説明

生体認証ユニット、自動取引処理装置、生体認証方法、及び生体認証プログラム

【課題】生体認証の失敗の発生を極力抑制し、失敗したとしても生体認証を繰り返す回数が少なくて済み、認証対象者に不信感をもたれない生体認証ユニット、及び自動取引処理装置を提供する。
【解決手段】生体認証に不慣れな顧客に対しては、認証開始前に適切な生体のセット方法をガイダンス表示する。そして、認証処理を行って一致度合いが所定の判定値に達しない場合、登録していない指の可能性があることを警告したり、指の汚れ・絆創膏・角質化・動いている等を確認してもらったりする。また、一致度不足となる置き方・位置の推定要因と改善案を表示して顧客が改善行動を起こすと、一致度が悪い部分を示すブロック図がリアルタイムに改善表示されることで、顧客の改善結果を確認し易くする。生体認証に成功すると、指の置き方・位置の改善履歴をICカードに記憶させ、次回取引時の生体認証開始にはこれを表示することにより、認証失敗を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顧客の生体情報を読み取って本人確認を行う生体認証ユニット、生体認証方法、及び生体認証プログラムと、この生体認証ユニットを備えた自動取引処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金融機関では、自動取引処理装置である現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)での取引において、盗難カードや偽造カード等の使用による被害が増加しており、本人確認を実現する方法として、生体情報を用いて本人確認を行う生体認証が利用されている。ATMでは、利用者が本人であるのにもかかわらず、生体認証ができずに、取引の受付を拒否されることがある。
【0003】
この問題の対策として、特許文献1には、生体認証を行った結果、所定の一致度に達しない場合、認証失敗の要因と指の置き方・位置(セット方法)の改善案をガイダンス表示してから、指を置き直してもらって、再度認証処理を行う生体認証システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−9434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の生体認証システムは、生体認証ができなかったとき、その要因と改善案を表示し、利用者がこれらに基づいて指を置き直すと、認証できたか認証できなかったかの単純な結果だけしか出力しない。そのため、利用者は、一致度がどのように変化したのかがわからなかった。また、利用者は、改善案に従って試行錯誤しても認証されずに失敗を何回も繰り返してしまうことがあり、利用者が生体認証に対して不信感を持つ可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、生体認証を繰り返す回数が少なくて済み、利用者に不信感をもたれない生体認証ユニット、自動取引処理装置、生体認証方法、及び生体認証プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の生体認証ユニットは、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下の構成を備えている。
【0008】
この発明の生体認証ユニットは、読取り部と、一致度取得部と、出力部と、を備え、認証対象者の生体情報を読み取って、生体認証する。読取り部は、載置台に載置された認証対象者の手指から生体情報を読み取る。一致度取得部は、読取り部が読み取った生体情報と、予め登録されている認証対象者の登録生体情報と、を比較した一致度の分布を取得する。出力部は、一致度取得部が取得した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布にかかる表示データを出力する。
【0009】
生体認証ユニットは、生体情報と登録生体情報との一致度の分布にかかる表示データを出力するので、認証対象者は、この表示データを確認することで、生体認証を行った際に、どこが悪かったかを把握できる。これにより、認証対象者は、どのように対応すればよいかがわかり、載置台に載置する手指の状態を容易に変更できる。したがって、生体認証を失敗したとしても、生体認証を繰り返す回数が少なくて済み、認証対象者に不信感をもたれないようにすることができる。
【0010】
上記発明の生体認証ユニットでは、出力部は、一致度取得部が検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布に基づいて生成された、載置台に対する手指の載置状態の変更指示を案内する表示データも加えて出力する。
【0011】
認証対象者は、生体認証ユニットが出力した、載置台に対する手指の載置状態の変更指示を案内する表示データを確認することで、生体認証を行う際に、載置台に載置する手指の状態を容易に変更できる。したがって、生体認証を繰り返す回数を抑制でき、短時間で生体認証を完了できる。
【0012】
上記発明の生体認証ユニットにおいて、生体情報と登録生体情報との一致度の分布にかかる表示データは、生体情報の読み取り領域を複数のブロックに分割したデータである。
【0013】
認証対象者は、読み取り領域が複数のブロックに分割されている表示データを確認することで、複数のブロックのどの部分が一致し、どの部分が一致していないかを容易に把握できる。したがって、認証対象者は、この表示データに基づいて手指の載置方法を変更することで、生体認証を繰り返す回数を抑制できる。
【0014】
上記発明の生体認証ユニットにおいて、一致度取得部は、一致度の分布を一定時間毎に取得し、出力部は、一致度の分布における一定時間毎の変化に応じて、載置台に対する手指の載置状態の変更指示を案内する表示データを出力する。
【0015】
認証対象者は、生体認証ユニットが出力する、載置台に対する手指の載置状態の変更指示に従って手指の載置状態を変更することで、生体認証ユニットに認証されるように手指の置き方を変更できるので、生体認証を繰り返すことなく、短時間で生体認証を完了することができる。
【0016】
上記発明の生体認証ユニットは、データ生成部を備えている。データ生成部は、一致度取得部が検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布に基づき、一致度が低い領域が発生する要因を推定し、この要因を案内する表示データを生成して、出力部に出力させる。また、認証対象者の生体認証が成功したときには、それまでに推定した前記要因を案内するデータを出力して、認証対象者から受け入れたカードに前記要因を案内する表示データを記録するように指示する。さらに、次に認証対象者からカードを受け入れたときには、該カードに記録された前記要因を案内する表示データを読み出すように指示し、前記カードから読み出された表示データを前記出力部に出力させる。
