説明

画像形成装置

【課題】潜像担持体上のトナーが現像手段に入り込んでしまうのを抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像剤担持体が潜像担持体と対向する現像領域において、潜像担持体表面法線方向外向きの電場を、2×10[V/m]以下にする。これにより、実用可能範囲で想定されるあらゆる潜像担持体上のトナー付着状態で、潜像担持体上のトナーが潜像担持体から引き剥がされて現像手段に入り込んでしまうのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、印刷機等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、次のようなフルカラー画像形成装置が記載されている。すなわち、潜像担持体の周囲に、黒用の帯電器と現像装置、イエロー用の帯電器と現像装置、シアン用の帯電器と現像装置、マゼンタ用の帯電器と現像装置が配置されている。潜像担持体は、まず、黒用帯電器により一様に帯電されて露光手段により、ブラックの画像データで変調された光ビームによって露光されることで静電潜像が形成され、この静電潜像が黒用現像器により現像されてブラックのトナー像となる。次いで、イエロー用帯電器により潜像担持体のブラックトナー像が担持された表面を一様に帯電して露光手段により潜像潜像を形成する。次いで、この静電潜像をイエロー用現像器により現像して上記ブラックのトナー像と重なるイエローのトナー像を形成する。次に、シアン用帯電器で潜像担持体上のイエローおよびブラックトナー像が重畳された表面を一様帯電して、露光手段で潜像を形成し、シアン用現像器でこの潜像を現像して、像担持体上にブラック、イエロー、シアンの重ね合わせトナー像を形成する。そして、最後に、上述と同様にして、潜像担持体上のブラック、イエロー、シアンの重ね合わせトナー像上に形成された、潜像をマゼンタ用現像器で現像して、潜像担持体上に、フルカラートナー像を形成する。この潜像担持体上に形成したフルカラートナー像を、記録材に転写するか、中間転写体に中間転写して記録材に転写するかして、記録材にフルカラー画像を形成するものである。
【0003】
上述のフルカラー画像形成装置の現像装置としては、前段で潜像担持体上に現像されたトナーを後段の帯電工程および現像工程で破壊しないように、非接触タイプの帯電器および現像装置が用いられる。この非接触タイプの現像装置としては、次のようなものが用いられる。すなわち、周方向に所定のピッチで配設された複数の電極を具備する筒状の現像剤担持体を有しており、これら電極は、互いに隣り合う2つの電極からなる電極対が繰り返し配設されている。それぞれの電極対における2つの電極の間には交番電界が形成される。すると、電極対における一方の電極の上に位置していたトナーが浮上して他方の電極の上に着地したり、他方の電極の上から浮上して一方の電極の上に着地したりする。そして、このようにしてホッピングを繰り返しながら、現像領域まで搬送される。現像領域では、潜像担持体上の潜像の近傍まで浮上したトナーが、現像剤担持体の電極に向けて下降することなく、潜像による電界に引かれて飛翔し潜像に付着する。かかる構成では、現像剤担持体や磁性キャリアなどが像担持体に接触することなく、潜像担持体上の潜像を現像することができる。
【0004】
【特許文献1】特許3486115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の非接触タイプの現像装置を用いた場合、潜像担持体とトナー担持体との間には交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。
【0006】
特に、記録材に転写する前のトナー像を加熱したり、トナー像に溶媒を塗布したりして、トナーを軟化させて、記録材にトナー像を粘着転写するとともに定着も同時に行う転写定着方式を採用した画像形成装置の場合、潜像担持体上のトナーが現像装置に入り込んでしまうことで、致命的な問題が生じてしまう。これは、加熱による転写定着方式においては、熱が潜像担持体まで伝播して、潜像担持体上のトナーが軟化点近傍またはガラス転移点近傍の温度まで加熱される場合がある。このような軟化点近傍またはガラス転移点近傍の温度まで加熱されたトナーが現像装置に入り込んでしまうと、この加熱されたトナーに現像装置内のトナーが付着して、凝集塊ができ、現像能力が低下して画質低下を招くおそれがある。また、溶媒による転写定着方式においては、潜像担持体に溶媒が付着し、潜像担持体上のトナーに溶媒が付着する場合がある。このような溶媒が付着したトナーが現像装置に入り込むと、凝集塊ができ、現像能力が低下して、画質低下を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、潜像担持体上のトナーが現像手段に入り込んでしまうのを抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面移動する潜像担持体と、各色に対応した潜像を同一の潜像担持体の表面に形成する潜像形成手段と、前記潜像担持体表面に対して所定のギャップを有して配置され表面に現像剤を担持する現像剤担持体を有し、該現像剤担持体に周期的な電圧を印加することにより、前記現像剤担持体が前記潜像担持体と対向する現像領域において、前記同一の潜像担持体上に形成された各潜像に対応する色のトナーを、前記現像剤担持体の表面から前記潜像担持体へ飛翔させて、それぞれ現像する現像手段とを有し、該同一の潜像担持体の表面に形成された複数色画像を最終的に記録材上に一括転写する画像形成装置において、前記現像領域における、該潜像担持体上のトナーが該潜像担持体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下となるよう構成したことを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記潜像担持体に形成された複数色画像を軟化させて前記記録材に転写しながら定着するか、または、前記潜像担持体に形成された複数色画像を中間転写体に中間転写して、該中間転写体上の複数色画像を軟化させて前記記録材に転写しながら定着する転写定着手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