説明

物体の光干渉測定装置および光干渉測定方法

【課題】さらに付加的な情報の取得が可能で、かつ堅牢な装置構造と高度な測定精度とを有する光干渉測定技術の提供。
【解決手段】光干渉測定装置は、光源1からの出発ビーム2を測定ビーム3と第1の参照ビーム4aとに分割するビームスプリッタ5aと、光の重ね合わせ手段と、第1の検出器8aとを備える。重ね合わせ手段と第1の検出器8aとは互いに連携する。物体7によって反射された測定ビームと第1の参照ビームとが第1の検出器の検出面で重ね合わされる。ビームスプリッタ5aは、出発ビーム2を測定ビーム3と、第1の参照ビーム4aと、少なくとも第2の参照ビーム4bとに分割する。重ね合わせ手段と互いに連係する第2の検出器8bが備えられ、物体7によって散乱させられた第1の受信ビーム4b’としての測定ビームと第2の参照ビーム4bとが第2の検出器8bの検出面で重ね合わされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発ビームを発生させる光源と、出発ビームを測定ビームと第1の参照ビームとに分割するビームスプリッタと、光の重ね合わせ手段と、第1の検出器とを含む物体の光干渉測定装置、及び、光源によって出発ビームを発生させるAステップと、前記出発ビームをビームスプリッタによって測定ビームと第1の参照ビームとに分割するBステップと、前記第1の参照ビームと、物体によって少なくとも部分的に反射された前記測定ビームとを第1の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わせるCステップとを含む物体光干渉測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体の光干渉測定装置およびそのための方法は種々の形態のものが知られている。そのうち、たとえば代表的な構造は、出発ビームを発生させる光源としてのレーザーと、出発ビームを測定ビームと参照ビームとに分割するビームスプリッタと、光の重ね合わせ手段と、第1の検出器とを含むレーザードップラー振動計として周知である。
【0003】
測定ビームは物体上の測定点に向けて照射され、少なくとも部分的に反射された測定ビームが検出器の検出面で参照ビームと重ね合わされる結果、干渉信号の評価によって、たとえば、測定ビームの光軸方向への測定点における物体表面の動きを推定することができる。
【0004】
その他に、ヘテロダイン構造を有し、その結果、測定光の位相復調によって被測定表面の変位方向を推定可能な装置も周知である。
【0005】
二次元または三次元の振動情報を得るために、3個のレーザードップラー振動計の測定ビームをそれらの測定ビームがそれぞれ互いに斜めに物体上のほぼ1個の測定点に当たるように構成することも周知である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の単一ビーム・レーザードップラー振動計に比較してさらに付加的な情報の取得を可能にするとともに、堅牢な装置構造と高度な測定精度とを有する物体の光干渉測定装置と物体の光干渉測定方法とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
光干渉測定装置に関して前記課題を解決するため、本発明による光干渉測定装置は、出発ビームを発生させる光源と、出発ビームを測定ビームと第1の参照ビームとに分割するビームスプリッタと、光の重ね合わせ手段と、第1の検出器とを備え、
前記重ね合わせ手段と第1の検出器とは互いに連携するように形成されて、物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームと第1の参照ビームとが第1の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされ、
前記ビームスプリッタは、前記出発ビームを測定ビームと、第1の参照ビームと、少なくとも第2の参照ビームとに分割するように形成され、
前記重ね合わせ手段と互いに連係する少なくとも第2の検出器が備えられ、前記物体によって少なくとも部分的に散乱させられた第1の受信ビームとしての前記測定ビームと前記第2の参照ビームとが前記第2の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされる。
光干渉測定方法に関して前記課題を解決するため、本発明による光干渉測定方法は、光源によって出発ビームを発生させるAステップと、前記出発ビームをビームスプリッタによって測定ビームと第1の参照ビームとに分割するBステップと、前記第1の参照ビームと、物体によって少なくとも部分的に反射された前記測定ビームとを第1の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わせるCステップとを備え、
