説明

熱処理用治具及び半導体ウエーハの熱処理方法

【課題】シリコンウエーハ等を熱処理する際、スリップだけでなく、裏面周辺部や面取り部のキズの発生も確実に防ぐことができる熱処理用治具及び半導体ウエーハの熱処理方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ状の被処理体を水平に支持して熱処理する際に使用する熱処理用治具であって、前記被処理体の裏面側を支持する支持部を有し、該支持部の支持面が、凸曲面状に形成されていることを特徴とする熱処理用治具。例えば、被処理体を裏面周縁部に沿って支持する支持部を有する環状のサセプタ41とし、半導体ウエーハWの面取り部と裏面との境界部分が凸曲面状に形成された支持面46と接触するようにウエーハWを支持して熱処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハ状の被処理体、特にシリコンウエーハを熱処理する際に好適な熱処理用治具及びそれを用いた半導体ウエーハの熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶等の半導体インゴットから切り出したウエーハを用いてデバイスを作製する場合、ウエーハの加工プロセスから素子の形成プロセスまで多数の工程が介在する。それらの工程の一つに熱処理工程がある。この熱処理工程は、ウエーハの表層における無欠陥層の形成、ゲッタリング、結晶化、酸化膜形成、不純物拡散等を目的として行われる非常に重要なプロセスである。
【0003】
このようなウエーハの熱処理工程、例えば、酸化や不純物拡散に用いられる拡散炉(酸化・拡散装置)としては、ウエーハの大口径化に伴い、図4に示すような多数のウエーハWを所定の間隔をあけて水平に支持した状態で熱処理を行う縦型の熱処理炉20が主に用いられている。熱処理炉20内のウエーハWは、反応室22の周囲に設けられたヒータ24によって加熱することができる。熱処理中は、反応室22にはガス導入管26を介してガスが導入され、上方から下方に向かって流れてガス排気管28から外部に排出される。なお、使用するガスは熱処理の目的によって異なるが、主としてH、N、O、Ar等が用いられる。不純物拡散の場合には、これらのガスを不純物化合物ガスのキャリアガスとしても使用する。
【0004】
このような縦型熱処理炉20を用いてウエーハWを熱処理する際には、ウエーハを支持するための熱処理用治具として、多数のウエーハWを水平にセットする熱処理用縦型ボート10(以下、熱処理用ボート、縦型ボート、或いは単にボートという場合がある。)が用いられる。図5(A)は一般的な熱処理用ボート10の概略を示している。4本の棒状(円柱状)の支柱14の両端部に一対の板材(天板16a、底板16b)が連結されている。図6(A)に示されるように、各支柱14には多数のスリット(溝)11が形成され、各スリット11間の半円形の凸部がウエーハWの支持部12として作用する。
【0005】
このように支柱14に多数の溝11(支持部12)を形成した熱処理用ボート10は、一般的にショートフィンガータイプと呼ばれている。熱処理する際には、図5(B)に示されるように、各支柱14の同じ高さに形成されている支持部12によりウエーハWの裏面(下面)周辺部が4ヶ所で水平に支持されることになる。
なお、ボートの支持部については、例えば図6(B)に示したように角状の支柱15に長方形の支持部13を形成したものもある。
【0006】
上記のようにウエーハWの裏面周辺部を支持した場合、ウエーハWの自重が支持部に集中するため、これにより生ずる応力が常に作用している。そして、この応力が臨界剪断応力を超えると、ウエーハ内に転位が発生する。この転位は応力の作用により巨視的な大きさにまで広がり、スリップとなる。スリップの発生はウエーハの品質を大きく低下させるため、これを防ぐことが重要である。
【0007】
しかし、一般に高温雰囲気下では、ウエーハにスリップが著しく発生し易くなる。特に、半導体デバイスの高集積化に伴いウエーハ一枚当たりのデバイス収率を上げるために、ウエーハの大直径化が進んでいる。その結果、ウエーハの自重が大きくなり、それに伴いウエーハに作用する応力が増大する傾向にあり、ウエーハ中にスリップがより発生し易くなってきている。直径200mm以上、特に300mmの大直径のシリコンウエーハは、熱処理時にウエーハが撓んでボートの支持部の先端の角が裏面にあたって応力が集中し、スリップが生じ易いという問題がある。