の画像形成装置において、前記転写定着手段は、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像を加熱することで、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像を軟化させるものであることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2の画像形成装置において、前記転写定着手段は、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像に定着液を付与することで、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像を軟化させるものであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4いずれかの画像形成装置において、前記現像手段は、前記潜像担持体上の潜像の現像を、乾式トナーを用いて行われることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明者らは、後述する鋭意研究の結果、現像領域において、潜像担持体上のトナーが潜像担持体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下であれば、実用可能範囲で想定されるあらゆる潜像担持体上のトナー付着状態で、潜像担持体上のトナーが潜像担持体から引き剥がされて現像手段に入り込んでしまうのを抑制することができることを見出した。
【0010】
請求項1乃至5の発明によれば、現像領域において、潜像担持体上のトナーが潜像担持体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下となるよう構成しているので、潜像担持体上のトナー像が潜像担持体から引き剥がされて現像手段に入り込んでしまうのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
まず、本発明者らが行った、現像領域において、現像ローラの電極にトナーを引き寄せる(感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く)電場が形成されていても、感光体上のトナーが感光体から引き剥がされない電場(電界)の上限値をみつける実験について説明する。
図1は、実験に用いた画像形成装置である。この画像形成装置は、感光体100の周囲に、二成分現像剤によりベタ画像を現像できる通常の二成分現像器300と、コロナチャージャ200と非接触転写ローラとを設置したものである。感光体100の有機感光体層の厚みは約20[μm]である。
【0012】
非接触転写ローラ800は、金属ローラの表面に約50[μm]で導電性を付与したポリカ(体積抵抗率約10[Ω・cm])を形成したものであり、芯金には電源装置801から任意のトナー吸引側のバイアス電位が印加されることが可能である。二成分現像器300内にはシリカ微粒子(平均粒径約40[nm])が十分に外添(表層外添率は100%)され、付着力が最大限近くまで低減された平均粒径約3[μm]、約5[μm]、約7[μm]、約9[μm]の4種類のトナーが等量ずつ攪拌されている。また、現像ローラ301には、電源装置302から任意の現像バイアスが印加されることが可能である。コロナチャージャ200も図示しない電源装置から任意の帯電バイアスが印加されることが可能である。感光体100は接地されている。そして、図示されない制御回路によって、二成分現像ローラ301に印加される現像バイアス値と、コロナチャージャの放電電流量と、非接触転写ローラ800に印加される転写バイアス値の3つのパラメータをランダムに変更させることができる。
【0013】
実験は、まず、2成分現像器300で時計回りに回転する感光体表面にベタ画像を形成する。次に、任意のトナー帯電量(Q/Mで約5〜50[μC/g]の範囲)を得るために、任意で放電電流量の変えられるコロナチャージャ200を通過させる。その後、コロナチャージャ200によって帯電してしまった感光体表面を除電する目的で図示しない露光装置からレーザLを照射して全面露光を行う。次に、200[μm]のギャップを介して感光体と等速連れまわり方向で回転する非接触転写ローラの領域を通過させる。このとき、感光体から非接触転写ローラに転移したトナーの転移率を測定する。
【0014】
そして、二成分現像ローラ301に印加される現像バイアス値と、コロナチャージャ200の放電電流量と、非接触転写ローラ800に印加される転写バイアス値の3つのパラメータをランダムに変更させながら、感光体100から非接触転写ローラ800に転移したトナーの転移率を測定した。現像バイアス値を変化させることで、感光体100上トナー付着量のあらゆる状態を再現できる。また、コロナチャージャ200の放電電流量を変化させることで、あらゆるトナー帯電量を再現できる。また、非接触転写ローラ800に印加される転写バイアス値を変化させることで、あらゆる感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場を再現することができる。
【0015】
その結果を図2に示す。図2から分かるように、実用可能範囲で想定される最小の付着力を有するトナーにおいて、実用域と想定されるトナー粒径(3〜9[μm])のあらゆるトナー帯電量且つあるいはあらゆる感光体上トナー付着量の状態に対して、2×10[V/m]よりも小さい電場に対してはトナーが全く転移しないと考えられる。つまり、この結果から、感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]好ましくは1×10[V/m]より小さければ、一旦感光体表面に付着したトナーが現像装置に引き戻される事はないと考えられる。
【0016】
[実施形態1]
以下、本発明を電子写真方式の画像形成装置であるレーザープリンタ(以下、単にプリンタ510という)に適用した実施形態1について説明する。
図3は、実施形態1に係る画像形成装置としてのプリンタの概略構成図である。
図3に示すプリンタでは、有機感光体1を備え、図示しない回転駆動機構によって図中矢印E方向に周回移動される。
【0017】