前記Bステップにおいて、前記出発ビームはさらに少なくとも第2の参照ビームに分割され、前記第2の参照ビームは、前記物体によって少なくとも部分的に散乱させられた前記測定ビームと、第2の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされる。
なお、本発明による光干渉測定装置及び光干渉測定方法の好ましい実施形態は従属請求項及び以下の記述内容から明らかにされる。
【0008】
物体の光干渉測定を行う本発明による装置は、基本構成要素として、出発ビームを発生させる光源と、出発ビームを測定ビームと第1の参照ビームとに分割するビームスプリッタと、光の重ね合わせ手段と、第1の検出器とを備えている。この重ね合わせ手段と第1の検出器とは互いに連携するように形成され、前記物体によって少なくとも部分的に散乱させられた前記測定ビームと前記第1の参照ビームとは前記第1の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされる。
【0009】
したがって、このような基本構造の点では、本発明による装置は従来公知の光波干渉計と同じであり、特に、従来から知られている代表的なレーザードップラー振動計はこうした構造を有している。
【0010】
本発明の重要な点は、本発明による装置において、前記ビームスプリッタは前記出発ビームを測定ビームと、第1の参照ビームと、少なくとも第2の参照ビームとに分割するように形成されていることである。さらに、本発明による装置は少なくとも第2の検出器を有しており、重ね合わせ手段と第2の検出器とは互いに連携するように形成され、物体によって少なくとも部分的に散乱させられた測定ビームと第2の参照ビームとは第2の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされる。
【0011】
したがって、本発明による装置は少なくとも2つの検出器を有しており、これらの検出器においてそれぞれビームは、光干渉測定評価を行うために、重ね合わされる。ただし、本発明による装置は、従来公知の装置とは異なり、一方では、物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームに関して第1の検出器によって評価が行われると共に、他方では、物体によって少なくとも部分的に散乱させられた測定ビームに関して記第2の検出器によって評価が行われる1つの測定ビームを有しているにすぎない。
【0012】
したがって、本発明による装置は、従来から公知の装置はそれぞれの検出器のためにそれぞれ専用の測定ビームを有しているとの点で、公知の装置とは根本的に異なる構造を有している。
【0013】
本発明は、特に、本願出願人の以下の知見を基礎としている。
複数のレーザードップラー振動計が組み合わされて、たとえば3個の振動計が使用される場合に、3本の測定ビームが物体に照射される従来公知の装置では、測定点中心回りに物体を回転させる際に測定誤差が生ずることを避けるために、最適には一連の測定ビームの焦点は正確に重なり合っている必要がある。
【0014】
しかしながら、物体上で測定ビームが重ね合わされる場合、つまり、複数の振動計の測定点が正確に合致している場合、観察されるチャネルの測定光の散乱光だけでなく、他のチャネルの測定光も収集され検出器上で干渉させられるため、各々の個別センサーによって他の2つの振動計の測定光も受信されることになる(光学的クロストーク)。一般に、使用されたレーザーの周波数は、復調帯域幅とヘテロダイン周波数シフトとの和によって定義される周波数間隔内で重なるため、センサーの測定能力がゼロになってしまうような可能性も導く重大な外乱悪影響を受けてしまう。
【0015】
測定点を空間的に僅かにずらして並列させることによりこの問題が回避されるなら、上記の外乱悪影響は低減されるが、完全に除去されるわけではない。
【0016】
それぞれが測定ビームを有する複数の振動計を使用する従来公知の方法も、基本的に、他の振動計の測定ビームの測定光の入射に起因する検出器同士の光学的クロストークという問題を有している。
【0017】
したがって、従来の技術においては、光学的クロストークを少なくとも低減させるために、使用される複数の振動計の測定点は物体上において空間的に並列していなければならないという必然性が存在する。ただし、これによって測定点直径に関する限界が所与であり、その結果、一般に測定点の直径は35μmを下回ることはできないことになる。しかしながら、望ましいのは、35μm以下とくに15μm以下、より好ましくは5μm以下の直径の測定点に関して多次元振動情報を得ることである。
【0018】
