説明

現像装置、画像形成装置、リサイクル方法

【課題】現像装置に取り付けられるボールベアリングの交換作業を容易に行える。
【解決手段】現像装置24は、現像剤を収容する現像槽2と、現像槽の内側において回転可能に設置されている回転スリーブ5aと、回転スリーブ5aに取り付けられている第2シャフト72と、現像槽2に嵌められている導電性部材80と、導電性部材80に支持され、第2シャフト72を回転可能に支持するボールベアリング90とを備えている。ボールベアリング90は、その外面に導電領域を有し、前記導電領域と導電性部材80とが通電剥離性接着剤によって接着されることによって導電性部材80に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に設けられる現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の画像形成装置では、プロセス速度の向上に伴って現像ローラの必要回転数が増加している。例えば、プロセス速度(感光体の周速度)が360mm/秒、現像ローラの直径がφ40mm、現像ローラの周速度(mm/秒)が感光体の周速度の2倍のスペックを有する画像形成装置では、単位時間当たりの現像ローラの必要回転数が約2.86回/秒にもなる。また、前記のスペックを有する画像形成装置では、A4横通紙の印刷速度が毎分60枚になるが、A4横通紙で30万枚印刷を行う場合、画像形成装置のウォームアップや印刷終了時の後回転を考慮せずに現像ローラの必要回転数を計算すると約86万回にもなる(より正確に説明すると、印刷速度が毎分60枚で30万枚印刷を行うことから連続回転時間が30万秒になり、30万秒に2.86回/秒を乗じると85万8000回になる)。
【0003】
また、現像ローラの必要回転数が増加すれば、現像ローラの支持部材に一層の耐久性が要求される。この点、最近では、現像ローラの支持部材としてボールベアリングを使用するケースが増加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−20660号公報
【特許文献2】特開2009−80297号公報
【特許文献3】特開2010−59385号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】太陽金網株式会社、「製品案内 通電剥離性接着剤 エレクトリリース」、[オンライン]、平成22年7月21日検索、インターネット<URL:http://www.twc-net.co.jp/catalog/genre/g060/061/post-13.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、現像ローラの支持部材としてボールベアリングを用いると、ボールベアリングのボール部(玉が挿入されている溝部)にトナーや紙粉、埃等が混入して、ボールが回転し難くなって回転トルクが大幅に上昇するという事態、または、ボールが回転しなくなるという事態が生じる。
【0007】
そのような事態にて現像装置を使用し続けると、ボールベアリングにロッキング(過剰な揺動)が生じる。このロッキングが生じると、現像装置の筐体(ABS樹脂)のうち、ボールベアリングの挿入箇所(「支持部」と称する)に撓みが発生し、また、前記支持部が削り取られることがあり、現像装置の筐体が使用不可になるという問題が生じる。また、前記のロッキングにより、現像ローラの軸に傷や偏心が生じ、現像ローラ自体の耐久性に問題が生じる。このような問題を回避するためには、ボールベアリングにロッキングが生じた場合に直ちに当該ボールベアリングを交換することが必要になる。よって、ボールベアリングの交換作業の容易な現像装置が所望されている。
【0008】
なお、特許文献1には、軸受を装置枠体のスリット部に挿入し、現像ホルダのダボ(突起)を装置枠体の穴および軸受の穴に挿入することによって、軸受を装置枠体に固定するようになっている現像装置が提案されている。このような構成の現像装置では、仮に軸受を交換する場合、まず現像ホルダを現像装置から外さなれば軸受を外すことができず、軸受の交換作業が容易ではない。
【0009】
