説明

無段変速機油圧回路

【課題】パワーローラを適正な位置に置くことができ、油圧回路のコストを低くすることができるようにする。
【解決手段】入力ディスク、出力ディスク、及び入力ディスクと出力ディスクとの間に配設された複数のパワーローラ20を備えたトロイダル式の無段変速装置と、エンドロードシリンダ35と、パワーローラ20をシフトさせるためのリアクションシリンダ79と、リアクションシリンダ79の第1、第2の油室91、92にそれぞれ第1、第2の油圧を発生させるための調圧装置84と、第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧をエンドロードシリンダ35の油室73に供給し、エンドロード圧を発生させる切替弁と、エンドロード圧が低くなったときに、第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を、切替弁を介することなくエンドロードシリンダ35の油室73に供給するための逆止弁とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無段変速機油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無段変速機においては、トロイダル式の無段変速装置とプラネタリギヤ機構とを組み合わせることによって形成され、トルク循環を利用して前記無段変速装置によって得られた変速比をプラネタリギヤ機構によって増幅し、広範囲の出力用の変速比(以下「出力変速比」という。)を達成するようになっている。
【0003】
そのために、エンジン等の車両駆動源と前記無段変速装置とが接続され、該無段変速装置とプラネタリギヤ機構とが接続され、該プラネタリギヤ機構と出力軸とが接続される。
【0004】
そして、モードをローモードとハイモードとで切り換えるために、プラネタリギヤ機構と出力軸との間にモード切換装置が配設され、該モード切換装置は、係脱自在に配設されたローモード用及びハイモード用の各クラッチを備え、各クラッチを選択的に係合させることによって、前記プラネタリギヤ機構のローモード用の出力ギヤ又はハイモード用の出力ギヤを出力軸に接続し、所定の出力変速比の回転を出力軸に出力するようになっている。
【0005】
そして、前記無段変速装置の変速比を変更したり、各クラッチを係脱したりするために油圧回路が形成され、該油圧回路において、油圧ポンプから吐出された油が、各アクチュエータに供給されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。なお、前記油圧回路及び無段変速装置によって無段変速機油圧回路が構成される。
【0006】
図2は従来の無段変速機油圧回路を示す図である。
【0007】
図において、102は無段変速装置であり、該無段変速装置102は、二つの入力ディスク178、各入力ディスク178間に配設された出力ディスク179、並びに前記各入力ディスク178及び出力ディスク179によって挟持された2列のパワーローラ112、112′を備える。各パワーローラ112、112′は、入力ディスク178及び出力ディスク179の回転方向における複数箇所に配設される。
【0008】
前記無段変速装置102の一端において、前記入力ディスク178に隣接させて、エンドロードシリンダ103が配設され、該エンドロードシリンダ103内に油室104が形成され、該油室104にエンドロード圧が供給される。該エンドロード圧は、軸方向に作用して入力ディスク178に対して端部荷重を加え、所定の挟持力で前記各パワーローラ112、112′を入力ディスク178及び出力ディスク179によって挟持する。
【0009】
なお、一つのパワーローラ112′は残りの各パワーローラ112に対してマスタローラとなり、各パワーローラ112はパワーローラ112′に対してスレーブローラとなる。
【0010】
前記パワーローラ112、112′は、それぞれ、リアクションシリンダ118、118′によって入力ディスク178と出力ディスク179との間でシフトさせられる。そして、前記リアクションシリンダ118、118′はキャップ123、124を備え、該キャップ123、124に対して二つのヘッド120、121を備えた双頭のピストン116が移動自在に、かつ、摺(しゅう)動自在に配設され、キャップ123とヘッド120との間に第1の油室が、キャップ124とヘッド121との間に第2の油室が形成される。そして、前記各ピストン116の空洞114内に軸110が配設され、該軸110によってパワーローラ112、112′が回転自在に支持される。
【0011】
また、各リアクションシリンダ118、118′における前記各キャップ123、124の端壁に入口126、127が形成され、リアクションシリンダ118′におけるキャップ123、124の側壁に出口129、130が形成される。
107は油圧回路であり、該油圧回路107は、オイルポンプ132、133を備え、オイルポンプ132は、リアクションシリンダ118′において、油路137を介して入口126と接続され、各リアクションシリンダ118において、油路137、125を介して入口126と接続され、オイルパン135内の油を、吸引して油路137に吐出し、各第1の油室に所定の油圧を供給する。また、オイルポンプ133は、リアクションシリンダ118′において、油路138を介して入口127と接続され、各リアクションシリンダ118において、油路138、125aを介して入口127と接続され、オイルパン135内の油を、吸引して油路138に吐出し、各第2の油室に所定の油圧を供給する。そして、前記各油路125にオリフィス131が、各油路125aにオリフィス131aが配設される。
【0012】
