説明

環状ポリエステルオリゴマーを高分子量化したポリエステル樹脂で封止した電気・電子部品の製造方法

【課題】従来から電気・電子部品の封止に使用されるエポキシ系の熱硬化性樹脂は、熱硬化時の異臭の問題があり、一般の熱可塑性樹脂を用い封止すると流動性に問題があり封止する形態に制限があった。
【解決手段】電気・電子部品を樹脂封止する工程を含む樹脂封止型電気・電子部品の製造方法において、環状ポリエステルオリゴマーを融点以上の温度で溶融させ封止金型に注入し、封止金型内部で前記環状ポリエステルオリゴマーを熱重合反応させることにより得られるポリエステル樹脂で電気・電子部品を樹脂封止することを特徴とする樹脂封止型電気・電子部品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ポリエステルオリゴマーを溶融させ、封止金型内部に注入し、封止金型内部で熱重合反応させることによって得られる高分子量化したポリエステル樹脂で電気・電子部品を封止することを特徴とする電気・電子部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車・電化製品に広汎に使用されている電気電子部品は、その使用目的を達成する為に、外部との電気絶縁性が必須とされる。例えば、電線は電気絶縁性を有する樹脂で被覆されている。昨今、携帯電話等、小さい容量の中に複雑な電気電子部品を詰め込む必要がある用途が激増している中で、その電気絶縁は種々の方法が採用されている。特に電気絶縁体となる樹脂等を、回路基板等複雑な形状を有する部品にモールドする時は、その形状に追随できる特性が求められる。
エポキシ樹脂系の熱硬化性樹脂を用いて電気・電子部品を封止する方法は従来から行なわれている。エポキシ系の熱硬化性樹脂は、接着性に優れ、電気特性、耐寒性、耐摩耗性などに優れている。エポキシ系の熱硬化樹脂は、前記載の如く優れた特性を生かし半導体封止や弱電封止と多用途の封止に使用されているが、硬化剤のアミン系触媒や酸無水物などとの2液混合型であることから混合の手間を要したり、60℃以上の温度によってBステージ(半ゲル化状態)化し、120℃以上で2〜3時間かけて熱硬化されるため生産性の面で問題がある。また、熱処理時の硬化剤との化学反応に伴う異臭の発生の問題もある。
【0003】
さらに、一般的にエポキシ系の熱硬化樹脂は熱硬化収縮が大きいことからシリカなどの無機フィラーを多量に配合する工夫がなされているが、そのため、樹脂粘性が高くなり、高密度配線の回路基板へ封止する際に樹脂流動性が悪くなったり、泡抜きができないなど、封止性の点において問題がある。
【0004】
封止材料に熱可塑性樹脂を用い封止する方法を検討された例がある(例えば特許文献1参照)。一般の熱可塑性樹脂を用いる方法は流動性が悪く、封止すべき部品を損傷するといった問題があり実用化されていないが、特許文献1では、近年登場した液晶ポリマーと非液晶ポリマーとの混合物を熱可塑性樹脂の融点以上の温度で溶融し封止する方法が記載されている。しかし、特許文献1に記載された封止方法では封止温度が280〜290℃と電気・電子部品の回路形成に使用する半田の溶融温度(260℃前後)より高温であるために半田が溶け出し部品の接続不良が発生し回路故障の原因になり問題である。特に、最近環境対応用として鉛フリー半田が使用されつつあるが、この鉛フリー半田の使用温度が220〜230℃と低く、特許文献1に開示された封止方法では封止が出来ない。更にこの封止方法では封止金型へ注入する際に500〜1000Kg/cm程度の加圧が必要であり、加圧の影響で電気・電子部品を損傷するといった問題も考えられる。
【0005】
近年、自動車、通信、家電などのエレクトロニクス分野の製品にホットメルトモールディング工法による封止が盛んに行なわれている。特に自動車に於ける電子部品、回路の保護として採用が増加している。この理由としてホットメルトモールディング工法はシンプルな封止工法であり設備費が安く、製造ラインに合わせた設備設計が容易であることなどが挙げられる。
【0006】
ホットメルトモールディング工法に用いられる樹脂系は、ポリアミド系、ポリエステル系(例えば特許文献2、3参照)、その他にポリオレフィン系やエラストマー系、反応性ホットメルト系を用いる方法が挙げられる。いずれも無溶剤であり環境にも優しい樹脂系ではあるが、例えば主にダイマー酸ベースが多く使用されるポリアミド系は、耐ガソリン、耐アルコール、耐擦傷性に劣る問題が挙げられ、ポリエステル系はポリアミド系よりも耐ガソリン性に優れているものも、注入時に加圧が不要であるほど樹脂粘度を低く抑えることは困難であり、封止する形態に制限があるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−190698号公報