【0017】
生体認証ユニットは、今回の生体認証時に、前回の生体認証時に推定された一致度が低い領域が発生する要因を出力するので、認証対象者は、生体認証が成功した手指の置き方や位置などセット方法を思い出して、今回の載置状態に反映できる。したがって、生体認証の失敗は防止され、短時間で生体認証を完了できる。
【0018】
一致度取得部は、認証対象者から受け入れたカードに対して、一致度の分布の出力を指示し、また、カードが出力した一致度の分布を取得する。
【0019】
この構成では、カードが一致度の分布を確認して出力するので、登録生体情報をカード内に記憶させておくことで、登録生体情報をカード外に出力しなくても一致度の分布を確認することができ、登録生体情報の安全性を高めることができる。
【0020】
この発明の自動取引処理装置は、上記構成の生体認証ユニットを備え、生体認証が成功した認証対象者の入力操作に応じて、取引を処理する。
【0021】
認証対象者は、生体認証を失敗しても、どのように対応すればよいかがわかり、載置台に載置する手指の状態を容易に変更できる。したがって、生体認証を失敗したとしても、生体認証を繰り返す回数が少なくて済み、入力操作に応じた取引を速やかに処理することができる。
【0022】
この発明の生体認証方法は、検知ステップと、出力ステップと、を備え、認証対象者の生体情報を読み取って、コンピュータが生体認証する。検知ステップでは、読取り部が読み取った、載置台に載置された認証対象者の手指の生体情報と、記憶媒体から読み出した、認証対象者の予め登録されている登録生体情報と、を比較し、これらの一致度の分布を検知する。また、出力ステップでは、検知ステップで検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布にかかる表示データを出力部に出力させる。
【0023】
したがって、認証対象者は、生体情報と登録生体情報との一致度の分布を確認することで、生体認証を失敗しても、どのように対応すればよいかがわかり、生体認証を繰り返す回数が少なくて済み、認証対象者に不信感をもたれないようにすることができる。また、記憶媒体をコンピュータが備える構成とすることで、コンピュータの外部に登録生体情報が出力されることがないので、登録生体情報の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、生体認証を失敗したとしても生体認証を繰り返す回数を少ない回数に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】現金自動預け払い機の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】ATMを含む生体認証処理システムの概略の構成図である。
【図3】生体認証ユニットの主要部の構成を示すブロック図である。
【図4】指静脈リーダのスキャナの断面図である。
【図5】ICカードが備えるICチップの構成を示すブロック図である。
【図6】ATMにおける生体情報の登録処理のフローチャートである。
【図7】取引選択の案内画面例である。
【図8】生体情報読み取り時の注意事項画面例である。
【図9】登録する指のセット案内画面例である。
【図10】指静脈リーダが読み取った生体情報画像の一例である。
【図11】生体情報読み取り画像をブロックに分けた例である。
【図12】生体情報の登録データ(テンプレート)例である。
【図13】生体情報の認証処理のフローチャートである。
【図14】ICチップの生体情報エリア内のデータ例である。
【図15】認証する指のセット案内画面例である。
【図16】一致度のブロック別の例である。
【図17】支援モード移行の案内画面例である。
【図18】生体認証支援モードのフローチャートである。
【図19】認証支援モード表示画面例である。
【図20】認証支援モード表示画面例である。
【図21】指の置き方の改善案内支援モード表示である(指が斜めの場合)。
【図22】指の置き方の改善案内支援モード表示である(指先が飛び出しの場合)。
【図23】指の置き方の改善案内支援モード表示である(指曲がりの場合)。
【図24】指の置き方の改善案内支援モード表示である(指押しつけの場合)。
【図25】認証支援モード表示画面例である。
【図26】認証する指のセット案内画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、図1〜図6を用いて本実施形態の基本構成を説明する。なお、本実施形態では、生体情報として指静脈情報を用いる例を説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態にかかる生体認証ユニットを備えた現金自動預け払い機(以下、ATMという。)のブロック図である。自動取引処理装置であるATM101は、顧客の指の指静脈画像(生体画像)を読み取る指静脈リーダ102と、認証対象者である顧客への取引案内を表示する表示部である(液晶)ディスプレイ103と、取引を行うため操作入力を受け付ける入力部であるタッチパネル104と、挿入されたキャッシュカードを処理するカード取扱い機構105と、紙幣入出金等の紙幣を処理する紙幣入出金機構106と、明細票の印字処理を行う明細票印字機構107と、通帳の印字処理を行う通帳印字機構108と、ATM101全体の動作を制御する主制御部110と、を備えている。
【0028】
ATM101において、指静脈リーダ102と、カード取扱い機構105と、主制御部110と、により、本発明の生体認証ユニット119は構成されている。
【0029】
なお、図1に示した生体認証ユニットは、ATM101の主制御部110を備える構成としたが、主制御部110とは別に制御部を設けて、この別の制御部が指静脈リーダ102と、カード取扱い機構105と、を制御する構成とすることも可能である。
【0030】
カード取扱い機構105は、顧客が挿入したICカードの磁気ストライプに対してデータの読み取りと書き込みを行う磁気ストライプリードライト部111と、ICカードのICチップに対してデータの読み取りと書き込みを行うICチップリードライト部112と、を備えている。
【0031】
主制御部110には、各処理を制御するCPU113と、各処理を実行するためのプログラムや取引情報等を記憶するメモリ114と、ホストコンピュータ203等とデータを送受信するための通信部115と、顧客との取引情報等を逐次記録する記録部116と、電源117と、が設けられている。
【0032】
