説明

熱硬化性シリコーン樹脂用組成物

【課題】光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成でき、かつ、耐光性、耐熱性、及び接着性に優れるシリコーン樹脂組成物を提供できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、該組成物の半硬化物であるシリコーン樹脂シート、該シートをさらに硬化させた樹脂硬化物、該シートにより封止されている光半導体装置、ならびに該組成物を成形したマイクロレンズアレイを提供すること。
【解決手段】(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、及び(6)ヒドロシリル化触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物に関する。さらに詳しくは、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、該組成物の半硬化物であるシリコーン樹脂シート、該シートをさらに硬化させた樹脂硬化物、該シートにより封止されている光半導体装置、ならびに該組成物を成形したマイクロレンズアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
一般照明への応用が検討されている高出力白色LED装置には、耐光性と耐熱性に優れた封止材料が求められており、近年、いわゆる「付加硬化型シリコーン」が多用されている。
【0003】
この付加硬化型シリコーンは、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体を主成分とする混合物を、白金触媒の存在下で熱硬化させることにより得られるものであり、例えば、特許文献1では、組成物にオルガノポリシロキサンを導入して、組成物中のケイ素に結合する水素原子とアルケニル基のモル比を特定の範囲に設定することによって、透明性及び絶縁特性に優れる硬化物が得られる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献2では、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個のアルケニル基を有するシリコーンレジンと、1分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2個の水素原子を有するオルガノハイドロジェンシラン及び/又はオルガノハイドロジェンシロキサンを含有する樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3では、SiH基を有するシリコーン樹脂成分として、直鎖状で、ケイ素原子結合水素原子(Si−H基)を分子鎖途中に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、直鎖状で、Si−H基を分子鎖両末端に有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンとを特定量で併用することにより、優れた強度を備えた硬化物を与える組成物が開示されている。
【0006】
一方、付加硬化型シリコーン樹脂は、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、半硬化状態(Bステージ)を形成することは困難である。そこで、白金触媒の触媒活性を低下させるために、反応抑制剤として、リン、窒素、硫黄化合物やアセチレン類を添加することが有効であることが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、白色LED装置は、一般的に、近紫外あるいは青色LEDとそれら光源の波長により励起されて発光する蛍光体とを組み合わせることにより白色を発光する。例えば、特許文献5のように、LEDを蛍光材料を含有する樹脂で封止するタイプや、特許文献6のように、LEDを透明樹脂で封止後、蛍光材料を含有する樹脂を噴霧、塗布するタイプがある。さらに、特許文献7では、発光輝度の向上、発光色ムラの低減の観点から、蛍光材料を均一に分布したシート状の樹脂層を透光性樹脂層の上に設けた装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−198930号公報
【特許文献2】特開2004−186168号公報
【特許文献3】特開2008−150437号公報
【特許文献4】特開平6−118254号公報
【特許文献5】特開平7−99345号公報
【特許文献6】特開平10−200165号公報
【特許文献7】特開2004−343149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の付加硬化型シリコーンは、耐久性に優れるものの、硬化反応させる前は粘性を有する液体からなるものであるため、取り扱いが煩雑となり、さらに、周囲の環境によって粘度が変化する場合があるなど、依然満足できるものではない。
【0010】
また、反応抑制剤として知られている化合物は、樹脂の耐久性に影響を及ぼすことから、さらなる反応制御の方法が要求される。
【0011】
本発明の課題は、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成でき、かつ、耐光性、耐熱性、及び接着性に優れるシリコーン樹脂組成物を提供できる熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、該組成物の半硬化物であるシリコーン樹脂シート、該シートをさらに硬化させた樹脂硬化物、該シートにより封止されている光半導体装置、ならびに該組成物を成形したマイクロレンズアレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
〔1〕 (1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、及び(6)ヒドロシリル化触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物、
〔2〕 さらに、蛍光体無機粉末を含有してなる、前記〔1〕記載の組成物、
〔3〕 さらに、微粒子を含有してなる、前記〔2〕記載の組成物、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の組成物を半硬化させてなる、シリコーン樹脂シート、
〔5〕 前記〔4〕記載のシリコーン樹脂シートを硬化させてなる、シリコーン樹脂硬化物、
〔6〕 前記〔4〕記載のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置、
〔7〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれか記載の組成物を成形してなる、マイクロレンズアレイ、
〔8〕 前記〔2〕又は〔3〕記載の組成物を完全硬化させてなるシリコーン樹脂硬化物層に、前記〔1〕記載の組成物を半硬化させたシリコーン樹脂半硬化物層が積層されてなるシリコーン樹脂シート、ならびに
〔9〕 シリコーン樹脂半硬化物層が光半導体素子を封止するように、前記〔8〕記載のシリコーン樹脂シートを用いて封止してなる、光半導体装置
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、光半導体素子の封止加工が可能な半硬化状態を形成でき、かつ、耐光性、耐熱性、及び接着性に優れるシリコーン樹脂組成物を提供できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、及び(6)ヒドロシリル化触媒を含有するものであって、前記組成物は、縮合反応性官能基を有する成分と付加反応性官能基を有する成分を含有することから、まず縮合反応性官能基を有する成分を縮合反応させることで半硬化状態の樹脂を調製し、次いで付加反応性官能基を有する成分を付加反応させることで完全硬化した樹脂を調製することができる。
【0015】
