説明

熱処理鋼材又は曲げ部材の製造装置及び製造方法

【課題】閉じた横断面形状を有するとともに軸方向へ搬送される鋼材を、長手方向及び/又は周方向への加熱温度の変動を抑制しながら加熱して、熱処理鋼材を製造する。
【解決手段】長手方向の第1の端部17aを先頭として長手方向へ送られる鋼管17の外面17cから離間して第1の位置Aに配置され、鋼管17をAc3点以上に加熱する誘導加熱コイル12aと、第1の位置Aよりも鋼管17の送り方向の下流の第2の位置Bで鋼管17の外面17cに冷却水13bを吹き付けることによって、誘導加熱コイル12aによる鋼管17の加熱位置P1と冷却水13bの鋼管17への吹き付け位置P2との間に赤熱部17dを形成しながら、鋼管17を焼入れる冷却機構13と、赤熱部17dの温度測定機構14と、温度測定機構14の測定結果に基づいて、誘導加熱コイル12aへの電力の投入量をフィードバック制御する投入電力制御機構15とを備える製造装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば焼入れ鋼管等の熱処理鋼材の製造装置及び製造方法と、曲げ部材の製造装置及び製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、高強度、軽量かつ小型であること等が、屈曲した形状を有する金属製の自動車用や各種機械用等の強度部材、補強部材又は構造部材に求められる。この種の曲げ部材は、これまでにも、例えばプレス加工品の溶接、厚板の打ち抜き、又は鍛造等により製造されてきた。しかし、これらの製造方法による曲げ部材の軽量化及び小型化の推進は、限界に達している。
【0003】
いわゆるチューブハイドロフォーミングによりこの種の曲げ部材を製造することが近年積極的に検討されている(例えば非特許文献1参照)。チューブハイドロフォーミング工法は、非特許文献1の28頁に記載されるように、素材の開発や成形可能形状の拡大等といった様々な課題を有するので、よりいっそうの開発が必要である。
【0004】
本出願人は、このような現状に鑑み、特許文献1により曲げ加工装置を開示した。図3は、この曲げ加工装置0の概略を示す説明図である。
図3に示すように、曲げ加工装置0は、支持機構2によりその軸方向へ移動自在に支持される鋼管1を、上流側から下流側へ向けて、例えばボールネジを用いた送り機構3により送る。そして、支持機構2の下流で誘導加熱コイル5によって鋼管1を部分的に焼入れが可能な温度域(Ac点以上)に急速に加熱するとともに、加熱機構5の下流に配置される水冷装置6から鋼管1に冷却水を吹き付けて鋼管1を急冷することによって、誘導加熱コイル5による鋼管1の加熱位置と冷却水の鋼管1への吹き付け位置との間に、Ac点以上の温度の赤熱部を形成する。さらに、鋼管1を送りながら支持可能であるロール対4aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス4の位置を二次元又は三次元で変更することによって鋼管1の赤熱部に曲げモーメントを付与する。
【0005】
曲げ加工装置1の誘導加熱コイル5は高周波の交流電力が供給され、誘導加熱コイル5内鋼管1の円周方向に誘導起電力が発生し、鋼管1の電気抵抗損により加熱される。投入電力制御機構(高周波電源)の制御量は印加される電圧で、誘導加熱コイル5の負荷インピーダンスの変動により印加される有効電力が変化する。
【0006】
曲げ加工装置0は、このようにして、二次元又は三次元に屈曲する曲げ加工部と焼入れ部とを長手方向へ向けて断続的又は連続的に有する曲げ部材を、高い作業能率で製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2006/093006号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】自動車技術 Vol.57,No.6,2003 23〜28頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らが曲げ加工装置1のさらなる改良を図るために鋭意検討を重ねた結果、誘導加熱コイル5を電圧によって制御しようとしても、鋼管1には長手方向や周方向への肉厚の不均一(以下、「偏肉」という)や、冷却水の吹き付けによって鋼管1から剥離したスケールが加熱コイル5の内側に付着すること(以下、「スケール付着」という)等が不可避的に発生し、これらにより加熱コイル5のインピーダンス及び出力電圧が変動するため、鋼管1の加熱温度が部位により変動し、一定にならないことが判明した。
【0010】
鋼管1の加熱温度が部位により変動すると、これに伴って鋼管1の赤熱部の変形抵抗が部位により変動するため、曲げ部材の曲がり部の寸法精度が低下し、例えば自動車用の強度部材、補強部材又は構造部材を提供できない。
【0011】
本発明の目的は、例えば鋼管等の、閉じた横断面形状を有するとともに軸方向へ搬送される鋼材を、加熱温度の変動を抑制しながら安定して加熱することができる熱処理鋼材の製造装置及び製造方法と、曲げ部材の製造装置及び製造方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下に列記する知見A〜Eを得て、本発明を完成した。