また、前記リアクションシリンダ118′において、各出口129、130と各圧力制御弁158、159とが油路155、156を介して接続され、各圧力制御弁158、159を作動させることによって、前記第1、第2の油室に供給される第1、第2の油圧がそれぞれ独立に制御される。なお、前記圧力制御弁158、159から排出された油は、油路170を介して無段変速機の各所を潤滑するために排出される。なお、前記油路170には圧力開放弁172が配設され、該圧力開放弁172によって圧力制御弁158、159に所定の背圧が加えられる。
【0013】
ところで、前記各パワーローラ112、112′は、入力ディスク178から出力ディスク179にトルクを伝達するようになっているが、そのとき、各パワーローラ112、112′に加わる反力と、出力ディスク179を回転させるのに必要なトルクとの間に不均衡が生じると、各パワーローラ112、112′は自動的に角度を変えて前記不均衡を解消する。例えば、走行負荷が変動したり、アクセルペダルの踏込度が変化したりしたときに、前記第1、第2の油圧の差によって表されるリアクション圧に抗して、パワーローラ112、112′が無段変速装置102の中心軸に対して直角の方向にシフトさせられると、パワーローラ112、112′の角度が変化して、無段変速装置102の変速比が変化させられる。
【0014】
また、前記エンドロード圧を発生させるために、油路137、138間に油路143が接続され、該油路143にシャトル弁145が配設され、油路137、138の各油圧のうちの高い方の油圧が、シャトル弁145を介して油路148に送られ、該油路148を介して更に追加油圧回路200に供給される。なお、油路137、138とシャトル弁14との間にも、オリフィス131、131aが配設される。
【0015】
前記追加油圧回路200は、2重パイロット作動型の方向制御弁202を備え、該方向制御弁202は、位置A、Bを採り、位置Aで、吐出ダンプ弁204を介して前記油路148と接続され、油路148の油を油室104に供給し、位置Bでアキュムレータ206の油を前記油室104に供給し、油室104内においてエンドロード圧を発生させる。
【0016】
なお、前記吐出ダンプ弁204は、油路148から方向制御弁202に向けて油が流れるのを許容するが、方向制御弁202から油路148に所定の量以上に油が逆流するのを阻止する。また、前記方向制御弁202は、スプリング208によるスプリング荷重によって位置Aを採るように付勢され、油室104内のエンドロード圧が、油路210を介して方向制御弁202に前記第1のパイロット圧として供給される。前記各リアクションシリンダ118のうちの所定のリアクションシリンダ118における第1、第2の油室内の油圧のうちの高い方の油圧が、シャトル弁212及び油路211を介して方向制御弁202に前記第2のパイロット圧として供給される。
【0017】
定常状態において、前記第1のパイロット圧にスプリング荷重を加えた圧力は、第2のパイロット圧よりスプリング荷重の分だけ高くされ、方向制御弁202は位置Aを採る。したがって、油路148から吐出ダンプ弁204を介して供給された油が油室104に供給される。
【0018】
そして、例えば、車両を急に制動したとき等においては、出力ディスク179に外力が加わり、パワーローラ112、112′をシフトさせ、ピストン116を移動させようとする。その場合、第2のパイロット圧が、前記第1のパイロット圧にスプリング荷重を加えた圧力より高くなり、方向制御弁202は位置Bを採り、アキュムレータ206から供給された油が油室104に供給される。したがって、前記エンドロード圧が高くされるので、前記第1のパイロット圧にスプリング荷重を加えた圧力と、第2のパイロット圧とを等しくなり、パワーローラ112、112′を適正な位置に置くことができる。
【特許文献1】特表2004−526916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、前記従来の油圧回路107においては、エンドロード圧を高くするために、アキュームレータ206を配設する必要があり、油圧回路107のコストが高くなってしまう。また、前記アキュムレータ206の圧力を常時高くする必要があるので、アキュムレータ206に接続される図示されないポンプに加わる負荷が大きくなってしまう。
【0020】
本発明は、前記従来の油圧回路107の問題点を解決して、パワーローラを適正な位置に置くことができ、油圧回路のコストを低くすることができる無段変速機油圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そのために、本発明の無段変速機油圧回路においては、入力ディスク、出力ディスク、及び前記入力ディスクと出力ディスクとの間に配設された複数のパワーローラを備え、入力軸を介して伝達された回転を、無段に変速して出力するトロイダル式の無段変速装置と、前記入力ディスクを軸方向に移動させて前記パワーローラを挟持するためのエンドロードシリンダと、前記パワーローラをシフトさせるためのリアクションシリンダと、該リアクションシリンダの第1、第2の油室にそれぞれ第1、第2の油圧を発生させるための調圧装置と、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を前記エンドロードシリンダの油室に供給し、エンドロード圧を発生させる切替弁と、前記エンドロード圧が低くなったときに、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を、前記切替弁を介することなく前記エンドロードシリンダの油室に供給するための逆止弁とを有する。
【0022】
本発明の他の無段変速機油圧回路においては、さらに、前記切替弁は、第1、第2のパイロット圧によって切り替えられる方向制御弁である。
【0023】
本発明の更に他の無段変速機油圧回路においては、さらに、前記切替弁はシャトル弁である。
【0024】
本発明の更に他の無段変速機油圧回路においては、さらに、前記調圧装置と各第1、第2の油室との間にオリフィスが配設される。そして、前記逆止弁は、第1、第2の油室の入り口とオリフィスとの間に配設される。
【0025】
