説明

環境認識装置および環境認識方法

【課題】曲線を描いたり、それ自体が傾斜したりする対象物の特定効率および特定精度の向上を図る。
【解決手段】環境認識装置130は、検出領域内を分割した複数のブロック毎の輝度を取得し、ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に基づくエッジ方向を導出し、エッジ方向に基づいてブロック同士を関連付け、エッジ軌跡を生成し、複数のエッジ軌跡により囲まれる領域をグループ化して対象物とし、対象物を特定物として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出領域における対象物の輝度に基づいて、その対象物を認識する環境認識装置および環境認識方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の前方に位置する車両や信号機等の障害物といった対象物を検出し、検出した対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つように制御する技術が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
また、このような技術では、対象物を一律に物として特定するのみならず、さらに高精度な制御を行うため、対象物が自車両と同速度で走行している先行車両であるのか、移動を伴わない固定された物であるのか等を判定する技術も存在する。ここで、対象物を、検出領域の撮像を通じて検出する場合、対象物が何であるかを特定する前に、撮像された画像から対象物自体を抽出(切り出し)しなければならない。
【0004】
例えば、撮像された画像から、隣接する画素間の微分値によってエッジを有する画素(エッジ画素)を抽出し、画像の水平方向および垂直方向におけるエッジ画素のヒストグラム(距離分布)を導出して、そのピークに相当する領域を対象物の端部と推定する技術が知られている。また、ヒストグラムに基づく融合パターンが、予め格納されている辞書パターンと比較され、対象物が車両であるか否か判定する技術も開示されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3349060号
【特許文献2】特開平10−283461号公報
【特許文献3】特開2003−99762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の水平方向および垂直方向のヒストグラムを導出する方法では、自車両の進行方向を軸にして道路面が左右に傾斜していると、先行車両が相対的に傾いて撮像され、そのエッジも厳密に水平方向や垂直方向に延伸しなくなる。したがって、水平方向や垂直方向のヒストグラムにおけるピークがなくなり車両の検出精度が低下する。また、比較的曲面が多い車両についても、同様に、水平方向や垂直方向のヒストグラムのピークが出現し難く、車両が特定し辛いといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、曲線を描いたり、それ自体が傾斜したりする対象物の特定効率および特定精度の向上を図ることが可能な、環境認識装置および環境認識方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の環境認識装置は、検出領域内を分割した複数のブロック毎の輝度を取得する輝度取得部と、ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に基づくエッジ方向を導出するエッジ導出部と、エッジ方向に基づいてブロック同士を関連付け、エッジ軌跡を生成する軌跡生成部と、複数のエッジ軌跡により囲まれる領域をグループ化して対象物とするグループ化部と、対象物を特定物として決定する特定物決定部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
エッジ導出部は、ブロックを垂直方向に対して2分割した左右それぞれの領域における輝度の合計値の差分と、ブロックを水平方向に対して2分割した上下それぞれの領域における輝度の合計値の差分とに基づいてエッジ方向を導出してもよい。
【0010】
エッジ導出部は、合計値の差分の絶対値が所定の閾値以下であれば、その方向に関して合計値の差分を用いずにエッジ方向を導出してもよい。
【0011】
所定の閾値は、ブロック内の全輝度の平均値に応じた漸増関数で求められる。
【0012】
軌跡生成部は、任意のブロックに隣接する複数のブロックのエッジ方向に基づいて任意のブロックのエッジ方向を補間してもよい。
【0013】
輝度取得部による輝度を取得する領域を、無限遠を含む、検出領域より小さい領域に制限する領域制限部をさらに備えてもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の環境認識方法は、検出領域内を分割した複数のブロック毎の輝度を取得し、ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に基づくエッジ方向を導出し、エッジ方向に基づいてブロック同士を関連付け、エッジ軌跡を生成し、複数のエッジ軌跡により囲まれる領域をグループ化して対象物とし、対象物を特定物として決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エッジの方向を通じて対象物を特定することで、曲線を描いたり、それ自体が傾斜したりする対象物の特定効率および特定精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】環境認識システムの接続関係を示したブロック図である。
【図2】輝度画像を説明するための説明図である。
【図3】環境認識装置の概略的な機能を示した機能ブロック図である。
【図4】位置情報取得部による三次元の位置情報への変換を説明するための説明図である。
【図5】領域制限部の動作を説明するための説明図である。
【図6】本実施形態に用いる輝度画像を説明するための説明図である。
【図7】エッジ導出部の動作を説明するための説明図である。
【図8】エッジ導出部によってエッジ方向が導出された場合のイメージを示すイメージ図である。
【図9】軌跡生成部の動作を説明するための説明図である。
【図10】軌跡生成部による補間動作を説明するための説明図である。
【図11】グループ化部の動作を説明するための説明図である。
【図12】環境認識方法の全体的な流れを示したフローチャートである。
【図13】エッジ方向導出処理の流れを示したフローチャートである。
【図14】エッジ軌跡生成処理の流れを示したフローチャートである。
【図15】エッジ軌跡補間処理の流れを示したフローチャートである。
【図16】グループ化処理の流れを示したフローチャートである。
【図17】特定物決定処理の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
(環境認識システム100)