図2は、ATMを含む金融機関での生体認証処理システムの構成図である。ATM101は、その正面上部に、ICカード201を持参する顧客202の顔画像を撮影する人物カメラ118を備え、顧客操作面の右側端部に設けられた手指の載置台に、読取り部である指静脈リーダ102を備えている。ATM101は、金融機関のネットワーク200を介して事務センターに設置されたホストコンピュータ203と接続されている。なお、ホストコンピュータ203は、顧客202の口座情報データやその他の情報を記憶しているデータベース204を備えている。
【0033】
図3は、ATMに搭載された生体認証ユニットのブロック図である。顧客202がATM101のカード取扱い機構105にICカード201を挿入すると、ICカード201に設けられたICチップ301は、その表面に設けられた接点(図示せず)を経由してICチップリードライト部112と交信する。生体認証時には、顧客202が指静脈リーダ102に指を置くと、スキャナ302が指静脈画像を読み取り、特徴抽出機能部303が指静脈画像から指静脈の特徴を抽出し、この指静脈の特徴に関するデータを認証データとして出力する。認証機能部304は、認証データ(生体情報)を、主制御部110とICチップリードライト部112を経由して、ICチップ301に出力する。ICチップ301は、一致度取得部に相当し、登録データと認証データとを比較・照合して認証処理を実施する。
【0034】
なお、指静脈リーダ102の登録機能部305は、読み取った指静脈画像の特徴を抽出した登録データ(テンプレート)を、ICチップ301に書込み登録する場合に使用される。
【0035】
このように、ICチップ301が認証処理を行うように構成することで、顧客202(認証対象者)毎に予め登録されている登録データをICチップ301の外部に出力しなくてよいので、登録データの安全性を高めることができる。なお、主制御部110(CPU113)が、ICチップ301から登録データを読み出して認証処理を行うように構成することも当然可能である。
【0036】
図4は、指静脈リーダのスキャナの断面図である。スキャナ302は、指載置台400の左右に設置されたLED401aと401bから、顧客202の指402に光を照射する。指402の静脈画像は、鏡404で反射され、レンズ群405を経由してCCD(二次元画像撮像素子)403上に結像し、CCD403に読み取られる。
【0037】
図5は、ICカードに設けられたICチップの構成を示すブロック図である。
【0038】
携帯記憶媒体であるICカード201は、CPU501、通信部502、生体AP(アプリケーションプログラム)503、生体情報エリア504、銀行AP506、口座情報データ507、及びその他AP508を備えている。CPU501は、ICチップ301全体を制御する。通信部502は、図3に示したカード取り扱い機構105のICチップリードライト部112と通信する。生体AP(アプリケーションプログラム)503は、生体情報エリア504内の登録データ(テンプレート)505の登録や、認証処理時に顧客から読み取られた認証データを登録データ(テンプレート)505と照合する生体認証処理の一部を担当(実行)するための生体認証プログラムである。銀行AP506は、口座情報データ507の読み出しを担当(実行)するためのプログラムである。また、ICチップ301には、金融機関別にクレジットなどの処理を行うために、その他AP508が組み込まれることがある。
【0039】
生体情報エリア504は、複数の領域に区分けされており、利用者の生体情報(登録生体情報)である登録データ505、ATM101での取引時に生体認証処理を行った回数の累計である生体認証処理回数509、生体認証を失敗した回数の累計である生体認証失敗回数510、前回取引での生体認証の結果である前回の認証結果511、前回取引時において一致度が低くかった要因や改善案の履歴である前回の改善履歴512等が記録される。
【0040】
次に、ATM101における生体認証処理の具体的な処理を説明する。
【0041】
生体認証処理による取引を開始するには、顧客202が金融機関に生体情報の登録を申し込む必要がある。生体情報の登録方法は、(1)顧客202が携帯するICカード201等の他の携帯電子媒体に生体情報を登録しておく場合と、(2)金融機関のホストコンピュータ203のデータベース204等に顧客202の生体情報を登録する場合と、の2つがある。以下の説明では、上記(1)顧客202の携帯電子媒体であるICカード201に生体情報を登録する場合を説明する。
【0042】
金融機関では、顧客202からのカード発行依頼を受け付けると、ICカード201の磁気ストライプやICチップ301に、口座情報データ507として金融機関番号・支店番号・顧客の口座番号等を書込んだ上でICカード201を発行し、顧客202に郵送する。顧客202は、受け取ったICカード201を金融機関に持参して、金融機関でICカード201に生体情報を登録する。
【0043】
生体情報の登録方法は2通りある。
【0044】
1つの方法は、係員の操作と指示に従って、生体情報登録装置が顧客202の指静脈画像を読み取り、指静脈画像を特徴抽出して登録データ(テンプレート)505を作成し、顧客202が持参したICカード201のICチップ301に登録データ(テンプレート)505を登録する方法である。
【0045】
もう1つの方法は、顧客202自身がATM101を操作し、ATM101のガイダンスに従って顧客202が指を指静脈リーダ102に置くと、指静脈リーダ102が顧客202の指静脈画像を読み取り、指静脈画像の特徴を抽出して登録データ(テンプレート)505を作成し、顧客202が持参したICカード201のICチップ301に登録データ(テンプレート)505を登録する方法である。
【0046】
上記2つの登録方法の手順は、基本的には同じなので、以下では、顧客202自身がATM101を使用して生体情報を登録する場合を、図6に基づいて説明する。図6は、ATMによりICカードに生体情報を登録する処理フローである。
【0047】
ATM101の主制御部110のCPU113(以下、主制御部110と記載する。)は、顧客202の接近を不図示のセンサが検知すると、いらっしゃいませという内容の応対画面をディスプレイ103に表示させた後、図7に示すような取引科目を選択する取引選択画面701をディスプレイ103に表示させる。顧客202は、生体情報を登録するために、ディスプレイ103に表示された取引選択画面701から「生体情報登録702」を選択した後、カード取扱い機構105にICカード201を挿入する。
【0048】
