説明

熱処理装置

【課題】パック食材等の対象物を、小さなスペースで効率的に熱処理することが可能な熱処理装置を提供することにある。
【解決手段】熱処理対象物が収納可能とされた収納部25と、前記熱処理対象物に熱媒体Mを噴射するノズル30とを備えた熱処理装置1であって、前記収納部25の下部に形成され、前記ノズル30から噴射された前記熱媒体Mを受ける熱媒体貯留部25Aと、前記熱媒体貯留部25A内の前記熱媒体Mを前記ノズル30に循環させる熱媒体循環回路40と、温度調整手段とを備え、前記温度調整手段は、前記熱媒体を加熱する加熱部51と、前記熱媒体から熱を除去する冷却部60とを有し、前記熱媒体Mの温度に基づいて、前記熱媒体Mの温度調整をすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食材等の対象物を熱処理するための熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、食材や調理された食品を保存する場合に、真空包装袋に入れた食材等(以下、パック食材等という)を調理する真空調理や、例えば、スチームコンベクションオーブンを用いて加熱、殺菌した後に、ブラストチラーを用いて調理対象を冷却するクックチルが広く行われている。
このようなパック食材等の調理、保存に際しては、食材を真空包装した状態で加熱、冷却する真空調理が広く行われており、パック食材等を加熱、殺菌するための技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、パック食材を加熱、冷却する装置として、加熱冷却装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
一方、加熱、冷却して冷凍保存したパック食材を給食等に用いる場合に、パック食材を容器内に入れ、容器内を大気圧よりも低圧にして一定温度の飽和蒸気を容器内に供給して、低温で急速な解凍を行う真空解凍に関する技術が開示されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照。)。
【0004】
このようなパック食材等の熱処理において、例えば、肉等のパック食材を加熱する場合には、食材の味覚、風味の低下を防ぐために、タンパク質凝固温度等を長時間超えないようにして加熱することが必要とされ、また、解凍する場合には、過解凍、解凍不足による品質の低下を防ぐために、供給する飽和蒸気の温度、圧力等を高精度に制御することが必要とされる。
【0005】
そのため、熱処理装置110を構成する際に、図9に示すように、例えば、熱処理装置本体120に冷却水タンク131と冷却装置132とを接続し、冷却装置132で冷却した冷却水を冷水タンク131に多量に貯留することで、冷却初期に多量の冷却水を投入することで安定した温度の水を確保できるようにする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−319767号公報
【特許文献2】特許第3546082号公報
【特許文献3】特開2004−357627号公報
【特許文献4】特開2005−218405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成の熱処理装置110では、熱処理装置本体120に加えて冷却水タンク131、冷却装置132が必要なうえ、これらを接続する配管133、134が必要であるために大きなスペースが必要である。
一方、水温が上昇した場合には、例えば、モータバルブの開度を調整して、投入する冷却水の量を細かく制御する必要があり、効率的な温度調整が容易でない場合がある。
そのため、小さなスペースで効率的に熱処理することが可能な熱処理装置に対する技術的要請がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、パック食材等の熱処理対象物を、小さなスペースで効率的に熱処理することが可能な熱処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1記載の発明は、熱処理対象物が収納可能とされた収納部と、前記収納部内に配置され、前記熱処理対象物に熱媒体を噴射するノズルと、前記収納部が内部に配置される筐体と、を備えた熱処理装置であって、前記収納部の下部に形成され、前記ノズルから噴射された前記熱媒体を受けるとともに貯留する熱媒体貯留部と、前記熱媒体貯留部内に貯留された前記熱媒体を前記ノズルに循環させる熱媒体循環回路と、温度調整手段と、を備え、前記温度調整手段は、前記熱媒体貯留部と前記熱媒体循環回路の少なくともいずれかに一方に配置され前記熱媒体を加熱する加熱部と、前記熱媒体貯留部と前記熱媒体循環回路の少なくともいずれか一方に配置され、前記熱媒体と冷媒とを熱交換して冷却する冷却部とを有し、前記熱媒体の温度に基づき、前記加熱部による前記熱媒体の加熱と、前記冷却部による前記熱媒体の冷却の少なくともいずれかを行なうことにより前記熱媒体の温度調整をすることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る熱処理装置によれば、加熱部の熱供給部(例えば、蒸気供給部や加熱用熱交換器等)と、冷却部の冷却用熱交換器等とが別に設けられているので、加熱過剰となった際には、冷却用熱交換器に冷媒を通じて熱媒体の温度を急速に低下させことができる。
また、冷却過剰になった際には、熱供給部からの熱供給(例えば、蒸気の注入、ヒータ加熱、加熱用熱交換器への加熱媒体の流通等)により、熱媒体の温度を急速に上昇することができる。その結果、効率的な、熱処理を行うことができる。
また、冷却で用いる冷却水を、熱媒体とは別に生成、流通することが必要ないので、冷却部の小型化、ひいては熱処理装置の小型化が可能となり、省スペースをすることができる。
また、熱媒体貯留部に熱媒体が貯留されているので、熱媒体の温度の変動や偏りの小さい温度調整をすることができる。
この明細書において、熱処理とは、パック食材等をはじめとする食材又は調理された食品に対する、加熱処理、冷却処理、解凍処理のいずれかひとつ又は複数を組み合わせて処理することを意味する。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の熱処理装置であって、前記冷却部は、前記筐体内に配置された冷却装置で圧縮した冷媒を、膨張器で膨張させて熱交換することを特徴とする。
【0012】
この発明に係る熱処理装置によれば、冷却装置において液化した冷媒を熱交換部において膨張、冷却させる冷却部を有するので、効率的で安定した冷却が可能となり、また、冷却部を筐体内に配置することにより、設置面積を小さくすることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の熱処理装置であって、前記温度調整手段は、前記熱媒体貯留部又は前記熱媒体循環回路に水を供給する給水装置と、前記熱媒体を外部に排出する排出手段とを備え、前記給水装置からの給水により前記熱媒体の温度を調整可能とされていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る熱処理装置によれば、温度調整手段が、熱媒体貯留部又は熱媒体循環回路に水を供給する給水装置と熱媒体を外部に排出する排出手段とを備えているので、常温水を供給することで、熱処理対象物の過冷却状態を効率的に解消することができる。また、給水装置から給水しながら熱処理後の熱媒体を排出させることにより、常温水との温度差が大きい熱処理対象物を効率的に冷却又は加温することができる。したがって、小さなスペースで効率的に熱処理することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱処理装置であって、前記温度調整手段は、前記熱媒体貯留部内の熱媒体の温度測定値と、前記ノズルから噴射される熱媒体の温度測定値の少なくともいずれか一方に基づき、前記熱媒体の温度を調整するように構成されていることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る熱処理装置によれば、温度調整手段が、熱媒体貯留部内の熱媒体の温度測定値と、ノズルから噴射される熱媒体の温度測定値の少なくともいずれか一方に基づいて熱媒体を温度調整するので、適切な温度調整をすることができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る熱処理装置によれば、熱処理対象である食材等を、小さなスペースで効率的に熱処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る熱処理装置を正面からみた図であり、(a)は透視図を、(b)は台車を載置した状態の収納部の縦断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る熱処理装置を側面からみた透視図である。
【図3】第1の実施形態に係る熱処理装置を平面視した図であり、(a)は透視図を、(b)は台車を載置した状態の図1(b)X−Xにおける横断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る熱処理装置の概略回路図である。
