説明

炭素繊維シート及びその製造方法

【課題】曲げ強度が向上した結果、容易にロール状に巻き取ることが可能である等の取扱い性に優れた炭素繊維シートを提供する。
【解決手段】炭素繊維又は耐炎化繊維のカットファイバーを抄紙して紙状物を作製し、次いでこの紙状物からなる上層と下層の層間に熱可塑性樹脂ネットを挟み込んだ積層体を作製し、その後この積層体を熱プレス成形し、更に1,200〜2,200℃で焼成して炭素化又は黒鉛化することによって得られる炭素繊維シートであって、特に、その内部に250〜700μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μmの多数の空隙を有する、厚さが100〜250μmで、目付が40〜100g/mの炭素繊維シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池用の電極基材、特に固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として好適な、多孔質の炭素繊維シートとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、軽くて強いという特徴を生かして、航空・宇宙関係、スポーツ用品関係、建設その他一般産業関係の用途に広く使用される他、その優れた導電性の故に、燃料電池用の電極基材、特に固体高分子型燃料電池のガス拡散電極としての用途が注目されている。
【0003】
燃料電池用の多孔質の炭素電極基材は、例えば、炭素短繊維(カットファイバー)を抄紙して得られた炭素繊維の紙状物に、熱硬化性樹脂を含浸させて樹脂含浸紙状物とし、次いで樹脂を硬化して炭素電極基材の前駆体シート状物とし、その後、前駆体シート状物を焼成して前記樹脂を炭素化することにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。多孔質の炭素電極基材には、導電性、ガス拡散性、耐食性だけでなく、機械強度や柔軟性等の取扱い性にも優れていることが要求される。しかしながら、前記したような製造法で得られた炭素電極基材は、曲げ弾性率が高く(硬く)、ロール状に巻き取るのが難しく、取扱い性に劣り、生産性も低いという問題がある。
【特許文献1】特開平9−157052号公報
【0004】
前記問題点を解決するために、例えば、下記特許文献2には、長さ25〜100mmのPAN系酸化繊維をニードルパンチ法及び/又は水流交絡法によりシート化した不織布に、熱硬化性樹脂を含浸し、不活性ガス雰囲気中1,300℃以上にて処理することにより、柔軟なガス拡散性に優れた炭素繊維シートを得る方法が記載されている。また、特許文献3には、炭素繊維シートを構成する炭素繊維の繊維長や直径、扁平度(長径/短径)、抄紙用バインダーの配合割合等を工夫して導電性が高く、ガス拡散性に優れ、適度な柔軟性に富んだ炭素繊維シートが開示されている。しかしながら、これらの方法では、十分な繊維の分散性と均一性、更には平面平滑性を有する炭素繊維シートを得るのが難しく、得られた炭素繊維シートの柔軟性も十分ではない。
【特許文献2】特開2001−240477号公報
【特許文献3】特開2004−27435号公報
【0005】
特許文献4には、目付が15〜60g/mの範囲内にある、実質的に二次元平面内において無作為な方向に分散せしめられた炭素短繊維と、目付が13〜150g/mの範囲内にある熱硬化性樹脂とを含む帯状の複合シートを、不活性雰囲気に保たれた加熱炉内を連続的に走行せしめながら10〜1,000℃/分の範囲内の速度で少なくとも1,200℃まで昇温し、焼成して熱硬化性樹脂を炭素化した後、ロール状に巻き取ることからなる多孔質炭素電極基材の製造方法が開示されている。しかしながら、かかる方法で得られた炭素電極基材も、柔軟性が必ずしも十分ではない。
【特許文献4】特開2004−288489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、曲げたわみ量が向上した結果、容易にロール状に巻き取ることが可能である等の取扱い性に優れた炭素繊維シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては、焼成後の残炭率の低い熱可塑性樹脂ネットを、炭素繊維シートの中間
補強層として用い、焼成後、ネット部分が消失することにより、空洞部分を形成する。そ
して、炭化した樹脂の密な部分と疎な部分のギャップの大きな構造となり、これにより曲
げたわみ量を向上させることを可能とする。
【0008】