本発明の更に他の無段変速機油圧回路においては、さらに、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧が低くなったときに、エンドロード圧を低くする減圧装置を備える。
【0026】
本発明の更に他の無段変速機油圧回路においては、さらに、前記減圧装置は、前記切替弁によって構成される。
【0027】
本発明の更に他の無段変速機油圧回路においては、さらに、前記減圧装置は、所定の量以上に油が逆流するのを阻止し、所定の量以上の油をドレーンする吐出ダンプ弁である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、無段変速機油圧回路においては、入力ディスク、出力ディスク、及び前記入力ディスクと出力ディスクとの間に配設された複数のパワーローラを備え、入力軸を介して伝達された回転を、無段に変速して出力するトロイダル式の無段変速装置と、前記入力ディスクを軸方向に移動させて前記パワーローラを挟持するためのエンドロードシリンダと、前記パワーローラをシフトさせるためのリアクションシリンダと、該リアクションシリンダの第1、第2の油室にそれぞれ第1、第2の油圧を発生させるための調圧装置と、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を前記エンドロードシリンダの油室に供給し、エンドロード圧を発生させる切替弁と、前記エンドロード圧が低くなったときに、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を、前記切替弁を介することなく前記エンドロードシリンダの油室に供給するための逆止弁とを有する。
【0029】
この場合、エンドロード圧が低くなったときに、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧が、前記切替弁を介することなく、逆止弁を介して前記エンドロードシリンダの油室に供給されるので、急速にエンドロード圧を高くすることができる。したがって、パワーローラを急速に適正な位置に置くことができ、無段変速装置を安定させることができる。
【0030】
また、エンドロード圧を高くするためにアキュムレータを使用する必要がないので、油圧回路のコストを低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
図3は本発明の第1の実施の形態における無段変速機の概念図である。
【0033】
図において、11は無段変速機(IVT)であり、該無段変速機11は、トロイダル式の無段変速装置(バリエータ)12、ギヤ機構としてのプラネタリギヤ機構13、反転ギヤ機構14及びモード切換装置15等を備える。前記トロイダル式の無段変速装置には、ハーフトロイダル式及びフルトロイダル式の無段変速装置があり、本実施の形態においては、フルトロイダル式の無段変速装置について説明する。
【0034】
前記無段変速装置12は、回転自在に、かつ、互いに対向させて配設され、入力軸16と連結され、前方及び後方に配設された二つの入力ディスク17、各入力ディスク17間において、回転自在に配設され、各入力ディスク17と対向させて配設され、第1の伝動軸としての中空軸18と連結された出力ディスク19、及び前記各入力ディスク17及び出力ディスク19によって挟持された中間転動体としての2列のパワーローラ20を備える。各パワーローラ20は、入力ディスク17及び出力ディスク19の回転方向における複数箇所に配設される。なお、前記中空軸18は無段変速機11の出力軸として機能する。
【0035】
また、前記入力軸16は、車両駆動源としてのエンジンの出力軸と連結され、エンジンを駆動することによって発生させられた回転が伝達される。なお、前記エンジンに代えて、車両駆動源としてモータ等を使用することができる。
【0036】
前記各入力ディスク17及び出力ディスク19は、それぞれ対向する円形の一部を構成する円弧状の凹溝17a、19aを備え、各パワーローラ20を挟むことによって、二つのキャビティを備えたダブルキャビティが形成される。したがって、入力ディスク17同士のスラスト力を打ち消することができる。なお、本実施の形態においては、フルトロイダル式の無段変速装置が使用されるので、各パワーローラ20の傾転中心が各キャビティの中心に置かれる。
【0037】
前記パワーローラ20は、無段変速装置12の中心軸に対して直角の方向にシフトさせることによって傾斜させられ、入力ディスク17と出力ディスク19との各接触半径を変更する。これにより、無段変速装置12は、入力軸16を介して入力ディスク17に入力された回転を、無段に連続して変速し、出力ディスク19から中空軸18に出力する。本実施の形態においては、入力軸16の回転速度を入力速度niとし、中空軸18の回転速度を出力速度noとしたとき、入力速度niに対する出力速度noの比で表される変速比γは、−0.4〜−2.5にされる。なお、入力ディスク17に正方向の回転が入力されると、出力ディスク19が反転させられ、該出力ディスク19から逆方向の回転が出力されるので、前記変速比γは負の値を採る。
【0038】
前記プラネタリギヤ機構13は、ハイモード用として使用されるギヤユニット21及びローモード用として使用されるギヤユニット22を備える。前記パワーローラ20は、第1、第2のサンギヤS1、S2、該第1、第2のサンギヤS1、S2とそれぞれ噛(し)合する第1、第2のピニオンP1、P2、及び該第1、第2のピニオンP1、P2を支持する第1のキャリヤとしてのフロントキャリヤCRFの各要素を備える。また、ギヤユニット22は、シンプルプラネタリギヤから成り、第3のサンギヤS3、該第3のサンギヤS3と対向させて配設された第1のリングギヤR3、前記第3のサンギヤS3及び第1のリングギヤR3と噛合する第3のピニオンP3、並びに該第3のピニオンP3を支持する第2のキャリヤとしてのリヤキャリヤCRRの各要素を備える。
【0039】
