説明

燃料供給装置

【課題】 燃料輸送経路内に滞留した燃料の劣化による不具合の発生を可及的に抑制し得る燃料供給装置を提供する。
【解決手段】 燃料供給制御装置(1)は、内燃機関(2)に燃料(F)を供給するように構成されている。内燃機関(2)は、独立して燃焼行程に供され得る第一の成分(F1)と、これとは異なる第二の成分(F2)と、を含み得る。第二の成分(F2)の濃度は、濃度取得部(131)によって取得される。制御部(102)は、この濃度が所定値を超えている場合、内燃機関(2)の停止処理の際に、燃料供給路(113)内に残留する燃料(F)をインジェクタ(102)にて噴射させてから、内燃機関(2)を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給装置、すなわち、内燃機関に燃料を供給する装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油代替燃料の利用が盛んに図られている。例えば、特開2006−105092号公報や、特開2007−192063号公報には、ディーゼルエンジンに対してバイオ燃料を適用した例が開示されている。ここで、バイオ燃料とは、生物(植物又は動物)由来の燃料であり、例えば、植物原油や廃食油等がこれにあたる。バイオ燃料は、これ単独で内燃機関用の燃料として用いられ得る。あるいは、このバイオ燃料と石油燃料(軽油やガソリン)との混合燃料が、内燃機関に用いられ得る。
【0003】
この混合燃料におけるバイオ燃料の混合率(濃度)は、各国の基準等によって様々である。例えば、ガソリンエンジンの燃料(ガソリンとバイオエタノールとの混合燃料)については、主なものとして、バイオエタノール濃度が3%である「E3」、同濃度が10%である「E10」、同濃度が85%である「E85」、等が知られている。また、ディーゼルエンジンの燃料(軽油とバイオディーゼル燃料との混合燃料)についても、バイオディーゼル燃料の濃度が1%である「B1」、同濃度が5%である「B5」、同濃度が20%である「B20」、等が知られている。このように、混合燃料におけるバイオ燃料濃度には大きな幅がある。
【特許文献1】特開2006−105092号公報
【特許文献2】特開2007−192063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイオ燃料は、石油燃料とは異なり、酸化による劣化が生じやすい(特に高温下)。バイオ燃料あるいはこれを含む燃料の酸化し劣化したものが滞留している状態が、そのまま放置されると、その周囲の金属部品が腐食される。このため、バイオ燃料あるいはこれを含む燃料が燃料輸送経路内(特にインジェクタ近傍)に滞留した状態で、エンジンが停止されてしばらく放置(ソーク)された場合、バイオ燃料あるいはこれを含む燃料の酸化・劣化により、インジェクタ作動不良や燃料漏れ等の不具合が生じるおそれがある。特に、エンジンが充分暖機された後であったり、外気温が高かったりすると、滞留した前記燃料が高温となり、劣化が促進される。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の目的は、燃料輸送経路内に滞留した燃料の劣化による上述のような不具合の発生を可及的に抑制し得る燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の燃料供給装置は、第一の成分、及び当該第一の成分と第二の成分との混合物を、燃料として利用可能な内燃機関に、前記燃料を供給するように構成されている。ここで、前記第一の成分は、独立して前記内燃機関における燃焼行程に供され得るものであって、典型的には、石油由来の成分(軽油やガソリン等)である。また、前記第二の成分は、前記第一の成分とは異なるもの(異種のもの)であって、典型的には、生物由来の成分(バイオ燃料等)である。前記第二の成分もまた、独立して前記燃焼行程に供されるものであり得る。すなわち、前記内燃機関は、前記第一の成分、前記第二の成分、及び前記混合物のいずれをも、前記燃料として利用可能に構成され得る。
【0007】
本発明の燃料供給装置は、濃度取得部と、燃料タンクと、燃料導出部と、インジェクタと、燃料供給路と、制御部と、を備えている。
【0008】
前記燃料タンクは、前記燃料を貯留可能に構成されている。前記燃料導出部は、前記燃料タンクから前記燃料を導出するように設けられている。前記インジェクタは、前記燃料を噴射するように構成されている。このインジェクタは、燃料混合気を形成するために(燃焼室に向けて)前記燃料を噴射するもの、又は、排気ガスに対して前記燃料を噴射するものであり得る。前記燃料供給路は、前記燃料導出部から前記インジェクタに前記燃料を供給するように、前記インジェクタと接続されている。
【0009】
前記濃度取得部は、前記燃料における前記第二の成分の濃度(あるいは当該濃度に関連する情報:例えば前記燃料の種別等)を取得するように構成されている。この濃度取得部は、前記燃料タンク、前記燃料導出部、又は前記燃料供給路に介装され得る。あるいは、この濃度取得部は、前記内燃機関における前記燃料の燃焼状態(例えば前記排気ガスにおける酸素濃度等)に基づいて前記濃度を取得するように構成され得る。前記制御部は、前記内燃機関の動作を制御するとともに、前記インジェクタにおける前記燃料の噴射状態を制御するように構成されている。
【0010】
本発明の特徴は、前記濃度取得部によって取得された前記濃度が所定値を超えている場合(あるいは前記情報が前記所定値を超える前記濃度に対応するものである場合)、前記内燃機関の停止処理の際に、前記燃料供給路内に残留する前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから前記内燃機関を停止させるように、前記制御部が構成されたことにある。
【0011】
前記制御部は、前記濃度が前記所定値を超えている場合、前記停止処理の際に、燃料ポンプを停止させた後に前記燃料供給路内に残留する前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させるように構成され得る。ここで、前記燃料ポンプは、前記燃料導出部に設けられていて、前記インジェクタに向けて前記燃料を送出するように構成されている。