一般的なエポキシ樹脂等の半硬化状態(以下、Bステージともいう)は、通常、熱硬化条件を制御することによって達成される。具体的には、例えば、80℃で加熱してモノマーの架橋反応を一部進行させることにより、Bステージのペレットが調製される。そして、得られたペレットは、所望の成型加工を施した後に、150℃で加熱して完全に硬化させる。一方、付加硬化型の熱硬化性シリコーン樹脂は、主鎖にビニル基を有するシリコーン誘導体と、主鎖にSiH基を有するシリコーン誘導体とを付加反応(ヒドロシリル化反応)させて得られるが、通常、活性の高い白金触媒を用いるために、一度、硬化反応が始まると途中で反応を停止させることが極めて難しく、Bステージを形成することは困難である。また、反応抑制剤によって反応を制御する方法も知られているが、反応抑制剤の種類や使用量によって反応の進行が異なることから、反応抑制剤による制御は容易ではない。
【0016】
本発明の組成物は、モノマーの架橋反応を反応温度が異なる2種類の反応系、即ち、縮合反応系と付加反応(ヒドロシリル化反応)系とによって行うように、各反応に関するモノマーを含有することによって、反応温度を調整して架橋反応を制御してBステージのペレットを調製する。即ち、本発明の組成物は、まず縮合反応に関するモノマーを縮合反応させることで半硬化状態の樹脂を調製し、次いでヒドロシリル化反応に関するモノマーを付加反応させることで完全硬化した樹脂を調製することが出来ると推定される。従って、ヒドロシリル化反応を生じさせない限りは、半硬化状態を維持することができ、Bステージでの保存安定性が担保される。また、本発明の組成物における樹脂モノマーは、いずれもシリコーンを主骨格として含有するため、得られる樹脂組成物が耐熱性と耐光性に優れるものとなる。またさらに、前記モノマーにはエポキシ基を含有する化合物も含まれており、エポキシ基はその柔軟で極性の高い構造により接着性を付与することができることから、得られる樹脂組成物が接着性にも優れるものとなる。なお、本明細書において、半硬化物、即ち、半硬化状態(Bステージ)の物とは、溶剤に可溶なAステージと、完全硬化したCステージの間の状態であって、硬化、ゲル化が若干進行し、溶剤に膨潤するが完全に溶解せず、加熱によって軟化するが溶融しない状態である物のことを意味し、全硬化物(完全硬化物)とは、完全に硬化、ゲル化が進行した状態である物のことを意味する。
【0017】
また、特許文献5、6、7を参酌することにより、蛍光体材料を均一に分散させたシート状の樹脂層を調製することができる。一般的に、蛍光体材料は比重が重いため、また、分散媒の樹脂への親和性が異なるため、樹脂中で沈降しやすく完全に均一な分布状態を形成することは困難であり、結果的に、蛍光体の分布ムラが生じて発光色ムラが発生するという課題がある。しかし、本発明の組成物は、粒子の分散媒として適した粘度を有するものであり、かつ蛍光体粒子との親和性が良いために、蛍光体材料が良好に分散し、蛍光体の分布ムラが抑制されて、発光色ムラが低減される。
【0018】
またさらに、一般的な樹脂シートは弾性率が低いと、温度サイクル試験後には、樹脂の熱膨張、収縮による、はがれなどの不具合が生じる場合がある。そこで、樹脂中に微粒子を含有させることができるが、樹脂中での分布が十分ではないため、弾性率向上効果は満足できるものではない。しかし、本発明の組成物は微粒子との親和性が良いために、微粒子が良好に分散し、シート弾性率が高くなり、シートの品質が向上して信頼性が高まる。
【0019】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、
(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、
(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、
(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、
(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、
(5)縮合触媒、及び
(6)ヒドロシリル化触媒
を含有する。
【0020】
(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂
本発明における両末端シラノール型シリコーン樹脂としては、各成分との相溶性の観点から、式(I):
【0021】
【化1】

【0022】
(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表される化合物が好ましい。なお、本発明においては、両末端シラノール型シリコーン樹脂の末端シラノール基が縮合反応を起こすことから、両末端シラノール型シリコーン樹脂を縮合反応系モノマーという。
【0023】
式(I)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製のしやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基が好ましい。なお、式(I)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0024】
式(I)中のnは、1以上の整数を示すが、安定性や取り扱い性の観点から、好ましくは1〜10000、より好ましくは1〜1000の整数である。
【0025】
かかる式(I)で表される化合物としては、両末端シラノール型ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端シラノール型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、nが1〜1000の整数である化合物が好ましい。
【0026】
式(I)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0027】
式(I)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。なお、本明細書において、シリコーン誘導体の分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0028】
両末端シラノール型シリコーン樹脂における式(I)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0029】
両末端シラノール型シリコーン樹脂の含有量は、組成物中、1〜99重量%が好ましく、50〜99重量%がより好ましく、80〜99重量%がさらに好ましい。
【0030】
(2)アルケニル基含有ケイ素化合物
本発明におけるアルケニル基含有ケイ素化合物は、アルケニル基がヒドロシリル化反応を起こして樹脂化を行うことから、ヒドロシリル化反応に関するモノマーである。また、アルケニル基以外の置換基は、特に限定されないが、縮合反応に関する官能基である場合には、アルケニル基含有ケイ素化合物は、縮合反応に関するモノマーとヒドロシリル化反応に関するモノマーのいずれとも反応し得る化合物となり、該化合物を介して両反応系の樹脂が結合して、耐熱性により優れる硬化物が得られることになる。なお、本明細書において、縮合反応に関する官能基とは、両末端シラノール型シリコーン樹脂のOH基と縮合反応し得る官能基のことを意味し、具体的には、ハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0031】
このような観点から、本発明におけるアルケニル基含有ケイ素化合物としては、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは置換又は非置換のアルケニル基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表される、アルケニル基と縮合反応に関する官能基を有する化合物が好ましい。
【0032】
式(II)におけるRは、置換又は非置換のアルケニル基を示し、アルケニル基を骨格に含む有機基である。該有機基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が例示される。なかでも、ヒドロシリル化反応に対する反応性の観点から、ビニル基が好ましい。
【0033】