従来の技術による解決方法では、各々の振動計チャネルと同軸での測定が行われる。測定ビームが斜めに入射する場合、散乱光束の主要部分はビームの被反射成分の周囲にある。したがって、散乱光束の軸に対する検出角度は入射角の2倍である。小さな焦点直径には高い開口数(NA)が要されるため、各々の個別ビームの測定点の所望の大きさによって測定ビームのビーム拡がり角が制約される。この関係は、顕微鏡レンズ開口(射出瞳)が均等に照射される場合、以下の関係式
【数1】

ここで、dは焦点の直径[m]、λは測定ビームの波長[m]、NAはレンズの開口数である。
【0019】
ビーム拡がり角は重なり合うことはできないため、ここからビーム間の可能最小角度が生ずる。ユーザーの調査報告によれば、従来の技術による解決方法においては、垂直に入射する振動計ビームが設けられる場合、斜めに入射する振動計の入射角は必然的に過大になるため、斜めに入射する振動計ビームの感度は大半の表面にとってもはや十分ではないことが判明している。したがって、2個の振動計の場合、1個の振動計の場合の入射角が過大にならないように、相対的に小さい斜め角が実現されなければならない。
【0020】
したがって、一般に、複数の振動計が使用される場合、測定ビームのうちのいずれかを試料表面に対して垂直に向けることは不可能である。しかしながら、このことは測定技術的には望ましいのである。なぜなら、その場合には、1つのチャネルがz方向運動を直接測定するからである(測定表面の設定姿勢に対して垂直をなす測定ヘッドの所期配向)。ただし、これは、上述した散乱光問題により、従来の技術から公知の装置においては実現不能であり、あるいは、光が過少であるために、斜め測定を行う検出器における信号評価に際して、過度に高い雑音レベルを導く結果となる。
【0021】
一般に従来の技術から公知の構造においては、各々の測定ビームのためにそれぞれ専用のレンズユニットが使用されなければならないため、空間分解された測定画像を撮影するカメラ用のさらに別なレンズユニットを収容し得るスペースは存在していない。したがって、一般に、従来の技術から公知の装置においては、ユーザーに対して調整を目的として測定点を示すことができるようにすべく、カメラには複色性ビームスプリッタを用い、使用された振動計のうちのいずれかの振動計のレンズユニットを経て入射が行われなければならない。このレンズユニットは、上述した理由から、従来公知の装置においては物体の表面に対して斜めの入射角を有しているため、カメラの画像も歪んでおり、特に、(さまざまな空間ポジションに関して)均等な鮮明さを有していない。これにより、物体を変位させるx−yテーブルを使用して走査測定を実施することは特に困難である。
【0022】
本発明による装置および下記の本発明による方法は上述した短所をすべて回避することができる。単に1本の測定ビームが装置から発して物体の被測定表面に向けて照射され、一方で、測定ビームの被反射成分が、他方で、測定ビームの少なくとも被散乱成分が、それぞれ1個の検出器で評価されるために、従来公知の装置におけるように複数の測定ビームが物体に向けて照射されなければならないということがなく、複数の次元で振動情報を求めることができる。
【0023】
これにより、光学的クロストークによる上述した問題と、それに応じた信号評価時の難点、測定ビームを物体上にフォーカスさせるために使用されるレンズユニットに関するスペース問題ならびに、物体への測定ビームの可能入射角に関する制限が取り除かれる。
【0024】
上述した作業効果をもたらす本発明による光干渉測定方法では、Aステップにおいて、光源により出発ビームが発生させられ、Bステップにおいて、ビームスプリッタによる測定ビームと第1の参照ビームとへの出発ビームの分割が行われる。Cステップにおいては、第1の検出器の少なくとも1つの検出面で、物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームと第1の参照ビームとの重ね合わせが行われる。本発明で重要な点は、Bステップにおいて、出発ビームはさらに少なくとも第2の参照ビームに分割され、この第2の参照ビームは、第1の検出器上で重ね合わされる被反射測定ビームとは異なる角度域で、物体によって少なくとも部分的に散乱させられた測定ビームと、第2の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされるということである。別の検出面で第2の参照ビームと重ね合わされることになる、異なる角度域に散乱させられたこの光は、以下において受信光と称され、その光学的ビーム経路は受信ビーム経路と称される。
【0025】
本発明による装置は、好ましくは、本発明による方法ないしその方法の好ましい実施形態を実行するために構成されている。本発明による方法は、好ましくは、本発明による装置ないしその装置の好ましい実施形態によって実行されるように構成されている。