本発明は、現像ローラを支持するためのボールベアリングの交換作業が容易な現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の現像装置は、現像剤を収容する現像槽と、前記現像槽の内側において回転可能に設置されている回転部材と、前記回転部材に取り付けられているシャフトと、前記現像槽に取り付けられている導電性部材と、前記導電性部材に支持されており、前記シャフトを回転可能に支持するボールベアリングとを備え、前記ボールベアリングは、外面に導電領域を有し、前記導電領域と前記導電性部材とが通電剥離性接着剤によって接着されることによって前記導電性部材に支持されていることを特徴とする。本願発明における通電剥離性接着剤とは、第1被着体と第2被着体とを当該通電剥離性接着剤にて接着した後、第1被着体から接着層を介して第2被着体へ電流を流した場合、接着層の接着力が低下して第1被着体と第2被着体とを剥離することの可能な接着剤を意味する。したがって、本願発明の構成によれば、前記導電性部材とボールベアリングの外面の導電領域との間で電流を流すだけでボールベアリングを現像装置から取り外すことが可能になり、また、通電剥離接着剤によってボールベアリングを前記導電性部材に貼り付けるだけで、ボールベアリングを現像装置に取り付けることができる。それゆえ、ボールベアリングの交換作業を容易に行えるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明の現像装置において、前記導電性部材の材質は真鍮であることが好ましい。この構成によれば、前記導電性部材とボールベアリングの導電領域との間で電流を流す場合の通電性が良好になるため、ボールベアリングと導電性部材との剥離を容易に行うことが可能になる。それゆえ、ボールベアリングの交換作業が容易になるという効果を奏する。また、導電性部材の材質を真鍮とすることにより、導電性部材とボールベアリングとの接着性が向上するという効果を奏する。
【0012】
さらに、本発明の現像装置において、前記導電性部材のうち、前記現像槽に接触している接触部はローレット加工が施されていることが好ましい。この構成によれば、前記導電性部材の接触部がローレット加工によって前記現像槽に引っかかっているため、ボールベアリングの取り外し時に前記導電性部材が前記現像槽から脱落してしまうことを抑制できる。
【0013】
また、本発明の現像装置において、前記ボールベアリングは単列式の深溝玉軸受であってもよい。単列式の深溝玉軸受は、安価、且つ、高速対応性に優れているというメリットを有している。
【0014】
さらに、本発明の画像形成装置は、以上にて示した現像装置を有している構成である。これにより、ボールベアリングの交換作業を容易に行えるという効果を奏する。
【0015】
また、上記の課題を解決するために、本発明の現像装置のリサイクル方法は、前記導電性部材に対して電源の一方の電極を接続し、前記ボールベアリングの導電領域に対して前記電源の他方の電極を接続し、前記導電性部材およびボールベアリングに対して電流を印加することによって、前記ボールベアリングを前記導電性部材から剥離する工程と、前記ボールベアリングとは異なるボールベアリングを通電剥離性接着剤によって前記導電性部材に接着する工程とを含むことを特徴とする。これにより、ボールベアリングの交換作業を容易に行えるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のように、前記導電性部材とボールベアリングの外面の導電領域との間で電流を流すだけでボールベアリングを現像装置から取り外すことが可能になり、また、通電剥離接着剤によってボールベアリングを前記導電性部材に貼り付けるだけで、ボールベアリングを現像装置に取り付けることができる。それゆえ、ボールベアリングの交換作業を容易に行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の画像形成装置の内部構成を模式的に示す図である。
【図2】本実施形態の現像装置の構成を模式的に示す図である。
【図3】現像ローラの回転軸に平行な平面で当該現像ローラを切断した場合の断面を模式的に示す図である。
【図4】第1シャフトのうちDカット加工が施されている部分を、第1シャフトの回転軸と垂直な平面で切断した場合の断面を模式的に示す図である。
【図5】回転スリーブを支持する第2シャフトと、第2シャフトを支持するボールベアリングと、ボールベアリングを支持する導電性部材とを模式的に示す斜視図である。
【図6】図3に示すA方向の上流側から映した導電性部材およびボールベアリングを示す図である。
【図7】(a)は、平目状のローレット加工が施された面を示した説明図であり、(b)は、アヤ目状のローレット加工が施された面を示した説明図である。
【図8】導電性部材からボールベアリングを剥離する作業の様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[画像形成装置]
本発明の実施の一形態について図に基づいて説明すれば、以下の通りである。図1は、本実施形態の画像形成装置100の内部構成を示す図である。図1は、画像形成装置100は、画像読取部102、プリント部3、給紙部4、排紙部105を有している。
【0019】