【0012】
前記燃料供給装置は、外気(吸気温)及び/又は前記内燃機関の冷却水の温度を取得する温度取得部をさらに備え得る。この場合、前記制御部は、前記濃度が前記所定値を超え且つ前記温度が所定温度(燃料劣化促進温度)を超えている場合、前記停止処理の際に、前記燃料供給路内に残留する前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させるように構成され得る。
【0013】
前記制御部は、前記停止処理の際に、機関回転数を所定回転数に制御するとともに、前記機関回転数の前記所定回転数からの下降を検知してから前記内燃機関を停止させるように構成され得る。すなわち、前記燃料供給路内に残留する前記燃料が消費されることで前記機関回転数が前記所定回転数から下降したことが検知されてから、前記内燃機関を停止させるように、前記制御部が構成され得る。この場合、前記燃料供給装置には、前記機関回転数を取得する回転数取得部がさらに設けられ得る。
【0014】
前記燃料タンクは、前記第二の成分を含み得る前記燃料を貯留するためのメイン燃料タンクと、前記第一の成分のみを貯留するためのサブ燃料タンクと、を備え得る。この場合、前記制御部は、前記メイン燃料タンク内の前記燃料における前記濃度が前記所定値を超えている場合、前記停止処理の際に、前記燃料供給路内に前記サブ燃料タンクから前記第一の成分を導入するとともに、前記燃料供給路内に残留する前記メイン燃料タンクからの前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させるように構成され得る。すなわち、前記制御部は、前記燃料供給路内の前記燃料が、前記メイン燃料タンクからのもの(前記第二の成分を含むもの)から前記サブ燃料タンクからのもの(前記第一の成分のみからなるもの)に置換されてから、前記内燃機関を停止させるように構成され得る。
【0015】
前記インジェクタが前記排気ガスに対して前記燃料を噴射するものである場合、前記排気ガスを浄化するための触媒の保護のため、前記排気ガス又は前記触媒の温度が所定温度(触媒劣化温度)より低い場合に前記停止処理時の前記燃料の噴射を行うように、前記制御部が構成され得る。
【発明の効果】
【0016】
かかる構成においては、前記燃料における前記第二の成分の前記濃度が前記所定値を超えている場合、前記内燃機関の停止処理にあたって、機関停止前に、当該燃料が、前記インジェクタにて噴射される。これにより、前記燃料供給路内の前記第二の成分を含む前記燃料が前記内燃機関の停止前に消費された後、前記内燃機関が停止させられる。
【0017】
よって、かかる構成によれば、前記第二の成分が酸化により劣化しやすいもの(例えばバイオ燃料)である場合に、前記燃料供給路内に残留する前記燃料(前記第二の成分を含むもの)の酸化・劣化による、前記インジェクタの作動不良等の不具合の発生が、可及的に抑制され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態(本願の出願時点において取り敢えず出願人が最良と考えている実施形態)について図面を参照しつつ説明する。
【0019】
なお、以下の実施形態に関する記載は、法令で要求されている明細書の記載要件(記述要件・実施可能要件)を満たすために、本発明の具体化の単なる一例を、可能な範囲で具体的に記述しているものにすぎない。よって、後述するように、本発明が、以下に説明する実施形態の具体的構成に何ら限定されるものではないことは、全く当然である。本実施形態に対して施され得る各種の変更(modification)は、当該実施形態の説明中に挿入されると、一貫した実施形態の説明の理解が妨げられるので、末尾にまとめて記載されている。
【0020】
<第一の実施形態に係るシステムの構成>
図1は、本発明の一実施形態である燃料供給装置1が適用されたシステム(車両等)の要部の構成を示す概略図である。図1を参照すると、燃料供給装置1は、エンジン2に燃料Fを供給するとともに、この燃料Fの供給状態を制御し得るように構成されている。
【0021】
本実施形態のエンジン2は、圧縮点火機関としてのディーゼルエンジンであって、本発明の第一の成分としての軽油F1、本発明の第二の成分としてのバイオディーゼル燃料F2、及びこれらの混合物、のいずれかからなる燃料Fを利用可能に構成されている。エンジン2には、吸排気系統3が接続されている。後述するように、燃料供給装置1の構成の一部は、エンジン2や吸排気系統3に装着されている。
【0022】
<<エンジン>>
エンジン2のシリンダブロック21には、複数のシリンダ21aが形成されている。本実施形態においては、4つのシリンダ21aが直列に形成されているものとする。シリンダ21aの周囲には、冷却水の通路であるウォータージャケット21bが形成されている。シリンダ21aの内側には、ピストン22が、当該シリンダ21aの軸線方向(図中上下方向)に沿って往復移動可能に収容されている。ピストン22は、その下方に配置されたクランクシャフト23と、コンロッド24を介して連結されている。
【0023】
シリンダブロック21の上端部には、シリンダヘッド25が接合されている。シリンダヘッド25の下端面には、複数の凹部が、各シリンダ21aの上端部に対応する位置に設けられている。すなわち、シリンダヘッド25がシリンダブロック21に接合されて固定された状態における、ピストン22の頂面よりも上側(シリンダヘッド25側)のシリンダ21aの内側の空間と、上述の凹部の内側の空間と、によって、燃焼室CCが形成されている。この燃焼室CCに連通するように、シリンダヘッド25には、吸気ポート25a及び排気ポート25bが形成されている。
【0024】
<<吸排気系統>>
吸気ポート25aには、インテークマニホールドやサージタンク等を含む吸気通路31が接続されている。吸気通路31には、エアフィルタ32やディーゼルスロットル33等の補機類が介装されている。
【0025】
