されるので、再びスピンドルをロータに対してセットするのが容易である。例えば、スピンドルをロータから外したときに係合ピンがロータから抜け落ちてしまうと、スピンドルを再びロータにセットするのに係合ピンが邪魔になったり、または、係合ピンをロータに挿し直してスピンドルの係合部に係合させなければならなくなるので、非常に手間がかかる。
【0047】
この点、本発明では、係合ピンはロータに対して係合ピン支持手段により抜け止めされているので、スピンドルをロータから外しても係合ピンの位置はそのまま維持され、スピンドルをロータにセットするのが容易である。よって、スピンドルの交換等を簡便に行うことができる。
【0048】
本発明では、前記本体は、前記スピンドルの回転を手動で操作するスピンドル操作部を備え、前記スピンドル操作部は、前記本体の外側面において回動可能に設けられたキャップ筒と、前記キャップ筒とスピンドルとの間に設けられこのキャップ筒と前記スピンドルとの間に作用する負荷が所定値未満のときは前記キャップ筒の回動を前記スピンドルに伝達し、かつ、前記負荷が所定値以上であるときは前記キャップ筒と前記スピンドルとの間で空転する定圧機構と、を備えることが好ましい。
【0049】
このような構成において、キャップ筒を回転させると、所定負荷未満ではキャップ筒の回転が定圧機構を介してスピンドルに伝達され、スピンドルが回転される。すると、スピンドルが進退する。また、キャップ筒を回転させたときに所定負荷以上であるときには、定圧機構が空転してスピンドルにキャップ筒の回転が伝達されない。例えば、定圧機構の空転によりスピンドルを所定負荷以上の力で回転させることがないので、スピンドルが被測定物に接触する際の接触圧を所定圧以下に規制することができる。従って、スピンドルによって被測定物を破損することがない。
特に、スピンドルの一回転あたりの進退ピッチを大きくした場合には、スピンドルが高速で変位するので被測定物を破損するおそれもあるが、この点、本発明では、定圧機構によってスピンドルを所定負荷以上で回転させないので、被測定物をスピンドルで破損することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の測定器に係る第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態としてのマイクロメータ100の全体図である。
図2は、このマイクロメータ100の断面図である。
図3は、スピンドル300の送りねじ310の形状を示す図である。
図4は、位相信号発信手段400の構成を示す図である。
【0051】
マイクロメータ100は、略U字状フレーム212の一端にアンビル213を有する本体200と、本体200の他端に螺合されその螺合回転に伴って軸方向に、かつ、アンビル213に向かって進退するスピンドル300と、スピンドル300の回転量に応じて位相信号を出力する位相信号発信手段400と、位相信号を演算処理してスピンドル300の絶対位置を算出する演算処理手段と、算出されたスピンドル絶対位置を表示する表示手段としてのデジタル表示部600と、を備える。
【0052】
本体200は、一端側から順に、前部筒210と、後部筒220と、スピンドル操作部230と、を備える。前部筒210は、一端側開口部に設けられたステム211と、外部に設けられたU字状フレーム212と、を備える。U字状フレーム212は、一端側にスピンドル300に対向配置されたアンビル213を有し、他端が前部筒210に固定され、表面にはデジタル表示部600を備える。
後部筒220は、一端側が前部筒210に連結され、他端側内周にスピンドル300と螺合される雌ねじ221を有するとともに、他端側がすり割加工222され、外側からナット223でナット止めされている。
【0053】
スピンドル操作部230は、後部筒220に対して積層されたガイド筒231と、このガイド筒231に対して回転可能に設けられたアウタースリーブ232と、アウタースリーブ232との間に摩擦バネ233を介して設けられたシンブル234と、アウタースリーブ232およびシンブル234の他端側に設けられたキャップ筒235と、定圧機構240と、を備える。
【0054】
キャップ筒235はねじの螺合によってアウタースリーブ232と連結されている。定圧機構240は、図2に示すように、一端がスピンドル300の外端に螺合された支軸241と、キャップ筒235の内周に固定された第1ラチェット車242と、第1ラチェット車242に噛合する第2ラチェット車243と、第2ラチェット車243を第1ラチェット車242へ向けて付勢する圧縮コイルバネ245と、支軸241に固定されてガイド筒231の他端に当接したストッパ246と、を備える。
【0055】
第1ラチェット車242および第2ラチェット車243には、互いに噛合するのこぎり状の歯が一定ピッチで形成されており、所定圧未満では第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との歯が噛合した状態で第1ラチェット車242と第2ラチェット車243とが一体となって回転するが、第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との噛合面に一定以上の負荷がかかると、第1ラチェット車242が第2ラチェット車243に対して空転する。第2ラチェット車243は、キー244によって支軸241に対して軸方向へ変位可能かつ軸回りに回転不可に設けられており、第2ラチェット車243と支軸241とは一体的に回転する。
【0056】
スピンドル300は、ステム211を挿通して本体200の一端側から外部へ突出し、他端側外周に送りねじ310が設けられ、後部筒220の雌ねじ221と螺合されている。スピンドル300の他端側は、テーパによって縮径し、アウタースリーブ232の他端に嵌設されている。スピンドル300には軸方向に沿って係合溝(係合部)320が設けられている。
【0057】
送りねじ310は、図3に示されるように、ピッチPが比較的大きい一方、谷の深さdが比較的浅い雄ねじである。つまり、送りねじ310のピッチPは外径Rと谷径rとの差の2倍以上となる大ピッチであるが、外径Rと谷径rとの差は外径Rの5分の1以下である。ねじ軸線Aに沿って見たとき、隣接するねじ谷条(ねじ溝条)は所定の間隔をもって形成されており、隣接するねじ谷条の間には、ねじ軸線Aに沿った断面でねじ軸線Aに沿った直線として現れる谷間部(溝間部)が存する。
【0058】
送りねじ310の寸法は、例えば、外径Rが7.25mm〜7.32mm程度、谷径rが6.66mm〜6.74mm程度、ねじピッチPが1mm〜2mm程度、ねじ谷の頂角θが55°〜65°程度で、リード角が5°程度である。
なお、送りねじ310の寸法は特に限定されず、スピンドル300の一回転あたりの進退量であるリードをどの程度にするかによって適宜選択される。
例えば、送りねじ310のピッチPは、外径Rと谷径rとの差の3倍、5倍、10倍としてもよく、外径Rと谷径rとの差は外径Rの7分の1、10分の1としてもよい。
【0059】
雌ねじ221は、ねじ山条を送りねじ310に同一のピッチで有する。雌ねじ221をねじ軸線Aに沿って見たとき、隣接するねじ山条は所定の間隔をもって形成されており、隣接するねじ山条の間にはねじ軸線Aに沿った断面でねじ軸線Aに沿った直線として現れる山間部が存する。
【0060】
位相信号発信手段400は、図4、図5に示されるように、本体200に設けられたステータ410と、このステータ410に対向配置されたロータ420と、ステータ410に対する信号の送受信を制御する送受信制御部430と、スピンドル300に軸方向に沿って設けられた係合溝320と、ロータ420に設けられ係合溝320に係合する係合ピン421と、係合ピン421を係合溝320に向けて予圧する予圧力付与手段440と、係合ピン421をロータ420に対して抜止めするように支持する係合ピン支持手段450と、を備えている。
なお、図4においては、構成を分かりやすく示すために、ステータ410とロータ420とを実際よりも離間させて描いている。
【0061】
ステータ410は、前部筒210の内部であって後部筒220の一端側に固設され、ステータ410の回転は規制されている。ステータ410と後部筒220との間にはバネ411が介装され、ステータ410は一端側に向けて付勢されている。ロータ420は、スピンドル300と独立回転可能に設けられたロータブッシュ423を備え、このロータブッシュ423の他端側でステータ410と対向配置されている。ロータブッシュ423は、ステム211に螺合された調整ねじ424によって他端側に付勢されている。そして、スピンドル300は、ステータ410およびロータ420を挿通する状態に配設されている。
なお、送受信制御部430の構成および送受信制御部430によるステータ410への信号制御については後述する。
【0062】
係合溝320は、スピンドル300の軸と平行に直線状に設けられている。係合溝320は、その断面形状が略V字状であり、頂角は約60°から約90°である(図5参照)。
【0063】
係合ピン421は、ロータブッシュ423に形成された貫通孔に挿入され、その先端部には球状の先端球を有する。先端球の直径は約0.8mmから1.5mm程度である。先端球は、係合溝320に係合している。
【0064】
予圧力付与手段440は、一枚の板バネが巻き回されて輪状に形成されたリング状板バネ441によって構成されている。なお、リング状板バネ441は、一端と他端とが離間した不連続なリング形状であってもよく、一端と他端とが重なっていてもよい。そして、リング状板バネ441は、係合ピン421が挿入された状態のロータブッシュ423の外側面に嵌設され、係合ピン421の基端をスピンドル300に向けて付勢する。このとき、係合ピン421の基端に突設された小ピン422がリング状板バネ441に抜脱不能に差し込まれ、係合ピン421はリング状板バネ441に掛止されている。
【0065】
このようにリング状板バネ441に係合ピン421が掛止されることにより、係合ピン支持手段450が構成されている。この係合ピン支持手段450にて係合ピンがリング状板バネ441に掛止されることにより、図5(B)のように、スピンドル300がロータ420から引き抜かれた場合でも係合ピンはロータブッシュ423から抜け落ちることがなく係合ピンの位置は略維持される。
【0066】
次に、位相信号発信手段400において、ステータ410によってロータ420の回転位相を検出する原理について簡単に説明する。
この位相信号発信手段400は、いわゆる一回転ABS(アブソリュート検出)のロータリーエンコーダである。
図6は、ステータ410とロータ420との互いの対向面を示す図である。
図6(A)はステータ410の一面を示す図あり、図6(B)はロータ420の一面を示す図である。
【0067】
ステータ410においてロータ420に対向する面には、内側と外側とで二重に配された電極部が設けられ、すなわち、内側に第1ステータ電極部(第1トラック)460が設けられ、第1ステータ電極部460の外側に第2ステータ電極部(第2トラック)470が設けられている(図6(A)参照)。
第1および第2ステータ電極部460、470は送受信制御部430に接続されている。ロータ420においてステータ410に対向する面には、内側と外側で二重に配された電極部が設けられ、すなわち、内側には第1ステータ電極部460と電磁カップリングする第1結合電極部480が設けられ、外側には第2ステータ電極部470と電磁カップリングする第2結合電極部490が設けられている(図6(B)参照)。
【0068】
送受信制御部430は送信制御部431と受信制御部432とを備え、送信制御部431は、第1および第2ステータ電極部460、470に所定の交流信号を送信し、受信制御部432は第1および第2ステータ電極部460、470からの信号を受信する。
【0069】
まず、図6(A)を参照して、第1ステータ電極部460および第2ステータ電極部470について説明する。
第1ステータ電極部460は、リング状に配置された一本の電極線からなる第1送信電極部461と、第1送信電極部461の内側において所定ピッチで連続する菱形コイルをそれぞれ形成する3本の電極線462A〜Cで構成され全体としてリング状に配置された第1受信電極部462と、を備えている。