そして、第1、第2のピニオンP1、P2は、一体構造を有する共通のロングピニオンから成り、共通の図示されないピニオンシャフトに対して回転自在に支持され、前記フロントキャリヤCRFは第1のリングギヤR3と連結される。また、前記フロントキャリヤCRFは、後方の入力ディスク17に直接連結されるとともに、入力軸16を介して前方の入力ディスク17に間接的に連結され、前記入力軸16を介して入力された入力速度niの回転が伝達される。
【0040】
また、前記第1のサンギヤS1は、中空軸18を介して出力ディスク19と連結され、入力ギヤとして機能し、無段変速装置12によって変速され、出力された出力速度noの回転が入力される。そして、前記第2のサンギヤS2は、第2の伝動軸としての中空軸26を介して、第3のサンギヤS3と連結されるとともに、更にモード切換装置15のハイモード用のハイクラッチHを介して出力軸23と連結される。前記第2、第3のサンギヤS2、S3によってハイモード用の出力ギヤが構成される。なお、車両を前進させようとしてエンジンを正方向に駆動したとき、出力軸23は逆方向に回転させられる。したがって、出力軸23は、図示されない反転用のギヤを介して差動装置としてのディファレンシャル装置と連結され、前記ギヤによって正方向に反転させられた回転がディファレンシャル装置に伝達され、更に駆動輪に伝達される。本実施の形態においては、反転用のギヤがディファレンシャル装置と別に配設されるようになっているが、反転用のギヤをディファレンシャル装置内に配設することができる。
【0041】
前記反転ギヤ機構14は、デュアルプラネタリギヤからなり、第4のサンギヤS0、該第4のサンギヤS0と対向させて配設され、無段変速機11を収容するケース10に固定された第2のリングギヤR0、互い噛合する第4、第5のピニオンP4、P5、及び該第4、第5のピニオンP4、P5を支持する前記リヤキャリヤCPRを備える。該リヤキャリヤCPRは、ギヤユニット22及び反転ギヤ機構14によって共用される。
【0042】
前記第4のピニオンP4は径方向内方において第4のサンギヤS0と、第5のピニオンP5は径方向外方において第2のリングギヤR0と噛合させられる。そして、第4のサンギヤS0はモード切換装置15のロークラッチLを介して出力軸23と連結される。前記第4のサンギヤS0によってローモード用の出力ギヤが構成される。
【0043】
また、前記モード切換装置15は、前記ロークラッチL及びハイクラッチHを備えるとともに、ロークラッチL及びハイクラッチHを係脱させるためのアクチュエータとして、図示されない第1、第2の油圧サーボを備える。なお、前記ロークラッチL及びハイクラッチHによって第1、第2のクラッチが構成される。
【0044】
次に、前記構成の無段変速機11の動作について説明する。
【0045】
図4は本発明の第1の実施の形態における無段変速機の動作を示す第1の速度線図、図5は本発明の第1の実施の形態における無段変速機の動作を示す第2の速度線図、図6は本発明の第1の実施の形態における変速特性図である。なお、図6において、横軸に変速比γを、縦軸に出力変速比ηを採ってある。該変速比ηは、出力軸23の回転速度を出力速度nとしたとき、前記入力速度niに対する出力速度nの比で表される。
【0046】
この場合、ローモードにおいては、第4のサンギヤS0の回転速度と等しい出力速度nが無段変速機11の出力速度NLとなり、ハイモードにおいては、第2、第3のサンギヤS2、S3の回転速度と等しい出力速度nが無段変速機11の出力速度をNHとなる。
【0047】
そして、第1のピニオンP1に対する第1のサンギヤS1のギヤ比をz1とし、第2のピニオンP2に対する第2のサンギヤS2のギヤ比をz2としたとき、本実施の形態においては、ギヤ比z1、z2は互いに異ならせて設定され、前記出力速度noと出力速度NHとが異ならせられる。なお、ギヤ比z1、z2を等しくし、前記出力速度noと出力速度NHとを等しくすることができる。
【0048】
前記第1の速度線図は、第1のサンギヤS1、第4のサンギヤS0、第2のリングギヤR0、リヤキャリヤCRR、フロントキャリヤCRF及び第1のリングギヤR3の各回転状態を、第2の速度線図は、第1〜第3のサンギヤS1〜S3、フロントキャリヤCRF及び第1のリングギヤR3の各回転状態を示す。なお、第1、第2の速度線図において、右方に向けて延びる矢印は正方向の回転状態を、左方に向けて延びる矢印は逆方向の回転状態を表す。
【0049】
まず、操作者である運転者が、所定の操作部を操作してローモードを設定すると、図示されない油圧回路において第1の油圧サーボに油が供給されてロークラッチLが係合させられ、第2の油圧サーボから油が排出されてハイクラッチHが解放される。これに伴って、図4に示されるように、前記入力軸16を介して、エンジンの回転がフロントキャリヤCRF及びリングギヤR3に伝達され、フロントキャリヤCRF及びリングギヤR3は入力速度niで回転させられる。そして、無段変速装置12に前記入力速度niの回転が伝達され、無段変速装置12によって変速が行われ、反転させられた出力速度noの回転が無段変速装置12から出力され、第1のサンギヤS1に伝達される。なお、前記油圧回路及び無段変速装置12によって無段変速機油圧回路が構成される。
【0050】
前記フロントキャリヤCRF及びリングギヤR3が入力速度niで回転させられると、第1のサンギヤS1が出力速度noで回転させられ、プラネタリギヤ機構13においてトルク循環が行われ、かつ、回転が合成され、リヤキャリヤCPRに正方向の回転速度ncの回転が出力される。そして、第4のサンギヤS0に、反転させられた逆方向の出力速度NLの回転が出力され、ロークラッチLを介して出力軸23に出力される。
【0051】