式(II)におけるXはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、これらはいずれも縮合反応に関する官能基である。ハロゲン原子としては、反応性の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。アルコキシ基としては、反応性及び取り扱い性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシロキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。なお、式(II)において、3個のXは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0034】
かかる式(II)で表される化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリブロモシラン、ビニルトリヨードシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン、ノルボルネニルトリメトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがビニル基、Xが全てメトキシ基である、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0035】
式(II)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0036】
アルケニル基含有ケイ素化合物における式(II)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0037】
アルケニル基含有ケイ素化合物の含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0038】
また、アルケニル基含有ケイ素化合物の含有量は、両末端シラノール型シリコーン樹脂100重量部に対して、得られる硬化物の強度の観点から、0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0039】
(3)エポキシ基含有ケイ素化合物
本発明におけるエポキシ基含有ケイ素化合物は、エポキシ基を含有するのであれば特に限定はなく、エポキシ基がケイ素に直接結合しても、エポキシ基を一部に有する有機基がケイ素に結合していてもよい。また、前記以外の置換基として、縮合反応に関する官能基をエポキシ基含有ケイ素化合物が含有する場合には、該化合物は縮合反応に関するモノマーと結合する。その結果、硬化物中にエポキシ基が良好に分散して存在し、接着性が向上するものと考えられる。なお、本明細書において、エポキシ基及びエポキシ基を一部に有する有機基のことを、「エポキシ構造含有置換基」という。
【0040】
このような観点から、本発明におけるエポキシ基含有ケイ素化合物としては、式(III):
−Si(X) (III)
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表される、エポキシ基と縮合反応に関する官能基を有する化合物が好ましい。
【0041】
式(III)におけるRはエポキシ構造含有置換基を示し、エポキシ基を骨格に含む有機基である。具体的には、3-グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基、グリシジル基、エポキシシクロヘキシル基、エポキシシクロペンチル基等が例示される。なかでも、反応性や取り扱い性の観点から、3-グリシドキシプロピル基、エポキシシクロヘキシルエチル基が好ましい。
【0042】
式(III)におけるXはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、これらはいずれも縮合反応に関する官能基である。ハロゲン原子としては、反応性の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。アルコキシ基としては、反応性及び取り扱い性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロヘキシロキシ基が好ましく、メトキシ基がより好ましい。なお、式(II)において、3個のXは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基であることが好ましい。
【0043】
かかる式(III)で表される化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
【0044】
【化2】

【0045】
これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが3-グリシドキシプロピル基、Xが全てメトキシ基である、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、Rがエポキシシクロヘキシルエチル基、Xが全てメトキシ基である、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランが好ましい。
【0046】
式(III)で表される化合物は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0047】
エポキシ基含有ケイ素化合物における式(III)で表される化合物の含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0048】
エポキシ基含有ケイ素化合物の含有量は、組成物中、0.01〜90重量%が好ましく、0.01〜50重量%がより好ましく、0.01〜10重量%がさらに好ましい。
【0049】
また、エポキシ基含有ケイ素化合物の含有量は、両末端シラノール型シリコーン樹脂100重量部に対して、得られる硬化物の接着性の観点から、0.001〜10重量部が好ましく、0.01〜5重量部がより好ましい。
【0050】
本発明の一態様として、アルケニル基含有ケイ素化合物のX及びエポキシ基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合、両末端シラノール型シリコーン樹脂のSiOH基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基とを過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比〔SiOH/(SiX+SiX)〕が、20/1〜0.2/1が好ましく、10/1〜0.5/1がより好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性を有する半硬化物が得られ、0.2/1以上であれば、アルケニル基含有ケイ素化合物とエポキシ基含有ケイ素化合物が多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性が良好となる。
【0051】
またさらに、アルケニル基含有ケイ素化合物のX及びエポキシ基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合、アルケニル基含有ケイ素化合物とエポキシ基含有ケイ素化合物の重量比(アルケニル基含有ケイ素化合物/エポキシ基含有ケイ素化合物)は、得られる硬化物の接着性の観点から、200/1以下が好ましく、100/1以下がより好ましい。一方、前記重量比が好ましくは0.1/1以上、より好ましくは1/1以上であると、得られる硬化物の強靭性が良好となる。従って、前記重量比としては、200/1〜0.1/1が好ましく、100/1〜1/1がより好ましい。
【0052】
(4)オルガノハイドロジェンシロキサン
本発明におけるオルガノハイドロジェンシロキサンとしては、特に限定はないが、各成分との相溶性の観点から、式(IV):
【0053】
【化3】

【0054】
(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(V):
【0055】
【化4】

【0056】
(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。なお、本発明においては、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基がヒドロシリル化反応を起こすことから、オルガノハイドロジェンシロキサンをヒドロシリル化反応に関するモノマーという。
【0057】
式(IV)で表わされる化合物は、構成単位A、B及びCによって構成され、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位であり、水素が繰り返し単位に含まれている化合物である。