同様に、第2ステータ電極部470は、リング状に配置された一本の電極線からなる第2送信電極部471と、第2送信電極部471の内側において所定ピッチで連続する菱形コイルをそれぞれ形成する3本の電極線472A〜Cで構成され全体としてリング状に配置された第2受信電極部472と、を備えている。
【0070】
第1受信電極部462を構成する電極線(462A〜C)は、それぞれ9個(9周期)の菱形を構成しており、第2受信電極部472を構成する電極線(472A〜C)はそれぞれ10個(10周期)の菱形を構成しており、各受信電極部462、472において3本の電極線が位相をずらして重なるように配置されている。
なお、図6(A)中、配線が交差して見える部分は紙面に直交する方向に離れており絶縁が確保されている。
【0071】
なお、第1受信電極部462および第2受信電極部472は、本来は一つ一つが独立したリング状のコイルを一本の電極線により繋げた構成に同等であり、すなわち、各菱形コイルが一つのコイルに等しい働きをする。
【0072】
ここで、第1および第2送信電極部461、471の各電極線は送信制御部431に接続され、各電極線には送信制御部431から所定の交流信号が印加される。
第1および第2受信電極部462、472の各電極線は受信制御部432に接続され、受信制御部432により所定のサンプリング周期で第1および第2受信電極部462、472の信号がサンプリングされる。
【0073】
次に、図6(B)を参照して、第1結合電極部480および第2結合電極部490について説明する。
第1結合電極部480は、矩形波を描きつつ全体としてリング状に配された電極線により構成されている。第2結合電極部490も同様に矩形波を描きつつ全体としてリング状にされた電極線により構成されている。
なお、第1結合電極部480は、9周期の矩形波であり、第2結合電極部490は、10周期の矩形波である。そして、第1結合電極部480および第2結合電極部490の矩形波は、本来は、一つ一つが独立したリング状のコイルを一本の電極線によって繋げた構成に同等であり、すなわち、各矩形波が一つのコイルに等しい働きをする。
【0074】
この構成において、送信制御部431から第1送信電極部461と第2送信電極部471とにそれぞれ電流(交流電流)(i1)が通電されると、第1および第2送信電極部461、471の電極線の周囲に誘導磁界(B1)が発生する。
そして、第1ステータ電極部460と第1結合電極部480とが電磁カップリングされ、第2ステータ電極部470と第2結合電極部490とが電磁カップリングされているので、第1結合電極部480および第2結合電極部490には誘導電流(i2)が生じるとともにこの誘導電流(i2)による誘導磁界(B2,B3)が生じる。
【0075】
さらに、第1結合電極部480と第1受信電極部462とが電磁カップリングしており、第2結合電極部490と第2受信電極部472とが電磁カップリングしているので、第1結合電極部480および第2結合電極部490の磁界パターンによって第1受信電極部462および第2受信電極部472の電極線に誘導電流(i3)が生じる。
【0076】
ここで、第1結合電極部480および第1受信電極部462は9周期であるのに対して、第2結合電極部490および第2受信電極部472は10周期であるので、ロータ420の一回転に対して、第1受信電極部462による第1検出位相は10周期の変化を示し、第2受信電極部472による第2検出位相は9周期の変化を示す。したがって、ロータ420の回転角θ(0°≦θ<360°)に対して、第1受信電極部462による第1位相信号φ1と第2受信電極部472による第2位相信号φ2とは異なり、ロータ420が一回転する中では、異なるロータ420の回転角θに対して第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との位相差Δφは異なる。よって、逆に、第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との位相差Δφから、ロータ420の一回転以内の回転位相θが一義的に決定されることとなる。
【0077】
なお、受信制御部432による第1受信電極部462および第2受信電極部472に対する信号のサンプリング周期は、12.5ms程度にする。
【0078】
演算処理部500について説明する。
演算処理部500は、ロータ420の回転角θを算出する回転角算出部510と、ロータ420の回転数をカウントして算出する回転数算出部520と、ロータ420の総回転位相を算出する総回転位相算出部530と、スピンドル300の絶対位置を算出するスピンドル位置算出部540と、を備える。
【0079】
回転角算出部は、受信制御部432によってサンプリングされた第1受信電極部462および第2受信電極部472の信号に基づいて第1受信電極部462による第1位相信号φ1と第2受信電極部472による第2位相信号φ2を求め、さらに、第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との差Δφに基づいてロータ420の回転角θ(0≦θ<360°)を算出する。
【0080】
回転数算出部520は、回転角算出部510にて算出されたロータ420の回転角θを監視して、ロータ420の回転数をカウントする。例えば、回転角算出部510において、ロータ420の位相θが5°→95°→185°→275°→5°と変化した場合、275°から5°に変化する過程において360°を通過していることになるので、ロータ420が+1回転したことをカウントする。
同じように、ロータ420の位相θが5°→275°に変化した場合、逆回転によって360°を通過していることになるのでロータ420が−1回転したことをカウントする。
【0081】
このようにして、回転数算出部520は、スピンドル300が基準位置にある状態を回転数0として、そこからのロータ420の回転数Nをカウントする。総回転位相算出部530は、回転数算出部520にてカウントされたロータ420の回転数Nと回転角算出部510にて算出されたロータ420の回転角θとに基づいてロータ420の総回転位相を算出する。例えば、回転数算出部520にてカウントされたロータ420の回転数Nが2であり、回転角算出部510にて算出された回転角θが45°である場合、総回転位相算出部530にて算出される総回転位相は、765°(=360°×2+45°)となる。
【0082】
スピンドル位置算出部540は、総回転位相算出部530にて算出されたロータ420の総回転位相に基づいてスピンドル300の絶対位置を算出する。スピンドル300の一回転あたりのピッチが2mmであり、ロータ420の総回転位相が765°である場合、スピンドル300の絶対位置は、4.25mm(=765°÷365°×2mm)となる。
【0083】
ここに、位相信号発信手段400と演算処理部500とによりスピンドル位置を検出する検出手段が構成されている。
【0084】
デジタル表示部600は、スピンドル位置算出部540にて算出されたスピンドル300の絶対位置を表示する。
【0085】
このような構成を備える第1実施形態の動作について説明する。
まず、スピンドル操作部230のキャップ筒235を回転させると、キャップ筒235と一体的に第1ラチェット車242が回転する。第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との噛合により第1ラチェット車242の回転が第2ラチェット車243に伝達され、第2ラチェット車243とともに支軸241が回転する。この支軸241とともにスピンドル300が回転し、本体200(後部筒220)の雌ねじ221とスピンドル300の送りねじ310との螺合によりスピンドル300が軸方向に進退される。スピンドル300が回転すると、スピンドル300の係合溝320に係合した係合ピン421によってロータ420がスピンドル300とともに回転する。
【0086】
このロータ420の回転はステータ410によって検出され、ステータ410の第1受信電極部462および第2受信電極部472の各電極線からの信号が受信制御部432にてサンプリングされる。
そして、第1受信電極部462の第1位相信号φ1と第2受信電極部472の第2位相信号φ2との位相差に基づいて回転角算出部510にてロータ420の回転角が算出される。回転角算出部510にて算出された回転角θは、回転数算出部520にて監視され、回転数算出部520にてロータ420の回転数がカウントされる。
【0087】
そして、回転角算出部510にて算出されたロータ回転角θと回転数算出部520にてカウントされたロータ420の回転数から、ロータ420の総回転位相が総回転位相算出部530にて算出される。総回転位相算出部530にて算出されたロータ420の総回転位相はスピンドル300の総回転位相であるので、このスピンドル300の総回転位相とスピンドル一回転あたりの進退ピッチ(例えば2mm)とから、スピンドル300の絶対位置がスピンドル位置算出部540にて算出される。
このように算出されたスピンドル位置は、デジタル表示部600に表示される。
【0088】
ここで、スピンドル操作部230による操作によってスピンドル300が変位してスピンドル300が被測定物に当接した場合、スピンドル300はそれ以上進まなくなる。このとき、スピンドル300を無理に回転させようとすると、第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との間に所定以上の負荷がかかる。すると、第1ラチェット車242が第2ラチェット車243に対して空転する。この第1ラチェット車242の空転により、所定負荷以上ではスピンドル操作部230の回転操作がスピンドル300に伝達されないので、スピンドル300が所定圧以上で被測定物を押圧することがなく、被測定物の破損が防止される。
【0089】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)位相信号発信手段400からの位相信号に基づいてスピンドル300の回転位相が求められるところ、スピンドル300の一回転以内において第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との位相差Δφは異なる回転角に対して異なる値であるので、この位相差Δφからスピンドル300の回転角が一義的に決定される。
よって、従来のごとく信号をインクリメントする必要がなく、スピンドル300の高速回転による信号の読み飛ばし等が問題とはならないので、スピンドル300の回転数を制限する必要がなく、スピンドル300の高速回転を許容してマイクロメータ100の操作性を向上させることができる。
【0090】
(2)位相信号発信手段400からの位相信号によりスピンドル300の回転角が一義的に決定され、従来のインクリメンタル式のごとく信号の読み飛ばしが問題とはならないので、スピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。このようにスピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドル300の回転角に対する分解能を引き上げることができる。特に本実施形態では操作性を良好するためにスピンドル300の一回転あたりの進退ピッチを大きくしているところ、スピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドル300の回転角の分解能を引き上げてスピンドル変位を高分解能で検出することができる。
【0091】
(3)位相信号発信手段400は、回転数算出部520においてスピンドル300の回転数を読み飛ばさない程度のピッチで位相信号を発信すればよいので、従来のインクリメント式に比べて信号発信のタイミングを少なくすることができ、結果として消費電力を低減することができる。
【0092】
(4)第1および第2ステータ電極部460、470と第1および第2結合電極部490とは、電極線462A〜C、472A〜Cで構成されているので、電極線のパターンを細密に形成することが容易である。よって、ロータ420の回転角に対する位相信号の変化を細密化してロータ420の回転角の分解能を高めることができる。また、第1および第2ステータ電極部460、470と第1および第2結合電極部490とは電磁カップリングにより信号の受け渡しを行うので、ステータ410とロータ420との間のギャップ変動に影響されず、ロータ420の回転角を正確に検出することができる。