そして、前記無段変速装置12において、パワーローラ20の傾きが変更され、変速比γが負の方向において小さいアンダードライブ(U/D)側の変速から変速比γが負の方向において大きいオーバドライブ(O/D)側の変速に変化すると、サンギヤS1は、逆方向に回転する逆転状態において、出力速度noが負の方向において高くなり、それに伴って、回転速度ncが正の方向において低くなり、出力速度NLが負の方向において低くなる。その結果、図6に示されるように、出力変速比ηが負の方向において小さくなり、車両を前進させる際の駆動輪の回転速度、すなわち、前進出力速度が低くなり、車速が低くなる。
【0052】
続いて、無段変速装置12がギヤニュートラル位置(GN)に置かれると、回転速度ncが零(0)になり、トルクを無限に発散する状態が形成される。これに伴って、出力速度NLが0になり、出力変速比ηが0になり、車速が0になる。
【0053】
さらに、パワーローラ20の傾きが変更され、変速比γが負の方向において更に大きくされ、無段変速装置12が更にオーバドライブ側の変速を行うようになると、回転速度ncが負の方向において高くなり、出力速度NLが正の方向において高くなり、出力変速比ηが正の方向に大きくなり、車両を後進させる際の回転速度、すなわち、後進出力速度が高くなり、後退車速が高くなる。
【0054】
次に、運転者が、前記操作部を操作してハイモードを設定すると、前記油圧回路において第2の油圧サーボに油が供給されてハイクラッチHが係合させられ、第1の油圧サーボから油が排出されてロークラッチLが解放される。また、図5に示されるように、前記入力軸16を介して、エンジンの回転がフロントキャリヤCRF及びリングギヤR3に伝達され、フロントキャリヤCRF及びリングギヤR3は入力速度niで回転させられる。そして、無段変速装置12に前記入力速度niの回転が伝達され、無段変速装置12によって変速が行われ、反転させられた出力速度noの回転が無段変速装置12から出力され、第1のサンギヤS1に伝達される。
【0055】
前記フロントキャリヤCRF及びリングギヤR3が入力速度niで回転させられると、第1のサンギヤS1が出力速度noで回転させられ、プラネタリギヤ機構13において回転が合成され、第2、第3のサンギヤS2、S3に、反転させられた出力速度NHの回転が出力され、ハイクラッチHを介して出力軸23に出力される。なお、この場合、ロークラッチLが解放されているので、前記第4のサンギヤS0は空転する。
【0056】
そして、前記無段変速装置12において、パワーローラ20の傾きが変更され、アンダードライブ側の変速からオーバドライブ側の変速に変化すると、サンギヤS1は、逆方向に回転する逆転状態において、出力速度noが負の方向において高くなり、それに伴って、出力速度NHが負の方向において高くなる。その結果、出力変速比ηが負の方向において大きくなり、車両を前進させる際の前進出力速度が高くなり、車速が高くなる。
【0057】
したがって、図6に示されるように、ローモードにおいて、無段変速装置12が最もオーバドライブ側の点pt1に置かれると、変速比γは、約−2.5になり、無段変速機11の出力変速比ηは、約0.25になる。続いて、無段変速装置12がアンダードライブ側に連続して変移すると、変速比γは負の方向において徐々に小さくなり、変速比γが約−1.8になり、無段変速機11がギヤニュートラル位置に置かれると、出力変速比ηが0になる。
【0058】
続いて、無段変速装置12が更にアンダードライブ側に変移すると、変速比γが負の方向において小さくなるのに伴って、出力変速比ηが負の方向において大きくなり、無段変速装置12が最もアンダードライブ側の点pt2に到達し、前記速度比γが約−0.4になると、出力変速比ηは約−0.5になる。
【0059】
そして、この状態でモードがローモードからハイモードに切り換えられると、ハイモードにおいて、前記変速比γは約−0.4になり、出力変速比ηは約−0.5になり、無段変速装置12がオーバドライブ側に連続して変移すると、変速比γ及び出力変速比ηが負の方向において徐々に大きくなる。
【0060】
続いて、無段変速装置12が最もオーバドライブ側の点pt3に到達し、前記速度比γが約−2.5になると、出力変速比ηは最大変速比ηmaxである約−2.75になる。
【0061】
次に、前記構成の無段変速機11(図3)の構造について説明する。
【0062】
図7は本発明の第1の実施の形態における無段変速機の要部を示す断面図である。
【0063】
図において、10はケース、11は無段変速機、13はプラネタリギヤ機構であり、前記ケース10は、第1のケースとしてのハウジング31、第2のケースとしてのフロントケース32、第3のケースとしてのリヤケース33、第4のケースとしてのオイルパン34等を備え、それぞれ図示されない固定部材としてのボルトによって連結される。前記ハウジング31はエンジンのトルク変動を吸収するための図示されないダンパ装置を収容し、フロントケース32及びリヤケース33から成る変速機ケースは、無段変速装置12、プラネタリギヤ機構13(図3)、反転ギヤ機構14、モード切換装置15等の変速機構部を収容する。
【0064】
前記オイルパン34内には、油が所定の深さで収容され、無段変速装置12の下方に、第1のブロックとしてのバルブボディ80が、プラネタリギヤ機構13及び反転ギヤ機構14の下方に、油供給源としての図示されないオイルポンプ及び第2のブロックとしての図示されないバルブボディが配設される。前記オイルポンプをバルブボディに組み付けることによって、油圧ユニット83が構成される。
【0065】
また、前記ダンパ装置の出力軸と入力軸16とが連結され、該入力軸16の前端部にエンドロードシリンダ35を介して、前方の入力ディスク17が連結され、入力軸16の後端部にギヤユニット21を介して後方の入力ディスク17が連結される。
【0066】
前記エンドロードシリンダ35は、断面が「U」字状の形状を有する環状のシリンダ本体71、及び該シリンダ本体71内において摺動自在に配設されたピストン72を備え、前記シリンダ本体71とピストン72との間に油室73が形成される。そして、前記シリンダ本体71の内周縁が入力軸16に固定され、前記ピストン72の前端が前方の入力ディスク17の後端に固定される。