主制御部110は、取引選択画面701から生体情報登録702が選択され、カード取扱い機構105にICカード201が挿入されたことを検出すると(S601:Y)、磁気ストライプリードライト部111にICカードの201の磁気ストライプの情報を読み取らせる。そして、ICチップ301搭載有りの情報が記録されていると、これに基づいてICチップリードライト部112に、ICチップ301に記録された口座情報データ507を読み取らせる。また、主制御部110は、ICカード201がカード取扱い機構105に挿入されたことを検知したタイミングで、人物カメラ118に顧客202の顔画像を撮影させ、記録部116に顧客202の顔画像を記憶させる(S602)。
【0049】
次に、主制御部110は、ICカード201を持参した顧客202が本人であることを確認するために、暗証番号の入力画面をディスプレイ103に表示して、顧客202に対して暗証番号を入力するよう案内を行う(S603、S604:N)。主制御部110は、顧客202がタッチパネル104から暗証番号が入力されたことを検出すると(ステップS604:Y)、通信部115により、入力された暗証番号を事務センターのホストコンピュータ203に送信する。ホストコンピュータ203は、事前登録された暗証番号と一致するか確認して、結果を返信する。
【0050】
主制御部110は、「暗証番号が一致」の確認結果を通信部115で受信すると、ATM101は顧客202を本人と判断して(S605)、指静脈を高品質で読み取れるように、図8に示す指静脈読み取り時の全般的な注意事項711をディスプレイ103に表示させる(ステップS606)。続いて、主制御部110は、図9に示すように、登録する指402を指静脈リーダ102に置くように案内する案内画面721をディスプレイ103に表示させる(ステップS607)。案内画面721に従って、顧客202の指402が指静脈リーダ102に置かれると、主制御部110は、指静脈リーダ102に、置かれた指402の静脈画像を複数回読み取らせる(ステップS608)。図10には、ステップS608において指静脈リーダ102が読み取った指402の指静脈画像1000の一例を示す。
【0051】
主制御部110は、ステップ608で、読み取られた指静脈画像1000に対して、指静脈リーダ102に読み取らせた複数の指静脈画像1000間で画像が安定しているか(指が移動していないか)を確認し、画像が不安定なら(S609:N)、「指が静止していない(震えている)」と推定する(S610)。そして、主制御部110は、指が静止していないこと(震えていること)を警告する警告文と、指の置き方や位置の改善方法等のガイダンスを、ディスプレイ103に表示させる(S619)。そして、ステップS607以降の処理を再度行う。
【0052】
一方、主制御部110は、ステップS608において、複数の指静脈画像1000が安定しており、指が静止していると判断すると(S609:Y)、複数の指静脈画像1000間で平均化処理を行って、ノイズ分を低減する(ステップS611)。続いて、主制御部110は、指が全域に亘って鮮明であるか確認し、不鮮明なら(S612:N)、「指が浮いている」と推定する(ステップS613)。続いて、主制御部110は、指が浮いていることを警告する警告文と、指の置き方や位置の改善方法等のガイダンスを、ディスプレイ103に表示させる(S619)。そして、ステップS607以降の処理を再度行う。
【0053】
主制御部110は、ステップS612において、指静脈画像1000が全域に亘って閾値よりも鮮明であれば(S612:Y)、更に、指静脈の太さや連続性が適切であるか確認する(ステップS614)。主制御部110は、血管が細いようなら(S614:N)、「指を押し付けている」と推定する(ステップS615)。続いて、主制御部110は、指を押し付けていることを警告する警告文と、指の置き方や位置の改善方法等のガイダンスを、ディスプレイ103に表示させる(S619)。そして、ステップS607以降の処理を再度行う。
【0054】
主制御部110は、ステップS614で、指静脈の太さや連続性が閾値に対して適切であると判断すると(S614:Y)、指静脈画像1000の中心軸を検出する(ステップS616)。主制御部110は、中心軸の傾きが許容値以内であることを確認し(ステップ617)、許容値以上なら(S617:N)、「指が傾いている」と推定する(ステップS618)。続いて、主制御部110は、指が傾いていることを警告する警告文と、指の置き方や位置の改善方法等のガイダンスを、ディスプレイ103に表示させる(S619)。そして、ステップS607以降の処理を再度行う。
【0055】
主制御部110は、中心軸の傾きが許容値以内であり(S617:Y)、ステップS609〜S617における指静脈画像1000の質的評価結果から、閾値以上の所定の高品質が確保されていると判断された場合、読み取った指静脈画像1000から特徴抽出を行う(ステップS620)。そして、図11に示すように、読み取った指静脈画像1000のエリアを、上下方向に指先・中央・根元に3分割し、左右方向に左・中・右に3分割して、と計9個のブロック1001〜1009に分割する。そして、各ブロックから分けた上で、特徴抽出された特徴点を抽出する。特徴点は、例えば、図12に示す登録データ505の表551に示すように、指静脈画像1000の根元で中央付近の分岐点を基準点として、端点・交差点・屈曲点等に種類分けし、位置座標・距離・方向といった情報を、各ブロック別に仮登録データ(テンプレート)として作成して、ICカードのICメモリに記録する。し、指静脈リーダ102内のメモリ(不図示)に一時記憶しておく(ステップS621)。なお、図12で、抽出された特徴点の数は一定の値ではなく、顧客毎・ブロック毎に異なっている。なお、指静脈画像1000を分割するブロック数は、任意の数に分割すればよい。
【0056】
主制御部110は、一時記憶された仮登録データ(テンプレート)が認証処理時に正常に使用できるかを動作確認するため、仮登録した指402を指静脈リーダ102にもう一度置くように案内する表示をディスプレイ103に表示させる(ステップS622)。主制御部110は、指静脈リーダ102により、置かれた指402の指静脈画像1000を再度読み取って特徴の抽出を行う。そして、主制御部110は、抽出した特徴点が指静脈リーダ102内のメモリに一時記憶してある仮登録データ(テンプレート)と、どの程度一致するか順次照合する(ステップS623)。
【0057】
主制御部110は、ステップS623での照合結果である一致度を確認し(ステップS624)、一致度が閾値未満で不足する(照合NG)場合は(S624:N)、登録処理をやり直すため、再度ステップS607以降の処理を行う。一方、主制御部110は、ステップS624で、一致度が閾所定値以上で照合OKのとなった場合に(照合OK)は(S624:Y)、指静脈リーダ102内のメモリに一時記憶してある仮登録データ(テンプレート)をICチップ301の登録データ(テンプレート)505に書き込んで正式に登録し(ステップS625)、生体情報登録済のICカード201として発行する(ステップS626)。すなわち、主制御部110は、カード取扱い機構105に、生体情報が登録されたICカード201を排出させて、処理を終了する。