【0093】
(5)リング状板バネ441(予圧力付与手段440)によって、係合ピン421が係合溝320に向けて予圧されているので、係合ピン421と係合溝320とを確実に隙間なく係合させ、スピンドル300の回転をロータ420に正確に伝達させことができる。よって、ロータ420の回転角をステータ410にて読み取ることによりスピンドル300の回転角を正確に検出することができる。スピンドル300の一回転あたりの進退量が大きいと、微小な回転角の読取誤差が大きなスピンドル位置の検出誤差に繋がるところ、スピンドル300の回転角を正確に検出することができるので、測定精度を向上させることができる。
【0094】
(6)係合ピン支持手段450によりスピンドル300をロータ420から外したときでも係合ピン421の位置が維持されるので、再びスピンドル300をロータ420に対してセットするのが容易である。よって、スピンドル300の交換等を簡便に行うことができる。
【0095】
(7)定圧機構240が設けられているので、スピンドル操作部230のキャップ筒235を回転させたときに所定負荷以上であるときには、定圧機構240が空転してスピンドル300にキャップ筒235の回転が伝達されない。よって、スピンドル300が被測定物に接触する際の接触圧を所定圧以下に規制することができる。従って、スピンドル300によって被測定物を破損することがない。特に、スピンドル300の一回転あたりの進退ピッチを大きくすると、スピンドル300が高速で変位するので被測定物を破損するおそれもあるが、この点、本実施形態では、定圧機構240によってスピンドル300を所定負荷以上で回転させないので、被測定物をスピンドル300で破損することがない。
【0096】
(8)位相信号発信手段400はスピンドル300の一回転以内の回転角をアブソリュート検出するものとし、主として、スピンドル300とともに回転するロータ420と、このロータ420の回転角を検出するステータ410によって構成しているので、位相信号発信手段400を小型化することができる。例えば、スピンドル300の絶対位置を検出するエンコーダを利用することも考えられるが、このような直線移動の絶対位置を検出するエンコーダはリニア式となるために非常に大型化され、スモールツールであるマイクロメータ100に適用することは困難である。この点、本実施形態では、スピンドル300の回転角θのみをアブソリュート検出するので、ロータリー型の位相信号発信手段400とでき、非常に小型化できる。
【0097】
(変形例)
本発明の変形例1〜変形例4について図7〜図10を参照して説明する。
変形例1〜変形例4の基本的構成は第1実施形態に同様であるが、係合ピン421の形状および予圧力付与手段440の構成に特徴を有する。
まず、変形例1について図7を参照して説明すると、係合ピン421は、ロータブッシュ423に螺入されている。そして、係合ピン421の先端は、側方視で三角形に先細る形状である。
変形例2について図8を参照して説明すると、係合ピン421はロータブッシュ423に螺入されている。そして、係合ピン421の先端は、裁頭円錐形状である。また、スピンドル300の係合溝320は、図8の断面図において、底面の両端から立設した側壁を有する形状である。
なお、変形例1および変形例2においては、係合ピン421がロータブッシュ423に螺合されることにより、係合ピン支持手段450が構成されている。
【0098】
変形例3について図9を参照して説明すると、係合ピン421の先端は平坦面であり、スピンドル300の係合部320も平坦面にて形成されている。
なお、予圧力付与手段440としてリング状板バネ441がロータブッシュ423の外側から嵌設されている点は第1実施形態と同様である。
【0099】
変形例4について図10を参照して説明する。
変形例4の基本的構成は、第1実施形態に同様であるが、予圧力付与手段440は、一端がロータブッシュ423に固定され、かつ、他端が係合ピン421を係合溝320に向けて押圧する板バネ442により構成されている。そして、係合ピン421の基端側に設けられた小ピン422が板バネ442に掛止されていることにより係合ピン支持手段450が構成されている。
【0100】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
スピンドルの送りねじが1mm〜2mmのハイリードである場合を例にして説明したが、スピンドルの送りねじが多条ねじであってもよい。
【0101】
位相信号発信手段は、上記の構成に限定されず、スピンドルの一回転以内の回転角をアブソリュート検出できる構成であればよい。
位相信号発信手段は、所定のサンプリングピッチでロータの回転角を検出すればよく、回転数算出部でロータの回転数を読み飛ばさない程度でロータの回転角を検出できればよい。例えば、手動操作で可能な最高回転速度でスピンドルが一回転する間にロータの回転角を3回以上検出できればよい。
【0102】
回転数算出部は、測定器の電源がOFFになったときには回転数を記憶しておくことが好ましい。すると、再び電源がONになったときに、回転数がゼロの基準位置までスピンドルを戻さなくても、スピンドルの絶対位置を継続して算出することができる。
【0103】
本発明の測定器としては、マイクロメータに限定されず、マイクロメータヘッド等でもよいことはもちろんであり、可動部材としてのスピンドルが回転によって軸方向に進退する測定器であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、測定器に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1実施形態としてのマイクロメータの全体構成を示す図。
【図2】第1実施形態の断面図。
【図3】第1実施形態において、スピンドルの送りねじの形状を示す図。
【図4】第1実施形態において、位相信号発信手段の構成を示す図。
【図5】断面図において係合ピンと係合溝との係合の状態を示す図。
【図6】第1実施形態において、ステータとロータとを示す図。
【図7】変形例1を示す図。
【図8】変形例2を示す図。
【図9】変形例3を示す図。
【図10】変形例4を示す図。
【図11】従来技術の説明において、静電容量式ロータリーエンコーダのステータおよびロータを示す図。
【符号の説明】
【0106】
1…ロータ、2…ステータ、11…結合電極、21…送信電極、22…受信電極、100…マイクロメータ、200…本体、210…前部筒、211…ステム、212…U字状フレーム、213…アンビル、220…後部筒、222…すり割加工、223…ナット、230…スピンドル操作部、231…ガイド筒、232…アウタースリーブ、233…摩擦バネ、234…シンブル、235…キャップ筒、240…定圧機構、241…支軸、242…第1ラチェット車、243…第2ラチェット車、244…キー、245…圧縮コイルバネ、246…ストッパ、300…スピンドル、320…係合溝、400…位相信号発信手段、410…ステータ、411…バネ、420…ロータ、421…係合ピン、422…小ピン、423…ロータブッシュ、430…送受信制御部、431…送信制御部、432…受信制御部、440…予圧力付与手段、441…リング状板バネ、442…板バネ、450…係合ピン支持手段、460…第1ステータ電極部、461…第1送信電極部、462…第2受信電極部、462A-C…電極線、470…第2ステータ電極部、471…第2送信電極部、472…第2受信電極部、472A-C…電極線、480…第1結合電極部、490…第2結合電極部、500…演算処理部、510…回転角算出部、520…回転数算出部、530…総回転位相算出部、540…スピンドル位置算出部、600…デジタル表示部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定器に関する。例えば、スピンドルを進退させることにより被測定物の寸法等を測定する測定器、例えば、マイクロメータやマイクロメータヘッド等に代表される測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スピンドルを螺合回転で進退させることにより被測定物の寸法を測定するマイクロメータあるいはマイクロメータヘッド等の測定器が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
この測定器は、雌ねじを有する本体と、本体の雌ねじに螺合する送りねじを有するスピンドルと、スピンドルの回転を検出する回転検出手段と、回転検出手段から出力される信号に基づいてスピンドルの変位量を求める演算処理手段と、を備える。
【0003】
このような測定器においては、スピンドルに設けられた送りねじのねじピッチによってスピンドルの一回転あたりの変位量が規定され、送りねじのねじピッチは、例えば、0.5mmで設けられるのが一般的である。回転検出手段は、例えば、スピンドルと一体的に回転するロータと、ロータに対向した状態で本体に固定されたステータと、ロータの回転に応じてステータから出力される信号をインクリメントしてロータの回転位相を算出する位相算出手段と、を備える。
【0004】
ロータ1およびステータ2の互いの対向面を図11に示す。
ステータ2は、図11(A)示されるように、ロータ1との対向面において所定の円周上に等間隔に配設された複数の電極板からなる送信電極21と、送信電極21と同心円状に配設されたリング状の受信電極22と、を備え、送信電極21の各電極板には所定のパルス変調発生器から位相が変調された交流信号が送信される。送信電極21は、16の電極板によって構成され、各電極板には45度ずつ位相が異なる交流信号が印加されている。ロータ1は、図11(B)に示されるように、ステータ2との対向面においてステータ2の送信電極21および受信電極22にまたがって対向配置されているとともに送信電極21の電極板のうち所定数の電極板と静電結合される結合電極11を備えている。
【0005】
このような構成において、スピンドルが回転すると、本体とスピンドルとの螺合回転によってスピンドルが軸方向に進退する。このときのスピンドルの回転が回転検出手段にて検出される。すなわち、スピンドルが回転すると、このスピンドルと一体的にロータ1が回転する。
【0006】
そして、送信電極21の各電極に所定の交流信号を与えると送信電極21→結合電極11→受信電極22の順に電位が受け渡される。ロータ1が回転されている状態においては、送信電極21と結合電極11とで静電結合する送信電極21の電極板の違いにより結合電極11の電位が異なり、したがって、結合電極11と静電結合する受信電極22の電位も異なってくる。この受信電極22の電位を所定のサンプリングピッチでサンプリングすることによりパルス信号が得られ、このパルス信号を位相算出手段にて計数することによりロータの回転位相が求められる。
ロータ1の回転位相はスピンドルの回転位相に等しいので、スピンドルの回転位相と送りねじのピッチ(例えば0.5mm)とに基づいて演算処理手段によりスピンドルの変位が求められる。
【0007】
ここで、スピンドルに設けられる雄ねじのねじピッチが0.5mmまたは0.635mmであると、スピンドル一回転あたりの変位量が小さいため、測定対象が変わるたびに何回転もスピンドルを回転させなければならず、操作性に問題がある。
そこで、例えば、スピンドルの一回転あたりの変位量を大きくするために、送りねじのピッチを1mmないし2mmにまで大きくして、スピンドルの一回転あたりの進退量を大きくすることが考えられる。
【特許文献1】実開昭49−80260号公報
【特許文献2】特開昭54−130152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
確かに、送りねじのピッチを1mmないし2mmに大きくすれば、スピンドルの一回転あたりの進退量は大きくなるので、スピンドルの変位速度が大きくなって操作性は格段に向上する。
しかしながら、送りねじのピッチが大きくなる分、回転検出手段の検出精度および検出分解能も向上させなければならない。例えば、送りねじピッチが4倍になったのに、位相の検出分解能がそのままでは、スピンドル変位量の検出分解能は単純に4分の1になってしまうからである。