画像読取部102は、静止している原稿の画像を読み取る静止原稿読取モードと、搬送されている原稿の画像を読み取る搬送原稿読取モードとを実行可能なスキャナである。画像読取部102は、透明ガラスからなる原稿載置台11、原稿載置台11上へ自動的に原稿を供給するための自動原稿搬送装置112、原稿の画像を読み取るスキャナユニット13および画像センサ18を有している。
【0020】
自動原稿搬送装置112は、両面原稿読取に対応可能な公知の装置であり、所定の原稿トレイ上に複数枚の原稿を一度にセットしておき、セットされた原稿を1枚ずつ自動的に原稿載置台11上へ送給するものである。
【0021】
スキャナユニット(原稿画像読取ユニット)13は、第1走査ユニット14と第2走査ユニット15と光学レンズ体16と光電変換素子(CCD)17とを有する。第1走査ユニット14は、原稿面を露光するランプリフレクタアセンブリと、原稿からの反射光像を第2走査ユニット15に導く第1反射ミラーとを搭載している。第2走査ユニット15は、前記反射光像を光学レンズ体16に導く第2および第3反射ミラーを搭載している。光学レンズ体16は前記反射光像を光電変換素子17に結像する。光電変換素子17は、前記反射光像を電気信号(画像信号)に変換する。
【0022】
静止原稿読取モードでは、第1走査ユニット14は、原稿載置台11に沿って左から右へ一定速度Vで走行するように走査制御され、第2走査ユニット15は、V/2の速度で同一方向に走行するように走査制御される。つまり、原稿載置台11上に載置された原稿の画像が1ライン毎に光電変換素子17に結像され、これにより原稿全体の画像が読み取られるようになっている。
【0023】
搬送原稿読取モードでは、スキャナユニット13の第1走査ユニット14および第2走査ユニット15は静止している。そして、搬送原稿読取モードにおいて、スキャナユニット13は、自動原稿搬送装置112によって搬送されている原稿の一方の面の画像を読み取り、画像センサ18は、当該原稿の他方の面の画像を読み取るようになっている。
【0024】
原稿画像をスキャナユニット13で読み取ることにより得られた画像データは、各種処理が施された後、メモリ(不図示)に一旦記憶され、出力指示に応じて画像データがメモリからプリント部3に出力されるようになっている。
【0025】
プリント部3は、メモリから出力された画像データまたはパーソナルコンピュータ等の外部機器から転送されてきた画像データに応じた画像(可視のトナー像)を感光体ドラム22上に形成し、その後、当該画像を用紙上に転写するものである。プリント部3は、LSU(レーザスキャニングユニット)121、および、画像を形成するための電子写真プロセス部20を備えている。
【0026】
LSU(レーザ書き込みユニット)121は、メモリから読み出した画像データまたはパーソナルコンピュータ等の外部機器から転送されてきた画像データに応じてレーザ光を出射する半導体レーザ、レーザ光を等角速度偏向するポリゴンミラー、等角速度偏向されたレーザ光が電子写真プロセス部20の感光体ドラム22上を等速度で走査するように補正するf−θレンズ等を有している。
【0027】
電子写真プロセス部20は、周知の電子写真装置と同様、感光体ドラム22の他、感光体ドラム22の周囲に配置される帯電装置23、現像装置24、転写装置25、剥離装置26、クリーニング装置27、除電装置(不図示)を有し、さらに、感光体ドラム22よりも用紙搬送方向の下流側に定着装置28を備えてなるものである。
【0028】
給紙搬送部37,38は、感光体ドラム22と転写装置25との間の転写位置に給紙部4から用紙を搬送するためのものであり、用紙搬送路、給紙ローラ、搬送ローラ、レジストローラを備えている。
【0029】
定着装置28の用紙搬送方向下流側には、用紙排出路29が設けられている。用紙排出路29は、排紙部105の排紙搬送路41と両面複写のための反転搬送部42とに分岐している。
【0030】
給紙部4は、第1カセット31、第2カセット32、第3カセット33、手差しトレイ35、大容量カセット34を有している。第1カセット31は、第1のトレイ及び第2のトレイを収容するタンデムトレイであり、両トレイを装置本体から同時に引き出し可能となっている。第2カセット32および第3カセット33は、それぞれ第3のトレイ、第4のトレイを収容する。つまり、3つのカセット(31〜33)に4つのトレイが収容されている。
【0031】
第1カセット、第2カセット、第3カセットに含まれる4つのトレイには、トレイ毎に異なるサイズの用紙が積載されて収容されており、使用者の所望するサイズの用紙が収容されているカセットあるいはトレイが選択されると、そのトレイ内の用紙束のうち最も上に位置する用紙から順に1枚ずつ送り出され、当該用紙は給紙搬送部37,38の搬送経路を経由して電子写真プロセス部20へ向けて搬送される。
【0032】