【特許文献2】特開2004−83918号公報
【特許文献3】特開2004−277641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、溶融流動性に優れ、複雑な封止形態にも対応できるなど封止成形性に優れ、電気絶縁性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性といった品質特性に優れる熱可塑性樹脂で封止された電気・電子部品を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ポリエステルではなく、融点、粘度がそれよりも十分低い環状ポリエステルオリゴマーを融点以上の温度で溶融させた状態で封止金型に注入すれば、注入時に加圧を必ずしも必要としない程度の低粘性化した状態で注入することができること、その結果、複雑な部品形態であっても隅々まで樹脂を注入、封止することができるなど封止性に優れること、電気・電子部品を損傷する恐れを大幅に低減できるなど信頼性の高い電気・電子部品を提供できることを見出した。さらに、封止金型内部で熱重合させることでポリエステルへと転化すれば、通常、粘度が高いために封止金型へ注入することが困難であるようなポリブチレンテレフタレートにおいても電気・電子部品を封止することが可能であり、電気絶縁性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等の品質に優れることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば下記の製造方法が提供される。
(1)電気・電子部品を樹脂封止する工程を含む樹脂封止型電気・電子部品の製造方法において、環状ポリエステルオリゴマーを融点以上の温度で溶融させ封止金型に注入し、封止金型内部で前記環状ポリエステルオリゴマーを熱重合反応させることにより得られるポリエステル樹脂で電気・電子部品を樹脂封止することを特徴とする樹脂封止型電気・電子部品の製造方法。
(2)環状ポリエステルオリゴマーが環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーであり、ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂である(1)記載の樹脂封止型電気・電子部品の製造方法。
(3)ポリブチレンテレフタレート樹脂の還元粘度(ηsp/c)が1.0(dl/g)以上である(2)記載の樹脂封止型電気・電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法は、環状ポリエステルオリゴマーを融点以上の温度で溶融させた状態で封止金型に注入するので、低粘性化した状態で封止材を注入することができ、その結果、複雑な部品形態であっても隅々まで樹脂を注入できるなど封止性に優れる。さらに、本発明の製造方法によれば、封止金型内部で熱重合させることでポリエステルへと転化させるので、ポリブチレンテレフタレートのような通常、粘度が高いために封止金型へ注入することが困難であるようなポリエステルで電気・電子部品を封止することができ、その結果、電気絶縁性、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等の品質に優れた電気・電子部品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の樹脂封止型電気・電子部品の製造方法について説明する。
本発明の樹脂封止型電気・電子部品の製造方法は、環状ポリエステルオリゴマーを融点以上の温度で溶融させ封止金型に注入し、封止金型内部で前記環状ポリエステルオリゴマーを熱重合反応させることにより得られるポリエステル樹脂で電気・電子部品を樹脂封止することを特徴とする。ここで、電気・電子部品とは、例えば自動車、船舶、飛行機、通信、コンピュータ、家電用途各種のセンサ、コントロールユニット、コネクター、ハーネス、プリント基板等である。