図1は、環境認識システム100の接続関係を示したブロック図である。環境認識システム100は、車両1内に設けられた、撮像装置110と、画像処理装置120と、環境認識装置130と、車両制御装置140とを含んで構成される。
【0019】
撮像装置110は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を含んで構成され、カラー画像、即ち、画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度を取得することができる。ここでは、撮像装置110で撮像されたカラーの画像を輝度画像と呼び、後述する距離画像と区別する。また、撮像装置110は、車両1の進行方向側において2つの撮像装置110それぞれの光軸が略平行になるように、略水平方向に離隔して配置される。撮像装置110は、車両1の前方の検出領域に存在する対象物を撮像した画像データを、例えば1/60秒毎(60fps)に連続して生成する。ここで、対象物は、車両、信号機、道路、ガードレールといった独立して存在する立体物のみならず、テールランプやウィンカー、信号機の各点灯部分等、立体物の部分として特定できる物も含む。以下の実施形態における各機能部は、このような画像データの更新を契機として各処理を遂行する。
【0020】
画像処理装置120は、2つの撮像装置110それぞれから画像データを取得し、2つの画像データに基づいて、画像中の任意のブロック(所定数の画素を集めたもの)の視差、および、任意のブロックの画面中の位置を示す画面位置を含む視差情報を導出する。画像処理装置120は、一方の画像データから任意に抽出したブロック(例えば水平4画素×垂直4画素の配列)に対応するブロックを他方の画像データから検索する、所謂パターンマッチングを用いて視差を導き出す。ここで、水平は、撮像した画像の画面横方向を示し、実空間上の水平に相当する。また、垂直は、撮像した画像の画面縦方向を示し、実空間上の鉛直方向に相当する。
【0021】
このパターンマッチングとしては、2つの画像データ間において、任意の画像位置を示すブロック単位で輝度値(Y色差信号)を比較することが考えられる。例えば、輝度値の差分をとるSAD(Sum of Absolute Difference)、差分を2乗して用いるSSD(Sum of Squared intensity Difference)や、各画素の輝度値から平均値を引いた分散値の類似度をとるNCC(Normalized Cross Correlation)等の手法がある。画像処理装置120は、このようなブロック単位の視差導出処理を検出領域(例えば600画素×200画素)に映し出されている全てのブロックについて行う。ここでは、ブロックを4画素×4画素としているが、ブロック内の画素数は任意に設定することができる。
【0022】
ただし、画像処理装置120では、検出分解能単位であるブロック毎に視差を導出することはできるが、そのブロックがどのような対象物の一部であるかを認識できない。したがって、視差情報は、対象物単位ではなく、検出領域における検出分解能単位(例えばブロック単位)で独立して導出されることとなる。ここでは、このようにして導出された視差情報(後述する相対距離に相当)を画像データに対応付けた画像を距離画像という。
【0023】
図2は、輝度画像124と距離画像126を説明するための説明図である。例えば、2つの撮像装置110を通じ、検出領域122について図2(a)のような輝度画像(画像データ)124が生成されたとする。ただし、ここでは、理解を容易にするため、2つの輝度画像124の一方のみを模式的に示している。画像処理装置120は、このような輝度画像124からブロック毎の視差を求め、図2(b)のような距離画像126を形成する。距離画像126における各ブロックには、そのブロックの視差が関連付けられている。ここでは、説明の便宜上、視差が導出されたブロックを黒のドットで表している。
【0024】
視差は、画像のエッジ部分(隣り合う画素間で明暗の差分が大きい部分)で特定され易いので、距離画像126において黒のドットが付されている、視差が導出されたブロックは、輝度画像124においてもエッジとなっていることが多い。したがって、図2(a)に示す輝度画像124と図2(b)に示す距離画像126とは各対象物の輪郭について似たものとなる。
【0025】
環境認識装置130は、画像処理装置120から輝度画像124を取得し、輝度画像124における輝度のエッジに基づいて検出領域122における対象物を抽出し、その対象物がいずれの特定物に当たるか特定する。また、環境認識装置130は、画像処理装置120から距離画像126を取得し、距離画像126における、検出領域122内のブロック毎の視差情報を、所謂ステレオ法を用いて、相対距離を含む三次元の位置情報に変換する。ここで、ステレオ法は、三角測量法を用いることで、対象物の視差からその対象物の撮像装置110に対する相対距離を導出する方法である。かかる環境認識装置130に関しては、後ほど詳述する。
【0026】
車両制御装置140は、環境認識装置130で特定された対象物との衝突を回避したり、先行車両との車間距離を安全な距離に保つ制御を実行する。具体的に、車両制御装置140は、操舵の角度を検出する舵角センサ142や車両1の速度を検出する車速センサ144等を通じて現在の車両1の走行状態を取得し、アクチュエータ146を制御して先行車両との車間距離を安全な距離に保つ。ここで、アクチュエータ146は、ブレーキ、スロットルバルブ、舵角等を制御するために用いられる車両制御用のアクチュエータである。また、車両制御装置140は、対象物との衝突が想定される場合、運転者の前方に設置されたディスプレイ148にその旨警告表示(報知)を行うと共に、アクチュエータ146を制御して車両1を自動的に制動する。かかる車両制御装置140は、環境認識装置130と一体的に形成することもできる。
【0027】
(環境認識装置130)
図3は、環境認識装置130の概略的な機能を示した機能ブロック図である。図3に示すように、環境認識装置130は、I/F部150と、データ保持部152と、中央制御部154とを含んで構成される。
【0028】
I/F部150は、画像処理装置120や車両制御装置140との双方向の情報交換を行うためのインターフェースである。データ保持部152は、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、パターンマッチングに用いられる複数の外観パターンや、以下に示す各機能部の処理に必要な様々な情報を保持し、また、画像処理装置120から受信した輝度画像124を一時的に保持する。
【0029】
中央制御部154は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含む半導体集積回路で構成され、システムバス156を通じて、I/F部150やデータ保持部152を制御する。また、本実施形態において、中央制御部154は、位置情報取得部158、領域制限部160、輝度取得部162、エッジ導出部164、軌跡生成部166、グループ化部168、特定物決定部170としても機能する。