【0067】
また、ギヤユニット21のフロントキャリヤCRFは、キャリヤ本体42及び該キャリヤ本体42と一体に連結されたキャリヤカバー43から成る。前記キャリヤ本体42は、前端において、環状のプレート74に対して回転支持部材としてのベアリング75を介して回転自在に支持されるとともに、前記後方の入力ディスク17と係合させられて連結され、軸方向における中央において、入力軸16とスプライン係合させられ、後端において、固定部材としてのナット45を締め付けることによって、入力軸16の後端に固定される。
【0068】
また、前記後方の入力ディスク17とプレート74との間には、前記ベアリング75と並列にワンウェイクラッチ44が配設され、該ワンウェイクラッチ44は、入力ディスク17の逆方向に回転するのを防止する。
【0069】
前記キャリヤ本体42とキャリヤカバー43との間に、ピニオンシャフト46が架設され、第1、第2のピニオンP1、P2は、前記ピニオンシャフト46に対して、回転支持部材としてのニードルベアリング47によって回転自在に支持される。
【0070】
前記無段変速装置12において、出力ディスク19の内周縁に筒状体76が取り付けられ、出力ディスク19は、入力ディスク17に対して、回転支持部材としてのニードルベアリング77によって回転自在に支持される。そして、前記筒状体76の後端と中空軸18の前端とがスプライン嵌(かん)合によって係合させられ、中空軸18の後端に前記第1のサンギヤS1が形成される。前記中空軸18は、入力ディスク17に対して、回転支持部材としてのニードルベアリング38、39によって回転自在に支持される。なお、17a、19aは凹溝である。
【0071】
また、前記中空軸26は、前端において、入力ディスク17に対して、回転支持部材としてのニードルベアリング40によって回転自在に支持される。そして、前記中空軸26の前端に前記第2のサンギヤS2が形成され、中空軸26の後端に前記ハイクラッチH(図3)が接続される。
【0072】
なお、無段変速装置12とプラネタリギヤ機構13との間に、特に、フロントキャリヤCRFと入力ディスク17との間に他の部分より径の小さいくびれ部105が形成され、該くびれ部105に、前記ベアリング75及び入力軸16の回転を前記オイルポンプに伝達するためのスプロケット106が配設される。
【0073】
ところで、前述されたように、前記パワーローラ20は、無段変速装置12の中心軸に対して直角の方向にシフトさせることによって傾斜させられるようになっている。そこで、前記パワーローラ20をシフトさせたり、ハイクラッチH及びロークラッチLをを係脱したりするために油圧回路が形成される。
【0074】
図1は本発明の第1の実施の形態における油圧回路を示す図である。
【0075】
図において、35はエンドロードシリンダであり、前述されたように、該エンドロードシリンダ35は、シリンダ本体71、及び該シリンダ本体71内において摺動自在に配設されたピストン72を備え、前記シリンダ本体71とピストン72との間に油室73が形成され、該油室73にエンドロード圧が供給される。
【0076】
前記各パワーローラ20(図3)は、それぞれ、リアクションシリンダ79によって入力ディスク17と出力ディスク19との間でシフトさせられる。そして、前記リアクションシリンダ79はキャップc1、c2を備え、該キャップc1、c2に対して二つのヘッドh1、h2を備えた双頭のピストン88が移動自在に、かつ、摺動自在に配設され、キャップc1とヘッドh1との間に第1の油室91が、キャップc2とヘッドh2との間に第2の油室92が形成される。そして、前記各ピストン88の図示されない空洞内に軸が配設され、該軸によって各パワーローラ20が回転自在に支持される。
【0077】
また、各リアクションシリンダ79における前記各キャップc1、c2の端壁に第1、第2の油室91、92の入口301、302が形成される。なお、実際には、一つのヘッドを備えたピストンが使用され、該ピストンの両側に第1、第2の油室91、92が形成される。
【0078】
前記油圧回路は、オイルポンプ81、調圧装置84を備え、オイルポンプ81は、オイルパン34内の油を、吸引して油路L−1に吐出し、調圧装置84に供給する。該調圧装置84は、図示されない圧力制御弁等から成り、油路L−2を介して各第1の油室91に所定の第1の油圧p1を供給し、油路L−3を介して各第2の油室92に所定の第2の油圧p2を供給する。そのために、前記油路L−2と各入口301との間に油路L−5が接続され、各油路L−5にオリフィス305が配設され、前記油路L−3と各入口302との間に油路L−6が接続され、各油路L−6にオリフィス306が配設される。
【0079】
ところで、前記各パワーローラ20は、入力ディスク17から出力ディスク19にトルクを伝達するようになっているが、そのとき、各パワーローラ20に加わる反力と、出力ディスク19を回転させるのに必要なトルクとの間に不均衡が生じると、各パワーローラ20は自動的に角度を変えて前記不均衡を解消する。例えば、走行負荷が変動したり、アクセルペダルの踏込度が変化したりしたときに、第1、第2の油圧p1、p2の差によって表されるリアクション圧に抗して、パワーローラ20が無段変速装置12の中心軸に対して直角の方向にシフトさせられると、パワーローラ20の角度が変化して、変速比γが変化させられる。
【0080】
ところで、前記エンドロード圧を発生させるために、油路L−2、L−3間に油路L−8が接続され、該油路L−8に切替弁としての2重パイロット作動型の方向制御弁311が配設され、油路L−2、L−3の各油圧のうちの高い方の油圧が方向制御弁311を介して油路L−11に送られ、該油路L−11、L−12を介して油室73に供給される。
【0081】