環状ポリエステルオリゴマーは、転化した後のポリエステルと比較して、融点が低く低粘性であるため、封止金型の内部まで注入することができ、型締めされた電気・電子部品の表面に均一に流延させることができる。また溶融流動性に優れるため、金型注入時にも加圧を必須としないため、電気・電子部品を損傷しない信頼性の高い樹脂封止型電気・電子部品を提供できる。
【0013】
本発明で使用される環状ポリエステルオリゴマーは、環状ポリエチレンテレフタレートオリゴマー、環状ポリプロピレンテレフタレートオリゴマー、環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーなどの環状ポリC2−6アルキレンテレフタレートオリゴマー、環状ポリシクロヘキサンジメチレンテレフテレートオリゴマーなどを使用することができる。これらはそれぞれ単独であっても、混合物であっても良い。特に環状ポリC2−4アルキレンテレフタレートオリゴマーを使用することが好ましく、その中でも特に環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーが転化した後の樹脂の特性の点から好ましい。
【0014】
なお、環状ポリエステルオリゴマーの調整方法は、例えば、特開平8−225633号公報記載のビスーヒドロキシアルキル末端ジエステル又はそのオリゴマーを、高沸点溶媒及びエステル化触媒に接触させる方法、特許第3426064号公報記載の有機スズ触媒が存在している有機溶媒中に線状のポリエステルを入れることによって大環状ポリエステルオリゴマーを製造する方法、特表2004−507599号公報記載の線状ポリエステルを解重合により大環状オリゴエステルに変換する方法などを利用して製造して得ることができる。
また、市販品を使用しても良い。例えば、環状ポリエステルオリゴマーは、サイクリックス社(Cyclics社)の2量体から5量体を含む環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー商品名CBT(登録商標)等を使用することができる。
【0015】
上記環状ポリエステルオリゴマーの製造方法によっては、2量体から7量体の混合物になる場合も多いが、その後の熱重合反応によって高分子量へと転化したポリエステルが得られるのであれば特に問題はないため、本発明で使用する環状ポリエステルオリゴマーにおいて何量体のものを使用したらよいかについて特に限定はない。しかしながら、一般的に、環状ポリエステルオリゴマーの多量体を使用した場合には、熱重合反応が低下するため、得られるポリエステル樹脂において低分子量成分が多くなる傾向にある。そのため、本発明において使用する環状ポリエステルオリゴマーは、2量体〜5量体の範囲のものを使用することが好ましい。6量体以上の環状ポリエステルオリゴマーでは、熱重合反応が低下し、十分高分子量化したポリエステル樹脂を得ることが難しい傾向にあるため好ましくない。
本発明において使用する環状ポリエステルオリゴマーは、融点が100〜250℃の範囲のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは120〜230℃の範囲のものを使用すると良い。融点が上記範囲内であれば、電気・電子部品に用いる半田を溶かす恐れが少ないので好ましい。
【0016】
環状ポリエステルオリゴマーを熱重合反応させてポリエステル樹脂へと転化するには、環状ポリエステルオリゴマーを溶融させる際、もしくはその前段階で、重合触媒を環状ポリエステルオリゴマー中に添加しておくことが好ましい。重合触媒としては、例えば、特許第3510952号公報に記載の有機スズ化合物やチタン酸エステル触媒、他の触媒としてジアルキルスズアルコキシド、スズオキサシクロアルカン及びスピロスズ化合物等を使用することができる。
【0017】
有機スズ化合物の具体例としては、ジ−n−ブチルスズ(iv)オキシドやジ−n−オクチルスズ(iv)オキシドのようなジアルキルスズ(iv)オキシド、ジ−n−ブチルスズ(iv)ジ−n−ブトキシドや2,2−ジ−n−ブチル−2−スズ−1、3−ジオキサシクロヘプタンのような非環式および環式ジアルキルスズ(iv)ジアルコキシド、トリブチルスズエトキシド等が例示として挙げられる。これらは市販されているものを使用することができ、例えば、ARKEMA社の商品名FASCAT4100(Butylstannoic acid)、FASCAT4101(Stannane,butylchlorodihydroxy)、FASCAT4102(Butyltin tris-2-ethylexoste)等が挙げられるが、特に限定するものではない。特に、FASCAT4101が加工性、重合性の観点から好ましく使用することができる。