【0009】
ここで、スピンドルの一回転あたりの検出分解能を上げるには、送信電極21の電極板を微細にして数を増やし、ロータ1の微小な回転角変化を検出するようにすることが考えられる。しかしながら、送信電極21の電極板を増加させると、ロータ1の微小回転によって結合電極11と静電結合する送信電極21の電極板が異なってくるので、受信電極22における電位変化の周期が短くなる。
そのために、位相算出手段においてパルス信号を読み飛ばすなどの検出エラーが頻発して、ロータ1の角度変化を正確に追いかけられなくなるという問題が生じる。
【0010】
ここで、受信電極22の電位をサンプリングするサンプリング周期を短くすればよいとも考えられるが、サンプリング周期にはICなどの速度によりおのずと限界がある。また、サンプリング周期を短くすると、パルス信号にノイズなどの外乱が混入しやすくなるので外部からの電気的外乱によって検出精度がかえって低下するという問題が生じる。さらに、サンプリング周期を短くすると、消費電力が増大して電池寿命が短くなるという問題が生じる。
【0011】
このように、送りねじのハイリード化に対してスピンドルの変位を高精度かつ高分解能に検出することができなかったため、スピンドルを高速送りできる優れた操作性を有するとともに検出精度、検出分解能が高い測定器が望まれていた。
【0012】
本発明の目的は、操作性が高く、かつ、検出精度、検出分解能が高い測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の測定器は、本体と、前記本体に螺合されているとともに回転によって軸方向進退自在に設けられたスピンドルと、前記スピンドルの回転に応じてスピンドルの異なる回転角に対して異なる値の位相信号を発信する位相信号発信手段と、前記位相信号を演算処理して前記スピンドルの絶対位置を求める演算処理手段と、を備え、前記位相信号発信手段は、前記位相信号を所定のピッチで発信し、前記演算処理手段は、前記位相信号に基づいて前記スピンドルの回転角を算出する回転角算出部と、前記回転角算出部にて算出された前記スピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの回転数をカウントする回転数算出部と、前記回転数算出部にてカウントされたスピンドルの回転数と前記回転角算出部にて算出されたスピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの総回転位相を算出する総回転位相算出部と、前記総回転位相算出部にて算出された前記スピンドルの総回転位相に基づいて前記スピンドルの絶対位置を算出するスピンドル位置算出部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このような構成において、スピンドルが回転されると、スピンドルと本体との螺合によりスピンドルが本体に対して進退する。このとき、スピンドルの回転に応じて位相信号発信手段からスピンドルの回転角に応じた位相信号が発信される。この位相信号は、スピンドルの異なる回転角に対して異なる値である。なお、回転角θは0°≦θ<360°の範囲であり、すなわち、一回転以内の位相をいう。そして、この位相信号に基づいてスピンドルの回転角が回転角算出部によって一義的に決定される。また、回転角算出部によってスピンドルの回転角が順次算出されるので、算出されるスピンドルの回転角に基づいてスピンドルの回転数が回転数算出部によって算出される。例えば、回転角算出部にて算出されたスピンドルの回転角が、5°→95°→185°→275°→365°と変化する場合、スピンドルが一回転していることになるので、スピンドルが+1回転したことが回転数算出部にてカウントされる。
【0015】
回転数算出部にてカウントされるスピンドルの回転数と回転角算出部にて算出されるスピンドルの回転角に基づいてスピンドルの総回転位相が総回転位相算出部により算出される。例えば、スピンドルの回転数が2であり、回転角が45°であれば、総回転位相は、765°(=360°×2+45°)となる。そして、総回転位相算出部にて算出された総回転位相に基づいてスピンドルの絶対位置がスピンドル位置算出部により算出される。例えば、スピンドルの一回転あたりの進退ピッチが2mmであり、総回転位相が765°である場合、スピンドルの絶対位置は、4.25mm(=765°÷360°×2mm)となる。
【0016】
このような構成によれば、位相信号発信手段からの位相信号に基づいてスピンドルの回転角が求められるところ、スピンドルの異なる回転角に対して位相信号は異なる値であるので、位相信号からスピンドルの回転角が一義的に決定される。従来は、スピンドルの回転に応じたパルス信号をインクリメントすることによりスピンドルの回転位相を検出していたので、スピンドルの回転に対するパルス信号の変化が早すぎると信号の読み飛ばしが頻発して正確にスピンドルの回転位相を検出することができなかった。そのため、スピンドルの回転速度を制限するか、スピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくしてインクリメントが正確に行われるようにしていた。しかし、スピンドルの回転速度を制限するとスピンドルの進退速度が制限されるので測定器の操作性が悪くなり、さらに、スピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくすると、回転角の分解能が低くなるという問題が生じていた。
【0017】
この点、本発明では、位相信号発信手段から発信される一つの位相信号からスピンドルの回転角を一義的に決定することができるので、従来のごとく信号をインクリメントする必要がない。そのため、本発明では、スピンドルの高速回転による信号の読み飛ばし等が問題とはならないので、スピンドルの回転数を制限する必要がなく、スピンドルの高速回転を許容して測定器の操作性を向上させることができる。そして、このようにスピンドルが高速に回転しても位相信号発信手段からの位相信号によりスピンドルの回転角を求めることができる。
さらに、信号の読み飛ばしが問題とはならないので、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。
【0018】
このようにスピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドルの回転角に対する分解能を引き上げることができる。また、位相信号発信手段は、回転数算出部においてスピンドルの回転数を読み飛ばさない程度のピッチで位相信号を発信すればよく、従来のインクリメント式のごとく信号を総てインクリメントする必要がないので、信号発信のタイミングを少なくすることができ、結果として消費電力を低減することができる。
【0019】
このように、本発明では、スピンドルの異なる回転角に対して異なる位相信号を発信する位相信号発信手段を備えることにより、スピンドルの高速回転を許容でき、スピンドルの回転角の分解能を向上させ、さらに、消費電力を低減できるという画期的な効果を奏する。
【0020】
本発明では、前記位相信号発信手段は、前記スピンドルと一体的に回転するロータと、前記ロータに対向した状態で前記本体に設けられ前記ロータの回転角に応じた位相信号を発信するステータと、を備え、前記ステータは、前記ロータの回転を検出して互いに異なる信号を発信する2つの検出トラックとして第1位相信号を発信する第1トラックと第1位相信号とは異なる周期変化をする第2位相信号を発信する第2トラックとを備え、前記ロータの異なる回転角に対して前記第1位相信号と前記第2位相信号との位相差は異なり、前記回転角算出部は、前記位相差に基づいて前記ロータの回転角を算出することが好ましい。
【0021】
このような構成において、スピンドルが回転すると、スピンドルとともにロータが回転する。すると、このロータの回転がステータによって検出される。
ここで、ステータには位相信号を発信する第1トラックと第2トラックとが設けられているところ、第1トラックから第1位相信号が出力され、第2トラックから第2位相信号が出力される。第1位相信号と第2位相信号とはロータの回転に対して異なる周期変化を示し、第1位相信号と第2位相信号との位相差は、ロータの一回転以内においては異なるロータ回転角に対して異なる値であるので、この位相差に基づいてロータの回転角が一義的に決定される。
そして、ロータとスピンドルとは一体的に回転するので、ロータの回転角はすなわちスピンドルの回転角であり、このスピンドルの回転角に基づいてスピンドルの絶対位置が求められる。
【0022】
このような構成によれば、ロータの回転に対して異なる周期変化を示す2つの位相信号(第1位相信号、第2位相信号)の位相差に基づいて、ロータの回転角を一義的に決定することができる。そして、2つの位相信号(第1位相信号、第2位相信号)の位相差がロータの異なる回転角に対して異なる値であるので、第1位相信号と第2位相信号とをサンプリングして2つの信号の位相差を求めれば、ロータの回転角を求めることができる。よって、信号を順番にインクリメントする必要がないので、位相信号の周期変化の早さは問題とならず、スピンドルの高速回転を許容し、さらに、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドルの回転角に対する分解能を引き上げることができる。
【0023】
なお、ロータの回転角を複数の位相信号の位相差によって特定できればよいので、第1位相信号、第2位相信号に加えて第3、第4の位相信号があってもよいことはもちろんである。
【0024】
本発明では、前記ステータは、交流信号が印加される送信電極および一単位で一周期の位相変化に対応する検出パターンを所定数有する受信電極を備え、前記ロータは、前記送信電極および前記受信電極と電磁カップリングするとともに前記受信電極に対応する数の検出パターンを有する結合電極を備えることが好ましい。
【0025】
このような構成において、送信電極に交流信号が印加されると、この送信電極の電流によって送信電極の周囲に誘導磁界が誘起される。この送信電極の周囲に誘起される誘導磁界によって送信電極に電磁カップリングしている結合電極に誘導電流が誘起される。そして、この結合電極の誘導電流によって結合電極の周囲に誘導磁界が誘起される。この結合電極の周囲に誘起される誘導磁界によって結合電極に電磁カップリングしている受信電極に誘導電流が誘起される。すなわち、送信電極→結合電極→受信電極の順に信号が受け渡される。このとき、結合電極と受信電極との検出パターンの重なり度合いがロータの回転角によって異なるので、ロータの回転に応じて受信電極に誘起される信号は周期的に変化する。そして、この受信電極の信号を所定ピッチでサンプリングすることにより、ロータの回転位相を検出することができる。
【0026】
このような構成によれば、結合電極と受信電極とは、周期的に変化する検出パターンを有する電極トラックであるところ、結合電極と受信電極とは電磁カップリングにて信号の送受信を行う電極線によって構成することができる。例えば、結合電極および受信電極の検出パターンをともに複数のコイルを並べることによって構成し、結合電極のコイルパターンと受信電極のコイルパターンとの重なり度合いの違いで異なる位相の信号を得るようにできる。そして、電極線にて検出パターンを構成する場合、電極線のパターンを細密に形成することが容易であるので、コイルの一つ一つのパターンを細密にしてロータの回転に対する位相信号の変化を細密化することが容易となる。その結果、ロータの回転角に対する分解能を向上させることができる。
【0027】
また、従来のごとくロータとステータとの対向面に静電結合する電極板をそれぞれ設けて、これら電極板の電位変化によってロータの回転角を検出する場合、ロータとステータとのギャップが変動してしまうと電極板の電位が変動してしまいロータの回転角を正確に検出できないという問題があった。
この点、本発明では、ステータの送信電極および受信電極とロータの結合電極とは、電磁カップリングにより信号の受け渡しを行うので、ステータとロータとの間のギャップ変動に影響されず、ロータの回転角を正確に検出することができる。
【0028】
