説明

異常検査装置

【課題】パターンによる散乱光の影響が強く、試料表面に散乱光を発する異物等があるか否かの検査を正確にできないと考えられ場合も少なくとも蛍光を発する異物がある不良品を発見して、半導体素子の歩留まり低下を防止することができる異常検査装置を提供する。
【解決手段】サンプルSに対して測定光L1を照射するレーザ光源21と、測定光L1をサンプルSの表面Sa上に照射した場合に、表面Sa上のパターンにより散乱されたパターン由来散乱光、表面Sa上の異常により散乱された異常由来散乱光、及び、表面Sa上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するためのパターン由来散乱光検出部31、異常由来散乱光検出部32及び蛍光検出部33と、パターン由来散乱光検出部31で検出した光の強度が、所定の閾値を越える場合に、蛍光検出部33で検出した光の強度に基づいて、異常の検出を行う異常検出部4dを具備するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線や可視レーザ光等の測定光を、例えば半導体基板等の試料表面に照射し、その試料表面の異物等で散乱される散乱光を受光して、試料表面の異常を検査する異常検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光X線や可視レーザ光等の測定光を、試料表面が平滑である半導体基板に照射し、その試料表面の異物等で散乱される散乱光を受光して、試料表面の異常を検査する光学的表面検査装置が知られている。
【0003】
具体的にこの種の光学的表面検査装置は、例えば、前記測定光を前記試料表面に照射した際に、その試料表面の異物等から散乱される散乱光のうち、前記測定光の波長に等しい波長を有する普通散乱光を受光してその結果に応じた散乱光信号を出力する散乱光受光部と、前記散乱光のうちの前記測定光の波長とは異なる波長を有する蛍光を受光してその結果に応じた蛍光信号を出力する蛍光受光部とを具備し、前記散乱光受光部が出力する普通散乱光に基づいて、試料表面における凹凸や異物の有無、大きさ、個数などといった、試料表面の異常(散乱光を発するもの)の検査を行うことができ、前記蛍光受光部が出力する蛍光に基づいて、散乱光を発し難いが蛍光を発する異物、例えばレジスト残渣などの検査を行うことができるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−314953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光学的表面検査装置は、試料表面が平滑である場合には、普通散乱光および蛍光によって、試料表面上の散乱光を発する異物等や、散乱光を発し難いが蛍光を発するレジスト残渣等の検査を一度に行うことができるとはいうものの、試料表面に例えば凹凸形状のパターンが形成されている場合には、測定光を照射されたパターンにおいても散乱が生じるため、散乱光受光部で検出する普通散乱光が、試料表面に形成されているパターンに由来する散乱光であるか、或いは、試料表面の異物等に由来する散乱光であるかが分からず、試料表面に散乱光を発する異常等があるか否かの検査を正確に行うことができないといった問題点を有している。
【0005】
そして、近年のパターンの微細化により、パターンによる散乱光の強度が強く現れるようになってきているため、試料表面に散乱光を発する異物等がないにもかかわらずパターン由来による散乱光の強度が強く検出された結果、例えば、本来不良品でないものが、不良品として取り扱われてしまうといった不具合も発生している。
【0006】
すなわち、試料表面にパターンが形成されている場合には、そのパターンによる散乱光の影響を踏まえた上で、試料表面の検査を行わなければ、検査結果そのものに信頼性がないものとなる。