説明

発光素子

【課題】製造コストを大幅に増加させずに、発光出力が高く、不要な波長の光の放出が少ない発光素子を提供する。
【解決手段】発光素子1は、反射部210が複数のペア層を有し、第1の半導体層210aが、光のピーク波長をλ、第1の半導体層210aの屈折率をn、第2の半導体層210bの屈折率をn、第1クラッド層220の屈折率をnIn、光の入射角をθとした場合に、式(1)で定められる厚さTA1を有し、第2の半導体層210bが式(2)で定められる厚さTB1を有し、ペア層が44以上61以下のθの値の範囲で式(1)及び式(2)で規定される厚さの第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bを含み、44以上61以下のθの値の範囲で式(1)で規定される厚さの第1の半導体層210aと式(2)で規定される厚さの第2の半導体層210bとからなるペア層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。特に、本発明は、発光部で発光した光に対して不透明な半導体基板を用い、半導体基板と発光部との間に反射部を備える発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、n型GaAs基板と、n型GaAs基板上に設けられる光反射層と、光反射層上に設けられるn型Al0.45Ga0.55Asクラッド層と、n型Al0.45Ga0.55Asクラッド層上に設けられるp型GaAs活性層と、p型GaAs層上に設けられるp型Al0.45Ga0.55Asクラッド層と、p型Al0.45Ga0.55Asクラッド層上に設けられるp型GaAsキャップ層とを備え、光反射層は、n型AlAs/n型AlGa1−xAsの積層構造からなり、当該積層構造は膜厚を連続的に変化させたチャープ状に形成されると共に、所定の反射波長幅及び反射率が得られる変厚割合、積層数、及び混晶比の関係が規定されている発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の発光素子は、基板側へ進行した光を光反射層が光波干渉によって反射するので、光出力を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−37017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発光素子は、光反射層単体での反射波長領域を広げることができるものの、光反射層の膜厚を増加させずに発光素子の発光出力を向上させることは困難である。また、特許文献1に記載の発光素子からは、活性層のバンドギャップに相当する波長域の光(以下、「第一放射光」と称する)に加え、GaAsのバンドギャップに相当する波長域の光、すなわち、赤外光(以下、「第二放射光」と称する)が放射されることがある。これは、活性層から放射された第一放射光の一部がGaAs基板又はGaAsからなるバッファ層に入射し、第一放射光によりGaAs基板若しくはバッファ層が光励起されることに起因する。すなわち、GaAs基板若しくはGaAsからなるバッファ層を用いた発光素子においては、第一放射光により光励起されたGaAs基板若しくはバッファ層から第二放射光が放射されることがある。第二放射光を放射する発光素子を用いた場合、一般的な半導体フォトダイオードは当該発光素子から放射される第二放射光により誤作動する場合があり、また、例えば、スキャナー用途には適していない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、製造コストを大幅に増加させずに、発光出力が高く、不要な波長の光の放出が少ない発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、半導体基板と、第1導電型の第1クラッド層と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2クラッド層とに挟まれる活性層を有する発光部と、半導体基板と発光部との間に設けられ、活性層が発する光を反射する反射部と、発光部の反射部の反対側に設けられる電流分散層とを備え、反射部が、第1の半導体層と、第1の半導体層とは異なる第2の半導体層とからなるペア層を複数有して形成され、第1の半導体層が、活性層が発する光のピーク波長をλ、第1の半導体層の屈折率をn、第2の半導体層の屈折率をn、第1クラッド層の屈折率をnIn、第1クラッド層から第2の半導体層への光の入射角をθとした場合に、式(1)で定められる厚さTA1を有し、第2の半導体層が、式(2)で定められる厚さTB1を有し、ペア層が、44以上61以下のθの値の範囲で式(1)及び式(2)で規定される厚さの第1の半導体層及び第2の半導体層を含むと共に、44以上61以下のθの値の範囲で式(1)で規定される厚さの第1の半導体層と44以上61以下のθの値の範囲で式(2)で規定される厚さの第2の半導体層とからなるペア層を含む発光素子が提供される。
【数1】

【数2】

【0008】
また、上記発光素子において、第2クラッド層と電流分散層との間に設けられる介在層を更に備え、介在層は、第2クラッド層を構成する半導体のバンドギャップエネルギーと、電流分散層を構成する半導体のバンドギャップエネルギーとの間のバンドギャップエネルギーを有する半導体から形成されてもよい。
【0009】
また、上記発光素子において、ペア層が、λ/4nの1.5倍以上の厚さTA1を有する第1の半導体層と、λ/4nの1.5倍以上の厚さTB1を有する第2の半導体層とを含んでもよい。
【0010】
また、上記発光素子において、反射部と半導体基板との間に設けられる第2反射部を更に備え、第2反射部が、第3の半導体層と、第3の半導体層とは異なる第4の半導体層とからなるペア層を複数有して形成され、第3の半導体層が、λp2を870±30nmとし、第3の半導体層の屈折率をnとした場合に、式(3)で定められる厚さTを有し、第4の半導体層が、第4の半導体層の屈折率をnとした場合に、式(4)で定められる厚さTを有してもよい。
【数3】

【数4】

【0011】
また、上記発光素子において、反射部及び第2反射部が、活性層を構成する半導体のバンドギャップより大きなバンドギャップを有し、活性層から発せられる光に対して透明であるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)から形成されてもよい。
【0012】
また、上記発光素子において、第1の半導体層及び第2の半導体層が、互いに屈折率の異なるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)又は互いに屈折率の異なる(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成され、第3の半導体層及び第4の半導体層が、互いに屈折率の異なるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1))又は互いに屈折率の異なる(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成されてもよい。
【0013】
また、上記発光素子において、電流分散層が、複数の電流分散層を有し、複数の電流分散層のうち、半導体基板とは反対側に位置する電流分散層が、複数の電流分散層の中でキャリア濃度及び導電型を決定する不純物濃度が最も高くすることもできる。
【0014】
また、上記発光素子において、電流分散層の発光部の反対側の表面に設けられる表面電極と、電流分散層の表面電極が設けられる領域とは異なる表面の領域に設けられる凹凸部と、凹凸部の表面に設けられ、活性層が発する光に対して透明であり、電流分散層を構成する半導体の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する材料からなる光取り出し層とを更に備えてもよい。
【0015】
また、上記発光素子において、光取り出し層が、活性層が発する光の波長をλp、光取り出し層を構成する材料の屈折率をn、定数A(ただし、Aは奇数)とした場合に、A×λp/(4×n)で規定される値の±30%の範囲内の厚さdを有することもできる。