【0030】
位置情報取得部158は、距離画像126における検出領域122内のブロック毎の視差情報を、ステレオ法を用いて、水平距離x、高さyおよび相対距離zを含む三次元の位置情報に変換する。ここで、視差情報が、距離画像126における各対象部位の視差を示すのに対し、三次元の位置情報は、実空間における各対象部位の相対距離の情報を示す。また、視差情報が画素単位ではなくブロック単位、即ち複数の画素単位で導出されている場合、その視差情報はブロックに属する全ての画素の視差情報とみなして、画素単位の計算を実行することができる。
【0031】
図4は、位置情報取得部158による三次元の位置情報への変換を説明するための説明図である。位置情報取得部158は、まず、距離画像126を図4の如く画素単位の座標系として認識する。ここでは、図4中、左下隅を原点(0,0)とし、横方向をi座標軸、縦方向をj座標軸とする。したがって、視差dpを有する画素は、画素位置i、jと視差dpによって(i,j,dp)のように表すことができる。
【0032】
本実施形態における実空間上の三次元座標系を、車両1を中心とした相対座標系で考える。ここでは、車両1の進行方向右側方をX軸の正方向、車両1の上方をY軸の正方向、車両1の進行方向(前方)をZ軸の正方向、2つの撮像装置110の中央を通る鉛直線と道路表面との交点を原点(0,0,0)とする。このとき、道路を平面と仮定すると、道路表面がX−Z平面(y=0)と一致することとなる。位置情報取得部158は、以下の(数式1)〜(数式3)によって距離画像126上のブロック(i,j,dp)を、実空間上の三次元の点(x,y,z)に座標変換する。
x=CD/2+z・PW・(i−IV) …(数式1)
y=CH+z・PW・(j−JV) …(数式2)
z=KS/dp …(数式3)
ここで、CDは撮像装置110同士の間隔(基線長)であり、PWは1画素当たりの視野角であり、CHは撮像装置110の道路表面からの配置高さであり、IV、JVは車両1の真正面における無限遠点の画像上の座標(画素)であり、KSは距離係数(KS=CD/PW)である。
【0033】
したがって、位置情報取得部158は、対象部位の相対距離と、対象部位と同相対距離にある道路表面上の点と対象部位との距離画像126上の検出距離とに基づいて、道路表面からの高さを導出していることとなる。
【0034】
領域制限部160は、後述する輝度取得部162が輝度を取得する領域を、無限遠を含む、検出領域122より小さい領域に制限する。
【0035】
図5は、領域制限部160の動作を説明するための説明図である。領域制限部160は、図5(a)に示すように、位置情報取得部158が取得した先行車両210との相対距離が短い場合、そのような先行車両210を適切に抽出すべく、輝度を取得する領域212aを広く設定する。また、領域制限部160は、図5(b)に示すように、先行車両210の相対距離が長い場合、そのような先行車両210さえ抽出すればよいので、輝度を取得する領域212bを小さく設定する。いずれの領域212(212a、212b)も無限遠214を含んでおり、先行車両210の相対距離に応じて、相対距離が短いほど放射状に広がるように領域212が決定される。このように、先行車両210の相対距離に応じて、輝度を取得する領域212を変更することで、無駄な輝度の取得を回避し、計算負荷の軽減を図ることができる。
【0036】
輝度取得部162は、受信した輝度画像124のうち、領域制限部160によって制限された領域212から、ブロック(ここでは例えば2×2画素とする。)単位で輝度(画素単位で3つの色相(赤、緑、青)の輝度)を取得する。このとき、検出領域が例えば雨天や曇天であった場合、輝度取得部162は、ホワイトバランスを調整してから輝度を取得してもよい。
【0037】
本実施形態では、輝度取得部162が取得した輝度のエッジを有効利用し、対象物を抽出する。これは、図6(a)のように、自車両1の進行方向を軸にして道路面が左右に傾斜し、先行車両210等が相対的に傾いて撮像されて、そのエッジも水平方向や垂直方向に延伸しなくなった場合であっても、対象物の特定精度を維持するためである。以下の実施形態では、説明の便宜のため、図6(a)における制限された領域212中の先行車両210の外形を簡略化した図6(b)を用いる。
【0038】
エッジ導出部164は、ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に基づくエッジ方向を導出する。具体的に、エッジ導出部164は、ブロック(ここでは2×2画素)を垂直方向に対して2分割した左右それぞれの領域における輝度の合計値の差分(以下、単に水平方向成分という。)と、ブロックを水平方向に対して2分割した上下それぞれの領域における輝度の合計値の差分(以下、単に垂直方向成分という。)とに基づいてエッジ方向を導出する。
【0039】
図7は、エッジ導出部164の動作を説明するための説明図である。図7(a)は図6(b)と等しい制限された領域212中の簡略化した先行車両210を示す。そして、その領域212中の任意のブロック220aを拡大すると、図7(b)のような輝度分布になり、他の任意のブロック220bを拡大すると、図7(c)のような輝度分布になっていたとする。また、輝度の範囲を0〜255とし、図7(b)中、仮に、白色の塗りつぶしを輝度「200」、黒色の塗りつぶしを輝度「0」とする。ここでは、仮に、ブロックの図中左上画素の輝度をA、右上画素の輝度をB、左下画素の輝度をC、右下画素の輝度をDとし、エッジ方向の水平方向成分を(A+B)−(C+D)、エッジ方向の垂直方向成分を(A+C)−(B+D)と定義する。
【0040】
すると、図7(b)に示すブロック220aのエッジ方向の水平方向成分は、(A+B)−(C+D)=(200+0)―(200+0)=0となり、エッジ方向の垂直方向成分は、(A+C)−(B+D)=(200+200)−(0+0)=+400となる。したがって、水平方向成分「0」、垂直方向成分「+400」となり、エッジ方向は、図7(d)の如く垂直方向上向きの矢印で示される。ただし、図7(f)のように、水平成分は画面右方向を正、垂直成分は画面上方向を正としている。
【0041】
同様に、図7(c)に示すブロック220bのエッジ方向の水平方向成分は、(A+B)−(C+D)=(0+0)―(200+200)=−400となり、エッジ方向の垂直方向成分は、(A+C)−(B+D)=(0+200)−(0+200)=0となる。したがって、水平方向成分「−400」、垂直方向成分「0」となり、エッジ方向は、図7(e)の如く画面右向きの水平方向左向きの矢印で示される。
【0042】
このように、ブロック内の半分の領域から他の半分の領域を減算する構成により、ブロック内全体に含まれる輝度のオフセットやノイズを取り除くことができ、エッジを適切に抽出することが可能となる。また、加減算のみの単純計算でエッジ方向を導出できるので、計算負荷が軽い。
【0043】