大容量カセット34は、オプションとして給紙部4に付加されるものである。大容量カセット34の内部には、上方に付勢された第5のトレイ(エレベータ)が設置されており、第5のトレイに用紙が載置されている。第5のトレイの最上部の用紙が給紙ローラに接触し、給紙ローラが回転することによって用紙が1枚ずつ分離して送り出され、この用紙はプリント部3の給紙搬送部37に合流する。大容量カセット34には最も使用頻度の高い標準紙(例えばA4サイズの用紙)が収容される。
【0033】
つぎに、画像形成装置100にて実行される画像形成プロセスについて説明する。帯電装置23は感光体ドラム22を均一に帯電する。LSU121は、画像読取部102から出力された画像データまたは外部装置から受信した画像データに基づいてレーザ光線を走査することによって、帯電されている感光体ドラム22の表面に静電潜像を形成する。現像装置24は、感光体ドラム22に形成されている静電潜像にトナーを供給することにより、感光体ドラム22上にトナー像を形成する(静電潜像を画像に現像する)。転写装置25は、感光体ドラム22上に形成されたトナー像を給紙部4から搬送された用紙に転写する。剥離装置26は、転写装置25から前記用紙を剥離する。クリーニング装置27は、転写後の感光体ドラム22に残存しているトナーを回収し、除電装置(不図示)は、転写後の感光体ドラム22から電荷を除去する。
【0034】
転写装置25にてトナー像の転写された用紙は定着装置28に搬送される。定着装置28はヒートローラおよび加圧ローラを備え、定着装置28の両ローラは用紙を挟んで回転するようになっている。これにより、用紙に転写されたトナー像は、溶融・混合・圧接し、用紙に対して熱定着するようになっている。その後、用紙は、定着装置28から用紙排出路29に排出される。
【0035】
片面印字モードの場合、以上のように定着装置28から用紙排出路29に排出された用紙は、排紙部105へ送られ、必要に応じてソートあるいはステープル処理等の所定の処理が施され、第1排出トレイ43または第2排出トレイ44にスタックされる。これに対し、両面印字モードの場合、定着装置28から用紙排出路29に排出された用紙は、反転搬送部42を経由して再び電子写真プロセス部20に搬送される。そして、用紙の裏面に画像が形成され、定着装置28を再度経由した後、排紙部105へ送られて、第1排出トレイ43または第2排出トレイ44にスタックされる。
【0036】
[現像装置]
つぎに、図1にて示した現像装置24について詳細に説明する。図2は、本実施形態の現像装置24の構成を模式的に示す図である。図2に示すように、本実施形態に係る現像装置24は、感光体ドラム22の周面に対向するように配置されている。現像装置24は現像槽2およびトナーホッパ14を備える。
【0037】
現像槽2は、硬質の合成樹脂などからなる中空状の容器である。例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)からなる容器が現像槽2として使用される。
【0038】
現像槽2の内部(内側)には、トナーとキャリアとを含む現像剤(2成分現像剤)が収容される。トナーホッパ14は、現像槽2の現像剤のトナー濃度が所定濃度以上に維持されるように、現像槽2に対してトナーを補給するものである。
【0039】
現像槽2およびトナーホッパ14の各々には、トナーを通過させるための開口が形成されている。図2において、現像槽2の開口は参照符62で示され、トナーホッパ14の開口は参照符12で示されている。現像槽2およびトナーホッパ14は、開口62と開口12とが重なり合うように、互いに接続されている。トナーホッパ14の内部において、開口12の上側を覆う位置にトナー補給ローラ10が配置されている。
【0040】
トナー補給ローラ10はスポンジローラである。トナー補給ローラ10の気泡部分にトナーが詰められ、この気泡部分に詰まっているトナーは、トナーホッパ14の開口12の縁によってしぼり落とされる。これにより、トナー補給ローラ10のトナーがトナーホッパ14の開口12および現像槽2の開口62を経由して現像槽2の内部に落下する。このようにして、現像槽2の内部にトナーが補給されるようになっている。
【0041】
さらに、トナーホッパ14は、トナー補給ローラ10にトナーを供給する供給ローラ8Aと、トナーホッパ14の内部に収容されるトナーを攪拌し搬送する攪拌羽根部材8Bとを備える。
【0042】
現像槽2の内部には、現像ローラ5、層厚規制部材9、攪拌ローラ46、滞留防止部材21、濃度センサ6、ガイド板7、および、案内ローラ36が配置されている。
【0043】
現像ローラ5は、感光体ドラム22の周面に対向するように現像槽2の内部に配置される。現像ローラ5は、回転スリーブ5aとマグネットローラ5bとを有する。回転スリーブ5aは、感光体ドラム22の回転軸と平行な回転軸を中心に回転するようになっている。マグネットローラ5bは、回転スリーブ5aの内周側に配置され、回転せずに固定されている。また、マグネットローラ5bは、隣り合う磁石の極性が互いに異なるように複数の磁石部材を周方向に配置して形成されたローラである。