【0018】
また、チタン酸エステル触媒は、チタン酸イソプロピル、チタン酸2−エチルヘキシルおよびチタン酸テトラキスー(2−エチルヘキシル)が例示として挙げられる。
【0019】
重合触媒は、環状ポリエステルオリゴマーに0.001〜2モル%添加し分散・混合して使用することが好ましい。特に好ましくは0.005〜1モル%である。重合触媒量が0.001モル%未満の場合は重合反応が不充分となり長時間重合が必要となる傾向にあり、2モル%を超えて添加すると加熱溶融で重合反応が進み過ぎ溶融粘度が上昇し流動性が大幅に低下する傾向にあり封止金型内部に注入でき難くなる恐れがあるので好ましくない。環状ポリエステルオリゴマーとしてCyclics社製無触媒CBT(CBT100)、重合触媒の有機スズ化合物としてFASCAT4101を使用する場合を例にとると、CBTに対して好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜1モル%、特に好ましくは0.1〜0.9モル%のFASCAT4101を添加し分散・混合して使用することができる。
【0020】
本発明では所望により、本発明の目的を損なわない範囲内で、ゴム成分やフィラー、難燃剤、添加剤等を環状ポリエステルオリゴマーに配合しても構わない。
【0021】
次に、環状ポリエステルオリゴマーを、その融点以上の温度で溶融流動させ、封止金型へ注入する。
例えば、CBTの場合を例にあげると融点は139℃である。溶融流動させ、封止金型へ注入させる際の設定温度は、流動性の観点から139℃〜230℃の範囲が好ましく、より好ましくは200℃〜220℃の温度範囲、特に好ましくは205℃〜215℃の温度範囲である。環状ポリエステルオリゴマーを溶融させた後、2分以内に金型内部へ注入することが好ましい。2分を超えると、重合反応が進行し始め粘度が上昇し、流動性が低下する恐れがあるので好ましくない。設定温度が139℃未満では、溶融樹脂が白濁し外観状態も良くなく流動性も劣り、設定温度が230℃を超えると、重合反応が進行し過ぎて粘度が上昇し流動性が低下し注入が困難となる傾向にあり好ましくない。
封止金型へ注入させる際、環状ポリエステルオリゴマーの還元粘度は、0.01〜0.1(dl/g)の範囲が好ましい。環状ポリエステルオリゴマーの還元粘度が上限を超えると、溶融粘度が上昇し過ぎるため封止金型内に注入することが困難となる恐れがある。
【0022】
本発明に使用される封止金型は、ホットメルトモールディングで使用されるアルミ製の金型等、従来公知の封止金型を使用することができる。アルミ製金型は、極低圧の加圧で加工でき金型強度がそれほどいらないこと、またアルミ製金型であれば、封止後、素早く熱を奪い冷却できることなどの利点がある。
【0023】
次に、溶融された環状ポリエステルオリゴマーは、封止金型内部に注入された後、封止金型内で熱重合反応してポリエステル樹脂に転化させ封止を完了させる。
例えば環状ポリエステルオリゴマーが環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーである場合には、開環付加重合反応によりポリブチレンテレフタレート樹脂へと転化させ封止を完了させる。環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーに重合触媒を添加してポリブチレンテレフタレート樹脂へと転化させる場合には、200〜230℃の範囲の温度で重合することが好ましく、より好ましくは200℃〜220℃の範囲である。重合反応温度が200℃未満の場合には、ポリステルへ転化させるまでに長時間要する恐れがあること、低分子量成分やオリゴマーが残る恐れもあり好ましくない。重合反応温度が高いほど高分子量化が早く進む傾向にある。そのため、重合反応温度が230℃を越える場合には、封止金型内部注入口での溶融粘性が高く流動性が劣ることによって封止が不充分となる恐れがあり好ましくない。重合時間は、前記温度範囲で重合させる場合は、例えば5〜15分程度が好ましい。重合時間が5分未満の場合、高分子量化が十分に進行せず、十分な還元粘度が得られないこと、低分子量成分が残存する恐れがある。低分子量成分の残存は、封止金型を汚染したり環境処理電気特性に悪影響を及ぼすので好ましくない。また重合時間が15分を超えた場合には、ポリエステル樹脂の劣化が始まる恐れもあり好ましくない。環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーはポリブチレンテレフタレートに少なくとも88%以上転化させ、重量平均分子量で3万以上、還元粘度で1.0(dl/g)以上まで高分子量化させることが封止特性を満足させるために望ましい。
