説明

生体情報測定システム、生体情報測定装置及びデータ処理装置

【課題】 患者に与える測定作業の負担をできるだけ低減しつつ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査でも在宅酸素療法(HOT)患者の歩行中の酸素濃度測定でも正確に行える生体情報測定システム、生体情報測定装置及びデータ処理装置を提供する。
【解決手段】 生体情報測定装置2は、得られた光電脈波信号に基づき測定した各点での瞬間酸素飽和度を算出し、測定開始から1秒おきに、当該時点から1秒までの期間において算出された瞬間酸素飽和度の平均値(1秒酸素飽和度)、当該時点から3秒前までの期間において算出された1秒酸素飽和度の平均値(3秒酸素飽和度)、当該時点から12秒前までの期間において算出された3秒酸素飽和度の平均値(12秒酸素飽和度)を算出し、この12秒酸素飽和度を表示部10に表示する。また、前記瞬間酸素飽和度を記憶しておき、PC3から要求があると、該瞬間酸素飽和度のデータをPC3に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈血の酸素飽和度や脈拍数等の生体情報を測定する生体情報測定システム、生体情報測定装置及びデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査において、パルスオキシメータと呼ばれる装置が使用されることがある(例えば下記特許文献1参照)。このパルスオキシメータは、被験者の所定の生体部位に装着され、該生体部位に向けて光を出力し、生体部位を透過又は反射した光の光量に基づいて酸素飽和度(瞬時値)を所定の周期で算出するとともに、所定の時間(例えば1秒)が経過するたびに、当該経過タイミングから一定時間(例えば3秒)過去に遡った時点までの期間において得られた酸素飽和度(瞬時値)に基づいて平均値を導出するように構成されている。
【0003】
また、パルスオキシメータは、予め所定のプログラムが組み込まれた例えばパーソナルコンピュータと通信可能に構成されており、例えばそのパーソナルコンピュータは、導出された酸素飽和度の平均値のデータがパルスオキシメータから提供されると、前記プログラムにより、この平均値に基づいて例えば酸素飽和度の変化や単位時間当たりの酸素飽和度の低下の回数を表す指標(Oxygen Desaturation Index ODI)等、被験者の酸素飽和度についての解析を行う。
【0004】
前述のように被験者の酸素飽和度についての解析を行うに際して、所定のタイミングから一定時間過去に遡った時点までの期間において得られた酸素飽和度(瞬時値)に基づいて平均値を導出するのは、仮に、酸素飽和度(瞬時値)で被験者の酸素飽和度についての解析を行うものとすると、酸素飽和度(瞬時値)の中には血流とは無関係の要因、例えば寝返り等の身体の動きなどによる誤差を含んだ有効でない酸素飽和度が存在する可能性があり、この有効でない酸素飽和度に基づく被験者の酸素飽和度についての解析を回避するためであり、有効な酸素飽和度を選び出してできるだけ正確な解析が行えるようにするためである。平均値を導出すべく過去に遡る前記一定時間を平均時間というものとすると、この平均時間は例えば前述の3秒が有効であると考えられている。
【0005】
一方、このパルスオキシメータは、在宅酸素療法(HOT)患者の歩行中の酸素濃度を測定し指示するためのものとして使用される場合がある。この場合、歩行動作によりSASの検査時に比して、より多数の血流とは無関係の要因(例えば被験者の身体の動き)が発生し、より多くの有効でない酸素飽和度が存在する可能性があることから、睡眠時無呼吸症候群の検査の場合に比して前記平均時間が長く設定されており、例えば12秒が有効であると考えられている。
【特許文献1】特開平1−153139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定時においては、有効な平均時間がSASの検査時とは異なるため、HOT患者の歩行中の酸素濃度を指示するのに適した平均時間で算出した酸素飽和度の平均値を導出する必要がある。
【0007】
そこで、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定時においても、SASの検査用として設定されている平均時間(例えば前述の3秒)における酸素飽和度の平均値をパルスオキシメータにより導出し、PC3において、パルスオキシメータから提供されたその酸素飽和度の平均値からHOT用として設定されている平均時間(例えば前述の12秒)における酸素飽和度の平均値を導出することが考えられる。
【0008】
しかしながら、HOT患者は、パルスオキシメータによって示される酸素飽和度の平均値を確認しながら歩行を行うため、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定時においては、歩行中のHOT患者に酸素飽和度の平均値を示す必要がある。そのため、前述の方法では、HOT用として設定されている平均時間で算出した酸素飽和度の平均値がパルスオキシメータでは導出されることがないから、HOT用の酸素飽和度の平均値を該パルスオキシメータで患者に示すことができない。
【0009】
この方法とは別に、前記平均時間を例えば3秒として酸素飽和度の平均値を導出するモードと12秒として酸素飽和度の平均値を導出するモードとを生体情報測定装置に設け、パルスオキシメータをその使用目的に応じて測定者にモードを切り替えさせる構成とすることが考えられる。
【0010】
しかしながら、この構成にあっては、設定の切替作業を被験者に課すこととなるため、その分、被験者に測定作業の負担を与えると共に、被験者が設定の切り替えを忘れたまま測定を行う状況等が想定される。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、患者に与える測定作業の負担をできるだけ低減しつつ、SASの検査でもHOT患者の歩行中の酸素濃度測定でも正確に行える生体情報測定システム、生体情報測定装置及びデータ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、生体情報に係るデータを取得する生体情報測定装置と、前記生体情報測定装置で取得されたデータに所定の処理を行うデータ処理装置とが所定の通信経路を介して通信可能に構成された生体情報測定システムであって、前記生体情報測定装置は、所定の生体情報を測定する測定手段と、前記測定手段により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係る第1のデータを演算する第1の演算手段と、前記第1のデータに基づき該第1のデータと異なる第2のデータを演算する第2の演算手段と、前記第2のデータを表示する表示手段と、前記第1のデータを前記データ処理装置に送信する