なお、ステータに送信電極および受信電極と設け、ロータに結合電極を設ける場合のみならず、逆に、ロータに送信電極および受信電極と設け、ステータに結合電極を設けてもよく、さらに、送信電極、結合電極、受信電極はそれぞれ別個の部材に設けられていてもよく、要は、送信電極、結合電極および受信電極が電磁カップリングしていればよい。
【0029】
本発明では、前記本体は、前記スピンドルの回転を手動で操作するスピンドル操作部を備え、前記位相信号発信手段は、前記スピンドル操作部の手動操作にて可能であるスピンドルの最高回転速度でスピンドルが一回転する時間に少なくとも3回以上の前記位相信号を取得するピッチで前記位相信号をサンプリングすることが好ましい。
【0030】
このような構成において、スピンドル操作部を手動で操作してスピンドルを回転させると、スピンドルが回転される。すると、位相信号発信手段から位相信号が出力される。この位相信号に基づいてスピンドル回転角が回転角算出部にて算出され、さらに、回転角算出部にて算出される回転角を順次監視することにより回転数算出部によりスピンドルの回転数が算出される。スピンドルの回転数を回転数算出部によってカウントするところ、回転数算出部がスピンドルの回転数を読み飛ばさない程度のピッチで位相信号発信手段は位相信号を発信する必要がある。
【0031】
この点、本発明では、手動操作によるスピンドルの最高速でスピンドルが一回転する間に位相信号発信手段から3つの位相信号が出力されれば、スピンドルの回転を追いかけられるので、回転数算出部においてスピンドルの回転数を読み飛ばすことがない。その一方、位相信号発信手段が位相信号を発信するピッチは、回転数算出部においてスピンドルの回転数を読み飛ばさない程度でよいので、従来のインクリメント式に比べて、位相信号発信部が位相信号を発信する回数は格段に少なくてもよい。そして、スピンドルの一回転あたりに位相信号が3回出力できればよいので、逆に、スピンドルの回転速度は位相信号発信手段の位相検出速度と同程度の早さまで許容することができる。その結果、スピンドルの高速回転を許容でき、測定器の操作性を向上させることができる。
【0032】
本発明では、前記受信電極および前記結合電極に設けられる検出パターンの数は9以上であることが好ましい。
【0033】
このような構成において、スピンドルを回転させると、スピンドルとともにロータが回転し、このロータの回転角に応じてステータから位相信号が出力される。この位相信号に基づいてロータの回転角、すなわちスピンドルの回転角が検出される。位相信号発信手段はスピンドルの異なる回転角に対して異なる位相信号を発信するので、一の位相信号から一義的にスピンドルの回転角が回転角算出部によって算出される。ここで、従来のごとく信号をインクリメントすることによってスピンドルの回転位相を算出する場合には、信号を読み飛ばさないためにスピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくしてインクリメントが正確に行われるようにしていた。そのため、スピンドルの回転角の分解能が制限されるという問題が生じていた。
【0034】
この点、本発明では、従来のごとく信号をインクリメントする必要がないので信号の読み飛ばしは問題とならず、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。すなわち、受信電極および結合電極の検出パターンを多くして、ロータの回転に対する位相信号の変化を細密化し、スピンドルの回転角に対する分解能を向上させることができる。
【0035】
本発明では、前記スピンドルは、一回転あたり1mm以上変位することが好ましい。
【0036】
具体的には、前記本体は雌ねじを有し、前記スピンドルは、前記本体の雌ねじに螺合する送りねじを有し、前記雌ねじおよび前記送りねじのねじピッチが1mm以上であることが好ましい。あるいは、前記送りねじが多条ねじであることが好ましい。
【0037】
このような構成において、スピンドルが回転されると、スピンドルは一回転あたり1mm以上進退するので、スピンドルの進退速度が速くなり、測定器の操作性が向上する。
ここで、従来は、スピンドルの回転に応じて発信される信号をインクリメントすることによってスピンドルの回転位相を算出しており、信号を読み飛ばさないためにスピンドルの一回転あたりの信号の変化数を少なくしてインクリメントが正確に行われるようにしていた。そのため、スピンドルの回転角の分解能が制限されるという問題が生じていた。
【0038】
この点、本発明では、従来のごとく信号をインクリメントする必要がないので信号の読み飛ばしは問題とならず、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。したがって、スピンドルの一回転あたりの進退ピッチが大きくても、スピンドルの回転に対する位相信号の変化を細密化してスピンドルの回転角の分解能を引き上げることにより、スピンドルの絶対位置の検出分解能を向上させることができる。すなわち、スピンドルの進退ピッチを大きくして操作性を向上させ、かつ、スピンドル絶対位置の分解能も向上させることができるという画期的な効果を奏するができる。
【0039】
本発明では、前記スピンドルは軸方向に沿って設けられた係合部を有し、前記位相信号発信手段は、前記ロータに設けられ前記係合部に係合する係合ピンと、前記係合ピンを前記係合部に向けて予圧する予圧力付与手段と、を備えることが好ましい。
【0040】
このような構成において、スピンドルが回転されると、スピンドルの係合部とロータの係合ピンとの係合により、スピンドルの回転がロータに伝達される。すると、ロータがスピンドルの回転角と同じだけ回転されるとともに、ロータの回転角がステータで読み取られる。よって、スピンドルの回転角を知ることができ、スピンドルの一回転あたりのピッチから、スピンドルの変位量を知ることができる。
【0041】
このような構成によれば、予圧力付与手段によって係合ピンが係合部に向けて予圧されているので、係合ピンと係合部とが確実に隙間なく係合し、スピンドルの回転がロータに正確に伝達される。よって、ロータの回転角をステータにて読み取ることによりスピンドルの回転角を正確に検出することができる。例えば、スピンドルの一回転あたりの進退量が大きい場合、スピンドルの回転角を高分解能で検出しなければ、スピンドル位置の検出分解能を引き上げることができないところ、係合ピンと係合部とのわずかな隙間でも測定に与える影響は大きくなる。
この点、本発明によれば、予圧力付与手段により、係合ピンと係合部とを隙間なく係合させるので、スピンドルの回転を正確にロータに伝達させることができる。その結果、測定精度を向上させることができる。
【0042】
本発明では、前記係合ピンは、前記ロータに対して前記スピンドルの軸方向に直交する方向に摺動自在に設けられ、前記予圧力付与手段は、前記ロータに掛止されるとともに前記係合ピンを前記係合部に向けて付勢する板バネにて構成されていることが好ましい。
【0043】
このような構成によれば、板ばねによる弾性によって、係合ピンが係合部に向けて予圧されるので、係合ピンと係合部との摺動が確保されつつ、係合ピンと係合部が隙間なく係合される。よって、スピンドルの回転が正確にロータに伝達される。その結果、スピンドル回転角の読取誤差が低減され、測定精度を向上させることができる。
【0044】
なお、係合ピンをロータに螺入し、係合ピンの先端がスピンドルの係合部に強く当接するまで係合ピンをねじ込むことによって係合ピンを係合部に向けて予圧してもよい。
【0045】
本発明では、前記位相信号発信手段は、前記係合ピンを前記ロータに対して抜け止めする係合ピン支持手段を備えることが好ましい。
【0046】
このような構成によれば、係合ピン支持手段により係合ピンはロータに対して抜け止めされる。すると、スピンドルをロータから外したときでも係合ピンの位置が維持されるので、再びスピンドルをロータに対してセットするのが容易である。例えば、スピンドルをロータから外したときに係合ピンがロータから抜け落ちてしまうと、スピンドルを再びロータにセットするのに係合ピンが邪魔になったり、または、係合ピンをロータに挿し直してスピンドルの係合部に係合させなければならなくなるので、非常に手間がかかる。
【0047】
この点、本発明では、係合ピンはロータに対して係合ピン支持手段により抜け止めされているので、スピンドルをロータから外しても係合ピンの位置はそのまま維持され、スピンドルをロータにセットするのが容易である。よって、スピンドルの交換等を簡便に行うことができる。
【0048】
本発明では、前記本体は、前記スピンドルの回転を手動で操作するスピンドル操作部を備え、前記スピンドル操作部は、前記本体の外側面において回動可能に設けられたキャップ筒と、前記キャップ筒とスピンドルとの間に設けられこのキャップ筒と前記スピンドルとの間に作用する負荷が所定値未満のときは前記キャップ筒の回動を前記スピンドルに伝達し、かつ、前記負荷が所定値以上であるときは前記キャップ筒と前記スピンドルとの間で空転する定圧機構と、を備えることが好ましい。
【0049】
このような構成において、キャップ筒を回転させると、所定負荷未満ではキャップ筒の回転が定圧機構を介してスピンドルに伝達され、スピンドルが回転される。すると、スピンドルが進退する。また、キャップ筒を回転させたときに所定負荷以上であるときには、定圧機構が空転してスピンドルにキャップ筒の回転が伝達されない。例えば、定圧機構の空転によりスピンドルを所定負荷以上の力で回転させることがないので、スピンドルが被測定物に接触する際の接触圧を所定圧以下に規制することができる。従って、スピンドルによって被測定物を破損することがない。
特に、スピンドルの一回転あたりの進退ピッチを大きくした場合には、スピンドルが高速で変位するので被測定物を破損するおそれもあるが、この点、本発明では、定圧機構によってスピンドルを所定負荷以上で回転させないので、被測定物をスピンドルで破損することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の測定器に係る第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態としてのマイクロメータ100の全体図である。
図2は、このマイクロメータ100の断面図である。
図3は、スピンドル300の送りねじ310の形状を示す図である。
図4は、位相信号発信手段400の構成を示す図である。
【0051】
マイクロメータ100は、略U字状フレーム212の一端にアンビル213を有する本体200と、本体200の他端に螺合されその螺合回転に伴って軸方向に、かつ、アンビル213に向かって進退するスピンドル300と、スピンドル300の回転量に応じて位相信号を出力する位相信号発信手段400と、位相信号を演算処理してスピンドル300の絶対位置を算出する演算処理手段と、算出されたスピンドル絶対位置を表示する表示手段としてのデジタル表示部600と、を備える。
【0052】
本体200は、一端側から順に、前部筒210と、後部筒220と、スピンドル操作部230と、を備える。前部筒210は、一端側開口部に設けられたステム211と、外部に設けられたU字状フレーム212と、を備える。U字状フレーム212は、一端側にスピンドル300に対向配置されたアンビル213を有し、他端が前部筒210に固定され、表面にはデジタル表示部600を備える。
後部筒220は、一端側が前部筒210に連結され、他端側内周にスピンドル300と螺合される雌ねじ221を有するとともに、他端側がすり割加工222され、外側からナット223でナット止めされている。
【0053】
スピンドル操作部230は、後部筒220に対して積層されたガイド筒231と、このガイド筒231に対して回転可能に設けられたアウタースリーブ232と、アウタースリーブ232との間に摩擦バネ233を介して設けられたシンブル234と、アウタースリーブ232およびシンブル234の他端側に設けられたキャップ筒235と、定圧機構240と、を備える。
【0054】