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、パターンによる散乱光の影響が強く、試料表面に散乱光を発する異物等があるか否かの検査を正確にできないと考えられ場合には、蛍光を発する異物があるか否かの検査のみを行うようにすることで、散乱光による検査では、不良品であるか否かが分からないもののなかから、少なくとも蛍光を発する異物がある不良品を発見して、半導体素子の歩留まり低下を防止することができる異常検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る異常検査装置は、測定対象に対して測定光を照射する光源と、前記測定光を前記測定対象の表面上に照射した場合に、前記表面上のパターンにより散乱されたパターン由来散乱光、前記表面上の異常により散乱された異常由来散乱光、及び、前記表面上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するためのパターン由来散乱光検出部、異常由来散乱光検出部及び蛍光検出部と、前記パターン由来散乱光検出部で検出した光の強度が、所定の閾値を越える場合に、前記蛍光検出部で検出した光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部を具備していることを特徴とする。
【0009】
ここで、異常検出部が、「前記蛍光検出部で検出した光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う」とあるのは、パターン由来散乱光検出部と異常由来散乱光検出部とは異なる検出部(少なくとも蛍光検出部を含む)が検出した検出値に基づいて、前記異常の検出を行うという意味であり、つまり、パターン由来散乱光検出部と異常由来散乱光検出部と蛍光検出部とでそれぞれ検出する光の強度のうち、蛍光検出部で検出する光の強度のみを用いて前記異常の検出を行うという意味である。例えば、X線照射部とX線検出部とをさらに設け、X線による異常の検出と、蛍光の強度による異常の検出とを同時に行なっても構わない。
【0010】
このようなものであれば、パターン由来散乱光検出部と異常由来散乱光検出部とによって、パターン由来散乱光と異常由来散乱光とを別々に検出することができるので、散乱光がパターンによるものか、異物等によるものかを好適に知ることができる。そして、これらパターン由来散乱光と異常由来散乱光とに基づいて、パターンによる散乱光の影響が強く、試料表面に散乱光を発する異物等があるか否かの検査を正確にできないとの判断をした場合には、異常検出部が、蛍光検出部で検出した光の強度のみに基づいて、試料表面に異常の検出を行うため、かかる判断をした場合における散乱光による検査では、不良品であるか否かが分からないもののなかから、少なくとも蛍光を発する異物がある不良品を発見することができ、かかる不良品による半導体素子の歩留まり低下を防止することができる。
【0011】
本発明の異常検査装置の望ましい他の態様としては、この異常検査装置の異常検出部が、異常由来散乱光の強度に対するパターン由来散乱光の強度の比率が所定の条件を満たす場合に、蛍光検出部で検出した光の強度に基づいて、異常の検出を行うように構成したものが挙げられる。
【0012】
具体的には、異常検査装置が、測定対象に対して測定光を照射する光源と、前記測定光を前記測定対象の表面上に照射した場合に、前記表面上のパターンにより散乱されたパターン由来散乱光、前記表面上の異常により散乱された異常由来散乱光、及び、前記表面上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するためのパターン由来散乱光検出部、異常由来散乱光検出部及び蛍光検出部と、前記異常由来散乱光検出部で検出した光の強度に対する前記パターン由来散乱光検出部で検出した光の強度の比率が、所定の閾値を越える場合に、前記蛍光検出部で検出した光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部を具備するようにしたものが挙げられる。
【0013】
さらに他の異常検査装置の望ましい態様としては、異常検査装置が、測定対象に対して測定光を照射する光源と、前記測定光を前記測定対象の表面上に照射した場合に、前記表面上のパターン又は異常により散乱された散乱光及び前記表面上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するための散乱光検出部及び蛍光検出部と、前記散乱光検出部で検出した光の強度が、所定の閾値を超える場合には、前記蛍光検出部で検出した蛍光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部を具備しているように構成したものが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、例えば、パターンによる散乱光の影響が強く、試料表面に散乱光を発する異物等があるか否かの検査を正確にできないと考えられ場合には、蛍光を発する異物があるか否かの検査のみを行うようにするなど、散乱光の強度を踏まえた上で、試料表面の検査を行うようにしているため、例えば上述した場合における散乱光による検査では、不良品であるか否かが分からないもののなかから、少なくとも蛍光を発する異物がある不良品を発見できるなど、半導体素子の歩留まり低下を防止することができる異常検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態にかかる異常検査装置Aは、図示しないパターンを表面Saに形成している測定対象であるレティクル/マスク(以下、サンプルSと呼ぶ)の表面Sa上の異常を検査するものであって、図1、図2に示すように、サンプルSを載置するステージ1と、このステージ1に載置したサンプルSに対して測定光L1を走査しながら照射する光照射部2と、この光照射部2が測定光L1をサンプルSの表面Sa上で走査した場合に、そのサンプルSの表面Saで散乱等により生じた光を検出光L2として検出する光検出系3と、この光検出系3の出力結果に基づいて、表面Sa上の異常の検出を行う情報処理装置4と、を具備して成るものである。以下、各部を具体的に説明する。
【0017】
ステージ1は、X軸、Y軸、Z軸に移動可能なものであって、測定光L1の走査方向と垂直な方向に一定速度で移動することで、後述する測定光L1であるレーザビームの走査と合わせて、該ステージ1に載置したサンプルSの表面Sa全面を測定することができるようにしている。本実施形態では、ステージアドレス(X座標、Y座標、Z座標)を示すステージアドレス信号を、情報処理装置4に出力するようにしている。
【0018】
光照射部2は、図1に示すように、測定光L1である所定方向に偏光させたレーザビームを出射するレーザ光源21(例えば、HeNeレーザ光源)と、このレーザ光源21から出射された測定光L1を適宜拡大するビームエキスパンダ22と、このビームエキスパンダ22で拡大された測定光L1を走査して表面Sa上に焦点を結ばせる走査ミラー23a(例えば、ガルバノミラー)および走査レンズ23b(例えば、fθレンズ)から成る光走査部23とを具備するものである。これによって、測定光L1をサンプルSの表面Saに走査して照射する。
【0019】
そして、本実施形態では、測定光L1を、表面Saに対して例えば10〜40度の角度で入射し(入射角で50〜80度)、光走査部23を用いて表面Saの略全面を走査するように構成しているとともに、走査ミラー23aのミラー角度を示すミラー角度信号を、情報処理装置4に出力するようにしている。このミラー角度信号と上述のステージアドレス信号とから、表面Sa上の検査位置が特定できる。
【0020】
光検出系3は、図2に示すように、光照射部2により、測定光L1をサンプルSの表面Sa上で走査した場合に、その表面Sa上のパターンにより散乱されたパターン由来散乱光、表面Sa上の異常により散乱された異常由来散乱光、及び、表面Sa上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するパターン由来散乱光検出部31、異常由来散乱光検出部32及び蛍光検出部33とを具備し、サンプルSの表面Saからパターン由来散乱光検出部31に至る光路上に配した第1のハーフミラー34によって、表面Saからの検出光L2が、該第1のハーフミラー34を透過してパターン由来散乱光検出部31に向かう第1の分岐光L21と、該第1のハーフミラー34で反射され異常由来散乱光検出部32及び蛍光検出部33に向かう第2の分岐光L22とに分岐され、さらに、パターン由来散乱光検出部31から異常由来散乱光検出部32に至る光路上に配した第2のハーフミラー35によって、前記第2の分岐光L22が、該第2のハーフミラー35を透過して異常由来散乱光検出部32に向かう第3の分岐光L23と、該第2のハーフミラー35で反射され蛍光検出部33に向かう第4の分岐光L24とに分岐されるように構成されている。なお、図1では、異常由来散乱光検出部32や蛍光検出部33などを適宜省略している。
【0021】
パターン由来散乱光検出部31は、光が入射してくる側に、測定光L1の偏光成分と略同一の偏光成分を有し、且つ、測定光L1の波長を中心とした狭い範囲の光のみを通過させる第1のフィルタ311(偏光フィルタ)と、この第1のフィルタ311を通過してくる光、すなわちパターン由来散乱光の強度、周波数、位相などの情報を電気信号に変換し、これをパターン由来散乱光検出信号として情報処理装置4に対して出力する光検出器312とを備えるものであって、光検出器312には、例えば、PMT(Photo Multiplier Tube;光電子増倍管)、あるいは、ラインセンサーなどを用いることができる。