【0058】
次に、生体情報が登録されたICカード201を使用して、顧客202が生体認証対応のATM101で生体認証を行ってから「引出し取引」を行う場合について、説明する。図13は、ATMにより生体認証後に「引出し取引」を行う場合の処理フローである。
【0059】
以下の説明では、主制御部110のCPU113と、ICカード201のCPU501が、処理を分担する例を説明する。
【0060】
主制御部110は、顧客202の接近を不図示のセンサで検知すると、図7に示す取引科目を選択する取引選択画面701をディスプレイ103に表示させる。主制御部110は、顧客202が、取引選択画面701から引出し704を選択して、カード取扱い機構105にICカード201を挿入したことを検出すると(S1300:Y)、磁気ストライプリードライト部111にICカード201の磁気ストライプに記録されたICチップ301搭載有りの情報を読み取り、これに基づいてICチップリードライト部112に、ICチップ301に記録された口座情報データ507を読み取らせる。また、主制御部110は、ICカード201がカード取扱い機構105に挿入されたことを検知したタイミングで、人物カメラ118に顧客202の顔画像を撮影させ、記録部116に顧客202の顔画像を記憶させる(S1301)。
【0061】
主制御部110は、ICチップリードライト部112に読み取られたICチップ301の生体情報エリア504の生体認証処理回数509や前回の認証結果511を読み取らせる。
【0062】
図14には、生体情報エリア504に記憶された前回の認証結果511の詳細を示す。生体情報エリア504には前回の認証結果511として、前回の生体認証時において、何の問題も発生せずに生体認証が成功した場合には「0」、前回の生体認証時において、一致度不足となったが認証処理をリトライしたことにより生体認証が成功した場合には「1」、が記録されている。また、前回の生体認証時において、一致度不足となったがお困り支援モードに従って認証処理したことにより生体認証が成功した場合には「2」、前回の生体認証時において、生体認証が失敗したまま終了した場合には「3」が記録されている。これより、主制御部110は、前回の認証結果511が、「0」以外の「1」〜「3」の場合には生体認証に不慣れな顧客202と判断できる。
【0063】
また、主制御部110は、生体認証処理回数509が「0」の場合、初めて生体認証を行う顧客202と判断できる。
【0064】
主制御部110は、生体認証処理回数509や前回の認証結果511を読み取った結果、顧客202が初めて生体認証を行うか、または生体認証に不慣れであると判断できた場合は(S1302:Y)、図8に示すような指静脈読み取り時の全般的な注意事項711を表示した後(S1303)、図15に示すような認証するために登録している指402を指静脈リーダ102に置くように案内する案内画面731をディスプレイ103に表示させる(S1304、S1305:N)。
【0065】
一方、主制御部110は、顧客202が生体認証に慣れている、または複数回行ったことがあると判断できた場合は(S1302:N)、注意事項711を表示せずに、案内画面731をディスプレイ103に表示させる(S1304、S1305:N)。このとき、後述のように、ICチップ301に前回の改善履歴512が記録されている場合には、これを読み出してディスプレイ103に表示させる。
【0066】
主制御部110は、案内画面731に従って、顧客202が指402を指静脈リーダ102に置いたことを検出すると(S1305:Y)、指静脈リーダ102に、置かれた指402の指静脈画像1000を複数回読み取らせて、読み取った指静脈画像1000に対して特徴の抽出を行う(S1306)。なお、読取り部12は、一定時間毎(例えば、0.1秒毎)に指静脈画像を読み取る。主制御部110は、抽出された特徴点から、図12に示す登録データ(テンプレート)505と同様に、各ブロック別に認証データを作成し、ICチップリードライト部112により、ICチップ301に送信させる。
【0067】
ICチップ301のCPU501は、認証データを通信部502で受信すると、生体AP503を実行する。そして、CPU501は、生体情報エリア504の登録データ505から図12に示すような登録データ(テンプレート)505を読み出して、通信部502が出力した認証データが登録データ(テンプレート)505と、どの程度一致するかを順次比較・照合していく(S1307)。そして、CPU501は、比較・照合結果から、一致度の分布を検知する処理として、図16に示すように、各ブロック別の一致度A0〜A8、及び全域での一致度ATを算出する(S1308)。ここで、全域での一致度ATは、AT=全域の認証データ/全域の登録データ である。
【0068】
CPU501は、全域での一致度ATが所定の値(例えば、80%)以上か否かを確認し、所定の値(80%)以上なら(S1309:Y)、生体認証はOKである(生体認証ができた)と判定し、その旨を伝える信号を、通信部502を介して主制御部110に出力する。なお、通信部502は、本発明のコンピュータの出力部に相当する。
【0069】
主制御部110は、この場合には以下のとおり取引処理を行う。すなわち、主制御部110は、暗証番号の入力操作を受け付けると事務センターのホストコンピュータ203に対して暗証番号の確認を行い(S1321)、続いて引き出し金額の入力指示に従って引き出し金額の入力があると(S1322)、ホストコンピュータ203と交信して、主制御部110は、暗証番号・引き出し金額を照会する(S1323)。主制御部110は、問題がなければ(S1323:Y)、出金処理を行い(S1324)、ICカードを返却して(S1325)、処理を終了する。また、主制御部110は、暗証番号・引き出し金額に問題があれば(S1323:N)、ステップS1321以降の処理を行う。
【0070】
一方、CPU501は、ステップS1309において、全域での一致度ATが所定の値(80%)未満なら、認証処理を開始してから5秒経過したか確認する。CPU501は、5秒が経過していなければ(S1310:N)、主制御部110とともにステップS1306以降の処理を行う。すなわち、主制御部110は、指静脈リーダ102に置かれた指402の指静脈画像1000を再度複数回読み取らせて認証データを生成してICチップ301に出力し、CPU501は、認証データと登録データを照合して、一致度を算出する。
【0071】