【0058】
式(IV)におけるR、即ち、構成単位AにおけるR、構成単位BにおけるR、及び構成単位CにおけるRは、いずれも1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(IV)において、全てのRは同一でも異なっていてもよく、構成単位に関係なく、それぞれ独立して上記炭化水素基を示す。
【0059】
構成単位Aは末端単位であり、式(IV)中に2個含まれる。
【0060】
構成単位Bの繰り返し単位数、即ち、式(IV)中のaは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜1000、より好ましくは1〜100の整数である。
【0061】
構成単位Cの繰り返し単位数、即ち、式(IV)中のbは、2以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは2〜10000、より好ましくは2〜1000の整数である。
【0062】
かかる式(IV)で表される化合物としては、メチルハイドロジェンシロキサン、ジメチルポリシロキサン-CO-メチルハイドロジェンシロキサン、エチルハイドロジェンシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサンCO-メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rがメチル基、aが1以上の整数、bが2以上の整数である化合物、Rがエチル基、aが1以上の整数、bが2以上の整数である化合物が好ましい。
【0063】
式(IV)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0064】
式(V)で表される化合物は、水素を末端に有する化合物である。
【0065】
式(V)におけるRは、1価の炭化水素基を示し、飽和又は不飽和、直鎖、分枝鎖又は環状の炭化水素基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、調製しやすさや熱安定性の観点から、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が例示される。なかでも、透明性及び耐光性の観点から、メチル基、エチル基が好ましい。なお、式(V)において、全てのRは同一でも異なっていてもよいが、全てメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0066】
式(V)中のcは、0又は1以上の整数を示すが、反応性の観点から、好ましくは1〜10,000、より好ましくは1〜1,000の整数である。
【0067】
かかる式(V)で表される化合物としては、両末端ヒドロシリル型ポリジメチルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリメチルフェニルシロキサン、両末端ヒドロシリル型ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、Rが全てメチル基、cが1〜1,000の整数である化合物、Rが全てエチル基、cが1〜1,000の整数である化合物が好ましい。
【0068】
式(V)で表される化合物は、安定性や取り扱い性の観点から、分子量は好ましくは100〜1,000,000、より好ましくは100〜100,000であることが望ましい。
【0069】
式(IV)及び式(V)で表される化合物としては、市販品を用いても、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0070】
オルガノハイドロジェンシロキサンにおける、式(IV)及び式(V)で表される化合物の総含有量は、50重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%がさらに好ましい。
【0071】
オルガノハイドロジェンシロキサンの含有量は、組成物中、0.1〜99重量%が好ましく、0.1〜90重量%がより好ましく、0.1〜80重量%がさらに好ましい。
【0072】
また、アルケニル基含有ケイ素化合物とオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比は、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基を過不足なく反応させる観点から、前記官能基のモル比(SiR/SiH)が、20/1〜0.1/1が好ましく、10/1〜0.2/1がより好ましく、10/1〜0.5/1がさらに好ましく、実質的に当量(1/1)であることがさらに好ましい。前記モル比が、20/1以下であれば、本発明の組成物を半硬化させた際に適度な強靭性があり、0.1/1以上であれば、オルガノハイドロジェンシロキサンが多くなりすぎず、得られる樹脂の耐熱性及び強靭性が良好となる。
【0073】
両末端シラノール型シリコーン樹脂とオルガノハイドロジェンシロキサンの重量比(両末端シラノール型シリコーン樹脂/オルガノハイドロジェンシロキサン)は、シート化した際の粘弾性の観点から、99.9/0.1〜1/99が好ましく、99.9/0.1〜50/50がより好ましく、99.9/0.1〜90/10がさらに好ましい。
【0074】
(5)縮合触媒
本発明における縮合触媒としては、両末端シラノール型シリコーン樹脂のシラノール基同士の縮合反応を、また、アルケニル基含有ケイ素化合物のX及びエポキシ基含有ケイ素化合物のXが縮合反応に関する官能基である場合は、両末端シラノール型シリコーン樹脂のシラノール基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基との縮合反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、塩酸、酢酸、ギ酸、硫酸等の酸;水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の塩基;アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ等の金属系触媒が例示される。なかでも、相溶性及び熱分解性等の観点から、水酸化テトラメチルアンモニウムが好ましい。
【0075】
組成物における縮合触媒の含有量は、両末端シラノール型シリコーン樹脂100モルに対して、0.1〜50モルが好ましく、1.0〜5モルがより好ましい。
【0076】
(6)ヒドロシリル化触媒
本発明におけるヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシラン化合物とアルケンとのヒドロシリル化反応を触媒する化合物であれば特に限定はなく、白金黒、塩化白金、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニル錯体、白金−アセチルアセテート等の白金触媒;パラジウム触媒、ロジウム触媒等が例示される。なかでも、相溶性、透明性及び触媒活性の観点から、白金−1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体等の白金−カルボニル錯体が好ましい。
【0077】
組成物におけるヒドロシリル化触媒の含有量は、例えば、白金触媒を用いる場合には、反応速度の観点から、白金含有量が、オルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して、1.0×10-4〜0.5重量部が好ましく、1.0×10-3〜0.05重量部がより好ましい。
【0078】
また、本発明の別態様として、上記(1)〜(6)以外に、蛍光体無機粉末を含有する熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を提供する。
【0079】
蛍光体無機粉末としては、特に限定はなく、当該分野で公知の蛍光体無機粉末、例えば、酸化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、窒化物蛍光体、硫化物蛍光体、珪酸塩化合物等が挙げられる。具体的には、青色を黄色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、黄色蛍光体(α−サイアロン、平均粒子径20μm)、YAG、TAG等が例示され、赤色に変換する機能を有する好適な市販品の蛍光体として、CaAlSiN3等が例示される。