一方、排気ポート25bには、排気通路34が接続されている。排気通路34は、エキゾーストマニホールド34aを含み、このエキゾーストマニホールド34aよりも下流側には、排気ガス浄化装置35等の補機類が介装されている。排気ガス浄化装置35は、排気ガス中の一酸化炭素や窒素酸化物等を浄化する触媒としての機能、及び、微粒子(パティキュレート)を捕集するパティキュレートフィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)としての機能を備えている。
【0026】
吸気通路31における、エアフィルタ32とディーゼルスロットル33との間の位置には、ターボチャージャ36のコンプレッサ36aが介装されている。また、排気通路34には、ターボチャージャ36のタービン36bが介装されている。
【0027】
<<燃料供給装置>>
次に、本実施形態の燃料供給装置1の構成について、詳細に説明する。
【0028】
燃料タンク101は、燃料Fを貯留し得るように構成されている。シリンダヘッド25には、シリンダ21aと同数の複数の燃焼室インジェクタ102と、1つの排気側インジェクタ103とが装着されている。燃焼室インジェクタ102は、その先端部が燃焼室CC内に露出するように、シリンダヘッド25に装着されている。燃焼室インジェクタ102は、燃焼室CC内に燃料Fを直接的に噴射するように、構成及び配置されている。排気側インジェクタ103は、排気ガス浄化装置35の暖機やDPF再生処理(捕集したパティキュレートの燃焼処理)のために、エキゾーストマニホールド34a内を通過する排気ガスに燃料Fを噴射し得るように、構成及び配置されている。
【0029】
コモンレール104は、高圧の状態で燃料Fを貯留し得るように構成されている。コモンレール104には、燃料Fの流入口であるコモンレール流入ポート104aと、燃焼室インジェクタ102に向けての燃料Fの流出口であるコモンレール流出ポート104bと、が設けられている。コモンレール流入ポート104aには、燃料Fの逆流を防止するためのチェック弁が設けられている。コモンレール流出ポート104bは、燃焼室インジェクタ102と同数設けられている。
【0030】
燃料ポンプ105は、燃料タンク101と排気側インジェクタ103及びコモンレール104との間に介装されていて、これらに向けて(すなわち燃焼室インジェクタ102及び排気側インジェクタ103に向けて)燃料Fを送出するように構成されている。本実施形態における燃料ポンプ105は、送出の圧力・量を調整可能な電動ポンプからなり、燃料タンク101から燃料Fを吸入するための吸入ポート105aと、吸入した燃料Fをコモンレール104に向けて送出するために吐出する送出ポート105bと、吸入した燃料Fのうちのコモンレール104に向けて送出されなかったものを燃料タンク101に戻すために吐出するリターンポート105cと、吸入した燃料Fを排気側インジェクタ103に向けて送出するために吐出する排気噴射ポート105dと、を備えている。
【0031】
コモンレール104には、リリーフ弁106が装着されている。リリーフ弁106は、電磁弁からなり、その開閉及び開度が電磁的に制御され得るように構成されている。このリリーフ弁106は、コモンレール104内の圧力が所定の上限圧を超えないように圧力を調整する調圧弁としての機能を奏するように構成されている。
【0032】
<<<燃料循環路>>>
燃料タンク101、燃焼室インジェクタ102、排気側インジェクタ103、コモンレール104、及び燃料ポンプ105は、燃料循環路110によって互いに接続されている。燃料循環路110は、燃料タンク101から燃焼室インジェクタ102及び排気側インジェクタ103に向けて燃料Fを送出するとともに、リリーフ弁106が開弁した場合にコモンレール104から燃料Fを燃料タンク101に戻すように構成されている。具体的には、燃料循環路110は、燃料導出路111と、コモンレール供給路112と、第一燃料供給路113と、第二燃料供給路114と、燃料帰還路115と、バイパス路116と、を備えている。
【0033】
燃料導出路111は、燃料ポンプ105とともに本発明の燃料導出部を構成する部材であって、その一方の端部が燃料タンク101の内側の空間における底部に配置されていて、他方の端部が燃料ポンプ105の吸入ポート105aと接続されている。すなわち、燃料導出路111は、燃料タンク101と燃料ポンプ105とを接続するように設けられている。この燃料導出路111には、燃料フィルタ111aが介装されている。
【0034】
コモンレール供給路112の一方の端部は燃料ポンプ105の送出ポート105bと接続されていて、他方の端部はコモンレール流入ポート104aと接続されている。すなわち、コモンレール供給路112は、コモンレール104と燃料ポンプ105とを接続するように設けられている。
【0035】
第一燃料供給路113及び第二燃料供給路114は、燃料ポンプ105から燃料Fを供給するように、燃焼室インジェクタ102及び排気側インジェクタ103と接続されている。すなわち、第一燃料供給路113は、燃焼室インジェクタ102と同数設けられている。各第一燃料供給路113の一方の端部は、各コモンレール流出ポート104bと接続されていて、他方の端部は各燃焼室インジェクタ102と接続されている。第二燃料供給路114は、その一方の端部が排気噴射ポート105dと接続されていて、他方の端部が排気側インジェクタ103と接続されている。
【0036】
燃料帰還路115の一方の端部は、リリーフ弁106と接続されていて、他方の端部は、燃料タンク101と接続されている。バイパス路116の一方の端部は燃料ポンプ105のリターンポート105cと接続されていて、他方の端部は燃料帰還路115と接続されている。
【0037】
<<<制御部>>>
制御部120は、エンジン2の動作を制御するとともに、燃焼室インジェクタ102や排気側インジェクタ103における燃料Fの噴射状態を制御するように、以下のように構成されている。
【0038】
制御部120は、エンジン電子コントロールユニット(ECU)121を備えている。ECU121は、CPU121aと、ROM121bと、RAM121cと、バックアップRAM121dと、インターフェース121eと、双方向バス121fと、を備えている。CPU121a、ROM121b、RAM121c、バックアップRAM121d、及びインターフェース121eは、双方向バス121fによって互いに接続されている。