【0022】
異常由来散乱光検出部32は、光が入射してくる側に、測定光L1の偏光成分と異なる偏光成分を有し、且つ、測定光L1の波長を中心とした狭い範囲の光のみを通過させる第2のフィルタ321(偏光フィルタ)と、この第2のフィルタ321を通過してくる光、すなわち異常由来散乱光の強度、周波数、位相などの情報を電気信号に変換し、これを異常由来散乱光検出信号として情報処理装置4に対して出力する光検出器322とを備えるものである。この光検出器322は、パターン由来散乱光検出部31の光検出器312と同様、PMTやラインセンサーなどを用いることができる。
【0023】
蛍光検出部33は、光が入射してくる側に、測定光L1の波長より長い波長の光のみを通過させる第3のフィルタ331と、この第3のフィルタ331を通過してくる光、すなわち蛍光の強度、周波数、位相などの情報を電気信号に変換し、これを蛍光検出信号として情報処理装置4に対して出力する光検出器332とを備えるものである。この光検出器332は、前記各光検出器312、322と同様、PMTやラインセンサーなどを用いることができる。
【0024】
情報処理装置4は、図示しないCPUや内部メモリ、A/D変換器、D/A変換器等を有したデジタル乃至アナログ電気回路、ステージ1や走査ミラー23a等と通信するための通信インタフェース、入力インタフェース、液晶ディスプレイ等の表示装置などで構成されたもので、専用のものであってもよいし、一部又は全部にパソコン等の汎用コンピュータを利用するようにしたものであってもよい。また、CPUを用いず、アナログ回路のみで次の各部としての機能を果たすように構成してもよいし、その一部の機能を外部のパソコン等と兼用するなど、物理的に一体である必要はなく、有線乃至無線によって互いに接続された複数の機器からなるものであってもよい。
【0025】
そして前記内部メモリに所定のプログラムを格納し、そのプログラムにしたがってCPUやその周辺機器を協働動作させることによって、この情報処理装置4が、図3に示すように、信号受信部4a、記憶部4b、散乱光強度比較部4c、異常検出部4d等としての機能を少なくとも発揮するように構成している。以下、各部を詳述する。
【0026】
信号受信部4aは、ステージ1が出力するステージアドレス信号と、走査ミラー23aが出力するミラー角度信号と、パターン由来散乱光検出部31が出力するパターン由来散乱光検出信号と、異常由来散乱光検出部32が出力する異常由来散乱光検出信号と、蛍光検出部33が出力する蛍光検出信号とを、それぞれ受信するものである。
【0027】
記憶部4bは、前記信号受信部4aで受信したステージアドレス信号の示すステージアドレス及びミラー角度信号の示すミラー角度から得られる検査位置と、パターン由来散乱光検出信号の示す光の強度等と、異常由来散乱光検出信号の示す光の強度等と、蛍光検出信号の示す光の強度等とを、適宜関連付けて記憶するものである。
【0028】
散乱光強度比較部4cは、前記記憶部4bに記憶しているパターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えているか否かを判定するものである。ここで、所定の閾値は、閾値記憶部4eに予め記憶しているものを用いるようにしている。また、所定の閾値の値は、例えばユーザの操作等によって適宜変更することができる。
【0029】
異常検出部4dは、前記散乱光強度比較部4cが「パターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えている。」との判定結果を出力した場合には、前記記憶部4bに記憶している蛍光の強度のみに基づいて、表面Saの異常の検出、具体的には表面Sa上に、例えばレジスト残渣などの散乱光を発し難いが蛍光を発する異物が存在しているか否かの検出を行うものである。一方、前記散乱光強度比較部4cが「パターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えていない。」との判定結果を出力した場合には、上述のレジスト残渣などの蛍光を発する異物が存在しているか否かの検出を行うに加え、前記記憶部4bに記憶している異常由来散乱光の強度に基づいて、表面Saの異常の検出、具体的には表面Sa上に、例えば凹凸や異物が有るか否かの検出を行うものである。
【0030】