通信手段とを備え、前記データ処理装置は、前記生体情報測定装置から送信された前記第1のデータを受信する通信手段を備えるとともに、前記通信手段により受信した前記第1のデータを表示する表示手段、及び前記第1のデータを記憶する記憶手段のうち少なくともいずれか一方を備えることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、生体情報に係るデータの提供を受けると該データに所定の処理を行うデータ処理装置に前記データの提供を行う生体情報測定装置であって、所定の生体情報を測定する測定手段と、前記測定手段により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係る第1のデータを演算する第1の演算手段と、前記第1のデータに基づき該第1のデータと異なる第2のデータを演算する第2の演算手段と、前記第2のデータを表示する表示手段と、前記第1のデータを前記データ処理装置に送信する通信手段とを備えることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、生体情報に係るデータを取得する生体情報測定装置との間でデータの授受を行う通信手段を備え、前記通信手段により前記生体情報測定装置から受信したデータを処理するデータ処理装置であって、前記通信手段により受信した第1のデータを表示する表示手段と、前記通信手段により受信した第1のデータを記憶する記憶手段とのうち少なくともいずれか一方を備えることを特徴とするものである。
【0015】
本発明によれば、生体情報測定装置において、測定手段により所定の生体情報が測定され、この所定の生体情報に基づき、第1の演算手段により生体情報に係る第1のデータが演算され、さらに第2の演算手段により、前記第1のデータに基づき該第1のデータと異なる第2のデータが演算される。そして、この第2のデータが表示手段により表示されるとともに、通信手段により、前記第1のデータが前記データ処理装置に送信される。
【0016】
前記データ処理装置においては、通信手段により、前記生体情報測定装置から送信された前記第1のデータが受信されると、当該データ処理装置に表示手段が備えられている場合には第1のデータが表示され、当該データ処理装置に記憶手段が備えられている場合には前記第1のデータが記憶される。
【0017】
これにより、例えば、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定時においては、生体情報測定装置においてHOT用のデータ(前記第2のデータ)を得て、該データを生体情報測定装置の表示手段に表示して患者に示すことができるとともに、SASの検査時においては、SASの検査用のデータ(前記第1のデータ)を得ることができる。
【0018】
その際、請求項4に記載の発明のように、前記第1のデータを、瞬時値または該瞬時値の導出時点から第1の時間だけ過去に遡った時点までの期間において導出された前記瞬時値を用いて算出される平均値とし、前記第2のデータを、前記瞬時値の導出時点から前記第1の時間よりも長い第2の時間だけ過去に遡った時点までの期間において導出された前記瞬時値を用いて算出される平均値とすると、正確なデータを生成し提供することができる。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の生体情報測定システムにおいて、前記生体情報測定装置は、前記第1のデータを記憶する記憶手段をさらに備えることを特徴とするものである。
【0020】
この発明によれば、生体情報測定装置に、前記第1のデータを記憶する記憶手段を備えたので、第1のデータの演算直後に限らず、所望のタイミングでデータ処理装置に前記第1のデータを提供することができるとともに、第1のデータに基づいて種々のデータを生成することが可能となる。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の生体情報測定システムにおいて、前記データ処理装置は、前記通信手段により受信した前記第1のデータに基づき、前記第2のデータ及び/又は前記第2のデータと異なる第3のデータを演算する演算手段を備えるとともに、前記第2のデータ及び/又は前記第3のデータを表示する表示手段と、前記第2のデータ及び/又は前記第3のデータを記憶する記憶手段とのうち少なくともいずれか一方を備えることを特徴とするものである。
【0022】
この発明によれば、データ処理装置において、前記第1のデータに基づき、前記第2のデータ及び/又は前記第2のデータと異なる第3のデータを演算するようにしたから、生体情報に係る複数種類のデータを得ることができる。また、データ処理装置に、第2のデータ及び/又は前記第3のデータを表示する表示手段と、前記第2のデータ及び/又は前記第3のデータを記憶する記憶手段とのうち少なくともいずれか一方を備えたから、前記のように得られた複数種類のデータを表示したり、所望の目的のために記憶しておいたりすることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1,5,6に記載の発明によれば、患者に与える測定作業の負担をできるだけ低減しながら、例えばSASの検査もHOT患者の歩行中の酸素濃度測定も正確に行うことができる。
【0024】
請求項2に記載の発明によれば、所望のタイミングでデータ処理装置に第1のデータを提供することができるから、生体情報測定装置の利便性を向上することができるとともに、第1のデータに基づいて種々のデータを生成することが可能となるため、生体情報測定システムの利用分野を広げることが可能となる。
【0025】
請求項3に記載の発明によれば、種々のデータを得ることができ、生体情報測定システムの利用分野を広げることが可能となる。
【0026】
請求項4に記載の発明によれば、正確なデータを生成し提供することができるため、精度の高い検査等を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る生体情報測定システムの実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る生体情報測定システムの構成を示すブロック図である。
【0028】
図1に示すように、生体情報測定システム1は、生体情報測定装置2と、パーソナルコンピュータ(以下、PCという)3とを備えて構成されている。PC3は、特許請求の範囲におけるデータ処理装置に相当するものである。
【0029】
生体情報測定装置2は、箱型形状の装置本体4と、該装置本体4とケーブル5により電気的に接続された測定部6とを備えた携帯性を有する装置である。なお、説明の都合上、測定部6の構成から説明を行う。
【0030】