【0080】
蛍光体無機粉末の種類及び形成される樹脂シートの厚さによって混色程度が異なることから、蛍光体無機粉末の含有量は一概には決定されない。
【0081】
またさらに、本発明の別態様として、上記(1)〜(6)及び蛍光体無機粉末以外に、樹脂シートの弾性率を向上する観点から、微粒子を含有するシリコーン樹脂用組成物を提供する。
【0082】
微粒子としては、当該分野で公知の有機及び無機の微粒子であれば特に限定はないが、得られる樹脂シートの光透過性の観点から、透明な粒子が好ましく、樹脂との親和性及び屈折率の観点から、シリカがより好ましい。
【0083】
シリカの粒子サイズは、大きすぎると得られる樹脂シートがもろくなるため好ましくなく、逆に小さすぎると透過率が低下するため好ましくない。シリカの平均粒子径は、1〜50μmが好ましい。また、シート強度の観点から、最大粒径は70μm以下であれば特に限定されない。シリカの形状としては、球状、破砕状等が挙げられるが特に限定されない。本明細書において、無機粒子の平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0084】
組成物における微粒子の含有量は、形成される樹脂シートの厚さによって一概には決定できないが、弾性率向上効果の観点から5重量%以上が好ましく、光透過性の観点から80重量%以下が好ましい。従って、5〜80重量%が好ましい。
【0085】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、上記以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有してもよい。
【0086】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、及び(6)ヒドロシリル化触媒の各成分を含有するものであれば、特に限定なく調製することができるが、本発明の組成物は、縮合反応とヒドロシリル化反応の各反応機構に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させる観点から、縮合反応に関する成分を予め混合してから、ヒドロシリル化反応に関する成分を混合してもよい。
【0087】
縮合反応に関する成分の混合は、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、及び(5)縮合触媒、必要に応じて、有機溶媒などの添加剤を、好ましくは0〜60℃で5分〜24時間攪拌することにより行うことができる。なお、アルケニル基含有ケイ素化合物は、縮合反応、ヒドロシリル化反応のいずれにも関する成分であるが、縮合反応の方がヒドロシリル化反応より低温で反応が開始されることから、(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂と同時に混合されることが好ましい。
【0088】
有機溶媒としては、特に限定はないが、シリコーン誘導体と縮合触媒の相溶性を高める観点から、2−プロパノールが好ましい。
【0089】
有機溶媒の存在量は、両末端シラノール型シリコーン樹脂、アルケニル基含有ケイ素化合物、及びエポキシ基含有ケイ素化合物の総量100重量部に対して、3〜20重量部が好ましく、5〜10重量部がより好ましい。3重量部以上であると反応進行性が良好であり、20重量部以下であると組成物の硬化段階における発泡が低減される。
【0090】
なお、上記混合によって、両末端シラノール型シリコーン樹脂のSiOH基と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基及びエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基との縮合反応の一部が開始されてもよく、縮合反応の進行度は、H−NMR測定によって、SiOH基に由来するピークの消失程度によって確認することができる。
【0091】
次に、ヒドロシリル化反応に関する成分として、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、及び(6)ヒドロシリル化触媒を、上記の縮合反応に関する成分の混合物に混合する。本発明の組成物は、縮合反応とヒドロシリル化反応の2種類の反応を行って硬化物を得る際に、縮合反応のみを行って半硬化状態の成形物を調製することが可能であることから、ヒドロシリル化反応に関する成分は、上記の縮合反応に関する成分の混合物に、均一に混合されるのであれば、混合方法に特に限定はない。
【0092】
また、蛍光体無機粉末や微粒子を含有させる場合は、縮合反応に関する成分の混合物にヒドロシリル化反応に関する成分を混合後、それぞれ、混合することができる。蛍光体無機粉末と微粒子をいずれも混合する場合は、別々に混合しても、予め混合したものを混合してもよく、別々に混合する場合は、蛍光体無機粉末と微粒子の混合順序は特に限定されない。また、混合方法も均一に混合されるのであれば特に限定はない。
【0093】
かくして得られた本発明の組成物の25℃における粘度は、好ましくは10〜100000mPa・s、より好ましくは1000〜50000mPa・s、さらに好ましくは1000〜20000mPa・sである。本明細書において、粘度は、B形粘度計を用いて測定することができる。
【0094】
また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材等の有機ポリマーフィルム、セラミクス、金属等)の上にキャスティング、スピンコーティング、ロールコーティングなどの方法により、適当な厚さに塗工し、溶媒の除去が可能な程度の温度で加熱して乾燥することによりシート状に成形することができる。加熱温度は、使用される溶媒の種類によって一概には決定されないが、本発明の組成物は、この加熱によって、溶媒の除去に加えて、縮合反応を完結させて、半硬化状(Bステージ)のシリコーン樹脂シートを調製することができる。従って、本発明はまた、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物を半硬化させた、シリコーン樹脂シートを提供する。また、本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物が蛍光体無機粉末を含有する場合は、該組成物を前記と同様に塗工して得られるシートは波長変換シートとなる。よって、本発明のシリコーン樹脂シートとしては、蛍光体無機粉末を含有しないシート状の樹脂層(態様1)と、蛍光体無機粉末、必要によりさらに微粒子を含有する波長変換シート(態様2)が挙げられる。これらのシートは単独で、例えば、光半導体素子上に載置して用いることもできるが、態様1と態様2が直接又は間接的に積層されたシート、即ち、態様1と態様2が組み合わせられ一体化した複合シートとして用いることもできる。具体的には、例えば、態様1のシートが光半導体素子を包埋するように、光半導体素子上を態様1のシート及び態様2のシートがこの順で積層されるよう一体化されたものを用いることができ、光半導体素子からの光取り出し効率を高くすることができる。なお、本明細書において、「反応の完結」とは、反応に関与する官能基の80%以上が反応した場合のことを意味し、縮合反応においては、前述のH−NMRによってSiOH基量を測定することによって確認することができる。また、本明細書において、「直接積層」しているシートとは、セパレーター、態様1のシート及び態様2のシートが直接積層されて形成されているシートのことを意味し、「間接的に積層」しているシートとは、セパレーターと態様1のシートの間、及び/又は態様1のシートと態様2のシートの間に、常法に従って他の層を介して積層されて形成されているシートのことを意味する。
【0095】
加熱温度は、20〜200℃が好ましく、40〜150℃がより好ましい。加熱時間は、0.1〜60分が好ましく、1〜20分がより好ましい。蛍光体無機粉末を含有していても同様である。
【0096】