キャップ筒235はねじの螺合によってアウタースリーブ232と連結されている。定圧機構240は、図2に示すように、一端がスピンドル300の外端に螺合された支軸241と、キャップ筒235の内周に固定された第1ラチェット車242と、第1ラチェット車242に噛合する第2ラチェット車243と、第2ラチェット車243を第1ラチェット車242へ向けて付勢する圧縮コイルバネ245と、支軸241に固定されてガイド筒231の他端に当接したストッパ246と、を備える。
【0055】
第1ラチェット車242および第2ラチェット車243には、互いに噛合するのこぎり状の歯が一定ピッチで形成されており、所定圧未満では第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との歯が噛合した状態で第1ラチェット車242と第2ラチェット車243とが一体となって回転するが、第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との噛合面に一定以上の負荷がかかると、第1ラチェット車242が第2ラチェット車243に対して空転する。第2ラチェット車243は、キー244によって支軸241に対して軸方向へ変位可能かつ軸回りに回転不可に設けられており、第2ラチェット車243と支軸241とは一体的に回転する。
【0056】
スピンドル300は、ステム211を挿通して本体200の一端側から外部へ突出し、他端側外周に送りねじ310が設けられ、後部筒220の雌ねじ221と螺合されている。スピンドル300の他端側は、テーパによって縮径し、アウタースリーブ232の他端に嵌設されている。スピンドル300には軸方向に沿って係合溝(係合部)320が設けられている。
【0057】
送りねじ310は、図3に示されるように、ピッチPが比較的大きい一方、谷の深さdが比較的浅い雄ねじである。つまり、送りねじ310のピッチPは外径Rと谷径rとの差の2倍以上となる大ピッチであるが、外径Rと谷径rとの差は外径Rの5分の1以下である。ねじ軸線Aに沿って見たとき、隣接するねじ谷条(ねじ溝条)は所定の間隔をもって形成されており、隣接するねじ谷条の間には、ねじ軸線Aに沿った断面でねじ軸線Aに沿った直線として現れる谷間部(溝間部)が存する。
【0058】
送りねじ310の寸法は、例えば、外径Rが7.25mm〜7.32mm程度、谷径rが6.66mm〜6.74mm程度、ねじピッチPが1mm〜2mm程度、ねじ谷の頂角θが55°〜65°程度で、リード角が5°程度である。
なお、送りねじ310の寸法は特に限定されず、スピンドル300の一回転あたりの進退量であるリードをどの程度にするかによって適宜選択される。
例えば、送りねじ310のピッチPは、外径Rと谷径rとの差の3倍、5倍、10倍としてもよく、外径Rと谷径rとの差は外径Rの7分の1、10分の1としてもよい。
【0059】
雌ねじ221は、ねじ山条を送りねじ310に同一のピッチで有する。雌ねじ221をねじ軸線Aに沿って見たとき、隣接するねじ山条は所定の間隔をもって形成されており、隣接するねじ山条の間にはねじ軸線Aに沿った断面でねじ軸線Aに沿った直線として現れる山間部が存する。
【0060】
位相信号発信手段400は、図4、図5に示されるように、本体200に設けられたステータ410と、このステータ410に対向配置されたロータ420と、ステータ410に対する信号の送受信を制御する送受信制御部430と、スピンドル300に軸方向に沿って設けられた係合溝320と、ロータ420に設けられ係合溝320に係合する係合ピン421と、係合ピン421を係合溝320に向けて予圧する予圧力付与手段440と、係合ピン421をロータ420に対して抜止めするように支持する係合ピン支持手段450と、を備えている。
なお、図4においては、構成を分かりやすく示すために、ステータ410とロータ420とを実際よりも離間させて描いている。
【0061】
ステータ410は、前部筒210の内部であって後部筒220の一端側に固設され、ステータ410の回転は規制されている。ステータ410と後部筒220との間にはバネ411が介装され、ステータ410は一端側に向けて付勢されている。ロータ420は、スピンドル300と独立回転可能に設けられたロータブッシュ423を備え、このロータブッシュ423の他端側でステータ410と対向配置されている。ロータブッシュ423は、ステム211に螺合された調整ねじ424によって他端側に付勢されている。そして、スピンドル300は、ステータ410およびロータ420を挿通する状態に配設されている。
なお、送受信制御部430の構成および送受信制御部430によるステータ410への信号制御については後述する。
【0062】
係合溝320は、スピンドル300の軸と平行に直線状に設けられている。係合溝320は、その断面形状が略V字状であり、頂角は約60°から約90°である(図5参照)。
【0063】
係合ピン421は、ロータブッシュ423に形成された貫通孔に挿入され、その先端部には球状の先端球を有する。先端球の直径は約0.8mmから1.5mm程度である。先端球は、係合溝320に係合している。
【0064】
予圧力付与手段440は、一枚の板バネが巻き回されて輪状に形成されたリング状板バネ441によって構成されている。なお、リング状板バネ441は、一端と他端とが離間した不連続なリング形状であってもよく、一端と他端とが重なっていてもよい。そして、リング状板バネ441は、係合ピン421が挿入された状態のロータブッシュ423の外側面に嵌設され、係合ピン421の基端をスピンドル300に向けて付勢する。このとき、係合ピン421の基端に突設された小ピン422がリング状板バネ441に抜脱不能に差し込まれ、係合ピン421はリング状板バネ441に掛止されている。
【0065】
このようにリング状板バネ441に係合ピン421が掛止されることにより、係合ピン支持手段450が構成されている。この係合ピン支持手段450にて係合ピンがリング状板バネ441に掛止されることにより、図5(B)のように、スピンドル300がロータ420から引き抜かれた場合でも係合ピンはロータブッシュ423から抜け落ちることがなく係合ピンの位置は略維持される。
【0066】
次に、位相信号発信手段400において、ステータ410によってロータ420の回転位相を検出する原理について簡単に説明する。
この位相信号発信手段400は、いわゆる一回転ABS(アブソリュート検出)のロータリーエンコーダである。
図6は、ステータ410とロータ420との互いの対向面を示す図である。
図6(A)はステータ410の一面を示す図あり、図6(B)はロータ420の一面を示す図である。
【0067】
ステータ410においてロータ420に対向する面には、内側と外側とで二重に配された電極部が設けられ、すなわち、内側に第1ステータ電極部(第1トラック)460が設けられ、第1ステータ電極部460の外側に第2ステータ電極部(第2トラック)470が設けられている(図6(A)参照)。
第1および第2ステータ電極部460、470は送受信制御部430に接続されている。ロータ420においてステータ410に対向する面には、内側と外側で二重に配された電極部が設けられ、すなわち、内側には第1ステータ電極部460と電磁カップリングする第1結合電極部480が設けられ、外側には第2ステータ電極部470と電磁カップリングする第2結合電極部490が設けられている(図6(B)参照)。
【0068】
送受信制御部430は送信制御部431と受信制御部432とを備え、送信制御部431は、第1および第2ステータ電極部460、470に所定の交流信号を送信し、受信制御部432は第1および第2ステータ電極部460、470からの信号を受信する。
【0069】
まず、図6(A)を参照して、第1ステータ電極部460および第2ステータ電極部470について説明する。
第1ステータ電極部460は、リング状に配置された一本の電極線からなる第1送信電極部461と、第1送信電極部461の内側において所定ピッチで連続する菱形コイルをそれぞれ形成する3本の電極線462A〜Cで構成され全体としてリング状に配置された第1受信電極部462と、を備えている。
同様に、第2ステータ電極部470は、リング状に配置された一本の電極線からなる第2送信電極部471と、第2送信電極部471の内側において所定ピッチで連続する菱形コイルをそれぞれ形成する3本の電極線472A〜Cで構成され全体としてリング状に配置された第2受信電極部472と、を備えている。
【0070】
第1受信電極部462を構成する電極線(462A〜C)は、それぞれ9個(9周期)の菱形を構成しており、第2受信電極部472を構成する電極線(472A〜C)はそれぞれ10個(10周期)の菱形を構成しており、各受信電極部462、472において3本の電極線が位相をずらして重なるように配置されている。
なお、図6(A)中、配線が交差して見える部分は紙面に直交する方向に離れており絶縁が確保されている。
【0071】
なお、第1受信電極部462および第2受信電極部472は、本来は一つ一つが独立したリング状のコイルを一本の電極線により繋げた構成に同等であり、すなわち、各菱形コイルが一つのコイルに等しい働きをする。
【0072】
ここで、第1および第2送信電極部461、471の各電極線は送信制御部431に接続され、各電極線には送信制御部431から所定の交流信号が印加される。
第1および第2受信電極部462、472の各電極線は受信制御部432に接続され、受信制御部432により所定のサンプリング周期で第1および第2受信電極部462、472の信号がサンプリングされる。
【0073】
次に、図6(B)を参照して、第1結合電極部480および第2結合電極部490について説明する。
第1結合電極部480は、矩形波を描きつつ全体としてリング状に配された電極線により構成されている。第2結合電極部490も同様に矩形波を描きつつ全体としてリング状にされた電極線により構成されている。
なお、第1結合電極部480は、9周期の矩形波であり、第2結合電極部490は、10周期の矩形波である。そして、第1結合電極部480および第2結合電極部490の矩形波は、本来は、一つ一つが独立したリング状のコイルを一本の電極線によって繋げた構成に同等であり、すなわち、各矩形波が一つのコイルに等しい働きをする。
【0074】
この構成において、送信制御部431から第1送信電極部461と第2送信電極部471とにそれぞれ電流(交流電流)(i1)が通電されると、第1および第2送信電極部461、471の電極線の周囲に誘導磁界(B1)が発生する。
そして、第1ステータ電極部460と第1結合電極部480とが電磁カップリングされ、第2ステータ電極部470と第2結合電極部490とが電磁カップリングされているので、第1結合電極部480および第2結合電極部490には誘導電流(i2)が生じるとともにこの誘導電流(i2)による誘導磁界(B2,B3)が生じる。
【0075】
さらに、第1結合電極部480と第1受信電極部462とが電磁カップリングしており、第2結合電極部490と第2受信電極部472とが電磁カップリングしているので、第1結合電極部480および第2結合電極部490の磁界パターンによって第1受信電極部462および第2受信電極部472の電極線に誘導電流(i3)が生じる。
【0076】
ここで、第1結合電極部480および第1受信電極部462は9周期であるのに対して、第2結合電極部490および第2受信電極部472は10周期であるので、ロータ420の一回転に対して、第1受信電極部462による第1検出位相は10周期の変化を示し、第2受信電極部472による第2検出位相は9周期の変化を示す。したがって、ロータ420の回転角θ(0°≦θ<360°)に対して、第1受信電極部462による第1位相信号φ1と第2受信電極部472による第2位相信号φ2とは異なり、ロータ420が一回転する中では、異なるロータ420の回転角θに対して第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との位相差Δφは異なる。よって、逆に、第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との位相差Δφから、ロータ420の一回転以内の回転位相θが一義的に決定されることとなる。
【0077】
なお、受信制御部432による第1受信電極部462および第2受信電極部472に対する信号のサンプリング周期は、12.5ms程度にする。
【0078】
演算処理部500について説明する。