測定部6は、所定の相対位置関係を有して対向配置された一対の発光部7及び受光部8を有し、発光部7及び受光部8は、各一端部において前記相対位置関係で固定された状態で連結部材9により連結されている。発光部7は、例えば、赤色領域の波長λ1の赤色光Rを発光する発光ダイオード(LED)と、赤外線領域の波長λ2の赤外光IRとを発光するLEDとを備えた光源である。測定部6は、特許請求の範囲における測定手段の一例である。
【0031】
受光部8は、受光した光の強度に応じた大きさの電流を生成する、例えばシリコンフォトダイオード(Silicon Photo Diode)等の光電変換素子を備えて構成されており、本実施形態では、少なくとも波長λ1の光と波長λ2の光とに対して感度を有する。受光部8は、生体組織LBを透過した発光部7からの波長λ1,λ2の光を受光する。なお、前記各LEDを同一基板上に近接して配置すると、生体内を透過する2種類の光の経路を略同一経路とすることができ、各光についての条件を略同一とすることができる。
【0032】
本実施形態の測定部6においては、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査時には睡眠中の被験者の指先を、在宅酸素療法(HOT)患者の歩行中の酸素濃度測定時には歩行中の患者の指先を発光部7と受光部8とで挟み込んだ状態で、発光部7から、波長λ1の赤色光Rと波長λ2の赤外光IRとを交互に射出されるとともに、受光部8により、発光部7の発光動作に同期して受光動作が行われる。発光部7の発光動作及び受光部8の受光動作は、後述の制御部18により制御されるようになっており、各光についての投受光動作は、例えば1/40〜1/30(秒)の間のいずれかの周期で行われる。受光部8は、光を受光すると、受光した光の強度に応じた大きさの電流信号を後述する装置本体4内のI/V変換部16に出力する。
【0033】
装置本体4は、表示部10と、該表示部10の下方に設置された入力操作部11とを有し、例えば図略の装填室に装着されるバッテリーや乾電池等の電力供給源から電力供給を受けて駆動する。
【0034】
表示部10は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、7セグメントLED(Light Emitting Diode)や有機ホトルミネセンス表示装置やCRT(Cathode-Ray Tube)、あるいはプラズマ等の表示装置からなり、後述の制御部18(図2参照)で算出された後述する酸素飽和度データ等を表示するものである。表示部10は、特許請求の範囲における生体情報測定装置の表示手段に相当するものである。
【0035】
入力操作部11は、当該装置本体4の電源をON/OFFする電源ボタン、酸素飽和度の測定開始の指示を入力するためのスタートボタン、その測定終了の指示を入力するためのストップボタン等を有してなる。
【0036】
PC3は、表示部12と、入力操作部13と、装置本体14とを備える。表示部12は、CRT(Cathode-Ray Tube)、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)あるいはリアプロジェクター等からなり、生体情報測定装置2から送出されたデータや各種情報等の表示を行うものである。入力操作部13は、後述の制御部27(図8参照)等に所望の処理・動作を行わせる指示や各種情報を入力するためのものであり、例えばキーボードやマウスに相当する。装置本体14は、通信部25及び制御部27(図8参照)が搭載されているとともに、各種のプログラムやデータを記憶する例えばハードディスク等からなる外部記憶部26(図8参照)が備えられている。
【0037】
本実施形態の生体情報測定システム1においては、生体情報測定装置2において取得した後述の酸素飽和度等のデータが、ケーブル5及び絶縁部15を介してPC3に送出され、PC3において、受信した酸素飽和度のデータ又は該データに基づき導出されるデータが表示部12に表示される。絶縁部15は、例えばフォトカプラ等で構成されており、電気信号を光信号に変換するものである。
【0038】
図2は、生体情報測定装置2の電気的な構成を示すブロック図である。図2に示すように、生体情報測定装置2は、測定部6、表示部10、入力操作部11、電流電圧変換部(以下、I/V変換部という)16、アナログデジタル変換部(以下、A/D変換部)17、制御部18及び通信部19を備える。
【0039】
測定部6、表示部10及び入力操作部11は、図1に示す測定部6、表示部10及び入力操作部11に相当するものである。
【0040】
I/V変換部16は、例えば1/40(秒)の周期で受光部8から出力される電流信号を電圧信号に変換し、この電圧信号を光電脈波信号としてA/D変換部17に出力するものである。A/D変換部17は、I/V変換部16から出力されたアナログの光電脈波信号をデジタルの光電脈波信号に変換し、このデジタルの光電脈波信号を制御部18に出力するものである。
【0041】
制御部18は、マイクロプロセッサやDSP(Digital Signal Processor)などを備えて構成されており、後述の記憶部20に格納されているデータやプログラムに従って、入力された光電脈波信号から動脈血中の酸素飽和度を演算するものである。制御部18は、測定制御部21と、バンドパスフィルタ部(以下、「BPF部」と略記する)22と、記憶酸素飽和度演算部23と、表示酸素飽和度演算部24とを有する。
【0042】
測定制御部21は、測定部6の発光部7及び受光部8の動作を制御するものであり、本実施形態では、波長λ1の赤色光R及び波長λ2の赤外光IRをそれぞれ例えば1/40(秒)の周期で発光部7から交互に射出させる。
【0043】
BPF部22は、デジタルフィルタで構成されており、A/D変換部17によりA/D変換された光電脈波信号をフィルタリングするものである。なお、BPF部22は、デジタルローパスフィルタ及びデジタルハイパスフィルタから構成してもよいし、FIR(Finite Impulse Response)フィルタで構成してもよい。
【0044】
記憶酸素飽和度演算部23は、BPF部22によりフィルタリングされた光電脈波信号に基づいて、測定した各時点での酸素飽和度(以下、この酸素飽和度を瞬間酸素飽和度という)を算出する。
【0045】
ここで、記憶酸素飽和度演算部23による光を用いた血中酸素飽和度を導出する原理について説明する。
【0046】
酸素は、血中のヘモグロビン(Hb)によって生体の各細胞に運搬され、ヘモグロビンは、肺で酸素と結合して酸化ヘモグロビン(HbO2)となり、生体の細胞で酸素が消費されるとヘモグロビンに戻る。酸素飽和度SpO2は、血中の酸化ヘモグロビンの割合をいい、ヘモグロビン濃度をCHb、酸化ヘモグロビン濃度をCHbO2と表すと、下記数1で表される。
【0047】
【数1】

【0048】
一方、ヘモグロビンの吸光度及び酸化ヘモグロビンの吸光度は、波長依存性を有しており、各吸光係数α(λ)は、図3に示すような吸光特性を有する。なお、図3の横軸は光の波長であり、単位はnm、縦軸は、吸光係数であり、単位は10-9cm2/moleである。