本発明のうち請求項1に記載された発明は、炭素繊維のカットファイバーが二次元平面内にランダムに積層された炭素繊維シートであって、その内部に250〜700μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μmの多数の空隙を有する、厚さが100〜250μmで、目付が40〜100g/mの炭素繊維シートである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、好ましい態様の炭素繊維シートであり、炭素繊維シートの内部に、300〜500μmの空隙間隔で、空隙サイズが180〜220μmの多数の空隙を有する、厚さが150〜250μmで、目付が75〜95g/mの請求項1記載の炭素繊維シートである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、電気抵抗値が30×10−2Ω・cm以下、曲げ強度が10N/mm以上、曲げたわみ量が1.5mm以上の請求項1又は2記載の炭素繊維シートである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる請求項1〜3のいずれか1項記載の炭素繊維シートである。
【0012】
請求項5に記載された発明は、炭素繊維又は耐炎化繊維のカットファイバーを抄紙して紙状物を作製し、次いで該紙状物の、好ましくは、それぞれ1枚以上、5枚以下からなる上層と下層の層間に熱可塑性樹脂ネットを挟み込んだ積層体を作製し、その後該積層体を熱プレス成形し、更に1,200〜2,200℃で焼成して炭素化又は黒鉛化することを特徴とする炭素繊維シートの製造方法である。
【0013】
請求項6に記載された発明は、炭素繊維シートが、その内部に250〜700μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μmの多数の空隙を有する、厚さが100〜250μmで、目付が40〜100g/mのものである請求項5記載の炭素繊維シートの製造方法である。
【0014】
そして、請求項7に記載された発明は、熱可塑性樹脂ネットが、融点が100〜300℃の熱可塑性樹脂の繊維からなる紡績糸、フィラメント糸又は撚糸が250〜900μm間隔の繰り返しにより、ネット形状を形成するものである請求項5又は6記載の炭素繊維シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の炭素繊維シートは、曲げたわみ量が非常に向上しているので、取扱い性に優れているばかりでなく、多孔質でもあるので、燃料電池用の電極基材、ことに固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、炭素繊維のカットファイバー(短繊維)が二次元平面内にランダムに積層された炭素繊維シートである。炭素繊維の原料繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、セルロース系、ポリビニルアルコール系等各種の繊維がある。かかる原料繊維はプレカーサーと呼ばれるが、通常、プレカーサーは、空気を吹き込みながら数百度の温度で耐炎化と呼ばれる酸化反応に付され、熱で溶けない耐炎化繊維となる。そして、耐炎化繊維は、更に、不活性ガス雰囲気中で千数百度に加熱・焼成され炭素繊維又は黒鉛繊維が生成する。本発明の炭素繊維とは、原料繊維の種類は問わず、最終的に加熱・焼成して得られた炭素繊維又は黒鉛繊維を意味する。
【0017】
カットファイバーのカット長(繊維長)や太さは特に限定されるものではないが、通常は、
カット長が3〜20mm(n=30の平均値)、繊維径が4〜20μm程度のものが適当である(n=10の平均値)。
【0018】
本発明の炭素繊維シートは、その内部に250〜700μm、好ましくは、300〜500μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μm、好ましくは、180〜220μmの多数の空隙を有する。本発明において空隙とは、炭素繊維シートの上層と下層に挟まれた内層部分(内部)に形成された空洞又は空間を意味する。本発明の炭素繊維シートの断面の概要は、図1に示したとおりである。
【0019】
空隙サイズとは、30×12mmの試験片を樹脂で固め、表面を研磨したものの断面を光学顕微鏡を用いて観察し、断面に現れた空隙の平面(シート面)方向の長さを意味する(図1参照)。また、空隙間隔とは、各空隙の平面方向の最大寸法の中央点間の距離を意味する(図1参照)。空隙サイズ及び空隙間隔は、任意の空隙の5箇所の単純平均値を求めることで得られる。
【0020】