【0026】
好適な実施形態では、第1の検出器により、実質的に、物体によって反射された測定ビーム成分、つまり、測定ビームの光軸と同軸的に反射された光線ないし光線束が測定される。これに対して、第2の検出器により、測定ビームの被散乱成分(受信ビーム)、つまり、測定ビームの光軸に対して斜めの、いわゆる不平行成分ないしその光線束が測定される。
【0027】
本発明はさらに、たとえば物体から斜めの角度で収集され、第2の検出器にフォーカスされる散乱光も、物体の表面が移動する際にドップラー周波数シフトが生じるとの本願出願人の知見も基礎としている。ただしこの場合、従来公知の装置に使用された検出器測定信号の評価法は、そのまま適用することはできない。他方、本発明による装置または本発明による方法の範囲ではこれまで利用されていないが、文献から公知の、方向依存ドップラー効果に関する式は、位相シフトおよび/または周波数シフトを以下の式1に準拠して正しく記述するために使用することができる。
【数2】

【0028】
式における幾何学的パラメータの内容は図1に示す概略図から読み取ることができる。他のパラメータは以下のように定義される。νは被測定物体のx方向の速度[m/s]であり、νは被測定物体のz方向の速度[m/s]であり、φは位相の導関数[2πrad/s]である。
【0029】
観察される座標系において測定ビームが垂直に入射する場合、式1は以下の式2に単純化される。
【数3】

【0030】
好ましくは、先述した理由から、測定ビームは被測定物体の被測定面にほぼ垂直に入射される。
【0031】
上述ように、本発明による装置は、好ましくは、測定ビームと第1の参照ビームとのビーム経路において、物体と第1の検出器の間に配置された第1のレンズユニットを含んでいる。
【0032】
これにより、測定ビームを物体上の測定点にフォーカスさせることができる。好ましくは、このレンズユニットは0.05以上、好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.2以上の開口数を有している。これにより、特に、好ましくは緑の波長が使用されれば、このレンズユニットの開口がガウスビームで照明される場合にも、5μmを著しく下回る小さな測定焦点が式0に基づいて生ずるという利点がもたらされる。測定表面にはそれ以外のレーザービームは当たらないため、測定ビームの焦点直径はシステム全体の測定点サイズに等しい。1本のレーザービームしか物体に当たらないということから、極度に小さな測定点が達成され、光学的クロストークは発生しない。この重要な知見が本発明の技術思想の1つである。
【0033】
さらに、上述した第1のレンズユニットは、同じく、受信ビームのビーム経路において、物体と第2の検出器の間に配置されているのが有利である。したがって、こうすることにより、一方で、反射された測定ビームを第1の検出器にフォーカスさせ、他方で、散乱させられた測定ビーム(受信ビーム)を第2の検出器にフォーカスさせるのに、1個のレンズユニットが必要とされるにすぎない。
【0034】
さらに別の好ましい実施形態において、本装置は、受信ビームのビーム経路において、物体と第2の検出との間に配置された第2のレンズユニットを含んでいる。それゆえ、第2のレンズユニットにより、散乱させられた測定ビームの第2の検出器へのフォーカシングを的確に選択することができる。特に、第2のレンズユニットの開口数は0.15以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.06以下であるのが有利である。開口数は、受信ビームの開口数によって測定点サイズが影響されることがないため、より小さく選択することが可能である。これによって、測定ビームのビーム拡がり角の半分と受信ビームのビーム拡がり角の半分との和に少なくとも達しなければならない検出角度をより小さく選択することができるという利点が得られる。これは、さらに、z方向におけるオーバーラップ範囲の増大をもたらすが、このことは結果的には測定深度範囲の増大となる。
【0035】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明による装置は第1の検出器によりヘテロダイン測定が行われるように形成されており、そのため、測定ビームと第1の参照ビームの間の、好ましくは光学的周波数シフタたとえばブラッグセルによって達成可能な、周波数シフトを行う構成要素が備えられている。これにより、それ自体公知の方法で、物体の被測定表面の運動方向も得られる。特に、すべての参照ビームにつき、それぞれ、測定ビームと参照ビームの間に周波数シフタが設けられ、すべての参照ビームに関してヘテロダイン構成が与えられていることが好ましい。特に、単に測定ビームのみが周波数変調されるにすぎないために、測定ビームはすべての参照ビームに比較して周波数に関してシフトされており、これによって、すべての検出器に関して完全にヘテロダイン構造が存在することを特徴とする好ましい実施形態を採用することで、特にシンプルな構造が実現する。