本実施形態では、このように導出されたエッジ方向の隣接するブロック同士の同一性を判定して、そのブロック同士を関連付けることを目的としている。しかし、上記水平方向成分や垂直方向成分を導出した値をそのまま用いて単純にエッジ方向としてしまうと、そのエッジ方向のバリエーションが無限に存在することとなる。そうすると、その無限のバリエーションに対して同一とみなしてよいエッジ方向の範囲を設定しなければならない。そこで、本実施形態では、水平方向成分および垂直方向成分のいずれも単位長さで定義し、エッジ方向のバリエーションを単純化する。即ち、水平方向成分および垂直方向成分のいずれも−1、0、+1のいずれかとみなすこととする。そうすると、エッジ方向は、図7(g)のようにそれぞれ45度ずつの角度をなす8つの方向と、水平方向成分および垂直方向成分がいずれも0となる方向無しの9つの状態に限定することができる。こうすることで、以下に示す軌跡生成部166の計算負荷を大幅に軽減することが可能となる。
【0044】
また、図7(g)の各方向に付随する数値は、それぞれのエッジ方向に対する優先順位(昇順)を示し、1のブロック220に複数のエッジ方向が選択可能な場合にはその優先順位が高いエッジ方向をそのブロック220のエッジ方向とする。
【0045】
また、このようにエッジ方向の導出を単純化すると、水平方向成分や垂直方向成分が0ではない全ての場合において、その成分は単位長を有することとなる。例えば、水平方向成分が輝度にして−1の場合と+1の場合とでは、輝度の差が2しかないにも拘わらず、エッジ方向として正反対の結果が生じてしまう。
【0046】
そこで、エッジ方向の導出の際、不感帯を設けることとし、エッジ導出部164は、水平方向成分や垂直方向成分の絶対値が所定の閾値(例えば20)以下であれば、水平方向成分や垂直方向成分を0とみなしてエッジ方向を導出する。こうすることで、ノイズ的に生じた水平方向成分や垂直方向成分によりエッジ方向が不安定になるのを回避でき、後述する軌跡生成部166においても安定した結果を得ることが可能となる。
【0047】
また、ここでは、所定の閾値として固定値を用いる例を示したが、所定の閾値を可変値とすることもできる。例えば、撮像装置110においては、輝度が高いほど、ノイズの量が増える特性を有する。したがって、所定の閾値は、ブロック内の輝度、例えば、ブロック内の全輝度の平均値に応じた漸増関数(例えば、輝度の平均値を引数とする一次関数)で求められることが望ましい。こうして、ブロック内の全体的な輝度の高低によるノイズ量の変動に拘わらず、ノイズによってエッジ方向が不安定になるのを回避できる。このとき、全体的な輝度が高い場合、所定の閾値も高くなるが、そもそも輝度が高い範囲では、水平方向成分や垂直方向成分も大きくなるので、エッジ方向の安定した導出に支障はない。
【0048】
図8は、エッジ導出部164によってエッジ方向が導出された場合のイメージを示すイメージ図である。ここでは、図7(a)の先行車両210の外形に当たる部分にそれぞれの外形に沿ってエッジ方向(図8中矢印で示す)が導出される。ただし、理解を容易にするため、エッジ方向を抽象的に大きく表しているが、実際はブロック毎にエッジ方向が導出されている。
【0049】
ここでは、外形の各辺に関して同一のエッジ方向が導出される例を示しているが、その撮像状況によっては、エッジが近接して二重に検出されたり、部分的にエッジが検出できない場合もある。エッジが近接して二重に検出された場合、上述した図7(g)の優先順位に基づいて1のエッジ方向を決定する。また、部分的にエッジが検出できない場合、後述する軌跡生成部166によってそのブロックの補間が実行される。
【0050】
軌跡生成部166は、エッジ導出部164によって導出されたエッジ方向に基づいてブロック同士を関連付け、エッジ軌跡を生成する。具体的に、軌跡生成部166は、隣接するブロック同士を比較して、同一のエッジ方向を有している場合、そのブロック同士を関連付ける。こうすることで、図9に示すように、先行車両210の外形を表すエッジ軌跡222が生成される。ここでは、水平方向や垂直方向におけるエッジ画素のヒストグラム(距離分布)を導出するのではなく、エッジ自体がどのような軌跡を形成しているかに着目しているので、エッジの延伸方向が水平方向や垂直方向に対して傾いていても、また、エッジが曲率を有していても、適切にその軌跡を導出することが可能となる。
【0051】
ただし、本来、このようにエッジ軌跡222を生成すると、対象物の外形をほぼ再現できるのだが、実際には、太陽光や照明光といった環境光やフロントガラスの曇りや汚れによってエッジが部分的に異なったり欠落していたりする場合もある。そこで、軌跡生成部166は、任意のブロックに隣接する複数のブロックのエッジ方向に基づいて任意のブロックのエッジ方向を補間する。具体的に、軌跡生成部166は、任意のブロックに隣接する2つのエッジ軌跡222が同一のエッジ方向を有する場合、その任意のブロックのエッジ方向に、2つのエッジ軌跡222のエッジ方向を上書きし、任意のブロックを含めた1つの長いエッジ軌跡を生成する。
【0052】
図10は、軌跡生成部166による補間動作を説明するための説明図である。例えば、図10(a)に示したように配列された複数のブロック220において、エッジ導出部164が図10(a)に示したように、それぞれエッジ方向を導出したとする。また、ここでは、ブロック220dは、何らかの原因で他のブロック220a、220b、220c、220e、220fとの連続性が保たれていない状態を示している。
【0053】
図10(a)において、ブロック220a、220b、220cのエッジ方向が等しいので、軌跡生成部166は、図10(b)のように、その3つのブロック220a、220b、220cを関連付けてエッジ軌跡222aを生成する。また、ブロック220e、220fものエッジ方向が等しいので、軌跡生成部166は、図10(b)のように、その2つのブロック220e、220fを関連付けてエッジ軌跡222bを生成する。
【0054】
続いて、軌跡生成部166は、エッジ軌跡222の対象とならなかったブロック220dに隣接するブロックを検索し、エッジ軌跡222が複数存在するか判定する。そして、エッジ軌跡が複数(例えば、エッジ軌跡222a、222b)存在し、かつ、その複数のエッジ軌跡222が同一のエッジ方向(例えば、画面上方向)を有する場合、軌跡生成部166は、図10(c)のように、ブロック220dのエッジ方向もエッジ軌跡222a、222bと同一のエッジ方向に変更する。そして、軌跡生成部166は、ブロック220dを含んで、新たに一連のエッジ軌跡222cを生成する。
【0055】
このとき、1のブロック220に対して2系統のエッジ軌跡(2系統のエッジ方向)が対応する場合、図7(g)に示す優先順位に従って、1のエッジ方向を選ぶとしてもよい。2系統のエッジ軌跡が対応するとは、例えば、1のブロック220の上下のブロック220に同一のエッジ方向を有するエッジ軌跡222があり、同様に、左右のブロック220に上下とは異なる同一のエッジ方向を有するエッジ軌跡222がある場合をいう。