【0016】
また、上記発光素子において、光取り出し層が、絶縁体、第1導電型若しくは第2導電型の酸化物、又は、第1導電型若しくは第2導電型の窒化物を含んで形成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発光素子によれば、製造コストを大幅に増加させずに、発光出力が高く、不要な波長の光の放出が少ない発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面図である。
【図1B】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子が備える反射部の模式的な断面図である。
【図1C】本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の模式的な平面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面図である。
【図5】エッチング時間と平均粗さ及び二乗平均粗さとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面を示し、図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子が備える反射部の模式的な断面を示す。
【0020】
(発光素子1の構造の概要)
第1の実施の形態に係る発光素子1は、一例として、橙色光を放射する半導体発光素子としての発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。具体的に、発光素子1は、第1導電型としてのn型の半導体基板10と、半導体基板10の上に設けられるn型のバッファ層200と、バッファ層200の上に設けられるn型の化合物半導体の多層構造を有する反射部210と、反射部210の上に設けられるn型の第1クラッド層220と、第1クラッド層220の上に設けられる活性層222と、活性層222の上に設けられる第1導電型とは異なる第2導電型としてのp型の第2クラッド層224と、第2クラッド層224の上に設けられるp型の介在層230と、介在層230の上に設けられるp型の電流分散層240とを備える。
【0021】
また、電流分散層240は、電流分散層240の介在層230側の反対側の表面(すなわち、光取り出し面)に光取り出し面における光の反射を低減する凹凸部250を有する。また、活性層222は第1クラッド層220と第2クラッド層224とに挟まれており、以下の説明において、第1クラッド層220と、活性層222と、第2クラッド層224とをまとめて発光部20という場合がある。
【0022】
また、発光素子1は、電流分散層240の表面の一部、すなわち、凹凸部250が設けられている領域とは異なる領域に設けられる表面電極30と、半導体基板10の反射部210の反対側に設けられる裏面電極35とを更に備える。なお、表面電極30は、複数の表面電極層を含む積層構造を有して構成することもできる。例えば、表面電極30は、電流分散層240に接して設けられる第1表面電極層と、第1表面電極層の上に設けられる第2表面電極層と、第2表面電極層の上に設けられる第3表面電極層とを含んで構成することもできる。
【0023】
(半導体基板10)
半導体基板10としては、例えば、予め定められた導電型のキャリアを含み、予め定められた範囲のキャリア濃度を有するGaAs基板を用いることができる。また、半導体基板10としては、予め設定されたオフ角度を有するオフ基板、又は、オフ角度を有さないジャスト基板を用いることができる。なお、半導体基板10上に形成する複数の化合物半導体層の種類に応じて、半導体基板10を構成する化合物半導体材料を適宜、代えることもできる。
【0024】
(反射部210)
反射部210は、半導体基板10と発光部20との間に設けられ、活性層222が発する光を反射する。具体的に、反射部210は、図1Bに示すように、複数の化合物半導体層の積層構造を含んで形成される。そして、反射部210は、第1の半導体層210aと、第1の半導体層210aとは異なる屈折率を有する第2の半導体層210bとからなるペア層を複数有して形成される。なお、本実施の形態において反射部210は、15ペア以上のペア層を有して形成される。なお、反射部210は、光を反射する機能の低下を抑制すると共に発光素子1の製造コストの増加を抑制することを目的とする場合、8μm程度以下の厚さを有することが好ましい。
【0025】
第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bは、活性層222から発せられる光に対して透明であり、活性層222を構成する半導体のバンドギャップより大きなバンドギャップを有するAlGaAs系半導体から形成される。すなわち、第1の半導体層210a、及び第2の半導体層210bは、互いに屈折率の異なるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)から形成される。そして、第1の半導体層210aを構成する半導体のAl組成と、第2の半導体層210bを構成する半導体のAl組成とが異なるように第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bは形成される。
【0026】
なお、第1の半導体層210a、及び第2の半導体層210bは、互いに屈折率の異なる(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成することもできる。例えば、第1の半導体層210aを第1の屈折率を有する(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成し、第2の半導体層210bを第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成することができる。
【0027】
また、第1の半導体層210aを第1の屈折率を有する(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成し、第2の半導体層210bを第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有するAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)から形成することもできる。更に、第1の半導体層210aを第1の屈折率を有するAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)から形成し、第2の半導体層210bを第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成することもできる。
【0028】
なお、第1の半導体層210aの厚さ、及び第2の半導体層210bの厚さは、後述するように光の入射角に応じた厚さを有して形成することができるが、図1Bにおいては説明の便宜上、略同一の厚さで示す。
【0029】
ここで、反射部210が有する複数のペア層はそれぞれ、活性層222が発する光の発光ピーク波長以上の波長の光を反射すると共に、それぞれ異なる入射角の光を反射する。具体的に、第1の半導体層210aは、活性層222が発する光のピーク波長をλ、第1の半導体層210aの屈折率をn、第2の半導体層210bの屈折率をn、第1クラッド層220の屈折率をnIn、第1クラッド層220から第2の半導体層210bへの光の入射角をθとした場合(ただし、θは、第2の半導体層210bの主面を光の入射面とした場合、入射面の法線に対する角度である)とした場合に、以下の式(1)で定められる厚さTA1を有して形成される。また、第2の半導体層210bは、以下の式(2)で定められる厚さTB1を有して形成される。
【0030】
【数5】

【0031】
【数6】

【0032】