この感光体1には、感光体1を帯電させる帯電装置としての帯電チャージャ2K、2C、2M、2Yと、感光体1上の静電潜像を現像する現像装置3K、3C、3M、3Yとが、それぞれ各色ごとに対向している。そして、感光体1の移動にしたがって順次トナー像を感光体1上に重ねていくように構成されている。なお、現像装置3の詳細については後述する。
【0018】
また、現像装置3K、3C、3M、3Yの現像ローラ31K、31C、31M、31Yは、感光体1と非接触で対向配置されている。
【0019】
また、感光体1の図中右側には、中間転写ユニット11を配置している。中間転写ユニット11は、中間転写ベルト5、ベルトクリーニング装置9、トナー軟化装置10などを備えている。中間転写ベルト5は、一括転写ローラ6、対向ローラ7に張架されている。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。一括転写ローラ6は、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト5を感光体1との間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。この一括転写ローラ6は中間転写ベルト5の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。対向ローラ7は、中間転写ベルト5を加圧ローラ8との間に挟み込んで転写定着ニップを形成している。
【0020】
帯電手段としての帯電チャージャ2は感光体1の表面を一様帯電させるためのものであり、図3に示すプリンタではコロナ帯電方式を採用している。コロナ帯電のように非接触の帯電手段を用いれば、上流側の現像装置3によって形成されたトナー像を乱すことなく感光体1を帯電させることができる。
【0021】
画像形成時には、帯電チャージャ2によって感光体1表面が一様に帯電させられる。すでに感光体1上にトナー像が形成されている場合でも、トナー像を含め感光体1の表面が一様帯電させられる。次いで、図示しない光書込み装置から画像情報に応じた光ビームLが照射される。光ビームLは帯電チャージャ2と現像装置3の間を通過するため、すでに一様帯電させられた感光体1に対して光ビームLが照射されることとなり、感光体1の表面では画像部に対応する領域が除電されて潜像が形成される。
【0022】
現像装置3は感光体1に形成された潜像の画像部にトナー粒子を付着させ、潜像をトナー像として可視化する。以上の帯電、光ビーム照射、現像の工程が前述のように各現像装置との対向部において繰り返され、感光体上に4色のトナー像が重ねられたフルカラートナー像が形成される。
【0023】
感光体上に形成されたフルカラートナー像は、感光体1に伴って1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の影響を受けて、感光体1から中間転写ベルト5の表面に一括転写される。中間転写工程を経た後の感光体1に残留したトナーは、ドラムクリーニング装置4によって除去される。そして、クリーニング後の感光体1は、図示しない除電装置によって残留電荷が除電される。この除電により、感光体1の表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0024】
一方、中間転写ベルト5に一括転写されたフルカラートナー像は、1次転写ニップよりも中間転写ベルト5の表面移動方向下流側に配置された、後述するトナー軟化装置10へ搬送される。トナー軟化装置10によって十分に軟化せしめられた4色トナー像は、転写定着ローラ14の表面移動に伴って第2ニップ部たる転写定着ニップに進入する。一方、図示しない給紙装置から送られた転写材Pが転写定着ニップへと搬送され、転写定着ニップの図中下方に配設された図示しないレジストローラ対によって、転写紙Pを転写定着ニップでフルカラートナー像に同期させ得るタイミングで送り出す。
【0025】
転写定着ニップでは、軟化したフルカラートナー像中のトナーが、転写紙Pの繊維内にトナー層中の表面側のトナーを食い込ませる。これにより、フルカラートナー像が転写紙Pに定着せしめられる。転写定着ニップの出口では、中間転写ベルト5と転写紙Pとが離間するが、フルカラートナー像は、中間転写ベルト5に対する付着力よりも、中間転写ベルト5より表面の粗い転写紙Pに対する付着力を高めている。このため、中間転写ベルト5上のフルカラートナー像が転写紙P上に2次転写される。
【0026】
転写定着ニップを通過した後の転写紙Pは、図示しない排紙ローラ対を経由して機外へと排出される。また、転写定着ニップを通過した後の中間転写ベルト5の表面には、転写紙Pに定着されなかった2次転写残トナーが付着している。この2次転写残トナーは、中間転写ベルトクリーニング装置9へ搬送される。そして、中間転写ベルト5に当接しながら回転するクリーニングローラ9aによってクリーニングされ、クリーニングローラ9aに付着した2次転写残トナーは、クリーニングブレード9bにより除去される。
【0027】
次に、現像装置3について、詳細に説明する。
本実施形態においては、一旦感光体1に付着したトナーが、現像領域において、再び現像ローラ31に付着しないように、現像領域における、感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下、好ましくは、1×10[V/m]以下となるよう、現像ローラ31の電極に印加する交流電圧や、現像ギャップ、潜像電位などを調整している。
図4は、現像装置3の概略構成図である。なお、現像装置3K、3C、3M、3Kの構成は、同様であるので、以下の説明では、K、C,M、Yの色符号を省略する。
図4に示す現像装置3は、トナーのみからなる1成分現像剤を用いる現像装置である。現像装置3は現像ローラ31に対してトナーを転位させて現像ローラ31上に薄いトナー層を形成する。現像装置3は、容器34内のトナー36を循環パドル33で攪拌して循環させながら現像ローラ31に供給する。回転駆動によって表面を無端移動させる現像ローラ31は、供給されたトナー36を表面に担持した後、規制部材たるメータリングブレード35との当接位置に進入させる。これにより、現像ローラ31の表面上には、一定厚に規制された薄いトナー層が形成される。
【0028】
図5は、現像ローラ31を示す斜視図である。