【0008】
スリップの発生を防ぐため様々な熱処理用治具が提案されており、例えば縦型ボートの支持部の支持面をウエーハの撓みに対応するように傾斜させたものが提案されている(特許文献1参照)。このように支持面を所定の角度で傾斜させたものでは、ウエーハは面取り部で支持され、熱処理中にウエーハが撓んだときには、ウエーハの裏面が支持面と面接触した状態で支持されるため、応力集中が緩和されてスリップの発生が抑制されるとしている。
【0009】
また、図7(A)(B)に示したような環状又は円弧状のサセプタ31も提案されている(特許文献2参照)。このような環状(円弧状)のサセプタ31をボートの支持部に載置してサセプタ31を介すことで、ウエーハWを裏面周縁部に沿って数mmから数十mmの幅で全周または一部を支持することができる。従って、ウエーハWは、より広い面積で支持されて応力が分散されるため、スリップの発生を抑制することができる。なお、図7に示したサセプタ31では開口部(切り欠き部)32が設けられており、ウエーハWを移載する時に移載機が通過できるようになっている。
さらに、スリップの発生をより効果的に防止するため、ウエーハの撓みに対応するように支持面を傾斜させたサセプタも提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
上記のようにウエーハの撓みに対応するように支持面を傾斜させたボートやサセプタでは、熱処理中、ウエーハが撓んでも広い面積でウエーハと接し、応力が分散されるため、スリップの発生を抑制する効果が得られる。ところが、支持面を傾斜させたサセプタを用いてウエーハの熱処理を行った場合でも、ウエーハの裏面や面取り部にキズが多数発生することがあった。しかも、ウエーハにより撓み方が異なるため、裏面の内側にキズが発生したり、面取り部にキズが発生したり、キズの発生位置を特定することができなかった。
【0011】
特に最近では、半導体デバイスの高集積化に伴い、スリップのほか、ウエーハの裏面に発生するキズも重要視されている。これは、ピンチャック方式のステッパーを用いる場合、ピンチャックのピンの上にウエーハの裏面キズが乗ったときに、デフォーカス(焦点不良)が起こることが懸念されているためである。従って、スリップだけでなく、裏面キズの発生も抑えることが重要となっており、熱処理時の裏面キズの発生は、裏面の周辺部といえどもその後のデバイス工程で問題となることがあった。さらに、ウエーハの面取り部にキズを付けてしまうと、その後のデバイス工程でのウエーハ割れの原因となると言われている。
【0012】
【特許文献1】特開平9−251961号公報
【特許文献2】特開平6−260438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このような問題点に鑑み、本発明では、シリコンウエーハ等を熱処理する際、スリップだけでなく、裏面周辺部や面取り部のキズの発生も確実に防ぐことができる熱処理用治具及び半導体ウエーハの熱処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明によれば、ウエーハ状の被処理体を水平に支持して熱処理する際に使用する熱処理用治具であって、前記被処理体の裏面側を支持する支持部を有し、該支持部の支持面が、凸曲面状に形成されていることを特徴とする熱処理用治具が提供される(請求項1)。
【0015】
このように、支持面が凸曲面状に形成されている熱処理用治具とすれば、例えば、シリコンウエーハを、常に面取り部と裏面との境界部分が凸曲面状の支持面と接するように支持することができ、裏面キズの発生を確実に防ぐことができる。
【0016】
この場合、支持面の凸曲面は、治具の内側に向けて下方に傾斜しているものとすることができる(請求項2)。
このように支持面の凸曲面が治具の内側に向けて下方に傾斜していれば、被処理体の面取り部と裏面との境界部分が支持面により接し易くなり、裏面キズの発生をより確実に防ぐことができる。
【0017】
そして、支持面の凸曲面は、曲率半径が0.5〜500mmの範囲内で一定または変化しているものとすることが好ましい(請求項3)。