複数のペア層のうち、一のペア層に含まれる第1の半導体層210aの厚さは、当該一のペア層に入射する光の入射角θに応じて式(1)から算出される厚さを有して形成される。同様に当該一のペア層に含まれる第2の半導体層210bの厚さも、入射角θに応じて式(2)から算出される厚さを有して形成される。同様にして、複数のペア層に含まれる他のペア層についても、当該他のペア層に入射する光の入射角θに応じた厚さを有する第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bを含んで形成される。
【0033】
更に、本実施の形態において反射部210は、44以上61以下のθの値の範囲で式(1)及び式(2)で規定される厚さの第1の半導体層210a、及び第2の半導体層210bを含む。すなわち、反射部210は、44以上61以下のθの値の範囲で式(1)及び式(2)で規定される厚さの第1の半導体層210a、及び第2の半導体層210bからなるペア層を少なくとも1つ含む。また、反射部210は、44以上61以下のθの値の範囲で式(1)で規定される厚さの第1の半導体層210aと44以上61以下のθの値の範囲で式(2)で規定される厚さの第2の半導体層210bとからなるペア層を少なくとも一つ含む。
【0034】
そして、複数のペア層はそれぞれ、式(1)及び式(2)のθの値がペア層ごとに異なることにより、互いに異なる厚さを有して形成される。例えば、一のペア層の厚さと他のペア層の厚さとは、互いに異なるように形成される。そして、一のペア層におけるθの値をθ、他のペア層におけるθの値をθにした場合に、一のペア層に含まれる第1の半導体層210aの厚さ及び第2の半導体層210bの厚さは、θの値を用いて式(1)及び式(2)から算出され、他のペア層に含まれる第1の半導体層210aの厚さ及び第2の半導体層210bの厚さは、θとは異なるθの値を用いて式(1)及び式(2)から算出される。なお、ペア層は、λ/4nの1.5倍以上2.0倍以下の厚さTA1を有する第1の半導体層210aと、λ/4nの1.5倍以上2.0倍以下の厚さTB1を有する第2の半導体層210bとを含むことができる。
【0035】
本実施の形態に係る反射部210は、上記のとおり、44以上61以下のθの値を用いて式(1)及び式(2)で規定される厚さを有する第1の半導体層210aと第2の半導体層210bとを有する。これにより、発光ピーク波長が570nmから650nmの光(すなわち、第一放射光)を発する発光素子1を製造した場合に、発光素子1を構成するGaAs系の材料に第一放射光が入射して光励起によって生じる第二放射光は、反射部210においてGaAs系の材料からなる半導体層及び/又は基板側に反射される。
【0036】
本実施の形態に係る発光素子1はこのような反射部210を備えているので、活性層222から放射された光が反射部210に様々な入射角で入射しても、当該光が反射部210において光取り出し面の方向に反射される。
【0037】
(バッファ層200、発光部20)
発光部20は、第1クラッド層220、活性層222、及び第2クラッド層224を有する。まず、バッファ層200は、半導体基板10に接して設けられる。バッファ層200は、半導体基板10上に設けられ、例えば、予め定められた導電型のキャリアを含み、予め定められた範囲内のキャリア濃度を有する化合物半導体を用いて形成することができる。例えば、バッファ層200は、半導体基板10がn型のGaAs基板から形成される場合、n型のGaAsから形成される。また、第1クラッド層220と、活性層222と、第2クラッド層224とはそれぞれ、例えば、(AlGa1−xIn1−yP(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1)で表される三元系、又は四元系のIII−V族化合物半導体材料から形成される。なお、第1の実施の形態に係る活性層222は、例えば、ノンドープのGaIn1−xP単層(ただし、0≦x≦1)から形成することもできる。
【0038】
(介在層230)
介在層230は、第2クラッド層224を構成する半導体材料と電流分散層240を構成する半導体材料とが互いに異なる場合に、第2クラッド層224と電流分散層240とのヘテロ界面の電位障壁を低減する半導体材料から形成される。具体的に、介在層230は、第2クラッド層224と電流分散層240との間に設けられる。より具体的に、介在層230は、第2クラッド層224の活性層222の反対側に設けられると共に、第2クラッド層224を構成する半導体のバンドギャップエネルギーと電流分散層240を構成する半導体のバンドギャップエネルギーとの間のバンドギャップエネルギーを有する半導体材料から形成される。例えば、介在層230は、p型のGaIn1−zP(ただし、zは、一例として、0.6≦z≦0.9)から形成される。発光素子1が介在層230を備えることにより、発光素子1から製造される発光素子の順方向電圧を低減できる。
【0039】
(電流分散層240)
電流分散層240は、発光部20の反射部210の反対側に設けられ、発光素子1に電流が供給された場合に、活性層222の平面方向に略均一に電流が供給されるように当該電流を分散させる。また、電流分散層240は、活性層222が発する光を透過する半導体材料から形成される。例えば、電流分散層240は、p型のGaP、p型のGaAsP、又はp型のAlGaAsから形成することができる。更に、電流分散層240は、表面に凹凸部250を有する。なお、電流分散層240は、2.0μm以上10.0μm以下の厚さを有する。
【0040】
(凹凸部250)
凹凸部250は、電流分散層240の表面電極30が設けられる領域とは異なる表面の領域に設けられる。そして、凹凸部250は、電流分散層240の発光部20の反対側の表面を粗面化して形成される。凹凸部250は、当該表面を所定のエッチャントでエッチングすることによりランダムな形状を有して形成される。また、凹凸部250は、当該表面に予め定められたパターンを有して形成することもできる。更に、凹凸部250は、発光素子1から製造される発光素子の光取り出し効率を向上させることを目的として、算術平均粗さRaが0.04μm以上0.25μm以下であること、二乗平均粗さRMSが0.05μm以上0.35μm以下であること、及び/又は最大高さRyが1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0041】
図1Cは、本発明の第1の実施の形態に係る発光素子の模式的な平面図である。
【0042】
(表面電極30、裏面電極35)
表面電極30は、電流分散層240の発光部20の反対側の表面に設けられる。そして、表面電極30は、電流分散層240にオーミック接触する材料から形成される。具体的に、表面電極30は、Be、Zn、Ni、Ti、Pt、Al、Au等の金属材料から選択される少なくとも1つのp型電極用の金属材料を含んで形成される。例えば、表面電極30は、電流分散層240の側から第1の表面電極層としてのAuBe層(又はAuZn層)、第2の表面電極層としてのNi層、第3の表面電極層としてのAu層の順に積層された積層構造を有して形成することができる。なお、表面電極30は、電流分散層240の介在層230の反対側の面、つまり、発光素子1の光取り出し面の一部に設けられる。
【0043】
ここで、第1の表面電極層は、100nm以上600nm以下の厚さを有することが好ましい。また、第1の表面電極層をAuBe合金から構成する場合、Be濃度は1%以下であることが好ましい。一方、第1の表面電極層をAuZn合金から構成する場合、Zn濃度は5%以上15%以下であることが好ましい。
【0044】
また、表面電極30は、図1Cに示すように、発光素子1の平面視にて略円形状の円部分30aと、円部分30aから発光素子1の四隅に向かって延びる4本の足部分30bとを有して形成される。なお、表面電極30の形状は、例えば、四角形状、菱形形状、多角形状等の形状を有して形成することができる。
【0045】
裏面電極35は、半導体基板10にオーミック接触する材料から形成される。具体的に、裏面電極35は、Ge、Ni、Ti、Pt、Al、Au等の金属材料から選択される少なくとも1つのn型電極用の金属材料を含んで形成される。例えば、裏面電極35は、半導体基板10側からAuGe、Ni、Auの順に積層された積層構造を有して形成することができる。なお、裏面電極35は、半導体基板10の裏面の全面若しくは略全面に形成される。