空隙の間隔が250μm未満の場合は、焼成後の炭素繊維シートの剥離の危険性が高くなる。また、700μmを超える場合は、最終的な構造に十分な影響を与えず、たわみ量向上の効果が発現しない。空隙のサイズが100μm未満の場合は、最終的な構造に十分な影響を与えず、たわみ量向上の効果が発現しない。また、300μmを超える場合は、成後の炭素繊維シートの剥離の危険性が高くなる。
【0021】
本発明の炭素繊維シートの厚さは100〜250μm、好ましくは、150〜250μmで、目付は40〜100g/m、好ましくは、75〜95g/mである。厚さが100μm未満の場合は、曲げ強度が低下し、取扱い性が悪くなる。また、250μmを超える場合は、たわみ量が低下し、取扱い性が悪くなる。目付が40g/m未満の場合は、曲げ強度が低下し、取扱い性が悪くなる。また、100g/mを超える場合は、たわみ量が低下し、取扱い性が悪くなる。なお、厚さと目付は実施例で述べる方法で測定したものである。
【0022】
本発明の炭素繊維シートは、また、空孔(空隙)率が20〜60%又は単位面積当たりの空隙の数が2〜3個/mmの範囲内にあるのが好ましい。空孔率又は空隙の数がこの範囲にあると、燃料電池の電極を構成したとき、燃料電池内部の水の蒸発をより抑制することができて、固体高分子電解質が乾燥してプロトン伝導性が低下するのを抑制することができるようになると共に、ガス拡散性が向上し、発電効率が向上するようになる。より好ましい空孔率の範囲は25〜50%である。
【0023】
前記のような本発明の炭素繊維シートの中でも、電気抵抗値が30×10−2Ω・cm以下、曲げ強度が10N/mm以上、曲げたわみ量が1.5mm以上のシートは、例えば、固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いるのに特に適している。
【0024】
なお、電気抵抗値は、ポンチにより直径5mmのサイズに切り出したサンプルを用いて、ロレスタAP MCP-T400(三菱油化製)を用いて四探針法により測定した。測定の際に必要なサンプル厚さは、シックネスゲージ(Mitutoyo製)を用いて測定した(n=8の平均値)。曲げ強度と曲げたわみ量は、50×10mmのサンプルを支点間距離が16mm、試験速度が1mm/分、圧支半径が3.2mm、支点半径が3.2mmの条件で、テンシロン(オリエンテック製)を用いて3点曲げにて測定した(n=8の平均値)。
【0025】
以下、本発明の炭素繊維シートの製造方法について説明する。本発明の炭素繊維シートは、炭素繊維(CF)又は耐炎化繊維(OPF)のカットファイバーを抄紙して紙状物を作製し、次いでこの紙状物からなる上層と下層の層間に熱可塑性樹脂ネットを挟み込んだ積層体を作製し、その後該積層体を通常の条件で熱プレス成形し、更に1,200〜2,200℃で焼成して炭素化又は黒鉛化する方法によって製造される。その概要は図2に示したとおりである。
【0026】
上記の製造方法で得られた炭素繊維シートの中でも、その内部に250〜700μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μmの多数の空隙を有する、厚さが100〜250μmで、目付が40〜100g/mのものは、例えば、固体高分子型燃料電池のガス拡散電極用等の用途に特に適しているので好ましい。本発明の炭素繊維シートは、それを、両面に触媒層を有する固体高分子電解質膜の少なくとも片面に接合することで、燃料電池ユニットを構成することができる。また、そのような燃料電池ユニットの複数個を積層することによって、燃料電池を構成することができる。
【0027】
本発明における炭素繊維又は耐炎化繊維のカットファイバーについては、前記したとおりである。熱可塑性樹脂ネットとは、熱可塑性樹脂の繊維から形成された各種織物、各種編物等のように、例えば、経糸と緯糸の重なった多数の交点部分(樹脂の密な部分)を有するもの、あるいは、樹脂のモノフィラメントから形成された交点(節)を有する網状物等、網目を有するネット状の物全てを意味する。
【0028】
熱可塑性樹脂ネットとして好ましいのは、融点が100〜300℃の熱可塑性樹脂の繊維からなる紡績糸、フィラメント糸又は撚糸が250〜900μm間隔の繰り返しにより、織物又は編物のようなネット形状を形成するものである。なお、250〜900μm間隔の繰り返しとは、各糸の中心間の距離を意味する。
【0029】
樹脂の種類としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリアミド゛の繊維が用いられる。融点は100〜300℃のものが好ましい。100℃未満の場合は、熱プレス成形時、樹脂が流動してしまい、たわみ量向上の効果の発現が十分ではなく、300℃を超える場合は、熱プレス成型温度が高くなり過ぎるので好ましくない。