そのために、前記方向制御弁311は、第1、第2のパイロット圧によって切り替えられ、位置A、Bを採り、位置Aで、油路L−2と油路L−11とを接続し、油路L−2の油を油室73に供給し、位置Bで、油路L−3と油路L−11とを接続し、油路L−3の油を油室73に供給し、油室73内においてエンドロード圧を発生させる。
【0082】
また、各油路L−5のうちの所定の油路L−5において、入口301とオリフィス305との間の部位AR1と方向制御弁311とが油路L−13を介して接続され、各油路L−6のうちの所定の油路L−6において、入口302とオリフィス306との間の部位AR2と方向制御弁311とが油路L−14を介して接続される。したがって、各リアクションシリンダ79のうちの、前記所定の油路L−5、L−6に対応するリアクションシリンダ79の第1の油圧p1が、油路L−5、L−13を介して前記第1のパイロット圧として方向制御弁311に供給される。また、前記所定の油路L−5、L−6に対応するリアクションシリンダ79の第2の油圧p2が、油路L−6、L−14を介して前記第2のパイロット圧として方向制御弁311に供給される。
【0083】
ところで、前記調圧装置84において、前記第1、第2の油圧p1、p2を発生させるための油圧PA、PB
PA<PB
が発生させられ、油圧PAが油路L−2に、油圧PBが油路L−3に供給され、定常状態になると、前記第1、第2の油圧p1、p2は、
p1=PA
p2=PB
になり、
p1<p2
になる。そして、前記第1の油圧p1が油路L−5、L−13を介して方向制御弁311に、前記第2の油圧p2が油路L−6、L−14を介して方向制御弁311に供給されると、方向制御弁311は位置Bに置かれ、油圧PBが油路L−3、L−11、L−12を介してエンドロードシリンダ35に供給され、エンドロード圧を油圧PBと等しくする。なお、前記油圧PA、PBは、前記調圧装置84によって独立に制御され、発生させられる。
【0084】
ところで、例えば、車両を急に制動したとき等においては、出力ディスク19に外力が加わり、パワーローラ20をシフトさせ、ピストン88を移動させようとする。その場合、前記油路L−5、L−6にオリフィス305、306が配設されるので、第1、第2の油圧p1、p2の差が大きくなるのに伴って、リアクション圧が高くなっても、油路L−5、L−6を介してリアクション圧をエンドロード圧に反映させることができない。
【0085】
そこで、本実施の形態においては、前記各部位AR1と油室73とが油路L−21、L−23、L−12を介して接続され、前記油路L−21に、各部位AR1から油室73への油の流れを許容し、逆方向の油の流れを阻止するチェックボール312が配設される。また、前記各部位AR2と油室73とが油路L−22、L−23、L−12を介して接続され、前記油路L−22に、部位AR2から油室73への油の流れを許容し、逆方向の油の流れを阻止するチェックボール313が配設される。なお、チェックボール312、313によって逆止弁が構成される。
【0086】
その結果、第1、第2の油圧p1、p2の高い方の油圧が、オリフィス305、306を介することなく、また、方向制御弁311を介することなく、チェックボール312、313のうちの一方を介して、油室73に供給される。したがって、リアクション圧が低くされるとともに、前記エンドロード圧が高くされるので、第1、第2の油圧p1、p2の高い方の油圧と前記エンドロード圧とを急速に等しくすることができる。そして、パワーローラ20を適正な位置に置くことができる。
【0087】
このように、本実施の形態においては、リアクション圧が高くなったときに、急速にエンドロード圧を高くすることができるので、パワーローラ20を急速に適正な位置に置くことができる。したがって、無段変速装置12を安定させることができる。
【0088】
また、エンドロード圧を高くするためにアキュムレータを使用する必要がないので、油圧回路のコストを低くすることができる。
【0089】
ところで、所定のエンドロード圧が発生している状態で、前記調圧装置84において発生させられ、油路L−3に供給される油圧がPBから低くされ、PC
PA<PC<PB
にされると、第1、第2の油圧p1、p2の差が小さくなり、リアクション圧が低くなる。ところが、本実施の形態においては、油室73が油路L−13、L−11、方向制御弁311、油路L−8、L−3、L−6から成る減圧回路を介して第2の油室92と接続されているので、前記エンドロード圧が低くされる。したがって、第1、第2の油圧p1、p2の高い方の油圧と前記エンドロード圧とを等しくすることができるので、パワーローラ20を適正な位置に置くことができる。なお、この場合、前記方向制御弁311によって減圧装置が構成される。
【0090】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0091】
図8は本発明の第2の実施の形態における油圧回路を示す図である。
【0092】
この場合、エンドロード圧を発生させるために、各油路L−5のうちの所定の油路L−5における入口301とオリフィス305との間の部位AR1と、対応する油路L−6における入口302とオリフィス306との間の部位AR2との間に油路L−31が接続され、該油路L−31に切替弁としてのシャトル弁331が配設され、第1、第2の油圧p1、p2のうちの高い方の油圧がシャトル弁331を介して油路L−33に送られ、該油路L−33を介して、減圧装置としての吐出ダンプ弁332の背圧側に背圧として加わる。
【0093】
また、前記第1、第2の油圧p1、p2のうちの高い方の油圧が、チェックボール312、313のうちの一方、油路L−23、L−12を介して油室73に供給され、エンドロード圧を発生させるとともに、油路L−34を介して前記吐出ダンプ弁332に供給され、内部圧として加わる。そして、該内部圧が前記背圧より高くなると、吐出ダンプ弁332内の油は、油路L−35を介してオイルパン34に排出される。
【0094】