この現像ローラ31は、回転駆動することで表面が移動するローラ形状のもので、現像ローラ31の表面に沿うように現像ローラ71に設けられた多数の電極41,42,43,・・・からなる電極パターンが、表面移動方向に沿ってp[μm]のピッチで配列されている。これらの電極41,42,43・・・は互いに絶縁されている。本実施形態においては、電極パターンにおける奇数番目の電極41,43,・・・の集合体を奇数番目電極群とし、その奇数番目電極群に電圧を入力するための電圧入力端子を、現像ローラ31の一方のローラ軸40A(図中手前側のローラ軸)に設けている。また、電極パターンにおける偶数番目の電極42,44,・・・の集合体を偶数番目電極群とし、その偶数番目電極群に電圧を入力するための電圧入力端子を、現像ローラ31の他方のローラ軸40B(図中奥側のローラ軸)に設けている。各ローラ軸端部40A,40Bには、図示しない電極ブラシ等によってそれぞれ交流電源32から周期的な電圧である交流電圧が印加される。より詳しくは、奇数番目電極群の各電極41,43,・・・と偶数番目電極群の各電極42,44,・・・との間に形成される電界(ホッピング電界)の向きを周期的に反転させるような交流電圧を、各ローラ軸端部40A,40Bに印加する。これにより、現像ローラ31の表面に担持されたトナー36は、このように周期的に反転するホッピング電界の作用を受けて、奇数番目電極群の各電極41,43,・・・と偶数番目電極群の各電極42,44,・・・との間をホッピングして往復移動するような運動を行う。このような運動をフレアと称し、このフレア状態のトナーを現像領域へ搬送して現像を行う方式をフレア現像方式と称する。現像ローラ31の表面とフレア状態になったトナーとの付着力は非常に小さくなるので、非常に高効率な現像が実現可能となる。
【0029】
なお、実施形態1では、互いに隣り合う電極間に形成される電界の向きが周期的に反転するように、奇数番目電極群の各電極41,43,・・・と偶数番目電極群の各電極42,44,・・・との間に交流電圧を印加することでホッピング電界を形成しているが、現像ローラ表面に担持されているトナーをホッピングさせるためのホッピング電界を現像ローラ表面上に発生させることができるのであれば、現像ローラ表面に沿うように設けられた多数の電極にどのような周期的な電圧を印加するようにしてもよい。したがって、必ずしも互いに隣り合う電極間において電界の向きが周期的に反転するように構成する必要はなく、2つ隣りの電極との間で電界の向きが周期的に反転するように構成してもよいし、その他の構成としてもよい。
【0030】
上記現像ローラ31は、図6(a)に示すように、絶縁体であるアクリル樹脂の円筒51に軸穴52を設け、図6(b)に示すようにステンレス製の電極軸40A、40Bを円筒51の軸穴52に圧入して電極軸40A、40Bを奇数番目電極群41、43・・・、偶数番目電極群42・・・にそれぞれ接続する。次に、図7(a)〜(e)に示す各工程でパターン電極を形成する。図5は現像ローラ31の表面を回転軸に沿った方向に見た図である。図7(a)に示す工程では、図6に示す工程よって得られたローラ51の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。図7(b)に示す工程では、溝のピッチが80[μm]、溝幅が40[μm]となるように溝53の切削を行う。図7(c)に示す工程では、溝切削を行ったローラ51に無電解ニッケル54のメッキを施し、図7(d)に示す工程では、無電解ニッケル54のメッキを施したローラ31の外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。この時点で電極41、42、43・・・が溝53の部分に互いに絶縁して形成される。その後、ローラ51にシリコーン系樹脂をコーティングすることでローラ51の表面を平滑にし、同時に表面保護層(厚み約5[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm])55を形成して現像ローラ31を製作した。図8は、現像ローラ31を平面状に展開した状態を示す。
【0031】
このような現像ローラ31を用いて、その表面に担持されたトナー36をフレア状態にするためには、奇数番目電極群の各電極41,43,・・・と偶数番目電極群の各電極42,44,・・・との間の電位差の最大絶対値Vmax[V]を電極ピッチp[μm]で除した値が1よりも大きいとき(Vmax[V]/p[μm]>1)、フレアが活性化し始め、Vmax[V]/p[μm]>3のときにフレアが完全に活性化する。
なお、表面保護層55の材料は、トナー36との摩擦でトナーに正規極性の電荷を与えられる材質のものであることが好ましく、例えばガラス系のものや現像剤のキャリアコートに使用されている材料を用いることが好ましい。
また、電極ピッチpは現像ギャップdよりも小さいこと、すなわちp<dに設定するのが好ましい。
【0032】
このような現像ローラ31を用いた現像装置3において、現像ローラ31に供給されたトナー36は、各電極41,42,43,44,・・・に印加される交流電圧により発生したホッピング電界の作用を受けて、現像ローラ31の表面上でフレア状態になる。そして、現像ローラ31の回転駆動により現像ローラ31の表面が移動することで、感光体1と対向する現像領域へ搬送される。現像領域で現像に寄与せずに現像ローラ31の表面に残存したトナーは、現像ローラ31の回転に伴って再び供給ローラ33との対向位置に戻ってくる。このときも、現像ローラ31上のトナーはフレア状態になっているので、現像ローラ31に対するトナーの付着力は非常に低い。したがって、現像ローラ31の表面に残存したトナーは、供給ローラ33上に担持された現像剤によって容易に掻き取られたり均されたりする。
【0033】
なお、先に示した図5においては、各電極を現像ローラ31の端面まで延在させて、その端面において電極軸40A又は40Bに接続した例を示している。これに対し、図8に示した例では、現像ローラ31の軸線方向の両端部に、金属製のフランジ状の電極軸40A及び40Bを設け、これらフランジ状の電極軸40A及び40Bと各電極の長手方向の一端とを接続した例を示している。
【0034】