【0046】
(発光素子1の製造方法)
第1の実施の形態に係る発光素子1は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、半導体基板10を準備する。また、半導体基板10は、LEC法により製造した半導体のインゴットから切り出して作製できる。更に、一例としてTeを当該半導体に添加することで、半導体基板10の導電型をn型にすることができる。
【0047】
そして、半導体基板10の上に、例えば、有機金属気相成長法(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE法)によって複数の化合物半導体層(すなわち、バッファ層200、反射部210、第1クラッド層220、活性層222、第2クラッド層224、介在層230、電流分散層240)を含むIII−V族化合物半導体の半導体積層構造を形成する(成長工程)。
【0048】
ここで、MOVPE法を用いた半導体積層構造の形成は、成長温度、成長圧力、半導体積層構造が有する複数の化合物半導体層のそれぞれの成長速度、及びV/III比をそれぞれ予め定められた範囲内の値に制御して実施する。なお、V/III比とは、トリメチルガリウム(TMGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)等のIII族原料のモル数を基準にした場合における、アルシン(AsH)、ホスフィン(PH)等のV族原料のモル数の比である。
【0049】
また、MOVPE法において用いる原料は、Ga原料として、トリメチルガリウム(TMGa)、又はトリエチルガリウム(TEGa)を用いることができ、Al原料としてトリメチルアルミニウム(TMAl)を用いることができ、In原料としてトリメチルインジウム(TMIn)等の有機金属化合物を用いることができる。また、As源としてアルシン(AsH)を用いることができ、P源としてホスフィン(PH)等の水素化物ガスを用いることができる。更に、n型のドーパントの原料は、セレン化水素(HSe)、ジシラン(Si)を用いることができる。そして、p型のドーパントの原料は、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。
【0050】
また、n型のドーパントの原料として、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジエチルテルル(DETe)、又はジメチルテルル(DMTe)を用いることもできる。そして、p型のドーパントの原料として、CpMgの代わりに、ジメチルジンク(DMZn)又はジエチルジンク(DEZn)を用いることもできる。
【0051】
なお、半導体基板10上にバッファ層200を形成することにより、MOVPE装置内に残留している、前回の結晶成長時に用いたドーパントの影響(すなわち、炉内メモリーの影響)をキャンセルできる。これにより、エピタキシャルウエハを安定的に製造することができる。また、バッファ層200を半導体基板10上にエピタキシャル成長させることで、バッファ層200上にエピタキシャル成長させる化合物半導体層の結晶性を向上させることができる。
【0052】
以上の各工程を経ることにより、第1の実施の形態に係る発光素子1用の凹凸部250を備えていないエピタキシャルウエハが製造される。
【0053】
次に、当該エピタキシャルウエハをMOVPE装置から搬出する。そして、フォトリソグラフィー法、成膜法(例えば、真空蒸着法、スパッタ法等)を用いて、エピタキシャルウエハの表面、すなわち、電流分散層240の表面に、マトリックス状に配置する複数の表面電極30を形成する(表面電極形成工程)。なお、表面電極30の形成にはリフトオフ法を用いることができる。
【0054】
続いて、半導体基板10の裏面の略全面に裏面電極35を形成する。更に、表面電極30と第2の電流分散層244との間、及び裏面電極35と半導体基板10裏面との間のそれぞれをオーミック接触させるべく、所定の雰囲気下(例えば、窒素雰囲気等の不活性雰囲気下)、所定の温度、所定の時間、アロイ処理を実施する(アロイ工程)。これにより、LED用のエピタキシャルウエハが得られる。
【0055】
続いて、LED用のエピタキシャルウエハの電流分散層240の表面に凹凸化処理(すなわち、粗面化処理)を施すことにより、凹凸部250を形成する(凹凸部形成工程)。粗面化処理は、表面電極30が設けられている領域を除く電流分散層240の表面に施す。粗面化処理は、浸食法を用いることができる。例えば、電流分散層240がGaPから形成されている場合、酢酸系のエッチャントによるエッチングにより実施できる。なお、電流分散層240の表面にフォトリソグラフィー法を用いて予め定められたマスクパターンを形成した後、形成したマスクパターンをマスクとして、電流分散層240の表面にエッチング処理を施すこともできる。
【0056】
次に、凹凸部250を備えるエピタキシャルウエハを、製造する発光素子1のサイズに合わせて切断することにより、複数の発光素子1が製造される(切断工程)。具体的には、複数の表面電極30それぞれの間を、製造すべき発光素子1のサイズに合わせてダイシング装置によりダイシングする。なお、ダイシング処理後に、複数の発光素子1の端面にエッチング処理を施すことにより、ダイシングによる機械的ダメージを除去することもできる。
【0057】
このようにして製造される発光素子1は、例えば、発光ピーク波長が620nm付近の赤色領域の光を発する発光ダイオードである。そして、発光素子1の平面視における形状は略矩形であり、平面視における寸法は、一例として、275μm角である。なお、発光素子1は、表面電極30の上にワイヤーボンディング用パッドとしてのパッド電極を更に備えることもできる。
【0058】
(変形例)
【0059】
第1の実施の形態に係る発光素子1が備える半導体基板10、バッファ層200、反射部210、第1クラッド層220、第2クラッド層224、介在層230、及び電流分散層240の化合物半導体層は、これらの化合物半導体層を構成する化合物半導体の導電型を、本実施の形態の反対にすることもできる。例えば、半導体基板10、バッファ層200、反射部210、及び第1クラッド層220の導電型をp型にすると共に、第2クラッド層224、介在層230、及び電流分散層240の導電型をn型にすることもできる。
【0060】
また、活性層222は単層構造ではなく、量子井戸構造を有して形成することもできる。量子井戸構造は、単一量子井戸構造、多重量子井戸構造、又は歪み多重量子井戸構造のいずれの構造からも形成することができる。なお、発光部20は、第1クラッド層220、活性層222、及び第2クラッド層224以外の半導体層を含んで形成することもできる。
【0061】
また、第1の実施の形態に係る発光素子1は、赤色を含む光(例えば、発光波長が620nm付近の光)を発する発光素子であるが、反射部210がGaAs系材料からの第二放射光を反射する構成を有する限り、発光素子が発する光の波長はこの波長に限定されない。よって、活性層222の構造を制御して、所定の波長範囲の光を発する発光素子を形成することもできる。活性層222が発する光としては、例えば、橙色光、黄色光、又は緑色光等が挙げられる。
【0062】
そして、活性層222が発する光の波長に応じて反射部210が有する第1の半導体層210aの厚さ及び第2の半導体層210bの厚さ、及び材質を変えることができる。例えば、発光波長が570nm(すなわち、黄緑色光)の場合、反射部210が有する第1の半導体層210aについては、式(1)のθを56°〜61°の範囲に設定し、第2の半導体層210bについては、式(2)のθを56°〜61°の範囲に設定してそれぞれの厚さを設計する。
【0063】
また、発光波長が580nmの場合はθを54°〜59°の範囲に設定し、発光波長が590nm帯(すなわち、黄色光)の場合はθを52°〜57°の範囲に設定することにより反射部210が有する第1の半導体層210aの厚さ及び第2の半導体層210bの厚さを設計する。
【0064】