【0056】
また、ここでは、エッジ方向のみを用いてエッジ方向の補間を行っているが、例えば、上述したブロック220における、水平方向成分や垂直方向成分に対応する輝度の合計値の差分値(エッジ強度)のパラメータを加味して、補間を実行するか否か判断してもよい。かかる構成により、エッジ方向のみならず、エッジ強度についてもブロックやエッジ方向の連続性を判断することができ、高精度な補間を実現することが可能となる。
【0057】
グループ化部168は、複数のエッジ軌跡222により囲まれる領域をグループ化して対象物とする。
【0058】
図11は、グループ化部168の動作を説明するための説明図である。グループ化部168は、制限された領域212からエッジ軌跡222を抽出し、対向するエッジ軌跡222を組み合わせる。例えば、グループ化部168は、図11中実線で示すエッジ軌跡(1)とエッジ軌跡(2)とを組み合わせ、また、破線で示すエッジ軌跡(3)とエッジ軌跡(4)とを組み合わせる。そして、その対向するエッジ軌跡222に含まれる領域を対象物とする。したがって、ここでは、平行なエッジ軌跡(1)、(2)やエッジ軌跡(3)、(4)による矩形の対象物が抽出される。
【0059】
ここで、対向しているエッジ軌跡が平行であるか否かは、エッジ軌跡222の近似曲線(近似直線)の傾きが等しいことや、エッジ軌跡222間のエッジ軌跡に垂直な線分の距離がいずれにおいても等しいことから把握することができる。
【0060】
そして、グループ化部168は、グループ化した対象物が水平から傾いていると判定した場合、後述するパターンマッチングのためにその対象物にアフィン変換を施して座標変換してもよい。かかるアフィン変換に用いる変換角度は、いずれか1のエッジ軌跡222の水平または垂直からの角度を用いることができるが、エッジ軌跡222が複数ある場合、そのうちの複数または全てのエッジ軌跡222に関して水平または垂直からの角度を計算し、その平均値をとってもよい。こうすることで、アフィン変換による座標変換精度が向上する。
【0061】
特定物決定部170は、グループ化部168がグループ化した対象物が所定の条件を満たしていれば、その対象物を特定物として決定する。ここでは、その条件として、パターンマッチングを挙げている。
【0062】
特定物決定部170は、まず、対象物とデータ保持部152に保持されたパターン、例えば、典型的な車両の外観パターンを読み出し、対象物とその複数の外観パターンとのパターンマッチングを行う。かかるパターンマッチングとしては、上述したSAD、SSD、NCC等様々な手法を用いることができる。
【0063】
ただし、本実施形態では、対象物が走行車線上に存在することから、それが走行車線上の車両であることをほぼ推定できる場合がある。例えば、走行車線上の対象物が矩形で近似でき、その水平方向の長さと垂直方向の長さの比率が、大凡車両と見なすことができる比率、例えば3:1〜1:2に含まれれば、パターンマッチングを実行することなく、車両とみなすとしてもよい。
【0064】
また、ここでは、車両を例に挙げて説明したが、本実施形態は、人や、信号機、道路標識、その他の様々な特定物を区別することができる。例えば、本実施形態のエッジ軌跡は曲線にも対応できるため、人の外形等、曲線で表されることが多い対象物にも適用することが可能となる。
【0065】
こうして、環境認識装置130では、輝度画像124から、1または複数の対象物を、特定物として抽出することができ、その情報を様々な制御に用いることが可能となる。例えば、図11の対象物を特定物「車両」と特定することが可能となり、自車両1は、自車両1の速度と、その特定物「車両」との相対距離に応じて停止または減速すべきか否かを把握することができる。
【0066】
このように環境認識装置130によれば、エッジの方向を通じて対象物を特定することで、曲線を描いたり、それ自体が傾斜したりする対象物の特定効率および特定精度の向上を図ることが可能となる。
【0067】
(環境認識方法)
以下、環境認識装置130の具体的な処理を図12〜図17のフローチャートに基づいて説明する。図12は、画像処理装置120から輝度画像124が送信された場合の割込処理に関する全体的な流れを示し、図13〜図17は、その中の個別のサブルーチンを示している。また、ここでは、ブロックとして2×2画素を挙げており、600×200画素の輝度画像124の左下隅を原点とし、画像水平方向に1〜300ブロック、垂直方向に1〜100ブロックの範囲で当該環境認識方法による処理を遂行する。
【0068】
図12に示すように、輝度画像124の受信を契機に当該環境認識方法による割込が発生すると、画像処理装置120から取得した輝度画像124が参照されて、領域制限部160によって制限された領域212に関し、各ブロックのエッジ方向が導出される(S300)。そして、導出されたエッジ方向に基づいてブロック同士が関連付けられ、エッジ軌跡が生成され(S302)、さらに複数のエッジ軌跡に挟まれたブロックのエッジ方向が補間される(S304)。
【0069】
続いて、上記複数のエッジ軌跡により囲まれる領域がグループ化され対象物が抽出されると(S306)、その対象物が、パターンマッチング等を通じて特定物として決定される(S308)。以下、上記の処理を具体的に説明する。
【0070】
(エッジ方向導出処理S300)
図13を参照すると、まず、領域制限部160が、輝度を取得する領域を制限する(S350)。ここでは、仮に、輝度を取得する領域を、画像水平方向に51〜250ブロック、垂直方向に21〜80ブロックの領域212に制限したとする。エッジ導出部164は、ブロックを特定するための垂直変数jを初期化(ここでは20を代入)する(S352)。続いて、エッジ導出部164は、垂直変数jに「1」を加算(インクリメント)すると共に水平変数iを初期化(ここでは50を代入)する(S354)。次に、エッジ導出部164は、水平変数iに「1」を加算する(S356)。ここで、水平変数iや垂直変数jを設けているのは、200(51〜250)×60(21〜80)のブロック全てに対して当該エッジ方向導出処理を実行するためである。
【0071】
エッジ導出部164は、輝度画像124から対象部位としてのブロック(i,j)内の2×2画素の輝度を輝度取得部162に取得させる(S358)。
【0072】
エッジ導出部164は、式(A+B)−(C+D)に基づいて水平方向成分を導出し(S360)、導出された水平方向成分の絶対値が所定の閾値以下であるか否か判定する(S362)。水平方向成分の絶対値が所定の閾値以下であれば(S362におけるYES)、水平方向成分を0に置換する(S364)。また、水平方向成分の絶対値が所定の閾値を超えると(S362におけるNO)、水平方向成分の符号が正を示しているか否か判定する(S366)。ここで、正を示していれば(S366におけるYES)、水平方向成分を+1に置換し(S368)、正を示していなければ(S366におけるNO)、水平方向成分を−1に置換する(S370)。
【0073】