【0036】
さらに別の好適実施形態において、本装置は、測定ビームと第1の参照ビームとのビーム経路に関して、共焦点顕微鏡として構成されている。これにより、非焦点ビームは検出器上に集束されないという利点が得られる。典型的な共焦点系は、測定ビームと第1の参照ビームとのビーム経路に絞り孔を設けることによって実現可能である。好ましくは、共焦点系は、検出器に絞り孔を組み込むように構成することにより実現可能である。
【0037】
さらに別の好適実施形態において、出発ビームを測定ビームと、第1の参照ビームと、第2の参照ビームと、さらに少なくとも第3の参照ビームとに分割するビームスプリッタが形成されている。さらに、本装置は少なくとも第3の検出器を含み、重ね合わせ手段と第3の検出器とは互いに連携するように形成され、物体によって少なくとも部分的に散乱させられた測定ビームと第3の参照ビームとは第3の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされる。これにより、物体の表面の振動または変位の三次元測定が可能となる。
【0038】
特に、本装置は、測定ビームと受信ビームとによって定義される第1の面が測定ビームと第3の参照ビームとによって形成される第2の面と45°以上の挟角、好ましくは85°以上の挟角をなすように形成されているのが有利である。これにより、運動情報を十分正確に三次元に分離することが可能となる。
【0039】
測定ビームと少なくとも第1の受信ビームとがなす角度は40°以下、好ましくは30°以下であるのが好ましい。特に、すべての受信ビームにつき、それぞれ、測定ビームと受信ビームとがなす角度は40°以下、好ましくは30°以下であるのが有利である。これにより、受信ビームにおける高い信号雑音比および大きな測定深度範囲が保証される。
【0040】
光源は、好ましくは、単一縦モードレーザーとして形成されている。これにより、モード間の光学的ミキシング効果による外乱は生じないという利点が得られる。特に、光源は、さらに、単一横モードレーザーとして形成されているのが有利であり、これによりさらに、測定レーザービームは最適にフォーカスされると共に、極小の測定点直径が得られるという利点が得られる。M因子が1.5以下のレーザーは良好な集束の実現に十分であることが判明した。
【0041】
本願出願人の研究によれば、特に、光源は可視波長域のレーザー、好ましくは、波長532nmのDPSS(Diode Pumped Solid State)レーザーとして形成されるのが好適であることが判明した。
【0042】
小さな測定点を達成するには、すべての検出器が、物体上の直径35μm以下、特に15μm以下、より好ましくは5μm以下の測定面の被反射測定ビームまたは被散乱測定ビームの光だけを評価するのが好都合である。特に、本装置の光学素子、ここでは、たとえば1以上のレンズユニットは、物体上の直径35μm以下、特に15μm以下、より好ましくは5μm以下の測定域を検出器の測定面にフォーカスするよう形成されているのが好ましい。
【0043】
本発明による方法は、好ましくは、第1および第2の検出器の測定信号はそれぞれ位相復調されるため、物体の表面の変位の多次元評価が実施可能であるように形成されている。
【0044】
本発明による装置のさらに別の好適実施形態において、第1の検出器の測定信号は、物体の表面の変位の評価を実施するため、位相復調され、第2の検出器の測定信号は、散乱させられた測定ビームの強度の評価を実施するために、振幅復調される。したがって、これにより、シンプルな方法で、測定ビームの光軸方向の変位ならびに散乱光の強度のいずれもが、従来達成不能であった優れた精度で測定される。これにより、多数の新たな適用分野が得られる。
【0045】
一方で、表面に対する測定ビームの相対運動により、表面変化(比喩的な意味における「変位」)が第1の検出器の測定信号の位相復調によって求められ、さらに、不良粒子によって散乱させられた光が第2の検出器の測定信号の振幅復調によって求められることにより、これにより、特に、実質的に平滑な表面の不整性または不良粒子の侵入を検出することができる。
【0046】
このことから、本発明による方法の好適な実施形態の1つでは、さらに物体の表面トポグラフィーを決定するステップが付加されており、この表面トポグラフィー決定ステップには、測定ビームに対する前記物体の相対運動、実質的には測定ビームの光軸に対して垂直な方向への前記物体の相対運動を行なうサブステップと、第1の検出器による変位の測定ならびに第2の検出器による散乱光の測定とを行なうサブステップとが含まれている。