この現像ローラ31の電極軸40Aと電極軸40Bとの間に周波数1[kHz]、ピーク・ツー・ピーク電圧を400[V]を与えたところ、現像ローラ31上に薄層化されたトナーは現像ローラ31上にクラウド状態を形成する事ができ、感光体上のベタ画像あるいは1200dpiの1ドット潜像(地肌電位−300[V]、露光部電位−50[V])に対して、現像ギャップ200[μm]、且つ約−200[V]の現像バイアスにて現像を行う事ができた。
【0035】
図9は、この現像ローラ31に印加されている電位のある瞬間におけるスナップショットを示す図である。図7に示す例は、現像ローラ31の奇数番目電極群と偶数番目電極群に、−400[V]と0[V]のそれぞれをピークに持つ各瞬間瞬間における平均電位が−200[V]の交流バイアスを、1[kHz]の周波数で印加したときのものである。なお、図に示す電極から5[μm]、50[μm]、100[μm]、200[μm]離れた電位は、別途実施したシミュレーション結果である。
【0036】
図に示すように、現像ローラ表面における奇数番目電極41,43・・・と偶数番目電極42,44・・・との間には最大で400[V]の電位差が生じている。しかし、現像ローラ表面から50[μm]離れた領域における奇数番目電極と偶数番目電極による電位差の絶対値は最大およそ120[V]であった。また、現像ローラ表面から100[μm]離れた領域における奇数番目電極と偶数番目電極による電位差の絶対値は最大およそ20[V]であった。また、現像ローラ表面から200[μm]離れた領域における奇数番目電極と偶数番目電極による電位差の絶対値は最大およそ数[V]であった。
【0037】
つまり、現像ローラ表面から50[μm]離れた領域における電位は−260[V]〜−140[V]の間の値、現像ローラ表面から100[μm]離れた領域における現像バイアスは−210[V]〜−190[V]の間の値、現像ローラ表面から200[μm]離れた領域における現像バイアスはおよそ−200[V]となっている。このことから、
現像ギャップが50[μm]以上であれば、一旦感光体に付着したトナーを現像ローラに引き戻してしまう電場は一切発生しない事がわかる。
【0038】
一方、現像ローラ表面から5[μm]離れた領域における奇数番目電極と偶数番目電極による電位差の絶対値は最大およそ340[V]となることが図から分かる。この5[μm]離れた領域での現像バイアス値は−370[V]〜−30[V]となるので、−30[V]なった瞬間の潜像電位(−50[V])との差は20[V]となる。この時の感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場は4×10[V/m]となる。その結果、このような潜像電位、現像バイアス、現像ギャップを備えた装置においては、感光体に付着したトナーが感光体から引き剥がされて、現像ローラ31に再付着してしまう。なお、実際にはトナー粒径は5[μm]程度あるため現像ギャップを5[μm]とする事は原理上不可能であり、あくまでもここでは成立しない一条件として例を示しているに過ぎない。
【0039】
次に、トナー軟化装置10について、説明する。
トナー軟化装置10としては、加熱機構を用いる事ができる。トナー軟化装置10として、加熱機構を用いる場合は、中間転写ベルト5は、例えば、特開2006−078809号公報記載のような、基材上に加熱層、弾性層、離型層が順次形成された、多層構造のエンドレスベルトを用いる。基材は厚み100[μm]のポリイミドであり、加熱層は30[μm]のニッケルと鉄との合金であり、弾性層は150[μm]のシリコンゴムであり、離型層は10[μm]のフッ素樹脂層である。
【0040】
トナー軟化装置10としては、電磁誘導加熱用のコイルを中間転写ベルト5のおもて面に対向配置し、図示されない高周波電源部から1k〜1MHzの交番電流をこのコイルに印加する。このような加熱機構により、中間転写ベルト5上のフルカラートナー像は、軟化装置10が対向する領域で加熱軟化させる事ができる。中間転写ベルト5から感光体1への熱伝播を最小限とするために、例えば、一次転写ニップ幅を1[mm]程度にして、一次転写ニップ幅を十分に小さくする事が有効である。また、比較的低温で定着できるトナー(ガラス転移点が約65[℃])を使用する事で中間転写ベルトの温度を100[℃]程度にまで下げる事ができる。
なお、上述では、電磁誘導加熱による加熱方式を採用したが、ハロゲンヒータやサーマルヘッド等を利用した他の加熱方式を利用しても良い。
【0041】
トナー軟化装置10として、加熱機構を用いた場合、中間転写ベルト5と感光体1との当接ニップを十分に小さくしたり、比較的低温で定着できるトナー(ガラス転移点が約65[℃])を使用して中間転写ベルト5の温度を低温に抑えたりすることで、感光体1の温度上昇を抑えているが、このような工夫を施しても、感光体自体の温度は80[℃]ぐらいまで上昇した。そのため、一旦感光体1に付着したトナーは、感光体1の熱によって加熱され、容易に変質してしまう。このように、変質したトナーが再び現像器内に戻ってしまうと、容器34内にトナーの凝集塊ができたりして、トナー帯電量が不足したり、この凝集塊が、供給ローラ33と現像ローラ31との間に入り込み、トルク上昇や装置の破損などを引き起こすおそれがある。
しかし、本実施形態においては、感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下、好ましくは、1×10[V/m]以下となるよう、現像ローラ31の電極に印加する交流電圧や、現像ギャップ、潜像電位などを調整している。よって、一旦感光体に付着したトナーが、現像装置3への戻ることがないので、高画質高安定にフルカラー画像を作像し続けることが可能である。
【0042】
また、トナー軟化装置10として、加熱手段ではなく、例えば、特開2004−109751号公報に記載のように、中間転写ベルト5上のフルカラートナー像に定着溶媒を塗布することで、トナーを軟化させてもよい。この場合、トナー軟化装置10として、定着溶媒をフルカラートナー像に選択的に噴出する事のできる噴出ヘッド(インクジェットヘッド)を利用する。非画像部への不要な定着溶媒の付着を極力低減するために、噴出ヘッドによる定着溶媒の噴出は、感光体1に書き込まれた画像情報を参照する事でトナー像部に対して選択的に噴出される。
【0043】