【0039】
CPU121aは、本システムにおける各部の動作を制御するためのルーチン(プログラム)を実行するように構成されている。ROM121bには、CPU121aが実行するルーチン、及び、このルーチン実行の際に参照されるテーブル(ルックアップテーブル、マップ)やパラメータ等が、予め格納されている。RAM121cは、CPU121aがルーチンを実行する際に、必要に応じてデータを一時的に格納し得るように構成されている。バックアップRAM121dは、電源が投入された状態でCPU121aがルーチンを実行する際にデータが適宜格納されるとともに、この格納されたデータが電源遮断後も保持され得るように構成されている。
【0040】
インターフェース121eは、後述する各種のセンサと電気回路的に接続されていて、これらのセンサからの検出信号をCPU121aに伝達し得るように構成されている。また、インターフェース121eは、ディーゼルスロットル33、燃焼室インジェクタ102、排気側インジェクタ103、リリーフ弁106、等の動作部と、電気回路的に接続されていて、これらの動作部を動作させるための動作信号をCPU121aからこれらの動作部に伝達し得るように構成されている。すなわち、ECU121は、後述する各種のセンサの出力信号に基づいてエンジン2の運転条件を取得し、この運転条件に基づいて、燃焼室インジェクタ102や排気側インジェクタ103における燃料Fの噴射、燃料ポンプ105における燃料Fの吐出、リリーフ弁106の開閉及び開度、等を制御するように構成されている。
【0041】
本発明の濃度取得部としての燃料性状センサ131は、燃料タンク101の底部に設けられている。本実施形態における燃料性状センサ131は、燃料Fの物理特性(粘度や屈折率等)に対応する信号を出力するように構成されている。すなわち、この信号に基づいて、バイオディーゼル燃料F2の濃度(バイオ燃料濃度Cb)が取得され得るようになっている。
【0042】
レール圧センサ132は、コモンレール104に装着されていて、その内圧(レール圧)に対応する信号を出力するように構成されている。吸気温センサ133は、吸気通路31におけるディーゼルスロットル33とターボチャージャ36との間に介装されていて、吸入空気の温度(吸気温Tin)に対応する信号を出力するように構成されている。この吸気温センサ133は、通常、単位時間あたりの吸入空気の質量流量(吸入空気流量Ga)に対応する信号を出力するエアフローメータと一体に構成されている。スロットルポジションセンサ134は、ディーゼルスロットル33に対応する位置に設けられていて、ディーゼルスロットル33の開度に対応する信号を出力するように構成されている。
【0043】
本発明の回転数取得部としてのクランクポジションセンサ135は、クランクシャフト23の回転角度に応じたパルスを有する波形の信号を出力するように構成されている。具体的には、クランクポジションセンサ135は、クランクシャフト23が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに、クランクシャフト23が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するように構成されている。すなわち、クランクポジションセンサ135の出力信号に基づいて、エンジン回転数Neが取得されるようになっている。
【0044】
冷却水温センサ136は、シリンダブロック21に装着されている。この冷却水温センサ136は、ウォータージャケット21b内の冷却水の温度(冷却水温Tw)に対応する信号を出力するように構成されている。
【0045】
排気温センサ137及び空燃比センサ138は、排気通路34に介装されている。排気温センサ137は、排気ガスの温度(排気温Tex)に対応する信号を出力するように構成されている。空燃比センサ138は、燃焼室CCに供給された燃料混合気の燃焼状態(排気ガスの酸素濃度)に対応する信号を出力するように構成されている。触媒床温センサ139は、排気ガス浄化装置35に装着されていて、当該排気ガス浄化装置35の温度(触媒床温Tcat)に対応する信号を出力するように構成されている。
【0046】
<第一の実施形態の構成における動作の概要>
以下、図1に示されている本実施形態の燃料供給装置1における動作の概要について説明する。
【0047】
燃料タンク101内に貯留されている燃料Fは、燃料導出路111を通って、燃料ポンプ105に吸引される(このとき燃料フィルタ111aによって濾過される)。燃料ポンプ105によって吸引された燃料Fは、コモンレール供給路112を介してコモンレール104に供給されるとともに、第二燃料供給路114を介して排気側インジェクタ103に供給される。
【0048】
コモンレール104においては、制御部120によって設定されたレール圧にて、燃料Fが貯留される。何らかの原因でレール圧が上述の上限圧以上に上昇した場合、リリーフ弁106が開弁される。これにより、燃料帰還路115を介して、コモンレール104内の燃料Fが燃料タンク101に戻される。コモンレール104から、第一燃料供給路113を介して、燃焼室インジェクタ102に燃料Fが供給される。燃焼室インジェクタ102における燃料Fの噴射時期及び噴射量は、制御部120によって制御される。
【0049】
<停止制御時の燃焼室インジェクタにおける燃料噴射制御の具体例>
図2は、図1に示されている本実施形態の燃料供給装置1による燃料供給状態制御の一例である、停止時燃料噴射制御ルーチン200を示すフローチャートである。以下、本実施形態における、停止処理時の燃焼室インジェクタ102による燃料噴射制御の概要について、図2のフローチャート及び図1を参照しつつ説明する。なお、以下のフローチャートの説明においては、「ステップ」は“S”と略称されている。図面でも「ステップ」は“S”と略記されている。
【0050】
ECU121におけるCPU121aは、図2に示されているルーチン200を、運転者によりエンジン2の停止処理のための操作が行われた場合に起動する。
【0051】