以下、図面を参照しながら、その他の特徴を含む好適な実施形態例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】方向依存ドップラー効果を記述する式1の幾何学的パラメータを説明するための、本発明による光干渉測定装置の基本構成を概略的に示す模式図である。
【図2】本発明による光干渉測定装置の実施形態を概略的に示す構成図である。
【図3】図2に示す実施形態の光源および検出器の空間的配置を示す図である。
【図4】(a)は本発明による装置の、1個のレンズユニットを有した構成、(b)は複数のレンズユニットを有した構成、それらにおけるビーム経路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、1つの実施形態に基づいて作成された、上述した式1を適用するための幾何学的配置を示す模式図である。ここでは、本発明の実施形態の一例を、図2に示す概略的な構成図を用いて説明する。
【0049】
この実施形態において、光源1は波長532nmのレーザーとして形成されている。レーザーによって発生された出発ビーム2は、ビームスプリッタによって、測定ビーム3と、第1の参照ビーム4aと、第2の参照ビーム4bと、第3の参照ビーム4cとに分割される。
【0050】
ビームスプリッタは、そのために、複数のビームスプリッタ5a、5bおよび5cを含んでいる。測定ビーム3は、第1のレンズユニット6aを経て、被測定物体7上の測定点Aにフォーカスされる。測定点Aにおける物体7の表面によって反射された測定ビームは、再び、第1のレンズユニット6aのビーム経路に入射し、光の重ね合わせ手段を経て第1の検出器8aにフォーカスされる。ここで第1の検出器8aは2個の光検出器8a’と8a’’とを含んでいる。光の重ね合わせ手段は、反射鏡Mと、偏光ビームスプリッタPBSとを含んでいる。検出器は、2個の光検出器8a’および8a’’上でビームを重ね合わせるため、さらに別のビームスプリッタ8a’’’を備えている。したがって、第1の光検出器の構造は、それ自体公知のいわゆる「平衡検波器」システムの構造と同じである。
【0051】
ここでは、測定ビームと第1の参照ビームとのビーム経路の絞り孔A(測定点Aでもある)によって共焦点系が実現されている。
さらに、測定ビーム3のビーム経路には、測定ビームとすべての参照ビームとに関するヘテロダイン構造を形成すべく、ブラッグセルとして形成された周波数シフタ9が配置されている。別の形態として、周波数シフタ9は1つまたは2つの参照ビームのビーム経路に配置されてもよい。
【0052】
第1の測定ビームはそれ自体公知の方法で、望遠鏡Tとλ/4波長板QWPとを経て、物体7上の測定点Aにフォーカスさせられ、同様に、再入射した、反射測定ビームはこれらの光学素子を経て第1の検出器8aにフォーカスされる。
【0053】
図2に示す装置構成では、さらに、第1の検出器8aと同様、2個の光検出器8b’と8b’’ならびに、平衡検波器システムに代わるビームスプリッタ8b’’’を有する第2の検出器8bを含んでいる。物体7上の測定点Aで散乱させられた測定光成分は第1の受信ビーム4b’として部分的に第2のレンズユニット6bによって収集され、第2の検出器8bにおいて、反射鏡M及びさらに別の望遠鏡Tとを経て入ってくる第2の参照ビーム4bと重ね合わされる。
【0054】
同様に、物体7の点Aで異なる空間角で散乱させられた測定光成分を第2の受信ビーム4c’として収集し、反射鏡Mを経て、第3の検出器8cにフォーカスさせる第3のレンズユニット6cが設けられている。この経路では、第3の検出器8cは上記の第2の検出器8bと同様な構造であり、2個の光検出器8c’と8c’’ならびにビームスプリッタ8c’’’を有している。ここでも同様に、レンズユニット6cによって収集された測定ビームの散乱光成分は、光検出器8c’および8c’’の測定面にて、第3の参照ビーム4cと重ね合わされる。
【0055】
この装置は、測定ビーム3が測定点Aでの物体7の面法線に対してほぼ垂直をなして当たるように配置されるように形成されている。
【0056】
第1のレンズユニット6aによって発生させられた測定点は5μm以下の直径を有している。そのため、第1のレンズユニットは約0.2の開口数を有している。他方、第2と第3のレンズユニット6bおよび6cの開口数は約0.1である。
【0057】
3個の検出器8a、8bおよび8cは、光検出器の測定信号の振幅復調および/または位相復調を実施すべく、それ自体公知の方法で形成された(図中不図示の)評価装置と接続されている。
【0058】
したがって、たとえば物体7の表面上の測定点Aの動きを三次元にて測定することができ、しかも、この測定は、従来の技術に関連して既述した外乱効果を生ずることなく、直径5μmの単一の測定点にて実施可能となる。