【0049】
図3に示すように、ヘモグロビン及び酸化ヘモグロビンは、吸光特性が異なる。ヘモグロビンは、赤色領域の波長λ1の赤色光Rに対して酸化ヘモグロビンよりも光を多く吸収するが、赤外線領域の波長λ2を超える赤外光IRに対しては酸化ヘモグロビンよりも光の吸収が少ない。すなわち、例えば赤外光Rの波長を酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの吸光係数差が最も大きい660nmとし、赤外光IRの波長を酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの吸光係数が等しい815nmとすると、酸化ヘモグロビンとヘモグロビンとの比率が変化しても赤外光IRの透過光量は変化しないこととなる。一方、赤色光Rの透過光量はヘモグロビンが多いと小さくなり、酸化ヘモグロビンが多いと大きくなる。つまり、透過光量の比をとれば酸素飽和度を求めることができる。
【0050】
生体情報測定装置2は、このようなヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの赤色光Rと赤外光IRとに対する吸光特性の違いを利用して血中酸素飽和度を求めるものである。なお、ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンとの赤色光Rと赤外光IRとに対する吸光特性の違いを利用して脈拍数も求めることができる。
【0051】
生体に光を照射すると、光の一部は吸収され、残りは透過する。生体は、動脈血層と、静脈血層と、動脈血層及び静脈血層以外の組織とで構成されている。生体における光の吸収は、図4(a)に示すように、動脈血層及び静脈血層以外の組織による吸収、静脈血層による吸収及び動脈血層による吸収より成る。動脈血層及び静脈血層以外の組織と静脈血層とは経時的に変化しないため、この部分での光の吸収は略一定である。
【0052】
一方、動脈血層は心拍動によって径が変化し、血管の径が変化するため、動脈血層による光の吸収は、図4(b)に示すように脈拍による経時的に変動する。つまり、透過光強度の変化分は、動脈血のみの情報によるものであって、動脈血層及び静脈血層以外の組織と静脈血層とによる影響はほとんど含まれないと考えられる。図4(b)において、横軸は時間、縦軸は透過光強度である。
【0053】
赤色光R及び赤外光IRの光量変化を比較する場合、入射光量の差をキャンセルする必要がある。図5は、生体に入射する入射光と透過光との関係を模式的に示す図である。
【0054】
図5(a)に示すように、生体への入射光量I0を赤色光Rと赤外光IRとで同一にすることは実質的に困難であり、仮に同一にしても組織や静脈血による吸光率は赤色光Rと赤外光IRとで異なるため、動脈血層による透過光強度の変化分のみを比較することはできない。
【0055】
ここで、動脈が一番細い場合(透過光量が最も大きくなる場合)の透過光量をIとし、動脈が最も太い場合(透過光量が最も小さくなる場合)の透過光量を(I−ΔI)とする。図5(b)に示すように、厚さΔDの動脈血に光量Iの光を照射したとき、透過光量(I−ΔI)の透過光が得られると考えられる。
【0056】
そして、図6に示すように、赤色光Rの透過光量IRと赤外光IRの透過光量IIRとが一致するように正規化する(IIR'=IR)ことにより、動脈血による光量変化の比(ΔIR/IR)/(ΔIIR/IIR)を算出し、酸素飽和度を算出する。
【0057】
入射光と反射光との関係は、ランバート・ビアの法則により、下記数2で表すことができる。
【0058】
【数2】

【0059】
なお、Eは吸光物の吸光係数、Cは吸光物の濃度を表す。
【0060】
赤色光R及び赤外光IRの各波長を前記数2に代入し、各辺の比をとることにより、下記数3式を得ることができる。
【0061】
【数3】

【0062】
なお、IRは、赤色光Rの透過光量、IIRは、赤外光IRの透過光量、ERは、赤色光Rの吸光係数、EIRは、赤外光IRの吸光係数を表す。
【0063】
図7は、例えば赤色光R及び赤外光IRの各波長を、それぞれ660nm及び815nmとしたときにおける、吸光係数の比(ER/EIR)と酸素飽和度SpO2との関係を示すグラフである。図7に示すように、酸素飽和度SpO2は、吸光係数の比(ER/EIR)の低下に比例して増大していく。
【0064】
以上のようにして、記憶酸素飽和度演算部23は瞬間酸素飽和度を算出すると、この瞬間酸素飽和度のデータを記憶部20に格納するとともに、生体情報測定装置2がPC3と通信可能に接続され該PC3から要求があった場合に、該データをPC3に送信する処理を通信部19に行わせる。
【0065】
また、記憶酸素飽和度演算部23は、測定開始から1秒経過するたびに、各経過タイミング測定時点から1秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された瞬間酸素飽和度のうち、血流とは無関係の要因、例えば身体の動きなどによって適正範囲から外れた有効でない瞬間酸素飽和度のデータ(解析の精度を低下させると考えられる酸素飽和度のデータ)を対象から外す無効データ除去処理を行った後、有効とされる瞬間酸素飽和度の平均値を算出する。以下、この平均値を1秒酸素飽和度という。
【0066】
さらに、記憶酸素飽和度演算部23は、測定開始から1秒経過するたびに、各経過タイミング測定時点から3秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された1秒酸素飽和度の平均値を算出する。以下、この平均値を3秒酸素飽和度という。記憶酸素飽和度演算部23は、特許請求の範囲における第1の演算手段に相当するものであり、また、この記憶酸素飽和度演算部23により導出される瞬間酸素飽和度、1秒酸素飽和度及び3秒酸素飽和度は、特許請求の範囲における第1のデータの一例である。
【0067】
表示酸素飽和度演算部24は、測定開始から1秒経過するたびに、各経過タイミング測定時点から12秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された3秒酸素飽和度の平均値を算出する。以下、この平均値を12秒酸素飽和度という。表示酸素飽和度演算部24は、12秒酸素飽和度を算出すると、この12秒酸素飽和度を表示部10に表示させる。この12秒酸素飽和度のデータは、在宅酸素療法(HOT)患者の歩行中の酸素濃度測定時に該患者に提供するためのデータである。
【0068】
このように、瞬間酸素飽和度のデータを記憶部20に格納し、12秒酸素飽和度のデータを表示部10に表示するようにしているのは、次の理由に因る。
【0069】