ルーチン200が起動されると、まず、S210において、冷却水温Tw、吸気温Tin、及びバイオ燃料濃度Cbが取得される。次に、S220において、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上であるか否かが判定される。この所定濃度Cb0としては、エンジン2の停止後のソーク中における、第一燃料供給路113に残留する燃料Fの劣化が考慮されなければならないようなバイオ燃料濃度(例えば20%)が用いられ得る。
【0052】
バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上である場合(S220=Yes)、エンジン2の停止後のソーク中における第一燃料供給路113に残留する燃料Fの劣化が生じるおそれがあるので、処理がS230に進行し、冷却水温Twが所定の燃料劣化促進温度Tw0以上であるか否かが判定される。この燃料劣化促進温度Tw0としては、エンジン2が暖機された場合に到達すべき最低限の温度(例えば70℃)が用いられ得る。
【0053】
エンジン2が充分に暖機されている場合(S230=Yes)、エンジン2の停止後のソーク中における、Cb0以上の濃度の燃料Fの、高温による劣化促進が生じるおそれがあるので、処理がS240に進行し、吸気温Tinが所定の燃料劣化促進温度吸気温Tin0以上であるか否かが判定される。この燃料劣化促進温度吸気温Tin0としては、エンジン2の停止後のソーク中に、第一燃料供給路113に残留する燃料Fの温度が、劣化が促進される程度に上昇すると予想されるような、最低限の外気温(例えば20℃)に対応する吸気温が用いられる。
【0054】
吸気温Tinが燃料劣化促進温度吸気温Tin0以上である場合(S240=Yes:この場合、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上であり、且つ冷却水温Twが燃料劣化促進温度Tw0以上でもある。)、第一燃料供給路113に残留する燃料Fを消費するための処理が実行される。
【0055】
すなわち、処理がS250に進行して燃料ポンプ105が停止され、次に処理がS260に進行してアイドリング状態(所定のアイドリング回転数)で燃焼室インジェクタ102における燃料噴射が継続される。その後、処理がS270に進行して、エンジン回転数Neが上述のアイドリング回転数よりも所定程度(誤差範囲でない程度)下降したか否かがモニターされる。エンジン回転数Neの下降が検知されるまでは燃料噴射が継続される(S270=No→S260)。エンジン回転数Neの下降が検知されると(S270=Yes)、第一燃料供給路113内の燃料Fの消費により、これ以上の燃料噴射の継続が不可能である、と判断され、燃料噴射が停止されるとともに、エンジン2が停止される(S280)。
【0056】
一方、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0より低い場合(S220=No)、エンジン2が充分に暖機されていない場合(S230=No)、あるいは外気温が低い場合(S240=No)、エンジン2の停止後のソーク中における第一燃料供給路113に残留する燃料Fの劣化が生じるおそれが小さい。よって、これらの場合、S250ないしS270の処理はスキップされ、そのまま燃料噴射が停止されるとともに、エンジン2が停止される(S280)。
【0057】
<停止制御時の排気側インジェクタにおける燃料噴射制御の具体例>
図3は、図1に示されている本実施形態の燃料供給装置1による燃料供給状態制御の一例である、停止時排気側燃料噴射制御ルーチン300を示すフローチャートである。以下、本実施形態における、停止処理時の排気側インジェクタ103による燃料噴射制御の概要について、図3のフローチャート及び図1を参照しつつ説明する。
【0058】
ECU121におけるCPU121aは、図3に示されているルーチン300を、運転者によりエンジン2の停止処理のための操作が行われた場合に起動する。
【0059】
ルーチン300が起動されると、まず、S310において、冷却水温Tw、吸気温Tin、排気温Tex、及びバイオ燃料濃度Cbが取得される。次に、S320において、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上であるか否かが判定される。バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上である場合(S320=Yes)、処理がS330に進行し、冷却水温Twが所定の燃料劣化促進温度Tw0以上であるか否かが判定される。エンジン2が充分に暖機されている場合(S330=Yes)、処理がS340に進行し、吸気温Tinが所定の燃料劣化促進温度吸気温Tin0以上であるか否かが判定される。
【0060】
吸気温Tinが燃料劣化促進温度吸気温Tin0以上である場合(S340=Yes:この場合、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上であり、且つ冷却水温Twが燃料劣化促進温度Tw0以上でもある。)、第二燃料供給路114に残留する燃料Fの高温下のソークによる劣化の発生が懸念される。
【0061】
ところで、排気側インジェクタ103による燃料噴射を行うと、排気温が上昇し、これにより排気ガス浄化装置35の温度も上昇する。よって、排気ガス浄化装置35が或る程度高温である場合に、第二燃料供給路114に残留する燃料Fの消費のために排気側インジェクタ103による燃料噴射を行うと、排気ガス浄化装置35にダメージを与えるおそれがある。そこで、S350にて、排気温Texが所定の触媒劣化温度Tex0以下であるか否かが判定される。この触媒劣化温度Tex0としては、排気ガス浄化装置35に影響を与えることなく排気側インジェクタ103による燃料噴射が可能な最高温度(例えば500℃)が用いられる。
【0062】