【図5】第1の実施形態に係る温度制御手段の概略構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る熱処理装置の概略回路図である。
【図7】第3の実施形態に係る熱処理装置の概略回路図である。
【図8】従来の熱処理装置の概略構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1から図5を参照し、この発明の第1の実施形態について説明する。
図1から図5は、この発明に係る熱処理装置の概略構成の一例を示す図であり、符号1は、熱処理装置を示している。この実施形態において、熱処理対象物は、例えば、パック食材Wとされている。
【0020】
熱処理装置1は、筐体20と、筐体20内に配置されパック食材Wが収納とされる収納部25と、熱媒体貯留部25Aと、収納部25内に設けられ熱媒体Mを噴射するノズル30と、熱媒体Mをノズル30に循環させる熱媒体循環回路40と、温度調整手段50と、給水装置52と、薬剤供給部55とを備えている。
【0021】
この実施の形態において、熱媒体Mは、給水装置52を経由して給水源Aから供給される水から構成されている。なお、給水源Aから供給され、熱媒体貯留部25A又は熱媒体循環回路40に流入するまでを常温水Jで示し、熱媒体貯留部25Aに貯留され又は熱媒体循環回路40に流入した後は熱媒体Mで示すものとする。
【0022】
筐体20は、図1から図3に示すように、外形が略直方体とされ、ひとつの側面に矩形状の開口部22が形成されており、開口部22を通じて、台車24に積載されたパック食材W等を収納部25に出し入れ可能とされている。また、開口部22には開口扉23が設けられ、開口部22を液密に開閉可能とされている。
【0023】
収納部25は、略直方体に形成され、筐体20に配置した状態にて開口部22と対応する部分が開口しており、開口扉23を閉めた状態で、収納部25は、外部と液密となるように構成されている。
【0024】
熱媒体貯留部25Aは、収納部25の下部に収納部25の一部として形成され、給水装置52を介して給水源Aに接続され、給水源Aから流入した常温水Jを熱媒体Mとして貯留可能とされている。また、熱媒体貯留部25Aは、ノズル30から噴射された熱媒体Mを受けることができるようになっている。
【0025】
また、図4に示すように、熱媒体貯留部25Aには、熱媒体Mの貯留上限に対応する位置にオーバフロー配管25Bが接続されており、給水装置52からの常温水Jの供給及び熱媒体貯留部25Aに注入された蒸気が凝縮して熱媒体Mの容積が増加した場合に、余剰の熱媒体Mがオーバフロー配管25Bから排出されるようになっている。
【0026】
台車24は、熱媒体Mが流通可能な貫通孔が複数形成されパック食材Wが収納される受け皿は、上下方向に間隔をあけて複数積載可能とされ、台車24を自在に移動するための車輪24Aによって、収納部25内部に設けられた台車用テーブル24Bに載置可能とされている。
なお、パック食材Wの解凍時の変形を抑制するうえで、受け皿に適度の孔を形成し又は受け皿を傾斜させる部材を設けて、噴射された熱媒体Mが受け皿に溜まりにくくすることが好ましい。
【0027】
ノズル30は、図1(b)、図3(b)に示すように、それぞれのノズル分配管32の長手方向に等間隔に設けられている。
ノズル分配管32は、収納部25内に上方から下方に延在し、収納部25に台車24を配置した状態で台車24の両側にそれぞれ2組配置されており、熱処理をする際に、温度調整された熱媒体Mを、台車24に積載されたパック食材Wに熱媒体Mを噴射するようになっている。
【0028】
熱媒体循環回路40は、図4に示すように、一端部が熱媒体貯留部25Aの底部に接続されるとともに他端部がノズル分配管32に接続されており、熱媒体貯留部25Aからノズル30に熱媒体Mを流通させるようになっている。
熱媒体循環回路40は、循環ポンプ40P、流量調整弁F1、モータバルブV1、フロースイッチF2を備え、循環ポンプ40P、流量調整弁F1、モータバルブV1、フロースイッチF2が熱媒体貯留部25A側からこの順に配置されている。
【0029】
また、熱媒体貯留部25Aの底部にはバイパス管41の一端側が接続され、バイパス管41の他端側は、熱媒体循環回路40の流量調整弁F1の下流側に接続されており、熱媒体循環回路40の一部とバイパス管41は、熱媒体貯留部25Aの熱媒体Mが、循環ポンプ40P、流量調整弁F1、モータバルブ41Vの順に流通する熱媒体温調回路を構成している。
【0030】