【0030】
熱可塑性樹脂の繊維糸の形態としては、特に制限はないが、太さが30〜250μmの紡績糸、フィラメント糸又は撚糸が好ましい。30μm未満の場合は、目標の空隙サイズが取れず、たわみ量向上の効果の発現が十分ではない。250μmを超える場合は、空隙サイズが過大となり、焼成後、炭素繊維シートの剥離の危険性が高くなるので好ましくない。ネットの形態も特に制限はないが、平織、綾織、平畳織、綾畳織、ニットが好ましい。ただ、糸間隔は、250〜900μmが必要である。250μm未満の場合は、焼成後の炭素繊維シートの剥離の危険性が高くなる。また、900μmを超える場合は、最終的な構造に十分な影響を与えず、効果が得られにくいので好ましくない。
【0031】
熱可塑性樹脂ネットの目付は、10〜100g/mのものが好ましい。厚さは、30〜250μmのものが好ましい。
【0032】
本発明においては、先ず、炭素繊維又は耐炎化繊維のカットファイバーを抄紙して紙状物が作製される。紙状物は、乾式抄紙法によって得ることもできるが、水を抄紙媒体とする湿式抄紙法によるのが簡便であり、しかも、カットファイバーの分散性の良い均質なシートが得られるので好ましい。乾式抄紙法、湿式抄紙法のいずれによっても、帯状のシートを得ることができる。更に、形態保持性やハンドリング性等を向上させるために、紙状物に対して、30〜80重量%程度の範囲内において、ポリビニルアルコール、セルロース、ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アラミド等の有機質バインダ−を付与しても良い。
【0033】
炭素繊維からなる紙状物の場合、目付は15〜60g/m、厚さは30〜150μmのものが好ましい。耐炎化繊維からなる紙状物の場合、目付は20〜50g/m、厚さは40〜120μmのものが好ましい。
【0034】
本発明においては、次いで、上記で得られた紙状物からなる上層と下層の層間に熱可塑性樹脂ネットを挟み込んだ積層体を作製し、その後この積層体を熱プレス成形し、更に1,200〜2,200℃で焼成して炭素化又は黒鉛化して炭素繊維シートを得る。
【0035】
積層方法としては、例えば、上層として1〜5枚の紙状物を用い、下層として1〜5枚の紙状物を用い、その中間に熱可塑性樹脂ネットを1〜6枚挟み込んで積層体を作製する。その後得られた積層体を、好ましくは、温度130〜300℃、圧力1〜15MPaで0.5〜10分間熱プレス成形し積層体を熱圧着する。熱プレス成形後の目付と厚さは、炭素繊維のカットファイバーの場合には、目付が70〜210g/m、厚さが100〜450μm、耐炎化繊維のカットファイバーの場合には、目付は120〜350g/m、厚さは160〜400μmのものが好ましい。
【0036】
次いで得られた熱プレス成形し熱圧着された積層体は、1,200〜2,200℃、好ましくは、1,400〜2,000℃で焼成して炭素化又は黒鉛化される。焼成は窒素雰囲気下で3〜60分かけて行うのが好ましい。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、厚さは、シックネスゲージ(Mitutoyo製)を用い、250×210mmの試験片に対して、n=8で測定した。目付は、上皿電子天びん(エー・アンド・デイ製)を用いて、試験片を120℃で1時間乾燥し、0.5時間冷却後、重量測定して算出した。繊維直径は、10本のカットファイバーについて、1000倍の光学顕微鏡写真を撮影し、写真から各繊維直径を測定し、その単純平均値として求めた。横断面の形状が円形でない、例えば、楕円径である場合には、長径と短径の平均値を繊維径とした。繊維長は、30本のカットファイバーの繊維長を測定し、その単純平均値として求めた。
【0038】
[実施例1〜3]
表1に示した炭素繊維(CF)又は耐炎化繊維(OPF)のカットファイバー65質量部に対し、バインダーとしてポリエステル繊維(PET、繊維直径15μm、カット長5mm)20重量部とアラミド繊維(繊維直径15μm、カット長5mm)15質量部を均一に混合した後、湿式抄紙し、目付30g/m、厚さ0.07mmの紙状物(ペーパー)を作製した。
【0039】
熱可塑性樹脂ネットとしては、樹脂としてポリ乳酸のフィラメント糸(束)又はポリプロピレンの紡績糸を用い、表1に示したようなタイプのネット(ニット又は平織物)を用いた。かかるネットを表1に記載した枚数だけ重ね、前記紙状物を3枚重ねた上層と、紙状物を4枚重ねた下層の間に挟んでそれぞれ積層体を作製した。