【0044】
回転スリーブ5aは、マグネットローラ5bの磁力によって、トナーを担持するキャリアを表面に吸着しつつ、図中の矢印Z1方向(反時計周りの方向)に回転することによって、トナーを感光体ドラム22に供給するようになっている。
【0045】
層厚規制部材9は、現像ローラ5の表面(回転スリーブ5aの表面)に形成されるトナー層の厚さを規制するものである。層厚規制部材9は、ステンレス鋼の薄板などで構成される部材である。層厚規制部材9は、長辺方向に延びている2つのエッジを有している。これらエッジのうち、一方のエッジは現像槽2に支持され、他方のエッジは、現像ローラ5の周面に対して所定間隔を空けて配置され、自由端になっている。
【0046】
攪拌ローラ46は、回転スリーブ5aの回転軸と平行な回転軸を中心として回転するように、現像槽2の内部にて支持されている。攪拌ローラ46は、現像槽2の内部のトナーおよびキャリアを攪拌するとともに、攪拌されたトナーおよびキャリアを現像ローラ5へ供給する。
【0047】
滞留防止部材21は、現像槽2の上部において層厚規制部材9に隣接するように配置される。滞留防止部材21は、層厚規制部材9によって現像ローラ5の表面から除去された余剰のトナーおよびキャリアが現像槽2の上部で滞留することを防止するための部材である。
【0048】
濃度センサ6は、攪拌ローラ46に近接するように、現像槽2の底部に配置されている。濃度センサ6は、現像槽2の内部に収容されている現像剤のトナー濃度を検出する透磁率センサである。
【0049】
ガイド板7は、感光体ドラム22に遠い側の端部7Bが感光体ドラム22に近い側の端部7Aよりも下方に位置するように傾斜している板状部材である。また、端部7Aは、層厚規制部材9および滞留防止部材21に対向するように配置され、端部7Bは、攪拌ローラ46の上側に対向する位置に配置される。
【0050】
ガイド板7は、層厚規制部材9によって現像ローラ5から除去された余剰のトナーおよびキァリアを感光体ドラム22から離れる方向へ導く。ガイド板7によって感光体ドラム22から離れる方向へ導かれたトナーおよびキャリアは、攪拌ローラ46に向けて落下し、再び現像ローラ5へ搬送される。
【0051】
案内ローラ36は、現像槽2の内部において開口62の下方に配置される。案内ローラ36は、開口12および開口62を介してトナーホッパ14から現像槽2の内部に補給されたトナーを攪拌ローラ46の方へ搬送するためのものである。
【0052】
つぎに、現像ローラ5を支持する機構について詳細に説明する。図3は、現像ローラ5の回転軸に平行な平面で現像ローラ5を切断した場合の断面を模式的に示す図である。図3に示すように、現像装置24は、現像槽2および現像ローラ5の他、第1シャフト71、第2シャフト72、導電性部材80、ボールベアリング90、Vシール85a・85bを有している。
【0053】
図3に示すように、第1シャフト71はマグネットローラ5bに取り付けられており、第2シャフト72は回転スリーブ5aに取り付けられている。
【0054】
第1シャフト71は、その大部分が円柱状であるものの、図3および図4に示すように一方の端部71aに対してDカット加工が施されている形態である。なお、図4は、図3に示すX方向と垂直な平面で第1シャフト71の一方の端部71aを切断した場合の断面を模式的に示す図である。
【0055】
また、現像槽2には、第1シャフト71の端部71a(Dカット部分)と嵌合するDカット穴2aが形成されている。第1シャフト71の円柱部分はマグネットローラ5bに固着している一方、第1シャフト71の端部71a(Dカット部分)はDカット穴2aに嵌め込まれている。これにより、第1シャフト71およびマグネットローラ5bは、回転せずに現像槽2に固定される構成になっている。なお、マグネットローラ5bは、磁極S1〜S4,N1〜N3が図2に示す位置に配されるように、第1シャフト71に取り付けられる。
【0056】
導電性部材80は、図3、図5および図6に示すように、真鍮からなるリング状の部材である。なお、図5では現像槽2およびVシール85a・85bが省略されている。導電性部材80は、現像槽2に形成されている貫通穴2bに嵌め込まれている。
【0057】