また、発光波長が570nm〜590nmの範囲においては、反射部210は、Al0.6Ga0.4Asを用いて第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bを構成する。これは、仮に第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bをAl0.5Ga0.5Asから構成すると、570nm〜590nmの波長の光が反射部210に吸収されるからである。
【0065】
また、発光波長が600nm以上である場合、第2の半導体層210bはAl0.5Ga0.5Asから構成できる。そして、発光波長が600nm以上である場合、反射部210が有する第1の半導体層210aについては、式(1)のθを52°〜57°の範囲に設定し、第2の半導体層210bについては、式(2)のθを52°〜57°の範囲に設定してそれぞれの厚さを設計する。
【0066】
また、発光波長が610nmの場合はθを50°〜55°の範囲に設定し、発光波長が630nmの場合はθを47°〜52°の範囲に設定し、640nmの場合はθを46°〜51°の範囲に設定し、650nmの場合はθを44°〜49°の範囲に設定することにより反射部210が有する第1の半導体層210aの厚さ及び第2の半導体層210bの厚さを設計する。
【0067】
(第1の実施の形態の効果)
第1の実施の形態に係る発光素子1は、反射部210が第二放射光(例えば、活性層222が発する光により半導体基板10を構成する化合物半導体が光励起され、半導体基板10から発せられる光)を反射する第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bからなるペア層を有するので、発光素子1の外部に放射される第二放射光の量を低減できる。
【0068】
また、第1の実施の形態に係る発光素子1は、複数の入射角に対応して厚さが制御された第1の半導体層210aと第2の半導体層210bとからなる複数のペア層を有する反射部210を備えるので、反射部210に様々な入射角から光が入射したとしても、反射部210は、当該光を光取り出し面側に反射することができる。更に、発光素子1は、光取り出し面に凹凸部250を備えるので、反射部210により反射された光を効率的に発光素子1の外部に取り出すことができる。これにより、光取り出し効率が向上された本実施の形態に係る発光素子1を提供することができる。
【0069】
以上より、第1の実施の形態に係る発光素子1は、活性層222が発する光を反射する機能と、活性層222が発する光によって励起される第二放射光を反射する機能とを反射部210が併せ持つので、不要な波長の光の発光素子1の外部への放射を抑制することができる。更に、発光素子1は、第二放射光を反射する機能を有する半導体層を別途設けることを要さないので、製造コストを大幅に増加させずに発光出力を向上させることができる。
【0070】
[第2の実施の形態]
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面の概要を示す。
【0071】
第2の実施の形態に係る発光素子1aは、第1の実施の形態に係る発光素子1と異なり、活性層222が第1アンドープ層221と第2アンドープ層223により挟まれている点を除き、第1の実施の形態に係る発光素子1と略同一の構成を備える。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0072】
具体的に、第2の実施の形態に係る発光素子1aは、半導体基板10と、半導体基板10上に形成されるバッファ層200と、バッファ層200上に形成される反射部210と、反射部210上に形成される第1クラッド層220と、第1クラッド層220上に形成される第1アンドープ層221と、第1アンドープ層221上に形成される活性層222と、活性層222上に形成される第2アンドープ層223と、第2アンドープ層223上に形成される第2クラッド層224と、第2クラッド層224上に形成される介在層230と、介在層230上に形成される電流分散層240と、電流分散層240の表面に形成される凹凸部250と、電流分散層240の表面の一部に設けられる表面電極30と、半導体基板10の裏面の全面若しくは略全面に設けられる裏面電極35とを備える。
【0073】
第1アンドープ層221は、第1クラッド層220中のn型ドーパントが活性層222中に拡散することを抑制する。また、第2アンドープ層223は、第2クラッド層224中のp型ドーパントが活性層222中に拡散することを抑制する。第1アンドープ層221及び第2アンドープ層223は、例えば、ドーパントを含まない(AlGa1−xIn1−yPから形成される。活性層222を第1アンドープ層221と第2アンドープ層223とで挟むことにより、第1クラッド層220及び第2クラッド層224から活性層222中へのドーパントの拡散が抑制されるので、発光部20aにおける発光効率の向上を図ることができると共に、発光素子1aの信頼性を向上させることができる。
【0074】
なお、第2の実施の形態に係る発光素子1aにおいては、活性層222を第1アンドープ層221と第2アンドープ層223とによって挟んだ構造としたが、第2の実施の形態の変形例においては、第1アンドープ層221又は第2アンドープ層223のいずれか一方を設けない発光素子を形成することもできる。
【0075】
[第3の実施の形態]
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面の概要を示す。
【0076】
第3の実施の形態に係る発光素子1bは、第1の実施の形態に係る発光素子1と異なり、凹凸部250上に光取り出し層40を更に備える点を除き、第1の実施の形態に係る発光素子1と略同一の構成を備える。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0077】
発光素子1bは、表面電極30が設けられている領域を除く電流分散層240の表面に、活性層222が発する光に対して透明であり、電流分散層240を構成する半導体の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する材料から形成される光取り出し層40を備える。光取り出し層40は、活性層222が発する光の波長をλ、光取り出し層40を構成する材料の屈折率をn、定数A(ただし、Aは奇数)とした場合に、A×λ/(4×n)で規定される値の±30%の範囲内の厚さdを有して形成される。
【0078】
光取り出し層40は、絶縁体、第1導電型若しくは第2導電型の酸化物、又は第1導電型若しくは第2導電型の窒化物から形成することができる。光取り出し層40は、例えば、SiO、Sn、TiO、ITO等の酸化物若しくはSiN等の窒化物から形成することができる。また、光取り出し層40を構成する材料は、導電性を有することは要さない。更に、光取り出し層40を構成する材料の導電型は、p型、n型のいずれであってもよい。
【0079】
発光素子1bは、電流分散層240と外部の空気との間に、電流分散層240を構成する材料の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する光取り出し層40を備えるので、光取り出し効率を更に向上させることができる。
【0080】
[第4の実施の形態]
図4は、本発明の第4の実施の形態に係る発光素子の模式的な断面の概要を示す。
【0081】
第4の実施の形態に係る発光素子1cは、第1の実施の形態に係る発光素子1と異なり、電流分散層240が複数の電流分散層を有する点を除き、第1の実施の形態に係る発光素子1と略同一の構成を備える。したがって、相違点を除き詳細な説明は省略する。
【0082】
第4の実施の形態に係る発光素子1cが備える電流分散層240は、キャリア濃度及び/又は不純物濃度が互いに異なる第1の電流分散層242と第2の電流分散層244とを有する。第2の電流分散層244は、第1の電流分散層242よりも半導体基板10から遠い側に形成され、表面(すなわち、光取り出し面)に凹凸部250を有する。すなわち、第2の電流分散層244は、電流分散層240の最上層を形成する。