演算処理部500は、ロータ420の回転角θを算出する回転角算出部510と、ロータ420の回転数をカウントして算出する回転数算出部520と、ロータ420の総回転位相を算出する総回転位相算出部530と、スピンドル300の絶対位置を算出するスピンドル位置算出部540と、を備える。
【0079】
回転角算出部は、受信制御部432によってサンプリングされた第1受信電極部462および第2受信電極部472の信号に基づいて第1受信電極部462による第1位相信号φ1と第2受信電極部472による第2位相信号φ2を求め、さらに、第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との差Δφに基づいてロータ420の回転角θ(0≦θ<360°)を算出する。
【0080】
回転数算出部520は、回転角算出部510にて算出されたロータ420の回転角θを監視して、ロータ420の回転数をカウントする。例えば、回転角算出部510において、ロータ420の位相θが5°→95°→185°→275°→5°と変化した場合、275°から5°に変化する過程において360°を通過していることになるので、ロータ420が+1回転したことをカウントする。
同じように、ロータ420の位相θが5°→275°に変化した場合、逆回転によって360°を通過していることになるのでロータ420が−1回転したことをカウントする。
【0081】
このようにして、回転数算出部520は、スピンドル300が基準位置にある状態を回転数0として、そこからのロータ420の回転数Nをカウントする。総回転位相算出部530は、回転数算出部520にてカウントされたロータ420の回転数Nと回転角算出部510にて算出されたロータ420の回転角θとに基づいてロータ420の総回転位相を算出する。例えば、回転数算出部520にてカウントされたロータ420の回転数Nが2であり、回転角算出部510にて算出された回転角θが45°である場合、総回転位相算出部530にて算出される総回転位相は、765°(=360°×2+45°)となる。
【0082】
スピンドル位置算出部540は、総回転位相算出部530にて算出されたロータ420の総回転位相に基づいてスピンドル300の絶対位置を算出する。スピンドル300の一回転あたりのピッチが2mmであり、ロータ420の総回転位相が765°である場合、スピンドル300の絶対位置は、4.25mm(=765°÷365°×2mm)となる。
【0083】
ここに、位相信号発信手段400と演算処理部500とによりスピンドル位置を検出する検出手段が構成されている。
【0084】
デジタル表示部600は、スピンドル位置算出部540にて算出されたスピンドル300の絶対位置を表示する。
【0085】
このような構成を備える第1実施形態の動作について説明する。
まず、スピンドル操作部230のキャップ筒235を回転させると、キャップ筒235と一体的に第1ラチェット車242が回転する。第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との噛合により第1ラチェット車242の回転が第2ラチェット車243に伝達され、第2ラチェット車243とともに支軸241が回転する。この支軸241とともにスピンドル300が回転し、本体200(後部筒220)の雌ねじ221とスピンドル300の送りねじ310との螺合によりスピンドル300が軸方向に進退される。スピンドル300が回転すると、スピンドル300の係合溝320に係合した係合ピン421によってロータ420がスピンドル300とともに回転する。
【0086】
このロータ420の回転はステータ410によって検出され、ステータ410の第1受信電極部462および第2受信電極部472の各電極線からの信号が受信制御部432にてサンプリングされる。
そして、第1受信電極部462の第1位相信号φ1と第2受信電極部472の第2位相信号φ2との位相差に基づいて回転角算出部510にてロータ420の回転角が算出される。回転角算出部510にて算出された回転角θは、回転数算出部520にて監視され、回転数算出部520にてロータ420の回転数がカウントされる。
【0087】
そして、回転角算出部510にて算出されたロータ回転角θと回転数算出部520にてカウントされたロータ420の回転数から、ロータ420の総回転位相が総回転位相算出部530にて算出される。総回転位相算出部530にて算出されたロータ420の総回転位相はスピンドル300の総回転位相であるので、このスピンドル300の総回転位相とスピンドル一回転あたりの進退ピッチ(例えば2mm)とから、スピンドル300の絶対位置がスピンドル位置算出部540にて算出される。
このように算出されたスピンドル位置は、デジタル表示部600に表示される。
【0088】
ここで、スピンドル操作部230による操作によってスピンドル300が変位してスピンドル300が被測定物に当接した場合、スピンドル300はそれ以上進まなくなる。このとき、スピンドル300を無理に回転させようとすると、第1ラチェット車242と第2ラチェット車243との間に所定以上の負荷がかかる。すると、第1ラチェット車242が第2ラチェット車243に対して空転する。この第1ラチェット車242の空転により、所定負荷以上ではスピンドル操作部230の回転操作がスピンドル300に伝達されないので、スピンドル300が所定圧以上で被測定物を押圧することがなく、被測定物の破損が防止される。
【0089】
このような構成を備える第1実施形態によれば、次の効果を奏することができる。
(1)位相信号発信手段400からの位相信号に基づいてスピンドル300の回転位相が求められるところ、スピンドル300の一回転以内において第1位相信号φ1と第2位相信号φ2との位相差Δφは異なる回転角に対して異なる値であるので、この位相差Δφからスピンドル300の回転角が一義的に決定される。
よって、従来のごとく信号をインクリメントする必要がなく、スピンドル300の高速回転による信号の読み飛ばし等が問題とはならないので、スピンドル300の回転数を制限する必要がなく、スピンドル300の高速回転を許容してマイクロメータ100の操作性を向上させることができる。
【0090】
(2)位相信号発信手段400からの位相信号によりスピンドル300の回転角が一義的に決定され、従来のインクリメンタル式のごとく信号の読み飛ばしが問題とはならないので、スピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化することができる。このようにスピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドル300の回転角に対する分解能を引き上げることができる。特に本実施形態では操作性を良好するためにスピンドル300の一回転あたりの進退ピッチを大きくしているところ、スピンドル300の回転に対する位相信号の変化を細密化することにより、スピンドル300の回転角の分解能を引き上げてスピンドル変位を高分解能で検出することができる。
【0091】
(3)位相信号発信手段400は、回転数算出部520においてスピンドル300の回転数を読み飛ばさない程度のピッチで位相信号を発信すればよいので、従来のインクリメント式に比べて信号発信のタイミングを少なくすることができ、結果として消費電力を低減することができる。
【0092】
(4)第1および第2ステータ電極部460、470と第1および第2結合電極部490とは、電極線462A〜C、472A〜Cで構成されているので、電極線のパターンを細密に形成することが容易である。よって、ロータ420の回転角に対する位相信号の変化を細密化してロータ420の回転角の分解能を高めることができる。また、第1および第2ステータ電極部460、470と第1および第2結合電極部490とは電磁カップリングにより信号の受け渡しを行うので、ステータ410とロータ420との間のギャップ変動に影響されず、ロータ420の回転角を正確に検出することができる。
【0093】
(5)リング状板バネ441(予圧力付与手段440)によって、係合ピン421が係合溝320に向けて予圧されているので、係合ピン421と係合溝320とを確実に隙間なく係合させ、スピンドル300の回転をロータ420に正確に伝達させことができる。よって、ロータ420の回転角をステータ410にて読み取ることによりスピンドル300の回転角を正確に検出することができる。スピンドル300の一回転あたりの進退量が大きいと、微小な回転角の読取誤差が大きなスピンドル位置の検出誤差に繋がるところ、スピンドル300の回転角を正確に検出することができるので、測定精度を向上させることができる。
【0094】
(6)係合ピン支持手段450によりスピンドル300をロータ420から外したときでも係合ピン421の位置が維持されるので、再びスピンドル300をロータ420に対してセットするのが容易である。よって、スピンドル300の交換等を簡便に行うことができる。
【0095】
(7)定圧機構240が設けられているので、スピンドル操作部230のキャップ筒235を回転させたときに所定負荷以上であるときには、定圧機構240が空転してスピンドル300にキャップ筒235の回転が伝達されない。よって、スピンドル300が被測定物に接触する際の接触圧を所定圧以下に規制することができる。従って、スピンドル300によって被測定物を破損することがない。特に、スピンドル300の一回転あたりの進退ピッチを大きくすると、スピンドル300が高速で変位するので被測定物を破損するおそれもあるが、この点、本実施形態では、定圧機構240によってスピンドル300を所定負荷以上で回転させないので、被測定物をスピンドル300で破損することがない。
【0096】
(8)位相信号発信手段400はスピンドル300の一回転以内の回転角をアブソリュート検出するものとし、主として、スピンドル300とともに回転するロータ420と、このロータ420の回転角を検出するステータ410によって構成しているので、位相信号発信手段400を小型化することができる。例えば、スピンドル300の絶対位置を検出するエンコーダを利用することも考えられるが、このような直線移動の絶対位置を検出するエンコーダはリニア式となるために非常に大型化され、スモールツールであるマイクロメータ100に適用することは困難である。この点、本実施形態では、スピンドル300の回転角θのみをアブソリュート検出するので、ロータリー型の位相信号発信手段400とでき、非常に小型化できる。
【0097】
(変形例)
本発明の変形例1〜変形例4について図7〜図10を参照して説明する。
変形例1〜変形例4の基本的構成は第1実施形態に同様であるが、係合ピン421の形状および予圧力付与手段440の構成に特徴を有する。
まず、変形例1について図7を参照して説明すると、係合ピン421は、ロータブッシュ423に螺入されている。そして、係合ピン421の先端は、側方視で三角形に先細る形状である。
変形例2について図8を参照して説明すると、係合ピン421はロータブッシュ423に螺入されている。そして、係合ピン421の先端は、裁頭円錐形状である。また、スピンドル300の係合溝320は、図8の断面図において、底面の両端から立設した側壁を有する形状である。
なお、変形例1および変形例2においては、係合ピン421がロータブッシュ423に螺合されることにより、係合ピン支持手段450が構成されている。
【0098】
変形例3について図9を参照して説明すると、係合ピン421の先端は平坦面であり、スピンドル300の係合部320も平坦面にて形成されている。
なお、予圧力付与手段440としてリング状板バネ441がロータブッシュ423の外側から嵌設されている点は第1実施形態と同様である。
【0099】
変形例4について図10を参照して説明する。
変形例4の基本的構成は、第1実施形態に同様であるが、予圧力付与手段440は、一端がロータブッシュ423に固定され、かつ、他端が係合ピン421を係合溝320に向けて押圧する板バネ442により構成されている。そして、係合ピン421の基端側に設けられた小ピン422が板バネ442に掛止されていることにより係合ピン支持手段450が構成されている。
【0100】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
スピンドルの送りねじが1mm〜2mmのハイリードである場合を例にして説明したが、スピンドルの送りねじが多条ねじであってもよい。