ところで、例えば、車両を急に制動したとき等においては、出力ディスク19(図3)に外力が加わり、パワーローラ20をシフトさせ、ピストン88を移動させようとする。その場合、第1、第2の油室91、92と連通する油路L−5、L−6にオリフィス305、306が配設されるので、第1、第2の油圧p1、p2の差が大きくなるのに伴って、リアクション圧が高くなっても、油路L−5、L−6を介してリアクション圧をエンドロード圧に反映させることができない。
【0095】
この場合、第1、第2の油圧p1、p2の高い方の油圧が、チェックボール312、313のうちの一方を介して、油室73に供給される。したがって、リアクション圧が低くされるとともに、前記エンドロード圧が高くされるので、第1、第2の油圧p1、p2の高い方の油圧と前記エンドロード圧とを急速に等しくすることができる。そして、パワーローラ20を適正な位置に置くことができる。
【0096】
また、所定のエンドロード圧が発生している状態で、前記調圧装置84において発生させられ、油路L−3に供給される油圧がPBから低くされ、PC
PA<PC<PB
にされると、
にされると、第1、第2の油圧p1、p2の差が小さくなり、リアクション圧が低くなる。ところが、本実施の形態においては、油室73が油路L−13、L−34、吐出ダンプ弁332、油路L−35から成る減圧回路を介してオイルパン34と接続され、油をドレーンすることができるので、前記エンドロード圧が低くされる。したがって、第1、第2の油圧p1、p2の高い方の油圧と前記エンドロード圧とを等しくすることができるので、パワーローラ20を適正な位置に置くことができる。なお、この場合、前記吐出ダンプ弁332によって減圧装置が構成される。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施の形態における油圧回路を示す図である。
【図2】従来の無段変速機油圧回路を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における無段変速機の概念図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における無段変速機の動作を示す第1の速度線図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における無段変速機の動作を示す第2の速度線図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における変速特性図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における無段変速機の要部を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における油圧回路を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
12 無段変速装置
16 入力軸
17 入力ディスク
19 出力ディスク
20 パワーローラ
35 エンドロードシリンダ
73 油室
79 リアクションシリンダ
84 調圧装置
91、92 第1、第2の油室
305、306 オリフィス
311 方向制御弁
312、313 チェックボール
331 シャトル弁
332 吐出ダンプ弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ディスク、出力ディスク、及び前記入力ディスクと出力ディスクとの間に配設された複数のパワーローラを備え、入力軸を介して伝達された回転を、無段に変速して出力するトロイダル式の無段変速装置と、前記入力ディスクを軸方向に移動させて前記パワーローラを挟持するためのエンドロードシリンダと、前記パワーローラをシフトさせるためのリアクションシリンダと、該リアクションシリンダの第1、第2の油室にそれぞれ第1、第2の油圧を発生させるための調圧装置と、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を前記エンドロードシリンダの油室に供給し、エンドロード圧を発生させる切替弁と、前記エンドロード圧が低くなったときに、前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧を、前記切替弁を介することなく前記エンドロードシリンダの油室に供給するための逆止弁とを有することを特徴とする無段変速機油圧回路。
【請求項2】
前記切替弁は、第1、第2のパイロット圧によって切り替えられる方向制御弁である請求項1に記載の無段変速機油圧回路。
【請求項3】
前記切替弁はシャトル弁である請求項1に記載の無段変速機油圧回路。
【請求項4】
前記調圧装置と各第1、第2の油室との間にオリフィスが配設され、前記逆止弁は、第1、第2の油室の入り口とオリフィスとの間に配設される請求項1に記載の無段変速機油圧回路。
【請求項5】
前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧が低くなったときに、エンドロード圧を低くする減圧装置を備える請求項1に記載の無段変速機油圧回路。
【請求項6】
前記減圧装置は、前記切替弁によって構成される請求項5に記載の無段変速機油圧回路。
【請求項7】
前記減圧装置は、背圧側に前記第1、第2の油圧のうちの高い方の油圧が加わり、内部圧が前記背圧側の油圧より高くなると、油を排出する吐出ダンプ弁である請求項5に記載の無段変速機油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−24076(P2007−24076A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203191(P2005−203191)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【出願人】(301037257)トロトラック・(ディベロップメント)・リミテッド (13)
【Fターム(参考)】