すなわち、生体情報測定装置2は、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定/指示用として用いられる場合、該患者に携帯され、その歩行中の患者に酸素飽和度のデータを示す必要がある一方、SASの検査用として用いられる場合には、被験者は睡眠中であり、酸素飽和度のデータは、起床後にPC3で確認されるのが一般的である。
【0070】
したがって、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定/指示用として用いられる場合には、生体情報測定装置2にデータを表示する必要がある一方、SASの検査用として用いられる場合には、必ずしも生体情報測定装置2にデータを表示する必要はなく、PC3でデータを確認できればよい。
【0071】
このような目的に応じた生体情報測定装置2の利用方法に鑑みて、本実施形態では、生体情報測定装置2においては、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定/指示のための酸素飽和度(本実施形態では12秒酸素飽和度)を表示し、該生体情報測定装置2がSASの検査用として用いられた場合でも、PC3においてSASの検査のための酸素飽和度(3秒酸素飽和度)を演算できるように、瞬間酸素飽和度を生体情報測定装置2で記憶しておいて、PC3から要求された場合にその瞬間酸素飽和度のデータを提供するようにしている。
【0072】
これにより、生体情報測定装置2が、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定/指示用として用いられた場合には、その歩行中の患者は、12秒酸素飽和度のデータをリアルタイムで確認することができるとともに、SASの検査用として用いられた場合には、被験者は、起床後にPC3で3秒酸素飽和度のデータを確認することができる。表示酸素飽和度演算部24は、特許請求の範囲における第2の演算手段に相当するものであり、また、この記憶酸素飽和度演算部23により導出される12秒酸素飽和度は、特許請求の範囲における第2のデータの一例である。
【0073】
記憶部20は、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)等で構成され、記憶酸素飽和度演算部23で算出された瞬間酸素飽和度を記憶するものである。また、記憶部20には、例えば、生体情報測定装置2の識別番号、電源投入時から所定時間(例えば8時間)で電源を自動的にオフするオートパワーオフ機能が搭載されている場合のその所定時間(オートパワーオフ時間)、各測定データをPC3にダウンロードした回数等のデータ、例えば発光部7の発光光量が許容範囲外であるとか脈波の振幅が許容範囲外であるとか等の測定状態を示すデータも記憶される。
【0074】
通信部19は、RS−232C,USB,IrDA等のインターフェースを備えて構成されており、PC3との間でケーブル5及び絶縁部15を介してデータの通信を行うものである。通信部19は、特許請求の範囲における生体情報測定装置の通信手段に相当するものである。
【0075】
図8は、PC3の電気的な構成を示すブロック図である。図8に示すように、PC3は、表示部12と、入力操作部13と、通信部25と、外部記憶部26と、制御部27とを有する。入力操作部13及び表示部12は、図1に示す入力操作部13及び表示部12に相当するものである。
【0076】
通信部25は、RS−232C,USB,IrDA等のインターフェースで構成され、生体情報測定装置2との間でケーブル5及び絶縁部15を介してデータの通信を行うものである。通信部25は、特許請求の範囲におけるデータ処理装置の通信手段に相当するものである。
【0077】
外部記憶部26は、ハードディスク、USBメモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フロッピーディスク(登録商標)等からなり、通信部25により受信したデータを記憶するものである。外部記憶部26は、特許請求の範囲におけるデータ処理装置の記憶手段に相当するものである。
【0078】
制御部27は、マイクロコンピュータからなり、上述したPC3内の各部材の駆動を関連付けて制御するものである。また、制御部27は、機能的に、格納処理部28と、モード判断部29と、演算部30と、表示制御部31とを備える。
【0079】
格納処理部28は、通信部25を介して生体情報測定装置2から受信した瞬間酸素飽和度のデータを外部記憶部26に格納するものである。
【0080】
モード判断部29は、後述する複数の表示モードのうち、入力操作部13により指定された表示モードを判断するものである。本実施形態では、外部記憶部26に格納した瞬間酸素飽和度のデータを表示部12にそのままグラフで表示する第1の表示モードと、12秒酸素飽和度を表示する第2の表示モードとを有する。
【0081】
また、本実施形態では、酸素飽和度の平均値を算出するに際して測定時点から過去に遡る時点までの期間(平均時間)を指定できる機能を有しており、この平均時間が指定された場合に、その期間において算出された酸素飽和度の平均値を表示する第3の表示モードも有している。モード判断部29は、第1〜第3のモードの中から入力操作部13により指定された表示モードを判断する。
【0082】
演算部30は、入力操作部13により前記第2の表示モード又は第3の表示モードが指定された場合に、そのモードに対応する酸素飽和度の平均値を、外部記憶部26に格納された瞬間酸素飽和度から算出するものである。
【0083】
例えば、第2の表示モードが指定された場合には、演算部30は、生体情報測定装置2の表示酸素飽和度演算部24と同様に、測定開始から1秒ずつ経過した時点において、各経過タイミングから12秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された3秒酸素飽和度の平均値を算出する。
【0084】
また、第3の表示モードが選択され且つ平均時間tが指定された場合には、演算部30は、外部記憶部26に格納された瞬間酸素飽和度に基づき、測定開始から1秒ずつ経過した時点において、各経過タイミングからt秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された1秒酸素飽和度又は3秒酸素飽和度の平均値を算出する。すなわち、演算部30は、平均時間tがt=3・m(mは自然数)である場合には、当該時点からt秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された3秒酸素飽和度の平均値を算出し、平均時間tがt≠3・m(mは自然数)である場合には、当該時点からt秒間だけ過去に遡った時点までの期間において算出された1秒酸素飽和度の平均値を算出する。以下、この平均値をt秒酸素飽和度という。なお、平均時間tの大きさにかかわらず、瞬間酸素飽和度や1秒酸素飽和度からt秒酸素飽和度を算出するようにしてもよい。