シリコーン樹脂シートの厚さは、特に限定されないが、いずれの態様においても単独で用いる場合、光半導体の封止の観点から、100〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましい。また、本発明のシリコーン樹脂シートが態様1と態様2の複合シートである場合、態様1のシート厚さは、封止性の観点から、100〜5000μmが好ましく、100〜2000μmがより好ましく、態様2のシート厚さは、白色化の観点から、30〜200μmが好ましく、70〜120μmがより好ましく、複合シートの厚さは、130〜5200μmが好ましく、170〜2120μmがより好ましい。
【0097】
本発明のシリコーン樹脂シートは接着性が良好であることから、例えば、150℃で16時間加熱して得られた硬化物について、90°ピール試験を行った際の剥離力は、好ましくは10〜5000N/cm、より好ましくは50〜5000N/cmである。なお、本明細書において、剥離力は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0098】
本発明のシリコーン樹脂シートは、例えば、前記態様の単独シートは半硬化状態であるために、光半導体素子の上にそのまま又は公知の樹脂をポッティングした上に、あるいは前記複合シートは態様1のシートが素子側になるように、載置させて封止加工した後、高温で加熱して樹脂シートを完全に硬化させることにより光半導体装置を調製することができる。従って、本発明は、本発明のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止した光半導体装置を提供する。前記樹脂シートの完全硬化は、ヒドロシリル化反応に関する成分が反応することにより実施される。よって、本発明の別態様として、本発明のシリコーン樹脂シートを硬化させたシリコーン樹脂硬化物を提供する。
【0099】
シートを基板に載置させてから封止加工する方法は、特に限定はないが、例えば、ラミネーターを用いて、好ましくは100〜200℃、0.01〜10MPaで、より好ましくは120〜160℃、0.1〜1MPaで、5〜600秒間加熱することにより圧着させてから封止加工する方法が例示される。
【0100】
封止加工の加熱温度は、120〜250℃が好ましく、150〜200℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜48時間が好ましく、1〜24時間がより好ましい。
【0101】
なお、ヒドロシリル化反応の進行度は、IR測定によって、オルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基に由来するピークの吸収程度によって確認することができ、吸収強度が初期値(硬化反応前)の20%を下回った場合に、ヒドロシリル化反応が完結して完全硬化している。
【0102】
また、本発明のシリコーン樹脂シートは、透明性が高く、耐光性が良好であることから、マイクロレンズアレイの調製にも好適に用いられる。本発明の別態様として、本発明のシリコーン樹脂シートを成形したマイクロレンズアレイを提供する。マイクロレンズアレイの調製に用いられる本発明のシリコーン樹脂シートは、好ましくは50〜5000μm、より好ましくは100〜4000μmの厚みを有するものであることが望ましい。
【0103】
マイクロレンズアレイは、公知の方法に従って調製することができるが、例えば、(a)マイクロレンズアレイと同一の形状を有する基材を作製する工程、(b)該基材を用いてマイクロレンズアレイと逆の形状を有する成形用金型を作製する工程、及び(c)該成形用金型を用いてマイクロレンズアレイ形状を樹脂に転写する工程を含む製造方法により調製することができる。
【0104】
工程(a)において、基材はSi、石英ガラス、Cu合金、Fe合金、Ni合金、樹脂板もしくはフィルム(ポリイミド、ポリメチルメタクリレート等)等であることが好ましい。また、切削加工、エッチング、放射光等によって所望のマイクロレンズアレイと同一の形状を加工して基材を作製することが好ましい。ここで、マイクロレンズは、半球のような形状、直径0.7〜50μm、高さ0.35〜25μmを有することが好ましい。マイクロレンズアレイは、上記マイクロレンズを定ピッチ及び/又は最密充てんで配列されたものであることが好ましい。
【0105】
工程(b)において、マイクロレンズアレイ形状を有する基材と逆の形状を有する成形用金型は、Au、Ag、Al、Cr、Ni等を用いた電鋳によって、基材の表面に金属を電解メッキによって厚みが好ましくは0.15〜0.5mmとなるようにメッキした後、基材からメッキ金属を離型して作製することができる。
【0106】
工程(c)において、成形用金型を用いてマイクロレンズアレイ形状を樹脂、即ち、本発明のシリコーン樹脂シートに転写することが好ましい。具体的には、石英板に本発明のシリコーン樹脂シートを積層した後、成形用金型をフィルム上に配置して真空ラミネーターで0.1〜1.0MPa、100〜180℃、0.5〜5分間プレスを行って、マイクロレンズアレイ形状を樹脂シートに転写することができる。
【0107】
また、工程(c)は基材に樹脂を塗布する工程、マイクロレンズアレイと逆の形状が形成された成形用金型の面に樹脂を押し付ける工程、並びに樹脂を硬化させる工程を含んでいてもよい。
【0108】
本発明のマイクロレンズアレイは、例えば、液晶プロジェクター、ビデオカメラ、ビューファインダー、携帯用テレビ等の光学電子機器に好適に使用し得る。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0110】
〔シリコーン誘導体の分子量〕
ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算にて求める。
【0111】
〔微粒子の平均粒子径〕
本明細書において、微粒子の平均粒子径とは一次粒子の平均粒子径を意味し、微粒子の粒子分散液について動的光散乱法で測定して算出される体積中位粒径(D50)のことである。
【0112】
実施例1
表1に示す組成のシリコーン樹脂用組成物を得た。具体的には、両末端シラノール型シリコーン樹脂〔式(I)中のRが全てメチル基、n=155で表わされる化合物、平均分子量11,500〕100g(8.70mmol)、アルケニル基含有ケイ素化合物として、ビニルトリメトキシシラン〔式(II)中のRがビニル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕0.77g(5.20mmol)、及び、エポキシ基含有ケイ素化合物として、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン〔式(III)中のRが3-グリシドキシプロピル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕0.14g(0.59mmol)[両末端シラノール型シリコーン樹脂のSiOH基のモル数と、アルケニル基含有ケイ素化合物のSiX基とエポキシ基含有ケイ素化合物のSiX基の総モル数の比〔SiOH/(SiX+SiX)〕=1/1]を攪拌混合後、縮合触媒として水酸化テトラメチルアンモニウムメタノール溶液(濃度10重量%)0.19mL(触媒量:0.17mmol、両末端シラノール型シリコーン樹脂100モルに対して2.0モル)を加え、室温(25℃)で1時間攪拌した。得られたオイルに、オルガノハイドロジェンシロキサン〔式(IV)中のRが全てメチル基、a=10、b=10で表わされる化合物、粘度20mPa・s〕2.19g〔アルケニル基含有ケイ素化合物のSiR基とオルガノハイドロジェンシロキサンのSiH基のモル比(SiR/SiH)=1/3.0〕、及びヒドロシリル化触媒として白金−1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体(白金濃度2重量%)0.025mL(白金含有量はオルガノハイドロジェンシロキサン100重量部に対して0.02重量部)を加えて、シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0113】
実施例2
実施例1において、ビニルトリメトキシシランの使用量を0.77g(5.20mmol)から0.85g(5.70mmol)に変更し、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシランの使用量を0.14g(0.59mmol)から0.014g(0.059mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比〔SiOH/(SiX+SiX)〕は1/1、モル比(SiR/SiH)は1/2.7であった。