より具体的に説明すると、貫通穴2bは、現像槽2の内部側の小径部2b1と現像槽2の外部側の大径部2b2とからなる。大径部2b2は、その直径が導電性部材80の外径(外周の直径)と略同一の長さになっており、導電性部材80は大径部2b2に圧入されている。これにより、導電性部材80は、上面のみが現像槽2の外部側に露出し、底面80aおよび外周面80bが大径部2b2の壁部に密着するように、大径部2b2に嵌め込まれる。なお、導電性部材80および大径部2b2の各々は、導電性部材80を大径部2b2に圧入することによって導電性部材80が大径部2b2に固定されるようなサイズおよび形状に設計されている。また、大径部2b2の壁部は滑らかな形状に仕上げられている一方、導電性部材80の外周面80bにはローレット加工が施されている。なお、ローレット加工はJISB0951にて規定されているものであればよい。つまり、図7(a)に示されるように外周面80bは平目状のローレット目に加工されてもよいし、図7(b)に示されるように外周面80bはアヤ目状のローレット目に加工されてもよい。
【0058】
また、図3、図5、図6に示すように、導電性部材80の内周側にはボールベアリング90が嵌め込まれる。つまり、ボールベアリング90は、図6に示すように、その外周面90aが導電性部材80の内周面80cに面するように導電性部材80に嵌めこまれている。
【0059】
ボールベアリング90は、単列式の深溝玉軸受(日本精工社製606ZZ)であり、内径(内周の直径)がφ6mmであって、外径(外周の直径)が17mmである。また、ボールベアリング90の外面(外周面90a,内周面90c,上面90b,底面90d)は、導電性の金属からなるものであり、本実施形態ではステンレス(SUS)が用いられる。なお、導電性部材80の内径(内周の直径)は、ボールベアリング90の外径と略同一(例えばφ17.1mm)である。
【0060】
図3に示すように、第2シャフト72はボールベアリング90に支持されている。また、第2シャフト72は、その一端が回転スリーブ5aに取り付けられつつ、他端が現像槽2から突出してギア(不図示)に接続されている。これにより、図示しない駆動装置(モータ)がギアを介して第2シャフト72にトルクを与えると、第2シャフト72および回転スリーブ5aは共に回転するようになっている。
【0061】
第2シャフト72は、ステンレス(SUS303)からなり、外径φ6mmである。なお、図5は模式図であるため、図5では第2シャフト72とボールベアリング90との間に隙間が形成されているようにみえるが、上述したようにボールベアリング90の内径はφ6mmである一方で第2シャフト72の外径はφ6mmであるため、実際は第2シャフト72とボールベアリング90との間に隙間は存在しない。
【0062】
また、図3に示すように、第1シャフト71のうち、現像ローラ5と現像槽2の壁部との間の領域はVシール85aに覆われ、第2シャフト72のうち、現像ローラ5と現像槽2の壁部との間の領域はVシール85bに覆われている。Vシール85aは、現像ローラ5の内部やDカット穴2aの方へ現像剤が混入することを抑制するためのものである。Vシール85bは、貫通穴2b、および、第2シャフト72と回転スリーブ5aとの接合部分に現像剤が混入することを抑制するためのものである。Vシール85a・85bとしては、NBR(Nitrile Butadiene Rubber)、または、NBRにシリコン樹脂を分散して得られる材料が用いられる。
【0063】
また、本実施形態では、ボールベアリング90が導電性部材80から容易に脱落しないように、導電性部材80の内周面80cとボールベアリング90の外周面90aとに通電剥離性接着剤を塗布し、ボールベアリング90の外周面90aを導電性部材80の内周面80cに接着している。ここで、通電剥離性接着剤とは、第1被着体と第2被着体とを当該通電剥離性接着剤にて接着した後、第1被着体から接着層を介して第2被着体へ電流を流した場合、接着層の接着力が低下して第1被着体と第2被着体とを剥離することの可能な接着剤を意味する。本実施形態では、通電剥離性接着剤として太陽金網株式会社製のエレクトリリースE4を用いた。なお、エレクトリリースE4の詳細は非特許文献1に示されている。
【0064】
以上のように、本実施形態では、導電性部材80とボールベアリング90とを接着するための接着剤として通電剥離性接着剤を用いているので、導電性部材80とボールベアリング90との間で電流を流すとボールベアリング90が導電性部材80から剥離するようになっている。したがって、現像装置24のリサイクル作業時にボールベアリング90を交換する場合、導電性部材80とボールベアリング90との間に電流を流すだけでボールベアリング90を取り外すことができるため、リサイクル作業を容易に行える。
【0065】
つぎに、図8に基づいて、ボールベアリング90を交換する際の作業手順を説明する。図8は、導電性部材からボールベアリングを剥離する作業の様子を示した説明図である。
【0066】