(A)従来の電圧制御に替えて、加熱コイル5へ供給する電力を一定とする制御(以下、「電力一定制御」という)を用いることにより、偏肉やスケール付着等によって加熱コイル5のインピーダンスが変動しても、加熱コイル5の出力電力は一定に維持されるので、従来の電圧制御よりも鋼管1の加熱温度の均一性は向上する。
(B)しかし、電力一定制御では、投入電力が一定であるだけなので、鋼管1の偏肉に伴う鋼管1の加熱温度の変動を改善できない。
(C)加熱コイル5へ供給する電力量を一定に制御するのではなく、加熱コイル5の直下に存在する鋼管1の赤熱部の温度を測定し、この測定値に基づいて加熱コイル5へ供給する電力量をフィードバック制御すること(以下、「鋼管温度制御」という)によって、鋼管1の長手方向への偏肉に対して鋼管1の加熱温度を一定に制御することが可能になる。
(D)鋼管温度制御によれば、温度計で実際に計測する鋼管1の長手方向の温度を一定に制御することが可能になるが、鋼管1の周方向への偏肉に対して鋼管1の加熱温度を均一にすることはできない。
(E)鋼管1の周方向への複数位置の温度を測定し、これらの測定値の平均値を均一にするように鋼管温度制御を行うことによって、鋼管1の長手方向への偏肉のみならず、周方向への偏肉に対しても鋼管1の温度を一定に制御することが可能になる。
【0013】
本発明は、
閉じた横断面形状を有するとともに長手方向の第1の端部を先頭としてこの長手方向へ送られる鋼材の外面から離間して第1の位置に配置され、鋼材を所定の温度域に加熱する誘導加熱コイルと、
第1の位置よりも鋼材の送り方向の下流の第2の位置で鋼材の外面に冷却媒体を吹き付けることによって、誘導加熱コイルによる鋼材の加熱位置と冷却媒体の鋼材への吹き付け位置との間に赤熱部を形成しながら、鋼材を熱処理する冷却機構と、
赤熱部の温度測定機構と、
この温度測定機構の測定結果に基づいて誘導加熱コイルへの電力の投入量をフィードバック制御する投入電力制御機構と
を備えることを特徴とする熱処理鋼材の製造装置である。
【0014】
別の観点からは、本発明は、閉じた横断面形状を有する鋼材を、第1の端部を先頭として長手方向へ送りながら、送られる鋼材の外面から離間して第1の位置に配置される誘導加熱コイルにより鋼材を所定の温度域に加熱し、第1の位置よりも鋼材の送り方向の下流の第2の位置に配置される冷却機構により鋼材の外面に冷却媒体を吹き付けることにより、誘導加熱コイルによる鋼材の加熱位置と冷却媒体の鋼材への吹き付け位置との間に赤熱部を形成しながら、鋼材を熱処理する際に、赤熱部の温度の測定結果に基づいて、誘導加熱コイルへの電力の投入量をフィードバック制御することを特徴とする熱処理鋼材の製造方法である。
【0015】
別の観点からは、本発明は、上述した本発明に係る熱処理鋼材の製造装置と、第1の位置よりも鋼材の送り方向の上流に配置され、送られる鋼材を移動自在に支持する第1の支持機構と、冷却機構よりも鋼材の送り方向の下流に配置され、送られる鋼材を移動自在に支持しながら、この鋼材の支持位置を三次元又は二次元で変更することにより、赤熱部に曲げモーメントを与える第2の支持機構とを備えることを特徴とする曲げ部材の製造装置である。
【0016】
さらに別の観点からは、本発明は、閉じた横断面形状を有する鋼材を、第1の端部を先頭として長手方向へ送りながら、送られる鋼材を第1の支持機構により移動自在に支持し、送られる鋼材の外面から離間して第1の位置に配置される誘導加熱コイルにより鋼材を所定の温度域に加熱し、第1の位置よりも鋼材の送り方向の下流の第2の位置に配置される冷却機構により鋼材の外面に冷却媒体を吹き付けることによって、誘導加熱コイルによる鋼材の加熱位置と冷却媒体の前記鋼材への吹き付け位置との間に赤熱部を形成しながら、鋼材を冷却し、冷却機構よりも鋼材の送り方向の下流の位置に配置されて鋼材を移動自在に支持する第2の支持機構による鋼材の支持位置を、三次元又は二次元で変更することにより、赤熱部に曲げモーメントを与える際に、赤熱部の温度の測定結果に基づいて誘導加熱コイルへの電力の投入量をフィードバック制御することを特徴とする曲げ部材の製造方法である。
【0017】
これらの本発明では、測定結果が、鋼材の長手方向及び/又は周方向への複数の位置に関する測定結果であることが望ましい。
これらの本発明では、熱処理が焼入れであることが望ましい。
【0018】