そして、この異常検出部4dで、表面Saの異常が検出された場合には、その旨とその検出位置とを画面出力又は印字出力するようにしている。
【0031】
次に、このように構成した異常検査装置Aを用いたサンプルSの表面Sa上の異常の検査を行うときの動作について、図4等を参照しつつ説明する。
【0032】
まず、ステージ1に載置したサンプルSに対して測定光L1を走査しながら照射する(ステップS101)。
【0033】
そして、測定光L1の照射によって、サンプルSの表面Saで生じた検出光L2は、ハーフミラー34、35で適宜分岐されて、パターン由来散乱光検出部31、異常由来散乱光検出部32及び蛍光検出部33に向かう。
【0034】
パターン由来散乱光検出部31は、光が入射してくる側に、パターン由来散乱光のみを通過させる第1のフィルタ311を備えているので、検出光L2(第1の分岐光L21)にパターン由来散乱光が含まれている場合には(ステップS102)、これを検出し、その強度、周波数、位相などの情報を示すパターン由来散乱光検出信号を出力する。また、異常由来散乱光検出部32は、光が入射してくる側に、異常由来散乱光のみを通過させる第2のフィルタ321を備えているので、検出光L2(第3の分岐光L23)に異常由来散乱光が含まれている場合には(ステップS103)、これを検出し、その強度、周波数、位相などの情報を示す異常由来散乱光検出信号を出力する。また、蛍光検出部33は、光が入射してくる側に、蛍光のみを通過させる第3のフィルタ331を備えているので、検出光L2(第4の分岐光L24)に蛍光が含まれている場合には(ステップS104)、これを検出し、その強度、周波数、位相などの情報を示す蛍光検出信号を出力する。
【0035】
このようにして、各検出部から出力されたパターン由来散乱光検出信号が示すパターン由来散乱光の強度等、異常由来散乱光検出信号の示す異常由来散乱光の強度等及び蛍光検出信号の示す蛍光の強度等は、検査位置と適宜関連付けられた状態で、情報処理装置4の記憶部4bが記録する(ステップS105〜S107)。
【0036】
次に、前記散乱光強度比較部4cが、パターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えているか否かの判定を行い、その判定結果が「パターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えている。」ことを示す場合には(ステップS108)、異常由来散乱光強度は用いずに、異常検出部4dが、前記記憶部4bに記憶している蛍光の強度のみに基づいて、表面Sa上に、例えばレジスト残渣などの散乱光を発し難いが蛍光を発する異物が存在しているか否かの検出を行う(ステップS109)。そして、表面Sa上に、蛍光を発する異物が存在している場合には(ステップS111)、その旨およびその異物を検出した位置とを出力する(ステップS112)。
【0037】
一方、散乱光強度比較部4cの判定結果が、「パターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えていない。」ことを示す場合には(ステップS108)、上述のレジスト残渣などの蛍光を発する異物が存在しているか否かの検出を行うに加え、異常検出部4dが、前記記憶部4bに記憶している異常由来散乱光の強度に基づいて、表面Sa上に、例えば凹凸や傷等の異物が有るか否かの検出を行う(ステップS110)。そして、表面Sa上に、蛍光を発する異物又は散乱光を生じさせる異物が存在している場合には(ステップS111)、その旨およびその異物を検出した位置とを出力する(ステップS112)。
【0038】
このように散乱光強度比較部4cの判定結果を受け付け、その結果が閾値を超えているとの結果であれば、散乱光はパターンによるものであると判断するパターン判断部を有している。このパターン判断部の判断に基づき、異常検出部4dは、散乱光の検出結果を、異常の検出に用いるか否かを決定する。
【0039】
したがって、以上のように構成した本実施形態に係る異常検査装置Aによれば、前記散乱光強度比較部4cが「パターン由来散乱光の強度が、所定の閾値を越えている。」との判定結果を出力した場合には、異常検出部4dが、前記記憶部4bに記憶している蛍光の強度のみに基づいて、表面Saの異常の検出、具体的には表面Sa上に、例えばレジスト残渣などの散乱光を発し難いが蛍光を発する異物が存在しているか否かの検出を行うようにしているため、係るパターン由来散乱光の強度が所定の閾値を越えているときの散乱光による検査では、不良品であるか否かが分からないものであっても、そのなかから、少なくとも蛍光を発する異物がある不良品を発見することができ、その不良品による半導体素子の歩留まり低下を防止することができるようになる。