【0085】
平均時間tがt=3と指定された場合には、3秒酸素飽和度が算出されるから、SASの検査用の酸素飽和度のデータが得られる。演算部30は、特許請求の範囲におけるデータ処理装置の演算手段に相当するものである。
【0086】
表示制御部31は、入力操作部13により指定された表示モードに応じて、外部記憶部26に記憶されている瞬間酸素飽和度又は演算部30により算出された12秒酸素飽和度またはt秒酸素飽和度をグラフで表示するものである。すなわち、入力操作部13により第1の表示モードが指定された場合には、表示制御部31は、外部記憶部26に格納された瞬間酸素飽和度をそのままグラフで表示する処理を行い、第2、第3の表示モードが指定された場合には、演算部30により算出された12秒酸素飽和度又はt秒酸素飽和度をグラフで表示する処理を行う。
【0087】
以下、生体情報測定装置2及びPC3における動作・処理について説明を行う。図9は、生体情報測定装置2により行われる測定動作を示すフローチャートであり、図10は、生体情報測定装置2とPC3との間で行われる通信処理を示すフローチャートであり、図11は、PC3により行われる処理を示すフローチャートである。
【0088】
図9に示すように、生体情報測定装置2において、図略の電源ボタンがオンされると、制御部18は、記憶部20に記憶されているプログラムを実行し、測定部6、I/V変換部16、A/D変換部17及び記憶部20等の各部を初期化し(ステップ♯1)、測定開始指示があるまで待機する(ステップ♯2でNO)。
【0089】
そして、測定開始指示があると(ステップ♯2でYES)、制御部18は、図略のタイマにより計時を開始する(ステップ♯3)。そして、制御部18は、測定部6に投受光動作を行わせ(ステップ♯4)、I/V変換部16及びA/D変換部17は、測定部6からのデータに対して前述の各処理を行った後(ステップ♯5)、制御部18は、フィルタリングを行って瞬間酸素飽和度を演算する(ステップ♯6)。そして、制御部18は、この算出した瞬間酸素飽和度のデータを記憶部20に格納する(ステップ♯7)。
【0090】
次に、制御部18は、前記タイマにより1秒が計時されたか否か判断し(ステップ♯8)、前記タイマにより1秒が計時されていない場合には(ステップ♯8でNO)、ステップ♯4〜♯8の処理を繰り返し行い、前記タイマにより1秒が計時されると(ステップ♯8でYES)、現時点から1秒前までの間に得られた瞬間酸素飽和度の平均値(1秒酸素飽和度)を算出する(ステップ♯9)。このとき、瞬間酸素飽和度について予め設定された範囲を逸脱するものについては、血流とは無関係の要因によってその範囲を逸脱したものと考えられることから、その瞬間酸素飽和度のデータについては無効とし、前記平均演算の対象として組み入れないようにする。
【0091】
次に、この算出された1秒酸素飽和度の平均値と、現時点から3秒前までの間に算出された1秒酸素飽和度の平均値(3秒酸素飽和度)を算出し(ステップ♯10)、さらに、現時点から12秒前までの間に算出された3秒酸素飽和度の平均値(12秒酸素飽和度)を算出する(ステップ♯11)。なお、ステップ♯10の処理は、測定開始から3秒間の間、また、ステップ♯11の処理は、測定開始から12秒間の間は、平均演算の対象が無い又は欠けているため実行されない。
【0092】
制御部18は、このようにして算出した12秒酸素飽和度のデータを表示部10に表示するとともに記憶部20に格納する(ステップ♯12)。そして、制御部18は、測定終了の指示があるまで(ステップ♯13でNO)、ステップ♯4〜♯13の処理を実行し、測定終了の指示があると(ステップ♯13でYES)、一連の処理を終了する。
【0093】
生体情報測定装置2とPC3とがケーブル5により接続されると、図10に示す処理が実行可能となる。図10に示すように、生体情報測定装置2においては、PC3とケーブル5により接続された状態で電源が投入されると、(ステップ♯21でYES)、制御部18は、通信部19等の初期化処理を行い(ステップ♯22)、PC3との間で通信可能な通信モードに設定し(ステップ♯23)、酸素飽和度のデータの送信を指示する旨の信号(以下、送信指示信号という)がPC3から送信されるのを待機する(ステップ♯24でNO)。
【0094】
一方、PC3においては、電源が投入されると、(ステップ♯28でYES)、制御部27は、表示部12に初期画面を表示させ(ステップ♯29)、生体情報測定装置2からのデータのダウンロードを指示する入力が行われるまで待機する(ステップ♯30でNO)。
【0095】
そして、ダウンロードを指示する入力が行われると(ステップ♯30でYES)、制御部27は、前記送信指示信号を生体情報測定装置2に送信する処理を行い(ステップ♯31)、生体情報測定装置2から酸素飽和度のデータを受信するまで待機する(ステップ♯32でNO)。
【0096】
生体情報測定装置2において、PC3から前記送信指示信号を受信すると(ステップ♯24でYES)、制御部18は、記憶部20からデータを読み出す(ステップ♯25)。ここで、記憶部20から読み出すデータは、瞬間酸素飽和度のデータである。そして、制御部18は、この瞬間酸素飽和度のデータをPC3に送信する処理を行う(ステップ♯26)。その後、制御部18は、生体情報測定装置2の電源がオフされるまで(ステップ♯27でNO)、ステップ♯24〜♯27の処理を繰り返し実行し、その電源がオフされると(ステップ♯27でYES)、一連の処理を終了する。
【0097】
PC3において、生体情報測定装置2から瞬間酸素飽和度のデータを受信すると(ステップ♯32でYES)、制御部27は、この瞬間酸素飽和度のデータを外部記憶部26に格納する(ステップ♯33)。そして、制御部27は、プログラムの起動を終了する指示が入力されたか否かを判断し(ステップ♯34)、プログラムの起動を終了する指示が入力された場合には(ステップ♯34でYES)、一連の処理を終了し、プログラムの起動を終了する指示が入力されていない場合には(ステップ♯34でNO)、データの表示を指示する旨の入力が行われたか否かを判断する(ステップ♯35)。
【0098】
その結果、データの表示を指示する旨の入力が行われていない場合には(ステップ♯35でNO)、制御部27は、ステップ♯30の処理に戻る一方、データの表示を指示する旨の入力が行われると(ステップ♯35でYES)、外部記憶部26に格納したデータに基づいて表示部12に表示すべきデータを導出し表示する処理を実行する(ステップ♯36)。
【0099】
図11に示すように、制御部27は、第1の表示モードが指定されたものと判断すると(ステップ♯41でYES)、外部記憶部26に格納した瞬間酸素飽和度のデータをそのままグラフで表示する処理を行う(ステップ♯42)。
【0100】