さらに、これらの本発明では、鋼材は鋼管であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、閉じた横断面形状を有するとともに軸方向へ搬送される鋼材を、長手方向及び/又は周方向への加熱温度の変動を抑制しながら均一に加熱して、熱処理鋼材又は曲げ部材を製造することが可能になる。このため、本発明によれば、製造される曲げ部材の寸法精度を所定の範囲に維持することが可能になり、高い寸法精度を要求される、例えば自動車用の強度部材、補強部材又は構造部材を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る熱処理鋼材の製造装置の構成の一例を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る曲げ部材の製造装置の構成の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は、特許文献1により開示された曲げ加工装置の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態を、添付図面を参照しながら説明する。以降の説明では、鋼材が、閉じた横断面形状を有する部材の代表例の鋼管であるとともに、熱処理が焼入れである場合を例にとる。しかし、本発明は、鋼管に限定されるものではなく、閉じた横断面形状を有する鋼材であれば適用可能であるとともに、焼入れに限定されるものではなく、焼入れ以外の他の熱処理(例えば焼き戻し)にも適用可能である。
【0022】
図1は、本発明に係る熱処理鋼材の製造装置10の構成の一例を、模式的に示す説明図である。また、図2は、本発明に係る曲げ部材の製造装置20の構成の一例を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すように、この製造装置10は、送り機構11と、加熱機構12と、冷却機構13と、温度測定機構14と、投入電力制御機構15と、冷却媒体侵入防止ガス供給機構16とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。
【0024】
[送り機構11]
鋼管17は、第1の端部17aの内部に、把持部材(チャック)18を挿設される。また、第2の端部17bの内部にも、把持部材(チャック)19を挿設される。把持部材18は、筒状の大径部18aと筒状の小径部18bとを有し、同様に、把持部材19も、筒状の大径部19aと、筒状の小径部19bとを有する。大径部18a、19aの外径は鋼管17の外径よりも大きく設定される。小径部18b、19bの内径は、鋼管17の内径よりも小さく設定される。
【0025】
小径部18bが鋼管17の第1の端部17aの内部に挿設され、小径部19bが鋼管17の第2の端部17bの内部に挿設される。また、大径部18aの端面が鋼管17の第1の端部17aの端面に付き当てられるとともに、大径部19aの端面が鋼管17の第2の端部17bの端面に付き当てられる。
【0026】
図2に示すように、曲げ部材の製造装置20では、把持部材18は第3の産業用ロボット27により支持されるとともに、把持部材19は第1の産業用ロボット24により支持される。
【0027】
送り機構11は、第1の端部17aの内部に把持部材18を挿設された鋼管17を、第1の端部17aを先頭としてこの鋼材17の長手方向へ、すなわち図1中の白抜き矢印方向へ送る機能を有する。送り機構11は、鋼管17をその長手方向へ送ることができる機構を用いればよく、特定の装置には限定されない。
【0028】
送り機構11は、図1では省略するが図2に示す曲げ部材の製造装置20では、把持部材19を鋼管17の送り方向へ移動自在に支持する6軸の多関節型の第1の産業用ロボット24により、構成した。しかし、第1の産業用ロボット24に替えて、例えばボールネジ等の公知の送り装置を用いてもよい。この場合、曲げ部材を製造するためには、この送り機構11と加熱機構13との間の鋼管17を送りながら所定の位置に位置決めするために、一対のローラ等からなる支持機構を配置することが望ましい。
【0029】
送り機構11は、以上のように構成される。
[加熱機構12]
加熱機構12は、送り機構11によってその長手方向へ送られる鋼管17の外面17cから離間して第1の位置Aに配置される。加熱機構12は、この鋼管17を、例えば焼入れ可能温度域(Ac点以上)に加熱するためのものである。
【0030】
加熱機構12は、鋼管17を、例えば鋼管17のAc点以上の温度に急速に加熱する能力を有することが望ましく、この製造装置10では加熱機構12として誘導加熱コイル12aを用いた。
【0031】
誘導加熱コイル12aには、高周波変流器と、出力監視ユニットと、高周波発振器(高周波電源)とからなる高周波電流発生装置12bが接続される。高周波発振器には冷却水循環ユニットが接続される。
【0032】
加熱機構12は、後述する冷却機構13と一体として、図2に示す曲げ部材の製造装置20では、誘導加熱コイル支持ロボット25により移動自在に支持される。
加熱機構13は、以上のように構成される。
【0033】
[冷却機構13]
冷却機構13は、第1の位置Aよりも鋼管17の送り方向の下流の第2の位置Bに配置される。冷却機構13は、鋼管17の外面17cに冷却媒体13bを吹き付けることにより鋼管17を焼入れるためのものである。
【0034】
冷却機構13として水冷機構13aを用いることが望ましい。水冷機構13aから冷却水13bを鋼管17の外面17cに吹き付けることによって、誘導加熱コイル12aによる鋼管17の加熱位置P1と冷却水13bの鋼管17への吹き付け位置P2との間に、例えば焼入れ可能温度域(Ac点以上)にある赤熱部17dを形成しながら、鋼管17を急速に冷却して、鋼管17を焼入れることができる。