その結果、モータバルブV1を閉じ、モータバルブ41Vを開いた状態で、加熱部51による加熱又は冷却部60による冷却をしながら循環ポンプ40Pを駆動させ、熱媒体Mを、熱媒体貯留部25Aから循環ポンプ40、流量調整弁F1、モータバルブ41Vの順に熱媒体温調回路を流通させて、熱媒体貯留部25Aに還流させることにより、熱媒体Mを効率的に温度調整することができるようになっている。
【0031】
すなわち、熱処理開始前に、例えば、熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mを冷却部60により冷却しつつ熱媒体温調回路41を循環させることで、冷水により解凍処理を開始することが可能となり、冷水によらなければより高品質に解凍処理できないパック食材W等についても、効率的に解凍処理することができる。
【0032】
排出手段48は、熱媒体循環回路40の熱媒体貯留部25Aと循環ポンプ40Pの間から分岐された排出管路48Aと、排出管路48Aに配置された排出バルブ48Vとを備えており、排出バルブ48Vを開くことによって熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mを自重で外部に排出可能とされている。
【0033】
温度調整手段50は、図5に示すように、熱媒体Mを加熱する加熱部51と、給水装置52と、熱媒体Mを冷却する冷却装置60と、貯留部水温センサT1と、噴射温度測定センサT2と、温度制御部54とを備えている。
【0034】
また、温度制御部54は、入力部(図示せず)を介して、貯留部水温センサT1、噴射温度測定センサT2からの信号が入力され、熱媒体Mの温度と設定温度に基づいて算出した制御信号を、出力部(図示せず)を介して加熱部51、給水装置52、冷却装置60に出力して熱媒体Mの温度を調整するようになっている。
また、温度制御部54は、給水装置52から給水する場合に、必要に応じて排出手段48を作動させることが可能とされている。
【0035】
加熱部51は、蒸気管51Aと、モータバルブ51Vと、蒸気供給バルブ51Wと、熱供給部としての蒸気供給部51Bとを備え、蒸気管51Aは、上流側を蒸気供給源に接続可能とされ、上流側からモータバルブ51V、蒸気供給バルブ51Wがこの順に配置されている。また、蒸気管51Aの下流側は、蒸気供給部51Bとされ、先端の開口部が熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mに浸漬可能とされ、熱媒体Mに蒸気を注入可能とされている。なお、熱媒体Mに蒸気を注入して加熱する場合は、熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mが蒸気流入の勢いによって充分攪拌されるので、熱媒体循環回路40による熱媒体Mの循環を省略してもよい。
【0036】
また、熱媒体Mの温度が所定の設定温度よりも低下した場合、例えば、貯留部水温センサT1が検出した熱媒体Mの温度に基づいて、モータバルブ51Vの開度調整し、熱媒体貯留部25Aに注入する蒸気量を調整して、熱媒体Mを温度調整するようになっている。
【0037】
給水装置52は、給水回路52Aと、フロースィッチF3と、電磁弁V2とを備え、上流側が給水源Aと接続されるとともに、下流側が熱媒体貯留部25Aに接続されている。給水装置52により給水する際に、電磁弁V2をON−OFF制御することで、熱媒体貯留部25Aに供給する常温水Jの流量を調整するようになっている。なお、給水装置52による給水は、熱媒体貯留部25Aに設けられたレベルセンサLが熱媒体Mの上限レベルを検出した場合に停止するようになっている。
【0038】
電磁弁V2は、熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mが設定液位以下になった場合に開かれ常温水Jの補給をするとともに、温度制御部54からの出力によってON−OFF制御されるようになっており、給水装置52から常温水Jによって熱媒体Mの温度調整(加温、冷却)をすることができるようになっている。なお、電磁弁V2に代えて、モータバルブを配置し、このモータバルブを開度調整することにより熱媒体Mの温度調整を行なってもよい。
【0039】
また、冷却部60は、冷却装置60Aを備え、冷却装置60Aは、圧縮機で圧縮した冷媒を凝縮器で液化し、膨張弁60Cを経て冷却用熱交換器である膨張器60Aで気化、膨張させる周知の冷凍機等を使用することができ、例えば、コイル状に形成された膨張器60Aにより熱交換部を構成し、熱媒体貯留部25A内に配置して熱媒体Mを冷却するようになっている。
この実施形態において、冷却装置60Aは、例えば、筐体20の内部における収納部25の上部に配置されている。