まず、導電性部材80の外面のうち現像槽2の外部側に露出している面に定電圧電源のプラス端子を接続し、ボールベアリング90の外面のうち現像槽2の外部側に露出している面に定電圧電源のマイナス端子を接続する。具体的には、図8に示すように、定電圧電源500のプラス端子を導電性部材80の上面80dに接続し、定電圧電源500のマイナス端子500bをボールベアリング90の上面90bに接続する。なお、定電圧電源500として、菊水電子工業株式会社製のワイドレンジ直流電源(PWR400L)を用いた。定電圧電源500のプラス端子の電位は+50Vであり、マイナス端子の電位は0V(GND)である。
【0067】
これにより、導電性部材80から接着層(導電性部材80の内周面80cとボールベアリング90の外周面90aとの間の接着層)を介してボールベアリング90に直流電流が流れるようになっている。そして、この電流により導電性部材80とボールベアリング90との間の接着力が低下し、ボールベアリング90を導電性部材80から剥離できる。その後、通電剥離性接着剤を用いて新たなボールベアリング90を導電性部材80に接着して、交換作業が完了する。
【0068】
なお、エレクトリリースE4によって接着されている被着材を剥離するために充分な単位面積当たりの電流値は5mA/cmである。そして、ボールベアリング90の外径はφ1.7cmであり、ボールベアリング90の外周面90aの幅(図3のA方向の長さ)は0.6cmであるため、外周面90aの面積は2.04π(cm)になる(下記の式1参照)。そして、外周面90aが接着面であるため、ボールベアリング90を剥離するために充分な全電流値は約32mAになる(下記の式2参照)。
2×π×1.7(cm)×0.6(cm)=2.04π(cm) 式1
2.04π(cm)×5(mA/cm)≒32mA 式2
よって、導電性部材80とボールベアリング90との間に電流値が32mAよりも高値の電流(例えば35mA程度の電流)を流すことによって、導電性部材80からボールベアリング90を容易に剥離できる。
【0069】
以上のように、本実施形態の現像装置24は、現像剤を収容する現像槽2と、現像槽2の内側において回転可能に設置されている回転スリーブ(回転部材)5aと、回転スリーブ5aに取り付けられている第2シャフト(シャフト)72と、現像槽2に嵌められている導電性部材80と、導電性部材80に支持されており、前記シャフトを回転可能に支持するボールベアリング90とを備えている。そして、ボールベアリング90は、その外面に導電領域を有し、その導電領域と導電性部材80とが通電剥離性接着剤によって接着されることによって導電性部材80に支持される構成になっている。当該構成によれば、導電性部材80とボールベアリング90の外面の導電領域との間で電流を流すだけでボールベアリング90を現像装置24から取り外すことが可能になり、また、通電剥離接着剤によってボールベアリング90を導電性部材80に貼り付けるだけで、ボールベアリング90を現像装置24に取り付けることができる。それゆえ、ボールベアリング90の交換作業を容易に行えるという効果を奏する。
【0070】
また、真鍮を通電剥離接着剤の被着材とすると通電性および接着性が良好になる。そして、本実施形態では真鍮製の導電性部材80を通電剥離接着剤の被着材としているため、導電性部材80とボールベアリング90の導電領域との間で電流を流す場合の通電性が良好になり、ボールベアリング90と導電性部材80との剥離を容易に行うことが可能になる。また、導電性部材80とボールベアリング90との接着性が向上するという効果を奏する。
【0071】
さらに、本実施形態では、導電性部材80の外周面(接触部)80bはローレット加工が施されており、外周面80bが現像槽2の貫通穴2bの壁面に接触するように導電性部材80が貫通穴2bに圧入されている。この構成によれば、導電性部材80の外周面80bがローレット加工によって現像槽2の貫通穴2bに引っかかっているため、ボールベアリング90の取り外し時に導電性部材80が現像槽2から脱落してしまうことを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態では、現像装置24のリサイクル時、導電性部材80に対して電源の一方の電極を接続し、ボールベアリング90の導電領域に対して前記電源の他方の電極を接続し、導電性部材80およびボールベアリング90に対して電流を印加することによってボールベアリング90を導電性部材80から剥離する工程と、新たなボールベアリングを通電剥離性接着剤によって導電性部材80に接着する工程とを実行することにより、ボールベアリングを交換するようになっている。したがって、ボールベアリング90のボール部分に画像形成装置100に浮遊するトナーや紙粉、画像形成装置100の内部の埃(吸引冷却ファンやコロナ放電の集塵作用により画像形成装置100の内部に進入する埃)等によってボールがスムーズに回転せず、現像ローラ5のロッキングや現像ローラ5の回転不良が生じた場合でも、ボールベアリングを容易に交換できるという効果を奏する。なお、前記のロッキングや回転不良(周速低下)を放置しておくと画質劣化という不具合が発生することになる。