【0083】
第4の実施の形態において、第2の電流分散層244は、第1の電流分散層242より半導体基板10から離れた位置に設けられ、第1の電流分散層242のキャリア濃度又は不純物濃度より高いキャリア濃度又は不純物濃度を有して形成される。具体的に、第2の電流分散層244は、電流分散層240中においてキャリア濃度、及び/又は導電型を決定する不純物濃度が最も高い領域であり、発光素子1の主面(すなわち、表面)側に形成される。
【0084】
また、第2の電流分散層244(以下、電流分散最上層という場合がある)は、電流分散層240の厚さを超えない範囲内で、1.0μm以上3.0μm以下の厚さを有することが好ましい。そして、電流分散最上層の不純物濃度は、電流分散層240が有する他の電流分散層の中で最も高く設定されることが好ましい。
【実施例1】
【0085】
実施例1に係る発光素子として、第1の実施の形態に係る発光素子1に対応する発光素子であって、発光ピーク波長が620nm付近の橙色の発光素子を製造した。また、比較例に係る発光素子として、実施例1とは反射部210の構成のみが異なる発光素子も製造した。
【0086】
具体的に、まず、15°オフのオフ角を有する半導体基板10としてのn型GaAs基板上に、MOVPE法を用いてn型GaAsからなるバッファ層(ただし、Seドープ、キャリア濃度:1×1018/cm、膜厚200nm)と、第1の半導体層210aとしてのAlAs層と、第2の半導体層210bとしてのAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層を50ペア含む反射部210とをエピタキシャル成長させた。なお、反射部210を構成する各半導体層のキャリア濃度は、約1×1018/cmに制御した。
【0087】
更に、反射部210の上に第1クラッド層220としてのn型(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層(ただし、Seドープ、キャリア濃度:4×1017/cm、膜厚400nm)と、活性層222としてのアンドープの多重量子井戸層(ただし、膜厚は約400nm)と、第2クラッド層224としてのp型(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層(ただし、Mgドープ、キャリア濃度:2×1017/cm、膜厚500nm)と、介在層230としてのp型Ga0.7In0.3P介在層(ただし、Mgドープ、キャリア濃度:6×1018/cm、膜厚20nm)と、電流分散層240としてのp型GaP電流分散層(ただし、Mgドープ、キャリア濃度:2×1018/cm、膜厚8000nm)とを順次エピタキシャル成長させた。
【0088】
なお、MOVPE成長での成長温度は、n型GaAsからなるバッファ層からp型Ga0.7In0.3P介在層までの成長温度を650℃に設定すると共に、p型GaP電流分散層の成長温度を675℃に設定した。また、その他の成長条件は、成長圧力を6666.1Pa(50Torr)に設定すると共に、複数の化合物半導体層のそれぞれの成長速度を0.3nm/secから1.5nm/secに設定した。また、V/III比は、約150に設定した。ただし、p型GaP電流分散層の成長におけるV/III比は、25に設定した。MOVPE成長において用いた原料等は、第1の実施の形態において説明したので詳細な説明は省略する。
【0089】
また、活性層22としては、発光波長λpが620nmの場合、井戸層としてのGaInP層(例えば、4nmの厚さ)と、バリア層としてのAl0.5Ga0.5InP層(例えば、7.5nmの厚さ)とからなるペアを20〜40ペア有するアンドープの多重量子井戸層を用いることができる。なお、井戸層の厚さを3.5nmに、バリア層の厚さを7.5nmに固定し、井戸層のAl組成を変更して発光波長を、例えば、570nm又は590nmに調整することができる(なお、ペアの数は20〜80ペアで調整する。)。
【0090】
ここで、反射部210について詳細に説明する。反射部210が有する複数のペア層の第1の半導体層210aであるAlAs層の厚さ、及び第2の半導体層210bであるAl0.5Ga0.5As層の厚さはそれぞれ、式(1)及び式(2)から算出される厚さに制御した。すなわち、λとしては活性層222から放出される光の発光ピーク波長「620nm」を、nとしてはAlAs層の屈折率「3.125」を、nとしてはAl0.5Ga0.5As層の屈折率「3.536」を、nInとしてはn型(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pクラッド層の屈折率「3.127」を用いた。更に、式(1)及び式(2)中の角度θは、0°〜70°を用いた。なお、この場合において、1つのペア層になるAlAs層と、Al0.5Ga0.5As層のθの値は同一である。
【0091】
また、反射部210が有する1つのペア層の厚さは式(1)及び式(2)から設定されるので、θの値により異なる。実施例1においては、θを70°に設定した第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bを、反射部210は少なくとも1ペア含む。また、反射部210は、θが70°とは異なる少なくとも2種類のθの値に設定した第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bを含む。具体的には、θの値が10°及び40°に設定した第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bを含む。
【0092】
したがって、実施例1においては、式(1)及び式(2)のθとして、10°に設定した第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bからなる第1のペア層と、40°に設定した第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bからなる第2のペア層と、70°に設定した第1の半導体層210a及び第2の半導体層210bからなる第3のペア層とを反射部210は有する。
【0093】
また、反射部210は、全体の厚さが約6.0μmになるように形成した。具体的には、式(1)及び式(2)のθの値を変化させ、反射部210が有する複数の第1の半導体層210aの厚さ、第2の半導体層210bの厚さ、及びペア層の数を、反射部210の全体の厚さが約6.0μmになるように決定した。
【0094】
更に、実施例1においては、反射部210に、発光ピーク波長が620nmの第一放射光を電流分散層240の側に反射すると共に、第一放射光によって半導体基板10とバッファ層200とで生じる第二放射光(約870nmの光)を半導体基板10側に反射する機能を併せ持たせた。
【0095】
なお、発光素子1に、反射部210と半導体基板10との間に設けられる第2反射部を更に備えさせることもできる。つまり、第3の半導体層と、第3の半導体層とは異なる第4の半導体層とからなるペア層を複数有する第2反射部を、反射部210と半導体基板10との間に設けることもできる。第2反射部を設けることにより、第二放射光を更に低減することができる。
【0096】
この場合、第3の半導体層は、λp2を870±30nmとし、第3の半導体層の屈折率をnとした場合に、式(3)で定められる厚さTを有して形成される。また、第4の半導体層は、第4の半導体層の屈折率をnとした場合に、式(4)で定められる厚さTを有して形成される。なお、第3の半導体層及び第4の半導体層は、互いに屈折率の異なるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1))又は互いに屈折率の異なる(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成することができる。例えば、第3の半導体層はAlAsから、第4の半導体層はAl0.5Ga0.5Asから形成することができる。
【0097】
【数7】

【0098】
【数8】

【0099】