【0035】
冷却機構13は、上述したように加熱機構12と一体として、図2に示す曲げ部材の製造装置20では、誘導加熱コイル支持ロボット25により移動自在に支持される。
冷却機構13は、以上のように構成される。
【0036】
[温度測定機構14]
温度測定機構14は、鋼管17の赤熱部17dの温度を測定するためのものである。温度測定機構14は、赤熱部17dの温度を測定することができる機構であれば如何なるものでもよい。例えば、図1に示す温度測定機構14とは相違するが、誘導加熱コイル12aの入側から赤熱部17dを覗くように放射温度計を配置して計測することが例示される。誘導加熱コイル12aの入側から放射温度計を用いて計測することにより、冷却水13bの飛散により計測値が変動することを可及的に排除することができる。
【0037】
また、温度測定機構14として放射温度計を用いる場合、上記(C)項で説明したように、放射温度計を一基設置すれば、鋼管17はその長手方向へ送られているので鋼管17の長手方向の複数の位置の温度を測定することができ、鋼管17の長手方向への偏肉に対して鋼管17の加熱温度を一定に制御することが可能になる。しかし、放射温度計を一基設置したのでは、上記(D)項で説明したように、鋼管17の周方向については一箇所しか計測することができないので、鋼管17の周方向への偏肉に対して鋼管17の加熱温度を均一にすることはできない。
【0038】
そこで、放射温度計を鋼管17の周方向へ複数設置し(例えば等間隔で4〜6個程度)、上記(E)項で説明したように鋼管17の周方向への複数位置の温度を測定し、これらの測定値の平均値が均一になるように鋼管温度制御を行うことによって、鋼管17の長手方向への偏肉のみならず鋼管17の周方向への偏肉に対しても、鋼管17の温度を一定に制御することが可能になる。
【0039】
このように、温度測定機構14による赤熱部17dの測定結果は、鋼管17の周方向への複数の位置に関する測定結果(図1に示す例では2箇所の測定結果t、t)であることが望ましい。
温度測定機構14は、以上のように構成される。
【0040】
[投入電力制御機構15]
投入電力制御機構15は、温度測定機構14の上記測定結果t、tの平均値に基づいて、誘導加熱コイル12aへの電力の投入量をフィードバック制御する。具体的には、投入電力制御機構15は、測定結果が予め定めた目標値より低い場合には誘導加熱コイル12aへの電力の投入量を高めるとともに、測定結果が予め定めた目標値よりも高い場合には誘導加熱コイル12aへの電力の投入量を低め、これによって、鋼管17の加熱温度がその長手方向及び/又は周方向について均一になるように制御する。
【0041】
「電力の投入量」とは、投入電力制御機構(高周波電源)15より誘導加熱コイル12aへ供給される有効電力のことであり、この有効電力が誘導加熱コイル12aの内部に存在する鋼管17の円周方向に誘導起電力が発生し、鋼管17の電気抵抗損によって加熱されることを意味する。
【0042】
投入電力制御機構15は、温度測定機構14から入力される測定結果t、tに基づいて、高周波電流発生装置12bへ制御信号Sを出力して、鋼管17の赤熱部17dの加熱温度をフィードバック制御する。高周波電流発生装置12bは、投入電力制御機構15からの制御信号Sを受けて、誘導加熱コイル12aへの電力の投入量を変更すること、具体的には、投入電力制御機構(高周波電源)15の制御量である印加電圧を高くすると誘導加熱コイル12aの内部に位置する鋼管17で消費される有効電力が増加し、鋼管17の温度が上昇し、これとは逆に、上記印加電圧を低くすると誘導加熱コイル12aの内部に位置する鋼管17で消費される有効電力が減少し、鋼管17の温度が下降する。
【0043】
このような投入電力制御機構15での制御機能によって、鋼管17の加熱温度がその長手方向及び/又は周方向について均一になるように制御する。
また、上述したように、温度測定機構14による赤熱部17dの測定結果として、鋼管17の長手方向及び/又は周方向への複数の位置に関する測定結果(図1に示す例では2箇所の測定結果t、t)を用いる場合、投入電力制御機構15は、鋼管17の長手方向測定は、送り装置11により鋼管17が長手方向へ送られることにより常時測定可能となるとともに、鋼管17の周方向の測定も、周方向に設置された台数分だけ常時測定可能となるように、測定結果を入力され、これらに応じ、常時、制御信号Sを高周波電流発生装置12bへ出力することが、鋼管17の加熱温度をその長手方向及び/又は周方向について均一にするためには、望ましい。
【0044】
ただし、簡便な方法としては、先行する鋼管の加工時の温度測定データを、次に後行する鋼管の加工時の出力データにフィードバックし、使用することも有効である。また、先行する複数の鋼管それぞれの温度測定データの平均値を、これらの鋼管の次に後行する鋼管の加工時のデータにフィードバックするようにしてもよい。