同様に、エッジ導出部164は、式(A+C)−(B+D)に基づいて垂直方向成分を導出し(S372)、導出された垂直方向成分の絶対値が所定の閾値以下であるか否か判定する(S374)。垂直方向成分の絶対値が所定の閾値以下であれば(S374におけるYES)、垂直方向成分を0に置換する(S376)。また、垂直方向成分の絶対値が所定の閾値を超えると(S374におけるNO)、垂直方向成分の符号が正を示しているか否か判定する(S378)。ここで、正を示していれば(S378におけるYES)、垂直方向成分を+1に置換し(S380)、正を示していなければ(S378におけるNO)、垂直方向成分を−1に置換する(S382)。
【0074】
そして、エッジ導出部164は、水平方向成分および垂直方向成分からエッジ方向を導出し、エッジ方向を示すエッジ方向識別子d(例えば、図7(g)に示す番号)をブロックに関連付けて、ブロック(i,j,d)とする(S384)。
【0075】
続いて、エッジ導出部164は、水平変数iが水平ブロックの最大値(ここでは250)を超えたか否か判定し(S386)、水平変数iが最大値を超えていなければ(S386におけるNO)、ステップS356の水平変数iのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数iが最大値を超えていれば(S386におけるYES)、エッジ導出部164は、垂直変数jが垂直ブロックの最大値(ここでは80)を超えたか否か判定する(S388)。そして、垂直変数jが最大値を超えていなければ(S388におけるNO)、ステップS354の垂直変数jのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数jが最大値を超えていれば(S388におけるYES)、当該エッジ方向導出処理を終了する。こうして各ブロックにエッジ方向が関連付けられる。
【0076】
(エッジ軌跡生成処理S302)
図14を参照すると、軌跡生成部166は、対象部位(画素)を特定するための垂直変数jを初期化(ここでは20を代入)する(S400)。続いて、軌跡生成部166は、垂直変数jに「1」を加算すると共に水平変数iを初期化(ここでは50を代入)する(S402)。次に、軌跡生成部166は、水平変数iに「1」を加算する(S404)。
【0077】
続いて、軌跡生成部166は、ブロック(i,j,d)を抽出し(S406)、抽出したブロックに隣接するブロックにエッジ方向識別子dが等しいブロックが存在するか否か判定する(S408)。エッジ方向識別子dが等しいブロックが存在しなければ(S408におけるNO)、次のステップS420に処理が移される。一方、エッジ方向識別子dが等しいブロックが存在すれば(S408におけるYES)、いずれのブロックにもエッジ軌跡識別子tが関連付けられていないことを判定する(S410)。いずれのブロックにもエッジ軌跡識別子tが関連付けられていなければ(S410におけるYES)、軌跡生成部166は、エッジ軌跡識別子tとしてまだ利用されていない番号のうち最も小さい値を両ブロックに関連付けて、ブロック(i,j,d,t)とする(S412)。
【0078】
少なくとも一方のブロックにエッジ軌跡識別子tが関連付けられていれば(S410におけるNO)、軌跡生成部166は、いずれか一方のみにエッジ軌跡識別子tが関連付けられているか否か判定する(S414)。いずれか一方のみにエッジ軌跡識別子tが関連付けられていれば(S414におけるYES)、軌跡生成部166は、その関連付けられた一方のエッジ軌跡識別子tを、他方のブロックにも関連付ける(S416)。
【0079】
両方のブロックにエッジ軌跡識別子tが関連付けられていれば(S414におけるNO)、軌跡生成部166は、数値が高いブロックおよびそのブロックとエッジ軌跡識別子tが等しいブロック全てのエッジ軌跡識別子tを、低い数値に置換する(S418)。また、グループ化部168は、グループ化処理S306に先だって、このようなエッジ軌跡識別子tが関連付けられたブロックにより形成されるエッジ軌跡の傾きlを予め求めておき、ブロック(i,j,d,t,l)とする(S420)。
【0080】
続いて、軌跡生成部166は、水平変数iが水平ブロックの最大値(ここでは250)を超えたか否か判定し(S422)、水平変数iが最大値を超えていなければ(S422におけるNO)、ステップS404の水平変数iのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数iが最大値を超えていれば(S422にけるYES)、軌跡生成部166は、垂直変数jが垂直ブロックの最大値(ここでは80)を超えたか否か判定する(S424)。そして、垂直変数jが最大値を超えていなければ(S424におけるNO)、ステップS402の垂直変数jのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数jが最大値を超えていれば(S424におけるYES)、当該エッジ軌跡生成処理を終了する。こうしてエッジ軌跡が生成される。
【0081】
(エッジ軌跡補間処理S304)
図15を参照すると、軌跡生成部166は、対象部位(画素)を特定するための垂直変数jを初期化(ここでは20を代入)する(S450)。続いて、軌跡生成部166は、垂直変数jに「1」を加算すると共に水平変数iを初期化(ここでは50を代入)する(S452)。次に、軌跡生成部166は、水平変数iに「1」を加算する(S454)。
【0082】
軌跡生成部166は、ブロック(i,j,d)を抽出し(S456)、抽出したブロックに隣接する複数のブロックに、エッジ軌跡識別子tが関連付けられており、かつ、その複数のブロックのエッジ方向識別子dが等しいか判定する(S458)。いずれかの条件を満たさなければ(S458におけるNO)、次のステップS466に処理が移される。一方、いずれの条件も満たせば(S458におけるYES)、軌跡生成部166は、抽出したブロックのエッジ方向識別子dに複数のブロックのエッジ方向識別子dを代入または置換する(S460)。また、軌跡生成部166は、抽出したブロックのエッジ軌跡識別子tを複数のブロックに関連付けられた複数のエッジ軌跡識別子tのうち低い数値とする。さらに、数値が高いブロックおよびそのブロックとエッジ軌跡識別子tが等しいブロック全てのエッジ軌跡識別子tを、低い数値に置換する(S462)。また、グループ化部168は、このように、統合されたエッジ軌跡の傾きlを求め、統合されたブロック全てに上書きする(S464)。
【0083】
続いて、軌跡生成部166は、水平変数iが水平ブロックの最大値(ここでは250)を超えたか否か判定し(S466)、水平変数iが最大値を超えていなければ(S466におけるNO)、ステップS454の水平変数iのインクリメント処理からを繰り返す。また、水平変数iが最大値を超えていれば(S466にけるYES)、軌跡生成部166は、垂直変数jが垂直ブロックの最大値(ここでは80)を超えたか否か判定する(S468)。そして、垂直変数jが最大値を超えていなければ(S468におけるNO)、ステップS452の垂直変数jのインクリメント処理からを繰り返す。また、垂直変数jが最大値を超えていれば(S468におけるYES)、当該エッジ軌跡補間処理を終了する。