【0040】
貯留部水温センサT1は、熱媒体貯留部25Aに、熱媒体Mに浸漬可能に配置されており、熱媒体Mの温度を検出可能とされている。
噴射温度測定センサT2は、ノズル分配管32に配置されており、熱媒体循環回路40を流通してノズル30から噴射される熱媒体Mの温度を測定するようになっている。
【0041】
この実施の形態における熱処理装置1は、熱媒体Mの設定温度を調整することによって、パック食材W等の食材、調理された食品の熱処理(加熱処理、冷却処理、解凍処理)が選択可能とされており、熱処理の種類を、例えば、「加熱、冷却、加熱及び冷却、解凍」スイッチによって選択可能とされている。また、各熱処理に対応する温度設定が、例えば、自動設定されるようになっており、熱媒体Mの温度を多段階に設定する場合には、それぞれの段階の設定温度と噴射時間を任意に設定することができるようになっている。
【0042】
熱媒体Mの温度調整は、貯留部水温センサT1又は噴射温度測定センサT2が検出した熱媒体Mの温度に基づいて行なわれるようになっており、例えば、貯留部水温センサT1又は噴射温度測定センサT2が検出した熱媒体Mの温度を、設定温度に近づけるように熱媒体Mを、加熱、冷却するようになっている。
【0043】
熱媒体Mの加熱は、以下の1)と2)のいずれか又は双方によって行なわれるようになっている。
1)貯留部水温センサT1又は噴射温度測定センサT2が検出した熱媒体Mの温度が設定温度範囲よりも低い場合に、蒸気供給弁51Wを開くとともに、モータバルブ51Vの開度を調整して熱媒体貯留部25Aに供給する蒸気を調整して加熱する。
2)貯留部水温センサT1又は噴射温度測定センサT2が検出した熱媒体Mの温度が常温水Jの水温よりも低い場合は、給水装置52の電磁弁V2をON−OFF制御して、熱媒体貯留部25Aに供給する常温水Jの量を調整して加熱(温度調整)する。この場合、余剰の熱媒体Mは、オーバフロー配管25Bから排出される。
【0044】
熱媒体Mの冷却は、以下の1)と2)のいずれか又は双方によって行なわれるようになっている。
1)貯留部水温センサT1又は噴射温度測定センサT2が検出した熱媒体Mの温度が常温水Jの温度よりも高い場合には、給水装置52の電磁弁V2をON−OFF制御して、熱媒体貯留部25Aに供給する常温水Jの量を調整する。この場合、余剰の熱媒体Mは、オーバフロー配管25Bを経由して排出させる。
2)貯留部水温センサT1又は噴射温度測定センサT2が検出した熱媒体Mの温度が常温水Jの温度よりも低い場合には、冷却装置60Aを駆動して熱媒体Mと冷媒を熱交換することにより熱媒体Mを冷却する。
なお、上記1)、2)において、冷却装置60を駆動させて、熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mを冷却してもよい。
上記、熱媒体Mの加熱と、熱媒体Mの冷却を組み合わせることによって、熱媒体Mを温度調整することが可能とされている。
【0045】
また、解凍処理において、パック食材Wに噴射する熱媒体Mの温度を多段階に設定し、順次、パック食材Wの解凍温度(解凍の目標温度)に近づけて、最終的に解凍温度又は解凍温度近傍に調整された熱媒体Mを噴射して解凍することができるようになっている。
すなわち、例えば、二段階に温度設定した解凍では、解凍温度より若干(例えば、約10℃)高い温度と、解凍温度近傍に熱媒体Mを温度設定し、熱媒体Mを、解凍温度より高い温度と、解凍温度近傍で、それぞれの温度に対応する所定時間だけ噴射して解凍することができるようになっている。
解凍する際の熱媒体Mの温度、噴射時間は、例えば、食材の種類やパック食材の形態に基づいて、各段階について任意に設定することができる。
【0046】
なお、粗解凍で用いた温度が高い熱媒体Mが、熱媒体貯留部25A内に残っている場合には、例えば、排出バルブ48Vを開にして排出手段48から熱媒体Mを排出した後に、解凍温度との温度差が小さい熱媒体Mによる解凍に移行する。
なお、解凍温度との温度差が小さい熱媒体Mによる解凍に移行する場合に、上記手順に代えて、噴射停止した後、冷却部60を駆動させながら熱媒体循環回路40に熱媒体Mを循環させて、熱媒体Mの水温を低下させた後、噴射を開始してもよいことは勿論である。
【0047】
薬剤供給部55は、吐出ポンプの吐出管路の先端を、例えば、熱媒体貯留部25Aの熱媒体Mの上限位置よりわずかに上方に配置されており、薬剤保持タンクに保持された薬剤を吐出ポンプによって熱媒体貯留部25A内に供給するようになっている。