投入電力制御機構15は、以上のように構成される。
【0045】
[冷却媒体侵入防止ガス供給機構16]
冷却媒体侵入防止ガス供給機構16は、本発明では必ずしも設置する必要はないが、設置することにより、鋼管17の加熱温度をその長手方向及び/又は周方向についてより均一にすることができるために、設置することが望ましい。
【0046】
冷却媒体侵入防止ガス供給機構16は、把持部材19と、気体供給系16aと、把持部材18とを備える。把持部材19は、内部に穿設された気体の流路19cを有する大径部19a及び小径部19bからなる。また、気体供給系16aは、流路19cに気体を供給する。把持部材18は、大径部18a及び小径部18bからなる。なお、図1における符号Pは気体供給ポンプを示す。
【0047】
気体供給系16aにより供給される気体は、N等の不活性ガス、空気又は還元性ガスであることが好ましい。
把持部材18の小径部18bの外面と、鋼管17の第1の端部17aの内面との間、又は、大径部18aの端面と、鋼管17の第1の端部17aの端面との間には、いずれにも、不可避的に隙間が存在する。
【0048】
このため、冷却媒体侵入防止ガス供給機構16によって、鋼管17の内部に、鋼管17の第2の端部17bから第1の端部17aへ向けて、N等の不活性ガス、空気又は還元性ガスを供給すると、供給されたN等の不活性ガス、空気又は還元性ガスは、上述した隙間から鋼管17の外部へ向けて噴出する。このため、鋼管17の第1の端部17aが冷却機構13による冷却水13bの供給位置を通過する際にこれらの隙間から鋼管17の外部へ向けてN等の不活性ガス、空気又は還元性ガスを噴出させることによって、これらの隙間を介して冷却水13bが鋼管17の内部に侵入することを、確実に阻止することができる。
【0049】
冷却媒体侵入防止ガス供給機構16から鋼管17の内部へのN等の不活性ガス、空気又は還元性ガスの供給量は、鋼管17の表面積、送り速度にもよるが、30〜200l/min程度である。
【0050】
製造装置10は以上のように構成される。次に、製造装置10により、焼入れ鋼材を製造する状況を説明する。
はじめに、第1の端部17aの内部に把持部材18を挿設された鋼管17を、送り装置11によって、第1の端部17aを先頭としてその長手方向(図1中の白抜き矢印方向)へ送る。次に、加熱機構12の誘導加熱コイル12aにより、鋼管17を例えば焼入れ可能温度域に急速に加熱するとともに、冷却機構13により鋼管17の外面17cに冷却水13bを吹き付けることにより、誘導加熱コイル12aによる鋼管17の加熱位置P1と冷却水13bの鋼管17への吹き付け位置P2との間に赤熱部17dを形成しながら、鋼管17を焼入れる。
【0051】
この際に、温度測定機構14によって鋼管17の長手方向及び/又は周方向の複数の位置について赤熱部17dの温度を測定し、投入電力制御機構12により、これらの測定結果に基づいて誘導加熱コイル12aへの電力の投入量をフィードバック制御する。
【0052】
これにより、鋼管17の長手方向及び/又は周方向への偏肉に対して鋼管17の加熱温度の変動を抑制しながら鋼管17の加熱温度を、部位によらずに均一に制御することが可能になる。
【0053】
製造装置10では、少なくとも、鋼管17の第1の端部17aが水冷機構13による冷却媒体13bの吹き付け位置、すなわち水冷機構13により冷却水13bが吹き付けられる領域のうちで鋼管17の送り方向の最下流の位置(図1における位置B)を通過するまで、冷却媒体侵入防止ガス供給機構16によって、鋼管17の内部に、鋼管17の第2の端部17bから第1の端部17aへ向けて、N等の不活性ガス、空気又は還元性ガスを供給して、把持部材18の小径部16bの外面と鋼管17の第1の端部17aの内面との間、及び、大径部18aの端面と鋼管17の第1の端部17aの端面との間の隙間からN等の不活性ガス、空気又は還元性ガスを、鋼管17の外部へ向けて噴出させる。
【0054】
隙間から噴出するN等の不活性ガス、空気又は還元性ガスの流れによって、この隙間を介して鋼管17の内部へ向かう冷却媒体13bを吹き飛ばすことができるので、鋼管17の内部への冷却媒体13bの侵入を防止することができる。
【0055】
このため、製造装置10によれば、温度測定機構14によって鋼管17の長手方向及び/又は周方向の複数の位置について赤熱部17dの温度を測定し、投入電力制御機構12により、これらの測定結果に基づいて誘導加熱コイル12aへの電力の投入量をフィードバック制御することのみならず、冷却媒体侵入防止ガス供給機構16から鋼管17の内部へのN等の不活性ガス、空気又は還元性ガスの供給することによって、所望の寸法精度や強度を有する焼入れ鋼材を、長手方向及び/又は周方向への加熱温度の変動を抑制しながら、確実に製造することができるようになる。
【0056】
次に、図2示す曲げ部材の製造装置20を説明する。
製造装置20は、上述した本発明に係る焼入れ鋼材の製造装置10と、第1の支持機構21と、第2の支持機構22と、変形抑制機構23とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。なお、以降の説明では、製造装置10については、重複する説明は適宜省略する。