【0114】
実施例3
実施例1において、エポキシ基含有ケイ素化合物として、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン0.14g(0.59mmol)を用いる代わりに、(エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン〔式(III)中のRが(エポキシシクロヘキシル)エチル基、Xが全てメトキシ基で表わされる化合物〕0.15g(0.59mmol)を用いる以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比〔SiOH/(SiX+SiX)〕は1/1、モル比(SiR/SiH)は1/3.0であった。
【0115】
比較例1
実施例1において、ビニルトリメトキシシランの使用量を0.77g(5.20mmol)から0.86g(5.80mmol)に変更し、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン0.14g(0.59mmol)を用いない以外は、実施例1と同様にして、シリコーン樹脂用組成物を得た。なお、モル比〔SiOH/SiX〕は1/1、モル比(SiR/SiH)は1/2.7であった。
【0116】
前記実施例1〜3及び比較例1の組成物の組成を、表1にまとめて示す。
【0117】
【表1】

【0118】
次に、蛍光体無機粉末や微粒子を含有する組成物の実施例及び比較例を示す。
【0119】
実施例4
実施例1で得られた樹脂用組成物100gに、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)19gを添加し、攪拌装置を用いて25℃で60分攪拌混合し、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0120】
実施例5
実施例1で得られた樹脂用組成物100gに、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)19gを添加し混合後、シリカ粒子(デンカ社製、FB-7SDC、平均粒子径5.8μm)10gを添加して、攪拌装置を用いて25℃で60分攪拌混合し、蛍光体−シリカ微粒子含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0121】
実施例6
実施例5において、シリカ粒子の添加量を10gから20gに変更する以外は、実施例5と同様にして、蛍光体−シリカ微粒子含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0122】
実施例7
実施例5において、シリカ粒子の添加量を10gから30gに変更する以外は、実施例5と同様にして、蛍光体−シリカ微粒子含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0123】
比較例2
実施例4において、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)19gを添加する樹脂の種類を、一般的なポリジメチルシロキサンを主材とする熱硬化型液状シリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン社製、LR-7665)に変更する以外は、実施例4と同様にして、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0124】
比較例3
実施例4において、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)を添加する樹脂の種類を、一般的なシリコーン樹脂(信越化学工業社製、KER-2500)に変更する以外は、実施例4と同様にして、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0125】
比較例4
実施例4において、イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(YAG蛍光体)を添加する樹脂の種類を、一般的なシリコーン樹脂(東レダウコーニング社製、OE-6336)に変更する以外は、実施例4と同様にして、蛍光体含有シリコーン樹脂用組成物を得た。
【0126】
得られた組成物を用いて、以下の方法に従って、半硬化物、完全硬化物、及び光半導体装置を調製した。なお、市販の二液混合型シリコーンエラストマー(旭化成ワッカーシリコーン社製、LR-7665)のA液10gとB液10gをよく混合して、シリコーン樹脂用組成物を調製し(25℃における粘度は15000mPa・s)、参考例1として同様に半硬化物、完全硬化物、光半導体装置を調製した。
【0127】
半硬化物の調製例
実施例1〜3、比較例1、又は参考例1の組成物を二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社製、50μm)上に500μmの厚さに塗工し、実施例1〜3及び比較例1の組成物は135℃で7分加熱して、参考例1の組成物は室温(25℃)で16時間静置して、シート状の半硬化物(シート)を調製した(厚み500μm)。
【0128】
完全硬化物の調製例1
実施例1〜3、比較例1、又は参考例1のシートは150℃で5時間加熱して完全硬化物シリコーン樹脂シートを得た。
【0129】
完全硬化物の調製例2
実施例4〜7又は比較例2〜4の組成物を二軸延伸ポリエステルフィルム(三菱樹脂株式会社製、50μm)上に100μmの厚さに塗工し、150℃で5時間加熱して完全硬化物シリコーン樹脂シートを得た。
【0130】
光半導体装置の作製例1
青色LEDが実装された基板に、実施例1〜3、比較例1、又は参考例1の半硬化状態のシートを被せ、減圧下、160℃で5分間加熱し、0.2MPaの圧力で封止加工後、150℃で5時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させて、光半導体装置を作製した。
【0131】
光半導体装置の作製例2
青色LEDが実装された基板に、実施例1〜3、比較例1、又は参考例1の半硬化状態のシートを被せ、その上にマイクロレンズ金型(Ni製、半球状、直径10μm、高さ5μm)を置き、真空ラミネーター(ニチゴーモートン社製、真空ラミネーターV130)を用いて、減圧下、160℃で5分間加熱し、0.2MPaの圧力でプレス加工後、150℃で1時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させると共に、樹脂表面にマイクロレンズ構造を転写した光半導体装置を作製した。
【0132】
光半導体装置の作製例3
実施例4〜7又は比較例2〜4の完全硬化物シリコーン樹脂シート上に、実施例4〜7のシート調製に用いた組成物から蛍光体無機粉末及びシリカ微粒子を除いた組成物(蛍光体・シリカ非含有組成物)を塗工し、半硬化状態になるよう135℃で5分加熱して、実施例4〜7又は比較例2〜4のシートに前記蛍光体・シリカ非含有組成物のシートが積層されたシリコーン樹脂複合シートを得た(厚み500μm)。青色LEDの上に上記で得られた複合シートを半硬化物側(蛍光体−シリカ非含有組成物)がLEDチップ側に来るようにして載置し、真空プレス装置を用いて、160℃で5分間加熱し、0.1MPaの圧力で封止加工後、150℃で5時間加熱することにより、樹脂を完全に硬化させて、光半導体装置を作製した。なお、実施例4〜7のシート調製に用いた組成物から蛍光体無機粉末及びシリカ微粒子を除いた組成物は、実施例1の組成物である。
【0133】
得られた半硬化物、完全硬化物、光半導体装置について、以下の試験例1〜10に従って、特性を評価した。結果を表2〜3に示す。
【0134】
試験例1(樹脂粘度)
25℃、1気圧の条件下でレオメータを用いて測定した。
【0135】
試験例2(保存安定性)
調製直後と室温(25℃)で24時間保存後の半硬化物について、デジタル測長計(MS-5C、ニコン社製)を用いて、センサーヘッドで7g/mm2の荷重をかけた際に、半硬化物の表面からセンサーヘッドが沈んだ距離を測定し、以下の式に基づいてシート硬度を求めた。