また、制御部27は、第2の表示モードが指定されたものと判断すると(ステップ♯41でNO、♯43でYES)、外部記憶部26に格納した瞬間酸素飽和度に基づき12秒酸素飽和度を算出し、該12秒酸素飽和度のデータを表示する処理を行う(ステップ♯44)。なお、12秒酸素飽和度の算出に際し、生体情報測定装置2と同様、血流とは無関係の要因、例えば身体の動きなどによって適正範囲から外れた有効でない瞬間酸素飽和度のデータ(解析の精度を低下させると考えられる酸素飽和度のデータ)を対象から外す無効データ除去処理が行われる。
【0101】
また、制御部27は、第3の表示モードが指定されたものと判断すると(ステップ♯43でNO)、酸素飽和度の平均値を算出するに際して測定時点から過去に遡る時点までの期間(時間t)が入力操作部13により指定されたときに、その期間において算出されたt秒酸素飽和度の平均値を算出し表示する処理を行う(ステップ♯45)。
【0102】
例えば、時間t=6が入力操作部13により入力された場合には、前記無効データ除去処理を行った後、測定開始時点から1秒ずつ経過した時点において、その経過時点から1秒前までの間に得られた瞬間酸素飽和度の平均値(1秒酸素飽和度)を算出し、また、測定開始時点から1秒ずつ経過した時点において、その経過時点から3秒前までの間に算出された1秒酸素飽和度の平均値(3秒酸素飽和度)を算出し、さらに、測定開始時点から1秒ずつ経過した時点において、その経過時点から6秒前までの間に算出された3秒酸素飽和度の平均値を算出し、該平均値を表示部12に表示することとなる。
【0103】
ステップ♯42の処理により表示部12に表示されるグラフの一例を図12(a)に、ステップ♯44の処理により表示部12に表示されるグラフの一例を図12(b)に、ステップ♯45の処理により表示部12に表示されるグラフの一例を図12(c)にそれぞれ示す。
【0104】
以上のように、生体情報測定装置2において、12秒酸素飽和度を算出して表示部10に表示するようにしたので、HOT患者の歩行中の酸素濃度測定時において、患者に12秒酸素飽和度を示すことができる。また、生体情報測定装置2内で導出した瞬間酸素飽和度のデータをPC3に提供するようにしたので、生体情報測定装置2がSAS検査用として利用された場合に、該検査に適した酸素飽和度(3秒酸素飽和度)を導出することができる。これにより、生体情報測定装置2が前記いずれの場合に利用されても、その利用方法に適した酸素飽和度のデータを提供することができ、SASの検査や歩行中のHOT患者への指示を正確に行うことができる。
【0105】
また、PC3において、第3の表示モードが指定されると、酸素飽和度の平均値を算出するに際して測定時点から過去に遡る時点までの期間(時間t)が入力操作部13により指定されたときに、生体情報測定装置2から提供された瞬間酸素飽和度のデータに基づき、t秒酸素飽和度を算出し表示するようにしたので、種々の解析を行うことができることとなり、その結果、生体情報測定システム1の利用分野を広げることが可能となる。
【0106】
また、生体情報測定装置2に、該装置2内で導出した瞬間酸素飽和度のデータを記憶しておくようにしたので、任意のタイミングでPC3に該データを提供することができるとともに、生体情報測定装置2において、12秒酸素飽和度のデータを患者に提供するだけでなく、瞬間酸素飽和度のデータから種々のデータを生成して、該データを生体情報測定装置2又はPC3にて提供することが可能となる。
【0107】
前記実施形態に加えて、あるいは前記実施形態に代えて次の形態[1]〜[9]に説明する変形形態も採用可能である。
【0108】
[1]前記実施形態では、SAS検査用として、3秒酸素飽和度を、また、歩行中のHOT)者への指示用として12秒酸素飽和度をそれぞれ導出するようにしたが、それぞれの場合に適した平均時間「3秒」及び「12秒」は一例にすぎず、他の値であってもよい。
【0109】
[2]前記実施形態では、3秒酸素飽和度を算出する場合に平均演算の対象を、過去3秒間に算出された1秒酸素飽和度としたが、これに限らず、過去3秒間に算出された瞬間酸素飽和度でもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、12秒酸素飽和度を算出する場合に平均演算の対象を、過去12秒間に算出された3秒酸素飽和度としたが、これに限らず、過去12秒間に算出された瞬間酸素飽和度とし、1秒酸素飽和度及び3秒酸素飽和度を算出することなく12秒酸素飽和度を算出するようにしてもよいし、過去12秒間に算出された1秒酸素飽和度とし、3秒酸素飽和度を算出することなく12秒酸素飽和度を算出するようにしてもよい。
【0111】
さらに、前記実施形態では、1秒酸素飽和度や3秒酸素飽和度等の演算タイミングを、
測定開始時点から1秒ずつ経過した時点としたが、これに限らず、適宜変更可能である。
【0112】
[4]前記実施形態においては、生体情報測定装置2は、瞬間酸素飽和度のみを記憶部20に記憶するようにしたが、これに限らず、瞬間酸素飽和度、1秒酸素飽和度及び3秒酸素飽和度のうち少なくとも1つを記憶部20に記憶するようにすればよい。1秒酸素飽和度や3秒酸素飽和度を生体情報測定装置2の記憶部20に記憶するようにすると、PC3での1秒酸素飽和度や3秒酸素飽和度の演算が不要となる。
【0113】
[5]生体情報測定装置2において、算出した12秒酸素飽和度のデータの表示とともに脈拍数の表示も行うようにしてもよい。
【0114】
[6]前記実施形態のように、発光部7と受光部8とを生体を介して略対向配置する形態に限らず、発光部7と受光部8とを生体組織に対して同じ向きに配置し、受光部8が生体からの反射光を受光するようにしてもよい。この場合も、赤色領域の波長λ1の赤色光Rを発光する発光ダイオード(LED)と、赤外線領域の波長λ2の赤外光IRとを発光するLEDとを同一基板上に近接して配置すると、生体内を透過する2種類の光の経路を略同一経路とすることができ、各光についての条件を略同一とすることができる。
【0115】
また、生体部位は、前述の指に限らず、該生体部位の装着容易性や測定データのSN比等、生体情報の測定の容易性を考慮して、例えば耳朶等でもよく、また、被測定者が乳幼児の場合には、手や足の甲、あるいは手首等でもよい。
【0116】
[7]前記実施形態では、データ処理装置としてPC3を例に挙げたが、これに限らず、例えばPDA(Personal Digital Assistants)でもよい。
【0117】
[8]生体情報測定装置2とPC3との通信過程において、PC3から送信指示信号を受けて生体情報測定装置2からPC3に送信されるデータは、酸素飽和度に係るデータに限られず、例えば、該酸素飽和度のデータのファイル番号、測定開始時刻、データ量、脈拍数、測定時に発生した警告内容、脈波波形データ、電池残量等のデータも併せて送信するようにしてもよい。
【0118】