【0057】
[製造装置10]
図1を参照しながら上述したように、製造装置10は、送り機構11と、加熱機構12と、冷却機構13と、温度測定機構14と、投入電力制御機構15と、冷却媒体侵入防止ガス供給機構16とにより構成される。
【0058】
送り機構11は、汎用の6軸多関節型の第1の産業用ロボット24により構成される。
以降の説明では、第1の産業用ロボット24のみならず、誘導加熱コイル支持ロボット25、第2の産業用ロボット26さらには第3の産業用ロボット27にも、第1の産業用ロボット24と同様のロボットを用いた場合を例にとる。
【0059】
製造装置20で用いる第1の産業用ロボット24、誘導加熱コイル支持ロボット25、第2の産業用ロボット26さらには第3の産業用ロボット27は、いずれも、いわゆる垂直多関節ロボットであって、第1軸〜第6軸を有し、必要に応じてこれらに加えて第7軸を有してもよい。
【0060】
第1軸は、上腕28を水平面内で旋回させる。第2軸は、上腕28を前後に旋回させる。第3軸は、前腕29を上下に旋回させる。第4軸は、前腕29を回転させる。第5軸は、手首を上下に旋回させる。第6軸は、手首を回転させる。第6軸を有している。さらに、第7軸は、上腕28を旋回させる。各軸はACサーボモーターにより駆動される。
【0061】
第1の産業用ロボット24、誘導加熱コイル支持ロボット25、第2の産業用ロボット26さらには第3の産業用ロボット27は、他の汎用の産業用ロボットと同様に、いずれも、各軸の動作を総合的に制御するコントローラ及び動作を教示するための入力装置(いずれも図示しない)が設けられている。
【0062】
第1の産業用ロボット24の手首の先端には、第1の産業用ロボット24の側方近傍の床に配置されたパレット(図示しない)に収容された鋼管17を把持するとともに把持した鋼管17を、後述する第1の支持機構21及び加熱機構12にそれぞれ設けられた貫通孔を貫通させるための効果器(エンドエフェクタ)として、把持部材19が設けられている。
【0063】
また、鋼管17の第1の端部17aの内部に挿設された把持部材18は、第3の産業用ロボット27の手首によって支持される。
把持部材18は、送り機構11においてのみならず、後述する第2の支持機構22として可動ローラーダイスを用いずに第2の産業用ロボット26によって鋼管17を直接掴持する場合や、変形防止機構23においても用いられる。把持部材18は、製造装置20により製造される曲げ部材の寸法精度や生産性に大きく影響する。
【0064】
この製造装置20では、図示しないパレットから製造装置20への鋼管17の移載や製造装置20へのセットを、第1の産業用ロボット24で行うので、サイクルタイムの低減を図ることができ、生産性を高めることができる。
【0065】
また、加熱機構12である加熱コイル12aは、誘導加熱コイル支持ロボット25により支持される。
冷却機構13である水冷装置13aは、鋼管17の送り方向について第1の位置Aよりも下流の第2の位置に固定して配置されて、送られる鋼管17における加熱機構12により加熱された部分を冷却するためのものである。
【0066】
[第1の支持機構21]
第1の支持機構21は、第1の位置Aよりも鋼管17の送り方向の上流の位置A’、すなわち送り機構11と加熱機構12との間に配置され、送り機構11により送られる鋼管17を送りながら支持するためのものであり、鋼管17を送りながら支持可能である一対のロール21a、21aを少なくとも一組(図示例ではロール対21b、21bをもう一組有し、合計二組)有するダイス30により構成される。
【0067】
ダイス30は、支持台31に固定されて搭載されるが、これに限定されるものではなく、例えば汎用の6軸多関節型の産業用ロボットにより移動自在に支持されてもよい。
このようなダイス30は、当業者にとっては周知慣用であるので、第1の支持機構21に関するこれ以上の説明は省略する。
【0068】
[第2の支持機構22]
第2の支持機構25は、冷却機構13よりも鋼管17の送り方向の下流の位置B’に配置されて、送られる鋼管17を移動自在に支持する。また、第2の支持機構25は、鋼管17の少なくとも一箇所を支持しながら二次元又は三次元の方向へ移動する。これにより、第2の支持機構22は、鋼管17における位置A〜B間の、加熱されて変形抵抗が大幅に低下した赤熱部17dに曲げモーメントを与えて、鋼管17を所望の形状に曲げ加工するためのものである。
【0069】
第2の支持機構22として、鋼管17を送りながら支持可能である一対のロール22a、22aを少なくとも一組有する可動ローラーダイス32を用いた。しかし、これとは異なり、上述したように、第2の支持機構22として可動ローラーダイスを用いずに第2の産業用ロボット26に持たせたグリッパー等の効果器によって、鋼管17を直接掴持するようにしてもよい。
【0070】