【0024】
以上のようにして、環状ポリエステルオリゴマーからなるポリエステル樹脂を用いた樹脂封止型電気・電子部品を容易に製造することができる。このようにして得られた樹脂封止型電気・電子部品は、注入される環状ポリエステルオリゴマーが高分子量へと転化後のポリエステルと比較して低粘性であるため複雑な封止金型の内部に注入され易く、型締めされた電気・電子部品の表面に均一に流延させるための加圧も要しないため、製造過程において電気・電子部品の損傷を大幅に低減することができ、信頼性の高い封止された電気・電子部品を提供することができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、各種特性の評価方法は以下のように測定した。
【0026】
・ 還元粘度ηSP/C(dl/g)
試料20mgを10mlの混合溶媒(フェノール/テトラクロロエタン=60/40重量比)に溶解し、オストワルド粘時計を使用して30℃で測定する。試料は、環状ポリエステルオリゴマーを溶融させ金型へ注入させる直前のもの、熱重合反応を行い高分子量へ転化させた後のもの、それぞれについて測定を行った。
【0027】
(2)重量平均分子量(Mw)
GPC分析より求めた。測定条件は下記の通りである。
尚、Mw1000以下(PMMA換算)の低分子量成分を除外して重量平均分子量を評価した。
試料を、HFIP/トリフルオロ酢酸ナトリウム10mMに溶解し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、得られた試料溶液のGPC分析を以下の条件で行なった。
装置:TOSOH HLC-8220GPC
カラム:TSKgel SuperHM-H×2+TSKgel SuperH2000(TOSOH)
溶媒:HFIP/トリフルオロ酢酸ナトリウム10mM
流速:0.25ml/min、濃度:0.05%
温度:40℃、検出器:RI
【0028】
(3)PBT転化率(%)
GPCクロマトグラム(ピーク全体)のピークスタートからピークエンドまでのクロマトグラム面積を100とし、ピークスタートから重量平均分子量Mwが約3000(PMMA換算)までを高分子量化したPBT部分と仮定し、面積比を求めて、PBT転化率(%)とした。
【0029】
(4)封止層厚み(μm)
膜厚み測定器で求めた。
【0030】
(5)チップ抵抗値(Ω)
JIS C 5201−1の測定方法に準じてチップ抵抗値を求め、導通しているかどうかを確認した。
なお、使用した電気・電子回路基板は、65mm×65mmのガラスエポキシ基板サイズに角型ジャンパーチップ抵抗器とPMシリーズ電解コンデンサーおよびピンコネクターからなる実装部品を搭載したものであり、実装部品の接合には共晶はんだ(錫63%で融点184℃の最も低いもの)が使用されているものを用いた。なお、導体幅125μm、導体間幅125μmであった。
【0031】
(6)コンデンサー静電容量(μF)
JIS C 5201−1の測定方法に準じて静電容量を求めた。
測定機器(デジタルマルチメーター)で測定を行い、100μF以上の静電容量を示した場合、問題なしと判断した(測定上限が100μF)。
なお、使用した電気・電子回路基板は、65mm×65mmのガラスエポキシ基板サイズに角型ジャンパーチップ抵抗器とPMシリーズ電解コンデンサーおよびピンコネクターからなる実装部品を搭載したものであり、実装部品の接合には共晶はんだ(錫63%で融点184℃の最も低いもの)が使用されているものを用いた。なお、導体幅125μm、導体間幅125μmであった。
【0032】
(7)充填性
金型通りに樹脂が成形できているか、電気電子部品の導体間にも樹脂が均一に流延しているか、検査した。OK・・・合格、NG・・・欠陥あり。
【0033】
(8)外観
目視で汚れ、かすれ、異物等の不具合を検査した。無・・・不具合なし、有・・・かすれ等あり。
【0034】
(実施例1)