【0059】
三次元振動情報を評価するため、好ましくは式1に準拠して、方向依存ドップラー効果が利用される。式1に由来する幾何学的パラメータの意味は、図1に示す概略的な図解から理解することができる。
【0060】
レーザーとして形成された光源からの出発ビームは測定ビーム3と複数の参照ビームとに分割されるが、その際、光源は、測定ビーム3が物体7の面法線と角度β1をなして測定点Aに当たるように配置されている。この面法線は、さらに、xy面と、この面に対して垂直をなすz軸とを規定している。第2の検出器8bは、面法線に対して角度β2をなすように配置されている。
【0061】
上述したように、図2は本発明による装置の1つの実施形態の概略的な構成を図示しており、その図では、わかり易くするために、すべてのビーム経路は二次元にて描画されている。
【0062】
図3では、特に、測定点Aにおける物体、つまり被測定物体7の面法線によって定義されたx、yおよびz座標に関する三次元図解の形で、光源1と、第1の検出器8aと、第2の検出器8bと、第3の検出器8cとの実際の空間的配置が示されている。特に、40°以下であるのが好ましい角度φdetが示されている。
【0063】
図4には、本発明による装置の実施形態の2つの形態が図4の(a)と(b)にそれぞれ部分的に示されている。図4の(a)には、単に1個のレンズユニットによって測定ビーム3が被測定物体7上の測定点Aにフォーカスされると共に、それに対して斜めをなす空間角φdetにて第1の参照ビーム4aが1個の同一のレンズユニットによって、その他の光学素子を経て、第2の検出器にフォーカスされるように構成された実施形態例が表されている。
【0064】
他方、図4の(b)には、第1のレンズユニット6aによって測定ビーム3が物体7上の測定点Aにフォーカスさせられ、測定ビーム3の散乱光成分は第2のレンズユニット6bにより、その他の光学素子を経て、第2の検出器8bにフォーカスされるように構成された実施形態例が表されている。
【符号の説明】
【0065】
1 :光源
2 :出発ビーム
3 :測定ビーム
4a :第1の参照ビーム
4b :第2の参照ビーム
4b’:第1の受信ビーム
5a :ビームスプリッタ
7 :物体(被測定物体)
8a :第1の検出器
8b :第2の検出器
8c :第3の検出器
M :反射鏡(重ね合わせ手段)
PBS:偏光ビームスプリッタ(重ね合わせ手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発ビームを発生させる光源と、出発ビームを測定ビームと第1の参照ビームとに分割するビームスプリッタと、光の重ね合わせ手段と、第1の検出器とを含む物体の光干渉測定装置であって、
前記重ね合わせ手段と第1の検出器とは互いに連携するように形成されて、物体によって少なくとも部分的に反射された測定ビームと第1の参照ビームとが第1の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされ、
前記ビームスプリッタは、前記出発ビームを測定ビームと、第1の参照ビームと、少なくとも第2の参照ビームとに分割するように形成され、
前記重ね合わせ手段と互いに連係する少なくとも第2の検出器が備えられ、前記物体によって少なくとも部分的に散乱させられた第1の受信ビームとしての前記測定ビームと前記第2の参照ビームとが前記第2の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされることを特徴とする光干渉測定装置。
【請求項2】
前記装置は、前記測定ビームと前記第1の参照ビームとのビーム経路において物体と第1の検出器との間に配置された第1のレンズユニットを含み、前記レンズユニットの開口数は0.1以上、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載の光干渉測定装置。
【請求項3】
前記第1のレンズユニットはさらに、前記第2の参照ビームのビーム経路において物体と第2の検出器との間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の光干渉測定装置。
【請求項4】
前記装置は、前記第2の参照ビームのビーム経路において物体と第2の検出器との間に配置された第2のレンズユニットを含み、前記第2のレンズユニットの開口数は0.15以下、好ましくは0.1以下であることを特徴とする請求項3に記載の光干渉測定装置。
【請求項5】
前記第1の検出器によってヘテロダイン測定が行われるように構成され、その際、周波数シフタが、測定ビームと第1の参照ビームの間の周波数シフトを行うように、あるいは測定ビームとすべての参照ビームの間の周波数シフトを行うように設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光干渉測定装置。