このような曲率半径の範囲内となる凸曲面であれば、応力集中によるスリップやキズがより発生し難く、また、キズの発生領域をより小さくすることができる。
【0018】
前記熱処理用治具は、天板と、底板と、該天板と底板の間に固定された支柱とを有し、該支柱に前記支持部が設けられている熱処理用縦型ボート(請求項4)、あるいは、前記被処理体を裏面周縁部に沿って支持する支持部を有する円弧状または環状のサセプタとすることができる(請求項5)。
これらの形態の熱処理用治具は半導体ウエーハの熱処理に多く使用されており、支持面を本発明のような凸曲面とすれば、スリップに限らず、裏面キズや面取り部のキズの発生も効果的に抑制することができる。
【0019】
また、本発明によれば、面取り加工されている半導体ウエーハを熱処理する方法において、前記熱処理用治具を用い、前記半導体ウエーハの面取り部と裏面との境界部分が前記凸曲面状に形成された支持面と接触するようにウエーハを支持して熱処理を行うことを特徴とする半導体ウエーハの熱処理方法が提供される(請求項6)。
本発明に係る熱処理用治具を用いて上記のようにしてウエーハの熱処理を行えば、ウエーハが変形したとしても、常に境界部分が支持面と接した状態で支持されるため、面取り部や裏面の内側深くにキズが発生することはなく、デバイス工程で問題となるような裏面キズや面取り部のキズの発生を防ぐことができる。
【0020】
この場合、前記熱処理する半導体ウエーハは、シリコンウエーハとすることができる(請求項7)。
半導体ウエーハとして特にシリコンウエーハは大直径化しており自重が大きくなっているので、スリップや裏面キズ等が発生し易く、問題となることが多い。そこで、本発明の熱処理用治具を用いてシリコンウエーハの熱処理を行えば、スリップだけでなく裏面キズや面取り部のキズの発生も確実に抑え、歩留りを向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る熱処理用治具は、凸曲面状の支持面により被処理体を支持するものであり、スリップだけでなく、裏面キズや面取り部のキズの発生を確実に防止することができる。従って、例えば、直径300mmの面取り加工されたシリコンウエーハを熱処理する場合に、本発明による支持面が凸曲面状に形成された環状のサセプタを用いてウエーハの裏面と面取り部との境界部分を支持することで、デバイス工程でデフォーカス等の原因となり得る裏面キズを発生させず、かつ割れの原因となる面取り部のキズの発生を抑制し、結果として歩留りを大きく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面に基づいて本発明についてより詳しく説明する。
本発明者は、本発明の完成に先立ち、支持面を傾斜させたボートやサセプタを用いてシリコンウエーハを熱処理した場合に、ウエーハの裏面や面取り部にキズが発生する原因を調査したところ、以下のようなことが判明した。
まず、熱処理中、ウエーハが弾性変形すると、図8(A)に示したように、ウエーハWの裏面8が、ボートの支持部先端あるいは環状サセプタ31aの内側の角部37との接触を繰り返して多数の裏面キズ9が生じることが分かった。
また、ウエーハWの裏面8は支持面36と広い面積で接しているため、図8(B)に示したようにサセプタ31bの支持面36のラフネスが大きい場合にも、熱処理中、支持面36の微小な凹凸によって裏面キズ9が発生し易いことが分かった。
【0023】
しかも、このような支持面36を傾斜させたボート等でウエーハWを支持した場合、熱処理中のウエーハの撓み方や傾斜勾配あるいは面取り形状等によりウエーハの裏面内側深くにキズが生じたり(図8(A))、外側に生じたり(図8(B))、さらには図8(c)に示したように、面取り部7がサセプタ31cにより支持されてキズ9cが生じている場合もあった。
【0024】
なお、ボートの支持部の先端あるいはサセプタの内側の角部37を大きく面取りして丸めたものとすれば角部37に起因する裏面キズ9の発生を抑えることはできるが、この場合でも、ウエーハの裏面周辺部は、数mm幅で支持面と接することになるため、支持面の面粗さに起因する裏面キズ9の発生を防ぐことができない。
また、支持面の傾斜角度を大きくし、ウエーハが撓んだ場合でも常に面取り部7のみを支持することも考えられるが、前述のように面取り部7にキズが入ると、ウエーハのワレやパーティクルの発生原因となるおそれがある。