また、CPU501は、ステップS1310において、全域での一致度ATが所定の値(80%)未満のまま、認証処理を開始してから5秒経過していたら(S1310:Y)、全域での一致度ATの情報を通信部502に主制御部110へ出力させる。
【0072】
主制御部110は、受信した全域での一致度ATが50%未満なら(S1311:N)、例えば顧客202のミスで中指を登録したのに未登録の人差し指を置くといったこともあるので、「登録している指とは違っていませんか。確認願います」という警告をディスプレイ103に表示させる(S1312)。主制御部110は、顧客202が指静脈リーダ102に置いていた指402を離したのを確認して(S1313:Y)、ステップS1305に戻り、顧客202が指402を再度置くのを待つ。
【0073】
一方、主制御部110は、受信した全域での一致度ATが50%以上(50〜80%)なら(S1311:Y)、指静脈画像1000が高品質で読み取れるように、図8に示す、指静脈読み取り時の全般的な注意事項711を再度ディスプレイ103に表示させた後(S1314)、図17に示すように、顧客202に対して指静脈読み取りでの一致度の改善を支援する「お困り支援モード」に移行するか否かを選択する画面741を表示させる(S1315)。顧客202が「取消し」ボタン743を押下すると(S1316:N)、「生体認証できませんでした(認証NG)」と表示して(S1317)、生体認証できなかった回数が3回未満なら(S1318:N)、ステップS1306以降の処理を行う。また、主制御部110は、生体認証できなかった回数が3回目であれば(S1318:Y)、認証を3回失敗したので取引を中止する旨をディスプレイ103に表示して(S1319)、ICカード201を顧客202に返却し(S1325)、処理を終了する。
【0074】
主制御部110は、ステップS1316で、「取消し」ボタン743が押下されず、「移行」ボタン742が押下された場合には(S1316:Y)、図18に示す「お困り支援モード」の処理に移行する(S1320)。
【0075】
図18に示すように、主制御部110は、「お困り支援モード」を行う際には、ATM101のディスプレイ103に、図19に示すグラフ751のように、全域での一致度ATをグラフとして、リアルタイムに常時表示する(S1800)。図19上段のグラフ751には、一致度を数値表示しているが、この表示に限るものではなく、定性的な表現や色表示をして、具体的数値は表示しないようにしてもよい。例えば、一致度が大幅に不足の場合は「橙色」、照合不足の場合は「黄色」、一致の場合は「緑色」、及びよく一致の場合は「青色」といった表示でもよい。
【0076】
主制御部110は、全域での一致度ATを確認して、50〜65%なら一致度が大幅に不足しているので(S1801:N)、認証処理を開始してから1回目であるか確認し、1回目なら(S1802:Y)、認証画像にゴーストが発生しているかを確認する。指402に汚れが付着している場合、指402に絆創膏を貼付している場合、または指402が角質化している場合には、その部分が光を透過しないので、指静脈画像1000にはその部分が黒くゴーストとして現れる。そのため、全域での一致度ATが低下する。また、指402が動いている場合は、複数回の指静脈画像1000を平均化処理するため、指静脈画像1000全体が不鮮明になり、全域の一致度ATが低下する。
【0077】
主制御部110は、認証画像にゴーストが発生している場合には(S1803:Y)、指402の状態を確認する案内表示をディスプレイ103に表示させる(S1804)。また、ゴーストは発生していないが、画像が安定せず指402が動いているようなら(S1803:N)、もう一方の手を添えて静止させるように案内する表示をディスプレイ103に表示させる(S1805)。
【0078】
主制御部110は、指402が離された場合は、顧客202が指静脈リーダ102に指402を再び置くのを待ってから(S1806:Y)、置かれた指402の指静脈画像1000を再度複数回読み取る(S1807)。
【0079】
一方、主制御部110は、一致度が大幅に不足しているのが(S1801:N)、認証処理を開始してから1回目ではなく認証処理を複数回行っている場合には(S1802:N)、お困り支援モードを開始してから15秒が経過したかを確認する(S1808:N)。主制御部110、お困り支援モードを開始してから15秒が経過しても全域の一致度ATが65%以上に改善しなければ(S1808:Y)、「生体認証できませんでした(認証NG)」と表示して、取引を中止する(S1809)。そして、ICカード201を顧客202に返却して(S1326)、処理を終了する。これは不審者によるアタックを防止するためである。
【0080】
一方、データ生成部である主制御部110は、ステップS1808において、お困り支援モードを開始してから15秒が経過していないとき(S1808:N)、または、ステップS1801において、全域での一致度ATが65〜80%になったときには(S1801:Y)、図20の下段に示すブロック図764のように、一致度が不足する部分を表示するブロック図(一致度の分布に係る表示データ)をリアルタイムに常時表示する(S1810)。このブロック図は、図16に示すように、算出された各ブロック1001〜1009のそれぞれの一致度A0〜A8を、一致度が不足するほど濃くなるように濃淡表示で表示するものである。
【0081】
また、主制御部110は、出力部に相当し、図20の画面761に示したように、一致度不足の推定要因と指402の置き方・位置(セット方法)の改善案(載置台に対する手指の載置状態の変更指示を案内する表示データ)をディスプレイ103に出力して、イラスト付のテロップで逐次表示させる(S1811)。これにより、顧客202は、「指402の置き方・位置(セット方法)について、自分の悪い癖に気付き、「改善案」に基づいて改善行動を起こし易くなる。
【0082】
なお、図20に示した画面761において、読み取った指静脈画像1000をそのまま表示するのではなく、濃淡で示すブロック図764として表示するのは、不審者による指静脈データの悪用を防止するためである。
【0083】
主制御部110は、上記のようにイラスト付のテロップを逐次表示しながら、指静脈リーダ102は置かれている指402の指静脈画像1000を複数回読み取る(S1807)。主制御部110は、読み取った指静脈画像1000に対して特徴抽出を行い、抽出された特徴点から、各ブロック別に認証データを作成し、ICチップ301に出力する(S1812)。
【0084】