薬剤供給部55による薬剤の注入は、必要に応じて行なわれ、注入された薬剤は熱媒体Mとともにノズル30から噴射され、パック食材W表面に付着していた液汁、細菌等を殺菌洗浄するとともに、熱媒体貯留部25A及び熱媒体循環回路40への細菌の付着、堆積を抑制するようになっている。
【0048】
以下、熱処理装置1の作用について説明する。
なお、便宜のため、熱処理として解凍処理をする場合について説明する。
(1)まず、電源スイッチを入れ、給水装置52により熱媒体貯留部25Aに常温水Jを給水する。
(2)熱媒体Mが、熱媒体貯留部25Aの所定の水位(例えば、レベルセンサLの位置)まで達したら給水を停止する。
(3)冷水により解凍する場合には、冷水を準備するために以下1)から3)に示す冷水準備工程を行なった後に(4)に移行し、冷水が必要とされない粗解凍等の場合には、冷水準備工程を省略して(4)に移行する。
1)図示しないスイッチによって、冷水準備を選択するとともに目標とする熱媒体Mの温度を設定する。
2)冷却装置61を駆動して熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mを冷却するとともに、モータバルブV1を閉じモータバルブ41Vを開いた状態で循環ポンプ40Pを駆動して、冷却した熱媒体Mを熱媒体温調回路に循環させる。
3)熱媒体Mが設定温度になったら、冷水準備工程を終了する。
上記1)から3)が終了したら(4)に移行する。
(4)パック食材Wを載置した台車24を収納部25の所定の位置に配置して、開口扉23を閉める。
(5)図示しない起動スイッチをONにし、熱媒体循環回路40に熱媒体Mを循環させるとともに、ノズル30から熱媒体Mを噴射する。
(6)熱処理中は、貯留部水温センサT1及び噴射温度測定センサT2によって検出した熱媒体Mの温度に基づいて、熱媒体Mを設定温度範囲内に温度調整しながら、ノズル30から熱媒体Mを噴射して、パック食材Wを解凍処理する。
熱媒体Mの温度調整は、例えば、熱媒体Mの温度が設定温度範囲よりも低い場合には加熱部51から熱媒体貯留部25Aに蒸気を注入して温度を上昇させ、熱媒体Mの温度が設定温度範囲よりも高い場合には、給水装置52から給水する、あるいは冷却部60によって熱媒体Mを冷却する。
(7)一定時間が経過したらノズル30からの熱媒体Mの噴射を終了する。
(8)粗解凍では、上記(1)、(2)、(4)及び(7)を実行した後に、(3)から(8)を実行する。
また、加熱処理、冷却処理、加熱及び冷却処理は、解凍処理と同様の手順で行なうことが可能であり、その場合、熱媒体Mは、それぞれの熱処理に適した温度に設定される。
【0049】
熱処理装置1によれば、パック食材W等の熱処理に際して、熱媒体貯留部25Aに配置された加熱部51によって熱媒体Mを加熱するとともに、冷却装置61Aの冷媒を熱媒体貯留部25Aに配置した膨張器60Bで膨張させて熱媒体Mを冷却するので、熱媒体Mの温度調整を効率的に調整することができる。
また、熱媒体貯留部25Aに熱媒体Mが貯留されているので、熱媒体Mの温度の変動及び偏りを小さくすることができる。
【0050】
熱処理装置1によれば、加熱部51の蒸気供給部(熱供給部)51Bと、冷却部60の膨張器60Aとが別に設けているので、加熱過剰となった際には、冷却用熱交換器に冷媒を通じて熱媒体の温度を急速に低下させことができる。
また、冷却過剰になった際には、給水装置52からの常温水Jの供給又は蒸気供給部(熱供給部)51Bからの蒸気の注入によって、パック食材Wの過冷却状態を急速に改善することができる。
【0051】
また、熱処理装置1によれば、ノズル30から噴射した熱媒体Mにより、大気圧下でパック食材Wを熱処理するので、真空解凍等が困難なパック食材Wを効率的に熱処理することができる。
【0052】
また、熱処理装置1によれば、冷却装置60が、筐体20内に配置されているので、熱処理装置1がコンパクトになり、設置面積を小さくすることができる。
また、冷却装置60の冷媒を熱媒体貯留部25Aに流通させるための冷媒の流通経路長を短くすることができるので、熱効率を向上するとともに安定した温度調整を行なうことができる。
【0053】
また、薬剤供給部55によって、薬剤を熱媒体Mに自動供給することで、パック食材Wの表面に付着した液汁、細菌等をノズル30から噴射した熱媒体Mによって殺菌洗浄し、熱処理後のパック食材Wの殺菌を不要とすることができる。
また、熱媒体貯留部25A及び熱媒体循環回路40内への細菌等の付着、繁殖を抑制することができる。
【0054】
次に、図6を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態に係る熱処理装置1Aが、第1の実施形態に係る熱処理装置1と異なるのは、熱処理装置1Aでは、熱媒体循環回路40の流量調整弁F1の下流側に、加圧排出手段49が設けられている点であり、その他は第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0055】