【0025】
そこで、本発明者は、ウエーハを支持する以上、支持部(支持面)との接点において多少のキズが発生する可能性があるのはやむを得ないが、たとえキズが発生したとしても最も問題とならない位置にキズが発生するようにすればよいと考え、調査、検討を行った。そして、ウエーハの面取り部と裏面との境界領域が常に接触するようにコントロールできれば、その後のデバイス工程でも歩留り低下等の悪影響を最小限に抑えることができることが分かった。
【0026】
これらの知見に基づき、本発明者はさらに鋭意研究を重ねた結果、ウエーハを熱処理する際にウエーハを水平に支持する熱処理用治具において、支持部の支持面を、凸曲面状に形成させることで、ウエーハの面取り部と裏面との境界部分を確実に支持することができ、それによりたとえキズが生じても最も問題の少ない位置にキズが入るように制御することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0027】
以下、好適な態様として、シリコンウエーハの熱処理の際に使用する本発明に係る熱処理用縦型ボート及び環状のサセプタについて添付の図面に基づいて具体的に説明する。
図1は、本発明に係る熱処理用縦型ボートの一例を示している。この熱処理用ボート1は、天板2と、底板3と、4本の支柱4とを有し、各支柱4は天板2と底板3の間に固定されている。各支柱4には所定の間隔で支持部5が設けられており、支持部5の支持面6は、ボート1の内側に向けて下方に傾斜しているとともに凸曲面状に形成されている。
【0028】
一方、図2は、本発明に係る環状のサセプタの一例を示しており、(A)は斜視図、(B)は断面図である。このサセプタ41は、上側が支持部となり、前記縦型ボート1と同様、支持面46が、サセプタ41の内側に向けて下方に傾斜しているとともに凸曲面状に形成されている。
【0029】
このような縦型ボート1あるいは環状のサセプタ41では、支持面6,46を下方に傾斜する凸曲面状に形成したものとされているので、熱処理するウエーハWは、熱処理時に撓むなどして変形した場合でも、常に面取り部と裏面との境界部分が支持面6,46と接するように支持されることになる。
【0030】
例えば環状のサセプタ41を用いる場合、図3に示されるように、ウエーハWの面取り部7と裏面8との境界部分47が凸曲面状に形成された支持面46と接触した状態で支持されることになる。このように面取り部7と裏面8との境界部分47を支持するようにすれば、熱処理中、ウエーハWが弾性変形しても、図8に示したような角部37が無いため、角部37との接触を防ぐことができる。また、支持面46のラフネスが多少粗くても、ウエーハWの面取り部7や裏面8は支持面46と接触することは無い。すなわち、ウエーハは常に面取り部7と裏面8との境界部分47で支持面46と接触することになる。従って、ウエーハWの面取り部7や裏面8にキズが発生するのを確実に防ぐことができる。
【0031】
一方、ウエーハWの面取り部7と裏面8との境界部分47、すなわち支持面46との接点には多少のキズが発生することがあるが、キズの発生箇所が狭く、境界部分47にある程度のキズが入っても、その後のデバイス工程でほとんど問題となることはない。なお、場合によっては、境界部分47から1mm以内範囲で多少のキズが入ることも考えられるが、この範囲内であれば問題は少なく、影響を最小限に抑えることができる。
【0032】
支持面の凸曲面は、熱処理するウエーハの大きさ(直径)、面取り部の形状等に応じて適宜設定すれば良い。
例えば、シリコンウエーハであれば、ウエーハの面取り部の幅は、面取り形状、仕様等により多少異なるが、ウエーハの直径に係わらず一般的に外周端部から0.3〜0.4mm程度の範囲である。このような面取り部の幅や形状を考慮し、熱処理するウエーハの面取り部と裏面との境界部分を支持するように支持面の凸曲面を形成すれば良い。ただし、凸曲面の曲率半径が0.5mm未満であると、接触面積が小さすぎて応力集中が起き、深いキズやスリップの発生原因となるおそがあるので、0.5mm以上、特に5mm以上とすることが好ましい。
【0033】