CPU501は、ICチップ301の生体情報エリア504から図12に示すような登録データ(テンプレート)505を読み出して(S1813)、主制御部110が出力した認証データが登録データ(テンプレート)505と、どの程度一致するかを順次照合していく(S1814)。照合結果から、各ブロック別の一致度A0〜A8、及び全域での一致度ATを算出する(S1815)。そして、CPU501は、全域での一致度ATが所定の値(80%)以上になったかを確認し、確認した一致度ATを主制御部110に出力する(S1816)。
【0085】
「お困り支援モード」では、置かれている指402の指静脈画像1000読み取りや認証処理は繰り返し継続して行っており、主制御部110は、CPU501が出力した全域での一致度ATが所定の値(80%)未満なら(S1816:N)、お困り支援モードを開始してから60秒経過したか確認する。主制御部110は、60秒経過していなければ(S1817:N)、ステップS1800に戻り、指402の置き方・位置(セット方法)が変化するのに伴って、図21〜図24に示す画面771、画面781、画面791、及び画面801のように、一致度が悪い位置を示すブロック図や推定要因と改善案も、逐次対応する最新情報に更新して表示される。
【0086】
図21に示したように、指が斜めになっている場合には、ブロック1001とブロック1009の一致度が低下する。この場合、指をまっすぐにして中央に位置するように改善案を表示する。
【0087】
図22に示したように、指静脈リーダ102のスキャナ302から指先が飛び出している場合には、ブロック1007〜1009の一致度が低下する。この場合、指を少し下げるように改善案を表示する。
【0088】
図23に示すように、指402が指静脈リーダ102に対して浮くと、スキャナ302のカメラ焦点がずれて、指静脈画像1000は不鮮明になり、ブロック1004〜1006の一致度が低下する。この場合、指をまっすぐに伸ばすように改善案を表示する。
【0089】
図24に示すように、指402を押し付けたり、凹に曲げていたり(反らしていたり)すると、血管が圧迫されて、血液が流れにくくなり、指静脈画像1000は細くなり、ブロック1001〜1003の一致度が低下する。この場合、指を押しつけずに軽く持ち上げるように改善案を表示する。
【0090】
指402の置き方・位置(セット方法)の一致度不足の推定要因は、図25に示す画面811の上段に示すように、時間経過する一致度のグラフ812上に、変化する度にテロップ818〜820として付加していく。もし、テロップ818〜820に従って指402の置き方・位置(セット方法)を変更したのに、一致度のグラフが降下すれば、過度の変更だったのに気付いて直ぐに指402の置き方・位置(セット方法)を修正して、一致度のグラフが上昇すれば、修正が正しかったことを、顧客202は確認できる。
【0091】
また、指402の置き方・位置(セット方法)が変化する度に、表示される一致度不足の推定要因815や改善案816は変更されるが、セット方法の変化途中に表示されると、ちらつきとなることがある。そこで、一致度不足の推定要因815や改善案816が変更された後、複数回連続するのを確認した上で、表示するようにする。この結果、セット方法の変化途中の表示ちらつきは抑止される。
【0092】
主制御部110は、ステップS1817において60秒が経過しても全域の一致度ATが80%以上にならなければ(S1817:Y)、「窓口の係員に申し出て、指の置き方・位置(セット方法)の再学習/確認や指静脈の再登録をお勧めします」という内容のガイダンスを表示した後(S1818)、「生体認証できませんでした(認証NG)」と表示して、取引を中止する(S1819)。そして、ICカード201を顧客202に返却して、処理を終了する。
【0093】
主制御部110は、ステップS1816で、全域での一致度ATが所定の値(80%)以上になると、生体認証はOKとなる(S1816:Y)。認証OKとなっても、顧客202は最も一致度が高くなる指402の置き方・位置(セット方法)を確認したい場合もある。そのため、主制御部110は、指402が離されるまで、お困り支援モードでの処理は継続して、図25に示すように、一致度が悪い位置を示すブロック図も、逐次更新し、指402が離されるのを待つ(S1820:N)。主制御部110は、指402が離されると(S1820:Y)、一致度不足に対応した一連の指402の置き方・位置(セット方法)の推定要因を、図5に示したICチップ301における生体情報エリア504の「前回の改善履歴512」に記憶させる(S1821)。さらに、主制御部110は、図13に基づいて説明したステップS1321〜ステップS1326の処理(取引処理)を行い、処理を終了する。
【0094】
主制御部110は、次回取引時には、顧客202が生体認証対応のATM101で生体認証を行う際に、ICチップ301の読み取りで前回取引の認証結果511から、「お困り支援モード」に移行していることが分かれば、ICチップ301から前回の改善履歴512を読み出す。そして、主制御部110は、ATM101が登録している指402を指静脈リーダ102に置くようにディスプレイ103に表示する時、例えば、図13に示したステップS1304や、図18に示したステップS1801において、図26に示すように、前回に指摘された推定要因も合せて表示する。このように、今回の取引時に、前回取引時の改善履歴を提示することで、顧客202は、生体認証が成功した指402の置き方・位置(セット方法)を思い出して、対応できるので、生体認証の失敗は防止されて、取引取り消しになるのを防止乃至抑制することができる。なお、今回取引の生体認証で「お困り支援モード」に移行していなければ、ICチップ301の前回の改善履歴512は消去してもよいし、消去せずに次回の取引時に「お困り支援モード」に移行される。
【0095】
以上のように、本発明の実施形態に係る生体認証ユニット及び自動取引処理装置では、生体認証の失敗を事前に防止するとともに、一致度合いが所定の判定値に達しなくても、直ぐ認証失敗とはしないので、顧客に生体認証に対する不信感を持たれることはない。顧客は、一致度が悪い部分とその推定要因と改善案を分かり易く表示されるので、これに基づいて指の置き方・位置(セット方法)に対して改善行動を起こすと、直ぐ改善結果が表示されることで、生体情報の読み取りや画像品質の改善に対する理解を深め、登録時の指の置き方・位置(セット方法)を再現できるようになり、以降の取引時には、生体認証の成功率を大幅に高めることが可能となる。
【0096】