使用される定着溶媒は、トナーを構成する樹脂成分を溶解又は膨潤させる材料(以下、「溶解・膨潤成分」という。)と水とからなる液である。この溶解・膨潤成分は水との親和性をもつ材料であるのが望ましい。この溶解・膨潤成分の具体例としては、高級グリコールエーテル、エチレングリコールモノエーテル、ジエチレングリコールモノエーテル、エチレングリコール、モノメチルエーテル=2−メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ブチルセロソルブエチルカルビトール、脂肪族二塩基酸エステル、DBE(二塩基酸エステル)、エステル系高沸点混合剤、直鎖二塩基酸エステル(マレイン酸エステル)、イタコン酸エステル、トリメリットエステル、二塩基酸エステル等が挙げられる。また、上記溶解・膨潤成分を水に分散させるために界面活性剤を用いてもよい。この界面活性剤の具体例としては、脂肪酸誘導体硫酸エステル、スルホン酸型、リン酸エステルなどの陰イオン(アニオン)界面活性剤、四級アンモニウム塩、複素環アミン、アミン誘導体などの陽イオン(カチオン)界面活性剤やアミノ酸エステル、アミノ酸、スルホベタインなどの両性イオン(ノニオン)界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。本実施形態では、上記溶解・膨潤成分と上記界面活性剤を水に対し20%以下の濃度で混合した液を定着溶媒として用いている。
【0044】
また、トナー軟化装置10として、定着溶媒を塗布する機構を用いる場合、中間転写ベルト5の表面を、撥液処理としてフッ素処理等を施して、撥水性を付与することが好ましい。この処理は、水に対する接触角が60°以上になるようにするのが好ましい。このような撥水処理を施せば、トナーが担持されていない中間転写ベルト5の表面部分に定着液が付着しても、その定着液はその周囲にあるトナーに引き寄せられて集まり、その部分の定着液はなくなる。したがって、噴出ヘッドによる定着液の着弾精度が多少悪くても、トナーが担持されていない中間転写ベルト5表面部分に定着液を付着させずに済む。
【0045】
定着溶媒のフルカラートナー像への噴出によって軟化されたトナーは、転写紙に粘着転写されると同時に定着が完了する。
【0046】
また、トナー軟化装置10として、定着溶媒を塗布する機構を用いた場合は、転写定着後の残トナーに関しては図3に示されたようなクリーニングローラ9aによって回収がされるが、定着溶媒に関しては全て回収する事ができず、極微量は感光体上に転移し、感光体クリーニング装置4(ブレード)によって書き取られる。しかし、この感光体1クリーニング装置4をもすり抜けてしまう定着溶媒が存在してしまう。このため、一旦感光体1に付着したトナーは、感光体表面に付着した定着溶媒によって容易に変質してしまう。このように、変質したトナーが再び現像器内に戻ってしまうと、上述同様、容器34内にトナーの凝集塊ができたりして、トナー帯電量が不足したり、この凝集塊が、供給ローラ33と現像ローラ31との間に入り込み、トルク上昇や装置の破損などを引き起こすおそれがある。
しかし、実施形態1においては、感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下、好ましくは、1×10[V/m]以下となるよう、現像ローラ31の電極に印加する交流電圧や、現像ギャップ、潜像電位などを調整している。よって、一旦感光体に付着したトナーが、現像装置への戻ることがないので、高画質高安定にフルカラー画像を作像し続けることが可能である。
【0047】
一般的な電子写真方式としては、感光体上に形成されたトナー像を直接あるいは中間転写体を介して記録紙に一旦静電転写し、トナー像の形成された記録紙を加熱並びに加圧する事により定着画像を得ている。しかし、記録紙に転写される際のトナー像中トナー粒子の帯電量バラツキ(主に一つの画像内)並びに変動(主に、異なる画像同士)や、転写紙自体の電気的物性(表面抵抗率や体積抵抗率など)のバラツキ(主に一枚の記録紙内)並びに変動(主に、異なる紙同士)などによって、静電転写工程における画質安定性を究極に高める事は非常に困難である。非常に高価な作像エンジンであれば、緻密な作像プロセス制御手段や、温湿度などの環境制御手段を導入する事で、この静電転写工程における画質不安定性を取り除いていく事は可能であるが、一般オフィスもしくは家庭用で使われる比較的安価な作像エンジンにこれらの手段を盛り込む事は困難である。
しかし、実施形態1においては、中間転写ベルト上のフルカラートナー像をトナー軟化装置10によって軟化させて、転写紙Pに圧力によって転写定着させている。これにより、トナーの電荷量や紙の電気的物性に依存せず、長期に渡り安定且つ高画質での転写(同時に定着)を実現する事ができる。
【0048】
[実施形態2]
次に、実施形態2について説明する。
図10は、実施形態2の画像形成装置の概略構成図である。
この実施形態2の画像形成装置は、潜像担持体たる感光体ベルトに形成したフルカラートナー像を記録材に直接転写定着する画像形成装置に本発明を適用したものである。
図10に示すように、この画像形成装置は、有機感光体をベルト形状に構成した感光体ベルト101を備え、この感光体ベルト101は、張架ローラ101a、対向ローラ101bに架け渡され、図示しない回転駆動機構によって図中矢印方向に周回移動される。
【0049】
この感光体ベルト101には、感光体ベルト101を帯電させる帯電装置としての帯電チャージャ102K、102M、102C、102Yと、感光体ベルト101上の静電潜像を現像する現像装置103K、103M、103C、103Yとが、それぞれ各色ごとに対向している。そして、感光体ベルト101の移動にしたがって順次トナー像を感光体ベルト101上に重ねていく。
【0050】
帯電手段としての帯電チャージャ102は感光体ベルト101の表面を一様帯電させるためのものであり、コロナ帯電方式を採用している。コロナ帯電のように非接触の帯電手段を用いれば、上流側の現像装置103によって形成されたトナー像を乱すことなく感光体ベルト101を帯電させることができる。
【0051】