ここで、第3の半導体層の膜厚は、第二放射光のピーク波長が870nmの場合、870/4n(ただし、n=2.9806)から73.0nmになる。また、第4の半導体層の膜厚は、870/4n(ただし、n=3.2553)から66.8nmになる。よって、ピーク波長が870nmの第二放射光を反射部210において反射させる事を目的として、反射部210は、73.0nm厚の第3の半導体層と、66.8nm厚の第4の半導体層とを有することが要求される(第3の半導体層の厚さと第4の半導体層の厚さとの合計の厚さは139.8nmである。)。
【0100】
そして、活性層222で発生した光のうち、所定の角度で反射部210に入射した光は光取り出し面側に反射されることにより、電流分散層240の表面から発光素子1の外部に放射される。また、反射部210により反射されずに透過した光によって半導体基板10及びバッファ層200を光励起することにより発生する第二放射光は、反射部210によって半導体基板10側に反射され、時間の経過と共に熱へと変化する。
【0101】
第一放射光によって半導体基板10とバッファ層200とで生じる第二放射光の半値幅は広いので、840nmから900nmの範囲の波長の光が第二放射光には含まれる。したがって、反射部210は、この波長範囲の光を反射する機能を有することが好ましい。よって、実施例1においては、波長が840nm〜900nmの光を反射部210において反射させるべく、θの値を49、50、51、52、53、54に設定して式(1)及び式(2)から求めた膜厚の第1の半導体層210aと第2の半導体層210bとを有する反射部210を形成した。
【0102】
具体的な反射部210の構成を表1に示す。なお、表1には、比較例の反射部の構成も示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1に示すように、実施例1に係る発光素子の反射部210の構造は以下のとおりである。すなわち、まず、n型GaAsバッファ層上に、θを70°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「70°DBR層」という)を2ペア形成した。次に、70°DBR層の上にθを60°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「60°DBR層」という)を4ペア形成した。そして、60°DBR層の上にθを54°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「54°DBR層」という)を1ペア形成した。
【0105】
更に、54°DBR層の上にθを53°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「53°DBR層」という)を1ペア形成した。そして、53°DBR層の上にθを52°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「52°DBR層」という)を2ペア形成した。
【0106】
更に、52°DBR層の上にθを51°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「51°DBR層」という)を2ペア形成した。そして、51°DBR層の上に、θを50°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「50°DBR層」という)を1ペア形成した。
【0107】
更に、50°DBR層の上にθを49°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「49°DBR層」という)を1ペア形成した。そして、49°DBR層の上に、θを40°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「40°DBR層」という)を8ペア形成した。
【0108】
更に、40°DBR層の上にθを30°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「30°DBR層」という)を8ペア形成した。そして、30°DBR層の上に、θを20°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「20°DBR層」という)を9ペア形成した。
【0109】
更に、20°DBR層の上にθを10°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「10°DBR層」という)を9ペア形成した。そして、10°DBR層の上に、θを0°に設定して式(1)及び式(2)から算出される厚さを有するAlAs層とAl0.5Ga0.5As層とからなるペア層(以下、「0°DBR層」という)を2ペア形成した。このような50ペアのペア層を有する反射部210をn型GaAsバッファ層上に形成した。
【0110】
このようにして、実施例1に係るエピタキシャルウエハを複数枚、製造した。なお、表1に示す反射部を備える比較例に係るエピタキシャルウエハも同様にして製造した。
【0111】
以上のようにして製造した実施例1に係る複数のエピタキシャルウエハ及び比較例に係るエピタキシャルウエハの表面に、直径が100μmの円部分と、円部分の外縁から延びる4本の足部分とを有する表面電極30をマトリックス状に配列するように形成した。表面電極30の形成には、フォトリソグラフィー法を用いた。
【0112】
すなわち、エピタキシャルウエハの表面にフォトレジストを塗布した後、マスクアライナーを用いたフォトリソグラフィー法により、複数の表面電極30が形成される領域のそれぞれに開口を有するマスクパターンをエピタキシャルウエハの表面に形成した。その後、真空蒸着法を用いて開口にAuBe合金(厚さ40nm)と、Ni(厚さ10nm)と、Au(厚さ1000nm)とをこの順に蒸着した。各金属を蒸着後、エピタキシャルウエハに形成されたマスクパターンをリフトオフ法により除去することにより、エピタキシャルウエハの表面に表面電極30を形成した。
【0113】
次に、エピタキシャルウエハの裏面、すなわち、表面電極30が形成された面の反対側の面の全面に、真空蒸着法を用いて裏面電極35を形成した。裏面電極35は、60nm厚のAuGeと、10nm厚のNiと、500nm厚のAuとをこの順に蒸着することにより形成した。表面電極30及び裏面電極35を形成した後、電極を合金化するアロイ工程を実施した。具体的には、表面電極30及び裏面電極35が形成されたエピタキシャルウエハを、窒素ガス雰囲気中、400℃にて5分間加熱することにより実施した。
【0114】
これにより、実施例1に係る複数のLED用のエピタキシャルウエハ、及び比較例に係るLED用のエピタキシャルウエハを製造した。
【0115】
次に、実施例1及び比較例に係るLED用のエピタキシャルウエハの表面電極30が形成されている領域を除く電流分散層240の表面のそれぞれに粗面化処理を施した。具体的には、酢酸系のエッチャントを用い、30秒間の粗面化処理を電流分散層240の表面に施した。
【0116】
なお、実施例1に係る複数のLED用のエピタキシャルウエハの一部を用い、エッチング時間と電流分散層240の表面の凹凸との関係も調査した。
【0117】
図5は、エッチング時間と平均粗さ及び二乗平均粗さとの関係を示す。
【0118】
具体的にはエッチング時間を、15秒、30秒、60秒、90秒のそれぞれに設定し、エッチング時間と凹凸との関係を調査した。その結果、Ra(平均粗さ)は0.04〜0.25μm、RMS(二乗平均粗さ)は0.05〜0.35、Ry(最大高さ)は1.4〜2.6μmであった。
【0119】
続いて、30秒間の粗面化処理を電流分散層240の表面に施した実施例1に係るLED用のエピタキシャルウエハ、及び比較例に係るLED用のエピタキシャルウエハのそれぞれについて、表面電極30が中心になるようにダイシング装置を用いて切断した。
【0120】
これにより、実施例1に係るLEDベアチップと比較例に係るLEDベアチップとを作製した。なお、チップサイズはいずれも275μm角である。
【0121】