排気温が低温である場合(S350=Yes)、排気側インジェクタ103による燃料噴射を行っても、排気ガス浄化装置35にダメージを与えるおそれがないため、第二燃料供給路114に残留する燃料Fを消費するための処理が実行される。すなわち、処理がS360に進行して燃料ポンプ105が停止され、次に処理がS370に進行して、排気側インジェクタ103における燃料噴射が継続される。その後、処理がS380に進行して、排気側インジェクタ103による燃料噴射が所定量(第二燃料供給路114の容量に対応する量)行われたか否かがモニターされる。所定量に達するまでは、燃料噴射が継続される(S380=No→S370)。所定量に達すると(S380=Yes)、排気側インジェクタ103による燃料噴射が停止されるとともに、エンジン2が停止される(S390)。
【0063】
一方、排気温が高温である場合(S350=No)、排気側インジェクタ103による燃料噴射が行われると、排気ガス浄化装置35にダメージを与えるおそれがある。よって、この場合、S360ないしS380の処理はスキップされ、そのまま燃料噴射が停止されるとともに、エンジン2が停止される(S380)。
【0064】
また、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0より低い場合(S320=No)、エンジン2が充分に暖機されていない場合(S330=No)、あるいは外気温が低い場合(S340=No)、エンジン2の停止後のソーク中における第一燃料供給路113に残留する燃料Fの劣化が生じるおそれが小さい。よって、これらの場合、S360ないしS380の処理はスキップされ、そのまま燃料噴射が停止されるとともに、エンジン2が停止される(S380)。
【0065】
<実施形態の構成による効果>
上述のように、本実施形態の構成においては、燃料Fの酸化による劣化が起きやすいような条件(バイオディーゼル燃料F2の濃度が高く、ソーク中に燃料Fが高温に保たれやすい条件)で、停止処理時に、エンジン2の停止前に、第一燃料供給路113や第二燃料供給路114内の燃料Fが消費される。これにより、第一燃料供給路113等における燃料Fの酸化・劣化に起因する不具合(インジェクタ作動不良や燃料漏れ等)の発生が、可及的に抑制され得る。
【0066】
また、本実施形態の構成においては、第一燃料供給路113内の燃料Fの酸化による劣化が起きやすいような条件で、停止処理の際に、エンジン回転数Neが所定のアイドル回転数に制御されつつ燃焼室インジェクタ102による燃料噴射が継続されるとともに、エンジン回転数Neの下降が検知されてから燃焼室インジェクタ102による燃料噴射が停止されてエンジン2が停止される。これにより、停止処理における第一燃料供給路113内の燃料Fの消費が、簡略な装置構成により良好に行われ得る。
【0067】
さらに、本実施形態の構成においては、第二燃料供給路114内の燃料Fの酸化による劣化が起きやすいような条件で、排気温Texが所定温度より低い場合に、上述のような停止処理時の(第二燃料供給路114内の燃料Fの消費のための)燃料噴射が行われる。これにより、排気ガス浄化装置35にダメージを与えることが良好に回避され得る。
【0068】
<第二の実施形態>
図4は、本発明の他の実施形態(第二の実施形態)である燃料供給装置1が適用されたシステムの要部の構成を示す概略図である。以下、図1に示されている第一の実施形態のシステム構成と異なる部分について、詳細に説明する(本実施形態の構成を示す図4に示された各要素における、図1と共通の符号が付されたものについては、上述の実施形態における説明が、技術的に矛盾しない範囲内で適宜援用されるものとする。)。
【0069】
図4を参照すると、本実施形態においては、燃料ポンプ105には、さらに、軽油導入ポート205eが設けられている。軽油導入ポート205eには、軽油導入管207の一方の端部が接続されている。軽油導入管207の他方の端部は、サブ燃料タンク208の内側の空間における底部に配置されている。ここで、サブ燃料タンク208は、軽油F1のみを貯留するためのものであって、バイオディーゼル燃料F2を含み得る燃料Fを貯留するための燃料タンク(メイン燃料タンク)101とは独立して設けられている。
【0070】
燃料ポンプ105は、排気側インジェクタ103やコモンレール104への燃料供給源を、メイン燃料タンク101からサブ燃料タンク208へ切り換え得るとともに、逆にサブ燃料タンク208からメイン燃料タンク101へも切り換え得るように構成されている。そして、本実施形態における制御部120は、メイン燃料タンク101内の燃料Fにおけるバイオディーゼル燃料F2の濃度が所定値を超えている場合に、エンジン2の停止処理の際に、燃料供給源を、メイン燃料タンク101からサブ燃料タンク208へ切り換えて、コモンレール104、第一燃料供給路113、及び第二燃料供給路114内に軽油F1を導入するとともに、第一燃料供給路113及び第二燃料供給路114内に残留するメイン燃料タンク101からの燃料Fが消費されてからエンジン2を停止させるように構成されている。
【0071】
<<停止制御時の燃焼室インジェクタにおける燃料噴射制御の具体例>>
図5は、図4に示されている本実施形態の燃料供給装置1による燃料供給状態制御の一例である、停止時燃料噴射制御ルーチン500を示すフローチャートである。以下、本実施形態における、停止処理時の燃焼室インジェクタ102による燃料噴射制御の概要について、図5のフローチャート及び図4を参照しつつ説明する。
【0072】
ECU121におけるCPU121aは、図5に示されているルーチン500を、運転者によりエンジン2の停止処理のための操作が行われた場合に起動する。
【0073】
ルーチン500が起動されると、上述のルーチン200(図2参照)と同様に、冷却水温Tw、吸気温Tin、及びバイオ燃料濃度Cbが取得され(S510)、バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上であるか否か(S520)、冷却水温Twが所定の燃料劣化促進温度Tw0以上であるか否か(S530)、及び吸気温Tinが所定の燃料劣化促進温度吸気温Tin0以上であるか否か(S540)が判定される。
【0074】