以上、本実施形態ではATM101に実装された指静脈認証装置での処理を、図面を用いて詳細に説明したが、生体情報は指静脈に限定したものではなく、手のひらの静脈、指紋、掌紋といった他の生体情報でも良い。また、生体情報の登録は、ICカード201に搭載されたICチップ301で説明したが、携帯端末、例えば携帯電話に生体情報を登録しておき、ATM101のICチップリードライト部112が、接触式だけでなく非接触式も対応可能としておけば、携帯電話に登録された生体情報を無線で読み取ることにより、同様の処理を行うことができる。また、生体情報を金融機関のホストコンピュータ203に登録する場合も同様である。さらに、本実施形態では、ATM101から顧客202への指示は、ATM101のディスプレイ103や音声ガイダンスを使用して説明したが、生体情報登録装置や生体認証付パソコン、あるいは生体情報認証装置自身に液晶ディスプレイ他が実装していれば、顧客202に指示する構成を実現できる。したがって、本発明はATM101に限定したものではなく、生体情報登録装置や生体認証付パソコン、生体情報認証装置を含む一般の情報処理装置、自動機にも適用できる。この場合、自動機を利用する顧客202の生体情報だけでなく、その自動機を操作する操作者(利用者)の生体情報に対しても、自動機は同様の生体認証を対応することができる。
【0097】
なお、上記の説明では、主制御部110のCPU113と、ICカード201のCPU501が、処理を分担する例を説明したが、これに限らず、CPU501が行う処理を、主制御部110のCPU113が行うようにすることも可能である。この場合、CPU113が、ICチップ301から登録生体情報を読み出して、この登録生体情報と、指静脈リーダ102が読み取った生体情報と、を比較して一致度を算出(検知)するように構成するとよい。
【0098】
本実施形態によれば、認証処理時に読み取った生体情報画像の一致度が不足する場合、顧客が登録時と異なる生体の置き方・位置(セット方法)に気付いて改善行動を起こすことにより、認証成功率を向上させることができる。また、生体情報の読み取りに対する理解を深め、生体認証装置を含む自動取引装置、あるいは生体認証機能を有する装置への信頼度を高め、装置の安定した稼働を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0099】
101…ATM 102…指静脈リーダ 103…ディスプレイ 104…タッチパネル 105…カード取扱い機構 106…紙幣入出金機構 107…明細票印字機構 108…通帳印字機構 110…主制御部 111…磁気ストライプリードライト部 112…ICチップリードライト部 113…CPU 114…メモリ 115…通信部 116…記録部 118…人物カメラ 119…生体認証ユニット 200…ネットワーク 201…ICカード 202…顧客 203…ホストコンピュータ 301…ICチップ 302…スキャナ 303…特徴抽出機能部 304…認証機能部 305…登録機能部 1000…指静脈画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
認証対象者の生体情報を読み取って、生体認証する生体認証ユニットであって、
載置台に載置された認証対象者の手指から生体情報を読み取る読取り部と、
前記読取り部が読み取った生体情報と、予め登録されている認証対象者の登録生体情報と、を比較した一致度の分布を取得する一致度取得部と、
前記一致度取得部が取得した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布にかかる表示データを出力する出力部と、
を備えた生体認証ユニット。
【請求項2】
前記出力部は、前記一致度取得部が検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布に基づいて生成された、前記載置台に対する手指の載置状態の変更指示を案内する表示データも加えて出力する、請求項1に記載の生体認証ユニット。
【請求項3】
前記生体情報と登録生体情報との一致度の分布にかかる表示データは、生体情報の読み取り領域を複数のブロックに分割したデータである、請求項1または2に記載の生体認証ユニット。
【請求項4】
前記一致度取得部は、前記一致度の分布を一定時間毎に取得し、
前記出力部は、前記一致度の分布における一定時間毎の変化に応じて、前記載置台に対する手指の載置状態の変更指示を案内する表示データを出力する、請求項2または3に記載の生体認証ユニット。
【請求項5】
前記一致度取得部が検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布に基づき、一致度が低い領域が発生する要因を推定し、この要因を案内する表示データを生成して、前記出力部に出力させ、
また、認証対象者の生体認証が成功したときには、それまでに推定した前記要因を案内するデータを出力して、認証対象者から受け入れたカードに前記要因を案内する表示データを記録するように指示し、
さらに、次に認証対象者からカードを受け入れたときには、該カードに記録された前記要因を案内する表示データを読み出すように指示し、前記カードから読み出された表示データを前記出力部に出力させるデータ生成部を備えた、請求項2乃至4のいずれかに記載の生体認証ユニット。
【請求項6】
前記一致度取得部は、
前記認証対象者から受け入れたカードに対して、前記一致度の分布の出力を指示し、また、前記カードが出力した一致度の分布を取得する、請求項1乃至5のいずれかに記載の生体認証ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の生体認証ユニットを備え、前記生体認証ユニットは、生体認証ができた認証対象者の入力操作に応じて取引を処理する自動取引処理装置。
【請求項8】
認証対象者の生体情報を読み取って、コンピュータが生体認証する生体認証方法であって、
読取り部が読み取った、載置台に載置された認証対象者の手指の生体情報と、記憶媒体から読み出した、認証対象者の予め登録されている登録生体情報と、を比較し、これらの一致度の分布を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布を出力部に出力させる出力ステップと、
を備えた生体認証方法。
【請求項9】
コンピュータに、
読取り部が読み取った、載置台に載置された認証対象者の手指の生体情報と、記憶媒体から読み出した、認証対象者の予め登録されている登録生体情報と、を比較し、これらの一致度の分布を検知する検知ステップ、
前記検知ステップで検知した、生体情報と登録生体情報との一致度の分布を出力部に出力させる出力ステップ、
を実行させるための生体認証プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−103900(P2012−103900A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251797(P2010−251797)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】