一方、凸曲面の曲率半径が500mmを超えると、比較的なだらかな面となるため応力集中はより緩和されるが、接触面積が大きくなるため、キズの発生領域が大きくなるおそれがある。従って、支持面の曲面形状を規定する曲率半径を0.5〜500mmの間で設定すれば、キズの発生をより効果的に抑制することができると同時にキズの発生領域もより小さくすることができる。
なお、凸曲面の曲率半径は一定のものに限定されず、0.5〜500mmの範囲内で変化しているものとしても良く、例えば、凸曲面の曲率半径がボートの内側に近くなるほど連続的に小さくなるような支持面としても良い。
【0034】
また、支持面の表面粗さはできるだけ小さくすることが好ましい。支持面の表面粗さが大きいと、ウエーハと支持面との間に点接触が生じ、応力が集中して比較的深いキズを引き起こすおそれがある。本発明の熱処理用治具では、ウエーハの面取り部と裏面との境界部分を支持することができるため、たとえこの境界部分に多少のキズが入ってもあまり問題とはならないが、深いキズの発生はできるだけ避けた方が良い。従って、エッチング、鏡面研磨等により支持面の面粗さを十分小さくすることで、キズの発生をより効果的に防ぐことが好ましい。
【0035】
本発明に係る熱処理用治具の材質については、被処理体の材質や熱処理条件等に応じて適宜決めれば良く、シリコンウエーハの熱処理に使用する場合には、表面の材質をSiO、SiCまたはSiとすれば、熱処理中の汚染を効果的に防ぐことができる。例えば、金属不純物をほとんど含有していない硬質の高純度炭化珪素からなる熱処理用ボートとすれば、シリコンウエーハの汚染を防ぎ、1000℃以上、特に1200℃以上の高温で熱処理を行う際にもほとんど変形せず、また、長期間使用できるという利点もある。特に、CVD−SiCコートしたものであれば熱処理中に発生する金属汚染をより低減させることができ、好ましい。
【0036】
なお、本発明に係る熱処理用治具の支持面の形状は凸曲面状に形成されていれば、必ずしも治具の内側に向けて下方に傾斜している必要はない。例えば、図9(A)に示したように断面がかまぼこ形のサセプタ51や、図9(B)に示したように支持面の凸曲面が全体にわたって大きな曲率半径を有するサセプタ61としても良い。これらのサセプタ51,61はいずれも支持面56,66が凸曲面状に形成されており、ウエーハWの面取り部と裏面との境界部分が支持面56,66と接した状態で支持することができる。
【0037】
また、支持面以外の形状については特に限定されるものではなく、サセプタであれば、環状のもののほか、ウエーハWをサセプタ上に移載する時に移載機を通過させることができるように開口部(切り欠き部)が形成された円弧状のサセプタとしても良い。
一方、熱処理用ボートであれば、支柱の数は4本に限らず、増減が可能であり、すなわち3本以下、あるいは5本以上としても良い。また、支持部の形状については、支柱に、図2に示したサセプタと同様の環状あるいは円弧状の支持部を形成したものとすることもできる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
図2に示したような支持面が内側に向けて下方に傾斜しているとともに凸曲面状に形成されている環状のサセプタを用意した。このサセプタは、SiC製のものであり、外径305mm、内径290mmであり、支持面の凸曲面は、曲率半径が約150〜10mmの範囲内で内側に向けて曲率半径を小さくしたものとした。
このような環状のサセプタを、ショートフィンガータイプの熱処理用ボートにセットした。そして、面取り加工した直径300mmのシリコンウエーハを、その面取り部と裏面との境界部分がサセプタの支持面と接触するように載置した。
【0039】
このように熱処理用ボートに、凸曲面状の支持面を有する環状サセプタを介してシリコンウエーハを30枚支持し、図4に示すような熱処理炉内に搬入した。そして、炉内で、アルゴン雰囲気中、1200℃、1時間の熱処理を行った。
熱処理後、熱処理炉からボートを搬出し、熱処理後のウエーハの裏面を目視にて検査したところ、いずれのウエーハにもスリップの発生は確認されず、また、裏面キズは多少発生していたが、面取り部と裏面との境界領域内であり、その後のデバイス工程でも問題とならないものであった。
【0040】
(比較例)
図8に示したような支持面が平坦面で傾斜した環状のサセプタを用いて、実施例1と同様の熱処理条件でシリコンウエーハの熱処理を行った。なお、使用したサセプタは、外径310mm、内径260mm、支持面の傾斜角度は2°とした。