次に、作製したLEDベアチップ(ただし、ウエハの中心付近から採取したLEDベアチップ)のそれぞれをTO−18ステムにAgペーストを用いてダイボンディングした。そして、TO−18ステムにマウントされたLEDベアチップの表面電極30にAuからなるワイヤーを用いてワイヤーボンディングして、実施例1に係る発光素子、及び比較例に係る発光素子をそれぞれ作製した。
【0122】
上述のように作製した実施例1及び比較例に係る発光素子の初期特性を評価した。その結果、実施例1に係る発光素子の発光出力は3.67mWであり、比較例に係る発光素子の発光出力は3.63mWであった。また、実施例1に係る発光素子の発光ピーク波長は620nmであり、比較例に係る発光素子の発光ピーク波長は621nmであった。更に、実施例1に係る発光素子の順方向電圧(Vf)及び比較例に係る発光素子の順方向電圧はいずれも1.92Vであった。なお、評価時の通電電流は20mAである。
【0123】
一方、比較例に係る発光素子の第一放射光に対する第二放射光の強度の割合(すなわち、「第二放射光/第一放射光×100」で算出)は、0.30%であったが、実施例1に係る発光素子においては0.01%であった。
【0124】
また、室温、50mAの通電条件で168時間の通電試験を実施した。その結果、実施例1に係る発光素子の相対出力は96から105%であり、比較例に係る発光素子と同等の特性であった。なお、相対出力は、「168時間通電後の発光出力/初期の発光出力×100」で算出した。なお、50mAの通電前後ともに、評価時の通電電流は20mAに設定した。
【0125】
なお、電流分散層240の表面に施したエッチング時間が、30秒を除く、15秒、60秒、90秒であるLED用のエピタキシャルウエハからも発光素子を作製した。そして、各発光素子の特性も確認したところ、30秒のエッチングを施して作製した実施例1に係る発光素子と同等の特性(すなわち、±3%の際の範囲内に各特性の値が含まれた)であることが確認された。
【0126】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0127】
1、1a、1b、1c 発光素子
10 半導体基板
20、20a 発光部
30 表面電極
30a 円部分
30b 足部分
35 裏面電極
40 光取り出し層
200 バッファ層
210 反射部
210a 第1の半導体層
210b 第2の半導体層
220 第1クラッド層
221 第1アンドープ層
222 活性層
223 第2アンドープ層
224 第2クラッド層
230 介在層
240 電流分散層
242 第1の電流分散層
244 第2の電流分散層
250 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
第1導電型の第1クラッド層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2クラッド層とに挟まれる活性層を有する発光部と、
前記半導体基板と前記発光部との間に設けられ、前記活性層が発する光を反射する反射部と、
前記発光部の前記反射部の反対側に設けられる電流分散層と
を備え、
前記反射部が、第1の半導体層と、前記第1の半導体層とは異なる第2の半導体層とからなるペア層を複数有して形成され、
前記第1の半導体層が、前記活性層が発する光のピーク波長をλ、前記第1の半導体層の屈折率をn、前記第2の半導体層の屈折率をn、前記第1クラッド層の屈折率をnIn、前記第1クラッド層から前記第2の半導体層への光の入射角をθとした場合に、式(1)で定められる厚さTA1を有し、
前記第2の半導体層が、式(2)で定められる厚さTB1を有し、
前記ペア層が、44以上61以下のθの値の範囲で前記式(1)及び前記式(2)で規定される厚さの前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層を含むと共に、44以上61以下のθの値の範囲で前記式(1)で規定される厚さの前記第1の半導体層と44以上61以下のθの値の範囲で前記式(2)で規定される厚さの前記第2の半導体層とからなるペア層を含む発光素子。
【数9】

【数10】

【請求項2】
前記第2クラッド層と前記電流分散層との間に設けられる介在層
を更に備え、
前記介在層は、前記第2クラッド層を構成する半導体のバンドギャップエネルギーと、前記電流分散層を構成する半導体のバンドギャップエネルギーとの間のバンドギャップエネルギーを有する半導体から形成される請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記ペア層が、λ/4nの1.5倍以上の厚さTA1を有する前記第1の半導体層と、λ/4nの1.5倍以上の厚さTB1を有する前記第2の半導体層とを含む請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記反射部と前記半導体基板との間に設けられる第2反射部
を更に備え、
前記第2反射部が、第3の半導体層と、前記第3の半導体層とは異なる第4の半導体層とからなるペア層を複数有して形成され、
前記第3の半導体層が、λp2を870±30nmとし、前記第3の半導体層の屈折率をnとした場合に、式(3)で定められる厚さTを有し、
前記第4の半導体層が、前記第4の半導体層の屈折率をnとした場合に、式(4)で定められる厚さTを有する請求項3に記載の発光素子。
【数11】

【数12】

【請求項5】
前記反射部及び前記第2反射部が、前記活性層を構成する半導体のバンドギャップより大きなバンドギャップを有し、前記活性層から発せられる光に対して透明であるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)から形成される請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層が、互いに屈折率の異なるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1)又は互いに屈折率の異なる(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成され、
前記第3の半導体層及び前記第4の半導体層が、互いに屈折率の異なるAlGa1−xAs(ただし、0≦x≦1))又は互いに屈折率の異なる(AlGa1−yIn1−zP(ただし、0≦y≦1、0.4≦z≦0.6)から形成される請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記電流分散層が、複数の電流分散層を有し、
前記複数の電流分散層のうち、前記半導体基板とは反対側に位置する電流分散層が、前記複数の電流分散層の中でキャリア濃度及び導電型を決定する不純物濃度が最も高い請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記電流分散層の前記発光部の反対側の表面に設けられる表面電極と、
前記電流分散層の前記表面電極が設けられる領域とは異なる前記表面の領域に設けられる凹凸部と、
前記凹凸部の表面に設けられ、前記活性層が発する光に対して透明であり、前記電流分散層を構成する半導体の屈折率と空気の屈折率との間の屈折率を有する材料からなる光取り出し層とを更に備える請求項7に記載の発光素子。
【請求項9】
前記光取り出し層が、前記活性層が発する光の波長をλp、前記光取り出し層を構成する材料の屈折率をn、定数A(ただし、Aは奇数)とした場合に、A×λp/(4×n)で規定される値の±30%の範囲内の厚さdを有する請求項8に記載の発光素子。
【請求項10】
前記光取り出し層が、絶縁体、第1導電型若しくは第2導電型の酸化物、又は、第1導電型若しくは第2導電型の窒化物を含んで形成される請求項9に記載の発光素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−84692(P2012−84692A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229704(P2010−229704)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】