【0101】
位相信号発信手段は、上記の構成に限定されず、スピンドルの一回転以内の回転角をアブソリュート検出できる構成であればよい。
位相信号発信手段は、所定のサンプリングピッチでロータの回転角を検出すればよく、回転数算出部でロータの回転数を読み飛ばさない程度でロータの回転角を検出できればよい。例えば、手動操作で可能な最高回転速度でスピンドルが一回転する間にロータの回転角を3回以上検出できればよい。
【0102】
回転数算出部は、測定器の電源がOFFになったときには回転数を記憶しておくことが好ましい。すると、再び電源がONになったときに、回転数がゼロの基準位置までスピンドルを戻さなくても、スピンドルの絶対位置を継続して算出することができる。
【0103】
本発明の測定器としては、マイクロメータに限定されず、マイクロメータヘッド等でもよいことはもちろんであり、可動部材としてのスピンドルが回転によって軸方向に進退する測定器であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、測定器に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】第1実施形態としてのマイクロメータの全体構成を示す図。
【図2】第1実施形態の断面図。
【図3】第1実施形態において、スピンドルの送りねじの形状を示す図。
【図4】第1実施形態において、位相信号発信手段の構成を示す図。
【図5】断面図において係合ピンと係合溝との係合の状態を示す図。
【図6】第1実施形態において、ステータとロータとを示す図。
【図7】変形例1を示す図。
【図8】変形例2を示す図。
【図9】変形例3を示す図。
【図10】変形例4を示す図。
【図11】従来技術の説明において、静電容量式ロータリーエンコーダのステータおよびロータを示す図。
【符号の説明】
【0106】
1…ロータ、2…ステータ、11…結合電極、21…送信電極、22…受信電極、100…マイクロメータ、200…本体、210…前部筒、211…ステム、212…U字状フレーム、213…アンビル、220…後部筒、222…すり割加工、223…ナット、230…スピンドル操作部、231…ガイド筒、232…アウタースリーブ、233…摩擦バネ、234…シンブル、235…キャップ筒、240…定圧機構、241…支軸、242…第1ラチェット車、243…第2ラチェット車、244…キー、245…圧縮コイルバネ、246…ストッパ、300…スピンドル、320…係合溝、400…位相信号発信手段、410…ステータ、411…バネ、420…ロータ、421…係合ピン、422…小ピン、423…ロータブッシュ、430…送受信制御部、431…送信制御部、432…受信制御部、440…予圧力付与手段、441…リング状板バネ、442…板バネ、450…係合ピン支持手段、460…第1ステータ電極部、461…第1送信電極部、462…第2受信電極部、462A-C…電極線、470…第2ステータ電極部、471…第2送信電極部、472…第2受信電極部、472A-C…電極線、480…第1結合電極部、490…第2結合電極部、500…演算処理部、510…回転角算出部、520…回転数算出部、530…総回転位相算出部、540…スピンドル位置算出部、600…デジタル表示部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に螺合されているとともに回転によって軸方向進退自在に設けられたスピンドルと、
前記スピンドルの回転に応じてスピンドルの異なる回転角に対して異なる値の位相信号を発信する位相信号発信手段と、
前記位相信号を演算処理して前記スピンドルの絶対位置を求める演算処理手段と、を備え、
前記位相信号発信手段は、前記位相信号を所定のピッチで発信し、
前記演算処理手段は、
前記位相信号に基づいて前記スピンドルの回転角を算出する回転角算出部と、
前記回転角算出部にて算出された前記スピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの回転数をカウントする回転数算出部と、
前記回転数算出部にてカウントされたスピンドルの回転数と前記回転角算出部にて算出されたスピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの総回転位相を算出する総回転位相算出部と、
前記総回転位相算出部にて算出された前記スピンドルの総回転位相に基づいて前記スピンドルの絶対位置を算出するスピンドル位置算出部と、を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、
前記位相信号発信手段は、
前記スピンドルと一体的に回転するロータと、
前記ロータに対向した状態で前記本体に設けられ前記ロータの回転角に応じた位相信号を発信するステータと、を備え、
前記ステータは、前記ロータの回転を検出して互いに異なる信号を発信する2つの検出トラックとして第1位相信号を発信する第1トラックと第1位相信号とは異なる周期変化をする第2位相信号を発信する第2トラックとを備え、
前記ロータの異なる回転角に対して前記第1位相信号と前記第2位相信号との位相差は異なり、
前記回転角算出部は、前記位相差に基づいて前記ロータの回転角を算出する
ことを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の測定器において、
前記ステータは、交流信号が印加される送信電極および一単位で一周期の位相変化に対応する検出パターンを所定数有する受信電極を備え、
前記ロータは、前記送信電極および前記受信電極と電磁カップリングするとともに前記受信電極に対応する数の検出パターンを有する結合電極を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の測定器において、
前記スピンドルは、一回転あたり1mm以上変位する
ことを特徴とする測定器。
【請求項5】
請求項2に記載の測定器において、
前記スピンドルは軸方向に沿って設けられた係合部を有し、
前記位相信号発信手段は、前記ロータに設けられ前記係合部に係合する係合ピンと、
前記係合ピンを前記係合部に向けて予圧する予圧力付与手段と、を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項6】
請求項5に記載の測定器において、
前記係合ピンは、前記ロータに対して前記スピンドルの軸方向に直交する方向に摺動自在に設けられ、
前記予圧力付与手段は、前記ロータに掛止されるとともに前記係合ピンを前記係合部に向けて付勢する板バネにて構成されている
ことを特徴とする測定器。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の測定器において、
前記位相信号発信手段は、前記係合ピンを前記ロータに対して抜け止めする係合ピン支持手段を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項8】
請求項4に記載の測定器において、
前記本体は、前記スピンドルの回転を手動で操作するスピンドル操作部を備え、
前記スピンドル操作部は、前記本体の外側面において回動可能に設けられたキャップ筒と、
前記キャップ筒とスピンドルとの間に設けられこのキャップ筒と前記スピンドルとの間に作用する負荷が所定値未満のときは前記キャップ筒の回動を前記スピンドルに伝達し、かつ、前記負荷が所定値以上であるときは前記キャップ筒と前記スピンドルとの間で空転する定圧機構と、を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項1】
本体と、
前記本体に螺合されているとともに回転によって軸方向進退自在に設けられたスピンドルと、
前記スピンドルの回転に応じてスピンドルの異なる回転角に対して異なる値の位相信号を発信する位相信号発信手段と、
前記位相信号を演算処理して前記スピンドルの絶対位置を求める演算処理手段と、を備え、
前記位相信号発信手段は、前記位相信号を所定のピッチで発信し、
前記演算処理手段は、
前記位相信号に基づいて前記スピンドルの回転角を算出する回転角算出部と、
前記回転角算出部にて算出された前記スピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの回転数をカウントする回転数算出部と、
前記回転数算出部にてカウントされたスピンドルの回転数と前記回転角算出部にて算出されたスピンドルの回転角に基づいて前記スピンドルの総回転位相を算出する総回転位相算出部と、
前記総回転位相算出部にて算出された前記スピンドルの総回転位相に基づいて前記スピンドルの絶対位置を算出するスピンドル位置算出部と、を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の測定器において、
前記位相信号発信手段は、
前記スピンドルと一体的に回転するロータと、
前記ロータに対向した状態で前記本体に設けられ前記ロータの回転角に応じた位相信号を発信するステータと、を備え、
前記ステータは、前記ロータの回転を検出して互いに異なる信号を発信する2つの検出トラックとして第1位相信号を発信する第1トラックと第1位相信号とは異なる周期変化をする第2位相信号を発信する第2トラックとを備え、
前記ロータの異なる回転角に対して前記第1位相信号と前記第2位相信号との位相差は異なり、
前記回転角算出部は、前記位相差に基づいて前記ロータの回転角を算出する
ことを特徴とする測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の測定器において、
前記ステータは、交流信号が印加される送信電極および一単位で一周期の位相変化に対応する検出パターンを所定数有する受信電極を備え、
前記ロータは、前記送信電極および前記受信電極と電磁カップリングするとともに前記受信電極に対応する数の検出パターンを有する結合電極を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の測定器において、
前記スピンドルは、一回転あたり1mm以上変位する
ことを特徴とする測定器。
【請求項5】
請求項2に記載の測定器において、
前記スピンドルは軸方向に沿って設けられた係合部を有し、
前記位相信号発信手段は、前記ロータに設けられ前記係合部に係合する係合ピンと、
前記係合ピンを前記係合部に向けて予圧する予圧力付与手段と、を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項6】
請求項5に記載の測定器において、
前記係合ピンは、前記ロータに対して前記スピンドルの軸方向に直交する方向に摺動自在に設けられ、
前記予圧力付与手段は、前記ロータに掛止されるとともに前記係合ピンを前記係合部に向けて付勢する板バネにて構成されている
ことを特徴とする測定器。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の測定器において、
前記位相信号発信手段は、前記係合ピンを前記ロータに対して抜け止めする係合ピン支持手段を備える
ことを特徴とする測定器。
【請求項8】
請求項4に記載の測定器において、
前記本体は、前記スピンドルの回転を手動で操作するスピンドル操作部を備え、
前記スピンドル操作部は、前記本体の外側面において回動可能に設けられたキャップ筒と、
前記キャップ筒とスピンドルとの間に設けられこのキャップ筒と前記スピンドルとの間に作用する負荷が所定値未満のときは前記キャップ筒の回動を前記スピンドルに伝達し、かつ、前記負荷が所定値以上であるときは前記キャップ筒と前記スピンドルとの間で空転する定圧機構と、を備える
ことを特徴とする測定器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−33083(P2007−33083A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213298(P2005−213298)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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