可動ローラーダイス32は、第2の産業用ロボット26により支持される。第2の産業用ロボット26の手首20aの先端には、可動ローラーダイス32を保持するための効果器(エンドエフェクタ)として、グリッパー33が設けられている。なお、効果器としては、グリッパー33以外の型式のものを用いてもよいことはいうまでもない。
【0071】
[変形抑制機構23]
変形抑制機構23は、鋼管17の送り方向について位置B’よりも下流の位置Cに配置されて、送られる鋼管17の変形を防止するためのものである。
【0072】
本発明では、変形防止機構23を、第3の産業用ロボット27により構成した。
また、第3の産業用ロボット27の手首は、鋼管17の第1の端部17aの内部に挿設された把持部材18を支持する。
【0073】
なお、本発明に係る製造装置20では、曲げ加工を、温間又は熱間で行うことが望ましい。温間とは常温に比べて金属材の変形抵抗が低下する加熱温度域であり、例えば、ある鉄鋼材料ではおよそ500℃から800℃の温度域である。熱間とは常温に比べて金属材の変形抵抗が低下し、かつ、金属材が焼入れされるのに必要な加熱温度域であり、例えば、ある鉄鋼材料では800℃以上の温度域である。特に、熱間で行う場合には焼入れの所定の温度になった後に所定の冷却速度で冷却することにより焼入れ処理を行うことができ、また温間で行う場合には曲げ加工部を冷却することにより熱歪み等の加工上の歪みの発生を防止することができる。
【0074】
この製造装置20は以上のように構成される。次に、この製造装置20により、曲げ部材を製造する状況を説明する。
はじめに、送り装置11である第1の産業用ロボット24を動作させることによって、第1の端部17aの内部に把持部材18が挿設された鋼管17を、第1の端部17aを先頭としてその長手方向へ送る。
【0075】
次に、以下に列記する動作を行う。
(1)送られる鋼管17を第1の支持機構21により移動自在に支持する。
(2)送られる鋼管17を、加熱機構12により焼入れ可能温度域に加熱した後に、水冷機構13cから外面17cに冷却水13bを吹き付けることにより鋼管17を冷却する。この際、誘導加熱コイル支持ロボット25は停止させた状態としておけばよい。
【0076】
(3)温度測定機構14によって鋼管17の赤熱部17dの温度を測定し、この温度測定機構14の測定結果に基づいて、投入電力制御機構15により、誘導加熱コイル12aへの電力の投入量をフィードバック制御する。
【0077】
(4)第2の産業用ロボット26を動作させることによって、送られる鋼管17を支持する第2の支持機構22の位置を、三次元又は二次元で変更することにより、加熱機構12と冷却機構13との間の鋼管17に形成される赤熱部17dに、曲げモーメントを与える。
【0078】
送られる鋼管17の第1の端部17aの内部に挿設された把持部材18の位置を、第3の産業用ロボット27を動作させることにより、鋼管17の曲げ形状を変形させないように移動させる。
【0079】
このように、温度測定機構14の測定結果に基づいて投入電力制御機構15により、誘導加熱コイル12aへの電力の投入量をフィードバック制御するので、軸方向へ搬送される鋼管17を、長手方向及び/又は周方向への加熱温度の変動を抑制しながら、加熱することができる。
【0080】
このため、製造装置20によれば、所望の寸法精度や強度を有する曲げ部材を、長手方向及び/又は周方向への加熱温度の変動を抑制しながら確実に製造することができるようになる。
【0081】
特に、製造装置20によれば、鋼管17の長手方向の加熱温度の均一性が向上するので、鋼管17の焼入れ前最高温度が均一化するために鋼管17の焼入れ品質が均一化するとともに、長手方向の偏肉状況が異なる多数本の鋼管を素材とする場合においても各鋼管17にそれぞれ形成する赤熱部17dの温度を常に一定にすることができ、鋼管17の赤熱部17d、すなわち曲げ加工部の変形抵抗が一定となるために、多数本の鋼管それぞれの曲げ加工部の形状のばらつきが極めて小さくなり、鋼管17の寸法精度が向上する。
【0082】
このようにして、本発明により、焼入れ鋼管、さらには所定の屈曲形状を有する焼入れ鋼管である曲げ部材を、長手方向及び/又は周方向へ高い寸法精度で確実に製造することができるようになる。
【0083】
この本発明により製造される曲げ部材は、例えば、以下に例示する用途(i)〜(vii)に対して適用可能である。
(i)自動車のサスペンションのロアーアームやブレーキペダルといった自動車の強度部材、
(ii)自動車の各種レインフォース、ブレース等の補強部材、
(iii)バンパー、ドアインパクトビーム、サイドメンバー、サスペンションマウントメンバー、ピラー、サイドシル等の自動車の構造部材、
(iv)自転車や自動二輪車等のフレーム、クランク
(v)電車等の車輛の補強部材、台車部品(台車枠、各種梁等)
(vi)船体等のフレーム部品、補強部材、
(vii)家電製品の強度部材、補強部材又は構造部材
【符号の説明】
【0084】
0 曲げ加工装置
1 鋼管
2 支持機構
3 送り機構
4 可動ローラーダイス
4a ロール
5 加熱機構
6 冷却機構
8 曲げ部材
10 本発明に係る熱処理鋼材の製造装置