シート硬度=[1−{センサーヘッドが沈んだ距離(μm)/半硬化物の膜厚(μm)}]×100
次に、得られたシート硬度の比率(保存後/調製直後×100)を硬度保持率(%)とし、以下の評価基準に従って、保存安定性を評価した。
【0136】
〔保存安定性の評価基準〕
A:硬度保持率が97%超、103%未満
B:硬度保持率が80〜97%、103〜120%
C:硬度保持率が80%未満、120%超
【0137】
試験例3(弾性)
得られた硬化物シートについて、オートグラフ(島津製作所社製)を用いて引張り弾性率(MPa)を求めて評価した。引っ張り弾性率が高いほど弾性が高く、熱サイクル試験による品質保証が高いことを示す。
【0138】
試験例4(輝度)
得られた硬化物シートに対し、460nm単波長の励起光をシート平面に対して垂直方向より入射し、シートを透過した励起光及びシート中の蛍光体より発せられ透過した蛍光を、積分球と瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)を用いて全光束の光学スペクトルを検出した。得られた光学スペクトルから輝度の指標となるY値を測定した。
【0139】
試験例5(色度安定性)
得られた硬化物シートに対し、一定の青色光を照射し、透過した青色光と発光した黄色光とを検出して、色度を評価した。具体的には、CIE色度 y座標で色度をシート上の任意の10ポイントについて測定して、最大色度と最小色度の差を最大色度差として算出して評価した。最大色度差が小さいほど色度安定性が高いことを示す。
【0140】
試験例6(光透過性)
各完全硬化物の波長450nmにおける光透過率(%)を、分光光度計(U−4100、日立ハイテク社製)を用いて測定した。光透過率が高いほど光透過性に優れることを示す。
【0141】
試験例7(耐熱性)
各完全硬化物を150℃の温風型乾燥機内に静置し、100時間経過後の完全硬化物の外観を目視で観察し、保存前の状態から変色のないものを「○」、あるものを「×」とした。また、200℃の温風型乾燥機内に静置し、24時間経過後の完全硬化物の重量を保存前の重量で除した値を残存率(%)とした。保存後の外観の変化がなく、残存率が高いほど耐熱性に優れることを示す。
【0142】
試験例8(接着性)
各半硬化物を42アロイ板に積層し、減圧下、160℃で5分間加熱後、0.2MPaの圧力で圧着させ、その後150℃で16時間加熱して硬化物を調製した。得られた硬化物について、90°ピール試験に従って、その剥離力(N/cm)を測定した。剥離力が高いほど接着性に優れることを示す。
【0143】
試験例9(封止性)
各光半導体装置の封止前後の状態を光学顕微鏡で観察し、光半導体素子が完全に包埋され、ボンディングワイヤーに変形、損傷がないものを「○」、あるものを「×」とした。なお、実施例1〜3、比較例1、又は参考例1の光半導体装置は、作製例1で作製したものを評価した。
【0144】
試験例10(耐光性)
各光半導体装置に300mAの電流を流してLED素子を点灯させ、試験開始直後の輝度を瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)により測定した。その後、LED素子を点灯させた状態で放置し、300時間経過後の輝度を同様にして測定し、下記式により輝度保持率を算出して、耐光性を評価した。輝度保持率が高いほど、耐光性に優れることを示す。なお、実施例1〜3、比較例1、又は参考例1の光半導体装置は、作製例1で作製したものを評価した。
輝度保持率(%)=(300時間経過後の輝度/試験開始直後の輝度)×100
【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
結果、実施例の組成物は、比較例に比べて、半硬化状態を形成でき、かつ、光透過性、耐熱性、耐光性、接着性のいずれもが優れるという優れた封止材料であることが分かる。なお、実施例1において、アルケニル基含有ケイ素化合物(ビニルトリメトキシシラン)を含有しない以外は、同じ組成である組成物も調製したが、完全硬化物を調製することができなかった。
【0148】
また、実施例4〜7の組成物は、比較例2〜4に比べて最大色度差が同等もしくは小さくなっており、色度安定性の向上を示唆した。
【0149】
さらに、実施例5〜7の組成物は、実施例4の組成物に比べて、シリカ粒子を含有しながらも輝度を低下させることなく弾性率を向上させることが分かる。これにより、温度サイクル等の信頼性試験に対して良好な結果を示すシートが得られることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の熱硬化性シリコーン樹脂用組成物は、例えば、液晶画面のバックライト、信号機、屋外の大型ディスプレイや広告看板等の半導体素子を製造する際に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)両末端シラノール型シリコーン樹脂、(2)アルケニル基含有ケイ素化合物、(3)エポキシ基含有ケイ素化合物、(4)オルガノハイドロジェンシロキサン、(5)縮合触媒、及び(6)ヒドロシリル化触媒を含有してなる、熱硬化性シリコーン樹脂用組成物。
【請求項2】
両末端シラノール型シリコーン樹脂が、式(I):
【化1】

(式中、Rは1価の炭化水素基を示し、nは1以上の整数であり、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
アルケニル基含有ケイ素化合物が、式(II):
−Si(X) (II)
(式中、Rは置換又は非置換のアルケニル基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
エポキシ基含有ケイ素化合物が、式(III):
−Si(X) (III)
(式中、Rはエポキシ構造含有置換基、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、フェノキシ基又はアセトキシ基を示し、但し、3個のXは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物である、請求項1〜3いずれか記載の組成物。
【請求項5】
オルガノハイドロジェンシロキサンが、式(IV):
【化2】

(式中、A、B及びCは構成単位であり、Aが末端単位、B及びCが繰り返し単位を示し、Rは1価の炭化水素基、aは0又は1以上の整数、bは2以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、及び式(V):
【化3】

(式中、Rは1価の炭化水素基、cは0又は1以上の整数を示し、但し、全てのRは同一でも異なっていてもよい)
で表わされる化合物、からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4いずれか記載の組成物。
【請求項6】
さらに、蛍光体無機粉末を含有してなる、請求項1〜5いずれか記載の組成物。
【請求項7】
さらに、微粒子を含有してなる、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
微粒子がシリカである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の組成物を半硬化させてなる、シリコーン樹脂シート。
【請求項10】
請求項9記載のシリコーン樹脂シートを硬化させてなる、シリコーン樹脂硬化物。
【請求項11】
請求項9記載のシリコーン樹脂シートを用いて光半導体素子を封止してなる、光半導体装置。
【請求項12】
請求項1〜8いずれか記載の組成物を成形してなる、マイクロレンズアレイ。
【請求項13】
請求項6〜8いずれか記載の組成物を完全硬化させてなるシリコーン樹脂硬化物層に、請求項1〜5いずれか記載の組成物を半硬化させてなるシリコーン樹脂半硬化物層が積層されてなるシリコーン樹脂シート。
【請求項14】
半硬化させた組成物からなる層が光半導体素子を封止するように、請求項13記載のシリコーン樹脂シートを用いて封止してなる、光半導体装置。

【公開番号】特開2010−265437(P2010−265437A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280303(P2009−280303)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】