【0040】
得られた積層体は、表2に示した条件(温度、圧力、時間)で熱プレスし、それぞれ表2に示したような目付と厚さを有する熱プレス成形体を得た。次いで、熱プレス成形体を、窒素雰囲気下で2,000℃で30分間焼成し、本発明の炭素繊維シートを得た。得られた炭素繊維シートの各種特性と性能は表2に示したとおりであった。
【0041】
[比較例1〜7]
実施例の場合と同様にして、但し、比較例1の場合は、空隙間隔を本発明の範囲外(900μm)とし、比較例2の場合は、空隙間隔を本発明の範囲外(760μm)とし、比較例3の場合は、空隙間隔(850μm)と空隙サイズ(320μm)を本発明の範囲外とし、比較例4の場合は、空隙間隔(195μm)と空隙サイズ(95μm)を本発明の範囲外とし、比較例5の場合は、空隙間隔(205μm)と空隙サイズ(78μm)を本発明の範囲外とし、比較例6の場合は、厚さ(260μm)を本発明の範囲外とし、比較例7の場合は、目付(105g/m)を本発明の範囲外として実験を行った。紙状物と熱可塑性樹脂ネットのタイプは表3に示したとおりであった。
【0042】
得られた積層体は、表4に示した条件(温度、圧力、時間)で熱プレスし、それぞれ表4に示したような目付と厚さを有する熱プレス成形体を得た。次いで、熱プレス成形体を、窒素雰囲気下で2,000℃で30分間焼成し、比較例の炭素繊維シートを得た。得られた炭素繊維シートの各種特性と性能は表4に示したとおりであった。
【0043】
表2と表4の比較から、実施例1〜3の炭素繊維シートは、曲げたわみ量が優れていることが分かる。一方、比較例1〜7のものは、曲げ強度に関しては実施例のものに遜色はないものの、曲げたわみ量がかなり劣ることが分かる。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】



【0047】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の炭素繊維シートの断面の概要を示す図である。
【図2】本発明の炭素繊維シートの製造方法の概要を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維のカットファイバーが二次元平面内にランダムに積層された炭素繊維シートであって、その内部に250〜700μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μmの多数の空隙を有する、厚さが100〜250μmで、目付が40〜100g/mの炭素繊維シート。
【請求項2】
炭素繊維シートの内部に、300〜500μmの空隙間隔で、空隙サイズが180〜220μmの多数の空隙を有する、厚さが150〜250μmで、目付が75〜95g/mの請求項1記載の炭素繊維シート。
【請求項3】
電気抵抗値が30×10−2Ω・cm以下、曲げ強度が10N/mm以上、曲げたわみ量が1.5mm以上である請求項1又は2記載の炭素繊維シート。
【請求項4】
固体高分子型燃料電池のガス拡散電極として用いられる請求項1〜3のいずれか1項記載の炭素繊維シート。
【請求項5】
炭素繊維又は耐炎化繊維のカットファイバーを抄紙して紙状物を作製し、次いで該紙状物からなる上層と下層の層間に熱可塑性樹脂ネットを挟み込んだ積層体を作製し、その後該積層体を熱プレス成形し、更に1,200〜2,200℃で焼成して炭素化又は黒鉛化することを特徴とする炭素繊維シートの製造方法。
【請求項6】
炭素繊維シートが、その内部に250〜700μmの空隙間隔で、空隙サイズが100〜300μmの多数の空隙を有する、厚さが100〜250μmで、目付が40〜100g/mのものである請求項5記載の炭素繊維シートの製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂ネットが、融点が100〜300℃の熱可塑性樹脂の繊維からなる紡績糸、フィラメント糸又は撚糸が250〜900μm間隔の繰り返しにより、ネット形状を形成するものである請求項5又は6記載の炭素繊維シートの製造方法。








【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−44201(P2008−44201A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220784(P2006−220784)
【出願日】平成18年8月12日(2006.8.12)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】