【0040】
なお、前記実施形態では、異常由来散乱光検出部32を有するので、パターン由来散乱光が強くとも、異常由来散乱光を検出できると考えがちであるが、パターン由来散乱光の一部は、異常由来散乱光検出部32の偏光フィルタ321を通過する。このため、パターン由来散乱光の強度が強いと異常由来散乱光検出部32は異常由来散乱光を精度良く検出することができない。したがって、パターン由来散乱光検出部31で検出した光の強度に基づき、異常由来散乱光検出部32で検出した光の強度を、異常の検出に用いるか否かを判断しなくてはいけない。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
例えば、異常由来散乱光の強度に対するパターン由来散乱光の強度の比率が、所定の閾値を超える場合、蛍光の強度に基づいて、異常の検出を行うようにしてもよい。ほとんどの場合、パターン由来散乱光の方が、異常由来散乱光よりも強いので、その比率でパターンか否かを判断できる。
【0043】
また、例えば、異常由来散乱光の強度に対するパターン由来散乱光の強度の比率と、パターン由来散乱光の強度とがそれぞれ所定の条件を満たす場合に、異常検出部4dが、蛍光検出部33で検出した蛍光の強度のみに基づいて、異常の検出を行うように構成することもできる。
【0044】
ここで、異常由来散乱光の強度に対するパターン由来散乱光の強度の比率と、異常由来散乱光の強度又はパターン由来散乱光の強度とがそれぞれ所定の条件を満たすとは、例えば、前記比率が所定の第1の閾値である10.0以上、すなわちパターン由来散乱光の強度が異常由来散乱光の強度の10倍以上であり、且つ、パターン由来散乱光の強度が所定の第2の閾値である数mVを越えるもの等が挙げられる。
【0045】
また、上記実施形態では、表面Sa上のパターンにより散乱された散乱光を、パターン由来散乱光検出部31と異常由来散乱光検出部32とによって、パターン由来散乱光と異常由来散乱光とに分けて検出するようにしているが、これらを分けずに散乱光検出部30で検出するようにしてもよい。この場合には、図5に示すように、異常検査装置Aが、レーザ光源21と、光照射部2と、この光照射部2で測定光L1をサンプルSの表面Sa上で走査した場合に、表面Sa上のパターン又は異常により散乱された散乱光及び表面Sa上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出する散乱光検出部30及び蛍光検出部33と、散乱光検出部30で検出した散乱光の強度が、所定の閾値を超える場合には、蛍光検出部33で検出した蛍光の強度のみに基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部4d等を備える情報処理装置4とを具備するように構成する。そして、表面Saから散乱光検出部30に至る光路上に配した第1のハーフミラー34によって、表面Saからの検出光L2が、該第1のハーフミラー34を透過して散乱光検出部30に向かう第1の分岐光L21と、該第1のハーフミラー34で反射され蛍光検出部33に向かう第2の分岐光L22とに分岐されるように構成するとともに、散乱光検出部30の光が入射してくる側に、測定光L1の波長を中心とした狭い範囲の光のみを通過させる第4のフィルタ301を配し、この第4のフィルタ301を透過してくる光を、前記光検出器312等と同様の光検出器302で検出するようにすれば良い。
【0046】
かかる構成によれば、散乱光強度比較部4cが、「散乱光の強度が、所定の閾値を越えている。」との判定結果を出力した場合には、異常検出部4dが、前記記憶部4bに記憶している蛍光の強度のみに基づいて、表面Saの異常の検出、具体的には表面Sa上に、例えばレジスト残渣などの散乱光を発し難いが蛍光を発する異物が存在しているか否かの検出を行う。このため、散乱光の強度が所定の閾値を越えているときの散乱光による検査では、不良品であるか否かが分からないものであっても、そのなかから、少なくとも蛍光を発する異物がある不良品を発見することができ、その不良品による半導体素子の歩留まり低下を防止することができるようになり、且つ、上記実施形態よりも装置構成を簡便なものとすることができる。
【0047】