画像形成時には、帯電チャージャ102によって感光体ベルト101表面が一様に帯電させられる。すでに感光体ベルト101上にトナー像が形成されている場合でも、トナー像を含め感光体ベルト101の表面が一様帯電させられる。次いで、図示しない光書込み装置から画像情報に応じた光ビームLが照射される。光ビームLは帯電チャージャ102と現像装置103の間を通過するため、すでに一様帯電させられた感光体ベルト101に対して光ビームが照射されることとなり、負帯電性の感光体である感光体ベルト101の表面では画像部に対応する領域が除電されて潜像が形成される。
【0052】
現像装置103は感光体ベルト101上に形成された潜像の画像部にトナー粒子を付着させ、潜像をトナー像として可視化する。以上の帯電、光ビーム照射、現像の工程が前述のように各現像装置との対向部において繰り返され、感光体ベルト101上に4色のトナー像が重ねられたフルカラー画像が形成される。
【0053】
感光体ベルト101上に形成されたフルカラートナー像は、トナー軟化装置110に搬送され、軟化される。トナー軟化装置110として、加熱機構を用いた場合、ベルト感光体101としては、例えば、基材上に加熱層、感光層、離型層が順次形成された、多層構造のエンドレスベルトが用いられる。基材は厚み150[μm]のポリイミドであり、加熱層は30[μm]のニッケルと鉄との合金であり、感光層は20[μm]の有機感光層、離型層としては10[μm]のフッ素系樹脂を用いる。ここで使用するトナーは比較的低温で定着できるトナー(ガラス転移点が約65[℃])を使用するが、それでもベルト感光体の温度は100[℃]程度としなくてはならない。そのため、感光層としては比較的耐熱性を持たせたものが必要となり、例えば、特開平06−222693号で述べられている材料を好適に使う事ができる。
【0054】
有機感光層としては、電荷発生および電荷輸送能を有する材料およびバインダーからなる感光層を有する単層型または積層型感光体が用いられる。電荷発生材としてはペリレン顔料、多環キノン系顔料、フタロシアニン顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、スクエアリウム顔料等が挙げられ、好ましくはペリレン顔料、フタロシアニン顔料である。電荷輸送材としてはヒドラゾン誘導体、ピラゾリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アリールアミン誘導体、スチリル誘導体等を挙げることができ、好ましくはアリールアミン誘導体である。本発明にて耐熱性感光体に用いられるバインダーとしてはガラス転移点が100[℃]よる高いものを使用する。代表的にはポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系重合体、ポリメタクリレート、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリアセタール等の付加重合体およびエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。なお、第1の実施形態において使用される感光体に関しても、より高い耐熱性を要求する場合には、ここで記載したような高ガラス転移点のバインダーを有する感光層を適用しても良い。
【0055】
加熱機構としては、電磁誘導加熱用のコイルを設置し、図示されない高周波電源部から1k〜1MHzの交番電流がこのコイルに印加される。このような加熱機構により、ベルト感光体上のフルカラートナー像は加熱軟化させる事ができる。なお、電磁誘導加熱による加熱方式を採用したが、ハロゲンヒータやサーマルヘッド等を利用した他の加熱方式を利用しても良い。
【0056】
また、トナー軟化装置110として定着溶媒を塗布する機構でもよい。この場合、トナー軟化装置110として加熱機構を用いたもののように、使用する感光体ベルト101には特に耐熱特性を持たせる必要は無い。しかし、定着溶媒による感光体ベルト101の変質を避けるために、変質しないフッ素樹脂等の保護層を感光体ベルト表面に形成する。
【0057】
上述のようなトナー軟化装置110によって軟化されたトナーは、感光体ベルト101が対向ローラ106bと加圧ローラ108とによって挟まれた転写定着ニップへ搬送される。
一方、図示しない給紙装置から送られた転写材Pが転写定着ニップへと搬送され、この転写定着ニップにおいて感光体ベルト101上に形成されたフルカラー画像が転写材P上に転写定着される。転写材に転写同時定着された後のベルト感光体表面は、例えばクリーニングローラ104aとクリーニングブレード104bとの組合せによるベルトクリーナ104によって軟化した残トナーが回収され、再び多重現像工程が行われる。
【0058】
この図10に示す画像形成装置においても、感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下、好ましくは、1×10[V/m]以下となるよう、現像ローラ131の電極に印加する交流電圧や、現像ギャップ、潜像電位などを調整しているので、感光体ベルトに付着したトナーが現像装置へ戻ることがない。よって、上述同様、スキャベンジや混色などの問題が一切無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行う事ができる。さらに、トナー軟化装置110によってベルト感光体101の温度が100[℃]程度加熱されていたり、感光体ベルト表面に定着溶媒が付着していたりすることで、変質した感光体上のトナーが再び現像器内に戻ってしまう事はない。よって、且つ高画質高安定にフルカラー画像を作像し続けることができる。
【0059】
なお、この実施形態2の画像形成装置は、感光体ベルト101としているが、ドラム状の感光体を使用してもよい。トナー軟化装置として、加熱機構を用いた場合、感光体の感光層に耐熱性を持たせるために、高ガラス転移点のバインダーを有する有機感光体を用いても良い。ドラム形状となる事により感光層の屈曲変形が無くなるため、屈曲に対して弱いシリコン系感光体もしくは耐熱性を考慮した酸化亜鉛樹脂分散型感光体なども利用する事ができる。
【0060】
シリコン系感光体とは、特開昭54−86341号公報などに記載のアモルファスシリコンあるいはシリコンカーバイトからなるものであり、例えばアモルファスシリコンにホウ素原子をドープしたp型感光体又は、リン原子をドープしたn型感光体などを用いることができる。酸化亜鉛樹脂分散型感光体としては、例えば、USP2,952,536号公報等記載の導電性支持体上に酸化亜鉛微粒子、増感色素、バインダーからなる感光層を有するものが用いられる。酸化亜鉛微粒子は0.1〜1μmの粒子径のものが感光体の感度および帯電性能の点から好ましい。増感色素は露光装置の光源の波長にあうように選択されるのが好ましく、代表的にはローズベンガル等のキサンテン系、クリスタルバイオレット等のトリフェニルメタン系、メチレンブルー等のチアジン系およびシアニン系色素が挙げられる。