100g入りガラス瓶に環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーCBT100を40g、さらに触媒濃度が0.3モル%になるように触媒FASCAT4101を秤量し充分にドライブレンドした後80℃で一晩減圧乾燥し水分を500ppm以下にした。これを210℃×2分で溶融させ(このときの還元粘度ηSP/c=0.083(dl/g))封止金型内に注入し、200℃×10分間重合を行い、還元粘度ηSP/c=1.78(dl/g)、PBT転化率96.1%、重量平均分子量65500のポリブチレンテレフタレート樹脂から成る封止層(2mm厚)を有する電気・電子回路基板を得た。
回路基板への成形状態も良好であり電子・電気回路基盤の隅々まで樹脂で覆われており、充填性、外観ともに良好であることを確認した。また得られた成形後の封止回路基板のチップ抵抗をマルチメーターで測定したところ、0.3〜0.4Ωの値を示し問題なく導通していることを確認した。また、電解コンデンサー(品番220μF)の静電容量もマルチメーターの上限100μF以上であったことから良好であることを確認した。
【0035】
(実施例2)
触媒濃度を0.2モル%とした以外は実施例1と同様に環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマー、重合触媒を調整した後、210℃×2分で溶融させ(還元粘度ηSP/c=0.080(dl/g))、実施例1と同様に封止金型に注入し200℃×10間重合を行い還元粘度ηSP/c=1.54(dl/g)、PBT転化率96.1%、重量平均分子量67100の2mm厚みから成る封止層を有する回路基板を得た。回路基板への成形状態も良好であり電子・電気回路基盤の隅々まで樹脂で覆われており、充填性、外観ともに良好であることを確認した。得られた封止回路基板のチップ抵抗は、0.3〜0.4Ωの値を示し、静電容量も問題ないことを確認した。
【0036】
(実施例3)
金型重合時の温度を200℃×15分間と変えた以外は実施例2と同様に封止を行い、還元粘度ηSP/c=1.56(dl/g)、PBT転化率96.1%、重量平均分子量57600の2mm厚みから成る封止層を有する回路基板を得た。回路基板への成形状態も良好であり電子・電気回路基盤の隅々まで樹脂で覆われており、充填性、外観ともに良好であることを確認した。得られた封止回路基板のチップ抵抗は0.3〜0.4Ωを示し、静電容量も問題ないことを確認した。
【0037】
(比較例1)
重縮合反応から得られるPBT40g(東洋紡製 GT430 還元粘度ηSP/c=1.13(dl/g)を用い250℃×10分で溶融させ封止金型内に注入したがおよそ数グラム注入された段階で樹脂詰まりが発生し封止を中止した。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の環状オリゴマーからなる熱可塑性樹脂を用いて電気・電子部品を製造する方法は、低溶融粘性を利用した高密度配線の回路封止や設備投資の少ないホットメルトモールディング工法などの多分野の用途に使用が可能である。また溶剤を含まない、重合時に反応臭がないなど環境的にも配慮した樹脂封止型電気・電子部品の製造方法を提供するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気・電子部品を樹脂封止する工程を含む樹脂封止型電気・電子部品の製造方法において、環状ポリエステルオリゴマーを融点以上の温度で溶融させ封止金型に注入し、封止金型内部で前記環状ポリエステルオリゴマーを熱重合反応させることにより得られるポリエステル樹脂で電気・電子部品を樹脂封止することを特徴とする樹脂封止型電気・電子部品の製造方法。
【請求項2】
環状ポリエステルオリゴマーが環状ポリブチレンテレフタレートオリゴマーであり、ポリエステル樹脂がポリブチレンテレフタレート樹脂である請求項1記載の樹脂封止型電気・電子部品の製造方法。
【請求項3】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の還元粘度(ηsp/c)が1.0(dl/g)以上である請求項2記載の樹脂封止型電気・電子部品の製造方法。

【公開番号】特開2011−816(P2011−816A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146620(P2009−146620)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】