11 送り機構
12 加熱機構
12a 誘導加熱コイル
12b 高周波電流発生装置
13 冷却機構
13a 水冷機構
13b 冷却媒体
14 温度測定機構
15 投入電力制御機構
16 冷却媒体侵入防止ガス供給機構
16a 気体供給系
17 鋼管
17a 第1の端部
17b 第2の端部
17c 外面
17d 赤熱部
18 把持部材(チャック)
18a 大径部
18b 小径部
19 把持部材(チャック)
19a 大径部
19b 小径部
19c 流路
20 本発明に係る曲げ部材の製造装置
21 第1の支持機構
21a、21b ロール
22 第2の支持機構
22a ロール
23 変形抑制機構
24 第1の産業用ロボット
25 誘導加熱コイル支持ロボット
26 第2の産業用ロボット
27 第3の産業用ロボット
28 上腕
29 前腕
30 ダイス。
31 支持台
32 可動ローラーダイス
33 グリッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じた横断面形状を有するとともに長手方向の第1の端部を先頭として該長手方向へ送られる鋼材の外面から離間して第1の位置に配置され、該鋼材を所定の温度域に加熱する誘導加熱コイルと、
前記第1の位置よりも前記鋼材の送り方向の下流の第2の位置で前記鋼材の外面に冷却媒体を吹き付けることによって、前記誘導加熱コイルによる前記鋼材の加熱位置と前記冷却媒体の前記鋼材への吹き付け位置との間に赤熱部を形成しながら、該鋼材を熱処理する冷却機構と、
前記赤熱部の温度測定機構と、
該温度測定機構の測定結果に基づいて、前記誘導加熱コイルへの電力の投入量をフィードバック制御する投入電力制御機構と
を備えることを特徴とする熱処理鋼材の製造装置。
【請求項2】
前記測定結果は、前記鋼材の長手方向への複数の位置に関する測定結果である請求項1に記載された熱処理鋼材の製造装置。
【請求項3】
前記測定結果は、前記鋼材の周方向への複数の位置に関する測定結果である請求項1又は請求項2に記載された熱処理鋼材の製造装置。
【請求項4】
前記熱処理は焼入れである請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された熱処理鋼材の製造装置。
【請求項5】
前記鋼材は鋼管である請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された熱処理鋼材の製造装置。
【請求項6】
閉じた横断面形状を有する鋼材を、第1の端部を先頭として長手方向へ送りながら、送られる当該鋼材の外面から離間して第1の位置に配置される誘導加熱コイルにより前記鋼材を所定の温度域に加熱し、前記第1の位置よりも前記鋼材の送り方向の下流の第2の位置に配置される冷却機構により前記鋼材の外面に冷却媒体を吹き付けることにより、前記誘導加熱コイルによる前記鋼材の加熱位置と前記冷却媒体の前記鋼材への吹き付け位置との間に赤熱部を形成しながら、該鋼材を熱処理する際に、
前記赤熱部の温度の測定結果に基づいて、前記誘導加熱コイルへの電力の投入量をフィードバック制御すること
を特徴とする熱処理鋼材の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された熱処理鋼材の製造装置と、
前記第1の位置よりも前記鋼材の送り方向の上流に配置され、送られる鋼材を移動自在に支持する第1の支持機構と、
前記冷却機構よりも前記鋼材の送り方向の下流に配置され、送られる鋼材を移動自在に支持しながら、該鋼材の支持位置を三次元又は二次元で変更することにより、前記赤熱部に曲げモーメントを与える第2の支持機構と
を備えることを特徴とする曲げ部材の製造装置。
【請求項8】
閉じた横断面形状を有する鋼材を、第1の端部を先頭として長手方向へ送り、送られる該鋼材を第1の支持機構により移動自在に支持し、送られる前記鋼材の外面から離間して第1の位置に配置される誘導加熱コイルにより前記鋼材を所定の温度域に加熱し、前記第1の位置よりも前記鋼材の送り方向の下流の第2の位置に配置される冷却機構により前記鋼材の外面に冷却媒体を吹き付けることによって、前記誘導加熱コイルによる前記鋼材の加熱位置と前記冷却媒体の前記鋼材への吹き付け位置との間に赤熱部を形成しながら、該鋼材を冷却し、前記冷却機構よりも前記鋼材の送り方向の下流の位置に配置されて前記鋼材を移動自在に支持する第2の支持機構による該鋼材の支持位置を、三次元又は二次元で変更することにより、前記赤熱部に曲げモーメントを与える際に、
前記赤熱部の温度の測定結果に基づいて前記誘導加熱コイルへの電力の投入量をフィードバック制御すること
を特徴とする曲げ部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−197488(P2012−197488A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62737(P2011−62737)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】