【0061】
以上、本実施形態の画像形成装置によれば、現像領域において、潜像担持体たる感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下となるよう構成しているので、感光体上のトナーが感光体から引き剥がされて現像装置に入り込んでしまうのを抑制することができる。これにより、感光体上の画像の乱れや、現像装置内のトナーの混色などの問題が一切無く、高画質な作像プロセスを長期的に渡り安定して行う事ができる。
【0062】
また、感光体に形成された複数色画像を軟化させて記録材たる転写紙Pに転写しながら定着する。または、感光体に形成された複数色画像を中間転写体たる中間転写ベルトに中間転写して、中間転写ベルト上の複数色画像を軟化させて記録紙に転写しながら定着する。このように、転写紙Pにトナー像を転写定着することで、転写紙に静電的にトナーを転写するもののように、転写時に電気的な放電が発生して、トナーのチリやニジミなどが発生することがない。よって、トナーのチリやニジミなどによる画質劣化をなくすことができる。
【0063】
また、感光体、または中間転写ベルト上の複数色画像を加熱することで、感光体、または中間転写ベルト上の複数色画像を軟化させている。このように、トナーの軟化が熱という非物質によって行われるため、新たな物質の混入による作像プロセス全体への汚染が無く、長期に渡り高安定の作像エンジンを提供することができる。
【0064】
また、感光体、または中間転写ベルト上の複数色画像に定着液を付与することで、感光体、または中間転写ベルト上の複数色画像を軟化させるようにしてもよい。このように、トナーの軟化を定着溶媒によって行うため、加熱によってトナーを軟化させるものに比べて、加熱による定着立ち上がり時間を大幅に短縮できると共に、作像エンジンの電力消費を極力抑える事ができる。
【0065】
また、感光体上の潜像の現像が、乾式トナーを用いて行われるので、湿式の現像剤を用いて現像を行うもののように、溶媒の揮発による臭気や、溶媒を除去する装置などを設ける必要がなく、装置の小型化、シンプル化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実験に用いた画像形成装置の概略構成図。
【図2】感光体上のトナーが感光体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場と、転移率との関係を示す図。
【図3】実施形態1の画像形成装置の概略構成図。
【図4】現像装置の概略構成図。
【図5】現像ローラの斜視図。
【図6】現像ローラの製造工程の一部を示す断面図。
【図7】現像ローラの製造工程の他の一部を示す断面図。
【図8】現像ローラを平面状に展開した状態を示す展開図。
【図9】現像ローラに印加されている電位のある瞬間におけるスナップショットを示す図。
【図10】実施形態2の画像形成装置の概略構成図。
【符号の説明】
【0067】
1:感光体
2:帯電チャージャ
3:現像装置
5:中間転写ベルト
6:一括転写ローラ
10:トナー軟化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面移動する潜像担持体と、
各色に対応した潜像を同一の潜像担持体の表面に形成する潜像形成手段と、
前記潜像担持体表面に対して所定のギャップを有して配置され表面に現像剤を担持する現像剤担持体を有し、該現像剤担持体に周期的な電圧を印加することにより、前記現像剤担持体が前記潜像担持体と対向する現像領域において、前記同一の潜像担持体上に形成された各潜像に対応する色のトナーを、前記現像剤担持体の表面から前記潜像担持体へ飛翔させて、それぞれ現像する現像手段とを有し、
該同一の潜像担持体の表面に形成された複数色画像を最終的に記録材上に一括転写する画像形成装置において、
前記現像領域における、該潜像担持体上のトナーが該潜像担持体表面法線方向に引き剥がされる向きに働く電場が、2×10[V/m]以下となるよう構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記潜像担持体に形成された複数色画像を軟化させて前記記録材に転写しながら定着するか、または、前記潜像担持体に形成された複数色画像を中間転写体に中間転写して、該中間転写体上の複数色画像を軟化させて前記記録材に転写しながら定着する転写定着手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2の画像形成装置において、
前記転写定着手段は、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像を加熱することで、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像を軟化させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項2の画像形成装置において、
前記転写定着手段は、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像に定着液を付与することで、前記潜像担持体、または中間転写体上の複数色画像を軟化させるものであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの画像形成装置において、
前記現像手段は、前記潜像担持体上の潜像の現像を、乾式トナーを用いて行われることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−151985(P2008−151985A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339435(P2006−339435)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】