【0084】
(グループ化処理S306)
図16を参照すると、グループ化部168は、エッジ軌跡を特定するためのエッジ軌跡変数kを初期化(「0」を代入)する(S500)。続いて、グループ化部168は、エッジ軌跡変数kに「1」を加算し、組み合わせ候補のエッジ軌跡を特定するためのエッジ軌跡変数mを初期化(kを代入)する(S502)。次に、グループ化部168は、エッジ軌跡変数mに「1」を加算する(S504)。ここで、エッジ軌跡変数k、mを設けているのは、エッジ軌跡の全ての組み合わせについて当該グループ化処理を行うためである。
【0085】
グループ化部168は、エッジ軌跡識別子tがエッジ軌跡変数kであるエッジ軌跡の傾きlとエッジ軌跡識別子tがエッジ軌跡変数mであるエッジ軌跡の傾きlとを比較し、その角度差が所定値、例えば5°以内であるか否か判定する(S506)。ここで角度差が所定値以内であれば(S506におけるYES)、グループ化部168は、組み合わせ識別子pとしてまだ利用されていない番号のうち最も小さい値を両エッジ軌跡に関連付ける(S508)。
【0086】
続いて、グループ化部168は、エッジ軌跡変数mがエッジ軌跡識別子tの最大値を超えたか否か判定し(S510)、エッジ軌跡変数mが最大値を超えていなければ(S510におけるNO)、ステップS504のエッジ軌跡変数mのインクリメント処理からを繰り返す。また、エッジ軌跡変数mが最大値を超えていれば(S510にけるYES)、グループ化部168は、エッジ軌跡変数kがエッジ軌跡識別子tの最大値−1を超えたか否か判定する(S512)。そして、エッジ軌跡変数kが最大値−1を超えていなければ(S512におけるNO)、ステップS502のエッジ軌跡変数kのインクリメント処理からを繰り返す。また、エッジ軌跡変数kが最大値−1を超えていれば(S512におけるYES)、次のステップS514に処理が移される。
【0087】
次に、グループ化部168は、エッジ軌跡の組み合わせを特定するための組み合わせ変数nを初期化(「0」を代入)する(S514)。続いて、グループ化部168は、組み合わせ変数nに「1」を加算し、グループ化候補のエッジ軌跡の組み合わせを特定するための組み合わせ変数qを初期化(nを代入)する(S516)。次に、グループ化部168は、組み合わせ変数qに「1」を加算する(S518)。ここで、組み合わせ変数n、qを設けているのは、エッジ軌跡の組み合わせ全てに関して当該グループ化処理を行うためである。
【0088】
グループ化部168は、組み合わせ識別子pが組み合わせ変数nであるエッジ軌跡の組み合わせにより囲まれる座標範囲と、組み合わせ識別子pが組み合わせ変数qであるエッジ軌跡の組み合わせにより囲まれる座標範囲とを比較する。そして、その座標範囲が所定比率、例えば80%重複しているか否か判定する(S520)。即ち、組み合わせ識別子pが組み合わせ変数nであるエッジ軌跡の組み合わせと、組み合わせ識別子pが組み合わせ変数qであるエッジ軌跡の組み合わせとが矩形を成すか否か判定する。ここで座標範囲が所定比率重複していれば(S520におけるYES)、グループ化部168は、その2つの組み合わせにより囲まれる座標範囲をグループ化し、対象物識別子oを関連付ける(S522)。
【0089】
続いて、グループ化部168は、組み合わせ変数qが組み合わせ識別子pの最大値を超えたか否か判定し(S524)、組み合わせ変数qが最大値を超えていなければ(S524におけるNO)、ステップS518の組み合わせ変数qのインクリメント処理からを繰り返す。また、組み合わせ変数qが最大値を超えていれば(S524にけるYES)、グループ化部168は、組み合わせ変数nが組み合わせ識別子pの最大値−1を超えたか否か判定する(S526)。そして、組み合わせ変数nが最大値−1を超えていなければ(S526におけるNO)、ステップS516の組み合わせ変数nのインクリメント処理からを繰り返す。また、組み合わせ変数nが最大値−1を超えていれば(S526におけるYES)、当該グループ化処理を終了する。こうして、グループ化された対象物が抽出される。
【0090】
(特定物決定処理S308)
図17を参照すると、特定物決定部170は、対象物を特定するための対象物変数gを初期化(「0」を代入)する(S550)。続いて、特定物決定部170は、対象物変数gに「1」を加算し、外観パターンを特定するためのパターン変数hを初期化(「0」を代入)する(S552)。次に、特定物決定部170は、パターン変数hに「1」を加算する(S554)。ここで、対象物変数gおよびパターン変数hを設けているのは、対象物と外観パターンとの全ての組み合わせに関してパターンマッチングを行うためである。
【0091】
特定物決定部170は、対象物識別子oが対象物変数gである対象物に対し、パターン識別子rがパターン変数hである外観パターンとのパターンマッチングを実行し、外観パターンがマッチングするか否か判定する(S556)。ここで外観パターンにマッチングすると(S556におけるYES)、特定物決定部170は、その対象物を、パターン識別子rがパターン変数hである特定物として特定する(S558)。
【0092】
続いて、特定物決定部170は、パターン変数hがパターン識別子rの最大値を超えたか否か判定し(S560)、パターン変数hが最大値を超えていなければ(S560におけるNO)、ステップS554のパターン変数hのインクリメント処理からを繰り返す。また、パターン変数hが最大値を超えていれば(S560にけるYES)、特定物決定部170は、対象物変数gが対象物識別子oの最大値を超えたか否か判定する(S562)。そして、対象物変数gが最大値を超えていなければ(S562におけるNO)、ステップS552の対象物変数gのインクリメント処理からを繰り返す。また、対象物変数gが最大値を超えていれば(S562におけるYES)、当該特定物決定処理を終了する。こうして、グループ化された対象物が正式に特定物として決定される。
【0093】
以上、説明したように、環境認識装置130によれば、エッジの方向を通じて対象物を特定することで、曲線を描いたり、それ自体が傾斜したりする対象物の特定効率および特定精度の向上を図ることが可能となる。
【0094】
また、コンピュータを、環境認識装置130として機能させるプログラムや当該プログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能なフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD、DVD、BD等の記憶媒体も提供される。ここで、プログラムは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理手段をいう。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0096】