【請求項6】
測定ビームと第1の参照ビームとのビーム経路に関しては、共焦点顕微鏡として構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光干渉測定装置。
【請求項7】
前記ビームスプリッタは、出発ビームを、前記測定ビームと、前記第1の参照ビームと、前記第2の参照ビームとに加えて、少なくとも第3の参照ビームとに分割するように形成され、
少なくとも第3の検出器が備えられ、重ね合わせ手段と前記第3の検出器とは互いに連携するように形成され、物体によって少なくとも部分的に散乱させられた第2の受信ビームとしての測定ビームと第3の参照ビームとが前記第3の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされるように構成されているか、あるいは、
前記測定ビームと前記第2の参照ビームとによって定義される第1の面が前記測定ビームと前記第3の参照ビームとによって形成される第2の面と45°以上の挟角、好ましくは85°以上の挟角をなすように構成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光干渉測定装置。
【請求項8】
測定ビームと少なくとも第1の受信ビームとがなす角度、好ましくは測定ビームとすべての受信ビームとがなす角度はそれぞれ30°以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光干渉測定装置。
【請求項9】
前記光源は、単一縦モードレーザーまたは単一横モードレーザーあるいはその両方として形成され、その際、M因子が1.5以下のレーザーが用いられていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の光干渉測定装置。
【請求項10】
前記光源は可視波長域のレーザーとして形成されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の光干渉測定装置。
【請求項11】
前記光源は波長532nmのDPSSレーザーとして形成されていることを特徴とする請求項10に記載の光干渉測定装置。
【請求項12】
光源によって出発ビームを発生させるAステップと、
前記出発ビームをビームスプリッタによって測定ビームと第1の参照ビームとに分割するBステップと、
前記第1の参照ビームと、物体によって少なくとも部分的に反射された前記測定ビームとを第1の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わせるCステップと、
を含む物体の光干渉測定方法であって、
前記Bステップにおいて、前記出発ビームはさらに少なくとも第2の参照ビームに分割され、前記第2の参照ビームは、前記物体によって少なくとも部分的に散乱させられた前記測定ビームと、第2の検出器の少なくとも1つの検出面で重ね合わされることを特徴とする光干渉測定方法。
【請求項13】
前記第1および第2の検出器の測定信号は、前記物体の表面の変位の多次元評価を行うために、それぞれ位相復調されることを特徴とする請求項12に記載の光干渉測定方法。
【請求項14】
前記第1の検出器の前記測定信号は、前記物体の表面の変位の評価を行うために、位相復調され、前記第2の検出器の前記測定信号は、散乱させられた前記測定ビームの強度の評価を行うために、振幅復調されることを特徴とする請求項12又は13に記載の光干渉測定方法。
【請求項15】
前記測定ビームに対する前記物体の相対運動、実質的には前記測定ビームの光軸に対して垂直な方向への前記物体の相対運動を行なうサブステップと、前記第1の検出器による前記変位の測定ならびに前記第2の検出器による前記散乱光の測定とを行なうサブステップとを含む前記物体の表面トポグラフィーを決定するステップがさらに含まれていることを特徴とする請求項14に記載の光干渉測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96997(P2013−96997A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242650(P2012−242650)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【出願人】(598126324)ポリテック・ゲー・エム・ベー・ハー (8)
【氏名又は名称原語表記】POLYTEC GMBH
【住所又は居所原語表記】POLYTECPLATZ 1‐7, D‐76337 WALDBRONN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
【Fターム(参考)】