また、生体情報測定装置2に、被験者の体の動きを検出する加速度センサや圧電素子等を用いたジャイロから構成される角速度センサが搭載されている場合には、加速度や角速度の情報も酸素飽和度に係るデータと併せてPC3に送信するようにしてもよい。
【0119】
さらに、生体情報測定装置2に記憶させるデータの種類、例えば酸素飽和度のデータのみを記憶するとか、酸素飽和度のデータと脈波データとを記憶するとか等を指定する機能がPC3に搭載されていて、そのPC3の指示に応じて記憶するデータの種類に応じた保存モードを設定する機能が生体情報測定装置2に搭載されている場合には、その保存モードを示す情報も酸素飽和度に係るデータと併せてPC3に送信するようにしてもよい。
【0120】
[9]生体情報測定装置は、酸素飽和度に限らず、脈拍数、体位、脈波等の情報も表示部10に表示するようにしてもよい。また、生体情報測定装置において3秒酸素飽和度のデータを記憶し、このデータをPC3に送出するようにした場合には、この3秒酸素飽和度のデータから単位時間当たりの酸素飽和度の低下の回数を表す指標(Oxygen Desaturation Index ODI)を算出し、その算出結果を表示部10に表示するようにしてもよい。生体情報は、血流に関連する情報だけでなく脳波や心電波でもよく、その検知媒体は光に限らず電気等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る生体情報測定システムの第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】生体情報測定装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図3】ヘモグロビン及び酸化ヘモグロビンの吸光特性を示すグラフである。
【図4】生体による光の吸収を示す図である。
【図5】生体に入射する入射光と透過光との関係を模式的に表す図である。
【図6】赤外光による透過光量の正規化を説明するための図である。
【図7】吸光係数の比と酸素飽和度との関係を示す図である。
【図8】パーソナルコンピュータの電気的な構成を示すブロック図である。
【図9】生体情報測定装置により行われる測定動作を示すフローチャートであり、
【図10】生体情報測定装置とPCとの間で行われる通信処理を示すフローチャートである。
【図11】パーソナルコンピュータにより行われる処理を示すフローチャートである。
【図12】パーソナルコンピュータの表示部に表示されるグラフの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0122】
1 生体情報測定システム
2 生体情報測定装置
3 パーソナルコンピュータ
6 測定部
7 発光部
8 受光部
10 表示部
12 表示部
18 制御部
19 通信部
21 記憶部
23 記憶酸素飽和度演算部
24 表示酸素飽和度演算部
25 通信部
26 外部記憶部
27 制御部
30 演算部
31 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報に係るデータを取得する生体情報測定装置と、前記生体情報測定装置で取得されたデータに所定の処理を行うデータ処理装置とが所定の通信経路を介して通信可能に構成された生体情報測定システムであって、
前記生体情報測定装置は、
所定の生体情報を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係る第1のデータを演算する第1の演算手段と、
前記第1のデータに基づき該第1のデータと異なる第2のデータを演算する第2の演算手段と、
前記第2のデータを表示する表示手段と、
前記第1のデータを前記データ処理装置に送信する通信手段とを備え、
前記データ処理装置は、
前記生体情報測定装置から送信された前記第1のデータを受信する通信手段を備えるとともに、
前記通信手段により受信した前記第1のデータを表示する表示手段、及び前記第1のデータを記憶する記憶手段のうち少なくともいずれか一方を備えることを特徴とする生体情報測定システム。
【請求項2】
前記生体情報測定装置は、前記第1のデータを記憶する記憶手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の生体情報測定システム。
【請求項3】
前記データ処理装置は、前記通信手段により受信した前記第1のデータに基づき、前記第2のデータ及び/又は前記第2のデータと異なる第3のデータを演算する演算手段を備えるとともに、
前記第2のデータ及び/又は前記第3のデータを表示する表示手段と、前記第2のデータ及び/又は前記第3のデータを記憶する記憶手段とのうち少なくともいずれか一方を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の生体情報測定システム。
【請求項4】
前記第1のデータは、瞬時値または該瞬時値の導出時点から第1の時間だけ過去に遡った時点までの期間において導出された前記瞬時値を用いて算出される平均値であり、
前記第2のデータは、前記瞬時値の導出時点から前記第1の時間よりも長い第2の時間だけ過去に遡った時点までの期間において導出された前記瞬時値を用いて算出される平均値であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【請求項5】
生体情報に係るデータの提供を受けると該データに所定の処理を行うデータ処理装置に前記データの提供を行う生体情報測定装置であって、
所定の生体情報を測定する測定手段と、
前記測定手段により測定される生体情報に由来する生体信号に基づき、生体情報に係る第1のデータを演算する第1の演算手段と、
前記第1のデータに基づき該第1のデータと異なる第2のデータを演算する第2の演算手段と、
前記第2のデータを表示する表示手段と、
前記第1のデータを前記データ処理装置に送信する通信手段と
を備えることを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項6】
生体情報に係るデータを取得する生体情報測定装置との間でデータの授受を行う通信手段を備え、前記通信手段により前記生体情報測定装置から受信したデータを処理するデータ処理装置であって、
前記通信手段により受信した第1のデータを表示する表示手段と、前記通信手段により受信した第1のデータを記憶する記憶手段とのうち少なくともいずれか一方を備えることを特徴とするデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−212161(P2006−212161A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27020(P2005−27020)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】