加圧排出手段49は、排出管路49Aと排出バルブ49Vとを備え、循環ポンプ40Pを駆動させた状態で排出バルブ49Vを開くことにより、熱媒体Mを熱処理装置1Aの外に短時間で排出させることができる。そのため、加熱処理に引き続いて冷却処理をする場合や、解凍処理において、粗解凍後にパック食材Wの目標温度を設定温度として、設定温度との温度差を小さくして解凍する場合に、熱媒体貯留部25A内に残っている高温の熱媒体Mを、排出バルブ49Vを開にして加圧排出手段49から排出させることで短時間で熱媒体Mを入れ替えることができる。
【0056】
熱処理装置1Aによれば、例えば、加熱処理後に冷却処理に移行する場合のように、熱媒体Mが常温水Jよりも高温である場合に、排出バルブ49Vを開き大量の熱媒体Mを排出させながら給水源Aから常温水Jを供給することによって、熱媒体Mの温度を短時間で低下させることができる。
【0057】
次に、図7を参照して、この発明の第3実施形態について説明する。
第3の実施形態に係る熱処理装置1Bが、第2の実施形態に係る熱処理装置1Aと異なるのは、熱処理装置1Bでは、バイパス管41が設けられておらず、また、冷却装置60に代えて、熱媒体循環回路40のモータバルブV1とフロースイッチF2の間に熱交換部40Hが設けられ、熱交換部40Hに冷却装置61Aの膨張器61Bが配置されている点であり、その他は、第2の実施形態と同様であるため、第2の実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。また、熱処理装置1Bでは、冷却部61が熱媒体循環回路に配置されているのでバイパス管41が省略されている。
【0058】
熱処理装置1Bによれば、冷媒を流通させる膨張器61Bを熱媒体循環回路40に設けた熱交換部40Hに配置して、冷媒と熱媒体Mとを熱交換するので、ノズル30から噴射する熱媒体Mに温度調整の効果を反映しやすく、熱媒体Mの温度を細かく調整することができる。
【0059】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
【0060】
例えば、上記実施の形態においては、冷却部60、61を構成する冷却装置60A、61Aが収納部25の上部に設けられる場合について説明したが、収納部25の上部以外の位置に配置してもよいし、又筐体20の外部に配置してもよい。
【0061】
例えば、上記実施の形態においては、熱処理装置1が、「加熱、冷却、加熱及び冷却、解凍」スイッチを有していて、加熱処理、冷却処理、加熱処理をした後に冷却処理に移行、解凍処理を選択して実施可能な構成とされる場合について説明したが、加熱処理、冷却処理、解凍処理のいずれかひとつ又は複数の処理機能を有する構成としてもよい。
【0062】
また、加熱部51が、モータバルブ51Vを開いて蒸気を熱媒体貯留部25A内の熱媒体Mに直接注入する場合について説明したが、例えば、熱交換部を介して加熱用蒸気により熱媒体Mを加熱し、又は加熱ヒータを用いて加熱する構成としてもよい。
【0063】
また、冷却部60、61が、それぞれ冷却装置60A、61Aを備え、冷却装置60A、61Aで液化した冷媒を膨張器60B、61Bにより構成される熱交換部において膨張させて、冷却する場合について説明したが、例えば、熱交換部を膨張器60B、61Bにより構成するのに代えて、外部に設けられた冷水ライン(冷水源)から供給した冷水(冷媒)等を熱交換部に流通させて熱媒体Mと熱交換して冷却するように構成してもよい。
冷却装置60A、61Aで液化した冷媒を膨張器60B、61Bで膨張させる場合、例えば、常温以下の熱媒体Mを少流量の冷媒で効率的に冷却できるので、解凍処理に好適であり、冷水を流通させる熱交換器を用いる場合、冷却水の使用量が多くなる一方、高温の熱媒体Mを効率的に冷却できるので、例えば、加熱をともなう熱処理に容易に適用することができる。
【0064】
また、例えば、冷却部60、61を、冷却装置60A、61Aと、冷水ラインからの冷水を流通させる熱交換器の双方を備えた構成としてもよく、かかる場合に、冷却部60、61の駆動タイミングを熱媒体Mの温度又は熱処理の種類(加熱、冷却、解凍等)によって設定してもよい。
例えば、常温を超える熱媒体Mでは、冷却水を流通させた熱交換器を用いて冷却し、常温以下の熱媒体Mでは、冷却装置60A、61Aで液化した冷媒を流通させた熱交換器により冷却し、または、冷却装置60A、61Aで液化した冷媒を流通させた熱交換器とともに冷却水を流通させた熱交換器の双方による冷却を行なってもよい。