【0073】
また、本実施形態では、第2シャフト72を支持するボールベアリング90として単列式の深溝玉軸受を用いたが、復列式の深溝玉軸受を用いてもよい。なお、復列式とは、回転軸の方向に沿ってボールが2個並んでいる方式を意味する。
【0074】
また、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、円錐ころ軸受をボールベアリング90としてもよい。さらに、アンギュラ玉軸受は、単列式、復列式、組合せ方式のいずれであってもよいし、円筒ころ軸受は、単列式および復列式のいずれであってもよいし、円錐ころ軸受は、単列式、復列式、多列式のいずれであってもよい。但し、高速回転、高精度、低騒音低トルクの観点から深溝玉軸受が最も好ましい。
【0075】
また、導電性部材80の材質は真鍮(黄銅)であるが、真鍮は銅と亜鉛との合金で亜鉛が20%以上のものを意味する。一般に、亜鉛の含有割合が増す毎に真鍮の強度も増すが、同時に脆さも増し、亜鉛の含有割合が45%以上になれば実用に耐えられない。また、真鍮は安価であることも利点である。導電性部材80の材質は、アルミダイキャスト、ステンレス、鉄等であってもよいが、アルミダイキャストやステンレスは高価であることが難点であり、鉄は錆び易いことが難点である。鉄の表面に無電界ニッケルメッキやユニクロメッキを施したものを用いてもよいが、加工性の面で真鍮が好ましい。
【0076】
また、通電剥離性接着剤が塗布されるボールベアリング90は、現像装置24にて回転する回転部材のシャフトを支持するためのものであればよく、この回転部材は回転スリーブ5aに限定されず攪拌ローラ46や案内ローラ36等でもよい。
【0077】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に設置される現像装置に好適に利用できるものである。なお、前記の画像形成装置としては、複合機、複写機、プリンタ、ファクシミリが挙げられる。
【符号の説明】
【0079】
2 現像槽
5 現像ローラ
5a 回転スリーブ(回転部材)
5b マグネットローラ
72 第2シャフト(シャフト)
80 導電性部材
90 ボールベアリング
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する現像槽と、
前記現像槽の内側において回転可能に設置されている回転部材と、
前記回転部材に取り付けられているシャフトと、
前記現像槽に取り付けられている導電性部材と
前記導電性部材に支持されており、前記シャフトを回転可能に支持するボールベアリングとを備え、
前記ボールベアリングは、外面に導電領域を有し、前記導電領域と前記導電性部材とが通電剥離性接着剤によって接着されることによって前記導電性部材に支持されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記導電性部材の材質は真鍮であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像槽に貫通穴が形成されており、
前記導電性部材は前記貫通穴に圧入されており、
前記導電性部材において、前記現像槽に接触している接触部はローレット加工が施されていることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記ボールベアリングは、単列式の深溝玉軸受であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の現像装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の現像装置のリサイクル方法であって、
前記導電性部材に対して電源の一方の電極を接続し、前記ボールベアリングの導電領域に対して前記電源の他方の電極を接続し、前記導電性部材およびボールベアリングに対して電流を印加することによって、前記ボールベアリングを前記導電性部材から剥離する工程と、
前記ボールベアリングとは異なるボールベアリングを通電剥離性接着剤によって前記導電性部材に接着する工程とを含むことを特徴とするリサイクル方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−32440(P2012−32440A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169362(P2010−169362)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】