バイオ燃料濃度Cbが所定濃度Cb0以上、冷却水温Twが燃料劣化促進温度Tw0以上、及び吸気温Tinが燃料劣化促進温度吸気温Tin0以上である場合(S520〜S540=Yes)、処理がS550に進行し、燃料供給源がメイン燃料タンク101からサブ燃料タンク208に切り換えられる。その後、処理がS560及びS570に進行し、コモンレール104や第一燃料供給路113内の燃料Fが軽油F1に置換されるまで、アイドリング状態で燃料噴射が継続された後、燃料ポンプ105が停止され(S580)、燃料噴射の停止及びエンジン2の停止が行われる(S590)。その他の場合(S520ないしS540のいずれかがNo)、S550ないしS570の処理がスキップされ、そのまま燃料ポンプ105の駆動及び燃料噴射が停止されるとともに、エンジン2が停止される(S580、S590)。
【0075】
軽油F1が第一燃料供給路113等に残留した状態でエンジン2が停止されソークされても、上述のような不具合は発生しない。よって、エンジン2の停止前に第一燃料供給路113内の燃料Fが軽油F1に置換されることで、上述の第一の実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
<変形例の例示列挙>
なお、上述の実施形態は、上述した通り、出願人が取り敢えず本願の出願時点において最良であると考えた本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。よって、本発明はもとより上述の実施形態に何ら限定されるものではない。したがって、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、上述の実施形態に対して種々の変形が施され得ることは、当然である。
【0077】
以下、代表的な変形例について、幾つか例示する。もっとも、言うまでもなく、変形例とて、以下に列挙されたもの限定されるものではない。また、複数の実施形態や変形例の、全部又は一部が、技術的に矛盾しない範囲内において、適宜、互いに複合的に適用され得る。
【0078】
(A)本発明は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、メタノールエンジン、バイオエタノールエンジン、その他任意のタイプの内燃機関に適用可能である。気筒数、気筒配列方式(直列、V型、水平対向)、燃焼噴射方式(直噴、ポート噴射)も、特に限定はない。
【0079】
(B)燃料性状センサ131は、燃料導出路111やコモンレール供給路112に介装されていてもよい。また、燃料性状センサ131は、濃度以外の燃料Fの特性(セタン価等)、あるいは燃料Fの種別(軽油、B1、B3、B20、等)を取得するものであってもよい。さらに、燃料性状センサ131は省略され得る。この場合、空燃比センサ138の出力に基づく空燃比フィードバック補正係数を用いて、燃料Fの性状(濃度、特性、種別)が取得され得る。さらに、燃料性状(濃度、特性、種別)は、外部装置(例えば給油装置等)からも入力され得る。
【0080】
(C)本発明は、各フローチャートに示された具体的な動作例に限定されない。すなわち、各フローチャートに対しては、適宜変更が施され得る。
【0081】
例えば、S230とS240のいずれか一方は、省略され得る。すなわち、所定以上のバイオ燃料濃度の燃料Fの、高温ソークによる劣化促進を考慮するにあたって、冷却水温Twと吸気温Tinとのうちのいずれか一方がモニターされればよい。
【0082】
停止時燃料噴射制御ルーチン200と停止時排気側燃料噴射制御ルーチン300とは、同一のルーチンとして合成され得る。
【0083】
吸気温Tinに代えて、外気温そのものが用いられてもよい。排気温Texに代えて、触媒床温Tcatが用いられてもよい。また、触媒床温Tcat等の温度は、温度センサの出力信号による実測値に代えて、燃料噴射量の履歴等に基づく推定値が用いられてもよい。
【0084】
各フローチャートにおける判断ステップの「所定値」は、上述の具体例に限定されない。例えば、S220等における所定濃度Cb0は、50%に設定され得る。
【0085】
第二の実施形態における動作例は、燃焼室インジェクタ102における停止処理時燃料噴射についてのものであった。もっとも、第二の実施形態の構成において、図3と同様に、排気側インジェクタ103における停止処理時燃料噴射も行われ得る。
【0086】
(D)停止処理の際の、第一燃料供給路113内の燃料Fの消費は、上述の各実施形態の構成によって良好に行われ得る。もっとも、この消費をさらに確実にするような構成が設けられ得る。例えば、図6に示されているように、第一燃料供給路113と合流する外気導入路313aと、この外気導入路313aに介装されたコンプレッサ317及び開閉弁318とが設けられ得る。
【0087】
ここで、コンプレッサ317は、圧縮空気を第一燃料供給路113に向けて送出し得るように構成及び配置されている。また、開閉弁318は、第一燃料供給路113と外気導入路313aとが合流する位置と、コンプレッサ317との間に介装されている。さらに、第一燃料供給路113と外気導入路313aとが合流する位置よりも、第一燃料供給路113での燃料Fの供給方向における上流側には、逆流防止弁319が介装されている。この逆流防止弁319は、コンプレッサ317からの圧縮空気がコモンレール104側に流入しないように構成及び配置されている。
【0088】
かかる構成によれば、アイドリング状態で燃焼室インジェクタ102における停止処理時燃料噴射が行われる際に(S280)、コンプレッサ317が起動されるとともに開閉弁318が開かれる。これにより、圧縮空気が第一燃料供給路113内に送り込まれ、逆流防止弁319よりも下流側(燃焼室インジェクタ102側)の燃料Fがより確実に燃焼室インジェクタ102によって消費され得る。
【0089】
(E)その他、特段に言及されていない変形例についても、本発明の本質的部分を変更しない範囲内において、本発明の範囲内に含まれることは当然である。
【0090】
また、本発明の課題を解決するための手段を構成する各要素における、作用・機能的に表現されている要素は、上述の実施形態や変形例にて開示されている具体的構造の他、当該作用・機能を実現可能ないかなる構造をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態(第一の実施形態)である燃料供給装置が適用されたシステム(車両等)の要部の構成を示す概略図である。