上記、解凍処理に適した構成によって、解凍のみを行う解凍器を構成してもよい。
【0065】
なお、上記実施の形態においては、熱処理装置1が、パック食材Wを解凍する場合に、パック食材Wの目標温度に設定された熱媒体Mを所定時間流して解凍する場合について説明したが、例えば、赤外線センサにより測定したパック食材Wの表面温度や、特開2006−86004に示されるような、照射した電磁波の反射波によって検出したパック食材Wの解凍状態に基づいて熱媒体Mの温度、噴射タイミング等を制御してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態においては、常温水Jが給水装置52を経由して給水される場合について説明したが、例えば、給水装置52を備えない構成として、熱媒体貯留部25Aに外部から給水する構成としてもよい。この場合、温度調整は、加熱部51と冷却部60、61によって行なわれる。
また、給水装置52と給水源Aの間に軟水装置を設けてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態においては、熱処理対象物がパック食材Wの場合について説明したが、パック食材Wに代えて、例えば、パックされていない食材や、調理された食品を加熱してもよいし、この場合に、冷凍肉、冷凍魚、冷凍野菜等に熱媒体Mを噴射して熱処理することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明に係る熱処理装置によれば、熱処理対象である食材等を、小さなスペースで効率的に熱処理することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
M 熱媒体
W パック食材(熱処理対象物)
T1 貯留部水温センサ
T2 噴射温度測定センサ
1、1A、1B 熱処理装置
20 筐体
25 収納部
25A 熱媒体貯留部
30 ノズル
40 熱媒体循環回路
48 排出手段
49 加圧排出手段
50 温度調整手段
51 加熱部
52 給水装置
60、61 冷却部
60A、61A 冷却装置
60B、61B 膨張器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理対象物が収納可能とされた収納部と、
前記収納部内に配置され、前記熱処理対象物に熱媒体を噴射するノズルと、
前記収納部が内部に配置される筐体と、を備えた熱処理装置であって、
前記収納部の下部に形成され、前記ノズルから噴射された前記熱媒体を受けるとともに貯留する熱媒体貯留部と、
前記熱媒体貯留部内に貯留された前記熱媒体を前記ノズルに循環させる熱媒体循環回路と、
温度調整手段と、を備え、
前記温度調整手段は、
前記熱媒体貯留部と前記熱媒体循環回路の少なくともいずれか一方に配置され前記熱媒体を加熱する加熱部と、
前記熱媒体貯留部と前記熱媒体循環回路の少なくともいずれかに一方に配置され、前記熱媒体と冷媒とを熱交換して冷却する冷却部と、を有し、
前記熱媒体の温度に基づき、前記加熱部による前記熱媒体の加熱と、前記冷却部による前記熱媒体の冷却の少なくともいずれかを行なうことにより前記熱媒体の温度調整をすることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却部は、
前記筐体内に配置された冷却装置で圧縮した冷媒を、膨張器で膨張させて熱交換することを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記温度調整手段は、
前記熱媒体貯留部又は前記熱媒体循環回路に水を供給する給水装置と、前記熱媒体を外部に排出する排出手段とを備え、前記給水装置からの給水により前記熱媒体の温度を調整可能とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱処理装置
【請求項4】
前記温度調整手段は、
前記熱媒体貯留部内の熱媒体の温度測定値と、前記ノズルから噴射される熱媒体の温度測定値の少なくともいずれか一方に基づき、前記熱媒体の温度を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−10595(P2011−10595A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157229(P2009−157229)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】