また、情報処理装置4が、例えば、パターン設計図等から予測されるパターン由来散乱光の強度分布と測定値と比較してパターン由来散乱光であるか否かを判定するような機能を追加してもよい。また、ステージアドレス等から得られる検査位置と、パターン設計図等との対比により判定を行うようにしてもよい。
【0048】
そして、このように構成すれば、その散乱光強度比較部4cの判断基準となるパターン由来散乱光の強度が、本当にパターン由来のものであるか否かを知ることができるようになり、上記異常の検出の精度を向上することができる。
【0049】
また、サンプルSの表面Saを覆う位置に図示しないペリクル膜を設けても上述した検査の妨げにはならず、該ペリクル膜に生じる異物などの検査をも同時に行うことができる。
【0050】
また、ステージ1が、X、Yステージであって、光検出系3などがZステージに搭載された構成とすることもできる。
【0051】
また、ステージ1が固定で、光検出系3などがX、Y、Zステージに搭載された構成とすることもできる。
【0052】
測定光L1をサンプルSの表面Sa上で走査するようにしているが、走査しなくても上記異常の検出を行うことができる。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態である異常検査装置の構成を概略的に示す全体概略図。
【図2】同実施形態における光検出系の構成態様を示す概略図。
【図3】同実施形態における情報処理装置の機能構成図。
【図4】同実施形態における異常検査装置の動作を説明するためのフロー図。
【図5】本発明の他の実施形態である光検出系の構成態様を示す概略図。
【符号の説明】
【0055】
A・・・・異常検査装置
S・・・・測定対象(サンプル)
Sa・・・表面
L1・・・測定光
4d・・・異常検出部
21・・・光源(レーザ光源)
30・・・散乱光検出部
31・・・パターン由来散乱光検出部
32・・・異常由来散乱光検出部
33・・・蛍光検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に対して測定光を照射する光源と、
前記測定光を前記測定対象の表面上に照射した場合に、前記表面上のパターンにより散乱されたパターン由来散乱光、前記表面上の異常により散乱された異常由来散乱光、及び、前記表面上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するためのパターン由来散乱光検出部、異常由来散乱光検出部及び蛍光検出部と、
前記パターン由来散乱光検出部で検出した光の強度が、所定の閾値を越える場合に、前記蛍光検出部で検出した光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部を具備している異常検査装置。
【請求項2】
測定対象に対して測定光を照射する光源と、
前記測定光を前記測定対象の表面上に照射した場合に、前記表面上のパターンにより散乱されたパターン由来散乱光、前記表面上の異常により散乱された異常由来散乱光、及び、前記表面上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するためのパターン由来散乱光検出部、異常由来散乱光検出部及び蛍光検出部と、
前記異常由来散乱光検出部で検出した光の強度に対する前記パターン由来散乱光検出部で検出した光の強度の比率が、所定の閾値を越える場合に、前記蛍光検出部で検出した光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部を具備している異常検査装置。
【請求項3】
測定対象に対して測定光を照射する光源と、
前記測定光を前記測定対象の表面上に照射した場合に、前記表面上のパターン又は異常により散乱された散乱光及び前記表面上の異常により発生した蛍光をそれぞれ検出するための散乱光検出部及び蛍光検出部と、
前記散乱光検出部で検出した光の強度が、所定の閾値を超える場合には、前記蛍光検出部で検出した蛍光の強度に基づいて、前記異常の検出を行う異常検出部を具備している異常検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−164399(P2008−164399A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353479(P2006−353479)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】