例えば、上述した実施形態では、ブロックのエッジ方向を導出する際、水平方向成分として(A+B)−(C+D)、垂直方向成分として(A+C)−(B+D)を用いている。しかし、エッジ方向は、ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に対して予め定められた任意の角度を有する方向になれば足りる。例えば、水平方向成分を(A+C)−(B+D)、垂直方向成分を(A+B)−(C+D)とする等、様々な組み合わせを用いることができる。
【0097】
また、上述した実施形態では、ブロックを2×2画素としたが、画素数に制限はなく、さらに多くの画素を含むとしてもよい。例えば、4×4画素とした場合、エッジ方向は、水平方向に対して2分割した左右それぞれの領域(2×4画素)における輝度の合計値の差分と、ブロックを垂直方向に対して2分割した上下それぞれの領域(4×2画素)における輝度の合計値の差分とによって導出すればよい。また、ブロックの一辺が偶数の場合に限らず、奇数であってもよい。その場合、中央に位置する画素列または画素行をエッジ方向の計算に含めない(無視する)ことで、適切な値を導出することができる。
【0098】
また、上述した実施形態において、軌跡生成部166は、1のブロックの隣接するエッジ軌跡を用いてその1のブロックを補間する例を挙げて説明したが、補間のブロック数はかかる場合に限らない。例えば、同一のエッジ方向を有する2つのエッジ軌跡の連続性を考慮して、その間にあるブロックも同一のエッジ方向を有すると見なしてよい場合、そのブロックの数に拘わらず、同一のエッジ方向として補間することができる。
【0099】
また、上述した実施形態においては、対象物の三次元位置を複数の撮像装置110を用い画像データ間の視差に基づいて導出しているが、かかる場合に限られず、例えば、レーザレーダ測距装置等、既知の様々な距離測定装置を用いることができる。ここで、レーザレーダ測距装置は、検出領域122にレーザビームを投射し、このレーザビームが物体に当たって反射してくる光を受光し、この所要時間から物体までの距離を測定するものである。
【0100】
また、上述した実施形態では、位置情報取得部158が、画像処理装置120から距離画像(視差情報)126を受けて三次元の位置情報を生成している例を挙げている。しかし、かかる場合に限られず、画像処理装置120において予め三次元の位置情報を生成し、位置情報取得部158は、その生成された三次元の位置情報を取得するとしてもよい。このようにして、機能分散を図り、環境認識装置130の処理負荷を軽減することが可能となる。
【0101】
また、上述した実施形態においては、位置情報取得部158、領域制限部160、輝度取得部162、エッジ導出部164、軌跡生成部166、グループ化部168、特定物決定部170は中央制御部154によってソフトウェアで動作するように構成している。しかし、上記の機能部をハードウェアによって構成することも可能である。
【0102】
また、特定物決定部170は、例えばパターンマッチングによって特定物と決定しているが、かかる場合に限らず、さらに、他の様々な条件を満たしている場合に特定物として決定してもよい。例えば、対象物中における水平方向および鉛直方向の相対距離の推移がほぼ等しい(連続する)場合や、z座標に対する相対移動速度が等しい場合に特定物とする。このとき対象物中における水平方向および鉛直方向の相対距離の推移は、ハフ変換あるいは最小二乗法による近似直線によって特定することができる。
【0103】
なお、本明細書の環境認識方法の各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、検出領域における対象物の輝度に基づいて、その対象物を認識する環境認識装置および環境認識方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 …車両
122 …検出領域
124 …輝度画像
126 …距離画像
130 …環境認識装置
160 …領域制限部
162 …輝度取得部
164 …エッジ導出部
166 …軌跡生成部
168 …グループ化部
170 …特定物決定部
220 …ブロック
222 …エッジ軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域内を分割した複数のブロック毎の輝度を取得する輝度取得部と、
前記ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に基づくエッジ方向を導出するエッジ導出部と、
前記エッジ方向に基づいて前記ブロック同士を関連付け、エッジ軌跡を生成する軌跡生成部と、
複数の前記エッジ軌跡により囲まれる領域をグループ化して対象物とするグループ化部と、
前記対象物を特定物として決定する特定物決定部と、
を備えることを特徴とする環境認識装置。
【請求項2】
前記エッジ導出部は、前記ブロックを垂直方向に対して2分割した左右それぞれの領域における輝度の合計値の差分と、前記ブロックを水平方向に対して2分割した上下それぞれの領域における輝度の合計値の差分とに基づいてエッジ方向を導出することを特徴とする請求項1に記載の環境認識装置。
【請求項3】
前記エッジ導出部は、前記合計値の差分の絶対値が所定の閾値以下であれば、その方向に関して該合計値の差分を用いずにエッジ方向を導出することを特徴とする請求項2に記載の環境認識装置。
【請求項4】
前記所定の閾値は、前記ブロック内の全輝度の平均値に応じた漸増関数で求められることを特徴とする請求項3に記載の環境認識装置。
【請求項5】
前記軌跡生成部は、任意のブロックに隣接する複数のブロックのエッジ方向に基づいて該任意のブロックのエッジ方向を補間することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の環境認識装置。
【請求項6】
前記輝度取得部による輝度を取得する領域を、無限遠を含む、前記検出領域より小さい領域に制限する領域制限部をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の環境認識装置。
【請求項7】
検出領域内を分割した複数のブロック毎の輝度を取得し、
前記ブロック毎の輝度のエッジが伸長する方向に基づくエッジ方向を導出し、
前記エッジ方向に基づいて前記ブロック同士を関連付け、エッジ軌跡を生成し、
複数の前記エッジ軌跡により囲まれる領域をグループ化して対象物とし、
前記対象物を特定物として決定することを特徴とする環境認識方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−243048(P2012−243048A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111998(P2011−111998)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】