【図2】図1に示されている実施形態の燃料供給装置による燃料供給状態制御の一例である、停止時燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】図1に示されている実施形態の燃料供給装置による燃料供給状態制御の一例である、停止時排気側燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】本発明の他の実施形態(第二の実施形態)である燃料供給装置が適用されたシステムの要部の構成を示す概略図である。
【図5】図4に示されている実施形態の燃料供給装置による燃料供給状態制御の一例である、停止時燃料噴射制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図1に示されている実施形態の燃料供給装置における第一燃料供給路内の燃料の消費をさらに確実にするような構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0092】
1…燃料供給制御装置 2…エンジン 3…吸排気系統
21…シリンダブロック 21b…ウォータージャケット 23…クランクシャフト
34a…エキゾーストマニホールド 35…排気ガス浄化装置
101…燃料タンク 102…燃焼室インジェクタ 103…排気側インジェクタ
104…コモンレール 105…燃料ポンプ 111…燃料導出路
113…第一燃料供給路 114…第二燃料供給路 115…燃料帰還路
120…制御部 121…ECU 121a…CPU
131…燃料性状センサ 133…吸気温センサ
135…クランクポジションセンサ 136…冷却水温センサ
137…排気温センサ 138…空燃比センサ 139…触媒床温センサ
207…軽油導入管 208…サブ燃料タンク
313a…外気導入路 317…コンプレッサ 318…開閉弁
F…燃料 F1…軽油 F2…バイオディーゼル燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して燃焼行程に供され得る第一の成分、及び、独立して燃焼行程に供され得るものであって前記第一の成分とは異なる第二の成分と前記第一の成分との混合物を、燃料として利用可能な内燃機関に、前記燃料を供給する、燃料供給装置であって、
前記燃料における前記第二の成分の濃度を取得する、濃度取得部と、
前記燃料を貯留可能な、燃料タンクと、
前記燃料タンクから前記燃料を導出するように設けられた、燃料導出部と、
前記燃料を噴射する、インジェクタと、
前記燃料導出部から前記インジェクタに前記燃料を供給するように、前記インジェクタと接続された、燃料供給路と、
前記内燃機関の動作を制御するとともに、前記インジェクタにおける前記燃料の噴射状態を制御する、制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記濃度取得部によって取得された前記濃度が所定値を超えている場合、前記内燃機関の停止処理の際に、前記燃料供給路内に残留する前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させることを特徴とする、燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置であって、
前記燃料導出部は、前記インジェクタに向けて前記燃料を送出するように設けられた燃料ポンプを備え、
前記制御部は、前記濃度が前記所定値を超えている場合、前記停止処理の際に、前記燃料ポンプを停止させた後に前記燃料供給路内に残留する前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させることを特徴とする、燃料供給装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の燃料供給装置において、
外気又は前記内燃機関の冷却水の温度を取得する、温度取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記濃度が前記所定値を超え且つ前記温度が所定温度を超えている場合、前記停止処理の際に、前記燃料供給路内に残留する前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させることを特徴とする、燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の燃料供給装置において、
機関回転数を取得する、回転数取得部をさらに備え、
前記制御部は、前記停止処理の際に、前記機関回転数を所定回転数に制御するとともに、前記機関回転数の前記所定回転数からの下降を検知してから前記内燃機関を停止させることを特徴とする、燃料供給装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の燃料供給装置であって、
前記第一の成分は、石油由来の成分であり、前記第二の成分は、生物由来の成分であることを特徴とする、燃料供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の燃料供給装置であって、
前記燃料タンクは、前記第二の成分を含み得る前記燃料を貯留するためのメイン燃料タンクと、前記第一の成分のみを貯留するためのサブ燃料タンクと、を備え、
前記制御部は、前記メイン燃料タンク内の前記燃料における前記濃度が前記所定値を超えている場合、前記停止処理の際に、前記燃料供給路内に前記サブ燃料タンクから前記第一の成分を導入するとともに、前記燃料供給路内に残留する前記メイン燃料タンクからの前記燃料を前記インジェクタにて噴射させてから、前記内燃機関を停止させることを特徴とする、燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−203950(P2009−203950A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49032(P2008−49032)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】