熱処理後のウエーハを同様に検査したところ、全てのウエーハで、外周端部から20mmの範囲内で微小な裏面キズが多数発生しており、しかも発生位置がウエーハによってばらついていることが確認された。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、本発明に係る熱処理用治具を用いて熱処理する被処理体は、シリコンウエーハに限らず、他の半導体ウエーハ等を熱処理する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る熱処理用縦型ボートの一例を示す概略正面図である。
【図2】本発明に係る環状のサセプタの一例を示す概略図である。 (A)斜視図 (B)断面図
【図3】支持部を拡大した概略図である。
【図4】縦型熱処理炉の一例を示す概略図である。
【図5】従来の熱処理用縦型ボートの一例を示す概略図である。 (A)正面図 (B)横方向断面図(ウエーハを支持した状態)
【図6】従来の熱処理用ボートにおけるウエーハ支持部を示す概略斜視図である。 (A)半円形の支持部 (B)長方形の支持部
【図7】開口部を有する従来のサセプタの一例を示す概略図である。 (A)平面図 (B)断面図(ウエーハを支持した状態)
【図8】支持面を傾斜させたサセプタの支持部を拡大した概略図である。
【図9】本発明に係る環状のサセプタの他の例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1…熱処理用縦型ボート、 2…天板、 3…底板、 4…支柱、 5…支持部、
6…支持面、 7…面取り部、 8…裏面、 9…裏面キズ、 10…熱処理用ボート、
11…スリット(溝)、 12,13…支持部、 14,15…支柱、
20…熱処理炉、 31…サセプタ、 36,46,56,66…支持面、
37…角部、 41,51,61…環状サセプタ、 47…境界部分(接点)、
W…ウエーハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハ状の被処理体を水平に支持して熱処理する際に使用する熱処理用治具であって、前記被処理体の裏面側を支持する支持部を有し、該支持部の支持面が、凸曲面状に形成されていることを特徴とする熱処理用治具。
【請求項2】
前記支持面の凸曲面は、治具の内側に向けて下方に傾斜しているものであることを特徴とする請求項1に記載の熱処理用治具。
【請求項3】
前記支持面の凸曲面は、曲率半径が0.5〜500mmの範囲内で一定または変化しているものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱処理用治具。
【請求項4】
前記熱処理用治具が、天板と、底板と、該天板と底板の間に固定された支柱とを有し、該支柱に前記支持部が設けられている熱処理用縦型ボートであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱処理用治具。
【請求項5】
前記熱処理用治具が、前記被処理体を裏面周縁部に沿って支持する支持部を有する円弧状または環状のサセプタであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱処理用治具。
【請求項6】
面取り加工されている半導体ウエーハを熱処理する方法において、前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の熱処理用治具を用い、前記半導体ウエーハの面取り部と裏面との境界部分が前記凸曲面状に形成された支持面と接触するようにウエーハを支持して熱処理を行うことを特徴とする半導体ウエーハの熱処理方法。
【請求項7】
前記熱処理する半導体ウエーハが、シリコンウエーハであることを特徴とする請求項6に記載の半導体ウエーハの熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−5271(P2006−5271A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182135(P2004−182135)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】